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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078517
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20240604BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240604BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240604BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/99
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190938
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】益川 直子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC712
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD572
4C083CC04
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】ナイアシンアミドを含有しながらも、使用感に優れた水性化粧料を提供すること。
【解決手段】下記(A)~(C)を含む水性化粧料。
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)コメ発酵物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含む水性化粧料。
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)コメ発酵物
【請求項2】
(C)コメ発酵物が、サッカロミセス属酵母による発酵物である請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
(A)ナイアシンアミドを、1~10質量%含む請求項1または2に記載の水性化粧料。
【請求項4】
(B)マンニトールを、0.1~2.4質量%含む請求項1または2に記載の水性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイアシンアミドは、別名ニコチンアミド(nicotinamide)/ナイアシン/ビタミンB3とも呼ばれる、ニコチン酸のアミド化合物である。ナイアシンアミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである。ナイアシンアミドが欠乏するとペラグラなどの欠乏症となる。ナイアシンアミドは、外用薬の成分としてニキビ(尋常性ざ瘡)の治療や、美容目的で化粧品に配合される。日本では、医薬部外品の化粧品に、シワ改善の有効成分(リンクルナイアシン)、美白作用の有効成分(ニコチン酸アミド)として承認されている。
【0003】
ナイアシンアミドは、シワ改善の有効成分としてスキンケア化粧料等にしばしば配合されており、ナイアシンアミドにより、シワ改善、肌のハリ感や弾力を付与するためには3~7質量%ほどの高い配合が求められる。しかし、ナイアシンアミドを高含有すると使用感が低下することが知られており、経験的には3質量%以上含有すると、例えば、塗布中に感じられるべたつき感、塗布後肌に馴染ませる際に感じられるきしみ感など使用感の低下が認識される。こうした化粧料のべたつき感やきしみ感などの使用感を改善するためには、各種油剤、増粘剤、保湿剤、界面活性剤などの成分を組み合わせて配合することで改善させることが試みられている。
ところが、ナイアシンアミドを高含有する化粧料は、このような成分を含有することで一時的に使用感が改善しても、塗布後に一定時間が経過すると、きしみ感などの好ましくない使用感が、再度顕著に感じられることが指摘されている。
【0004】
このような中、ナイアシンアミドを高含有しているが、使用感に優れた化粧料の技術が開示されている。例えば、本出願人は、特許文献1に、(A)ナイアシンアミド3質量%以上、(B)ポリオキシエチレングリセリンに付加した酸化エチレンの平均モル数が10~30であるポリオキシエチレングリセリンを含有し、べたつき感がなく、塗布後に肌になじませる際に感じられるきしみ感を抑制し、さらに保湿性に優れた化粧料を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-129777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ナイアシンアミドを含有しながらも、使用感に優れた水性化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.下記(A)~(C)を含む水性化粧料。
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)コメ発酵物
2.(C)コメ発酵物が、サッカロミセス属酵母による発酵物である1.に記載の水性化粧料。
3.(A)ナイアシンアミドを、1~10質量%含む1.または2.に記載の水性化粧料。
4.(B)マンニトールを、0.1~2.4質量%含む1.または2.に記載の水性化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性化粧料は、べたつき、きしみ感を抑制しながらハリ感を実感することができる。本発明の水性化粧料は、肌なじみ、肌の滑らかさに優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記(A)~(C)を含む水性化粧料に関する。
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)コメ発酵物
なお、本明細書において、「X~Y」(X、Yは数値)との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0010】
(A)ナイアシンアミド
(A)成分であるナイアシンアミドは、ニコチン酸のアミド化合物であり、別名ニコチン酸アミド/ニコチンアミド/ビタミンB3/ナイアシンともいう水溶性ビタミンである。ナイアシンアミドは、天然物からの抽出物であってもよく、公知の方法による合成物でもよく、具体的には、日本薬局方に収載されているものを用いることができる。ナイアシンアミドには、シワ改善効果に加えて血行促進作用や、肌荒れ改善作用、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。
【0011】
本発明の水性化粧料における(A)成分の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、化粧料全体に対して1~10質量%であることが好ましい。(A)の含有量は、化粧料全体に対し2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、また、9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましく、7質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0012】
(B)マンニトール
マンニトールは、自然界に広く分布している6価の糖アルコールであり、ソルビトールの異性体である。異性体同士ではあるものの、その物性は異なり、例えば、ソルビトールは吸湿性であるのに対し、マンニトールはほとんど吸湿しない。本発明に用いるマンニトールは、既に化粧品原料として市販されているものであり、何ら限定なく使用できる。
【0013】
本発明の水性化粧料において、(B)成分の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、化粧料全体に対して0.1~2.4質量%であることが好ましい。(B)の含有量は、化粧料全体に対し0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることがよりさらに好ましく、また、2.2質量%以下であることがより好ましく、2.1質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以下であることがよりさらに好ましい。
さらに、本発明の水性化粧料において、(A)成分に対する(B)成分の質量比(B
)/(A)は、0.05以上0.45以下であることが好ましい。この比は、0.07以上であることがより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましく、0.30以下であることがよりさらに好ましい。
【0014】
(C)コメ発酵物
コメ発酵物は、イネ(Oryza sativa)の種子(コメ)を基質として、酵母、乳酸菌、糸状菌といった微生物で発酵して得られる発酵物であり、糖類だけでなく、アミノ酸や乳酸、ミネラル、ビタミン類といった発酵による代謝物を多様に含んでいる。
コメ発酵物としては、市販されている化粧品原料として入手可能であり、化粧品成分表示名称としては、サッカロミセス/コメ発酵液エキス、サッカロミセス/コメ発酵液、サッカロミセス/コメ粕発酵液、サッカロミセス/コメ芽発酵液、サッカロミセス/加水分解発芽コメ発酵液、コメ発酵液、乳酸桿菌/コメ発酵物、アスペルギルス/コメ発酵エキス等が例示される。
本発明で用いるコメ発酵物としては、特に制限されないが、微生物として酵母を用いたものが好ましく、特にサッカロミセス属酵母を用いたものがより好ましい。
なお、本発明の水性化粧料は、(A)~(C)成分を含むことにより、べたつき、きしみ感を抑制しながらハリ感を実感でき、さらに、肌なじみと肌の滑らかさに優れているとの効果を奏するが、(C)コメ発酵物中のどの成分が本発明の効果に必要であるのかを特定することは、非常に多くの検討を重ねる必要があり、出願を一刻も早く行うことが要請される先願主義の元では実際的ではない。
【0015】
本発明の水性化粧料において、(C)成分の含有量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、化粧料全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の水性化粧料は、(A)~(C)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、水性化粧料に常用される各種原料、例えば、エタノール、保湿成分、増粘剤、キレート剤、pH調整剤、中和剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、着色剤(例えばシアノコバラミン)、美容成分(例えばローズマリーエキス)、ビタミン類等の機能成分を配合することができる。
【0017】
本発明の水性化粧料とは、水と均一に混合することができる親水性の化粧料であり、水に配合成分が溶解及び/または分散しているものを示す。具体的には、配合成分が水に溶解または分散した化粧水、美容液またはジェルであり、均一な水相が形成されるのであれば、多少の(2.0%以下程度)油剤を含むこともできる。
【実施例0018】
<試料>
(A)ナイアシンアミド
(B)マンニトール
(C)コメ発酵物
1.サッカロミセス/コメ発酵液エキス(市販品)
2.株式会社テクノーブル、ラフリン-AM・α(乳酸桿菌/コメ発酵物含有)
3.香栄興業株式会社、白麹エキス BG-50(アスペルギルス/コメ発酵エキス含有)
4.株式会社ホルス、ホルス吟醸エキスAL(コメ発酵液)
5.特開2020-050620号公報に記載の方法に従い、発芽玄米(品種:ななつぼし)をサッカロミセスベローナで醗酵させて得た。
【0019】
(B’)他の多価アルコール
D-ソルビトール
グリセリン
(C’)他の発酵物
乳酸桿菌/セイヨウナシ果汁発酵液(一丸ファルコス株式会社、ファーメンテージ セイヨウナシB)
乳酸桿菌/豆乳発酵液(香栄興業株式会社、豆乳発酵液BG)
【0020】
<調製方法>
表1~3に示す組成で、各成分を混合し水性化粧料を製造した。なお、表2において、実施例3、4で使用した(C)成分および比較例7、8で使用した(C’)成分は、溶媒、担体等の他の成分を含むため、発酵物としての配合量が実施例1と同一となるようにして配合した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
<試験方法>
上記の方法で得た水性化粧料について、専門パネラー5名により、各水性化粧料を前腕内側部に約0.3mL塗布した直後の感覚について下記の評点の付け方にて官能評価を実施し、以下のような評点を付けた。
【0025】
・肌なじみのよさ
肌なじみとは、化粧料を塗布したときに、肌に吸収されて浸み込んでいく様な感覚であり、塗布後一定時間経過後に、残液感を感じず、化粧料がはじかれている感覚とは相反する感覚のことである。
◎:5名全員が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
○:3~4名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
△:1~2名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
×:0名が塗布時の肌なじみが良いと判定した。
・ハリ感
ハリ感とは、塗布直後にピンと張ったような使用感があり、指で押した時に弾力が感じられることである。
◎:5名全員がハリ感を感じると判定した。
○:3~4名がハリ感を感じると判定した。
△:1~2名がハリ感を感じると判定した。
×:0名がハリ感を感じると判定した。
【0026】
・きしみ感のなさ
きしみ感とは、化粧料を塗布後に、必要以上の摩擦を感じる様な、塗布部の物理的不快感を意味し、塗布部表面が被膜で覆われているような、凹凸が多々存在して滑らかさが失われ、ざらつきが生じているような場合にも感じ得る感触である。
◎:5名全員がきしみ感がないと判定した。
○:3~4名がきしみ感がないと判定した。
△:1~2名がきしみ感がないと判定した。
×:0名がきしみ感がないと判定した。
・べたつきのなさ
べたつきとは、化粧料を肌に塗布した後、一定時間経過後も感じる粘性もしくは粘着性を伴う残液感のことである。
◎:5名全員がべたつきがないと判定した。
○:3~4名がべたつきがないと判定した。
△:1~2名がべたつきがないと判定した。
×:0名がべたつきがないと判定した。
・肌のなめらかさ
肌のなめらかさとは、化粧料を肌に塗布した後、塗布部を指でなぞったときに抵抗を感じずに、さらさらとすべる様な感覚のことである。
◎:5名全員が塗布後の肌がなめらかであると判定した。
○:3~4名が塗布後の肌がなめらかであると判定した。
△:1~2名が塗布後の肌がなめらかであると判定した。
×:0名が塗布後の肌がなめらかであると判定した。
【0027】
(A)ナイアシンアミド、(B)マンニトール、(C)コメ発酵物を含む本発明の水性化粧料は、(A)ナイアシンアミドを含むにも関わらず、きしみ感、べたつきを抑えることができた。また、本発明の水性化粧料は、ハリ感、肌なじみ、滑らかさに優れていた。
【0028】
処方例1 化粧水
配合量(質量%)
ナイアシンアミド 5
ブチレングリコール(BG) 7
グリセリン 10
マンニトール 1
ペンチレングリコール 1.5
エチルヘキシルグリセリン 0.05
クエン酸 0.01
クエン酸Na 0.1
サッカロミセス/コメ発酵液エキス 0.1
精製水 残差
【0029】
処方例2 化粧水
配合量(質量%)
ナイアシンアミド 5
ブチレングリコール(BG) 5
グリセリン 3.5
マンニトール 0.75
ベタイン 0.5
ペンチレングリコール 1.5
エチルヘキシルグリセリン 0.05
クエン酸 0.01
クエン酸Na 0.1
サッカロミセス/コメ発酵液 80
精製水 残差
【0030】
処方例3 美容液
配合量(質量%)
ナイアシンアミド 5
グリセリン 6
ジグリセリン 4
BG 7
ペンチレングリコール 1.5
マンニトール 1.5
トレハロース 1
ベタイン 1
スクワラン 1
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)
0.5
ジメチコン 0.2
水添レシチン 0.1
キサンタンガム 0.15
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.03
カルボマー 0.2
水酸化K 0.05
サッカロミセス/コメ発酵液エキス 0.1
精製水 残差
【0031】
処方例4 ジェル
配合量(質量%)
ナイアシンアミド 5
グリチルリチン酸2K 0.1
BG 6
ペンチレングリコール 2
ジメチコン 1
グリセリン 5
ベタイン 1
マンニトール 1
PEG-400 0.5
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.4
キサンタンガム 0.3
水酸化K 0.1
サッカロミセス/コメ発酵液 1
精製水 残差