(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078573
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】鋼板研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/12 20060101AFI20240604BHJP
B24B 21/12 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B24B7/12
B24B21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191009
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】松浦 哲志
(72)【発明者】
【氏名】池宗 省三
(72)【発明者】
【氏名】黒川 康治
【テーマコード(参考)】
3C043
3C158
【Fターム(参考)】
3C043BB11
3C043CC05
3C043CC13
3C043DD05
3C043DD12
3C158AA05
3C158AA12
3C158AA13
3C158AB01
3C158AB03
3C158BA04
3C158BA05
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】走行式の鋼板研磨装置において、鋼板の端部から表面側での削り残しや鋼板の端部での走行停止を伴わずに押し付けロールと鋼板の端部との衝突を回避すること。
【解決手段】油圧シリンダ2で押し付けロール5を介し研磨ベルト4に押圧力を付与する走行式の鋼板研磨装置において、押し付けロール5の走行方向の前方および後方に、鋼板6の端部に沿わせるテーパ面8T付き案内手段8を備える。また、油圧シリンダ2の配管に設定圧以上の圧力を開放するリリーフ弁9を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し付けロールにより研磨ベルトに押圧力を付与する走行式の鋼板研磨装置において、
前記押し付けロールの走行方向の前方および後方に案内手段を備えたことを特徴とする鋼板研磨装置。
【請求項2】
前記案内手段は、前記鋼板の端部に沿わせるテーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板研磨装置。
【請求項3】
前記押圧力を前記押し付けロールに付与する油圧シリンダを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板研磨装置。
【請求項4】
前記油圧シリンダの配管に設定圧以上の圧力を開放するリリーフ弁を備えることを特徴とする請求項3に記載の鋼板研磨装置。
【請求項5】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項3に記載の鋼板研磨装置。
【請求項6】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項4に記載の鋼板研磨装置。
【請求項7】
請求項3に記載の鋼板研磨装置を用い、前記研磨の開始前に前記押圧力の付与下で前記鋼板の被研磨面よりも低位置から前記走行を開始し、前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせて前記押し付けロールを前記被研磨面まで上昇させることを特徴とする鋼板研磨方法。
【請求項8】
請求項4に記載の鋼板研磨装置を用い、前記研磨の開始前に前記押圧力の付与下で前記鋼板の被研磨面よりも低位置から前記走行を開始し、前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせて前記押し付けロールを前記被研磨面まで上昇させることを特徴とする鋼板研磨方法。
【請求項9】
前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせることにより前記押し付けロールが上昇する際に、前記押圧力を調整することを特徴とする請求項7に記載の鋼板研磨方法。
【請求項10】
前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせることにより前記押し付けロールが上昇する際に、前記押圧力を調整することを特徴とする請求項8に記載の鋼板研磨方法。
【請求項11】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項7に記載の鋼板研磨方法。
【請求項12】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項8に記載の鋼板研磨方法。
【請求項13】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項9に記載の鋼板研磨方法。
【請求項14】
前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする請求項10に記載の鋼板研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板表面を走行して研磨する研磨装置およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品の製造工程において、鋼板の表面のスケールを除去し、または鋼板の表面疵を研磨する、いわゆる鋼板表面の手入れ作業の手段として、砥粒入りの研磨ベルトを押し付けロールで鋼板表面に押し付けて研磨する技術が行われている。この作業の効率向上のため、走行式の鋼板研磨装置も広く適用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来の装置では、押し付けロールと鋼板の端部との衝突を避けようとすると、鋼板の端部から表面側に生じる削り残しの再研磨や、鋼板の端部での走行停止を要し、研磨能率が阻害されるという問題があった。ここで、鋼板の端部とは、鋼板の表面と端面とが交わる線状部を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、鋼板の端部から表面側での削り残しや鋼板の端部での走行停止を伴わずに押し付けロールと鋼板の端部との衝突を回避する鋼板研磨装置および鋼板研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために、
図4に示すような鋼板研磨装置を用いて検討を行った。本装置は、押し付けロール5により研磨ベルト4に押圧力を付与する走行式の鋼板研磨装置である。
【0007】
前記押圧力にて研磨ベルト4を鋼板6の表面に押圧した状態で走行する仕組みとして、
図4の鋼板研磨装置は、走行部材20、傾動部材22、走行支持駆動手段(図示せず)、アイドルロール3、研磨ベルト駆動手段1、油圧シリンダ2および油圧機構7を備える。
【0008】
走行部材20は、その上端部を走行支持駆動手段(図示せず)で支持され、走行方向(紙面左右方向)および走行方向と直交する方向(紙面奥行方向)に移動する。走行部材20の下端部には傾動部材22を固定する回動自在な回動支点部24を備え、傾動部材22は、回動支点部24の周りに傾転自在である。
【0009】
傾動部材22の一端部は、押し付けロール5を回転自在に支持し、研磨ベルト4は無端であってこれを緊張状態に保持する必要性から、押し付けロール5と相対して共に無端の研磨ベルト4を巻き付けるアイドルロール3を備える。アイドルロール3は傾動部材22に固定された連結部材26で押し付けロール5と連結され、押し付けロール5との間隔は調整可能である。
【0010】
研磨ベルト駆動手段1は、傾動部材22の他端部で支持されるモータ15、モータ15で駆動回転されるプーリ16およびプーリ16の回転を押し付けロール5のロール軸5Aに伝える回転伝達ベルト17を備える。
【0011】
油圧シリンダ2は、ロッド進退方向の一端側を、走行部材20に配設した回動自在な回動支点部30に、他端側を、傾動部材22に配設した回動自在な回動支点部32に、それぞれ固定されている。
【0012】
この例では、回動支点部30の配設位置は回動支点部24の上方の位置であり、回動支点部32の配設位置は回動支点部24とプーリ16の間の位置である。よって、傾動部材22が時計回りに傾転すると押し付けロール5に押圧力が生じて研磨ベルト4が鋼板6の表面に圧着し、傾動部材22が反時計回りに傾転すると押し付けロール5に前記押圧力とは逆向きの力が生じて研磨ベルト4が鋼板6の表面から離脱する。
【0013】
油圧機構7は、油圧シリンダ2のピストンで仕切られたロッド側と反ロッド側への供給油量を調節し、双方の側を相反的に加圧する。この例ではロッド側を加圧すると、回動支点部30、32の間隔が短縮され、傾動部材22が時計回りに傾転して研磨ベルト4が鋼板6の表面に圧着される。一方、反ロッド側を加圧すると、回動支点部30、32の間隔が拡大され、傾動部材22が反時計回りに傾転して研磨ベルト4が鋼板6の表面から離脱する。以下では、ロッド側を圧着側ともいい、反ロッド側を離脱側ともいう。また、油圧シリンダ2の圧着側を加圧した状態を、圧着状態ともいい、油圧シリンダ2の離脱側を加圧した状態を、離脱状態ともいう。
【0014】
ここで、油圧機構7における「P」はポンプの略号であり、ポンプによる加圧側ラインであることを意味し、また「T」はタンクの略号であり、タンクへの戻りラインであることを意味する(
図1、
図2、
図5および
図6でも同様)。
【0015】
なお、油圧シリンダ2に代えてばね(図示せず)を用いる場合は、研磨作業中の押し付けロール5に所定の押圧力が加わるようにばね定数を設定する。
【0016】
図4の鋼板研磨装置を用いて鋼板表面の全体を研磨する作業の開始においては、圧着状態として研磨ベルト4を回転させつつ鋼板6の外側から走行して鋼板6の端面の一部を削って鋼板6の端部から表面側を通過していた。
【0017】
なお、走行方向は通常、鋼板長手方向とされる。研磨ベルト4の幅は通常、鋼板幅より狭いため、鋼板を幅方向に複数の区域に分け、隣接した区域を順次研磨する方法がとられる(例えば
図5(c)、
図6(c)参照)。このとき、ある一つの区域の研磨終了から隣の区域の研磨開始までの間に鋼板研磨装置を隣の区域側へ横移動させ、走行方向を反転させて研磨を行う。
【0018】
しかし、鋼板の端部に接近中の押し付けロール5が偶発的に鋼板表面よりも低い領域にはみ出して、鋼板の端部から表面側に達する前に、鋼板の端部と衝突し、研磨ベルト4の破断事故につながる場合があった。
【0019】
そこで、押し付けロール5と鋼板の端部との衝突を避けるため、一つには、鋼板の端部の上方を通過した後に研磨ベルト4を圧着させる方法がとられている。この方法では、
図5に示すように、離脱状態として研磨ベルト4を回転させつつ鋼板6の端部の手前から走行させて鋼板6の端部に接近し(
図5(a)参照)、鋼板6の端部から表面側を通過後に研磨ベルト4を圧着させる(
図5(b)参照)。これでは、圧着開始時点と鋼板6の端部の通過時点を合致させるのが困難で、鋼板の端部通過から圧着開始まで時間遅れが生じ、研磨開始側の鋼板の端部から表面側に削り残し(走行方向長さ50~200mm程度)が生じる(
図5(c)参照)。そのため、手作業による研磨工程の追加を要し、研磨能率が低下する。なお、
図5(c)において、4Bは作業中の研磨ベルト4と鋼板6の接触部である(
図6(c)も同じ)。
【0020】
また、もう一つには、鋼板の端部で走行を停止し、研磨ベルト4を鋼板端部表面に圧着させた後に走行を再開し、研磨を行う方法もある。この方法では、
図6に示すように、離脱状態として研磨ベルト4を回転させつつ鋼板6の端部の手前から走行させて鋼板6の端部に接近し(
図5(a)参照)、鋼板6の端部の直上で走行を停止して圧着し(
図6(b)参照)、走行再開する。これでは、研磨開始側の鋼板の端部で常に走行を停止させる必要があり(
図6(c)参照)、その分、研磨能率が低下する。また、停止状態での圧着のため、研磨面が不均一となる場合もある。
【0021】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、押し付けロールの前後に案内手段を備えることが有効であるとの知見を得た。これにより、押し付けロールが研磨ベルトを回転させつつ鋼板の外側から走行しながら鋼板の端部を通過しても鋼板の端部との衝突を防止することができた。本発明はこの知見に基き、さらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
[1] 押し付けロールにより研磨ベルトに押圧力を付与する走行式の鋼板研磨装置において、
前記押し付けロールの走行方向の前方および後方に案内手段を備えたことを特徴とする鋼板研磨装置。
[2] 前記案内手段は、前記鋼板の端部に沿わせるテーパ面を有することを特徴とする前記[1]に記載の鋼板研磨装置。
[3] 前記押圧力を前記押し付けロールに付与する油圧シリンダを備えることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の鋼板研磨装置。
[4] 前記油圧シリンダの配管に設定圧以上の圧力を開放するリリーフ弁を備えることを特徴とする前記[3]に記載の鋼板研磨装置。
[5] 前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする前記[1]~[4]のいずれか一つに記載の鋼板研磨装置。
[6] 前記[3]~[5]のいずれか一つに記載の鋼板研磨装置を用い、前記研磨の開始前に前記押圧力の付与下で前記鋼板の被研磨面よりも低位置から前記走行を開始し、前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせて前記押し付けロールを前記被研磨面まで上昇させることを特徴とする鋼板研磨方法。
[7] 前記鋼板の端部に前記案内手段のテーパ面を沿わせることにより前記押し付けロールが上昇する際に、前記押圧力を調整することを特徴とする前記[6]に記載の鋼板研磨方法。
[8] 前記押圧力:0.5~2.0kN、前記押し付けロールのロール径:φ250~350mm、前記押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび前記走行に係る走行速度:10~20m/minのうち少なくとも一つを満たすことを特徴とする前記[6]または[7]に記載の鋼板研磨方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、押し付けロールの走行方向の前方および後方に案内手段を備えたことにより、鋼板外から走行して鋼板端部表面を通過する押し付けロールと鋼板の端部との衝突を回避できる。よって、鋼板の端部から表面側での削り残しや鋼板の端部での走行停止が解消されて研磨能率が向上するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】案内手段さらにはリリーフ弁の作用を示す概略図である。
【
図5】鋼板研磨装置の押し付けロールと鋼板の端部との衝突を回避する一つの方法を示す概略図である。
【
図6】鋼板研磨装置の押し付けロールと鋼板の端部との衝突を回避するもう一つの方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。
図1は、本発明装置の一例を示すものである。この例のように本発明装置は、押し付けロール5により研磨ベルト4に押圧力を付与する走行式の鋼板研磨装置において、押し付けロール5の走行方向の前方および後方に案内手段8を備えたものである(本発明の[1])。ここで、押し付けロール5の走行方向の前方および後方とは、走行方向が正逆双方向で、正方向の場合、正側が前方で逆側が後方であり、逆方向の場合、逆側が前方で、正側が後方であることを意味する。
【0025】
この前方および後方の案内手段8は、研磨ベルト4からの離間距離が5~50mmであることが好ましい。この離間距離が5mm未満では案内手段8と研磨ベルト4の無用な接触を招く場合がある。また、50mm超では案内手段8の下端部まで接触してから研磨ベルト4に接触するまでの間、案内手段8の下端が鋼板に接触し続けるため、鋼板の不要な擦り傷および案内手段8下端の摩耗が生じる場合がある。なお、より好ましくはこの離間距離は10~20mmである。案内手段8の素材は、強度およびコスト面から鋼材が好ましい。
【0026】
なお、
図1の例では、
図4の鋼板研磨装置に新たに案内手段8およびリリーフ弁9を設置し、それ以外の構成は
図4と同様としており、
図4と同一または相当部材には同じ符号を付し説明を省略する。
【0027】
案内手段8の作用は次のとおりである。まず、圧着状態で押付けロール5が鋼板6の外側から例えば左方向に走行して鋼板6の端部(C部)に接近すると(
図2(a))、左方の案内手段8が鋼板6の端部と衝突する(
図2(b))。そして、衝突した左方の案内手段8が鋼板6の端部に沿って上昇し(
図3(a))、押し付けロール5の最下点を被研磨面の高さ方向位置まで案内する(
図3(b))。
【0028】
これにより、押し付けロール5は鋼板6の端部に衝突することなく、研磨ベルト4が滑らかに鋼板6の端部から表面側と接触し、そのまま走行して研磨を行うことができる。よって、鋼板6の端部から表面側での削り残しや鋼板6の端部での走行停止により研磨能率が阻害される問題は解消され、研磨能率が向上する。
【0029】
案内手段8の上昇に押し付けロール5を追従させる機構として、例えば案内手段8を傾動部材22に固定することが挙げられる(
図1)。
【0030】
案内手段8は、鋼板6の端部と衝突後、当該端部沿いにスムーズに上昇するために、鋼板6の端部に沿わせるテーパ面8T(
図1~
図3)を有することが好ましい(本発明の[2])。テーパ面8Tは、平面であることが好ましいが、曲面や、凹凸を有する面であってもよい。
【0031】
また、案内手段8が鋼板の端部を通過後、研磨ベルト4が鋼板6の端部から表面側と滑らかに接触するために、案内手段8の下端点は研磨作業状態の押し付けロール5の最下点より高い位置とする(
図1)。そして、前記下端点と前記最下点間の高さ方向距離は5~20mmとするのが好ましい。この高さ方向距離が5mm未満では、研磨対象の鋼板の表面凹凸により押し付けロール5が鉛直方向に沈んだ際、案内手段8が鋼板と接触する場合がある。また、20mm超では、鋼板端部との衝突時、衝突分力の半径方向成分が増大するため、ベルトが破断する場合がある。なお、より好ましくは、この高さ方向距離は10~15mmである。
【0032】
また、本発明装置において、押圧力を押し付けロール5に付与する手段は、ばね(図示せず)および油圧シリンダ2(
図1)のいずれでもよいが、押圧力の制御性の点で、油圧シリンダが好ましい(本発明の[3])。
【0033】
さらに、油圧シリンダ2の配管に設定圧以上の圧力を開放するリリーフ弁9(
図1)を備えることが好ましい(本発明の[4])。リリーフ弁9は油圧シリンダ2の圧着側(ロッド側)に接続する配管に設置される(
図1)。これによる作用は次のとおりである。
図2(b)のように鋼板6の端部(C部)沿いに上昇する案内手段8に従動して押し付けロール5が上昇すると、傾動部材22が反時計回りに傾転して前記圧着側が設定圧の状態から加圧されるが、その加圧分がリリーフ弁9により開放される。したがって、無用の圧力上昇による配管等の破損を回避でき、また、押し付けロール5に付与する押圧力を一定に保つことができる。
【0034】
また、本発明装置において、鋼板研磨装置と共通する部分は、鋼板研磨装置の実績範囲を踏襲し、次の(ア)~(エ)のうち少なくとも一つを満たすことが好ましい(本発明の[5])。
(ア)押圧力:0.5~2.0kN、(イ)押し付けロールのロール径:φ250~350mm、(ウ)押し付けロールのロール回転速度:1000~2000rpmおよび(エ)前記走行に係る走行速度:10~20m/min。
【0035】
本発明装置を用い、押し付けロール5と鋼板端面との衝突を避ける好ましい研磨方法としては、次のとおりである。すなわち、研磨の開始前に押圧力の付与下(圧着状態下)で被研磨面よりも低位置から走行開始し、鋼板の端部に案内手段8のテーパ面8Tを沿わせて押し付けロール5を被研磨面まで上昇させることである(
図2、
図3参照、本発明の[6])。
【0036】
このとき押し付けロール5が被研磨面まで上昇する間、押圧力の無用な上昇を避けるため、押圧力を調整することが好ましい(本発明の[7])。この調整にはリリーフ弁9を用いることができる。
【0037】
また、本発明装置を用いる研磨方法において、鋼板研磨装置を用いる場合と共通する部分は
図4の装置の場合の実績範囲を踏襲し、前記(ア)~(エ)のうち少なくとも一つを満たすことが好ましい(本発明の[8])。
【0038】
なお、本発明は、研磨対象が鋼板以外の金属板(例えば銅板、ニッケル板、チタン板等)であって、研磨対象板端部表面と研磨ベルトとの滑らかな接触を必要とする研磨プロセスにも適用可能である。また、本発明は、研磨手段が研磨ベルト以外のものであって、研磨対象板端部表面と研磨手段との滑らかな接触を必要とする研磨プロセスにも適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 研磨ベルト駆動手段
2 油圧シリンダ
3 アイドルロール
4 研磨ベルト
4B 研磨ベルトと鋼板の接触部
5 押し付けロール
5A 押し付けロールのロール軸
6 鋼板
7 油圧機構
8 案内手段
8T テーパ面
9 リリーフ弁
15 モータ
16 プーリ
17 回転伝達ベルト
20 走行部材
22 傾動部材
24、30、32 回動支点部
26 連結部材