(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078576
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】画像処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191015
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】岡 礼華
(72)【発明者】
【氏名】馬場 孝之
(72)【発明者】
【氏名】石原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】烏谷 あゆ
(72)【発明者】
【氏名】山口 達也
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093CA35
4C093FD03
4C093FD09
4C093FF09
4C093FF17
(57)【要約】
【課題】臓器を撮影することで得られる画像データから腫瘤を精度よく検出する。
【解決手段】画像処理方法は、第1~第3のステップを有する。第1のステップは、臓器を撮影することで得られる画像データから臓器を表す臓器領域および臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出する。第2のステップは、画像データを利用して臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成する。第3のステップは、抽出した腫瘤候補領域のうちから、臓器領域内で非臓器領域の外縁部のみに存在する腫瘤候補領域を除去する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器を撮影することで得られる画像データから前記臓器を表す臓器領域および前記臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出し、
前記画像データを利用して前記臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成し、
抽出した前記腫瘤候補領域のうちから、前記臓器領域内で前記非臓器領域の外縁部のみに存在する腫瘤候補領域を除去する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記非臓器領域を生成する処理において、
所定の画素値を表す閾値を用いて前記画像データを2値化することにより、前記閾値より高い画素値を有する画素が第1の値で表され、前記閾値より低い画素値を有する画素が第2の値で表される2値化画像を生成し、
前記2値化画像において、前記臓器領域または前記臓器領域を膨張させることで得られる膨張臓器領域の内側で前記第2の値で表される画素を検出することで前記非臓器領域を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記閾値は、前記画像データにおいて前記臓器に対応する画素値の範囲と前記腫瘤に対応する画素値の範囲との間の画素値である
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記閾値は、前記臓器領域に属する画素の画素値のヒストグラムに基づいて決定される
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記閾値は、前記臓器領域内で最も頻度が高い画素値から前記ヒストグラムの標準偏差を引算することで得られる
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理方法。
【請求項6】
臓器を撮影することで得られる画像データから前記臓器を表す臓器領域および前記臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出し、
前記画像データを利用して前記臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成し、
前記非臓器領域に対して前記腫瘤候補領域が占める割合が所定の閾値より低いときに、前記腫瘤候補領域が前記臓器内の腫瘤に対応していないと判定する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
前記腫瘤候補領域の重心位置が前記非臓器領域の輪郭により包含され、且つ、前記非臓器領域に対して前記腫瘤候補領域が占める割合が所定の閾値より低いときに、前記腫瘤候補領域が前記臓器内の腫瘤に対応していないと判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
抽出した前記腫瘤候補領域のうちから、前記臓器内の腫瘤に対応していないと判定した腫瘤候補領域を除去する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項9】
臓器を撮影することで得られる画像データから前記臓器を表す臓器領域および前記臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出し、
前記画像データを利用して前記臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成し、
抽出した前記腫瘤候補領域のうちから、前記臓器領域内で前記非臓器領域の外縁部のみに存在する腫瘤候補領域を除去する
処理をコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像を処理する方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
CT(computed tomography)画像又はMRI(magnetic resonance imaging)画像などの3次元画像を利用する医療行為が広く普及している。また、医師の負担を削減するために、コンピュータを用いて医用画像を処理することで、病変の有無を判定すると共に病変の位置を特定して医師に提示する診断支援が実用化されている。なお、コンピュータを用いて医用画像を処理する方法は、例えば、特許文献1~4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開2010/0183211
【特許文献2】米国特許6366797
【特許文献3】特表2013-504341号公報
【特許文献4】特表2008-503294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像処理により、病変の一種である腫瘤を検出する方法が実用化されている。ただし、外科手術等により臓器の一部が除去されて臓器内部に空洞が存在する場合には、腫瘤の検出が困難になることがある。
【0005】
本発明の1つの側面に係わる目的は、臓器を撮影することで得られる画像データから腫瘤を精度よく検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様に係わる画像処理方法は、臓器を撮影することで得られる画像データから前記臓器を表す臓器領域および前記臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出し、前記画像データを利用して前記臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成し、抽出した前記腫瘤候補領域のうちから、前記臓器領域内で前記非臓器領域の外縁部のみに存在する腫瘤候補領域を除去する。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様によれば、臓器を撮影することで得られる画像データから腫瘤を精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】パーシャルボリューム効果について説明する図である。
【
図3】腫瘤の誤検出を抑制する方法を説明する図である。
【
図4】本発明の実施形態に係わる画像処理装置の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係わる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】画像データ、臓器領域、および腫瘤候補領域の一例を示す図である。
【
図7】非臓器領域、誤検出領域、および除去されずに残った腫瘤候補領域の一例を示す図である。
【
図8】非臓器領域を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】画像データを2値化するための閾値を決定する方法を説明する図である。
【
図10】画像データの2値化の一例を示す図である。
【
図11】臓器を表す画像に対する膨張処理の一例を示す図である。
【
図12】2値化画像および膨張臓器領域に基づいて非臓器画像を生成する処理の一例を示す図である。
【
図13】誤検出領域を特定する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】非臓器領域の輪郭を抽出する手順の一例を示す図である。
【
図16】腫瘤候補領域が誤って抽出された領域であるか否かを判定する方法の一例を示す図である。
【
図17】画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、腫瘤を検出する方法の一例を示す。この実施例では、3次元医用画像の画素値を利用して腫瘤が検出される。3次元医用画像は、CTまたはMRIにより得られるものとする。画素値は、この実施例では、画像内の各画素の輝度を表す。診断対象の臓器は、特に限定されるものではないが、例えば、肝臓である。尚、この実施例では、
図1(a)に示すように、臓器内に腫瘤および空洞が存在する。腫瘤は、臓器(主に、肝臓)の変形に生じるこぶである。空洞は、例えば、外科手術により臓器の一部を除去することで形成されたものである。
【0010】
画像処理装置は、臓器を撮影することで得られる画像データの各画素の画素値を解析する。ここで、医用画像において、臓器、腫瘤、および空洞は、それぞれ特徴的な画素値を有する。具体的には、臓器に対応する画像領域内の画素値は大きい(すなわち、輝度が高い)。また、空洞に対応する画像領域内の画素値は小さい(すなわち、輝度が低い)。そして、腫瘤に対応する画像領域内の画素値は、臓器に対応する画素値より小さいが、空洞に対応する画素値より大きい。したがって、医用画像の各画素の画素値を解析すれば、臓器の腫瘤を検出できる。
【0011】
例えば、
図1(b)は、腫瘤に対応する画像領域の画素値のヒストグラムを示す。したがって、医用画像内のある領域において
図1(b)に示すようなヒストグラムが得られたときには、画像処理装置は、その領域に腫瘤が存在していると推定する。
【0012】
ただし、臓器内に空洞がある場合、臓器と空洞との境界には、パーシャルボリューム効果により、画素値が徐々に変化する領域が現れる。例えば、
図2に示すように、CT画像の1つのスライス内に臓器領域および非臓器領域(ここでは、空洞領域)が含まれるものとする。この場合、臓器領域と空洞領域との間の境界領域では、異なる強度の信号がボクセル(画素×スライス厚)内で平均化されるので、画素値が徐々変化していく。具体的には、臓器領域から空洞領域に向かって画素値が徐々に小さくなっていく。なお、以下の記載では、パーシャルボリューム効果により画素値が徐々に変化する領域を「パーシャルボリューム効果領域」と呼ぶことがある。
【0013】
ここで、腫瘤領域の画素値は、上述したように、臓器領域の画素値より小さく、且つ、空洞領域の画素値より大きい。このため、臓器領域と空洞領域との間の境界領域の画素値が、腫瘤領域の画素値とほぼ同じになることがある。例えば、
図1(c)は、臓器領域と空洞領域との間に現れるパーシャルボリューム効果領域の画素値のヒストグラムを示す。ところが、このヒストグラムは、
図1(b)に示す腫瘤のヒストグラムと類似している。このため、画像処理装置は、腫瘤領域とパーシャルボリューム効果領域とを識別できないことがある。すなわち、臓器内に空洞が存在するときは、臓器領域と空洞領域との間に現れるパーシャルボリューム効果領域を、誤って腫瘤領域として抽出してしまうおそれがある。したがって、公知の技術により腫瘤候補を抽出するだけでは、医師は、実際の腫瘤に対応する画像と、パーシャルボリューム効果に起因する画像とを識別しなければならい。そこで、本発明の実施形態に係わる画像処理装置は、臓器内に空洞が存在するときであっても、腫瘤を精度よく検出する機能を備える。
【0014】
図3は、本発明の実施形態において腫瘤の誤検出を抑制する方法を説明する図である。なお、以下の記載において、臓器領域は、医用画像内で、診断対象の臓器に対応する領域を意味する。腫瘤候補領域は、医用画像内で、腫瘤の特徴を有する領域を意味する。したがって、画像処理装置により抽出される腫瘤候補領域は、腫瘤に対応しない領域(たとえば、上述したパーシャルボリューム効果領域)を含むことがある。非臓器領域は、医用画像内で、診断対象の臓器に対応していない領域を意味する。空洞領域は、医用画像内で、診断対象の臓器内の空洞に対応する領域を意味する。
【0015】
本発明の実施形態に係わる画像処理装置は、CT画像などの医用画像から腫瘤候補領域1を抽出する。腫瘤候補領域は、公知の技術により抽出可能である。例えば、U-Net等のセグメンテーション技術により医用画像から腫瘤候補領域を抽出することができる。なお、下記の文献Yang Zhangには、U-Netを利用して未知の医用画像から腫瘤領域などの病変領域を抽出する方法が記載されている。
Yang Zhang, et.al, Automatic Breast and Fibroglandular Tissue Segmentation in Breast MRI Using Deep Learning by a Fully-Convolutional Residual Neural Network U-Net, Academic Radiology 26(11), pp.1526-1535 (2019)
【0016】
また、画像処理装置は、医用画像から非臓器領域2を抽出する。非臓器領域は、たとえば、画素値に基づいて抽出される。ここで、この実施例では、臓器領域は、他の領域よりも大きな画素値を有する。よって、医用画像において所定の閾値より小さい画素値を有する画素を検出することで、非臓器領域を抽出できる。なお、非臓器領域は、腫瘤候補領域および空洞領域を含む。
【0017】
そして、画像処理装置は、位置合わせを行いながら腫瘤候補領域1と非臓器領域2とを重ね合わせる。ここで、診断対象の臓器内に実際に腫瘤が存在する場合は、その腫瘤は、腫瘤候補領域1として抽出されると共に、非臓器領域2としても抽出される。この場合、
図3(a)に示すように、腫瘤候補領域1および非臓器領域2の形状は互いに類似しており、また、腫瘤候補領域1および非臓器領域2はほぼ同じ位置から抽出される。よって、腫瘤候補領域1および非臓器領域2を互いに重ね合わせると、腫瘤候補領域1の全部または大部分が非臓器領域2と重複することになる。即ち、非臓器領域2の面積(または、体積)に対して、腫瘤候補領域1および非臓器領域2が互いに重複する重複領域の面積(または、体積)の比率が高くなる。したがって、非臓器領域2の面積に対する重複領域の面積の比率が所定の閾値より高いときには、画像処理装置は、腫瘤候補領域1が腫瘤に対応していると推定する。なお、各領域の面積は、例えば、領域内の画素の個数で表される。
【0018】
これに対して、例えば、非臓器領域2が臓器内の空洞を表しており、臓器領域と空洞領域との間の境界領域(すなわち、パーシャルボリューム効果領域)が腫瘤候補領域として抽出されたときは、
図3(b)に示すように、腫瘤候補領域1は、非臓器領域2の外縁部のみに現れる。よって、腫瘤候補領域1が非臓器領域2の外縁部のみに現れるときは、画像処理装置は、腫瘤候補領域1が腫瘤に対応していないと判定する。すなわち、腫瘤候補領域1は、誤って抽出された腫瘤候補領域であると判定される。なお、「非臓器領域2の外縁部のみ」は、非臓器領域2の中心に近い領域を含まないこと、及び/又は、非臓器領域2の外縁から遠く離れていないことを意味する。
【0019】
また、この場合、
図3(b)に示すように、腫瘤候補領域1および非臓器領域2の形状は互いに大きく異なる。このため、腫瘤候補領域1および非臓器領域2を互いに重ね合わせたときに、非臓器領域2の面積に対する重複領域の面積の比率は小さくなる。したがって、非臓器領域2の面積に対する重複領域の面積の比率が所定の閾値より低いときには、画像処理装置は、腫瘤候補領域1に対応していないと判定することができる。
【0020】
このように、本発明の実施形態によれば、画像処理により得られる腫瘤候補領域の中から、臓器領域と空洞領域との間の境界領域(即ち、パーシャルボリューム効果領域)を識別することができる。すなわち、パーシャルボリューム効果領域が腫瘤候補領域として抽出される場合であっても、抽出された腫瘤候補領域の中からそのパーシャルボリューム効果領域を除去することができる。したがって、腫瘤の誤検出が抑制され、医師の負担が軽減される。
【0021】
なお、腫瘤は、基本的に、太い動脈(肝臓においては、肝動脈)の近傍に現れる。すなわち、臓器の外側表面部に腫瘤が現れることは稀である。したがって、以下では、臓器の内部に現れる腫瘤を検出する方法について記載する。
【0022】
図4は、本発明の実施形態に係わる画像処理装置の一例を示す。本発明の実施形態に係わる画像処理装置10は、検出部11、生成部12、判定部13、および出力部14を備え、撮影装置20により撮影された画像を処理する。なお、画像処理装置10は、
図4に示していない他の機能を備えてもよい。
【0023】
撮影装置20は、被診断者を撮影することでその被診断者の画像データを生成する。ここで、撮影装置20は、例えばCT撮影装置である。この場合、撮影装置20は、放射線などを利用して診断対象の臓器を走査することにより、複数の断面画像(または、複数のスライス)を取得する。すなわち、撮影装置20は、診断対象の臓器を含む3次元画像データを生成する。ただし、撮影装置20は、CT撮影装置に限定されるものではなく、例えば、MRI撮影装置であってもよい。
【0024】
検出部11は、撮影装置20により得られる画像データから、診断対象の臓器に対応する臓器領域およびその臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出する。臓器領域および腫瘤候補領域は、上述したように、公知の技術により画像データから抽出される。一例としては、検出部11は、U-Net等のセグメンテーション技術により画像データから臓器領域および腫瘤候補領域を抽出する。
【0025】
生成部12は、検出部11により抽出された臓器領域に基づいて、対象臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成する。なお、対象臓器内に腫瘤が存在する場合、その腫瘤に対応する領域は、非臓器領域として検出される。また、対象臓器内に空洞が存在する場合、その空洞に対応する領域も非臓器領域として検出される。
【0026】
判定部13は、検出部11により抽出された腫瘤候補領域が対象臓器内の腫瘤に対応するか否かを判定する。すなわち、判定部13は、検出部11により抽出された腫瘤候補領域が誤検出領域であるか否かを判定する。このとき、判定部13は、例えば、
図3を参照して説明したように、非臓器領域に対して腫瘤候補領域が占める割合に基づいて、腫瘤候補領域が誤検出領域であるか否かを判定する。そして、腫瘤候補領域が誤検出領域であるときは、判定部13は、その腫瘤候補領域に対応する画像を画像データから除去してもよい。なお、以下の記載では、ある非臓器領域に対して対応する腫瘤候補領域が占める割合を「重複率」と呼ぶことがある。また、誤検出領域は、腫瘤に対応しない画像領域であるにもかかわらず腫瘤候補領域として抽出されてしまった領域を意味する。
【0027】
出力部14は、誤検出領域に対応する画像が除去された画像データを出力する。あるいは、出力部14は、医用画像を表示するときに、除去されなかった腫瘤候補領域を強調してもよい。このように、本発明の実施形態によれば、画像処理により得られる腫瘤候補領域の中から、腫瘤に対応しないと推定される腫瘤候補領域が除去される。したがって、本発明の実施形態に係わる画像処理装置10を利用することにより、腫瘤の有無を診断する際の医師の負担が軽減される。
【0028】
図5は、本発明の実施形態に係わる画像処理方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、
図4に示す画像処理装置10により実行される。
【0029】
S1において、画像処理装置10は、被診断者の臓器を撮影することで得られる画像データを取得する。この画像データは、
図4に示す撮影装置20から画像処理装置10に与えられる。或いは、撮影装置20により得られる画像データが不図示の記憶装置に保存されるときは、画像処理装置10は、その記憶装置から画像データを取得する。
【0030】
S2において、検出部11は、画像処理装置10が取得した画像データから、診断対象の臓器に対応する臓器領域およびその臓器内の腫瘤を識別するための特徴を有する腫瘤候補領域を抽出する。この実施例では、画像処理装置10が
図6(a)に示す画像データを取得するものとする。画像データは、上述したように、複数のスライスから構成される。そして、U-Net等の公知のセグメンテーション技術により、
図6(b)に示す臓器領域および
図6(c)に示す腫瘤候補領域が抽出される。このとき、検出部11は、所定範囲内の画素値を有する画素を検出することで腫瘤候補領域を抽出してもよい。この場合、腫瘤を識別するための特徴は、所定範囲内の画素値である。なお、
図6(b)に示す例では、臓器輪郭線の内側の領域が臓器領域を表す。ただし、臓器輪郭線の内側に臓器に対応しない領域が存在する。また、
図6(c)に示す例では、3個の腫瘤候補領域1a~1cが抽出されている。
【0031】
S3において生成部12は、検出部11により抽出された臓器領域に基づいて、対象臓器が存在していない領域を表す非臓器領域を生成する。このとき、生成部12は、画像データを構成する各画素の画素値に基づいて非臓器領域を生成してもよい。ここで、この実施例では、臓器に対応する領域の画素値は、他の領域の画素値と比較して高くなる。したがって、生成部12は、画素値が所定の閾値より低い画素を検出することで、非臓器領域を生成することができる。この場合、閾値は、後で説明するが、臓器領域内の各画素の画素値の分布に基づいて決定されてもよい。
【0032】
図7(a)は、生成部12により生成される非臓器領域の一例を示す。
図7(a)においては、黒色の領域が非臓器領域に相当する。また、輪郭線の外側の領域も非臓器領域に相当する。なお、生成部12は、Axial面、Sagittal面、およびCoronal面それぞれにおいて非臓器領域を生成する。これにより、3次元の非臓器領域が生成される。
【0033】
S4において、判定部13は、生成部12により生成される非臓器領域を利用して、検出部11により抽出された各腫瘤候補領域が対象臓器内の腫瘤に対応するか否かを判定する。すなわち、判定部13は、各腫瘤候補領域が誤検出領域であるか否かを判定する。誤検出領域は、腫瘤に対応する領域でないにもかかわらず腫瘤候補領域として抽出された領域を意味する。なお、
図7(b)に示す例では、
図6(c)に示す3個の腫瘤候補領域1a~1cのうちで、腫瘤候補領域1bが誤検出領域と判定されている。
【0034】
誤検出領域が見つかったときは、判定部13は、検出部11により抽出された腫瘤候補領域からその誤検出領域を除去する。実施例では、
図6(c)に示す腫瘤候補領域1a~1cから腫瘤候補領域1bが除去される。この結果、
図7(c)に示すように、2個の腫瘤候補領域1a、1cが残る。
【0035】
この後、出力部14は、除去されずに残った腫瘤候補領域を識別する画像を出力する。このとき、出力部14は、被診断者の臓器を表す画像において、除去されなかった腫瘤候補領域を強調表示してもよい。このように、本発明の実施形態に係わる画像処理方法によれば、公知の技術により検出される腫瘤候補領域のうちから、誤って検出された腫瘤候補領域が除去される。すなわち、腫瘤に対応する可能性が高い腫瘤候補領域を特定することができる。したがって、腫瘤の有無を診断する際の医師の負担が軽減される。
【0036】
図8は、非臓器領域を生成する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、
図5に示すS3に相当する。
【0037】
S11において、生成部12は、画像データを2値化するための閾値を決定する。一例としては、生成部12は、臓器領域内の画像の画素値のヒストグラムに基づいて閾値を決定する。ここで、臓器領域は、
図5に示すS2において抽出される。このとき、生成部12は、臓器領域内の各画素の画素値を取得してヒストグラムを作成する。そして、生成部12は、このヒストグラムに基づいて閾値を決定する。
【0038】
図9は、画像データを2値化するための閾値を決定する方法を説明する図である。
図9において、横軸は画像データの画素値(即ち、輝度)を表す。縦軸は、画素が検出される個数または頻度を表す。
【0039】
2値化のための閾値は、例えば、
図9(a)に示すように、臓器領域内の大部分の画素の画素値がその閾値より高くなるように決定される。ただし、この閾値は、腫瘤に対応する領域内の画素値の上限値およびパーシャルボリューム効果が生じている領域内の画素値の上限値より高くなるように設定される。或いは、この閾値は、臓器に対応する画素値の範囲と腫瘤に対応する画素値の範囲との間の画素値である。すなわち、この閾値を用いて画像データを2値化したときに、臓器領域が実質的に検出されず、且つ、腫瘤候補領域および空洞領域などが検出されるように閾値が決定される。
【0040】
このような閾値は、例えば、臓器領域内の画像の画素値のヒストグラムを用いて決定できる。例えば、生成部12は、
図9(b)に示すように、ヒストグラムの最頻値および標準偏差に基づいて閾値を決定する。一例としては、最頻値から標準偏差を引算することで閾値が得られる。この実施例では、最も頻度が高い画素値は「159」である。また、このヒストグラムの標準偏差は「50」である。よって、閾値は「109」である。
【0041】
S12において、生成部12は、S11で決定した閾値を用いて、画像処理装置10が取得した画像データを2値化する。例えば、画素値が閾値より大きい画素に対して「1」を与え、画素値が閾値より小さい画素に対して「0」を与えることで、画像データの2値化が行われる。画像データの2値化の一例を
図10に示す。2値化された画像データにおいては、ノイズ(細かいパターンおよび細いパターン)が現れることがある。なお、以下の記載では、2値化された画像データを「2値化画像」と呼ぶことがある。
【0042】
上述のようにして決定した閾値で画像データを2値化すると、臓器領域内の大部分の画素が「1」に設定される。このとき、臓器領域内の一部の画素が「0」に設定されることがある。ただし、診断対象の臓器が肝臓である場合、少なくとも肝実質に対応する領域は「1」に設定されると考えられる。
【0043】
S13において、生成部12は、臓器領域に対して膨張処理を実行する。このとき、生成部12は、例えば、すべての要素の値が「1」である15×15画素のカーネルを使用して膨張処理を行う。膨張処理の一例を
図11に示す。なお、以下の記載において、S13の膨張処理により得られる臓器領域を「膨張臓器領域」と呼ぶことがある。
【0044】
S14において、生成部12は、S12で得られる2値化画像およびS13で得られる膨張臓器領域に基づいて非臓器画像を生成する。例えば、生成部12は、膨張臓器領域の外周線を検出し、2値化画像にその外周線を重ね合わせる。生成部12は、
図12に示すように、2値化画像において、膨張臓器領域の外周線の外側の各画素の値を「0」に設定する。また、生成部12は、オープニング処理により、小さいパターンまたは細かいパターンを除去してもよい。オープニング処理は、例えば、すべての要素の値が「1」である5×5画素のカーネルを用いて実現される。そして、膨張臓器領域の外周線の内側に残る「0」画素を検出することにより非臓器領域が得られる。
図12に示す例では、膨張臓器領域の外周線の内側に残る黒色の領域が、非臓器領域として検出される。なお、非臓器領域は、明らかに対象臓器ではない領域を意味する。ただし、非臓器領域は、臓器に対応する画素を完全に含まない領域を意味するものではなく、臓器に対応する画素を実質的に含まない領域を意味する。例えば、診断対象の臓器が肝臓である場合、非臓器領域は、明らかに肝実質ではない領域を意味する。
【0045】
なお、この実施例では、臓器領域に対して膨張処理が行われ、2値化画像および膨張臓器画像に基づいて非臓器領域が生成されるが、本発明の実施形態はこの手順に限定されるものではない。本発明の実施形態に係わる画像処理方法は、臓器領域に対して膨張処理を行うことなく、2値化画像および臓器画像に基づいて非臓器領域を生成してもよい。
【0046】
生成部12は、上述したように、Axial面、Sagittal面、およびCoronal面それぞれにおいて
図8に示すフローチャートの処理を実行する。或いは、生成部12は、各スライスに対して
図8に示すフローチャートの処理を実行してもよい。この結果、3次元の非臓器領域が生成される。
【0047】
図13は、誤検出領域を特定する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図5に示すS4に相当する。
【0048】
S21において、判定部13は、生成部12により生成された非臓器領域の輪郭を検出する。ただし、判定部13は、最も外側の輪郭は検出しない。すなわち、判定部13は、臓器領域の外縁と非臓器領域との境界を表す輪郭は検出しない。この結果、臓器領域の内部に位置する非臓器領域の輪郭が検出される。なお、臓器領域の内部に位置する非臓器領域は、腫瘤または空洞などに対応する。
【0049】
例えば、
図14に示す非臓器領域の輪郭が検出されるものとする。この場合、最も外側の輪郭を除去することにより、非臓器領域2dの輪郭および非臓器領域2eの輪郭が得られる。なお、
図14においては、1つの平面(例えば、Axial面、Sagittal面、またはCoronal面のうちの1つ)により切断された非臓器領域の輪郭が描かれている。
【0050】
S22において、判定部13は、検出部11により抽出された各腫瘤候補領域の重心位置を検出する。すなわち、各腫瘤候補領域について、重心位置を表す3次元座標が計算される。この実施例では、
図15に示すように、2個の腫瘤候補領域1dおよび1eが得られている。この場合、腫瘤候補領域1dの重心座標(Xd,Yd,Zd)および腫瘤候補領域1eの重心座標(Xe,Ye,Ze)がそれぞれ計算される。
【0051】
続いて、判定部13は、各腫瘤候補領域に対してS23~S26の処理を実行する。すなわち、判定部13は、腫瘤候補領域を1つずつ順番に選択してS23~S26の処理を実行する。以下の記載では、S23~S26の処理が実行される腫瘤候補領域を「対象腫瘤候補領域」と呼ぶことがある。
【0052】
S23において、判定部13は、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在するか否かを判定する。すなわち、対象腫瘤候補領域の重心が、いずれかの非臓器領域の輪郭内に位置するかが判定される。以下の記載では、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域を「包含非臓器領域」と呼ぶことがある。そして、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在しないときは(即ち、包含非臓器領域が見つからなかったときには)、対象腫瘤候補領域に対する処理は終了する。
【0053】
対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在するときは(即ち、包含非臓器領域が見つかったときには)、判定部13は、S24において、包含非臓器領域に対する対象腫瘤候補領域の重複率を計算する。すなわち、判定部13は、包含非臓器領域に対して対象腫瘤候補領域が占める割合を計算する。重複率は、Axial面、Sagittal面、およびCoronal面それぞれにおいて計算される。
【0054】
S25において、判定部13は、S24で計算した割合(すなわち、重複率)と所定の閾値とを比較する。このとき、判定部13は、Axial面、Sagittal面、およびCoronal面それぞれにおいて、重複率と閾値とを比較する。そして、すべての面において重複率が閾値より大きいときには、対象腫瘤候補領域に対する処理は終了する。これに対して、1以上の面において重複率が閾値より小さいときには、判定部13は、S26において、対象腫瘤候補領域が誤検出領域であると判定する。
【0055】
判定部13は、各腫瘤候補領域に対してS23~S26の処理を実行する。すなわち、各腫瘤候補領域がそれぞれ誤検出領域であるか判定される。そして、判定部13は、誤検出領域であると判定された腫瘤候補領域を識別する情報を出力する。
【0056】
この後、画像処理装置10は、
図5に示すS5の処理を実行する。すなわち、画像処理装置10は、検出部11により抽出された腫瘤候補領域から、誤検出領域と判定された腫瘤候補領域を除去する。そして、画像処理装置10は、除去されずに残っている腫瘤候補領域を識別する情報を出力する。このとき、画像処理装置10は、被診断者の臓器を表す画像において、残っている腫瘤候補領域を強調表示してもよい。
【0057】
ここで、腫瘤候補領域を除去するか否かを判定する手順の一例を記載する。ここでは、
図14に示す非臓器領域2dおよび2eが生成され、
図15に示す腫瘤候補領域1dおよび1eが抽出されているものとする。また、各腫瘤候補領域1d、1eの重心位置が計算されている。
【0058】
対象腫瘤候補領域として腫瘤候補領域1dが選択されたときは、画像処理装置10は、腫瘤候補領域1dの重心を包含する非臓器領域を探す。この実施例では、非臓器領域2dが腫瘤候補領域1dの重心を包含するものとする。すなわち、腫瘤候補領域1dの重心が非臓器領域2dの輪郭内に位置する。この場合、画像処理装置10は、非臓器領域2dに対する腫瘤候補領域1dの重複率を計算する。具体的には、Axial面、Sagittal面、およびCoronal面それぞれにおいて、非臓器領域2dに対して腫瘤候補領域1dが占める割合が計算される。
【0059】
図16(a)に示す例では、Axial面、Sagittal面、またはCoronal面のうちの1つの面(例えば、Axial面)において、非臓器領域2dに対して腫瘤候補領域1dが占める割合が計算される。なお、三角形のシンボルは、腫瘤候補領域1dの重心を表す。画像処理装置10は、非臓器領域2dに属する画素の数をカウントする。また、画像処理装置10は、非臓器領域2dおよび腫瘤候補領域1dが互いに重複する領域に属する画素の数をカウントする。そして、「重複領域の画素の数」を「非臓器領域2dの画素の数」で割算することで、非臓器領域2dに対する腫瘤候補領域1dの重複率が計算される。この実施例では、重複率として「30パーセント」が得られるものとする。
【0060】
画像処理装置10は、Sagittal面およびCoronal面においても同様に重複率を計算する。この結果、重複率として「2パーセント」および「3パーセント」が得られるものとする。そして、画像処理装置10は、各面に対して計算される重複率と所定の閾値とを比較する。この実施例では、閾値は80パーセントである。この場合、すべての面において、重複率が閾値より小さい。したがって、画像処理装置10は、腫瘤候補領域1dが誤検出領域であると判定する。ここで、臓器と空洞との境界領域は、上述したように、パーシャルボリューム効果により、腫瘤領域と近似する画素値を有する。そうすると、
図14、
図15、および
図16(a)において、非臓器領域2dは、例えば、臓器内の空洞に対応すると考えられる。また、腫瘤候補領域1dは、例えば、臓器と空洞との境界領域(即ち、パーシャルボリューム効果領域)に対応すると考えられる。
【0061】
対象腫瘤候補領域として腫瘤候補領域1eが選択されたときは、画像処理装置10は、腫瘤候補領域1eの重心を包含する非臓器領域を探す。この実施例では、非臓器領域2eが腫瘤候補領域1eの重心を包含するものとする。この場合、画像処理装置10は、非臓器領域2eに対する腫瘤候補領域1eの重複率を計算する。
【0062】
図16(b)に示す例では、非臓器領域2eに対して腫瘤候補領域1eが占める割合が計算される。この場合、画像処理装置10は、非臓器領域2eに属する画素の数をカウントする。また、画像処理装置10は、非臓器領域2eおよび腫瘤候補領域1eが互いに重複する領域に属する画素の数をカウントする。そして、これらの画素数に基づいて、非臓器領域2eに対する腫瘤候補領域1eの重複率が計算される。この実施例では、Axial面において「重複率=90パーセント」が得られるものとする。
【0063】
画像処理装置10は、Sagittal面およびCoronal面においても同様に重複率を計算する。そして、画像処理装置10は、各面に対して計算される重複率と所定の閾値とを比較する。この実施例では、すべての面において、重複率が閾値より大きいものとする。したがって、画像処理装置10は、腫瘤候補領域1eが誤検出領域ではないと判定する。すなわち、
図14、
図15、および
図16(b)において、腫瘤候補領域1eおよび非臓器領域2eは、同一の腫瘤に起因して現れたと考えられる。
【0064】
なお、誤検出領域を特定するための閾値が高すぎると、実際の腫瘤に対応する腫瘤候補領域を誤検出領域と判定するおそれがある。他方、この閾値が低すぎると、臓器内の空洞などに起因して生じる腫瘤候補領域を除去できないおそれがある。ここで、臓器内に実際に腫瘤が存在するときは、その腫瘤は、腫瘤候補領域として抽出されると共に、非臓器領域としても抽出される。この場合、この腫瘤に対応する腫瘤候補領域および非臓器領域は互いに実質的に同じである。すなわち、非臓器領域に対する腫瘤候補領域の重複率は十分に高く、100パーセントに近いと考えられる。他方、臓器内に空洞が存在するときは、その空洞が非臓器領域として抽出され、臓器と空洞との境界領域が腫瘤候補領域として抽出される。この場合、非臓器領域に対する腫瘤候補領域の重複率が高くなることは稀である。よって、誤検出領域を特定するための閾値は、これらの要因を考慮して適切に決定することが好ましい。上述の実施例では、これらの要因を考慮して、閾値が80パーセントに設定されている。
【0065】
このように、本発明の実施形態に係わる画像処理方法によれば、公知の技術により検出される腫瘤候補領域のうちから、パーシャルボリューム効果により生じた腫瘤候補領域を除去することができる。すなわち、腫瘤候補領域のうちから、腫瘤に対応する可能性が低い腫瘤候補領域を除去できる。したがって、腫瘤の有無を診断する際の医師の負担が軽減される。
【0066】
なお、
図13に示すフローチャートでは、対象腫瘤候補領域の重心が非臓器領域の輪郭により包含され、且つ、その非臓器領域に対する対象腫瘤候補領域の重複率が閾値より低いときに、対象腫瘤候補領域が誤検出領域であると判定される。すなわち、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在しないときには、対象腫瘤候補領域は誤検出領域と判定されない。ただし、本発明の実施形態はこのようなケースに限定されるものではない。例えば、臓器内に実際に腫瘤が存在するときは、その腫瘤は、腫瘤候補領域として抽出されると共に、非臓器領域としても抽出される。したがって、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在しないときは、その対象腫瘤候補領域は、腫瘤に対応していないと考えられる。よって、対象腫瘤候補領域の重心を包含する非臓器領域が存在しないときは、画像処理装置10は、その対象腫瘤候補領域が誤検出領域であると判定してもよい。
【0067】
また、上述の実施例では、診断対象の臓器が肝臓であるケースについて記載したが、本発明の実施形態はこのようなケースに限定されるものではない。すなわち、本発明の実施形態に係わる画像処理方法は、任意の臓器の診断に適用可能である。ただし、画像データにおいて、臓器の輝度が腫瘤の輝度より高く、腫瘤の輝度およびパーシャルボリューム効果領域の輝度が互いにほぼ同じであり、腫瘤(およびパーシャルボリューム効果領域)の輝度が臓器内の空洞の輝度より高いケースにおいて、本発明の実施形態に係わる画像処理方法は特に有用である。
【0068】
<ハードウェア構成>
図17は、画像処理装置10のハードウェア構成の一例を示す。画像処理装置10は、プロセッサ101、メモリ102、記憶装置103、入出力デバイス104、記録媒体読取り装置105、および通信インタフェース106を備えるコンピュータ100により実現される。
【0069】
プロセッサ101は、記憶装置103に保存されている画像処理プログラムを実行することにより、画像処理装置10の動作を制御する。画像処理プログラムは、
図5、
図8、および
図13に示すフローチャートの手順を記述したプログラムコードを含む。よって、プロセッサ101がこの画像処理プログラムを実行することで、
図4に示す検出部11、生成部12、判定部13、および出力部14の機能が提供される。メモリ102は、プロセッサ101の作業領域として使用される。記憶装置103は、上述した画像処理プログラムおよび他のプログラムを保存する。また、記憶装置103は、撮影装置20により生成される画像データを保存してもよい。
【0070】
入出力デバイス104は、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどの入力デバイスを含む。また、入出力デバイス104は、表示装置、スピーカーなどの出力デバイスを含む。記録媒体読取り装置105は、記録媒体110に記録されているデータおよび情報を取得することができる。記録媒体110は、コンピュータ100に着脱可能なリムーバブル記録媒体である。また、記録媒体110は、例えば、半導体メモリ、光学的作用で信号を記録する媒体、または磁気的作用で信号を記録する媒体により実現される。なお、画像処理プログラムは、記録媒体110からコンピュータ100に与えられてもよい。通信インタフェース106は、ネットワークに接続する機能を提供する。なお、画像処理プログラムがプログラムサーバ120に保存されているときは、コンピュータ100は、プログラムサーバ120から画像処理プログラムを取得してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 腫瘤候補領域
2 非臓器領域
10 画像処理装置
11 検出部
12 生成部
13 判定部
14 出力部
20 撮影装置
101 プロセッサ