IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-蓄電デバイス 図1
  • 特開-蓄電デバイス 図2
  • 特開-蓄電デバイス 図3
  • 特開-蓄電デバイス 図4
  • 特開-蓄電デバイス 図5
  • 特開-蓄電デバイス 図6
  • 特開-蓄電デバイス 図7
  • 特開-蓄電デバイス 図8
  • 特開-蓄電デバイス 図9
  • 特開-蓄電デバイス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078575
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20240604BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240604BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240604BHJP
【FI】
H01M50/184 A
H01M50/103
H01M50/119
H01M50/188
H01M50/131
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191013
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 崇志
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA17
5H011CC06
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG05
5H011HH02
5H011JJ03
5H011JJ08
5H011JJ21
5H011KK01
(57)【要約】
【課題】温度変化が生じた場合であっても、不具合が生じ難い蓄電デバイスを実現すること。
【解決手段】電池1は、挿通孔33hが設けられた金属の蓋部材30を有するケース10と、挿通孔33hに挿通された端子部材50と、ケース10と端子部材50との間を絶縁する樹脂部材70と、を有する。蓋部材30の外側を向く面33には、挿通孔33hを囲み樹脂部材70を気密に固着させる環状の孔周囲領域33Sと、樹脂部材70が当接される外側領域33Tと、が在る。孔周囲領域33Sおよび外側領域33Tの2つからなる二領域の長さである二領域長LSTは、最小二領域長LSTminに対する最大二領域長LSTmaxの比である二領域長比が3.0以上の長さであり、孔周囲領域33Sの長さであるシール長LSは、最小シール長LSminに対する最大シール長LSmaxの比であるシール長比が1.4以下の長さである。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が設けられた金属製のケース部材と、
前記挿通孔に挿通された端子部材と、
前記ケース部材に収容され、前記端子部材と接続される電極体と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し、前記ケース部材および前記端子部材それぞれに接する樹脂部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
前記ケース部材の外側を向く面には、前記樹脂部材と接する領域として、
前記挿通孔を囲む環状の領域であって、前記樹脂部材を気密に固着させるシール領域と、
前記シール領域よりも前記挿通孔の径方向の外側に位置し、前記樹脂部材が当接される当接領域と、
が在り、
前記シール領域および前記当接領域の2つからなる二領域の長さである二領域長LSTについて、最小二領域長LSTminに対する最大二領域長LSTmaxの比である二領域長比が3.0以上の長さであり、
前記シール領域の長さであるシール長LSについて、最小シール長LSminに対する最大シール長LSmaxの比であるシール長比が1.4以下の長さである、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載する蓄電デバイスであって、
前記シール長LSについて、前記シール長比が1.2以下の長さである、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載する蓄電デバイスであって、
前記当接領域のうち、前記最大二領域長LSTmaxとなる部位は、インサート成形における樹脂の注入部が含まれる、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項1に記載する蓄電デバイスであって、
前記シール領域は、前記ケース部材の外側を向く前記面に、粗面化処理が施された領域である、
ように構成される蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、直方体箱状のケースに樹脂部材を介して正負の端子部材がそれぞれ固定された角形の電池が知られている。このような蓄電デバイスでは、例えば、ケースは、矩形環状の開口部を有する有底角筒状の本体部材と、開口部を閉塞する形態で本体部材に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材とからなる。また正負の端子部材は、蓋部材に設けられた一対の挿通孔内にそれぞれ挿通されて、ケース内部からケース外部に延びている。そして、樹脂部材が、蓋部材と正負の端子部材との間をそれぞれ絶縁しつつ、蓋部材及び端子部材にそれぞれ接合して気密を保つようシールしている。関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-086813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属からなるケースと、そのケースと接合する樹脂部材とでは、熱膨張係数が異なる。そのため、例えば冷熱試験において、蓄電デバイスを低温に曝した場合に、樹脂部材の方が大きく収縮して熱膨張差が生じる。その結果、ケースの挿通孔付近の樹脂部材が破断し、気密を保てなくなるといった不具合や、ケースと端子部材との間の絶縁が破壊されてしまうといった不具合が生じる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題の解決を目的としてなされた蓄電デバイスは、
挿通孔が設けられた金属製のケース部材と、
前記挿通孔に挿通された端子部材と、
前記ケース部材に収容され、前記端子部材と接続される電極体と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し、前記ケース部材および前記端子部材それぞれに接する樹脂部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
前記ケース部材の外側を向く面には、前記樹脂部材と接する領域として、
前記挿通孔を囲む環状の領域であって、前記樹脂部材を気密に固着させるシール領域と、
前記シール領域よりも前記挿通孔の径方向の外側に位置し、前記樹脂部材が当接される当接領域と、
が在り、
前記シール領域および前記当接領域の2つからなる二領域の長さである二領域長LSTについて、最小二領域長LSTminに対する最大二領域長LSTmaxの比である二領域長比が3.0以上の長さであり、
前記シール領域の長さであるシール長LSについて、最小シール長LSminに対する最大シール長LSmaxの比であるシール長比が1.4以下の長さである、
ように構成される。
【0006】
上述した蓄電デバイスによれば、ケース部材の外側を向く面について、挿通孔の周りに樹脂部材を気密に固着させる環状のシール領域が在り、そのシール領域のシール長比が1.4以下となるように構成する。また、その環状のシール領域以外については、樹脂部材を固着させずに当接されるだけの当接領域とする。このような構成にすることで、ケース部材の外側を向く面の、挿通孔の周りで樹脂部材と接する領域について、シール領域と当接領域とからなる二領域の二領域長比が3.0以上となるような、二領域長LSTのばらつきが大きい領域であっても、シール長のばらつきは小さい領域となる。そのため、樹脂部材と金属との熱膨張差に伴う応力が大きくなり難く、さらにシール領域の特定の場所に集中し難い。その結果として、温度変化による気密性の低下や絶縁の破壊が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
本明細書に開示される技術によれば、温度変化が生じた場合であっても、不具合が生じ難い蓄電デバイスが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電池の斜視図である。
図2】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池幅方向に沿う断面図である。
図3】実施形態に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、蓋部材の上側を示す図である。
図4】実施形態に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図(図3のA-A断面図)である。
図5】実施形態に係る電池の製造方法のフローチャートである。
図6】実施形態に係る蓋部材の表面が粗面化された状態の概略を示す図である。
図7】蓋アセンブリ形成工程で形成される蓋アセンブリを示す図である。
図8】蓋アセンブリ形成工程において、金型内に溶融樹脂を注入した様子を示す説明図である。
図9】比較例に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、蓋部材の上側を示す図である。
図10】比較例に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電池1を、図1図4を参照しつつ説明する。電池1は、蓄電デバイスの一例である。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH、および電池厚み方向CHを、図1図4に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0010】
[電池の構成]
電池1は、図1および図2に示すように、金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる直方体状のケース10と、ケース10内に収容された電極体40と、を有し、さらにケース10の電池高さ方向AHの上側AH1の部位を構成する上部11に、樹脂部材70を介して支持された正極の端子部材50と、樹脂部材80を介して支持された負極の端子部材60と、を有している。電極体40は、ケース10内で、絶縁フィルムからなる袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体40内に浸され、残りはケース10の電池高さ方向AHの下側AH2の部位を構成する底部12に溜まっている。
【0011】
ケース10は、本体部材20と蓋部材30とから構成されている。本体部材20は、電池高さ方向AHの上側AH1に矩形環状の開口部21を有する有底角筒状をなしている。具体的に本体部材20は、ケース10の底部12と、ケース10の電池厚み方向CHの一方側CH1の部位を構成する長側部13と、ケース10の電池厚み方向CHの他方側CH2の部位を構成する長側部14と、ケース10の電池幅方向BHの一方側BH1の部位を構成する短側部15と、ケース10の電池幅方向BHの他方側BH2の部位を構成する短側部16と、をなしている。一方、蓋部材30は、矩形板状をなしており、ケース10の上部11をなしている。蓋部材30は、本体部材20の開口部21を閉塞する形態で、蓋部材30の周縁部31が本体部材20の開口部21の全周にわたりレーザ溶接されており、蓋部材30と本体部材20との間に溶融固化部18が形成されている。
【0012】
蓋部材30には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁19が設けられている。さらに、蓋部材30には、ケース10の内外を貫通する注液孔30kが形成されており、アルミニウムからなる円板状の封止部材39が注液孔30kに挿し込まれることによって気密に封止されている。
【0013】
また、蓋部材30のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部近傍には、蓋厚み方向DHに貫通する矩形状の挿通孔33hが設けられ、電池幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、蓋厚み方向DHに貫通する矩形状の挿通孔34hが設けられている。挿通孔33hには、アルミニウムからなる正極の端子部材50が挿通されており、正極の端子部材50は、樹脂部材70を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。挿通孔34hには、銅からなる負極の端子部材60が挿通されており、負極の端子部材60は、樹脂部材80を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。
【0014】
正極の端子部材50は、蓋部材30上にあり、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向いて露出する面53を含む矩形板状の外部端子部51と、ケース10内部および蓋部材30の挿通孔33h内に配置された内部端子部52とを有する。負極の端子部材60は、蓋部材30上にあり、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向いて露出する面63を含む矩形板状の外部端子部61と、ケース10内部および蓋部材30の挿通孔34h内に配置された内部端子部62とを有する。正極の内部端子部52は、ケース10内で電極体40の正極集電部に接合し導通している。負極の内部端子部62は、ケース10内で電極体40の負極タブ40bに接合し導通している。
【0015】
電極体40は、扁平な直方体状であり、各々電池高さ方向AHおよび電池幅方向BHに拡がる矩形状をなす、複数の正極板41と複数の負極板42とを、樹脂製の多孔質膜からなるセパレータ43を介して交互に電池厚み方向CHに積層した積層型の電極体である。各正極板41は、電池幅方向BHの一方側BH1に延出する正極集電部41rを有し、各々の正極集電部41r同士が厚み方向に重なって前述の正極タブ40aを形成している。この正極タブ40aは、前述のように正極の端子部材50の内部端子部52に接続している。また各負極板42は、電池幅方向BHの他方側BH2に延出する負極集電部42rを有し、各々の負極集電部42r同士が厚み方向に重なって前述の負極タブ40bを形成している。この負極タブ40bは、前述のように負極の端子部材60の内部端子部62に接続している。
【0016】
正極の樹脂部材70は、蓋部材30と端子部材50との間を絶縁しつつ、蓋部材30および端子部材50にそれぞれ接し、その一部が蓋部材30および端子部材50にそれぞれ固着している。同様に、負極の樹脂部材80は、蓋部材30と端子部材60との間を絶縁しつつ、蓋部材30および端子部材60にそれぞれ接し、その一部が蓋部材30および端子部材50にそれぞれ固着している。
【0017】
樹脂部材70は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、蓋部材30上に配置された外部絶縁部71と、ケース10の内部および蓋部材30の挿通孔33h内に配置された内部絶縁部72とを有し、内部絶縁部72は蓋部材30の挿通孔33hを経由して外部絶縁部71と繋がっている。樹脂部材80も、PPSからなり、蓋部材30上に配置された外部絶縁部81と、ケース10の内部および蓋部材30の挿通孔34h内に配置された内部絶縁部82とを有し、内部絶縁部82は蓋部材30の挿通孔34hを経由して外部絶縁部81と繋がっている。
【0018】
また、樹脂部材70のうち、外部絶縁部71は、図3および図4に示すように、外部端子部51の周囲を取り囲む枠状であり、詳細には、外部端子部51から電池幅方向BHの一方側BH1にある外表部71m1と、外部端子部51から電池幅方向BHの他方側BH2にある外表部71m2と、外部端子部51から電池厚み方向CHの一方側CH1にある外表部71m3と、外部端子部51から電池厚み方向CHの他方側CH2にある外表部71m4と、を有する。各外表部71m1、71m2、71m3、71m4は、挿通孔33h内で樹脂部材70の内部絶縁部72と繋がっている。
【0019】
外表部71m1の幅(電池幅方向BHの長さ)と、外表部71m3の幅(電池厚み方向CHの長さ)と、外表部71m4の幅(電池厚み方向CHの長さ)と、は概ね等しい。外表部71m2は、その一部が電池幅方向BHの他方側BH2に突起した突起部71mGを有する形状をなしている。樹脂部材70は、後述するインサート成形によって形作られており、突起部71mGは、そのインサート成形の際に溶融樹脂が注入されるゲート部材GT(図8参照)が配置される箇所である。そのため、外表部71m2の幅(電池幅方向BHの長さ)は、突起部71mGを含む場所で、突起部71mGを含まない場所と比較して広くなっている。なお、突起部71mGを含まない場所の幅は、外表部71m1の幅と概ね等しい。
【0020】
また、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向く面33は、樹脂部材70と接する領域として、挿通孔33hを囲む矩形環状の孔周囲領域33Sと、孔周囲領域33Sよりも挿通孔33hの径方向(挿通孔33hの広がる方向)の外側(挿通孔33hから離れる側)に位置する外側領域33Tと、が在る。孔周囲領域33Sの長さ(挿通孔33hの径方向の長さ)は、挿通孔33hの全周に渡ってほぼ均一である。なお、「孔周囲領域33Sの長さ」は、「孔周囲領域33Sの幅」ともいう。
【0021】
蓋部材30の面33の孔周囲領域33Sには、粗面化処理が施されおり、微細な凹凸が形成されている。そのような粗面化された領域では、金属である蓋部材30と樹脂部材70との間の密着性が高められ、さらにアンカー効果によって、粗面化処理が施されていない外側領域33Tと比較して、蓋部材30と樹脂部材70との接着力が高くなる。蓋部材30の面33には、この接着力が高い孔周囲領域33Sが挿通孔33hを囲うように設けられており、孔周囲領域33Sによって樹脂部材70が気密に固着される。孔周囲領域33Sは、シール領域の一例である。
【0022】
一方、粗面化処理が施されていない外側領域33Tでは、樹脂部材70とは接しているものの、その接着力は、粗面化された領域と比較して低い。すなわち、外側領域33Tは、樹脂部材70が固着されておらず、樹脂部材70が当接されている状態になっている。例えば外表部71m2にある突起部71mGは、蓋部材30の面33のうち外側領域33Tと接しており、蓋部材30に固着されていない。外側領域33Tは、当接領域の一例である。
【0023】
なお、蓋部材30の蓋厚み方向DHの内側DH2を向く面34にも、蓋部材30の面33と同様に、樹脂部材70と接する領域として、挿通孔33hを囲む矩形環状の孔周囲領域と、面34の孔周囲領域よりも挿通孔33hの径方向の外側に位置する外側領域とを有しており、面34の孔周囲領域にも粗面化処理が施されている一方、面34の外側領域には粗面化処理が施されていない。面34の孔周囲領域の幅は、面33の孔周囲領域33Sの幅と概ね等しい。
【0024】
また、蓋部材30の面33、34のうち、蓋部材30の挿通孔34h側にも、挿通孔33h側の面と同様に、挿通孔34hを囲む矩形環状の領域であって、粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成された領域であって、孔周囲領域33Sと概ね同じ幅の孔周囲領域があり、蓋部材30と樹脂部材80とを気密に固着している。
【0025】
また、正極の端子部材50にも、樹脂部材70と接する面の一部に粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成された領域があり、そのような領域が端子部材50の表面を一周するように設けられることで、正極の端子部材50と樹脂部材70とを気密に固着している。負極の端子部材60にも、樹脂部材80と接する面の一部に粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成された領域があり、負極の端子部材60と樹脂部材80とを気密に固着している。
【0026】
蓋部材30の面33に在る、樹脂部材70と接する各領域については次のような関係がある。すなわち、樹脂部材70を固着している孔周囲領域33Sの長さ(挿通孔33hの径方向の長さ)であるシール長LSは、最小シール長LSminに対する最大シール長LSmaxの比であるシール長比が1.4以下であり、より好ましくは1.2以下である。つまり、孔周囲領域33Sの長さは、挿通孔33hの全周に渡ってほぼ均一である。なお、シール長とは、孔周囲領域33Sの内周縁(挿通孔33hの径方向の内側の縁)の或る点から、孔周囲領域33Sの外周縁(挿通孔33hの径方向の外側の縁)まで、挿通孔33hの径方向の外側に向けて孔周囲領域33Sのみを通る直線が届き得る最小の長さのことである。
【0027】
また、外表部71m2の一部が突起部71mGをなしていることから、蓋部材30の面33に在る、樹脂部材70と接する領域では、その突起部71mGと接する箇所で、外側領域33Tの幅が大きくなっている。一方で、それ以外の箇所では、外側領域33Tの幅が狭く、その幅もほぼ均一である。従って、孔周囲領域33Sおよび外側領域33Tの2つからなる二領域332の長さである二領域長LSTについて、突起部71mGと接する箇所が、それ以外の箇所の二領域長LSTと比較して、大きくなる。なお、二領域長LSTは、孔周囲領域33Sの内周縁の或る点から、外側領域33Tの外周縁まで、挿通孔33hの径方向(孔周囲領域33Sの広がり方向)外側に向けて二領域332のみを通る直線が届き得る最大の長さのことである。
【0028】
具体的に本形態では、孔周囲領域33Sおよび外側領域33Tの2つからなる二領域332の長さである二領域長LSTは、最小二領域長LSTminに対する最大二領域長LSTmaxの比である二領域長比が3.0以上である。このように孔周囲領域33Sと外側領域33Tとの二領域の幅(すなわち外部絶縁部71の、挿通孔33hの径方向の長さ)については挿通孔33hの全周において、大きなばらつきがあるものの、蓋部材30の面33と固着される孔周囲領域33Sについては挿通孔33hの全周において、その幅(すなわち孔周囲領域33Sの幅)は略均一になっている。
【0029】
[電池の製造]
次いで、上記電池1の製造方法について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず、「蓋部材準備工程S0」において、蓋部材30を用意する。蓋部材30には、アルミニウム板を用い、あらかじめプレス加工等により注液孔30k、挿通孔33h、34hおよび安全弁19を形成することで、蓋部材30を得る。また正極の端子部材50はアルミニウム板を、負極の端子部材60は銅板を用い、それぞれをプレス加工等して得る。
【0030】
そして、プレス加工等して得た蓋部材30についてその面33の孔周囲領域33S等に相当する領域を粗面化する。具体的には、蓋部材30の孔周囲領域33S等の粗面化処理の対象の各領域について、次のような手順の処理を行う。先ず、粗面化処理の対象の領域にある第1の領域にレーザビームを照射し、その第1の領域を溶融させる。金属である蓋部材30が溶融することで、雰囲気中に放出された金属の蒸気またはプラズマから金属の粒子が生成され、再び第1の領域ないしその周辺にその粒子が堆積する。
【0031】
その後、第1の領域に隣接する第2の領域にレーザビームを照射し、その第2の領域を溶融させ、第1の領域の場合と同様に金属の粒子を堆積させる。このようなレーザビームの照射を粗面化処理の対象の領域全体に渡って行うことで、図6に示すように、粗面化処理の対象の領域に、レーザビームによる複数の窪み33Lと、金属粒子が堆積することによる複数の突起33Rと、が形成され、粗面化処理の対象の領域の全体として表面にnmオーダーの微細な凹凸が形成されることになり、例えば蓋部材30の面33に孔周囲領域33Sが形成される。なお、端子部材50、60についても同様に、所定の領域に粗面化処理を施しておく。
【0032】
次に、「蓋アセンブリ形成工程S1」において、図7に示すような蓋アセンブリ7を形成する。蓋アセンブリ7は、電池1のうち、粗面化済みの蓋部材30と、粗面化済みの端子部材50、60と、樹脂部材70、80と、電極体40と、が一体となり、電極体40が絶縁ホルダ5に包まれた部材である。蓋アセンブリ形成工程S1では、蓋部材30および端子部材50、60を用意し、樹脂部材70、80をインサート成形して、蓋部材30に樹脂部材70、80を介して端子部材50、60を一体化させる。
【0033】
具体的に蓋アセンブリ形成工程S1では、図8に示すように、上金型DE1および下金型DE2を有する金型DEのうち、下金型DE2の所定位置に、まず蓋部材30を配置する。その後、下金型DE2に配置した蓋部材30の挿通孔33h、34h内に、端子部材50、60をそれぞれ挿通する。その後、下金型DE2の上に上金型DE1を重ねて金型DEを閉じる。次に、溶融樹脂MRを金型DE内に注入し、その後に冷却して、樹脂部材70、80を成形する。その後、上金型DE1を上方に移動させて、蓋部材30に樹脂部材70、80を介して端子部材50、60を一体化した複合成形品を、下金型DE2から取り出す。
【0034】
本形態では、インサート成形によって樹脂部材70を形成するため、樹脂部材70には、金型DE内に溶融樹脂MRを注入するゲート部材GTと繋ぐ領域が設けられる。樹脂部材70の外部絶縁部71の外表部71m2に設けられる突起部71mGは、このゲート部材GTと繋ぐ領域となる。
【0035】
次に、正極板41、負極板42、およびセパレータ43を積層して形成した電極体40を用意し、電極体40の正極タブ40aおよび負極タブ40bに、上述した複合成形品の端子部材50、60の内部端子部52、62をそれぞれ溶接して接続する。その後、この電極体40を袋状の絶縁ホルダ5で包む。かくして、蓋部材30、端子部材50、60、樹脂部材70、80、電極体40、および絶縁ホルダ5からなる蓋アセンブリ7が形成される。
【0036】
次に、「閉塞工程S2」において、本体部材20を用意し、蓋アセンブリ形成工程S1にて形成された蓋アセンブリ7のうち、絶縁ホルダ5で覆われた電極体40を本体部材20内に挿入し、蓋部材30の周縁部31で本体部材20の開口部21を塞ぐ。
【0037】
次に「溶接工程S3」において、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1(電池高さ方向AHの上側AH1)から、本体部材20の開口部21及び蓋部材30の周縁部31にレーザ光を照射して溶融固化部18を形成するレーザ溶接を全周にわたり行い、ケース10を形成する。
【0038】
次に「注液・封止工程S4」において、電解液3を注液孔30kを通じてケース10内に注入し、電解液3を電極体40内に含浸させる。その後、注液孔30kを外部から封止部材39で覆い、封止部材39を全周にわたり蓋部材30に溶接して、封止部材39と蓋部材30との間を気密に封止する。
【0039】
次に「初充電・エージング工程S5」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり放置して、電池1のエージングを行う。かくして、電池1が完成する。
【0040】
前述したようにインサート成形によって樹脂部材70と蓋部材30とを一体化させる場合、蓋部材30の面33と接する外部絶縁部71には、ゲート部材GTが配置される突起部71mGが必要である。樹脂部材70と蓋部材30とを強く固着させ、樹脂部材70と蓋部材30との間の気密性を高めるためには、固着させる領域であるシール領域を広くする、すなわち樹脂部材70と接する領域全体に粗面化処理を施すことが考えられる。例えば、電池1のような場合には、蓋部材30の面33のうち、図9および図10に示すようにインサート成形において溶融樹脂MRを注入する際のゲート部材GTが配置される突起部71mGと接するゲート配置領域33Gにも粗面化処理を施すことが考えられる。
【0041】
しかしながら、金属の蓋部材30、例えば本形態の電池1でいうところのアルミニウムと、樹脂部材70、例えば本形態の電池1でいうところのPPSと、のそれぞれの線膨張係数が異なる。そのため、シール領域の一部の幅を広くした場合、温度変化が大きい環境、例えば冷熱試験において熱膨張差(熱収縮差)が生じた場合、その一部にかかる応力、特に挿通孔33hの径方向にかかる引張応力によって、孔周囲領域33S付近の樹脂部材70が破断する場合がある。破断した場所が挿通孔33hから離れた場所であれば気密性や絶縁性に影響し難いが、破断した場所が挿通孔33hの付近であった場合、気密性が低下したり、絶縁性が破壊されてしまう可能性が高まる。
【0042】
これに対し、実施の形態の電池1では、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向く面33について、挿通孔33hの周りに樹脂部材70を気密に固着させる環状の孔周囲領域33Sが在り、孔周囲領域33Sの長さであるシール長LSについて、そのシール長比(最大シール長LSmax/最小シール長LSmin)が1.4以下となるように構成する。また、その環状の孔周囲領域33S以外については、樹脂部材を固着させずに当接されるだけの外側領域33Tとする。このような構成にすることで、蓋部材30の面33のうち、挿通孔33hの周りで樹脂部材70と接する領域について、孔周囲領域33Sと外側領域33Tとからなる二領域の二領域長比(最大二領域長LSTmax/最小二領域長LSTmin)が3.0以上となるような、二領域長LSTのばらつきが大きい領域であっても、シール長LSのばらつきは小さい領域となる。そのため、樹脂部材70と金属の蓋部材30との熱膨張差に伴う応力が大きくなり難く、さらに孔周囲領域33Sの特定の場所に応力が集中し難い。その結果として、温度変化による気密性の低下や絶縁の破壊が生じることを抑制できる。
【0043】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば実施形態では、ケース10内に収容する電極体として、積層型の電極体40を例示したが、電極体は扁平状捲回型の電極体でもよい。また複数の電極体をケース内に収容してもよい。
【0044】
また、実施の形態では、リチウムイオン電池に適用しているが、一般的な蓄電デバイスであれば適用可能であり,例えばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池でも本発明を適用できる。
【0045】
また、実施の形態では、粗面化処理として、レーザビームによる金属堆積物(アンカー)を金属表面に形成しているが、一般的な粗面化処理であれば適用可能であり、例えば酸系のエッチング剤による細孔を金属表面に形成してもよい。
【0046】
また、実施の形態では、蓋部材30の面33の孔周囲領域33Sが、挿通孔33hから径方向の外側に在るが、必ずしも厳密に挿通孔33hから在ることはなく、挿通孔33hと孔周囲領域33Sの内周縁との間に粗面化処理が施されていない領域が在ってもよい。
【0047】
また、実施の形態では、樹脂部材70のうち、外表部71m2が突起部71mGを有するような凹凸形状になっているが、外表部71m2の形状はこれに限るものではなく、例えばゲート部材GTが配置される箇所を含むような矩形であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
20 本体部材
30 蓋部材
33h 挿通孔
33S 孔周囲領域(シール領域)
33T 外側領域(当接領域)
50 端子部材
70 樹脂部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10