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特開2024-78530車両接近報知装置および該装置を備えたピッキングトラック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078530
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】車両接近報知装置および該装置を備えたピッキングトラック
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240604BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20240604BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   B60Q 1/52 20060101ALI20240604BHJP
   B66F 9/06 20060101ALI20240604BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B60Q1/26 Z
B60Q1/00 C
B60Q1/52
B66F9/06 B
B66F9/075 J
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190955
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【テーマコード(参考)】
3F333
3K339
【Fターム(参考)】
3F333AA15
3F333AB13
3F333CA28
3F333FE09
3K339AA31
3K339BA01
3K339BA09
3K339BA10
3K339BA22
3K339BA30
3K339CA21
3K339DA01
3K339EA03
3K339EA05
3K339FA04
3K339GB21
3K339KA01
3K339KA11
3K339KA27
3K339KA39
3K339MC42
(57)【要約】
【課題】照明部の点灯状態が切り替わる際に周辺にいる者に不快感を与えない車両接近報知装置およびピッキングトラックを提供する。
【解決手段】本発明に係る車両接近報知装置は、車両の昇降可能な運転台に設けられる、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、車両の昇降不能な車両本体に設けられる、上記路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、運転台の昇降位置Hが予め定められた閾値Hth未満であるときは第1照明部を点灯させるとともに第2照明部を消灯させ、昇降位置Hが閾値Hth以上であるときは第1照明部を消灯させるとともに第2照明部を点灯させる制御部とを備えている。制御部は、昇降位置が閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときの第1照明部および第2照明部の点灯状態の変更制御を、予め定められた遅延時間tdが経過した後に実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の昇降可能な運転台に設けられる、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、
前記車両の昇降不能な車両本体に設けられる、前記路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、
前記運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、前記第1照明部を点灯させるとともに前記第2照明部を消灯させ、前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部を消灯させるとともに前記第2照明部を点灯させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記昇降位置が前記閾値未満となったときの前記第1照明部および前記第2照明部の点灯状態の変更制御、および前記昇降位置が前記閾値以上となったときの前記第1照明部および前記第2照明部の点灯状態の変更制御を、予め定められた遅延時間が経過した後に実行する
ことを特徴とする車両接近報知装置。
【請求項2】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が増加するにしたがって短くなるように定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両接近報知装置。
【請求項3】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が予め定められた第1速度閾値未満であるときは第1遅延時間となり、前記昇降速度が前記第1速度閾値以上であるときは前記第1遅延時間よりも短い第2遅延時間となるように定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両接近報知装置。
【請求項4】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が予め定められた第2速度閾値未満であるときは第2遅延時間となり、前記昇降速度が前記第2速度閾値以上であるときは前記第2遅延時間よりも短い第3遅延時間となるように定められている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両接近報知装置。
【請求項5】
前記第1照明部および前記第2照明部は、前記昇降位置が前記閾値に等しいときに、前記第1報知光および前記第2報知光の軸が前記路面上で交わるように設けられる
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両接近報知装置。
【請求項6】
前記第2報知光の色は、前記第1報知光の色と異なっている
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両接近報知装置。
【請求項7】
走行装置を有する車両本体と、
前記車両本体の後方に設けられたマストと、
前記マストに沿って昇降可能な運転台と、
前記運転台に設けられた、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、
前記車両本体に設けられた、前記路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、
前記運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、前記第1照明部を点灯させるとともに前記第2照明部を消灯させ、前記昇降位置が前記閾値以上であるときは、前記第1照明部を消灯させるとともに前記第2照明部を点灯させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記昇降位置が前記閾値未満となったときの前記第1照明部および前記第2照明部の点灯状態の変更制御、および前記昇降位置が前記閾値以上となったときの前記第1照明部および前記第2照明部の点灯状態の変更制御を、予め定められた遅延時間が経過した後に実行する
ことを特徴とするピッキングトラック。
【請求項8】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が増加するにしたがって短くなるように定められている
ことを特徴とする請求項7に記載のピッキングトラック。
【請求項9】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が予め定められた第1速度閾値未満であるときは第1遅延時間となり、前記昇降速度が前記第1速度閾値以上であるときは前記第1遅延時間よりも短い第2遅延時間となるように定められている
ことを特徴とする請求項7に記載のピッキングトラック。
【請求項10】
前記遅延時間は、前記運転台の昇降速度が予め定められた第2速度閾値未満であるときは第2遅延時間となり、前記昇降速度が前記第2速度閾値以上であるときは前記第2遅延時間よりも短い第3遅延時間となるように定められている
ことを特徴とする請求項7に記載のピッキングトラック。
【請求項11】
前記第1照明部および前記第2照明部は、前記昇降位置が前記閾値に等しいときに、前記第1報知光および前記第2報知光の軸が前記路面上で交わるように設けられている
ことを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか一項に記載のピッキングトラック。
【請求項12】
前記第2報知光の色は、前記第1報知光の色と異なっている
ことを特徴とする請求項7~請求項10のいずれか一項に記載のピッキングトラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の路面に向けて光を照射することより車両の接近を周辺にいる者に報知する車両接近報知装置、および該装置を備えたピッキングトラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1照明部と第2照明部とを含む車両接近報知装置を備えたピッキングトラックが知られている(例えば、特許文献1参照)。第1照明部は、車両の昇降可能な運転台に設けられ、運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるとき、すなわち低揚高時に点灯し、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する。一方、第2照明部は、車両の昇降不能な車両本体に設けられ、運転台の昇降位置が上記閾値以上であるとき、すなわち高揚高時に点灯し、車両後方の路面に向かって第2報知光を照射する。この車両接近報知装置およびピッキングトラックによれば、第1照明部の第1報知光が路面に十分に届かなくなる高揚高時に該第1照明部に代わって第2照明部が第2報知光を路面に向かって照射するので、車両の接近を周辺にいる者に確実に報知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6984987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の車両接近報知装置およびピッキングトラックは、運転台の上昇により該運転台の昇降位置が閾値以上となった直後、および運転台の下降により該運転台の昇降位置が閾値未満となった直後に、第1照明部および第2照明部が点滅を繰り返すいわゆるチャタリングが発生し、周辺にいる者に不快感を与えることがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、照明部の点灯状態が切り替わる際に周辺にいる者に不快感を与えない車両接近報知装置およびピッキングトラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両接近報知装置は、車両の昇降可能な運転台に設けられる、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、車両の昇降不能な車両本体に設けられる、上記路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、第1照明部を点灯させるとともに第2照明部を消灯させ、昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部を点灯させる制御部と、を備え、制御部は、昇降位置が閾値未満となったときの第1照明部および第2照明部の点灯状態の変更制御、および昇降位置が閾値以上となったときの第1照明部および第2照明部の点灯状態の変更制御を、予め定められた遅延時間が経過した後に実行する、ことを特徴とする。
【0007】
上記車両接近報知装置の遅延時間は、運転台の昇降速度が増加するにしたがって短くなるように定められていることが好ましい。
【0008】
上記車両接近報知装置の遅延時間は、運転台の昇降速度が予め定められた第1速度閾値未満であるときは第1遅延時間となり、昇降速度が第1速度閾値以上であるときは第1遅延時間よりも短い第2遅延時間となるように定められていることが好ましい。
【0009】
上記車両接近報知装置の遅延時間は、運転台の昇降速度が予め定められた第2速度閾値未満であるときは第2遅延時間となり、昇降速度が第2速度閾値以上であるときは第2遅延時間よりも短い第3遅延時間となるように定められていることが好ましい。
【0010】
上記車両接近報知装置の第1照明部および第2照明部は、昇降位置が閾値に等しいときに、第1報知光および第2報知光の軸が路面上で交わるように設けられることが好ましい。
【0011】
上記車両接近報知装置の第2報知光の色は、第1報知光の色と異なっていることが好ましい。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るピッキングトラックは、走行装置を有する車両本体と、車両本体の後方に設けられたマストと、マストに沿って昇降可能な運転台と、運転台に設けられた、車両後方の路面に向かって第1報知光を照射する第1照明部と、車両本体に設けられた、上記路面に向かって第2報知光を照射する第2照明部と、運転台の昇降位置が予め定められた閾値未満であるときは、第1照明部を点灯させるとともに第2照明部を消灯させ、昇降位置が閾値以上であるときは、第1照明部を消灯させるとともに第2照明部を点灯させる制御部と、を備え、制御部は、昇降位置が閾値未満となったときの第1照明部および第2照明部の点灯状態の変更制御、および昇降位置が閾値以上となったときの第1照明部および第2照明部の点灯状態の変更制御を、予め定められた遅延時間が経過した後に実行する、ことを特徴とする。
【0013】
上記ピッキングトラックの遅延時間は、運転台の昇降速度が増加するにしたがって短くなるように定められていることが好ましい。
【0014】
上記ピッキングトラックの遅延時間は、運転台の昇降速度が予め定められた第1速度閾値未満であるときは第1遅延時間となり、昇降速度が第1速度閾値以上であるときは第1遅延時間よりも短い第2遅延時間となるように定められていることが好ましい。
【0015】
上記ピッキングトラックの遅延時間は、運転台の昇降速度が予め定められた第2速度閾値未満であるときは第2遅延時間となり、昇降速度が第2速度閾値以上であるときは第2遅延時間よりも短い第3遅延時間となるように定められていることが好ましい。
【0016】
上記ピッキングトラックの第1照明部および第2照明部は、昇降位置が閾値に等しいときに、第1報知光および第2報知光の軸が路面上で交わるように設けられていることが好ましい。
【0017】
上記ピッキングトラックの第2報知光の色は、第1報知光の色と異なっていることが好ましい。
【0018】
なお、本明細書中の用語「点灯」には、周辺にいる者が不快に感じることのないように配慮された規則的な点滅が含まれることとする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、照明部の点灯状態が切り替わる際に周辺にいる者に不快感を与えない車両接近報知装置およびピッキングトラックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例に係るピッキングトラックの模式的な側面図である。
図2】第1実施例に係る車両接近報知装置のブロック図である。
図3】第1実施例における各照明部の点灯状態および照射距離と昇降位置との関係を示すグラフである。
図4】第1実施例に係るピッキングトラックの、(A)低揚高時の模式的な側面図、(B)高揚高時の模式的な側面図である。
図5】第1実施例における各照明部の点灯状態および昇降位置の時間変化の一例を示すグラフである。
図6】本発明の第2実施例に係る車両接近報知装置のブロック図である。
図7】第2実施例における遅延時間と昇降速度との関係を示すグラフである。
図8】第2実施例における各照明部の点灯状態および昇降位置の時間変化の一例を示すグラフである。
図9】本発明の第3実施例に係る車両接近報知装置のブロック図である。
図10】第3実施例における遅延時間と昇降速度との関係を示すグラフである。
図11】第3実施例における各照明部の点灯状態および昇降位置の時間変化の一例を示すグラフである。
図12】本発明の第4実施例に係る車両接近報知装置のブロック図である。
図13】第4実施例における遅延時間と昇降速度との関係を示すグラフである。
図14】第4実施例における各照明部の点灯状態および昇降位置の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る車両接近報知装置およびピッキングトラックの実施例について説明する。
【0022】
[第1実施例]
図1に、本発明の第1実施例に係るピッキングトラック10を示す。同図に示すように、本実施例に係るピッキングトラック10は、走行装置を有する車両本体11と、車両本体11の後方に設けられた左右一致のレッグ12,12およびマスト13と、マスト13に沿って昇降可能な運転台14とを備えている。また、運転台14は、オペレータによって操作される各種レバー等からなる操作盤15と、オペレータの転落を防ぐための転落ガード16と、後方に向かって延びた左右一対のフォーク17,17と、オペレータの頭上を覆うヘッドガード18とを有している。フォーク17,17は、運転台14の床板に設けられている。
【0023】
本実施例に係るピッキングトラック10は、さらに、車両接近報知装置20Aを構成する制御部21A、第1照明部22および第2照明部23と、昇降位置検知部30とを備えている。
【0024】
第1照明部22は、車両後方の路面Fに向かって第1報知光L1を照射するLEDライトからなる。路面Fに現れる第1報知光L1の像は、輪郭が曖昧な円状であってもよいし、第1照明部22に設けられたレンズやスリットの作用により、輪郭が明確なスポット状、ライン状または矢印状とされていてもよい。また、第1報知光L1の色は、報知効果を高めるために、路面Fに対して目立つ色であることが好ましい。本実施例では、第1報知光L1の色は青である。
【0025】
第1照明部22は、不図示の適当なブラケットを介してヘッドガード18の後端部に設けられている。第1照明部22は、その照射方向(すなわち、第1報知光L1の軸)が鉛直線Pに対して角度θ1をなすように設けられている。
【0026】
第2照明部23は、車両後方の路面Fに向かって第2報知光L2を照射するLEDライトからなる。路面Fに現れる第2報知光L2の像は、第1報知光L1の像と同様、輪郭が曖昧な円状であってもよいし、輪郭が明確なスポット状、ライン状または矢印状であってもよい。また、第2報知光L2の色は、報知効果を高めるために、路面Fに対して目立つ色であることが好ましく、第1報知光L1の色と異なっていることがさらに好ましい。本実施例では、第2報知光L2の色は赤である。
【0027】
第2照明部23は、不図示の適当なブラケットを介して車両本体11の後方に設けられている。第2照明部23は、その照射方向(すなわち、第2報知光L2の軸)が鉛直線Pに対して角度θ2(ただし、θ2>θ1)をなすように設けられている。
【0028】
図2に示すように、制御部21Aは、昇降位置検知部30が検知した運転台14の昇降位置Hに応じて第1照明部22および第2照明部23の点灯状態を変化させるように構成されている。
【0029】
なお、図1では、車両本体11の内部に制御部21Aが設けられているが、制御部21Aの位置は任意に変更することができる。例えば、制御部21Aは、運転台14に設けられていてもよい。また、図1では、車両本体11の内部に昇降位置検知部30が設けられているが、この位置も任意に変更することができる。
【0030】
続いて、特に図1図3および図4を参照しながら、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aの動作をさらに詳しく説明する。
【0031】
(1)昇降位置Hが予め定められた閾値Hth未満である場合
この場合、制御部21Aは、第1照明部22を点灯させるとともに第2照明部23を消灯させる。これにより、路面Fに第1報知光L1による青色の像が現れる。なお、「昇降位置Hが閾値Hth未満である場合」の一例は、図5(A)に示す昇降位置Hが下限値Hminである場合である。
【0032】
フォーク17,17の先端から第1報知光L1の像の中心までの距離D1を「第1照射距離」と呼ぶ。図3に示すように、第1照射距離D1は、昇降位置Hに応じて変化する。より詳しくは、第1照射距離D1は、昇降位置Hが高くなると長くなる。
【0033】
本実施例では、閾値Hthは1mである。閾値Hthは、昇降位置Hが該閾値Hthに等しいときに、第2報知光L2が運転台14によって遮られないような値に設定されている。
【0034】
(2)昇降位置Hが予め定められた閾値Hth以上である場合
この場合、制御部21Aは、第1照明部22を消灯させるとともに第2照明部23を点灯させる。これにより、路面Fに第2報知光L2による赤色の像が現れる。なお、「昇降位置Hが閾値Hth以上である場合」の一例は、図5(B)に示す昇降位置Hが上限値Hmaxである場合である。
【0035】
フォーク17,17の先端から第2報知光L2の像の中心までの距離D2を「第2照射距離」と呼ぶ。本実施例では、昇降位置Hが閾値Hthに等しいときに、第1照射距離D1と第2照射距離D2とが等しくなるように、閾値Hthおよび角度θ1,θ2が決定されている(図1および図3参照)。つまり、本実施例では、昇降位置Hが閾値Hthに等しいときに、第1報知光L1および第2報知光L2の軸が路面F上で交わるようになっている。これにより、昇降位置Hが閾値Hthに等しくなったときに報知光の像が瞬間的に移動して、周辺にいる者が像を見失ってしまうのを防ぐことができる。
【0036】
図3に示すように、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aでは、昇降位置Hが閾値Hthと上限値Hmaxとの間で変化しても第2照射距離D2は変化しない。このため、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aによれば、路面Fに常に十分な報知光を届けることができる。言い換えると、ピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aによれば、高揚高時の報知効果の低下を防ぐことができる。
【0037】
また、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aでは、昇降位置Hに応じて路面Fに現れる像の色が変化する。ピッキングトラック10のオペレータは、高揚高時に周辺にいる者に気付きにくくなる傾向にあるところ、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aによれば、路面Fに現れている像の色に基づいて周辺にいる者が高揚高であることに気付き、周囲をより警戒することで、ピッキングトラック10との接触を自ら回避することができる。
【0038】
このように、制御部21Aは、運転台14の昇降位置Hが閾値Hth未満であるときは、第1照明部22を点灯させるとともに第2照明部23を消灯させ、昇降位置Hが閾値Hth以上であるときは、第1照明部22を消灯させるとともに第2照明部23を点灯させる。ただし、制御部21Aは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を即座に実行するのではなく、図5に示すように、予め定められた遅延時間tdが経過した後に実行する。
【0039】
すなわち、本実施例では、昇降位置Hが時刻t1に閾値Hth以上となった場合、該時刻t1から遅延時間tdが経過した時刻に第1照明部22の点灯状態が点灯から消灯に切り替わるとともに第2照明部23の点灯状態が消灯から点灯に切り替わる。また、本実施例では、昇降位置Hが時刻t2に閾値Hth未満となった場合、該時刻t2から遅延時間tdが経過した時刻に第1照明部22の点灯状態が消灯から点灯に切り替わるとともに第2照明部23の点灯状態が点灯から消灯に切り替わる。このため、本実施例に係るピッキングトラック10および車両接近報知装置20Aによれば、昇降位置Hが閾値Hth未満となった直後、および閾値Hth以上となった直後に、第1照明部22および第2照明部23が不快な点滅を繰り返すいわゆるチャタリングの発生を防ぐことができる。
【0040】
[第2実施例]
図6に、本発明の第2実施例に係る車両接近報知装置20Bを示す。車両接近報知装置20Bは、制御部21Aの代わりに制御部21Bを備えている点において図2に示した第1実施例に係る車両接近報知装置20Aと相違しているが、他の点においては車両接近報知装置20Aと共通している。
【0041】
また、本発明の第2実施例に係るピッキングトラックは、車両接近報知装置20Aの代わりに車両接近報知装置20Bを備えている点において図1に示した第1実施例に係るピッキングトラック10と相違しているが、他の点においてはピッキングトラック10と共通している。
【0042】
制御部21Bは、昇降位置検知部30が検知した運転台14の昇降位置Hに基づいて該運転台14の昇降速度VHを求める。例えば、昇降位置検知部30が昇降位置Hを20回/秒の頻度で検知する場合、制御部21Bは、最新の昇降位置H(例えばH1)と0.05秒前に検知された昇降位置H(例えばH2)とに基づき、次式により昇降速度VHを求める。

VH=|(H1-H2)/0.05|
【0043】
また、制御部21Bは、予め定められた遅延時間tdと昇降速度VHとの関係(図7参照)に基づいて、上式で求めた昇降速度VHに対応する遅延時間tdを求める。本実施例では、遅延時間tdは、昇降速度VHが増加するにしたがって短くなるように定められている。
【0044】
そして、制御部21Bは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を即座に実行するのではなく、図7に示された関係から求めた遅延時間tdが経過した後に実行する。
【0045】
図8を参照しながら、制御部21Bによる変更制御のタイミングについて具体的に説明する。
【0046】
(1)昇降速度VHが標準的な速度である場合
この場合、制御部21Bは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td2が経過した後に実行する(図8(B)参照)。
【0047】
(2)昇降速度VHが比較的遅い速度である場合
この場合は、昇降速度VHが標準的な場合に比べてチャタリングが発生する期間が長いと予想される。このため、制御部21Bは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td1(ただし、td1>td2)が経過した後に実行する(図8(A)参照)。
【0048】
(3)昇降速度VHが比較的速い速度である場合
この場合は、昇降速度VHが標準的な場合に比べてチャタリングが発生する期間が短いと予想される。このため、制御部21Bは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td3(ただし、td3<td2)が経過した後に実行する(図8(C)参照)。
【0049】
本実施例に係るピッキングトラックおよび車両接近報知装置20Bによれば、チャタリングが発生しない範囲で第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を可能な限り早期に実行することにより、報知効果の低下を防ぐことができる。
【0050】
[第3実施例]
図9に、本発明の第3実施例に係る車両接近報知装置20Cを示す。車両接近報知装置20Cは、制御部21Aの代わりに制御部21Cを備えている点において図2に示した第1実施例に係る車両接近報知装置20Aと相違しているが、他の点においては車両接近報知装置20Aと共通している。
【0051】
また、本発明の第3実施例に係るピッキングトラックは、車両接近報知装置20Aの代わりに車両接近報知装置20Cを備えている点において図1に示した第1実施例に係るピッキングトラック10と相違しているが、他の点においてはピッキングトラック10と共通している。
【0052】
制御部21Cは、第2実施例における制御部21Bと同様の手法で運転台14の昇降速度VHを求める。
【0053】
また、制御部21Cは、予め定められた遅延時間tdと昇降速度VHとの関係(図10参照)に基づいて、昇降速度VHに対応する遅延時間tdを求める。本実施例では、遅延時間tdは、昇降速度VHが第1速度閾値VHth1となったときにtd1からtd2へ、またはtd2からtd1へとステップ状に変化するように定められている。
【0054】
そして、制御部21Cは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を即座に実行するのではなく、図10に示された関係から求めた遅延時間tdが経過した後に実行する。
【0055】
図11を参照しながら、制御部21Cによる変更制御のタイミングについて具体的に説明する。
【0056】
(1)昇降速度VHが第1速度閾値VHth1以上である場合
この場合、制御部21Cは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td2が経過した後に実行する(図11(B),(C)参照)。
【0057】
(2)昇降速度VHが第1速度閾値VHth1未満である場合
この場合は、そうでない場合に比べてチャタリングが発生する期間が長いと予想される。このため、制御部21Cは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td1(ただし、td1>td2)が経過した後に実行する(図11(A)参照)。
【0058】
本実施例に係るピッキングトラックおよび車両接近報知装置20Cによれば、簡素化された制御で第2実施例に係るピッキングトラックおよび車両接近報知装置20Bに近い作用効果を得ることができる。
【0059】
[第4実施例]
図12に、本発明の第4実施例に係る車両接近報知装置20Dを示す。車両接近報知装置20Dは、制御部21Aの代わりに制御部21Dを備えている点において図2に示した第1実施例に係る車両接近報知装置20Aと相違しているが、他の点においては車両接近報知装置20Aと共通している。
【0060】
また、本発明の第4実施例に係るピッキングトラックは、車両接近報知装置20Aの代わりに車両接近報知装置20Dを備えている点において図1に示した第1実施例に係るピッキングトラック10と相違しているが、他の点においてはピッキングトラック10と共通している。
【0061】
制御部21Dは、第2実施例における制御部21B、および第3実施例における制御部21Cと同様の手法で運転台14の昇降速度VHを求める。
【0062】
また、制御部21Dは、予め定められた遅延時間tdと昇降速度VHとの関係(図13参照)に基づいて、昇降速度VHに対応する遅延時間tdを求める。本実施例では、遅延時間tdは、昇降速度VHが第2速度閾値VHth2(ただし、VHth2>VHth1)となったときにtd2からtd3へ、またはtd3からtd2へとステップ状に変化するように定められている。
【0063】
そして、制御部21Dは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を即座に実行するのではなく、図13に示された関係から求めた遅延時間tdが経過した後に実行する。
【0064】
図14を参照しながら、制御部21Dによる変更制御のタイミングについて具体的に説明する。
【0065】
(1)昇降速度VHが第2速度閾値VHth2未満である場合
この場合、制御部21Dは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td2が経過した後に実行する(図14(A),(B)参照)。
【0066】
(2)昇降速度VHが第2速度閾値VHth2以上である場合
この場合は、そうでない場合に比べてチャタリングが発生する期間が短いと予想される。このため、制御部21Dは、昇降位置Hが閾値Hth未満となったとき、および閾値Hth以上となったときに、第1照明部22および第2照明部23の点灯状態の変更制御を遅延時間td3(ただし、td3<td2)が経過した後に実行する(図14(C)参照)。
【0067】
本実施例に係るピッキングトラックおよび車両接近報知装置20Dによれば、簡素化された制御で第2実施例に係るピッキングトラックおよび車両接近報知装置20Bに近い作用効果を得ることができる。
【0068】
[変形例]
【0069】
以上、本発明に係る車両接近報知装置およびピッキングトラックの第1~第4実施例について説明してきたが、本発明の構成はこれらに限定されるものではない。
【0070】
例えば、図7図10および図13に示された遅延時間tdと昇降速度VHとの関係は、単なる例示に過ぎない。本発明では、昇降速度VHが増加するにしたがって遅延時間が2段階、3段階、・・・無段階に短くなっていくような任意の関係に基づいて遅延時間tdを求めることができる。
【0071】
また、第1照明部22は、運転台14の任意の位置(ヘッドガード18の後端部以外の位置)に設けられてもよい。
【0072】
また、第1照射距離D1と第2照射距離D2は、昇降位置Hが閾値Hthであるときに必ずしも一致しなくてもよい。
【0073】
また、第1報知光L1の色(青)および第2報知光L2の色(赤)は、単なる例示に過ぎない。例えば、本発明では、第1報知光L1および第2報知光L2の色が同一であってもよい。
【0074】
閾値Hth(1m)も、単なる例示に過ぎない。
【符号の説明】
【0075】
10 ピッキングトラック
11 車両本体
12 レッグ
13 マスト
14 運転台
15 操作盤
16 転落ガード
17 フォーク
18 ヘッドガード
20A,20B,20C,20D 車両接近報知装置
21A,21B,21C,21D 制御部
22 第1照明部
23 第2照明部
30 昇降位置検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14