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特開2024-78520シール部形成装置、個装吸収性物品の製造装置、及び個装吸収性物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078520
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】シール部形成装置、個装吸収性物品の製造装置、及び個装吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61F13/15 355Z
A61F13/15 358
A61F13/15 356
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190941
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】与那覇 奨
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200CA11
3B200DF08
3B200DF09
3B200EA18
3B200EA22
(57)【要約】
【課題】個装吸収性物品におけるシール部の形成に融着を利用しない場合であっても、十分なシール強度を有するシール部を形成する。
【解決手段】包装シートの折り畳みにより吸収性物品が包装され縁部がシールされてなる、個装吸収性物品のためのシール部形成装置であって、前記包装シートを挟圧して前記包装シート同士の圧着により前記シール部を形成する、第1ロール及び第2ロールを備え、前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装シートの折り畳みにより吸収性物品が包装され縁部がシールされてなる、個装吸収性物品のためのシール部形成装置であって、
前記包装シートを挟圧して前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成する、第1ロール及び第2ロールを備え、
前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、
前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より小さい、シール部形成装置。
【請求項2】
前記第1ロール及び前記第2ロールの回転軸の延在方向である軸方向と、前記軸方向に直交する製品流れ方向とを有し、
前記第1ロールの複数の凸部は、前記軸方向及び前記製品流れ方向に互いに離隔して設けられ、
前記第2ロールの複数の凹部は前記軸方向に互いに離隔して設けられ、且つ前記複数の凹部のそれぞれは前記製品流れ方向にわたって延在する、請求項1に記載のシール部形成装置。
【請求項3】
対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)と、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)との差(ΔG=Gt-Gs)は、前記包装シート1枚の厚みの90~100%である、請求項1又は2に記載のシール部形成装置。
【請求項4】
前記対向する前記第1ロールの凸部の側面及び前記第2ロールの凹部の側面の傾斜方向が等しく、当該傾斜方向が、厚み方向に対して10~30°の角度をなす、請求項1又は2に記載のシール部形成装置。
【請求項5】
前記個装吸収性物品の前記縁部が、前記包装シートが重ねられた枚数が2枚以上の薄領域と、前記薄領域よりも前記包装シートが重ねられた枚数が多い厚領域とを有し、
前記第1ロール及び前記第2ロールが、前記軸方向に沿って、前記薄領域に対応する薄領域対応部と、前記厚領域に対応する厚領域対応部とを有し、
前記薄領域対応部における前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔が、前記厚領域対応部における前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔よりも小さい、請求項2に記載のシール部形成装置。
【請求項6】
包装シートにより吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品の製造装置であって、
前記包装シートとなる包装シート長尺体の内面に、複数の吸収性物品を離隔して配置し、前記包装シート長尺体を折り畳んで吸収性物品を包む、包装手段と、
前記吸収性物品がない位置で前記折り畳まれた包装シート長尺体をシールする、シール部形成手段と、を含み、
前記シール部形成手段が、前記包装シート長尺体を挟圧して前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成する第1ロール及び第2ロールを含み、
前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、
前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より少なくとも小さい、個装吸収性物品の製造装置。
【請求項7】
包装シートにより吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品の製造方法であって、
前記包装シートとなる包装シート長尺体の内面に、複数の吸収性物品を離隔して配置し、前記包装シート長尺体を折り畳んで吸収性物品を包む、包装工程と、
前記吸収性物品がない位置で前記折り畳まれた包装シート長尺体をシールする、シール部形成工程と、を含み、
前記シール部形成工程において、前記包装シート長尺体を、第1ロール及び第2ロールによって挟圧して、前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成し、
前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、
前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より少なくとも小さい、個装吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部形成装置、シール部形成装置、個装吸収性物品の製造装置、及び個装吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品は、保管時の衛生確保、持ち運びの際の利便性向上等の理由から、包装シートによって個別に包装された状態で、個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。個装吸収性物品の多くは、包装シートの縦方向の折り畳みよって吸収性物品が包まれ、横方向の縁部がシールされた形態となっている。そして、この縁部のシール部を形成する手法としては、シールしたい領域を一対のロール間で熱圧し、樹脂フィルム等からなる包装シート同士を融着させることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-268015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、包装シートの材料として、紙等の材料も検討されている。紙等の材料は、熱によって溶融若しくは軟化しない又はし難い材料であるため、個装吸収性物品の縁部におけるシール部の形成のために、熱による融着は利用できない。そのため、包装シートの形状を物理的に変形させて噛み合わせる若しくは引掛けること等により、包装シート同士を圧着する必要がある。
【0005】
しかしながら、上記のような物理的な変形を利用するシール部は、材料が溶け合って融合する融着を利用して得られたシール部に比べて、十分なシール強度を得られない場合がある。そのため、圧着によるシール部形成において、シール強度を高める工夫が求められている。
【0006】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、個装吸収性物品におけるシール部の形成に融着を利用しない場合であっても、十分なシール強度を有するシール部を形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、包装シートの折り畳みにより吸収性物品が包装され縁部がシールされてなる、個装吸収性物品のためのシール部形成装置であって、前記包装シートを挟圧して前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成する、第1ロール及び第2ロールを備え、前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より小さい。
【0008】
上記第一の態様による装置は、包装シートを挟圧して圧着によりシール部を形成するための第1ロール及び第2ロールを備えており、第1ロールの表面に形成された複数の凸部と、第2ロールの表面に形成された複数の凹部とが噛み合うようになっている。このため、挟圧された包装シート同士も噛み合うように厚み方向に変形され、包装シートの材料が、紙等の融着し難い若しくはしない材料(難融着材料)であっても、シール部のシール強度を確保できる。
【0009】
さらに、本態様では、対向する第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する第1ロールの凸部の頂面と第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より小さくなっている(Gs<Gt)ので、包装シート同士の圧着が、第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間で優先的に起こる。そして、第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間では、第1ロールの凸部と第2ロールの凹部とが噛み合う過程で、包装シートには、側面に直交する方向での押付け力のみならず、当該包装シートの面に沿った方向にも剪断的に力が掛かる。そのため、包装シートがシートの面方向に引き伸ばされると共に、対向する包装シート同士が面方向に擦り合わされて包装シートの表面同士の相互作用が増すため、形成される圧着部の圧着強度を大きくできる。本態様では、上記のようなより強い圧着強度をもたらす位置での圧着が優先的に行われるので、得られる個装吸収性物品におけるシール部のシール強度を向上できる。
【0010】
また、包装シートの一般的な包装形態では、個装吸収性物品の縁部の縦方向の領域により包装シートの重なり枚数が異なっている。ここで、包装シートが難融着材料であった場合、樹脂フィルムのような材料と比べて、包装シートの材料自体が厚み方向に圧縮され難い。そのため、包装シート挟圧時のロール間の厚み方向の間隔を所望の設定間隔にまで縮めることができず、ロール間の間隔は、重なり枚数が最も多い領域での間隔に決められてしまう。そうすると、包装シートの重なり枚数が少ない領域では、ロール間の間隔を所望の設定間隔まで縮めることができず、すなわち包装シートの厚みによって圧着が阻害され得る。その場合、包装シートの挟圧を十分に行うことができず、圧着部を形成できない又は圧着部の圧着強度が弱くなってしまうことがある。
【0011】
ここで、上述のように、対向する第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間では、包装シートが引き伸ばされ且つ包装シート同士の擦り合いが生じ易いので、凸部の頂面と凹部の底面との間に比べて包装シートを圧縮し易く、包装シートの重なり枚数の違いの影響を受け難い。よって、本態様によりGs<Gtとして、第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間で優先的に圧着を行うようにすることで、包装シートの重なり枚数の違いがあっても、重なり枚数の少ない領域で圧着部が形成されない又は圧着部の圧着強度が弱くなることを回避できる。
【0012】
本発明の第二の態様では、前記第1ロール及び前記第2ロールの回転軸の延在方向である軸方向と、前記軸方向に直交する製品流れ方向とを有し、前記第1ロールの複数の凸部は、前記軸方向及び前記製品流れ方向に互いに離隔して設けられ、前記第2ロールの複数の凹部は前記軸方向に互いに離隔して設けられ、且つ前記複数の凹部のそれぞれは前記製品流れ方向にわたって延在する。
【0013】
上記第二の態様によれば、第1ロールの表面と第2ロールの表面とで、凹凸の構成が異なっており、製品流れ方向で見ると、第1ロールの凹凸と第2ロールの凹凸とが軸方向にわたって噛み合っている部分と、噛み合ってない部分とが形成されることになる。よって、第1ロールの凹凸と第2ロールの凹凸とが互いに引っ掛かることなく、スムーズに回転できる。
【0014】
また、得られる個装吸収性物品のシール部には、上記の第1ロールの凹凸と第2ロールの凹凸とが軸方向にわたって噛み合ってない部分に対応して、包装シート同士が圧着されていない部分が形成される。そのため、シール部が過度に硬くなって手触りを損ねること等を防止できる。さらに、第1ロールの凹凸と第2ロールの凹凸とが軸方向にわたって噛み合っている部分に対応して、個装吸収性物品には縦方向に、圧着強度が比較的強い強圧着部と比較的弱い弱圧着部とが交互に隣接して形成される。この場合、縦方向(開封方向)に沿って圧着部が連続するので、開封時に包装シートを持ち上げた際にはシール部をスムーズに剥がすことができる。また、縦方向(開封方向)に強圧着部が間欠して配置されることになるため、使用開始前に包装シートの端部が少し剥がれてしまった場合でも、剥がれが連鎖することなく意図せぬ大きな開封を防ぐことができる。
【0015】
本発明の第三の態様では、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)と、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)との差(ΔG=Gt-Gs)は、前記包装シート1枚の厚みの90~100%である。
【0016】
上記第三の態様によれば、第一の態様により得られる効果、すなわち、より強い圧着強度をもたらす位置(第1ロールの凹部の側面と第2ロールの凹部の側面とが対向する位置)での圧着を優先的に行い、シール部のシール強度を向上させるとの効果、及び縁部における包装シートの重なり枚数の違いがあっても、重なり枚数の少ない領域での圧着部が形成できない又は圧着部の圧着強度が弱くなることを回避するとの効果を、一層向上させることができる。
【0017】
本発明の第四の態様では、前記対向する前記第1ロールの凸部の側面及び前記第2ロールの凹部の側面の傾斜方向が等しく、当該傾斜方向が、厚み方向に対して10~30°の角度をなす。
【0018】
上記第四の態様によれば、対向する前記第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との傾斜方向が等しいことで、両側面の間で、包装シート同士を広い面状に圧着できる。また、傾斜方向が厚み方向に対して所定の角度を有することで、上記の面状の圧着を効果的に行うことができると共に、2つのロールの回転による表面の凹凸の噛み合いがスムーズになる。
【0019】
本発明の第五の態様では、前記個装吸収性物品の前記縁部が、前記包装シートが重ねられた枚数が2枚以上の薄領域と、前記薄領域よりも前記包装シートが重ねられた枚数が多い厚領域とを有し、前記第1ロール及び前記第2ロールが、前記軸方向に沿って、前記薄領域に対応する薄領域対応部と、前記厚領域に対応する厚領域対応部とを有し、前記薄領域対応部における前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔が、前記厚領域対応部における前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔よりも小さい。
【0020】
上記第五の態様によれば、ロール噛み合い時の第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔が、得ようとする個装吸収性物品の縁部における包装シートの重なり枚数の多少に応じて、軸方向で異なっている。すなわち、予め、噛み合せ時の上記側面同士の間隔を、包装シートの重なり枚数が多い厚領域対応部で大きく、包装シートの重なり枚数が少ない薄領域対応部で小さくしておくことで、包装シートの材料が特に圧縮され難い場合、或いは枚数の違いが大きい場合に等に、重なり枚数が少ない領域で圧着部を確実に形成できる。
【0021】
本発明の第六の態様では、包装シートにより吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品の製造装置であって、前記包装シートとなる包装シート長尺体の内面に、複数の吸収性物品を離隔して配置し、前記包装シート長尺体を折り畳んで吸収性物品を包む、包装手段と、前記吸収性物品がない位置で前記折り畳まれた包装シート長尺体をシールする、シール部形成手段と、を含み、前記シール部形成手段が、前記包装シート長尺体を挟圧して前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成する第1ロール及び第2ロールを含み、
前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より少なくとも小さい。
【0022】
上記第六の態様によれば、第一の態様による効果と同様の効果を奏する個装吸収性物品の製造装置を提供できる。
【0023】
本発明の第七の態様では、包装シートにより吸収性物品が個装されてなる個装吸収性物品の製造方法であって、前記包装シートとなる包装シート長尺体の内面に、複数の吸収性物品を離隔して配置し、前記包装シート長尺体を折り畳んで吸収性物品を包む、包装工程と、前記吸収性物品がない位置で前記折り畳まれた包装シート長尺体をシールする、シール部形成工程と、を含み、前記シール部形成工程において、前記包装シート長尺体を、第1ロール及び第2ロールによって挟圧して、前記包装シート同士の圧着によりシール部を形成し、前記第1ロールの表面に複数の凸部が設けられ、前記第2ロールの表面に、前記第1ロールの凸部と噛み合う凹部が複数設けられ、前記噛み合せ時、対向する前記第1ロールの凸部の側面と前記第2ロールの凹部の側面との間隔(Gs)が、対向する前記第1ロールの凸部の頂面と前記第2ロールの凹部の底面との間隔(Gt)より少なくとも小さい。
【0024】
上記第七の態様によれば、第一の態様による効果と同様の効果を奏する個装吸収性物品の製造方法を提供できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一態様によれば、個装吸収性物品におけるシール部の形成に融着を利用しない場合であっても、十分なシール強度を有するシール部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一形態により得られる個装吸収性物品の平面図である。
図2】本発明の一形態による製造装置の概略図である。
図3図2におけるシール部形成手段の一対のロールの斜視図である。
図4】ロールの表面の構造について説明する図である。
図5図4(b)の断面図に対応する図であり、第1ロールと第2ロールとの噛み合い時の状態を示す図である。
図6図4(b)のIV-IV断面図である。
図7図4(b)のV-V断面図である。
図8図5の部分VIの拡大図である。
図9図4(a)の部分VIIの拡大図である。
図10】本形態の変形例による第1ロール及び第2ロールについて説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0028】
<個装吸収性物品の基本構造>
まず、個装吸収性物品の基本的な構成について説明する。図1に、包装シート9により吸収性物品1が個装されてなる個装吸収性物品100の平面図を示す。本形態では、個装吸収性物品100は、包装シート9の内面に吸収性物品1を配置した後、包装シート9を吸収性物品1と共に折り畳むことで吸収性物品1を包装している。本明細書では、包装シート9が折り畳まれる方向を、縦方向(y方向)とし、この縦方向(y方向)に直交する方向を横方向(x方向)とする。よって、本形態では、縦方向(y方向)は包装シート9の長手方向に相当し、横方向(x方向)は包装シート9の短手方向に相当する。横方向(x方向)及び縦方向(y方向)のいずれにも直交する方向が厚み方向zである。なお、折り畳み方向である縦方向(y方向)は、すなわち個装吸収性物品100の開封時の開封方向となる。
【0029】
(吸収性物品)
包装シート9により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための、扁平で細長形状の物品であってよい。吸収性物品1の具体例は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。吸収性物品1は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体とを有するものであってよい。
【0030】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。トップシートとしては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
吸収体は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。吸収体は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。
【0032】
なお、図1に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部が設けられていてもよい。
【0033】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。また、吸収性物品の厚みは、1~25mmであってよい。
【0034】
(包装シート)
本形態における包装シート9の材料は限定されないが、本形態は、熱により溶融若しくは軟化し難く、熱により融着し難い若しくはしない材料(難融着材料)の包装シート9を利用する場合に好適である。難融着材料としては、難融着性の繊維の集合体、好ましくは紙が挙げられる。紙製の包装シート9を利用した場合、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与するという観点で好ましい。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できる。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて薄い平板状にしたものを指す。特に、植物繊維を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維、特にセルロース繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指すことができる。紙の原料たる植物繊維(パルプ)としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプが含まれていてよく、これらは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。パルプは、吸収性物品の構成要素及び/又は吸収性物品用の包装シートからリサイクルされたパルプであってもよい。また、紙には、添加剤が添加されていてもよい。具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。さらに、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙であってもよい。薄葉紙である場合、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。
【0035】
なお、本明細書における、紙製の包装シートとは、主として上述の紙を含むシートを指す。紙製の包装シートには、紙のみからなる包装シートはもちろん、紙と、紙以外の材料からなるシートとが積層された積層シートも含まれ得る。包装シート9が、紙以外の材料からなるシートと含む場合、紙以外の材料は、樹脂フィルム、不織布等であってよい。但し、紙からなる包装シート9は、プラスチック削減の観点から、且つ/又は紙独特の自然な風合いを製品に付与できるという観点で、特に好ましい。
【0036】
紙製の包装シート9は、何等かの加工が施されたものであってもよい。この加工には、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、撥水加工、スリット加工、プライ加工、印刷加工等が含まれていてよい。クレープ加工、エンボス加工等を行うことにより、紙の強度及び/又は柔軟性を向上させることができる。包装シート9が、クレープ加工された材料(クレープ紙)である場合、クレープ率は8~25%であってよい。
【0037】
包装シート9が紙である場合、包装シート9の厚み(クレープ紙の場合にはクレープ加工後の厚み)は、好ましくは40~280μm、より好ましくは70~150μm、さらに好ましくは70~100μmであってよい。また、包装シート9の目付は、好ましくは12~50g/m、より好ましくは15~35g/mであってよい。このような比較的薄い且つ/又は目付の小さい包装シートは、柔軟であるので手触りも良好であり、開封時や持ち運びの際に発生する音も低減できる。
【0038】
包装シート9の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート9を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、縦方向yの長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、横方向xの長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート9は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0039】
(包装構造)
上述のように、個装吸収性物品100は、吸収性物品1が包装シート9と共に折り畳まれることによって包装されてなる。包装シート9の折り畳みの際には、図1に示す横方向xに沿った折り線F1、F2にて縦方向yに折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート9の縦方向yの一端e1を含む第1領域R1が縦方向yに折り返され、且つ第2折り線F2にて、包装シート9の縦方向yの他端e2を含む第2領域R2が折り返されている。第2領域R2が折り返された後に第1領域R1が折り返されるが、この折り順は逆であってもよい。このように、吸収性物品1は巻三つ折り(内三つ折り)によって包装され得る。このような包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上としてもよいし、二つ折りにすることもできる。なお、開封時には、外側に配置された包装シート9の領域(図示の例では第1領域R1)を持ち上げて、包装シート9を縦方向yに展開して、吸収性物品1を露出させることができる。
【0040】
上述のように吸収性物品1を包装シート9で包んだ後、横方向xの両縁部の吸収性物品1のない位置で、包装シート9同士が縦方向yに沿ってシールされる。これにより、図1に示すように、シール部5、5が形成される。シール部5、5は、個装吸収性物品100の縦方向yの全長にわたって形成されていてよい。これにより、ごみや塵、或いは誤って指又は小さい物体が短手方向の端縁から侵入することを防止できる(封止性が得られる)という観点で好ましい。シール部5、5の形成については、後にさらに詳述する。シール部5が設けられている横方向xの範囲は、横方向xの端縁から20mmまでの範囲であってよい。シール部5は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば横方向xの端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部5自体の横方向xの長さ(幅)は、3~15mmであると好ましい。
【0041】
さらに、個装吸収性物品100には、第1領域R1の端縁(包装シート9の一端e1)付近において横方向x中央に、止着テープ8が設けられていてよい。そして、止着テープ8は、図1に示すように、包装シート9の一端e1を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2にわたって設けられていてよい。止着テープ8が設けられていることで、個装吸収性物品100の開封時には、使用者は止着テープ8を持って第1領域R1を持ち上げて引っ張ることができるので、開封がより容易となる。また、止着テープ8があることで、吸収性物品の交換時に、使用済みの吸収性物品を、新たに開封した個装吸収性物品から得られた包装シートで包んだ後、包装シートの端部を包装シートの他の場所に止着することができる。これ移により、包装シートが開いてしまって使用済み吸収性物品が露出すること等を防止でき、使用済みの吸収性物品を衛生的に廃棄することができる。
【0042】
<個装吸収性物品の製造>
図2に、個装吸収性物品100の製造装置80の一例の概略図を示す。図2に示すように、製造装置80は、包装シート9となる包装シート長尺体9Aで吸収性物品1を包む包装手段40、シール部5、5を形成するシール部形成手段(シール部形成装置)50、及び長尺状の構造体を切断して個々の個装吸収性物品100を得る切断手段60を備えている。図2の上段は、個装吸収性物品100の厚み方向zに沿った断面(x-z平面)で見た図であり、下段は、個装吸収性物品100を平面視する方向で見た図(x-y平面図)である。本形態では、シール部形成手段50が、被加工物を挟圧できる第1ロール10及び第2ロール20を含む。
【0043】
図2に示す例では、製品の流れ方向(上流から下流へ進む方向)又はその逆に沿った方向が、x方向である。すなわち、製造時の製品流れ方向は、得られる個装吸収性物品100の横方向に沿った方向となっている。また、この製品流れ方向xに直交する、シール部形成手段50に含まれる2つのロールの軸の延在方向(軸方向)が、y方向となっている。すなわち、製造装置80における軸方向は、得られる個装吸収性物品100の縦方向若しくは開封方向に沿った方向となっている。
【0044】
個装吸収性物品100の製造においては、図2に示すように、包装シート9(図1)となる包装シート長尺体9Aを、製品流れ方向xに上流から下流へと搬送させる。包装シート長尺体9Aは、ロール状に巻き付けられた状態で入手することができ、そのようなロール状体から繰り出して利用できる。そして、包装手段30において、包装シート長尺体10Aの内面に、製品流れ方向xに間隔を空けて吸収性物品1、1を配置していく。吸収性物品1は、吸収性物品1の長手方向が、軸方向yに沿うように配置する。吸収性物品1、1、…が配置されたら、包装シート長尺体10Aを吸収性物品1と共に、軸方向y(縦方向y)に、製品流れ方向xに沿った折り位置にて折り畳む。折り畳みは内三つ折りとして、折り畳み後に吸収性物品1が露出しないようにすることが好ましい。
【0045】
間隔を空けて配置された吸収性物品1、1、…は、包装シート長尺体9Aに包まれた長尺状の構造体として、さらに製造装置80のシール形成手段50へと搬送される。シール形成手段50では、吸収性物品1、1…間の位置(吸収性物品1が配置されていない位置)で、厚み方向zに重ねられた包装シート長尺体9A同士が、互いに逆方向に回転する第1ロール10及び第2ロール20によって厚み方向zに挟圧され、圧力及び/又は熱が加えられ、シール部5が形成される。シール形成手段50においては、隣り合う2つの個装吸収性物品となる部分のシール部5、5が(例えば、製品流れ方向x下流の個装吸収性物品の右側のシール部と、製品流れ方向x上流の個装吸収性物品の左側のシール部とが)同時に形成される。
【0046】
シール形成手段50にてシール部5が形成された後、切断手段60にて、隣り合う2つの個装吸収性物品となる部分のシール部5、5が設けられている位置で、包装シート長尺体9Aが切断され、個装吸収性物品100を得ることができる。シール形成手段50及び切断手段60は一体化された手段になっていてもよい、すなわち、シール部の形成と切断とが1つの装置で行われてもよい。
【0047】
(ロールの構成)
図3に、シール形成手段50の第1ロール10及び第2ロール20の斜視図を示す。図2及び図3に示すように、シール形成手段50における一対のロールのうち第1ロール10には、周方向に沿って加圧部12、12、…が設けられ、同様に第2ロールに20には、周方向に沿って加圧部22、22、…が設けられていてよい。第1ロール10の加圧部12、12、…、及び第2ロール20の加圧部22、22、…は、吸収性物品1、1、…が包装シート長尺体9Aにより包まれてなる長尺状の構造体における所定のシール位置に配置されるよう(図2)、周方向に間欠して設けられている。第1ロール10の加圧部12、12、…と、第2ロール20の加圧部22、22、…とは、第1ロール10及び第2ロール20が回転により、それぞれ互いに対向するようになっている。なお、加圧部の数は、1つのロールにおいて2~6つであってよい。第1ロール10の加圧部12及び第2第2ロール20の加圧部22には、それぞれ凹凸が形成されており、両ロールの凹凸は噛み合うようになっている。
【0048】
さらに図4図8を参照して、第1ロール10の表面(第1ロール10の加圧部12の表面)及び第2ロール20の表面(第2ロール20の加圧部22の表面)の構造について、より詳細に説明する。図4(a)は、第1ロール10の加圧部12の表面(図3の部分Iの表面)を、第1ロール10の径方向内方に向かって見た平面図であり、図4(b)は、第1ロール10の加圧部12と第2ロール20の加圧部22が対向する位置での、y-z平面の断面図(図3のIII-III断面)であり、図4(c)は、第2ロール20の加圧部22の表面(図3の部分IIの表面)を、第2ロール20の径方向内方に向かって見た平面図である。図5は、図4(b)における第1ロール10の加圧部12と第2ロールの加圧部22とが噛み合った状態を示す図である。図6は、図4(b)におけるIV-IV線断面図であり、図7は、図4(b)におけるV-V線断面図である。図6及び図7はいずれも、x-z平面で切った断面ということになる。さらに、図8は、図5の部分VIの拡大図である。
【0049】
図4(a)及び(b)に示すように、第1ロール10の加圧部12の表面には、ロールの径方向外方に突出する複数の凸部15、15、…が形成されている。第1ロール10の凸部15、15、…は、x方向及びy方向でそれぞれ離隔して設けられている。凸部15、15、…間は、凹部16、16、…となっている。一方、図4(c)及び(b)に示すように、第2ロール20の加圧部22の表面にも、ロールの径方向外方に突出する複数の凸部25、25、…が形成されている。第2ロール20の凸部25、25、…は、x方向では離隔して設けられているが、y方向には連続して延在しており、y方向に細長の形状を有している。凸部25、25、…間は、凹部26、26、…となっている。
【0050】
第1ロール10の加圧部12と第2ロール20の加圧部22とは、図4(b)及び図5に示すように、第1ロール10の加圧部12の凸部15が、第2ロール20の加圧部22の凹部26と噛み合い可能に構成され、配置されている。また、第1ロールの加圧部12の凹部16が、第2ロール20の加圧部22の凸部25と噛み合い可能になっていてよい。このように、第1ロール10における凹凸と第2ロール20における凹凸とがy方向に連続して噛み合うので、両ロール間で挟圧される包装シート同士も噛み合うように変形できる。従来、難融着材からなる包装シートを使用した場合のシール部の形成は、例えば一方のロールが平坦なアンビルロールになっているような従来のシール形成手段では難しかったが、難融着材製の包装シートであっても、融着に頼らずシール部を形成できる。なお、本明細書において、第1ロール10の加圧部12の表面の凹凸と、第2ロール20の加圧部12の表面の凹凸との噛み合い若しくは噛み合せを、単に第1ロール10の加圧部12と第2ロール20の加圧部22との噛み合い若しくは噛み合せ、或いは第1ロール10と第2ロール20との噛み合い若しくは噛み合せとも言う場合がある。また、第1ロール10の加圧部12の表面の凹凸と、第2ロール20の加圧部12の表面の凹凸との間隔を、単に第1ロール10の加圧部12と第2ロール20の加圧部22との間隔、或いは第1ロール10と第2ロール20との間隔と言う場合がある。
【0051】
包装シート9が挟まれていない状態での第1ロール10と第2ロール20との噛み合せ時では、第1ロール10の加圧部12と第2ロールの加圧部22との間がぴったり密着するのではなく、両者間に多少の隙間がある方が好ましい。これにより、表面の凹凸に過度な負荷が掛かることを防止して摩耗等を防ぐことができる。
【0052】
包装シート9(包装シート長尺体9A)を両ロール10、20で挟圧する際、圧着の機構は、場所によってやや異なる。包装シート9が、対向する第1ロール10側の側面17と第2ロール20側の側面27との間で挟圧される場合、ロール10、20の回転に伴う両ロールの凹凸の噛み合いの過程で、包装シート9には、側面17、27に垂直な方向での押し付け力のみならず、側面17、27に沿った、すなわち包装シートの面に沿った方向に剪断的な力も掛かる。このため、包装シート同士が多少面方向に擦れて、シート表面の繊維同士の一部が絡まるようになり、包装シートの表面同士の相互作用が増大し得る。これに対し、対向する第1ロール10の凸部15の頂面15Tと、第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間の位置では、包装シートに掛かる力は専ら厚み方向zでの押圧力である。よって、対向する側面17、27間の位置で、より強い圧着強度がもたらされる。
【0053】
さらに、本形態では、図8に示すように、対向する第1ロール10の凸部15の側面17と、第2ロール20の凹部26の側面27との間隔(Gs)が、対向する第1ロール10の凸部15の頂面15Tと、第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間隔(Gt)より小さくなっている(Gs<Gt)。よって、第1ロール10及び第2ロール20による包装シート9(又は包装シート長尺体9A)の挟圧時には、間隔の狭い対向する側面同士の間で優先的に圧着を起こすことができる。このように、本形態によれば、より強い圧着強度をもたらし得る位置での圧着を優先的に行うことができるので、得られる個装吸収性物品100のシール部5のシール強度を高めることができる。上記のGs及びGtは、被加工物を挟んでいない状態での噛み合せ時の設定間隔であってよい。よって、ロール10、20同士を最も近付けた際に、所定のGs、Gtを有するように加圧部12、22を設計できる。
【0054】
また、Gs<Gtとすることで、以下のような利点も得られる。個装吸収性物品においては、シール部5が形成される縁部において、包装シートの重なり枚数が異なる領域が生じることがある。例えば、図1に示すような三つ折りの個装吸収性物品100では、横方向xの縁部において、包装シート9の重なり枚数が2枚の領域と、3枚の領域とが存在している。図1に示す例では、第2領域R2と、第1領域R1と第2領域R2との間の包装シート9の領域である第3領域(図示せず)との2枚重ねとなっている薄領域ZN2と、第1領域R1、第2領域R2、及び第3領域の3枚重ねとなっている厚領域ZN3とがある。このような重なり枚数の違いがあっても、包装シートが融着若しくは軟化可能な材料である場合には、ロールにより挟圧されると容易に変形して厚み方向に薄くなるので、シール部形成時におけるロール間の間隔(ロールの凹凸同士の間隔)が、予め設定しておいた所望の間隔に近付けることが可能である。これに対し、紙等の難融着材料からなる包装シートを使用した場合、包装シート自体が変形し難いので、挟圧により包装シートの厚み自体が薄くなり難い。そのため、包装シート挟圧時のロール間の厚み方向の間隔を、所望の間隔にまで縮めることができず、例えば厚領域ZN3において挟まれた包装シートの厚みによって、シール形成時のロール間の間隔が決まってしまう。そうすると、薄領域ZN2に対応する区間では、厚領域ZN3における包装シートの厚みよりも、ロール間の間隔を縮めることが難しく、すなわち所望の設定間隔まで縮めることができない。別の言い方をすると、厚領域ZN3の包装シートの厚みによって、薄領域ZN2の圧着が阻害されてしまう。その場合、薄領域ZN2において包装シートの挟圧を十分に行うことができず、圧着部を形成できない又は圧着部の圧着強度が弱くなってしまうことがある。しかしながら、上述のように、対向する第1ロール10側の側面17と第2ロール20側の側面27との間では、包装シートが引き伸ばされ且つ包装シート同士の擦り合いも生じ易いので、第1ロール10の凸部15の頂面15Tと、第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間で圧着した場合に比べて、包装シートを圧縮し易く、包装シートの重なり枚数の違いの影響を受け難い。よって、Gs<Gtとして、第1ロールの凸部の側面と第2ロールの凹部の側面との間で優先的に圧着を行うようにすることで、包装シートの重なり枚数の違いがあっても、重なり枚数の少ない領域で圧着部が形成されない又は圧着部の圧着強度が弱くなることを回避できる。
【0055】
なお、本明細書で、第1ロール10の凸部15の側面17は、当該凸部15に隣接する凹部16の側面でもあり、第2ロール20の凹部26の側面27は、当該凹部26に隣接する凸部25の側面でもある。
【0056】
上記の間隔Gs、Gtは、用いられる包装シート9の厚みによって適宜決められる。GsとGtとの差(ΔG=Gt-Gs)は、用いられる包装シート9一枚の厚みの、好ましくは90%~200%、より好ましくは100%~150%であってよい。これにより、包装シートの重なり枚数が異なる領域があっても、特に重なり枚数の違いが一枚である場合に、重なり枚数の少ない領域での圧着が弱くなったり、或いは重なり枚数の多い領域での圧着が過度に強くなって包装シートが損傷したりする可能性を低減できる。また、例えば、Gt-Gsは、好ましくは40~200μm、より好ましくは60~100μmとすることができる。
【0057】
対向する第1ロール10の凸部15の側面17と第2ロール20の凹部26の側面27との間隔(Gs)は、被加工物を挟んでいない状態で、例えば、好ましくは0.005~0.5mm、より好ましくは0.01~0.1mmであってよい。なお、Gsはゼロとすることもできる。対向する第1ロール10の凸部15の頂面15Tと第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間隔(Gt)は、例えば、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.05~0.5mmであってよい。Gs及びGtを上記範囲は、厚み100μm以下の比較的薄い包装シートを使用する場合に好適である。
【0058】
図4に示すように、第1ロール10の加圧部12の凸部15、15、…の軸方向yのピッチP1yは、0.5~4.0mmであってよく、製品流れ方向xのピッチP1xも0.5~4.0mmであってよい。図示の例では、第1ロール10の凸部15、15、…の軸方向yのピッチP1y及び製品流れ方向xのピッチP1xは同じあってもよいし、異なっていてもよい。また、第2ロール20の加圧部22の凸部25、25、…の軸方向yのピッチP2yは、第1ロール10の加圧部12の凸部15、15、…の軸方向yのピッチP1yと同じであり、0.5~4.0mmであってよい。
【0059】
さらに、第1ロール10の凸部15の高さh1は0.3~1.2mmであってよく、第2ロール20の凸部25の高さh2(凹部26の深さ)も0.3~1.2mmであってよい(図4及び図8)。凸部15、25が上記範囲の高さを有することで、シール部5、5のための十分な圧着強度が得られ、且つ包装シートの破れ等も防止できる。また、h1とh2とを同じとすることで、第1ロール10の凸部15の頂面15Tと第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間、及び第1ロール10の凹部26の底面16Bと第2ロール20の凸部25の頂面25Tとの間でも、上述の側面17、27間の圧着よりは圧着強度は弱くなるが圧着が形成できる。これにより、軸方向y(個装吸収性物品100における縦方向y)にわたって、包装シート同士が圧着されてなる圧着部を連続して形成される。
【0060】
図4(b)、図5及び図8に示すように、第1ロール10の凸部15の、y-z平面で切った断面の形状は、凸部15の突出方向側の底辺がより短い略等脚台形となっていてよい。第2ロール20の凸部25の、y-z平面で切った断面の形状も、凸部25の突出方向側の底辺がより短い略等脚台形となっていてよい。なお、台形の頂点は、図示のように丸められていてもよい。
【0061】
なお、y-z断面で見て、第1ロール10の加圧部12の凹凸の側面17(凸部15の側面17)は、傾斜角度は、厚み方向zに対して10~30°であってよい。同様に、第1ロール10の加圧部12の凹凸の側面17(凸部15の側面17)の傾斜角度も、厚み方向zに対して10~30°であってよい。さらに、上述のような側面同士の間での包装シートの面状での圧着を促進させるためには、向かい合う第1ロール10側の側面17の傾斜方向と第2ロール20側の側面27の傾斜方向とは平行になっていることが好ましい。
【0062】
図9に、図4(a)の部分VIIの拡大図、すなわち第1ロール10の凸部15を拡大した平面図を示す。図9に示すように、凸部15は、頂面15Tと、側面17とを備えているが、側面17は、y方向に並んだ側面17y、17yと、x方向に並んだ側面17x、17xとを含む。y方向に並んだ側面17y、17yには梨地模様を付しており、第2ロール20との噛み合いの際には、側面17y、17yと対向する第2ロールの側面27、27との間で、より強い圧着強度の圧着部を形成できる。
【0063】
(変形例)
図10を参照して、本形態の変形例によるシール部形成手段(シール部形成装置)50について説明する。図10の中央には、図1のIX-IX断面図、すなわち個装吸収性物品100の横方向xの縁部を縦方向yに切った断面を示す。図10の中央の断面図及び図1に示すように、個装吸収性物品100には、包装シート9の重なり枚数が2枚である薄領域ZN2と、包装シート9の重なり枚数が3枚である厚領域ZN3とを有していてよい。本変形例によるシール部形成手段(シール部形成装置)50に含まれる第1ロール10及び第2ロール20は、個装吸収性物品100における上記の薄領域ZN2及び厚領域ZN3にそれぞれ対応して、表面の凹凸の構成が異なる部分を有する。より具体的には、図10に示すように、第1ロール10の加圧部12及び第2ロール20の加圧部22は、薄領域ZN2に対応する薄領域対応部52と、厚領域ZN3に対応する厚領域対応部53とを有していてよい。薄領域対応部52と厚領域対応部53とでは、対向する第1ロール10の凸部15の側面17と第2ロール20の凹部26の側面27との間隔(Gs)が異なっている。薄領域対応部52における第1ロール10側の側面17と第2ロール20側の側面27との間隔(Gs2)は、厚領域対応部53における第1ロール10側の側面17と第2ロール20側の側面27との間隔(Gs3)より小さくなっていてよい(Gs2<Gs3)。これにより、予め、Gsの大きさを、包装シートの重なり枚数に応じて、軸方向yで場所により変えておくことで、包装シートが厚み方向に圧縮され難い材料であっても、重ねられた包装シート9の合計の厚みが小さい領域(薄領域ZN2)において、第1ロール10と第2ロール20との間隔を詰めることができ、より確実に圧着部を形成できる。
【0064】
さらに、対向する第1ロール10の凸部15の側面17と第2ロール20の凹部26の側面27との間隔(Gs)と、対向する第1ロール10の凸部15の頂面15Tと第2ロール20の凹部26の底面26Bとの間隔(Gt)の差(ΔG=Gs-Gt)も、薄領域対応部52と厚領域対応部53とで異なっていてよい。例えば、薄領域対応部52におけるGs-GtをΔG2とし、厚領域対応部53におけるGs-GtをΔG3とした場合、厚領域対応部53におけるΔG3の方が、薄領域対応部52におけるΔG2よりも大きくなっていてよい。これにより、厚領域対応部53においては、側面17、27同士の間隔と、頂面15Tと底面26Bとの間隔との差をより広げ、比較的厚い包装シートを用いた場合であっても、シール形成時に、側面17、27同士の間で優先的に圧着するという効果を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 吸収性物品
5 シール部
8 止着テープ
9 包装シート
10 第1ロール
12 第1ロールの加圧部
15 第1ロールの凸部
15T 第1ロールの凸部の頂面
16 第1ロールの凹部
16B 第1ロールの凹部の底面
17 第1ロールの凸部(又は凹部)の側面
20 第2ロール
22 第2ロールの加圧部
25 第2ロールの凸部
25T 第2ロールの凸部の頂面
26 第2ロールの凹部
26B 第2ロールの凹部の底面
27 第2ロールの凹部(又は凸部)の側面
40 包装部
50 シール形成手段
60 切断手段
80 個装吸収性物品の製造装置
100 個装吸収性物品
e1 縦方向の一端
e2 縦方向の他端
F1 第1折り線
F2 第2折り線
R1 第1領域
R2 第2領域
x 製品流れ方向、包装シートの横方向
y 軸方向、包装シートの縦方向
z 挟圧方向、厚み方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10