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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078568
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240604BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20240604BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60K11/04 F
B60K11/04 B
F01P3/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191003
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 訓
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA05
3D038AA10
3D038AB09
3D038AC11
3D038AC12
3D038AC13
3D038AC14
3D038AC15
3D038AC22
(57)【要約】
【課題】コンパクトなレイアウトで、第1熱交換器および第2熱交換器を冷却する。
【解決手段】電動式作業機械としての油圧ショベルは、複数の電気機器と、複数の電気機器の少なくとも1つを通る冷媒を冷却する第1熱交換器と、複数の電気機器のいずれかによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油を冷却する第2熱交換器と、機体内部に外気を取り込むファンと、を備える。第1熱交換器は、ファンに対して、ファンによる外気の流れ方向の上流側に配置され、第2熱交換器は、ファンに対して、上記外気の流れ方向の下流側に配置される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気機器と、
前記複数の電気機器の少なくとも1つを通る冷媒を冷却する第1熱交換器と、
前記複数の電気機器のいずれかによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記作動油を冷却する第2熱交換器と、
機体内部に外気を取り込むファンと、を備え、
前記第1熱交換器は、前記ファンに対して、前記ファンによる前記外気の流れ方向の上流側に配置され、
前記第2熱交換器は、前記ファンに対して、前記外気の流れ方向の下流側に配置される、電動式作業機械。
【請求項2】
前記第2熱交換器は、前記ファンの一部と対向して配置される、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
一端部に第1開口部を有し、他端部に第2開口部を有する第1流路部をさらに備え、
前記第1流路部の前記第1開口部は、前記第2熱交換器に対して前記ファンとは反対側に位置する、請求項2に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
一端部に第3開口部を有し、他端部に第4開口部を有する第2流路部をさらに備え、
前記第2流路部の前記第3開口部は、前記ファンの回転軸方向から見て、前記第1流路部の前記第1開口部と並んで位置するとともに、前記第2熱交換器とずれて位置する、請求項3に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記複数の電気機器は、前記冷媒が通る水冷機器と、複数の空冷機器と、を含み、
前記複数の空冷機器のいずれかは、前記第2流路部の前記第4開口部に配置される、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記複数の空冷機器の他のいずれかは、前記第2流路部の壁面に配置される、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記複数の空冷機器の他のいずれかは、前記第2流路部の外側に配置される、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項8】
前記第4開口部は、下方に向かって開口している、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項9】
前記複数の空冷機器は、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを含み、
前記電動モータは、前記水冷機器と並んで配置される、請求項5に記載の電動式作業機械。
【請求項10】
前記複数の電気機器は、前記冷媒が通るバッテリユニットを含み、
前記バッテリユニットは、前記第2流路部と並んで配置される、請求項4から9のいずれかに記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動式油圧ショベルなどの電動式作業機械が種々提案されている。例えば特許文献1では、ラジエータを冷却するためのファンと、オイルクーラを冷却するためのファンとを別々に有する電動式油圧ショベルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-80708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ミニショベルのような後方小旋回型の小型の電動式作業機械においては、機関室内の各部材の配置スペースが限られている。このため、小型の電動式作業機械では、特許文献1のように、ラジエータおよびオイルクーラに対応して個別に冷却用のファンを設けることは通常困難である。したがって、小型の電動式作業機械では、コンパクトなレイアウトで、ラジエータおよびオイルクーラを冷却することが望まれる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、コンパクトなレイアウトで、ラジエータ(第1熱交換器)およびオイルクーラ(第2熱交換器)を冷却することができる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、複数の電気機器と、前記複数の電気機器の少なくとも1つを通る冷媒を冷却する第1熱交換器と、前記複数の電気機器のいずれかによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、前記作動油を冷却する第2熱交換器と、機体内部に外気を取り込むファンと、を備え、前記第1熱交換器は、前記ファンに対して、前記ファンによる前記外気の流れ方向の上流側に配置され、前記第2熱交換器は、前記ファンに対して、前記外気の流れ方向の下流側に配置される、電動式作業機械。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、コンパクトなレイアウトで、第1熱交換器および第2熱交換器を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
図2】上記油圧ショベルの電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
図3】上記油圧ショベルの機関室の内部の構成を示す平面図である。
図4】上記機関室の内部の構成を示す右側面図である。
図5】上記機関室の内部の構成を示す断面図である。
図6】上記機関室の内部の主要部の構成を拡大して示す斜視図である。
図7】上記油圧ショベルが備える風導部の斜視図である。
図8】上記風導部の斜視図である。
図9】上記風導部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0010】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である油圧ショベル(電動ショベル)1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。なお、本実施形態では、油圧ショベル1または上部旋回体4(特に機関室44)のことを、「機体」とも称する。
【0011】
ここで、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0012】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0013】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0014】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0015】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、操縦部41、旋回フレーム42、旋回モータ43、機関室44等が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。
【0016】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(図2参照)が配置される。油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(図2参照)によって駆動される。油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(図2参照)と呼ぶ。
【0017】
操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが運転座席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0018】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリユニットで構成され、電動モータ61を駆動するための電力を蓄える。バッテリユニット53は、複数のバッテリをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。また、上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と、外部電源である商用電源51とは、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、バッテリユニット53を充電することができる。
【0019】
上部旋回体4には、鉛バッテリ54がさらに設けられる。鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。鉛バッテリ54からの出力は、制御電圧として例えばシステムコントローラ67(図2参照)、ファン91(図6等参照)の駆動部、などに供給される。
【0020】
油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ73などの油圧機器と、電力で駆動されるアクチュエータとを併用した構成であってもよい。電力で駆動されるアクチュエータとしては、例えば、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータがある。
【0021】
〔2.電気系および油圧系の構成〕
図2は、油圧ショベル1の電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、電動モータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Drive Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、を備える。
【0022】
電動モータ61、充電器62、インバータ63、PDU64、ジャンクションボックス65、DC-DCコンバータ66、バッテリユニット53、および鉛バッテリ54は、電気機器ELを構成する。すなわち、油圧ショベル1は、複数の電気機器ELを備える。なお、複数の電気機器ELは、水冷の電気機器EL-Wおよび空冷の電気機器EL-Aを含むが、その詳細については後述する。システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成され、油圧ショベル1の各部の電気的な制御を行う。
【0023】
電動モータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65およびインバータ63を介して供給される電力により駆動される。電動モータ61は、永久磁石モータまたは誘導モータで構成される。電動モータ61は、旋回フレーム42上に配置される。
【0024】
充電器62(給電器とも呼ばれる)は、図1で示した商用電源51から給電ケーブル52を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて行われる。
【0025】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットである。ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記した充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65およびPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64およびジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0026】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される電圧は、鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67、ファン91の駆動部、などに供給される。
【0027】
電動モータ61の回転軸(出力軸)には、複数の油圧ポンプ71が接続される。複数の油圧ポンプ71は、可変容量型ポンプおよび固定容量型ポンプを含む。図2では、例として油圧ポンプ71を1つのみ図示している。各油圧ポンプ71は、作動油を収容(貯留)する作動油タンク74と接続されている。電動モータ61によって油圧ポンプ71が駆動されると、作動油タンク74内の作動油が、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁である。このように、油圧ショベル1は、複数の電気機器ELのいずれか(例えば電動モータ61)によって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプ71を備える。
【0028】
〔3.機関室の内部構成〕
図3および図4はそれぞれ、油圧ショベル1の機関室44の内部の構成を示す平面図および右側面図である。図5は、図3で示した機関室44の内部を、A-A’線を通る位置で上下方向に切断したときの断面図である。図6は、機関室44の内部の主要部の構成を拡大して示す斜視図である。なお、図3および図6では、筐体90および風導部100の内部の構成を明確にする目的で、筐体90の上面90a(図4図5参照)および風導部100の上面100a(図5参照)の図示を省略している。
【0029】
図3に示すように、本実施形態では、旋回フレーム42上に、防振部材80(図5参照)等を介して4つのバッテリユニット53が前後方向に並んで配置される。最も後方に位置するバッテリユニット53は、旋回フレーム42上で、左右方向の中央に位置する。残りの3つのバッテリユニット53は、最も後方に位置するバッテリユニット53に対して左方向にずれて配置される。これにより、平面視で半円形に形成された旋回フレーム42の後端縁付近の限られた狭いスペースに、複数のバッテリユニット53が効率よく配置される。なお、バッテリユニット53の数および配置は、本実施形態の例には限定されない。
【0030】
図5に示すように、旋回フレーム42上で、複数のバッテリユニット53の右側には、上記した電動モータ61、油圧ポンプ71等が配置されている。以下、機関室44の内部の構成の詳細について説明する。
【0031】
図6に示すように、油圧ショベル1は、ファン91を備える。ファン91は、筐体90の内部に回転可能に支持され、回転によって機体内部に外気を取り込む。すなわち、本実施形態のファン91は、吸い込み型である。筐体90は枠形状であり、左右方向の両端が開口している。ファン91の回転軸CAは、左右方向に延びる。ファン91(筐体90)の下方には、油圧ポンプ71が位置する。油圧ポンプ71は、油圧ホースH(図4参照)を介して作動油タンク74と接続される。
【0032】
筐体90の左側、つまり、筐体90とバッテリユニット53(特に最も前方に位置するバッテリユニット53)との間には、風導部100が配置される。なお、風導部100の詳細については後述する。上述のインバータ63およびDC-DCコンバータ66などの電気機器ELは、風導部100(特に後述の第2流路部120)に取り付けられる。
【0033】
図3および図4に示すように、ファン91(筐体90)および油圧ポンプ71の後方側には、上述の充電器62が配置される。
【0034】
油圧ショベル1は、ラジエータ92と、オイルクーラ93と、をさらに備える。ラジエータ92は、図3等で示した複数の電気機器ELの少なくとも1つ(例えばバッテリユニット53)を通る冷媒を冷却する第1熱交換器である。ラジエータ92において熱交換により冷媒を冷却し、ラジエータ92から上記冷媒をバッテリユニット53に供給することにより、バッテリユニット53を冷却(水冷)することができる。上記の冷媒は、例えば冷却水である。
【0035】
オイルクーラ93は、油圧ポンプ71および油圧アクチュエータ73(図2参照)等を介して循環する油路と接続される第2熱交換器である。オイルクーラ93は、油圧ポンプ71の駆動によって上記油路を流れる作動油を熱交換により冷却する。
【0036】
図6に示すように、ラジエータ92は、ファン91の右側に位置する。つまり、ラジエータ92は、左右方向において、ファン91よりも機体外側に位置する。ファン91は、上述のように吸い込み型であるため、ファン91を回転させると、機体外側から機体内部に外気が吸い込まれる。そして、上記外気は、機体内部を右側から左側に向かって流れる。つまり、上記外気は、ラジエータ92からファン91に向かって流れる。このことから、ラジエータ92は、ファン91に対して、ファン91による外気の流れ方向の上流側に配置される、と言える。
【0037】
一方、オイルクーラ93は、ファン91の左側に位置する。つまり、オイルクーラ93は、左右方向において、ファン91よりも機体内側に位置する。したがって、ファン91を回転させると、機体外側から機体内部に吸い込まれる外気は、右側(ラジエータ92側)からファン91を介して左側(オイルクーラ93側)に流れる。このことから、オイルクーラ93は、ファン91に対して、上記外気の流れ方向の下流側に配置される、と言える。
【0038】
このように、ファン91に対して、左右方向の互いに反対側にラジエータ92およびオイルクーラ93が配置されることにより、1つのファン91の駆動により、機体外側から機体内部に取り込まれる外気を、ラジエータ92およびオイルクーラ93の順に当てて、ラジエータ92およびオイルクーラ93の両方を冷却することができる。これにより、ラジエータ92およびオイルクーラ93のそれぞれに対応して冷却用のファンを設ける構成に比べて、小型の油圧ショベル1に有利なコンパクトなレイアウトを実現することができる。言い換えれば、コンパクトなレイアウトで、ラジエータ92およびオイルクーラ93の両方を冷却することができる。
【0039】
また、ラジエータ92に当てた外気をオイルクーラ93にも当てることができるため、ラジエータ92の冷却に用いた外気を、オイルクーラ93の冷却に有効利用することができるとも言える。さらに、ファン91による外気の流れ方向の上流側にラジエータ92が配置されるため、機体外側からファン91に向かって、土砂などの異物のほか、人間(例えばメンテナンス者)の手が誤って進入することを、ラジエータ92によって阻止することができる。これにより、異物等の進入を遮断する専用の部材(例えばメッシュ状の柵)を設置することなく、簡単に異物等の進入を防止することができる。
【0040】
本実施形態では、図3および図6に示すように、オイルクーラ93は、(静止状態での)ファン91の一部と対向して配置される。すなわち、前後方向において、オイルクーラ93の占有長さ(幅)は、ファン91の占有長さ(幅)よりも短い。ファン91は、上述したように吸い込み型であるため、ファン91を回転させると、機体内部に取り込まれた外気の一部はオイルクーラ93に向かって流れ、残りは、オイルクーラ93を外れて流れる。ファン91からオイルクーラ93に向かう外気により、高温のオイルクーラ93が冷却される。一方、ファン91からオイルクーラ93を外れて流れる外気は、高温のオイルクーラ93には当たっていないため、オイルクーラ93に当たった外気(オイルクーラ93の冷却に利用された外気)に比べると、比較的低温である。この比較的低温の外気を電気機器EL(例えば電動モータ61)の冷却に有効利用する観点では、本実施形態のように、オイルクーラ93は、ファン91の一部と対向して配置されることが望ましい。
【0041】
次に、機関室44内に設けられる風導部100の詳細について説明する。図7図9は、風導部100を異なる方向から見たときの斜視図である。
【0042】
風導部100は、第1流路部110と、第2流路部120と、を有する。すなわち、油圧ショベル1は、第1流路部110と、第2流路部120と、を有する。第1流路部110と第2流路部120とは、仕切板130によって区切られている。言い換えれば、第1流路部110と第2流路部120とは、仕切板130を兼用している。
【0043】
図6に示すように、風導部100は、ファン91等を有する筐体90に対して左側、つまり、機体内側に配置される。したがって、ファン91によって筐体90の内部を通過した外気は、筐体90の出口側開口部90bを通過して風導部100に導かれ、風導部100の第1流路部110および第2流路部120のいずれかの内部を流れる。
【0044】
第1流路部110は、外気の流れ方向の上流側端部に第1開口部111を有し、下流側端部に第2開口部112を有する。すなわち、第1流路部110は、一端部に第1開口部111を有し、他端部に第2開口部112を有する。第1開口部111は、筐体90の出口側開口部90bに対してオイルクーラ93とは反対側に位置し、左右方向の右側に向かって開口している。第1流路部110は、仕切板130により、流路が左右方向から前後方向に屈曲している。その結果、第1流路部110の第2開口部112は、前後方向の前方に向かって開口している(図6図8図9参照)。なお、第1流路部110の形状は、上記の屈曲形状には限定されない。
【0045】
この構成では、ファン91により、筐体90内でオイルクーラ93に向かって流れた外気は、オイルクーラ93に当たってオイルクーラ93を冷却した後、比較的高温の風となって、第1流路部110の内部に第1開口部111を介して流れる。そして、第1流路部110の内部を流れた比較的高温の風は、第2開口部112を介して排出される。したがって、オイルクーラ93を冷却した後の比較的高温の風を、第2開口部112を介して機体外部にスムーズに排出する点では、図6に示すように、第1開口部111は、オイルクーラ93に対してファン91とは反対側に位置することが望ましい。
【0046】
第2流路部120は、外気の流れ方向の上流側端部に第3開口部121を有し、下流側端部に第4開口部122を有する。すなわち、第2流路部120は、一端部に第3開口部121を有し、他端部に第4開口部122を有する。第3開口部121は、筐体90の出口側開口部90bに対してファン91とは反対側に位置し、左右方向の右側に向かって開口している。第2流路部120は、上面100aの左端部から機体内側(左右方向の左側)に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面100bにより、流路が左右方向から上下方向に屈曲している。その結果、第2流路部120の第4開口部122は、下方に向かって開口している。なお、第2流路部120の形状は、上記の屈曲形状には限定されない。
【0047】
また、第2流路部120の第3開口部121は、ファン91の回転軸CAの方向から見て、第1流路部110の第1開口部111と(図7等ではF-B方向に)並んで位置し、第1開口部111とつながっている。これにより、風導部100の筐体90側に、1つの大きな開口部が形成されている。さらに、図6に示すように、第3開口部121は、ファン91の回転軸CAの方向から見て、オイルクーラ93と(F-B方向に)ずれて位置する。したがって、第3開口部121は、ファン91の回転軸CAの方向から見て、オイルクーラ93とは重なっていない。
【0048】
この構成では、ファン91により、ラジエータ92を介して筐体90の内部に取り込まれた外気のうち、オイルクーラ93を外れて流れた外気が第3開口部121を介して第2流路部120の内部に導かれる。そして、第2流路部120の内部を流れた外気は、第4開口部122から排出される。オイルクーラ93を外れて流れる外気は、高温のオイルクーラ93には当たっていないため、オイルクーラ93に当たった外気(オイルクーラ93の冷却に利用された外気)に比べると、比較的低温である。この比較的低温の外気を電気機器EL(例えば電動モータ61)の冷却に有効利用する観点では、本実施形態のように、比較的低温の外気を第2流路部120の内部に導く入口となる第3開口部121が、ファン91の回転軸CAの方向から見て、オイルクーラ93とずれて位置することが望ましい。
【0049】
図2に示すように、油圧ショベル1が備える複数の電気機器ELは、上記した冷媒が通る水冷機器EL-Wと、空冷機器EL-Aと、を含む。水冷機器EL-Wは、例えばバッテリユニット53である。つまり、複数の電気機器ELは、冷媒が通るバッテリユニット53を含む。
【0050】
空冷機器EL-Aは、例えば電動モータ61、充電器62、インバータ63、PDU64、ジャンクションボックス65、DC-DCコンバータ66、および鉛バッテリ54を含む。つまり、複数の空冷機器EL-Aは、油圧ポンプ71を駆動する電動モータ61を含む。
【0051】
ファン91により、ラジエータ92を冷却した後にオイルクーラ93を外れて(オイルクーラ93の外側を通って)流れた後、第3開口部121から第2流路部120の内部に入り、第4開口部122から排出される比較的低温の風を、空冷機器EL-Aに直接当てることができれば、その空冷機器EL-Aを効率よく冷却(空冷)することができる。したがって、空冷機器EL-Aの冷却効率の向上の観点では、複数の空冷機器EL-Aのいずれかは、第2流路部120の第4開口部122に配置されることが望ましい。
【0052】
本実施形態では、空冷機器EL-Aである電動モータ61が、第4開口部122に配置されている。この場合、第4開口部122から排出される比較的低温の風が電動モータ61に直接当たるため、電動モータ61の冷却効率が向上する。
【0053】
また、第2流路部120の第4開口部122に対して空冷機器EL-A(例えば電動モータ61)を下方から嵌め込んでコンパクトなレイアウトを実現する観点では、第4開口部122は、本実施形態のように、下方に向かって開口していることが望ましい。
【0054】
第2流路部120の内部を流れる比較的低温の風により、(電動モータ61以外の)他の空冷機器EL-Aを効率よく冷却する観点から、複数の空冷機器EL-Aの他のいずれかは、第2流路部120の壁面120W(図7図9参照)に配置されることが望ましい。
【0055】
本実施形態では、第2流路部120における前後方向の後方側の側面120W1(図7参照)にインバータ63が配置されている。また、風導部100の上記した傾斜面100bのうち、第2流路部120を構成する背面120W2(図9参照)に、DC-DCコンバータ66が配置されている。この場合、第2流路部120の内部を比較的低温の風が流れることにより、側面120W1に配置された空冷機器EL-Aであるインバータ63が効率よく冷却されるとともに、背面120W2に配置された空冷機器EL-AであるDC-DCコンバータ66が効率よく冷却される。
【0056】
なお、第2流路部120の壁面120Wに配置される空冷機器EL-Aは、フィンなどの放熱部を有していてもよい。そして、上記放熱部が第2流路部120の内部に突出して位置してもよい。この場合、第2流路部120の内部を流れる比較的低温の風が、放熱部に当たることにより、壁面120Wに配置された空冷機器EL-Aの冷却効率がさらに向上する。
【0057】
第2流路部120の第4開口部122から排出される比較的低温の風を利用して、他の空冷機器EL-Aを冷却する観点から、複数の空冷機器EL-Aの他のいずれかは、第2流路部120の外側に配置されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、第2流路部120の外側には、図3で示すように、充電器62、ジャンクションボックス65などの他の空冷機器EL-Aが配置されている。この場合、第2流路部120の第4開口部122から排出される比較的低温の風が、第2流路部120の周囲の充電器62等に当たり、充電器62等が冷却される。つまり、第4開口部122から排出される比較的低温の風が、充電器62等の冷却に有効利用される。
【0059】
空冷機器EL-Aである電動モータ61と、水冷機器EL-Wであるバッテリユニット53とを個別に冷却しながら、機関室44内の狭い(限られた)スペースを有効活用する観点では、電動モータ61は、機関室44内で水冷機器EL-Wの近くに配置されることが望ましい。この点では、電動モータ61は、水冷機器EL-Wと並んで配置されることが望ましい。
【0060】
また、水冷機器EL-Wと複数の空冷機器EL-Aとを別々に冷却しながら、機関室44内の狭い(限られた)スペースを有効活用する観点では、機関室44内において、水冷機器EL-Wであるバッテリユニット53は、(複数の空冷機器EL-Aが壁面120Wに配置される)第2流路部120の近くに配置されることが望ましい。この点では、図5に示すように、バッテリユニット53は、第2流路部120と並んで配置されることが望ましい。
【0061】
〔4.補足〕
本実施形態では、図6で示したように、ファン91の回転軸CAの方向から見て、オイルクーラ93がラジエータ92の一部と重なって配置される例について説明したが、オイルクーラ93はラジエータ92と重ならないように配置されてもよい。例えば、回転軸CAの方向から見て、ラジエータ92がファン91の左半分と重なるように配置され、オイルクーラ93がファン91の右半分と重なるように配置されてもよい。この場合でも、1つのファン91の駆動により、ラジエータ92およびオイルクーラ93の両方を冷却することができ、コンパクトなレイアウトで、ラジエータ92およびオイルクーラ93を冷却することができる点に変わりはない。
【0062】
以上では、電動式作業機械として、建設機械である油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、電動式作業機械は油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダなどの他の建設機械であってもよい。また、電動式作業機械は、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0063】
〔5.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す電動式作業機械と表現することもできる。
【0064】
付記(1)の電動式作業機械は、
複数の電気機器と、
前記複数の電気機器の少なくとも1つを通る冷媒を冷却する第1熱交換器と、
前記複数の電気機器のいずれかによって駆動されて作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記作動油を冷却する第2熱交換器と、
機体内部に外気を取り込むファンと、を備え、
前記第1熱交換器は、前記ファンに対して、前記ファンによる前記外気の流れ方向の上流側に配置され、
前記第2熱交換器は、前記ファンに対して、前記外気の流れ方向の下流側に配置される。
【0065】
付記(2)の電動式作業機械は、付記(1)に記載の電動式作業機械において、
前記第2熱交換器は、前記ファンの一部と対向して配置される。
【0066】
付記(3)の電動式作業機械は、付記(2)に記載の電動式作業機械において、
一端部に第1開口部を有し、他端部に第2開口部を有する第1流路部をさらに備え、
前記第1流路部の前記第1開口部は、前記第2熱交換器に対して前記ファンとは反対側に位置する。
【0067】
付記(4)の電動式作業機械は、付記(3)に記載の電動式作業機械において、
一端部に第3開口部を有し、他端部に第4開口部を有する第2流路部をさらに備え、
前記第2流路部の前記第3開口部は、前記ファンの回転軸方向から見て、前記第1流路部の前記第1開口部と並んで位置するとともに、前記第2熱交換器とずれて位置する。
【0068】
付記(5)の電動式作業機械は、付記(4)に記載の電動式作業機械において、
前記複数の電気機器は、前記冷媒が通る水冷機器と、複数の空冷機器と、を含み、
前記複数の空冷機器のいずれかは、前記第2流路部の前記第4開口部に配置される。
【0069】
付記(6)の電動式作業機械は、付記(5)に記載の電動式作業機械において、
前記複数の空冷機器の他のいずれかは、前記第2流路部の壁面に配置される。
【0070】
付記(7)の電動式作業機械は、付記(5)または(6)に記載の電動式作業機械において、
前記複数の空冷機器の他のいずれかは、前記第2流路部の外側に配置される。
【0071】
付記(8)の電動式作業機械は、付記(5)から(7)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記第4開口部は、下方に向かって開口している。
【0072】
付記(9)の電動式作業機械は、付記(5)から(8)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記複数の空冷機器は、前記油圧ポンプを駆動する電動モータを含み、
前記電動モータは、前記水冷機器と並んで配置される。
【0073】
付記(10)の電動式作業機械は、付記(4)から(9)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記複数の電気機器は、前記冷媒が通るバッテリユニットを含み、
前記バッテリユニットは、前記第2流路部と並んで配置される。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
44 機関室(機体)
53 バッテリユニット(電気機器、水冷機器)
54 鉛バッテリ(電気機器、空冷機器)
61 電動モータ(電気機器、空冷機器)
62 充電器(電気機器、空冷機器)
63 インバータ(電気機器、空冷機器)
65 ジャンクションボックス(電気機器、空冷機器)
66 DC-DCコンバータ(電気機器、空冷機器)
71 油圧ポンプ
91 ファン
92 ラジエータ(第1熱交換器)
93 オイルクーラ(第2熱交換器)
110 第1流路部
111 第1開口部
112 第2開口部
120 第2流路部
120W 壁面
120W1 側面(壁面)
120W2 背面(壁面)
121 第3開口部
122 第4開口部
CA 回転軸
EL 電気機器
EL-W 水冷機器
EL-A 空冷機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9