(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078572
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】トンネル監視システム
(51)【国際特許分類】
G08B 27/00 20060101AFI20240604BHJP
G08B 21/10 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G08B27/00 A
G08B21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191008
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】木原 康成
(72)【発明者】
【氏名】林 裕悟
(72)【発明者】
【氏名】戸田 伸親
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA12
5C086AA22
5C086BA30
5C086DA08
5C086DA14
5C086DA40
5C086FA02
5C086FA06
5C086FA12
5C086FA15
5C087AA02
5C087AA12
5C087AA16
5C087AA25
5C087AA32
5C087AA37
5C087BB20
5C087BB74
5C087DD02
5C087DD28
5C087EE05
5C087EE07
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG14
5C087GG66
5C087GG82
(57)【要約】
【課題】周囲の気象の急激な変化に応じてトンネル坑内においても確実に情報伝達可能な警報を発信することができるトンネル監視システムを提供する。
【解決手段】トンネルが施工される所定位置の周囲の雨量情報と、所定位置の周辺に存在する河川の水位情報と、所定位置を含む地域に対して発令された防災情報と、を含む所定位置周辺情報と、トンネル内に存在する人員の位置情報とを取得する取得部と、位置情報に基づいてトンネル内において区分された複数の領域に含まれる人員の人数を監視し監視情報を生成する監視部と、所定位置周辺情報に基づいてトンネル内におけるトンネル警戒レベルを判定する判定部と、トンネル警戒レベルに応じた警報を領域毎に出力する警報出力部と、を備えることを特徴とするトンネル監視システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルが施工される所定位置の周囲の雨量情報と、前記所定位置の周辺に存在する河川の水位情報と、前記所定位置を含む地域に対して発令された防災情報と、を含む所定位置周辺情報と、前記トンネル内に存在する人員の位置情報とを取得する取得部と、
前記位置情報に基づいて前記トンネル内において区分された複数の領域に含まれる前記人員の人数を監視し監視情報を生成する監視部と、
前記所定位置周辺情報に基づいて前記トンネル内におけるトンネル警戒レベルを判定する判定部と、
前記トンネル警戒レベルに応じた警報を前記領域毎に出力する警報出力部と、を備えることを特徴とする、
トンネル監視システム。
【請求項2】
前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて視覚的に異なる前記警報を出力する、
請求項1に記載のトンネル監視システム。
【請求項3】
前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて設定された色彩に基づく前記警報を出力する、
請求項1に記載のトンネル監視システム。
【請求項4】
前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて音声に基づく前記警報を出力する、
請求項1に記載のトンネル監視システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記所定位置周辺情報に含まれる情報のうち少なくとも1つが予め設定した安全基準を超えた場合、前記トンネル警戒レベルを前記人員が前記トンネル内から退避することが必要な度合いに判定する、
請求項1に記載のトンネル監視システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記所定位置周辺情報と前記監視情報とに基づいて前記領域に応じて前記人員を退避させるための退避計画を算出し、
前記警報出力部は、前記退避計画に基づいて前記領域に応じて前記人員を退避させる退避誘導情報を出力する、
請求項1に記載のトンネル監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル坑内において異状が生じた際にトンネル内に警報を発生する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、トンネル坑内に存在する人員が異状を発見した際に無線通信に基づいて通報を行い、通報に基づいて人員が所持する携帯情報端末に警報信号を発信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、台風や大雨だけでなく、局地的に狭い範囲に短時間のうちに発生する集中豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)が、都市部を中心に観測されている。都市部に地下トンネルを施工する場合、周囲の降雨情報や河川の水位情報に注意しつつ、警戒が必要な場合は予めトンネル坑内から人員を退避させることが必須である。地下トンネルは、人員が出入り可能な立坑からの距離が数キロとなる場合もあり、警報を早期に提供し人員を円滑に退避させることが望ましい。
【0005】
従来の技術によれば、気象情報を入手し警報を発信するまでに時間を要し、トンネル坑内からの退避に遅れが生じる虞がある。また、従来の技術によれば、トンネル坑内における騒音により情報端末から発信される警報を見逃す虞がある。
【0006】
本発明は、周囲の気象の急激な変化に応じてトンネル坑内においても確実に情報伝達可能な警報を発信することができるトンネル監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達するために、本発明は、トンネルが施工される所定位置の周囲の雨量情報と、前記所定位置の周辺に存在する河川の水位情報と、前記所定位置を含む地域に対して発令された防災情報と、を含む所定位置周辺情報と、前記トンネル内に存在する人員の位置情報とを取得する取得部と、前記位置情報に基づいて前記トンネル内において区分された複数の領域に含まれる前記人員の人数を監視し監視情報を生成する監視部と、前記所定位置周辺情報に基づいて前記トンネル内におけるトンネル警戒レベルを判定する判定部と、前記トンネル警戒レベルに応じた警報を前記領域毎に出力する警報出力部と、を備えることを特徴とする、トンネル監視システムである。
【0008】
本発明によれば、自動的に所定位置周辺情報を取得してトンネル警戒レベルを判定するため、退避が必要な場合に退避までを迅速化することができる。
【0009】
また、本発明の各前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて視覚的に異なる前記警報を出力してもよい。
【0010】
本発明によれば、視覚的な警報をトンネル内に出力するため、トンネル内の騒音により音声の聞き取りが困難な領域においてもトンネル内の人員に警報の内容を認識させることができる。
【0011】
また、本発明の各前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて設定された色彩に基づく前記警報を出力してもよい。
【0012】
本発明によれば、色彩が異なる警報をトンネル内に出力するため、トンネル内の騒音により音声の聞き取りが困難な領域においてもトンネル内の人員に警報の内容を認識させることができる。
【0013】
また、本発明の各前記警報出力部は、前記トンネル警戒レベルの度合いに応じて音声に基づく前記警報を出力してもよい。
【0014】
本発明によれば、音声に基づく警報を併用して出力することでトンネル内の人員に警報の内容を認識させる確率を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の前記判定部は、前記所定位置周辺情報に含まれる情報のうち少なくとも1つが予め設定した安全基準を超えた場合、前記トンネル警戒レベルを前記人員が前記トンネル内から退避させるレベルであると判定してもよい。
【0016】
本発明によれば、様々な所定位置周辺情報を取得してトンネル警戒レベルを判定するため、退避を迅速に行うことができる。
【0017】
また、本発明の前記判定部は、前記所定位置周辺情報と前記監視情報とに基づいて前記領域に応じて前記人員を退避させるための退避計画を算出し、前記警報出力部は、前記退避計画に基づいて前記領域に応じて前記人員を退避させる退避誘導情報を出力してもよい。
【0018】
本発明によれば、領域に応じた退避誘導情報を出力することにより、退避を円滑化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、周囲の気象の急激な変化に応じてトンネル坑内においても確実に情報伝達可能な警報を発信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るトンネル坑内の構成を示す断面図である。
【
図2】トンネル監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】監視装置に表示される監視画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るトンネル監視システムの実施形態について説明する。
【0022】
図1に示されるように、トンネル監視システム1の監視対象は、例えば、シールドマシンSにより地下に構築されるトンネルTである。トンネルTの施工前において、地表面Eから鉛直方向下方に掘削し、発進立坑Hが構築される。シールドマシンSは、例えば、地表面Eから発進立坑Hの底部まで搬入される。シールドマシンSは、発進立坑Hの底部に設置された後、水平方向に掘削推進する。シールドマシンSにより掘削された掘削面には、セグメントCが施工され順次トンネルTが構築される。
【0023】
トンネルT内には、水平方向の掘削距離に応じて区分された複数の領域Rn(n:0以上の整数)毎にトンネルT内の情報を取得すると共に、トンネルT内の領域Rn毎に情報を提供する警報出力部20-nが設けられている。警報出力部20-nにより取得されたデータは、トンネルT外に設けられた監視装置10に送信される。また、監視装置10から送信された警報は、監視装置10を介してトンネルT内に伝達される。
【0024】
図2に示されるように、トンネル監視システム1は、トンネルTを監視する監視装置10と、トンネルT坑内の情報を取得すると共に警報を出力する警報出力部20-nと、トンネルTの坑内に存在する人員に付与される携帯機器Mと、ネットワークNWを介して気象情報を提供する気象情報提供装置30と、ネットワークNWを介して河川に関する情報を提供する河川情報提供装置40とにより構成されている。
【0025】
警報出力部20-nは、トンネルT内の領域Rn毎に設置されている。警報出力部20-nは、発進立坑H内にも設けられていてもよい。領域Rnには、発進立坑Hが含まれていてもよい。領域Rnは、例えば、水平方向の所定距離(例えば、150m)毎に設定されている。所定距離は、例えば、携帯機器Mの通信可能距離に基づいて設定される。警報出力部20-nは、監視装置10が判定した警戒レベルに応じた警報を領域Rn毎に出力する。
【0026】
警報出力部20-nは、トンネルT内及び発進立坑Hを監視する機器と、トンネルT内及び発進立坑Hに情報を提供する機器と、を備えている。警報出力部20-nは、ネットワークNWと通信可能に接続された通信部25を備えている。通信部25は、ネットワークNWを介して監視装置10と通信し、警報出力部20-nにより取得されたデータを監視装置10に送信する。
【0027】
通信部25は、監視装置10から警報を受信しトンネルT内に情報を提供する機器に警報を出力させる。通信部25は、例えば、無線LAN(Local Area Network)等の通信機器により構成されている。通信部25は、トンネルTの坑内において通信を中継する中継装置であってもよい。通信部25は、トンネルTの坑内においては他の通信部25と通信可能に有線接続されていてもよい。その場合、トンネルTとネットワークNWとを通信可能に接続する代表的な通信部25が少なくとも1つ設けられていてもよい。
【0028】
警報出力部20-nは、トンネルT内の領域Rnに存在する人員Pの位置と人数を検出する位置センサ21を備えている。位置センサ21は、例えば、トンネルTの内壁の上方に設置されている。位置センサ21は、発進立坑Hの底部から所定距離上方の内壁に設置されている。位置センサ21は、領域Rn内の人員Pが所持している携帯機器Mと近距離通信し、人員Pを個別認識する。位置センサ21は、携帯機器Mとの通信に基づいて人員Pの位置を検出する。
【0029】
位置センサ21は、例えば、ICタグ等の電子装置を個別認識すると共に、位置を検出する受信器により構成されている。位置センサ21は、無線LAN(Local Area Network)等の通信機器により構成されていてもよい。その場合、位置センサ21は、通信部25であってもよい。
【0030】
警報出力部20-nは、トンネルT内の領域Rnに警報を出力するスピーカ22を備えている。スピーカ22は、例えば、トンネルTの内壁の上方に設置されている。スピーカ22は、通信部25を介して監視装置10から送信された警報をトンネルTの坑内に出力する。スピーカ22は、警報が音声データである場合、データに含まれる音声信号を増幅し、トンネルTの坑内に警報の内容を音響に基づいて出力する。
【0031】
スピーカ22は、監視装置10が判定した警戒レベルの度合いに応じて設定された音声に基づく警報を出力する。スピーカ22は、警戒レベルの度合いに応じて退避、作業停止、待機、注意等の人員Pに行動を促すメッセージを含む内容の警報を音声に基づいて出力する。スピーカ22は、警報を出力する際にメッセージ以外の音響を音声に重畳又は分離して出力してもよい。
【0032】
警報出力部20-nは、トンネルT内の領域Rnを撮像するカメラ23を備えている。カメラ23は、例えば、トンネルTの内壁の上方に設置されている。カメラ23は、例えば、領域Rn内を広角に撮像する。カメラ23は、通信部25を介して撮像データを監視装置10に送信する。カメラ23は、可視光領域を撮像するものであってもよいし、トンネルTの坑内が暗い場合でも人員Pを認識可能な赤外線画像を撮像するものであってもよい。
【0033】
警報出力部20-nは、トンネルT内の領域Rnに視覚的な警報を伝達する警告灯24を備えている。警告灯24は、例えば、照明装置である。警告灯24は、例えば、監視装置10が判定したトンネル警戒レベルの度合いに応じて視覚的に異なる警報を照明の点灯に基づいて出力する。警告灯24は、例えば、トンネル警戒レベルの度合いに応じて設定された色彩に基づく警報を照明の点灯に基づいて出力する。警告灯24は、例えば、トンネル警戒レベルが警戒態勢と判定された場合、緑色の照明を領域Rn内に点灯する。
【0034】
警告灯24は、例えば、トンネル警戒レベルが工事中止である場合、黄色の照明を領域Rn内に点灯する。警告灯24は、例えば、トンネル警戒レベルが退避と判定された場合、赤色の照明を領域Rn内に点灯する。警告灯24は、一定の照明を点灯するだけでなく、照明を点滅させ、或いは回転させてもよく、これらを組み合わせて点灯させてもよい。
【0035】
警告灯24は、照明に加えて文字情報や画像をトンネルTの内壁に照射するものであってもよい。警告灯24は、トンネル警戒レベルの内容に応じた行動促す文字情報や画像を内壁に照射するものであってもよい。警告灯24に基づく照明の点灯に基づいて、人員Pらはスピーカ22から出力される警告が聞こえない状況であっても、視覚的に警報を認識することができ、警報に応じて行動することができる。
【0036】
人員Pは、トンネルTの坑内に入坑する前に、予め携帯機器Mを付与される。携帯機器Mは、例えば、人員Pを個別に管理可能であり、且つ、位置センサ21により検出可能なRFID(Radio frequency identification)である。携帯機器Mは、監視装置10により付与先の人員Pと個別に与えられたID番号とを関連させて管理されている。携帯機器Mは、位置センサ21が発信する電波に基づいて微量な電力を得ることで個別番号などの情報を含む電波を再送信するように形成されている。
【0037】
人員Pは、トンネルTの坑内に入坑及び退出する際に所定の機器と携帯機器Mとを通信させて監視装置10に入坑管理させてもよい。携帯機器Mは、スマートフォン等の情報通信機器により構成されていてもよい。この場合、携帯機器Mは、通信部25を介して警報を受信して出力してもよい。
【0038】
監視装置10は、ネットワークNWを介して複数の警報出力部20-nと通信する。監視装置10は、警報出力部20-nとの通信に並行して、ネットワークNWを介して気象情報提供装置30及び河川情報提供装置40と通信する。
【0039】
気象情報提供装置30は、例えば、各地に設置された気象センサの観測データを集計し、地域に応じた気象情報を提供する。気象情報提供装置30は、地域を細分化し、局地的な気象情報を提供する。気象情報提供装置30は、例えば、トンネルTが施工される所定位置の周囲の雨量情報を提供すると共に、所定位置を含む地域に雨量情報に基づく防災情報を発令する。所定位置は、例えば、発進立坑Hの位置に設定される。気象情報提供装置30は、所定の時間間隔において雨量情報と防災情報を更新する。雨量情報に基づく防災情報には、例えば、警戒レベルに応じて早期注意情報、注意報、注意情報、警戒情報、警報、特別警報、危険情報、発生情報等が設定されている。警戒レベルには、安全を確保するために対応すべき行動が設定されている。
【0040】
河川情報提供装置40は、例えば、河川に沿って設置された水位センサの観測データを集計し、地域に応じた河川情報を提供する。河川情報提供装置40は、地域を細分化し、局地的な河川情報を提供する。河川情報提供装置40は、例えば、トンネルTの周辺に存在する河川の水位情報を提供すると共に、トンネルTの所定位置の周辺に存在する河川の水位情報に基づく防災情報を発令する。河川情報提供装置40は、所定の時間間隔において水位情報と防災情報を更新する。水位情報に基づく防災情報は、例えば、河川に応じて水防団待機水位、氾濫注意水位、避難判断水位、氾濫危険水位が設定されている。その他、水位情報に基づく防災情報には、洪水予報、河川の氾濫注意情報、ダムの放流を通知するダム放流通知、自治体が発令する避難指示等の情報が含まれる。
【0041】
監視装置10は、ネットワークNWを介して気象情報提供装置30と、河川情報提供装置40と、警報出力部20-nと通信し情報を取得する取得部11を備えている。取得部11は、気象情報提供装置30からトンネルTの所定位置の周囲の雨量情報と、所定位置を含む地域に対して発令された雨量情報に基づく防災情報とを取得する。地域は、所定位置を含むだけでなく、所定位置を含まない近隣の地域であってもよい。地域の単位は、情報提供者の基準に基づいて設定される。
【0042】
取得部11は、河川情報提供装置40からトンネルTの所定位置の周辺に存在する河川の水位情報と、所定位置に対して発令された河川情報に基づく防災情報とを取得する。取得部11は、警報出力部20-nから人員Pの位置情報を取得する。以下、雨量情報、雨量情報に基づく防災情報、水位情報、及び河川情報に基づく防災情報を含む情報は、所定位置周辺情報と呼ぶ。
【0043】
監視装置10は、所定位置周辺情報と、位置情報とを記憶する記憶部14を備えている。記憶部14は、取得した情報を記憶すると共に、監視装置10の処理を実行させるプログラムを記憶している。記憶部14は、ハードディスクドライブ(HDD)、フラッシュメモリ等の非一時的な記憶媒体により構成されている。記憶部14は、監視装置10に内蔵されていてもよいし、監視装置10の外部記憶装置として監視装置10に接続される記憶装置であってもよい。記憶部14は、ネットワークNWを介して監視装置10に接続される記憶サーバであってもよい。
【0044】
監視装置10は、取得部11が取得した位置情報に基づいてトンネルT内の監視情報を生成する監視部12を備えている。また、監視装置10は、取得した所定位置周辺情報に基づいてトンネルT内におけるトンネル警戒レベルを生成する。監視装置10は、監視部12が生成する監視情報に関する監視画像や判定部13が生成する判定結果に関する判定画像を出力する表示部16を備えている。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。
【0045】
監視部12は、取得部11が取得した位置情報に基づいて位置情報に基づいてトンネルT内において区分された複数の領域Rnに含まれる人員Pの人数を監視し監視情報を生成する。監視部12は、警報出力部20-nを固体識別し、設置位置との関係に基づいて警報出力部20-nが設置されている領域Rnを設定する。監視部12は、発進立坑HとトンネルTの位置に応じた名称を各領域Rnに割り当てる。
【0046】
監視部12は、例えば、各領域Rnに対して、発進立坑H内の坑口周辺の領域を「坑口周辺エリア」、シールドマシンSの後方のセグメントが施工された領域を「坑内一般エリア」、シールドマシンSの後方に設置された後続台車の領域を「後続台車エリア」、シールドマシンSの直後のトンネルTの切羽面が露出している領域を「切羽周辺エリア」等と設定する。坑内一般エリアは、トンネルTの伸長に応じて細分化してもよい。監視部12は、トンネルTの伸長に応じて後続台車エリア及び切羽周辺エリアの設定を適宜変更する。
【0047】
監視部12は、トンネルTの伸長に応じて増設される警報出力部20-nに切羽周辺エリアを設定し、切羽周辺エリアを後続台車エリアに、後続台車エリアを坑内一般エリアに設定を更新する。監視部12は、取得した位置情報に基づいて各領域Rnに存在する人員Pの人数を算出する。監視部12は、位置情報に含まれる携帯機器Mの個別ID情報に基づいて携帯機器Mを所有する人員Pを個別に認識し、人員Pの位置及び役職を認識した識別情報を生成する。
【0048】
監視部12は、領域Rnに含まれる人員Pの人数と人員Pの識別情報を監視し領域と対応付けた監視情報を生成する。監視部12は、所定のタイミングにおいて位置情報を取得し、監視情報を更新する。
【0049】
図3に示されるように、監視部12は、監視情報に基づく監視画像Gを更新のタイミングにおいて生成し、表示部16に表示させる。監視画像Gには、例えば、各領域Rnに存在する人員の人数、人員Pの役職が示される。監視画像Gは、定期的に記憶され、トンネルTの施工状況の分析に用いられてもよい。
【0050】
判定部13は、取得した所定位置周辺情報に基づいてトンネルT内におけるトンネル警戒レベルを判定する。判定部13は、気象情報提供装置30と通信し、雨量情報に基づく防災情報が発令されているか否かを判定する。判定部13は、雨量情報に基づく防災情報が発令されている場合、防災情報の内容を判定する。判定部13は、防災情報に含まれる警戒レベルを判定する。
【0051】
判定部13は、防災情報に含まれる警戒レベルを取得し、警戒レベルに基づいてトンネル内におけるトンネル警戒レベルを判定する。判定部13は、所定位置周辺情報に含まれる情報のうち少なくとも1つが予め設定した安全基準を超えた場合、トンネル警戒レベルを人員Pが前記トンネルT内から退避することが必要な度合いに判定する。判定部13は、所定位置周辺情報に含まれる情報のうち少なくとも1つが予め設定した安全基準に第1所定時間の間に到達すると予測した場合、トンネル警戒レベルを工事中止のレベルであると判定する。
【0052】
判定部13は、所定位置周辺情報に含まれる情報のうち少なくとも1つが予め設定した安全基準に第1所定時間に比して長い第2所定時間の間に到達すると予測した場合、トンネル警戒レベルを警戒態勢のレベルであると判定する。
【0053】
トンネルTの施工の進捗に従ってトンネルTの距離が延長されるため、人員Pの退避時間が変化する。判定部13は、監視情報に基づいて人員PがトンネルT内から退避する退避時間を算出し、退避時間と所定位置周辺情報とに基づいて警戒レベルの判定基準を更新してもよい。判定部13は、所定位置周辺情報と監視情報とに基づいて領域Rnに応じて人員を退避させるための退避計画を算出する。
【0054】
判定部13は、ネットワークNWを介して判定したトンネル警戒レベルを示す情報を警報出力部20-nに出力する。判定部13は、各警報出力部20-nに、トンネル警戒レベルの度合いに応じて視覚的に異なる警報を出力させる。判定部13は、各警報出力部20-nに、トンネル警戒レベルの度合いに応じて設定された色彩に基づく警報を出力させる。判定部13は、各警報出力部20-nに、トンネル警戒レベルの度合いに応じて音声に基づく警報を出力させる。判定部13は、各警報出力部20-nに、算出した退避計画に基づいて領域Rnに応じて人員Pを退避させる退避誘導情報を出力する。
【0055】
領域Rnに応じた退避誘導情報は、例えば、領域Rn毎に設定された退避のタイミング、或いは領域Rn毎に設定されたメッセージにおいて出力される。これにより、トンネルT内において退避の滞留を発生させることなく、人員Pを円滑に退避させることができる。判定部13は、監視情報に基づいて人員Pの役職に応じたメッセージを携帯機器Mに表示させ、避難誘導における役割分担をさせてもよい。
【0056】
トンネル監視システム1は、定期的な退避訓練に用いられてもよい。トンネル監視システム1の管理者は、定期的に異なる仮想的な所定位置周辺情報を設定し、トンネルTの施工現場において退避訓練を実施する。管理者は、監視装置10に表示される監視画像Gに基づいて人員Pに行動指示を行ってもよい。管理者は、退避訓練の終了後、記憶された監視画像Gを分析し、各種の所定位置周辺情報を基にした退避基準、退避手順や方法、及びトンネル警戒レベルの度合いを調整してもよい。管理者は、過去の退避訓練データを集計してデータベース化し、退避マニュアルを作成してもよい。
【0057】
上述したようにトンネル監視システム1によれば、監視装置10が自動的に所定位置周辺情報を取得し、トンネルT内に警報を出力することで、トンネルTから人員Pを早期に退避させることができる。トンネル監視システム1によれば、各警報出力部20-nからトンネル警戒レベルの度合いに応じて設定された色彩に基づく警報を出力させるため、トンネルT内において騒音レベルが高い領域Rnにおいても人員Pに警報の内容を認識させることができる。
【0058】
トンネル監視システム1によれば、監視画像Gに基づいて人員Pの位置を確認することで人員Pの逃げ遅れを防止することができる。トンネル監視システム1によれば、退避訓練に用いることにより、各種の気象情報を基にした退避基準、退避手順や方法を確立することができる。トンネル監視システム1によれば、ゲリラ豪雨等の緊急時、退避行動を先行できるため、坑内作業員の安全を確保できる。
【0059】
上述した監視部12及び判定部13は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。これらの各機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、トンネル監視システム1は、トンネルTの坑内にガスセンサを設け、ガス警報を提供してもよい。トンネル監視システム1は、トンネルTの坑内に温度センサや湿度センサを設け、熱中症に対する警報を提供してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 トンネル監視システム
10 監視装置
11 取得部
12 監視部
13 判定部
14 記憶部
16 表示部
20-n 警報出力部
21 位置センサ
22 スピーカ
23 カメラ
24 警告灯
25 通信部
30 気象情報提供装置
40 河川情報提供装置
G 監視画像
M 携帯機器
NW ネットワーク
P 人員
Rn 領域
S シールドマシン
T トンネル