(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007863
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】チューブ容器
(51)【国際特許分類】
B65D 35/10 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
B65D35/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109228
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩田 賢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 果穂
【テーマコード(参考)】
3E065
【Fターム(参考)】
3E065AA02
3E065BA02
3E065BA05
3E065BA11
3E065BA16
3E065BA17
3E065BA18
3E065BA25
3E065BA27
3E065BA34
3E065BB03
3E065CA20
3E065DB05
3E065DD05
3E065EA04
3E065FA04
3E065FA20
3E065GA10
3E065HA01
3E065HA04
(57)【要約】
【課題】リサイクル性に優れたチューブ容器を提供する。
【解決手段】チューブ容器は、最外層となる紙と、バリアフィルムと、最内層となるシーラントフィルムとが積層されたシートからなり、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、胴部の他方端に取り付けられた注出口部と、胴部の外面を覆うシュリンクフィルムとを備え、シートを構成する紙が、無地、または、単色の印刷が施されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層となる紙と、バリアフィルムと、最内層となるシーラントフィルムとが積層されたシートからなり、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、
前記胴部の他方端に取り付けられた注出口部と、
前記胴部の外面を覆うシュリンクフィルムとを備え、
前記シートを構成する紙が、無地、または、単色の印刷が施されたものである、チューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部に紙を用いたチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や化粧品、食品等の包装材として、樹脂を主体とした材料からなるチューブ容器が広く用いられている。例えば、特許文献1には、内容物を抽出する注出ユニットと、注出ユニットに溶着され、内容物を収容する胴部とから構成されるチューブ容器が記載されている。
【0003】
このようなチューブ容器には、未開封であることを証明するための機能(タンパーエビデンス:TE)を付与することを目的として、チューブ容器の一部または全体にシュリンク包装を行う場合がある。また、シュリンク包装を行う場合であっても、商品表示などの印刷はシュリンクフィルムではなくチューブ容器自体に施されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境負荷の軽減や資源保護の観点から、包装容器に使用する樹脂量の低減が要望されており、樹脂の一部を紙に置き換えた包装容器が種々検討されている。チューブ容器においても、樹脂使用量を低減するため、例えば、胴部に紙を用いることが考えられる。
【0006】
しかし、胴部に紙を用いた場合であっても紙の表面には汚れ防止のために樹脂を主体とする保護層が設けられている。そのため、胴部を紙資材として回収した場合であっても、リサイクルの際に手間が掛かっていた。また、商品表示などの印刷は一般的なチューブ容器と同様に胴部に施されるため、さらにリサイクル性が乏しく、改善の余地があった。
【0007】
それ故に、本発明は、リサイクル性に優れたチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るチューブ容器は、最外層となる紙と、バリアフィルムと、最内層となるシーラントフィルムとが積層されたシートからなり、一方端が閉塞されたチューブ形状を有する胴部と、胴部の他方端に取り付けられた注出口部と、胴部の外面を覆うシュリンクフィルムとを備え、シートを構成する紙が、無地、または、単色の印刷が施されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リサイクル性に優れたチューブ容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図。
【
図2】チューブ容器からシュリンクフィルムを分離した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係るチューブ容器の概略構成を示す正面図であり、より詳細には、
図1(a)は、チューブ容器本体にシュリンクフィルムを取り付ける前の状態を示しており、
図1(b)は、チューブ容器本体にシュリンクフィルムを取り付けた状態を示している。
図2は、チューブ容器からシュリンクフィルムを分離した状態を示す図である。
【0012】
チューブ容器100は、チューブ状の胴部1と、胴部1に取り付けられた注出口部2と、シュリンクフィルム3とを備える。胴部1及び注出口部2を纏めてチューブ容器本体10とする。
【0013】
胴部1は、内容物を収容するための部材であり、略平行な対向する一対の端縁を有するシートを筒状として形成される。シートの両端を貼り合わせる方法としては、シートの両端を突き合わせた突付け部をシートの内面からテープ材で溶着してシールする突付けテープ貼りや、シートの内面と外面とをシートの内面からテープ材で溶着して貼り合わせる封筒テープ貼りや、シートの一対の端縁のそれぞれを含む帯状の部分の内面同士を合掌状に突き合わせて溶着させる合掌貼りが用いられる。胴部1の一方の端部5aはシールされて閉塞されている。一方、胴部1の他方の端部5bには、注出口部2が取り付けられている。
【0014】
チューブ容器100の胴部1を構成するシートは、紙層の一方面側に、バリア層及びシーラント層を積層した多層シートである。また、必要に応じて、紙層とバリア層との間に基材フィルム層を設けてもよい
【0015】
(紙層)
紙層は、チューブ容器100に強度及びコシを付与する構造層であり、胴部1を構成するシートの最外層となる。そのため、リサイクル工程において水と紙との接触面積が増えて溶解性が向上し、リサイクル性が向上する。紙層上に保護層などが設けられている場合は、紙層の端面しか水と接触せず溶解に時間が掛かるため好ましくない。
【0016】
紙層を構成する用紙の種類は特に限定されないが、強度、屈曲耐性、印刷適性を備える点で、片艶クラフト紙または両艶クラフト紙を用いることが好ましい。また、紙層を構成する用紙として、必要に応じて、耐水紙、耐油紙、またはカップ原紙等を使用しても良い。紙層には印刷が施されてもよいが、印刷された紙は脱墨に時間が掛かりリサイクル性が劣るため、印刷は単色であることが好ましく、無地(印刷なし)であることがさらに好ましい。
【0017】
紙層に用いる紙の坪量は、50~200g/m2であり、70~150g/m2であることが好ましい。紙層に用いる紙の坪量が50g/m2未満である場合、胴部1のコシが不足する。コシを補うためには、例えば、紙層より内側に設ける基材フィルム層を厚くする必要があるが、樹脂比率の上昇に繋がり、環境負荷低減の面で望ましくない。また、紙層に用いる紙の坪量が200g/m2を超える場合、紙のコシや断熱性により、製筒性(製袋性)、成型性及び溶着性が悪化する上、製造コストも増加するため好ましくない。また、紙層に含まれるセルロース繊維の質量は、紙層の全質量の50%以上である。
【0018】
(基材フィルム層)
基材フィルム層は、シートに耐熱性と強靱性等の物理的強度とを付与する層である。基材フィルム層は、バリア層の基材となる層でもある。基材フィルム層を構成するフィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性及び物理的強度の観点から、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の延伸フィルムを用いることが好ましい。また、基材フィルム層の代わりに紙層を設けても良い。
【0019】
(バリア層)
バリア層は、酸素や水蒸気等を遮断して、内容物の保存性を向上させる機能層である。バリア層は、例えば、シリカやアルミナ等の無機化合物の蒸着膜、アルミニウム等の金属蒸着膜、アルミニウム等の金属箔、板状鉱物及び/またはバリア性樹脂を含むバリアコート剤の塗膜の1種以上により構成することができる。バリアコート剤に用いるバリア性樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等を使用することができ、バリアコート剤にはバリア性樹脂以外のバインダー樹脂が適宜配合される。バリア層は、予め基材フィルム層などの基材上に積層されてバリアフィルムを構成していても良いし、単層膜として設けられても良い。
【0020】
(シーラント層)
シーラント層の材質は特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂であることが好ましい。シーラント層には、軟化温度が基材フィルム層の軟化温度より20℃以上低い樹脂を用いる。シーラント層の軟化温度が、基材フィルム層の軟化温度より20℃以上低くない場合、シール時に基材フィルム層が軟化してピンホールが発生する可能性が高くなるため好ましくない。シーラント層の軟化温度は、基材フィルム層の軟化温度より40℃以上低いことが好ましい。
【0021】
胴部1を構成するシートの樹脂比率を低減するため、シートの質量のうち、紙層の占める割合が50%以上であることが好ましい。樹脂の使用量を低減する観点では紙層の割合は高いほど好ましい。
【0022】
注出口部2は、胴部1に収容された内容物を外部に抽出するための部材であり、胴部1の端部5bに溶着などの方法で取り付けられる。注出口部2は、例えば、熱可塑性樹脂や、熱可塑性樹脂と樹脂以外のフィラーを含む材料により成型される。注出口部2の材料に用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド及びシクロポリオレフィンのいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーとしては、タルク、カオリン、紙粉及びセルロース繊維のいずれか1種、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。注出口部2の成型方法は特に限定されないが、射出成形、真空成形・熱板圧空成型等のサーモフォーミング、コンプレッション成型等の既存の成型方法を利用可能である。注出口部2には樹脂性のキャップ11が設けられていてもよく、リサイクルの観点から、廃棄時には注出口部2からキャップ11を分離することができる構成が好ましい。
【0023】
シュリンクフィルム3は、熱によって収縮するフィルムであり、
図1に示すように胴部1の外周面を覆うように設けられ、シートを構成する紙層への内容物や汚れの付着から保護する。シュリンクフィルム3は、スリーブ状のシュリンクフィルム3を加熱して収縮させることでチューブ容器本体10に取り付けられる。また、シュリンクフィルム3の表面には必要に応じて商品表示などの印刷が施されてもよい。チューブ容器100の注出口部2(キャップ11)の周辺のみシュリンクフィルム3を剥離可能な構成しておくと、胴部1を汚すことなくチューブ容器100を使用することができ、また、商品表示を付した状態でチューブ容器100を使用することができる。
【0024】
チューブ容器100の使用後、シュリンクフィルム3は、チューブ容器本体10からシュリンクフィルム3を容易に分離することができる(
図2)。そのため、樹脂で構成されるキャップ11及びシュリンクフィルム3と、チューブ容器本体10(胴部1及び注出口部2)とを分別して廃棄することができる。さらに、シュリンクフィルム3を設けることで胴部1の紙層上に保護層が不要となり、胴部1の樹脂使用量を削減できる。そのため、紙の坪量を不必要に増加させることなく、チューブ容器本体10に紙製容器包装の識別マーク(紙マーク)を付与することができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係るチューブ容器本体10の紙化率と、シュリンクフィルム3を用いない場合のチューブ容器本体10の紙化率とを比較する。本実施形態の胴部1を構成するシートの構成例を下記に示す。材料の後ろに付した数値は、紙の坪量(g/m2)または層の厚み(μm)を表す。
紙150/GL12/ONy15/CPP50
一方、シュリンクフィルム3を用いない場合は上記シートの構成例の紙層上に保護層を更に設ける必要がある。このときのシート材の構成例を下記に示す。
OPP20/紙150/GL12/ONy15/CPP50
このとき、例えば、スリーブ長が180mmの胴部1と、0.81gの樹脂製の注出口部2とを用いてチューブ容器100を作製した場合、本実施形態のチューブ容器本体10の紙化率は52%である。一方、保護層を有するチューブ容器本体10の紙化率は49%であり、当該チューブ容器本体10の紙化率を51%にするためには、紙の坪量を170g/m2まで上げる必要がある。なお、上記シート構成例で記載した材料は下記の通りである。
GL:透明バリアフィルム(凸版印刷株式会社製、商品名:GL-RD)
ONy:延伸ナイロンフィルム
CPP:無延伸ポリプロピレン
OPP:二軸延伸ポリプロピレ
【0026】
以上、説明したように、本実施形態におけるチューブ容器100は、紙層が胴部1を構成するシートの最外層となる。そのため、リサイクル工程において水と紙との接触面積が増えて溶解性が向上し、リサイクル性が向上する。な
【0027】
また、紙層は無地、または単色の印刷しか施されていないため、脱墨に掛かる作業時間も短縮することができる。
【0028】
また、シュリンクフィルム3を設けることによって、紙層を内容物や汚れの付着から保護することができ、チューブ容器100にタンパーエビデンス性も付与することができる。さらに、シュリンクフィルム3はチューブ容器本体10から容易に分離することができるため、チューブ容器本体10と分別して廃棄することができ、また、胴部1に使用する紙の坪量を上げることなくチューブ容器本体10の紙化率を上げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るチューブ容器は、医薬品化粧品、食品等の包装材として利用できる。
【符号の説明】
【0030】
1 胴部
2 注出口部
5a 一方端
5b 他方端
3 シュリンクフィルム
100 チューブ容器