(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078663
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/68 20060101AFI20240604BHJP
B03C 3/74 20060101ALI20240604BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20240604BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20240604BHJP
F24F 11/52 20180101ALI20240604BHJP
【FI】
B03C3/68 A
B03C3/74 E
F24F11/32
F24F11/38
F24F11/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191142
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 博則
【テーマコード(参考)】
3L260
4D054
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260AB18
3L260BA09
3L260BA15
3L260BA62
3L260CB79
3L260FC22
3L260GA17
4D054AA11
4D054BA02
4D054CA08
4D054CA09
4D054CA19
4D054CA20
4D054DA11
4D054DA12
4D054DA15
(57)【要約】
【課題】塵埃に起因する放電音の発生を抑制できる空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機は、高電圧を供給する高圧電源部と、前記高圧電源部から印加される電圧により生じる放電によって帯電させた塵埃を吸着する電気集塵機とを有する。空気調和機は、前記高圧電源部から前記電気集塵機に供給される電圧の複数の電圧範囲の内、特定の電圧範囲を判定する判定部と、前記電気集塵機に供給される電圧が前記特定の電圧範囲内の場合に、第1の所定時間の間、前記電気集塵機の動作を停止する制御部と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を供給する高圧電源部と、前記高圧電源部から印加される電圧により生じる放電によって帯電させた塵埃を吸着する電気集塵機とを有する空気調和機であって、
前記高圧電源部から前記電気集塵機に供給される電圧が、予め定められた複数の電圧範囲のうちの特定の電圧範囲内の値となっているか否かを判定する判定部と、
前記電気集塵機に供給される電圧が前記特定の電圧範囲内の値となっている場合に、第1の所定時間の間、前記電気集塵機の動作を停止する制御部と、
を有することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記判定部は、
前記電気集塵機に供給される電圧が第1の閾値未満の場合に、前記電気集塵機が故障している第1の状態であると判定し、
前記電気集塵機に供給される電圧が前記第1の閾値より高い第2の閾値を超える場合に、前記電気集塵機が正常に動作している第2の状態であると判定し、
前記電気集塵機に供給される電圧が前記第1の閾値以上、かつ、前記第2の閾値未満となる前記特定の電圧範囲の場合に、前記電気集塵機が前記第1の状態及び前記第2の状態以外の第3の状態であると判定し、
前記制御部は、
前記電気集塵機が前記第3の状態であると判定された場合に、第1の所定時間の間、前記電気集塵機の動作を停止する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記第3の状態は、
前記電気集塵機内の放電電極及び対向電極を保持するカバーの表面における、前記放電電極と前記対向電極との間で堆積した塵埃で表面抵抗が低下して、前記放電電極と前記対向電極との間で沿面放電が発生している状態であることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記判定部は、
前記電気集塵機に供給される電圧を所定数検出して平均値を求め、前記平均値を用いて前記電気集塵機の動作状態を判定することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電気集塵機が前記第1の状態であると判定した場合に、前記電気集塵機の動作を停止し、
前記電気集塵機が前記第2の状態であると判定した場合に、前記電気集塵機の動作を継続し、
前記電気集塵機が前記第3の状態であると判定した場合に、前記第1の所定時間が経過した後に前記電気集塵機を起動し、
前記判定部は、
前記第1の所定時間が経過した後に前記電気集塵機を起動した後、前記電気集塵機の動作状態を判定することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記電気集塵機が前記第1の状態であると判定した場合にのみ、前記電気集塵機が故障している旨を報知するように報知部を制御することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電気集塵機が前記第1の所定時間より長い第2の所定時間毎に、前記電気集塵機の清掃を促す旨を報知するように報知部を制御することを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【請求項8】
前記第2の閾値は、
前記電気集塵機内の放電電極及び対向電極を保持するカバーの表面における、前記放電電極と前記対向電極との間で堆積した塵埃で表面抵抗が低下して、前記放電電極と前記対向電極との間で沿面放電が発生しない程度の湿度環境下で前記電気集塵機に印加される電圧値であることを特徴とする請求項2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中の塵埃や煙草の煙等を除去するために、塵埃等の粒子をコロナ放電によって帯電させ、帯電した粒子を集塵する電気集塵機ユニットが開発されている。このような電気集塵機ユニットとしては、家屋内の空気を清浄化したいという要望に伴い、冷暖房装置等の空気調和機に内蔵されたものが知られている。
【0003】
電気集塵機ユニットは、コロナ放電により粒子を帯電させる荷電部と、荷電部の作用で帯電した粒子となった塵埃を集塵する集塵部とから構成されている。荷電部は、放電電極と、この放電電極に平行に配置された平板状の対向電極とを具備し、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ粒子を帯電させる。
【0004】
そして、電気集塵機ユニットを内蔵する空気調和機では、電気集塵機ユニット内の電極間に印可する電圧をモニタし、電圧の異常な低下が故障によるものであるか電極の汚れに起因するものであるかを判定する機能がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載されている空気調和機の制御部では、モニタ電圧が基準電圧以上の場合は正常、モニタ電圧が基準電圧未満の場合は異常と判断し、所定期間、例えば、3分の間に異常が所定回数、例えば、200回、連続して発生したと判断された場合に、電気集塵機ユニットの故障と判断する。また、制御部は、所定時間の間に異常が断続的に判断された場合に電気集塵機ユニット内の汚れによる異常と判断する。つまり、空気調和機では、電気集塵機ユニット内のイオン化線の断線による異常と、電気集塵機ユニット内の汚れによる異常とを切り分けて判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気集塵機ユニットでは、上述したように電極の汚れによりモニタ電圧が降下する。具体的には、放電電極及び対向電極が設けられる絶縁性カバーの表面に塵埃が堆積することによって、絶縁性カバーの表面における放電電極と対向電極との間の表面抵抗が、放電電極と対向電極との間の空間抵抗よりも低下して沿面放電が発生した際に、モニタ電圧が降下する。特に、梅雨時や夏季のような高湿度環境下、例えば、80%以上の湿度環境下では、絶縁性カバーの表面における放電電極と対向電極との間に堆積する塵埃が空気中の水分を吸水することで、湿度が低い場合と比べて表面抵抗が大きく低下するため、沿面放電が発生しやすくなる。沿面放電が発生した場合には、例えば、バチバチやビリビリ等の放電音が発生し、この放電音が頻繁に発生すれば使用者が不快に感じる恐れがあった。
【0008】
本発明ではこのような問題に鑑み、塵埃に起因する放電音の発生を抑制できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様の空気調和機は、高電圧を供給する高圧電源部と、前記高圧電源部から印加される電圧により生じる放電によって帯電させた塵埃を吸着する電気集塵機とを有する空気調和機であって、前記高圧電源部から前記電気集塵機に供給される電圧が、予め定められた複数の電圧範囲のうちの特定の電圧範囲内の値となっているか否かを判定する判定部と、前記電気集塵機に供給される電圧が前記特定の電圧範囲内の値となっている場合に、第1の所定時間の間、前記電気集塵機の動作を停止する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
一つの側面として、塵埃に起因する放電音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施例の空気調和システムの一例を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、電気集塵機ユニットの一例を示す分解斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、荷電部低圧電極と放電電極との間の沿面放電の発生部位の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、モニタ電圧の判断閾値の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、電気集塵機モニタ処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、電気集塵機モニタ処理に関わる制御装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本願の開示する空気調和機の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。また、以下に示す各実施例は、矛盾を起こさない範囲で適宜変形しても良い。
【実施例0013】
<空気調和システム1の構成>
図1は、空気調和システム1の構成の一例を示す説明図である。
図1に示す空気調和システム1は、空気調和機2と、携帯端末3とを有する。空気調和機2は、空調空間である室内の空気を加熱又は冷却する機器である。携帯端末3は、例えば、空気調和機2を使用する利用者が携帯すると共に、空気調和機2と通信可能な、例えば、スマートフォン等の端末装置である。
【0014】
空気調和機2は、室内機11と、室外機12と、リモコン14とを有する。室内機11は、例えば、室内に配置され、空調空間である室内の空気を加熱又は冷却する空気調和機2の一部である。室内機11は、本体21と、電気集塵機ユニット22と、高圧電源部23と、制御装置24とを有する。
【0015】
本体21は、図示せぬ室内ファンや室内熱交換器などが備えられ、室内熱交換器で室外機12から供給される冷媒と熱交換を行った室内空気が室内ファンによって吹き出されることで、室内の暖房、冷房、除湿等が行われる。
【0016】
電気集塵機ユニット22は、室内機11に対して取り外し可能に装着され、空調空間内の塵埃等の粒子をコロナ放電によって帯電させ、帯電した粒子を集塵するユニットである。高圧電源部23は、電気集塵機ユニット22に高電圧を供給する電源部である。尚、高電圧の具体的な範囲は、例えば、3500ボルト~5000ボルトである。制御装置24は、室内機11全体を制御する。
【0017】
室外機12は、例えば、室外ファンや圧縮機などを備えている。リモコン14は、使用者の操作に応じて室内機11を遠隔操作する遠隔操作部である。
【0018】
<電気集塵機ユニット22の構成>
図2Aは、室内機11に搭載される電気集塵機ユニット22の分解斜視図である。尚、電気集塵機ユニット22の長手方向をX方向、電気集塵機ユニット22の奥行方向をY方向、電気集塵機ユニット22の高さ方向、つまり、X方向とY方向とに直交する方向をZ方向とする。
図2Aに示す電気集塵機ユニット22は、高圧電源部23から印加される高電圧により生じるコロナ放電により帯電させた塵埃を吸着するユニットである。電気集塵機ユニット22は、カバー31と、放電電極32と、アースブロック33と、ホットブロック34と、給電部35と、フレーム36とを備える。
【0019】
カバー31は、絶縁性の樹脂で形成されており、Y方向に開口を有する箱体である。カバー31は、後述するように、放電電極32、アースブロック33、ホットブロック34及び給電部35を覆うようにフレーム36に取り付けられる。ここで、電気集塵機ユニット22の組付け方法について説明する。先ず、
図2Aに示すフレーム36に対して給電部35をY方向から組み付ける。給電部35が組付けられたフレーム36に対してホットブロック34をY方向から組み付ける。更に、組付けられたホットブロック34に対してアースブロック33をY方向から組み付ける。更に、アースブロック33上の後述する荷電部低圧電極33A間に配置されるように、アースブロック33に対して放電電極32をY方向から組み付ける。そして、フレーム36に組付けられた給電部35、ホットブロック34、アースブロック33及び放電電極32を覆うように、フレーム36に対してカバー31をY方向から組み付けることで、電気集塵機ユニット22を構成する。
【0020】
放電電極32は、導電性を有する材料で形成される電線であり、例えば、メッキ、あるいはクラッド層を有する銅線である。
【0021】
アースブロック33は、導電性の樹脂により形成されており、荷電部低圧電極33Aと、集塵部低圧電極33Bとを有する。荷電部低圧電極33Aは、X方向に沿って延在するように板状に形成されて、Z方向に所定幅の間隙を有して複数(
図2Aでは4枚)配列されている。荷電部低圧電極33Aによって形成される上記間隙には、上述した放電電極32が配置される。放電電極32は、後述する集塵部高圧電極34Aからも距離をとって、集塵部高圧電極34Aから浮かせた状態で荷電部低圧電極33Aとの間に配置されている。
【0022】
集塵部低圧電極33Bは、Z方向において荷電部低圧電極33Aよりフレーム36側に配置され、荷電部低圧電極33Aの配列方向と直交する方向に板状に形成されて、所定幅の間隙を有して複数(
図2Aでは28枚)配列されている。
【0023】
ホットブロック34は、集塵部高圧電極34Aを有する。集塵部高圧電極34Aは、半導電性の樹脂により形成されており、X方向に所定幅の間隙を有して複数(
図2Aでは30枚)が集塵部低圧電極33Bの間隙にその一部が配置されるように配列されている。集塵部高圧電極34Aは、集塵部低圧電極33Bによって形成される間隙に配置される電極部34A1と、荷電部低圧電極33Aと接触しない凹部34A2とを有する。電極34A1及び凹部34A2はアースブロック33とは接触していない。
【0024】
給電部35は、例えば、スズ、ニッケル又はステンレス等にスズメッキをしたものにより形成されている。給電部35は、導電性が担保できるのであればよく、例えば、導電性の樹脂で形成されていてもよい。
【0025】
図2Bは、荷電部低圧電極33Aと放電電極32との間の沿面放電の発生部位の一例を示す説明図である。アースブロック33の荷電部低圧電極33Aと放電電極32とが、荷電部51として機能する。放電電極32には、高圧電源部23からの高電圧が印加される。その結果、荷電部51は、
図2Bに示すように、放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間でコロナ放電が発生し、コロナ放電によって電気集塵機22に取り込まれた室内空気中の塵埃を帯電させる機能を有する。
【0026】
アースブロック33の集塵部低圧電極33Bと、ホットブロック34の集塵部高圧電極34Aとが、集塵部52として機能する。集塵部高圧電極34Aには、高電圧が印加される。その結果、塵埃がプラス電位に帯電され、同じプラス電位となっている集塵部高圧電極34Aからは電気的な反発力を受け、接地されて零電位となっている集塵部低圧電極33Bに電気的に吸着されることで、室内空気中の集塵が行われる。
【0027】
<制御装置24の構成>
図3は、制御装置24の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示す制御装置24は、検出部41と、判定部42と、制御部43と、報知部44とを有する。検出部41は、高圧電源部23から電気集塵機ユニット22に供給される高電圧をモニタ電圧として検出する。尚、本実施例のモニタ電圧は、電気集塵機ユニット22に印加される高電圧を判定部42のマイコンなどで読み取り可能な値まで降圧した電圧であり、降圧は図示しない変圧回路により行われる。判定部42は、検出したモニタ電圧に基づき、電気集塵機ユニット22の動作状態を判定する。制御部43は、判定部42の判定結果に基づき、電気集塵機ユニット22の動作を制御する。報知部44は、例えば、電気集塵機ユニット22が故障していると判定された場合や清掃が必要と判定された場合、それらを報知する。
【0028】
図4は、モニタ電圧を判定するための閾値の一例を示す説明図である。横軸は高圧電源部23から電気集塵機ユニット22に供給される高電圧、縦軸は、高電圧に対応したモニタ電圧である。第1の閾値X1は電気集塵機ユニット22のモニタ電圧が第1の閾値X1未満の場合、電気集塵機ユニット22が故障している故障状態と判定する閾値である。故障状態の一例として、例えば、放電電極32の断線等の故障がある。故障の場合、モニタ電圧値が零となる。第1の閾値X1は、電気集塵機ユニット22が低電圧状態となっていると判定できるモニタ電圧値、例えば、1Vである。第2の閾値X2はモニタ電圧が第2の閾値X2を超えた場合、電気集塵機ユニット22が正常に動作している状態と判定する閾値である。
【0029】
第2の閾値X2は、電気集塵機ユニット22が正常と判定できるモニタ電圧値、例えば、2.5V(電気集塵機ユニット22に印加される電圧は3300Vに相当)である。第2の閾値X2は、電気集塵機ユニット22の周囲の湿度が、少なくとも65%を超えた状態で電気集塵機ユニット22が正常に動作している際に印加される電圧に対応するモニタ電圧値である。尚、第2の閾値X2が、予め試験などを行って求めて定められる値である。第2の閾値X2は、
図2Bに示すように、フレーム36の表面における放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間で湿度及び塵埃による表面抵抗に電源電圧を印加した場合に測定されるモニタ電圧の値である。湿度は、沿面放電が頻発しない程度の湿度、例えば、65%の湿度である。塵埃は、放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間に堆積した塵埃である。モニタ電圧が第1の閾値X1以上、かつ、第2の閾値X2以下の場合、故障によるモニタ電圧の降下と比べて程度は低いもののフレーム36の表面において、堆積した塵埃と湿度の影響で空間抵抗より表面抵抗が低下することによる沿面放電が発生して、モニタ電圧が降下している状態と判定できる。
【0030】
判定部42は、高圧電源部23から電気集塵機ユニット22に印加される電圧に対応したモニタ電圧が、予め定められた複数の電圧範囲のうちの特定の電圧範囲内の値になっているか否かを判定する。尚、複数の電圧範囲は、例えば、0ボルトから第1の閾値X1未満までの電圧範囲と、第2の閾値X2以上の電圧範囲と、第1の閾値X1以上、かつ、第2の閾値X2未満までの電圧範囲とがある。更に、判定部42は、電気集塵機ユニット22に印加される電圧に対応したモニタ電圧が第1の閾値X1未満の場合に、電気集塵機ユニット22が故障している第1の状態であると判定する。判定部42は、電気集塵機ユニット22に印加される電圧に対応したモニタ電圧が第1の閾値X1より高い第2の閾値X2を超える場合に、電気集塵機ユニット22が正常に動作している第2の状態であると判定する。判定部42は、電気集塵機ユニット22に印加される電圧に対応したモニタ電圧が第1の閾値X1以上、かつ、第2の閾値X2未満となる特定の電圧範囲の場合に、電気集塵機ユニット22が第1の状態及び第2の状態以外の第3の状態であると判定する。尚、第3の状態は、
図2Bに示すように電気集塵機ユニット22内の放電電極32と荷電部低圧電極33Aとが取り付けられるフレーム36の表面において放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間に堆積した塵埃や湿度の影響により表面抵抗が低下して、放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間で沿面放電が発生している状態である。このようにフレーム36の表面における放電電極32と荷電部低圧電極33Aの間で沿面放電が発生した場合には、例えば、バチバチやビリビリ等の放電音が発生する。
【0031】
制御部43は、判定部42にて電気集塵機ユニット22が第3の状態であると判定された場合に、第1の所定時間の間、電気集塵機ユニット22の動作を停止する。尚、モニタ電圧が第3の状態であるときは、湿度が高くて冷房・除湿運転が行われていることが多いと考えられる。そこで、第1の所定時間は、例えば、冷房・除湿運転で室内空間の湿度が65%以下にするまでに十分な時間、例えば、30分間である。制御部43は、電気集塵機ユニット22が第1の状態である、つまり、電気集塵機ユニット22が故障していると判定した場合に、電気集塵機ユニット22の動作を停止する。制御部43は、電気集塵機ユニット22が第2の状態であると判定した場合に、電気集塵機ユニット22は正常に動作していると判定し動作を継続する。制御部43は、電気集塵機ユニット22が第3の状態であると判定した場合に、第1の所定時間が経過した後に、停止中の電気集塵機ユニット22を再起動する。判定部42は、第1の所定時間が経過した後に電気集塵機ユニット22を起動した後、電気集塵機ユニット22の動作状態を再度判定する。
【0032】
制御部43は、電気集塵機ユニット22が第1の状態であると判定した場合にのみ、電気集塵機ユニット22が故障していることを報知するように報知部44を制御する。その結果、利用者は、報知内容を見て電気集塵機ユニット22の故障を認識できる。また、制御部43は、電気集塵機ユニット22が第1の所定時間より長い第2の所定時間毎に、電気集塵機ユニット22のクリーニングを促す要求を報知するように報知部44を制御する。ここで、第2の所定時間は、電気集塵機ユニット22のクリーニングが必要となる積算時間と事前に検証された時間であり、例えば、2000時間(1年間電気集塵ユニット22を動作した際の運転積算時間)である。その結果、利用者は、報知内容を見て電気集塵機ユニット22のクリーニング時期を認識できるので利用者の電気集塵機ユニット22のクリーニングを促して堆積した塵埃を取り除くことができ、ひいては、沿面放電の発生を抑制できる。
【0033】
<空気調和システム1の動作>
次に本実施例の空気調和システム1の動作について説明する。
図5及び
図6は、電気集塵機モニタ処理に関わる制御装置24の処理動作の一例を示すフローチャートである。
図5において制御装置24内の制御部43は、電気集塵機ユニット22のオン操作を検出したか否かを判定する(ステップS11)。尚、電気集塵機ユニット22のオン操作は、例えば、リモコン14又は携帯端末3から操作可能である。制御部43は、電気集塵機ユニット22のオン操作を検出した場合(ステップS11:Yes)、積算タイマの計測を開始する(ステップS12)。
【0034】
制御部43は、積算タイマの計測を開始した後、積算タイマ時間が第2の所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS13)。尚、積算タイマ時間は、空気調和機2内の電気集塵機ユニット22の状態を管理するための空気調和機2の動作時間を積算した時間である。前述したように第2の所定時間は、電気集塵機ユニット22のクリーニングが必要となる動作時間であることが実験等により予め検証された時間、例えば、2000時間である。制御部43は、積算タイマ時間が第2の所定時間以上である場合(ステップS13:Yes)、電気集塵機ユニット22のクリーニング時期と判断し、電気集塵機ユニット22の通電を停止する(ステップS14)。
【0035】
更に、制御部43は、電気集塵機ユニット22の通電を停止した後、電気集塵機ユニット22のクリーニングを促すクリーニング要求を報知すべく、報知部44を制御する(ステップS15)。尚、報知部44は、例えば、電気集塵機ユニット22のクリーニング要求を利用者の携帯端末3に報知する。その結果、利用者は、携帯端末3の報知内容を見て電気集塵機ユニット22のクリーニング要求を認識できる。そして、利用者は、電気集塵機ユニット22を室内機11から取り外して洗浄することができる。
【0036】
更に、制御部43は、電気集塵機ユニット22のクリーニング要求を報知した後、リセット操作を検出したか否かを判定する(ステップS16)。尚、利用者は、電気集塵機ユニット22のクリーニング要求に応じて電気集塵機ユニット22を実際に洗浄した後、例えば、リモコン14や携帯端末3を通じて、積算タイマ時間をリセットするリセット操作を実行する。
【0037】
制御部43は、リセット操作を検出した場合(ステップS16:Yes)、積算タイマ時間をリセットし(ステップS17)、積算タイマ時間が所定時間以上であるか否かを判定すべく、ステップS13の処理に戻る。制御部43は、ステップS11の処理において電気集塵機ユニット22のオン操作を検出したのでない場合(ステップS11:No)、処理をステップS11に戻す。制御部43は、ステップS16の処理においてリセット操作を検出したのでない場合(ステップS16:No)、処理をステップS16に戻す。
【0038】
制御部43は、積算タイマ時間が所定時間以上でない場合(ステップS13:No)、
図6に示すM1に移行する。
【0039】
図6に示すM1からステップ21に進み、制御部43は、電気集塵機ユニット22の高圧通電をONにする(ステップS21)。尚、高圧通電とは、高圧電源部23から電気集塵機ユニット22に高電圧を印加する動作である。
【0040】
制御部43は、高圧通電をONにした後、モニタ電圧が第1の閾値X1未満であるか否かを判定する(ステップS22)。尚、第1の閾値X1は、前述したように電気集塵機ユニット22が故障状態である低電圧を判断するための電圧閾値、例えば、1Vである。故障状態とは、例えば、放電電極32の断線である。
【0041】
制御部43は、モニタ電圧が第1の閾値X1未満の場合(ステップS22:Yes)、電気集塵機ユニット22を故障状態と判定した回数である故障判定回数を+1インクリメントする(ステップS23)。制御部43は、電気集塵機ユニット22への高圧通電を3分間停止する(ステップS24)。
【0042】
更に、制御部43は、高圧通電を3分間停止した後、故障判定回数が4回未満であるか否かを判定する(ステップS25)。制御部43は、故障判定回数が4回未満の場合(ステップS25:Yes)、電気集塵機ユニット22への高圧通電をONにすべく、ステップS21の処理に戻る。尚、故障判定回数が4回未満の場合は、例えば、人の髪の毛のような長さのある導電体が放電電極32と荷電部低圧電極33Aとにまたがる(接触する)ことによって、一時的に放電電極32と荷電部低圧電極33Aとが短絡されてモニタ電圧が低下する状態と言える。
【0043】
制御部43は、故障判定回数が4回未満でない場合(ステップS25:No)、電気集塵機ユニット22が故障と判定する(ステップS26)。制御部43は、電気集塵機ユニット22が故障と判断した後、電気集塵機ユニット22への高圧通電を停止する(ステップS27)。そして、制御部43は、電気集塵機ユニット22の故障を報知すべく、報知部44を制御する(ステップS28)。例えば、制御部43は、電気集塵機ユニット22の故障を、利用者の携帯端末3に報知すると共に、室内機11の本体21の図示せぬ警告ランプを点灯させる。その結果、利用者は、電気集塵機ユニット22の故障を認識できる。これにより、利用者は、故障した電気集塵機ユニット22の修理を依頼できる。そして、制御部43は、電気集塵機ユニット22の故障を報知した後、M2に進み、M2から
図5に示すステップS13の積算タイマ時間が第2の所定時間以上であるか否かを判定する処理(ステップS13)に戻る。
【0044】
判定部42は、モニタ電圧が第1の閾値X1未満でない場合(ステップS22:No)、モニタ電圧が第2の閾値X2超であるか否かを判定する(ステップS29)。尚、前述したように第2の閾値X2は、電気集塵機ユニット22が正常状態であるか電気集塵機ユニット22が沿面放電を発生している状態であるかを判定するためのモニタ電圧の閾値であり、例えば、2.5Vである。
【0045】
制御部43は、モニタ電圧が第2の閾値X2超でない場合(ステップS29:No)、モニタ電圧が第1の閾値X1以上、かつ、第2の閾値X2未満である、すなわち、第3の状態と判定する(ステップS30)。尚、第3の状態は、第1の閾値X1よりはモニタ電圧が高いので、故障ではなく沿面放電が原因でモニタ電圧が低下している状態である。電気集塵機ユニット22の沿面放電は、フレーム36の表面における放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間で堆積した塵埃で表面抵抗が低下して、放電電極32と荷電部低圧電極33Aとの間で発生し、バチバチやビリビリ等の放電音が発生する。特に高湿度の環境下(例えば、湿度80%以上)では、沿面放電が発生しやすい。
【0046】
制御部43は、第3の状態と判定した後、放電音の発生を抑制するために電気集塵機ユニット22の高圧通電を30分間停止して沿面放電の発生確率が下がる湿度、例えば、65%以下となるのを待つ(ステップS31)。高湿度の環境下では、冷房運転や除湿運転が行われていることが多いと考えられるため、沿面放電による放電音が発生しているときは、電気集塵機ユニット22を取り外して清掃などを行わなくても、冷房運転や除湿運転が行われて室内環境の湿度が65%以下に低下すれば沿面放電の発生を抑制できる。その結果、沿面放電による放電音の発生を抑制でき利用者の不快感を低減できる。そして、制御部43は、冷房・除湿運転が行われていることで室内環境を冷房時安定湿度65%以下となる。その結果、ステップS22~ステップS31の処理の繰り返しを抑制できる。そして、制御部43は、ステップS31の処理を実行した後、電気集塵機ユニット22への高圧通電をONにすべく、ステップS21の処理に戻る。
【0047】
また、制御部43は、モニタ電圧が第2の閾値X2超の場合(ステップS29:Yes)、電気集塵機ユニット22が正常に動作している状態と判断し(ステップS32)、モニタ電圧が第1の閾値X1未満であるか否かを判定すべく、ステップS22の処理に戻る。
【0048】
本実施例の空気調和機2では、高圧電源部23から電気集塵機ユニット22に印加される電圧を降圧したモニタ電圧が沿面放電などの影響によって変動することを利用し、モニタ電圧が複数の電圧範囲の内、第1の閾値X1以上、かつ、第2の閾値X2未満である場合に、電気集塵機ユニット22が第3の状態であると判定する。空気調和機2は、電気集塵機ユニット22が第3の状態であると判定した場合、電気集塵機ユニット22の動作を30分間停止する。その結果、沿面放電の発生を抑制することで放電音の発生を抑制できる。
【0049】
空気調和機2では、湿度が高くても、冷房・除湿運転が行われているため、電気集塵機ユニット22の動作を30分間停止して湿度が所定値、例えば65パーセント以下となるのを待つ。前述したように、湿度が高い場合には冷房・除湿運転が行われている可能性が高く、冷房・除湿運転が行われている状態で30分が経過すれば湿度が低下して沿面放電の発生を抑制できる。
【0050】
空気調和機2では、電気集塵機ユニット22が第3の状態であると判定した場合に、電気集塵機ユニット22への通電を30分間停止した後に電気集塵機ユニット22を再起動し、再起動後の電気集塵機ユニット22の動作状態を再度判定する。その結果、電気集塵機ユニット22の故障状態(=第1の状態)以外の場合は電気集塵機ユニット22を継続して動作させるようにすることで、むやみに故障と判定することを防ぎつつ、放電音の発生を抑制して使用者の不快感を低減できる。
【0051】
空気調和機2では、電気集塵機ユニット22が第1の状態であると判定した場合にのみ、電気集塵機ユニット22の故障を報知する。その結果、利用者は、報知内容を見て、電気集塵機ユニット22の故障を認識して電気集塵機ユニット22の修理を依頼することができる。
【0052】
空気調和機2では、電気集塵機ユニット22が第1の所定時間より長い第2の所定時間、例えば、2000時間毎に、電気集塵機ユニット22のクリーニングを促す要求を報知する。その結果、例えば、沿面放電の要因となる堆積した塵埃を定期的にクリーニングすることで、高湿度環境下での一時的な電気集塵機ユニット22の停止を抑制できる。
【0053】
尚、実施例の第1の所定時間は30分間、第2の所定時間は2000時間を例示したが、これに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0054】
更に、電気集塵機ユニット22への通電停止時間として、故障保護による通電停止時間を3分間、異音保護による通電停止時間を30分間としたが、これらの設定時間に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0055】
故障判定回数が4回未満を超えた場合に電気集塵機ユニット22を継続的に故障している状態と判断する場合を例示したが、4回の設定回数に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0056】
空気調和機2では、電気集塵機ユニット22に供給される電圧をモニタ電圧として検出する場合を例示したが、供給される電圧を所定数、例えば、100回検出して平均値を求め、平均値を用いて電気集塵機ユニット22の動作状態を判定しても良く、適宜変更可能である。その結果、平均値を用いることでより正確な診断が行える。
【0057】
また、図示した各部の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0058】
更に、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良い。また、各種処理機能は、CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。