(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078569
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】巾木
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
E04F19/04 101E
E04F19/04 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191004
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将平
(57)【要約】
【課題】巾木の下縁と床面との間に上下動隙間が生じず、また、遮音性を高める十分な通気を確保しうる巾木を提供する。
【解決手段】巾木1は、床部2の上面に固定されて当該床部2とともに上下動する床側配置部材11と、屋内壁3に固定される壁側配置部材12と、を備える。床側配置部材11は、床部2と屋内壁3との間に形成された壁際隙間4に連通する通気部11aを有するとともに、この通気部11の下部側を隠す屋内側面部11bを有する。壁側配置部材12は、床側配置部材11の通気部11aから離間して当該通気部11aの上部側の屋内面側を隠す垂れ面部12aを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部の上面に固定される床側配置部材を有しており、この床側配置部材は、上記床部と屋内壁との間に形成された壁際隙間に連通する通気部を有するとともに、上記通気部の下部側を隠す屋内側面部を有することを特徴とする巾木。
【請求項2】
請求項1に記載の巾木において、上記屋内壁に固定される壁側配置部材を有しており、この壁側配置部材は、上記床側配置部材の通気部から離間して当該通気部の上部側の屋内面側を隠す垂れ面部を有することを特徴とする巾木。
【請求項3】
請求項2に記載の巾木において、上記床側配置部材における上記屋内側面部の上端と上記壁側配置部材における上記垂れ面部の下端との間に空間部が確保されるとともに、上記床側配置部材は、上記空間部から上記通気部が見えないようにする遮蔽面部を有することを特徴とする巾木。
【請求項4】
請求項1に記載の巾木において、上記床側配置部材は、当該床側配置部材の端部に、上記床部に固定される固定面を有するとともに当該床側配置部材の端部強度を高める板部を有することを特徴とする巾木。
【請求項5】
請求項1に記載の巾木において、上記床側配置部材の上記通気部には、上記床部に固定される固定面を有する複数の補強縦棒部が水平方向に間隔をあけて配置されており、隣り合う上記補強棒部間に通気スリット部が形成されることを特徴とする巾木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、床部と屋内壁との境界部に取り付けられる巾木に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乾式二重床の重量床衝撃音の遮断性を向上するために用いる巾木であって、縦側面を広巾とし、横側面を狭巾とした長尺平板の下横側面の所望の巾にわたって、短繊維を植毛した細巾植毛テープのテープ裏を固定して短繊維による植毛が、該下横側面から下向きに延びる構造が開示されている。また、特許文献2には、乾式二重床の床部と壁面との間に遮音性向上のために形成された隙間を覆う巾木に、通気性を持たせて、重量床衝撃音の遮断性能の向上を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-197601号公報
【特許文献2】特開2002-81198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示の巾木は、屋内壁に固定されるため、床部の上下動で当該巾木の下縁と床面との間に上下動隙間が生じやすく、この上下動隙間の箇所で埃溜まりや紙の挟み込みが生じやすいという欠点がある。また、特許文献1に開示の巾木は、植毛が空気の通りの障害となるため、十分な通気を確保できないおそれがある。
【0005】
この発明は、巾木の下縁と床面との間に上下動隙間が生じず、また、遮音性を高める十分な通気を確保しうる巾木を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の巾木は、床部の上面に固定される床側配置部材を有しており、この床側配置部材は、上記床部と屋内壁との間に形成された壁際隙間に連通する通気部を有するとともに、上記通気部の下部側を隠す屋内側面部を有することを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記床側配置部材は、上記床部の上面に固定されて当該床部とともに上下動するので、床部が上下動しても当該床部と床側配置部材との間に上下動隙間は形成されず、この上下動隙間に起因する紙等の挟み込みといった問題は生じない。また、上記床側配置部材は、上記床部と屋内壁との間に形成された壁際隙間に連通する通気部を有するので、二重床における太鼓現象の低減のために確保される上記壁際隙間を通じた空気の出入りを円滑に行わせて、遮音性の向上を図ることができる。
【0008】
上記巾木は、上記屋内壁に固定される壁側配置部材を有しており、この壁側配置部材は、上記床側配置部材の通気部から離間して当該通気部の上部側の屋内面側を隠す垂れ面部を有してもよい。これによれば、部屋や廊下側から上記通気部が見えないようにして巾木の意匠性を高めることができる。
【0009】
上記巾木は、上記床側配置部材における上記屋内側面部の上端と上記壁側配置部材における上記垂れ面部の下端との間に空間部が確保されるとともに、上記床側配置部材は、上記空間部から上記通気部が見えないようにする遮蔽面部を有してもよい。これによれば、上記空間部を介して部屋や廊下側から上記通気部が見えないようにして巾木の意匠性をより高めることができる。
【0010】
上記床側配置部材は、当該床側配置部材の端部に、上記床部に固定される固定面を有するとともに当該床側配置部材の端部強度を高める板部を有してもよい。
【0011】
上記床側配置部材の上記通気部には、上記床部に固定される固定面を有する複数の補強縦棒部が水平方向に間隔をあけて配置されており、隣り合う上記補強棒部間に通気スリット部が形成されていてもよい。これによれば、当該床側配置部材の強度を高めつつ、上記通気部の通気量確保を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、床部が上下動しても当該床部と床側配置部材との間に上下動隙間は形成されず、この上下動隙間に起因する紙等の挟み込みといった問題は生じない。また、二重床における太鼓現象の低減のために確保される壁際隙間を通じた空気の出入りを円滑に行わせて、遮音性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】床部の壁際隙間に設置された実施形態の巾木を示した図であり、同図(A)は当該巾木の非スリット部の縦断面図であり、同図(B)は当該巾木のスリット部の縦断面図である。
【
図2】二重床と屋内壁と壁際隙間に配置された実施形態の巾木との位置関係を示した斜視による説明図である。
【
図3】実施形態の巾木の床側配置部材および壁側配置部材を互いに離間させて示した斜視図である。
【
図4】実施形態の巾木の床側配置部材および壁側配置部材の配置関係を下から見上げる態様で示した斜視図である。
【
図5】実施形態の巾木の床側配置部材の背面側を示した斜視図である。
【
図6】他の実施形態の巾木における床側配置部材を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)、
図1(B)、
図2および
図3に示すように、この実施の形態の巾木1は、二重床の床部2と屋内壁3との間に形成される壁際隙間4の形成箇所に取り付けられ、当該壁際隙間4を通じた空気の出入りを確保して遮音性の向上に資することができる。壁際隙間4の幅は、3mm~10mm程度とされる。
【0015】
また、巾木1は、例えば、樹脂製の床側配置部材11と、同じく樹脂製の壁側配置部材12とを備える二段巾木であり、特に、マンションの二重床のクッションフロアにおいて、人が踏んだ箇所の床下がりを目立たなくする機能も備えている。この実施の形態の巾木1は、一般の二段巾木と同様の施工手順で取り付けることが可能である。なお、二重床のクッションフロアの場合、壁際隙間4の幅は、クッションフロアでない床よりも広くされることがある。
【0016】
床側配置部材11は、床部2の壁際縁上に、例えば、接着剤や両面テープによって固定され、当該床部2とともに上下動することができる。そして、床側配置部材11は、上記床部2と屋内壁3との間に形成された壁際隙間4に連通する通気部11aを有するとともに、上記通気部11aの下部側を隠す屋内側面部11bを有している。上記接着剤等は、屋内側面部11bの下面に施される。通気部11aにおける壁側端から屋内側端間の離間距離は、当該床側配置部材11が取り付けられる床部2の壁際隙間4の幅と同じか、或いは広くされる。
【0017】
一方、壁側配置部材12は、床側配置部材11の上方側に位置し、屋内壁3に接着やフック係止等によって固定されており、床部2が上下動しても一定の高さ位置に留まることになる。
【0018】
さらに、壁側配置部材12は、垂れ面部12aを有する。この垂れ面部12aは、床側配置部材11の通気部11aから、例えば3mm~8mm程度離間して当該通気部11aの上部側の屋内面側を隠す。
【0019】
この巾木1においては、床側配置部材11における屋内側面部11bの上端と壁側配置部材12における垂れ面部12aの下端との間に空間部1aが確保される。また、床側配置部材11は、空間部1aの箇所において、部屋や廊下側から当該空間部1aを介して通気部11aが見えないようにする遮蔽面部11cを有する。
【0020】
空間部1aの縦幅(高さ)は、例えば、通気部11aの上記離間距離と同じか、或いは広いのが望ましい。また、遮蔽面部11cの上部屋内側の角部と垂れ面部12aの下部屋外側の角との間の箇所の空気の通り幅を広くするために、上記上部屋内側の角および上記下部屋外側の角の少なくとも一方に、面取り部(傾斜面部)を形成してもよい。
【0021】
上記の床部2に衝撃が加わることで圧縮を受けた床内の空気は、壁際隙間4を通り、
図4にも示すように、床側配置部材11の通気部11aを経て、遮蔽面部11cを越えた位置から空間部1a側に至る。その後、屋内空気は、空間部1aから上記とは逆経路で床内に至ることになる。すなわち、この巾木1により、壁際隙間4を介した空気の出入りが確保され、遮音性が向上する。
【0022】
また、この巾木1においては、床側配置部材11は、当該床側配置部材11の少なくとも両端部に、床部2に固定される固定面を有するとともに当該床側配置部材11の端部強度を高める板部11dを有する。巾木1は、例えば、3m~4m程度の長さの樹脂成型品であり、床側配置部材11は、例えば、455mmピッチで板部11dを有しており、建築現場で適宜の長さに切断して用いられる。
【0023】
さらに、この巾木1においては、
図5にも示すように、床側配置部材11の通気部11aには、床部2に固定される固定面を有する複数の補強縦棒部11eが水平方向に間隔をあけて配置されており、隣り合う上記補強縦棒部11e間の上部側には通気スリット部が形成されている。
【0024】
上記の構成であれば、床側配置部材11は、床部2の上面に固定されて当該床部2とともに上下動するので、床部2が上下動しても当該床部2と床側配置部材11との間に上下動隙間は形成されず、この上下動隙間に起因する紙等の挟み込みといった問題は生じない。また、床側配置部材11は、床部2と屋内壁3との間に形成された壁際隙間4に連通する通気部11aを有するので、二重床における太鼓現象の低減のために確保される壁際隙間4を通じた空気の出入りを円滑に行わせて、遮音性の向上を図ることができる。
【0025】
また、巾木1は、垂れ面部12aを有する壁側配置部材12を備えるので、屋内側から通気部11aが見えないようにして巾木1の意匠性を高めることができる。
【0026】
また、床側配置部材11における屋内側面部11bの上端と壁側配置部材12における垂れ面部12aの下端との間に、空間部1aが確保される。そして、床側配置部材11は、上記空間部1aから通気部11aが見えないようにする遮蔽面部11cを有する。これにより、空間部1aを介して部屋や廊下側から通気部11aが見えないようにして巾木1の意匠性をより高めることができる。
【0027】
また、床側配置部材11の通気部11aには、補強縦棒部11eが配置されるので、床側配置部材11の補強が図れる。そして、補強縦棒部11eの幅および配置ピッチは、通気部11aにおける遮音性を鑑みた通気量の確保と、床側配置部材11の強度や撓みやすさ等との兼ね合いで設定することができる。当然、補強縦棒部11eの幅は、図示したものより狭くするか、または、補強縦棒部11eの配置ピッチを広くした構成とすることができる。換言すれば、二重床の特性に応じて、補強縦棒部11eの幅および配置ピッチを設計段階で調整することが容易である。
【0028】
なお、床側配置部材11の通気部11aに、複数の補強縦棒部11eを備える構成に限らない。
図6に示すように、補強縦棒部11eを有しない床側配置部材11を用いることもできる。このような形態の床側配置部材11は、硬質樹脂或いは木材等の硬質材で作製されるのが望ましい。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 :巾木
1a :空間部
2 :床部
3 :屋内壁
4 :壁際隙間
11 :床側配置部材
11a :通気部
11b :屋内側面部
11c :遮蔽面部
11d :板部
11e :補強縦棒部
12 :壁側配置部材
12a :垂れ面部