(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078681
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】組織採取用具
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20240604BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
A61B17/3205
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191166
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】522438389
【氏名又は名称】株式会社スリーエスシステム
(71)【出願人】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201732
【弁理士】
【氏名又は名称】松縄 正登
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】森本 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】船坂 徳子
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 基
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美和
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF05
(57)【要約】
【課題】 確実に組織を採取可能であり、かつ組織を低損傷で採取可能な組織採取用具の提供。
【課題手段】 本発明の組織採取用具は、外刃ユニット及び内刃ユニットを含み、外刃ユニットは、円筒状本体21及び外刃を含み、外刃は、円筒状本体21の組織内への侵入方向側の先端部の周方向に形成され、内刃ユニットは、シャフト13及び内刃12を含み、内刃12は、内刃12の刃先が侵入方向側に位置し、かつ、刃先の方向がシャフト13の軸方向に対し傾斜した状態で、シャフト13に取り付けられており、内刃は12、シャフト13を回転軸として組織内で回転可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外刃ユニット及び内刃ユニットを含み、
前記外刃ユニットは、筒状本体及び外刃を含み、
前記外刃は、前記筒状本体の組織内への侵入方向側の先端部の周方向に形成され、
前記内刃ユニットは、シャフト及び内刃を含み、
前記内刃は、前記内刃の刃先が前記侵入方向側に位置し、かつ、前記刃先の方向が前記シャフトの軸方向に対し傾斜した状態で、前記シャフトに取り付けられており、
前記内刃は、前記シャフトを回転軸として前記組織内で回転可能である、
組織採取用具。
【請求項2】
前記外刃ユニットにおいて、前記筒状本体は、円筒状本体であり、
前記円筒状本体は、前記組織内で回転可能であり、
前記円筒状本体の回転軸及び前記シャフトの回転軸は、同軸である、
請求項1記載の組織採取用具。
【請求項3】
前記外刃ユニットは、さらに外刃支持体を含み、
前記外刃支持体に、前記円筒状本体の前記侵入方向と反対側の端部が連結し、
前記外刃支持体は、外刃係合部を含み、
前記内刃ユニットは、さらに、内刃支持体を含み、
前記内刃支持体に前記シャフトの前記侵入方向側と反対側の端部が連結し、
前内刃記支持体は、内刃係合部を含み、
前記外刃係合部及び前記内刃係合部は、相互に着脱自在に係合可能であり、
前記外刃係合部及び前記内刃係合部の前記係合により、前記円筒状本体及び前記シャフトは、同期して前記組織内で回転可能である、
請求項2記載の組織採取用具。
【請求項4】
さらに、把持部を含み、
前記外刃支持部は、連結部を含み
前記連結部は、前記把持部と着脱自在に連結可能である、
請求項3記載の組織採取用具。
【請求項5】
前記円筒状本体の前記先端部に形成された前記外刃は、前記円筒状本体の前記回転軸に対しテーパー状である、
請求項4記載の組織採取用具。
【請求項6】
前記内刃ユニットは、複数枚の前記内刃を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の組織採取用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織採取用具に関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織検査(以下、「生検」という)をおこなう場合、パイプ状の生検針などを用いて組織採取が実施されるのが通常である。例えば、非特許文献1に記載のように、生検針を生体に穿刺後、パイプ内部より減圧吸引して生検針の先端周囲の生体組織をパイプ内に吸いこんで採取される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】株式会社トップ「トップ吸引生検針(穿刺セット)使用説明書」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吸引採取で得られた生体組織はかなり損壊を受けており、組織構造を検査するための検体としては不十分である。特に、イルカ及びクジラ等の鯨類の生検では、鯨類の皮膚が厚く皮下直下の脂肪組織が柔らかく損傷を受けやすいという事情がある。このため、確実に組織を採取でき、かつ生体組織を低損傷で採取可能な組織採取用具が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、確実に組織を採取可能であり、かつ組織を低損傷で採取可能な組織採取用具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の組織採取用具は、
外刃ユニット及び内刃ユニットを含み、
前記外刃ユニットは、筒状本体及び外刃を含み、
前記外刃は、前記筒状本体の組織内への侵入方向側の先端部の周方向に形成され、
前記内刃ユニットは、シャフト及び内刃を含み、
前記内刃は、前記内刃の刃先が前記侵入方向側に位置し、かつ、前記刃先の方向が前記シャフトの軸方向に対し傾斜した状態で、前記シャフトに取り付けられており、
前記内刃は、前記シャフトを回転軸として前記組織内で回転可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、確実に組織を採取可能であり、かつ組織を低損傷で採取可能である。このため、ヒトや動物等の生検に有用であり、特に、組織が損傷を受けやすい鯨類の生検に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の組織採取用具の一例を示す構成図である。
【
図5】
図5は、
図1の組織採取用具の内刃の動きの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1の組織採取用具の外刃のその他の例を示す一部斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1の組織採取用具の使用の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、
図1の組織採取用具の使用のその他の例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、
図1の組織採取用具で採取した組織の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の組織採取用具の前記外刃ユニットにおいて、前記筒状本体は、円筒状本体であり、前記円筒状本体は、前記組織内で回転可能であり、
前記円筒状本体の回転軸及び前記シャフトの回転軸は、同軸である、という態様であってもよい。
【0010】
前記態様において、前記外刃ユニットは、さらに外刃支持体を含み、
前記外刃支持体に、前記円筒状本体の前記侵入方向と反対側の端部が連結し、
前記外刃支持体は、外刃係合部を含み、
前記内刃ユニットは、さらに、内刃支持体を含み、
前記内刃支持体に前記シャフトの前記侵入方向側と反対側の端部が連結し、
前内刃記支持体は、内刃係合部を含み、
前記外刃係合部及び前記内刃係合部は、相互に着脱自在に係合可能であり、
前記外刃係合部及び前記内刃係合部の前記係合により、前記円筒状本体及び前記シャフトは、同期して前記組織内で回転可能である、という態様であってもよい。
【0011】
前記態様において、さらに、把持部を含み、
前記外刃支持部は、連結部を含み
前記連結部は、前記把持部と着脱自在に連結可能である、という態様であってもよい。
【0012】
本発明の組織採取用具において、前記円筒状本体の前記先端部に形成された前記外刃は、前記円筒状本体の前記回転軸に対しテーパー状である、という態様であってもよい。
【0013】
本発明の組織採取用具において、前記内刃ユニットは、複数枚の前記内刃を含む、という態様であってもよい。
【0014】
前述のように、本発明の組織採取用具は、ヒト及び動物等の生体組織検査(生検)に使用できるが、その用途は生検に限定されず、動物及び植物等の組織を採取する用途に広く適用可能であり、又は、動物及び植物以外の組織の採取にも適用可能である。また、本発明の組織採取用具は、検査以外に、例えば、腫瘍組織の除去等、治療目的で使用することも可能である。
【0015】
[実施形態1]
内刃は、例えば、スクリュー状で、シャフト(軸)の先端付近に溶接により取り付けてもよい。例えば、使用者は、把持部を持ち、組織採取用具の円筒状本体の先端の外刃を、生体に突き立て、突き立てた箇所を中心として、歳差運動(すりこぎ運動)をさせつつ差し込み(穿刺)、外刃が任意の深度に達すれば、使用者は、組織採取用具を180度以上回転させたのちに、生体から抜去すると、その円筒状本体内部に組織片がほぼ円柱状に採取される。
【0016】
本発明の組織採取用具では、例えば、シャフトと内刃が、円筒状本体とほぼ同じ長さで円筒状本体に内装され、シャフトの先端に近い部分に前記のように傾斜した状態(以下、「スクリュー状」という。)で扇形の刃物が溶接されている。この扇形刃物が二枚、対頂角で、シャフトに対して一定の角度をなして溶接されているので、組織採取用具を回転させつつ生体内に押し込むと生体組織の硬軟にかかわらず切り込むことができ、最終的には円筒状本体内に取り込んだ組織片を生体から完全に離脱させて採取できる。採取された生体組織は、スクリュー状の内刃によって、らせん状に切断されている。すなわち、本発明では、円筒状本体の外刃による切断面と共に、スクリュー状の内刃の回転による切断面を含むことになる。さらに生体から切り離される組織の底面もスクリュー状の内刃の回転によって形成されることになる。
【0017】
このように、本発明の組織採取用具を使用すれば、生体から組織を確実に、かつ、組織の階層(構造等)を損壊せずに生体から採取することができ、生体内の組織構造の観察や標本に適したものとなる。前述のように、非特許文献1では吸引によって生体から組織を分離するために組織の階層(構造等)が損壊することがあり、特に、鯨類のように皮膚組織が厚く、柔らかい深部組織が採取目的である場合、組織階層(構造等)の損壊する可能性が高い。これに対し、本発明の組織採取用具では、鯨類のように皮膚組織が厚く、採取目的の組織が脂肪等の組織で柔らかくても、組織階層(構造等)の損壊を低減して採取することが可能である。
【0018】
本発明の組織採取用具は、生体組織採取にのみ使われるのではなく、生体の治療目的に用いられてもよい。例えば、悪性腫瘍の除去のための技術として用いられることも可能であり、この場合、内視鏡技術と併用されてもよいし、それに適するように刃物構成部分以外が変更されてもよい。さらに、対象生物は、鯨類にとどまらず、例えば、ヒトを含めた哺乳類、脊椎動物、及び植物体にも適用可能であり、生体だけでなく、死亡後の組織採取にも適用可能である。
【0019】
本発明の組織採取用具において、低侵襲であることが好ましい。組織採取を、特に、生体に実施する場合、その生体にダメージをなるべく与えないように、低侵襲であることが好ましい。組織採取の際の傷口が大きくなるなど、激しい痛みを伴うことがないようにすることが好ましい。例えば、本発明の組織採取用具において、円筒状本体は、極薄のステンレス管を用い、なるべく細く、必要に応じて先端を斜めに削ぐなど、刺し込む際の皮膚及び組織抵抗を軽減するために、皮膚及び組織に対する作用点を移動させつつ切り込むようにするのが望ましい。また、内刃は、シャフト(軸体)の直交面に対して浅い角度をなすよう二枚の扇形からなる羽根状をシャフトに取り付け、船舶のスクリューのように切り込んで生体への抵抗を少なくすることが好ましい。
【0020】
採取した組織を回収する場合は、本発明の組織採取用具を生体から抜去し、適宜、清潔なシャーレの上で、把持部から外刃ユニット(内刃ユニットを内蔵)を取り外し、ついで外刃ユニットの円筒状本体から内刃ユニットであるシャフトと内刃を抜去するとスクリュー状の刃物(内刃)に支えられて採取物が取り出される。
【0021】
本発明の組織採取用具は、衛生的側面から分解洗浄が可能である。また、本発明の組織採取用具を構成する部材は、すべて医療用レベルのステンレス鋼等を用いることでオートクレーブ滅菌にも耐えるものであることが好ましい。
【0022】
[実施形態2]
以下、
図1から
図9に基づき、本発明の組織採取用具の例を示す。
図1から
図9において、同一部分には同一符号を付している。また、以下の説明において、組織内への侵入方向を基準とし、当該侵入方向側端部を先端と言い、反対側端部を後端という。
【0023】
図1に本発明の組織採取用具の一例の全体図を示す。図示のように、組織採取用具100は、把持部1の先端に、外刃支持体22及び円筒状本体21から構成される外刃ユニットが取り付けられている。円筒状本体21の先端部の周方向全体に外刃が形成されている。円筒状本体21は、例えば、ステンレスパイプの先端外周を研磨して外刃211を形成する。
図2に組織採取用具100の分解図を示し、
図3に組織採取用具100の断面図を示す。図示のように、把持部1の先端には、円筒状の凹部が形成され、前記凹部の側壁にメスネジ部が形成されている。外刃ユニットの外刃支持体22の後端には、円柱状の連結部23が配置され、連結部23の側壁にはオスネジ部が形成されており、前記オスネジ部は前記メスネジ部に螺合可能であり、外刃ユニットが把持部1に着脱自在に連結固定可能である。内刃ユニットは、シャフト(軸体)13、内刃12、内刃支持体14及び内刃係合部15により構成されている。シャフト13の先端側に二枚の内刃12が取り付けられており、内刃12の刃先は組織内の侵入方向を向き、かつ、内刃12の刃先方向はシャフト13の軸方向に対して傾斜している。シャフト13の後端には円柱状の内刃支持体14が連結し、内刃支持体14の側壁からピン構造の内刃係合部15が形成されている。
図2及び
図3において、円筒状本体21とシャフト13の周方向回転の回転軸は、同軸となっている。
図2及び
図3では図示していないが、外刃支持体22の後端の連結部23には、前記ピンが嵌合可能な凹部状の外刃係合部が形成されている。
図4に、外刃ユニットの結合部23及び内刃ユニット内刃支持体14を示す。図示のように、内刃支持体14の側壁に設けられたピン(内刃係合部)15が設けられ、外刃結合部23の側壁に前記ピンが嵌合可能な凹部状の外刃係合部24が形成されている。このように、内刃係合部15及び外刃係合部24が係合すると、把持部1を手で持って回転させることにより、円筒状本体21とシャフト13が同軸かつ同期して組織内で回転し、その結果、内刃12も回転する。
【0024】
把持部1は、使用者が組織採取用具100を把持するためのものであり、例えば、持ちやすく、回転させやすい、太さや長さであればよい。例えば、
図1に示すように、把持部1は、ペン型であってもよい。また、把持部1は、例えば、オートクレーブ滅菌に耐えるように、構成部材が金属であってもよく、金属の中でも、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS316L等)が好ましい。
【0025】
図5(A)に、内刃ユニットのシャフト13と内刃12を示す。同図において、直線の矢印は、組織内への侵入方向を示す、円状の矢印は、シャフト13の回転方向(右回転)を示す。二枚の内刃12は、刃先が侵入方向側にあり、刃先方向は、シャフトを右回転させた場合に、組織を切開可能なように、シャフトの軸方向に対し傾斜した方向となっている。内刃12の形状は、特に制限されないが、例えば、船舶のスクリュー状が好ましい。また、内刃12の枚数は、特に制限されず、1枚、2枚、3枚、4枚等、組織に応じた枚数であればよい。内刃12の組織への切り込みは、回転によるため、シャフト13の直交面に対して、内刃の角度は、例えば、10~50度又は20~30度である。
図5(B)に、シャフト13の直交面を示す。図示のように、シャフト13の軸方向に対し直交する面Pが直交面である。
図5(C)に示すように、直交面Pに対する内刃12の角度αが、内刃の角度である。なお、内刃12がスクリュー状でねじれた形状であれば、内刃は一つの角度ではなく、一つの内刃において直交面に対する角度が連続して変化してもよい。内刃12の厚みは、例えば、50~200マイクロメートル又は80~100マイクロメートルである。
【0026】
内刃12は、例えば、医療用メスに用いられる市販の刃物を、扇形に加工して得ることができる。扇形の内刃12の扇形中心角は、例えば、50~120度又は60~90度である。また、内刃12が回転した場合に形成される回転円の直径は、例えば、円筒状本体21の内径の80~99%又は85~95%である。例えば、同形状の扇形刃物を二枚用意し、シャフト13へ扇形の中心を合わせて対頂角の状態で溶接固定することでスクリュー状の内刃12とすることができる。当該溶接固定位置は、例えば、シャフト13の先端から2~3mmの範囲である。この範囲内であれば、生体組織の切り残しを少なくすることができ、刃物のシャフト13への溶接固定が容易となる。
【0027】
図6に、円筒状本体21の先端の外刃211の一例を示す。
図6に示す外刃211は、円筒状本体21及びシャフト13の回転軸に対しテーパー状となっている。このように外刃211をテーパー状にすることで、組織への切込みが鋭くなり、痛みを少なくすることができる。特に、円筒状本体21の内径を大きくして、大きな組織を得るためには、痛みの低減が必要となり、当該テーパー状の加工は有用である。テーパー状の外刃211は、円筒状本体21の回転軸の直交面に対する角度が、例えば、40~80度、好ましくは50~70度であり、当該角度は、円筒状本体21及び外刃211の強度および対象の組織の硬さや弾力性に応じて設定される。また、円筒状本体21の厚みは、低侵襲の要因となるものであり、例えば、80~500マイクロメートルであり、好ましくは100~200マイクロメートルである。例えば、円筒状本体21の先端面円周上を外から内に向かって研磨することで外刃211が形成される。ただし、本発明において、外刃211の形状は、テーパー状に限定されず、様々な形状をとることができる。
【0028】
外刃ユニット(円筒状本体21)の長さは、組織に差し込む深さに影響し、例えば、組織の採取深度、採取対象の皮膚の厚み、生検の病巣の位置等により適宜設定することができる。例えば、本発明の組織採取用具を鯨類のような水棲動物に用いる場合、水棲動物は、通常、皮下脂肪が厚く、表皮下の真皮や、その下の脂肪組織を得たい場合には、例えば、イルカ等では、20~50mmの深度となる。
【0029】
図7に、組織採取用具100の使用の一例を示す。図示のように、組織採取用具100の把持部1を手で持ち、採取対象200の皮膚表面に円筒状本体21先端を当接させ、把持部1を周方向に回転させながら採取対象200の組織内に押し込んでいく。このようにすると、外刃211で組織を切り裂き、かつ、内刃12の回転でも組織を切り裂くことになる。そして、所定の深部まで達したら、組織採取用具100を採取対象200から引き抜くことで、円筒状本体21内に、採取組織を保持した状態で、組織を採取できる。採取後、把持部1、円筒状本体21等の外刃ユニット及びシャフト13及び内刃12等の内刃ユニットを分解して、円筒状本体21から、採取した組織を、例えば、生理食塩水が入ったシャーレ等に取り出す。
【0030】
図8に、組織採取用具100の使用の別の例を示す。図示のように、組織採取用具100の把持部1を手で持ち、採取対象200の皮膚表面に円筒状本体21先端を当接させ、組織採取用具100の軸方向が歳差運動(すりこ木運動)するように同図の矢印方向に回転させ、組織内に組織採取用具100を押し込んでいく。このようにしても、組織を採取できる。
【0031】
図9に、組織採取用具100で採取された組織の形態の一例の模式図を示す。図示のように、採取対象の皮膚組織201に繋がった状態でらせん状に切り裂かれた組織202が採取できる。採取された組織は、損傷が少なく、検査等に有用に用いることができる。また、使用後の組織採取用具は、分解して洗浄殺菌し、次回の使用に備えることが好ましい。
【0032】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や条件は、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の組織採取用具は、動物等の生検に有用であり、特に、鯨類の生検に有用であるが、その用途は生検に限定されず、組織採取を必要とする広い範囲に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 把持部
12 内刃
13 シャフト
13 内刃支持部
15 内刃係合部
21 円筒状本体
22 外刃支持部
23 連結部
24 外刃係合部
100 組織採取用具
221 外刃
200 採取対象
300 使用者の手
P シャフトとの直交面
α 内刃の角度