(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078689
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240604BHJP
B41J 21/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B41J29/38 202
B41J29/38 206
B41J21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191183
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】次村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】疇地 悠
(72)【発明者】
【氏名】中野 靖大
【テーマコード(参考)】
2C061
2C187
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP04
2C061AP07
2C061AQ05
2C061AQ06
2C061AS06
2C061HJ06
2C061HK05
2C061HK07
2C061HK11
2C061HN04
2C061HN06
2C061HN15
2C187AC07
2C187AC08
2C187AD04
2C187AD14
2C187AG05
2C187BF41
2C187DB09
2C187DB11
(57)【要約】
【課題】フチあり印刷とフチなし印刷とを画像データが明示的に指示しない場合であってもユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい。
【解決手段】プリンタの制御部は、フチなし印刷かフチあり印刷かを明示的に指示するデータが画像データに含まれていない場合に、フチなし印刷かフチあり印刷かを指示する設定情報がプリンタ本体内に保持されているか(S3)、画像形成対象領域の大きさに対応するユーザ定義サイズが所定の値より小さいか(S4)、画像データが示す画像の周縁部に空白があるか(S5)に基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から取得される画像データが示す画像を媒体に形成する画像形成装置であって、
媒体上の画像形成対象領域の全体に亘って画像を形成するフチなし画像形成動作と画像が形成されない空白の範囲を前記画像形成対象領域の周縁部に確保しつつ画像を媒体に形成するフチあり画像形成動作とを選択的に行う画像形成部と、
前記画像データに基づいて前記画像形成部を制御する制御部とを備えており、
前記制御部は、
前記画像データが、前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれを行うかを明示的に指示するデータを含んでいない場合に、当該画像形成装置の状況及び前記画像データの内容の少なくともいずれかに基づいて前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれかを選択し、選択した動作を前記画像形成部に行わせることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれを選択するかを示す設定情報を記憶する設定情報記憶部をさらに備えており、
前記制御部は、前記画像形成装置の状況としての前記設定情報が示す内容に少なくとも基づいて前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれかを選択することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像データが、前記画像形成対象領域の大きさを、媒体上の一方向及び前記一方向と直交する直交方向の両方に関して指示するサイズ指示データを含んでおり、
長尺のシート状の媒体がロール状に巻回されたロール体を収容可能な媒体収容部と、
前記媒体収容部からの前記シート状の媒体を前記直交方向に沿って前記画像形成部に搬送する媒体搬送部と、
前記画像形成部によって画像が形成された前記シート状の媒体を、前記直交方向に関する切断後の媒体の長さが前記サイズ指示データが指示する大きさとなるように前記一方向に切断する切断部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記サイズ指示データが指示する前記一方向に関する前記画像形成対象領域の大きさに少なくとも基づいて前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれかを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記サイズ指示データが指示する前記一方向に関する前記画像形成対象領域の大きさが所定の値より小さい場合に前記フチあり画像形成動作を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記画像データが示す画像の周縁部に含まれる空白の範囲の状況に少なくとも基づいて前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれかを選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像データが、前記画像形成対象領域の大きさを、媒体上の一方向及び前記一方向と直交する直交方向の両方に関して指示するサイズ指示データを含んでおり、
長尺のシート状の媒体がロール状に巻回されたロール体を収容可能な媒体収容部と、
前記媒体収容部からの前記シート状の媒体を前記直交方向に沿って前記画像形成部に搬送する媒体搬送部と、
前記画像形成部によって画像が形成された前記シート状の媒体を、前記直交方向に関する切断後の媒体の長さが前記サイズ指示データが指示する大きさとなるように前記一方向に切断する切断部とをさらに備えており、
前記制御部は、前記サイズ指示データが指示する前記一方向に関する前記画像形成対象領域の大きさが所定の値以上である場合であって、前記画像データが示す画像の周縁部に含まれる空白が所定の大きさ以上であるときに、前記フチあり画像形成動作を選択することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記フチなし画像形成動作が、前記画像形成対象領域を跨ぐ範囲に対して行われる画像形成動作であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から取得される画像データが示す画像を媒体に形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部から取得される画像データが示す画像を媒体に形成する画像形成装置がある。このような画像形成装置において、例えば、媒体の周縁部に余白を形成するいわゆるフチあり印刷と、このような余白を形成せず、媒体の全体に亘って画像を形成するフチなし印刷とを選択可能な場合がある。特許文献1はこのような装置の一例に関する。特許文献1では、その
図3に示されているように、PC等の外部装置において、フチなし印刷を行うか否かがプリンタドライバの機能により設定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、さまざまな環境において画像形成装置が用いられることから、さまざまな種類のプリンタドライバやアプリからの画像データを装置が取得する状況が想定される。このような状況下では、装置が取得する画像データとして、フチあり印刷及びフチなし印刷のいずれを使用するかを明示的に指示するデータも、このような明示的な指示がないデータも存在し得る。フチあり印刷かフチなし印刷かを画像データが明示的に指示しない場合に、仮に、これらの印刷方式のいずれかを一律に選択して画像形成を行う構成が採用されると、ユーザの意図に沿わない画像形成となるケースが頻発するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、フチあり印刷とフチなし印刷とを画像データが明示的に指示しない場合であってもユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置は、外部から取得される画像データが示す画像を媒体に形成する画像形成装置であって、媒体上の画像形成対象領域の全体に亘って画像を形成するフチなし画像形成動作と画像が形成されない空白の範囲を前記画像形成対象領域の周縁部に確保しつつ画像を媒体に形成するフチあり画像形成動作とを選択的に行う画像形成部と、前記画像データに基づいて前記画像形成部を制御する制御部とを備えており、前記制御部は、前記画像データが、前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれを行うかを明示的に指示するデータを含んでいない場合に、当該画像形成装置の状況及び前記画像データの内容の少なくともいずれかに基づいて前記フチなし画像形成動作及び前記フチあり画像形成動作のいずれかを選択し、選択した動作を前記画像形成部に行わせる。
【0007】
なお、本発明における「画像形成対象領域」は、媒体の一表面全体からなる領域であってもよいし、媒体の一表面における一部分からなる領域であってもよい。前者は、例えば、A4やB5等の定型紙に対して設定される領域である。後者は、例えば、長尺の用紙がロール状に巻回されたロール紙に対して設定される領域である。ロール紙が使用される場合について、より具体的な例としては、ロール紙に設定されるユーザ定義サイズの領域が「画像形成対象領域」に対応する。
【発明の効果】
【0008】
画像データがフチなし画像形成動作(いわゆるフチなし印刷)及びフチあり画像形成動作(いわゆるフチあり印刷)のいずれを行うかを明示的に指示するデータを含んでいない場合であっても、いずれかを一律に選択することはせず、装置の状況や画像データの内容に基づいていずれかを選択する。例えば、フチなし印刷及びフチあり印刷のいずれかを指示するような設定を装置が保持している等、装置の状況によっては、ユーザの意図が示唆される場合がある。また、例えば、画像データが示す画像中に空白がある場合等、画像データの内容によっては、フチなし印刷及びフチあり印刷のいずれをユーザが意図しているかが示唆される場合がある。したがって、装置の状況及び画像データの内容の少なくともいずれかに基づいてフチなし印刷かフチあり印刷かが選択されることにより、ユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい構成が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプリンタシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示すプリンタに用いられるカット紙のフチあり印刷の内容を示す概念図である。
【
図4】
図1に示すプリンタに用いられるカット紙のフチなし印刷の内容を示す概念図である。
【
図5】
図1に示すプリンタに用いられるロール紙のフチあり印刷の内容を示す概念図である。
【
図6】
図1に示すプリンタに用いられるロール紙のフチなし印刷の内容を示す概念図である。
【
図7】
図1のプリンタの制御部が実行する処理内容を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のフローチャートの処理において使用される、フチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択するための条件である所定の値を示す概念図である。
【
図9】
図7のフローチャートの処理において行われる画像の切り取りの内容を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な一実施形態に係るプリンタ100(本発明の「画像形成装置」に相当する)について、
図1~
図7を参照しつつ、以下に説明する。なお、
図1に示す上下方向、前後方向及び左右方向を、プリンタ100の上下方向、前後方向及び左右方向とする。
【0011】
プリンタ100は、
図1及び
図2に示すように、筐体100a、給送トレイ1、搬送機構2、カッター3、キャリッジ4、ヘッド5、移動機構6、排紙トレイ7及び制御部9を主に備えている。
【0012】
給送トレイ1(本発明の「媒体収容部」に相当する)は、筐体100a内においてヘッド5の下方に配置されている。給送トレイ1は、筐体100aの前壁に形成された開口10pを介して筐体100aに対して前後方向に沿って挿抜可能である。
【0013】
給送トレイ1は、ロール体R及びカット紙Kpを収容可能である。給送トレイ1は、ロール体R及びカット紙Kpを同時に収容可能であってもよいし、ロール体R及びカット紙Kpのいずれかを選択的に収容可能であってもよい。給送トレイ1は、ロール体Rを支持するロール体支持部11と、カット紙Kpが載置される載置面12と、を有している。
【0014】
ロール体Rは、円筒状の芯部材Rcの外周面に、長尺の用紙がロール状に巻回されたものである。カット紙Kpは、ロール体Rを構成する長尺の用紙よりも短尺の用紙であり、例えばA4サイズやB5サイズの定形サイズの用紙である。本実施形態のプリンタ100で使用可能なカット紙Kpのうち最大サイズのものは、A4サイズの用紙である。カット紙Kpは、複数積層された状態で載置面12上に載置される。
【0015】
搬送機構2は、給送トレイ1からヘッド5を経由して排紙トレイ7までの搬送経路(
図1において用紙Pを表す太い黒線に沿った経路)に沿って用紙Pを搬送する。以下、「上流」及び「下流」の用語は、搬送機構2による搬送経路に沿った用紙Pの搬送方向に関して上流及び下流をそれぞれ表すものとする。また、用紙Pに沿った方向として、搬送方向に平行な方向を縦方向、縦方向と直交する方向を横方向とする。横方向及び縦方向は、本発明の「一方向」及び「直交方向」にそれぞれ対応する。
【0016】
搬送機構2(本発明の「媒体搬送部」に相当する)は、給送ローラ21、中間ローラ対22、搬送ローラ対23、排紙ローラ対24及びガイド部材25を有している。これらのローラ及びローラ対は、搬送経路に沿って上流から下流に向かって、給送ローラ21、中間ローラ対22、搬送ローラ対23及び排紙ローラ対24の順に配置されている。
【0017】
給送ローラ21は、ロール体支持部11に支持されたロール体Rから巻き解かれたロール紙Rp又は載置面12に載置されたカット紙Kpを給送トレイ1から給送する。以降の説明において、ロール紙Rpとカット紙Kpとを区別しない場合には、「用紙P」と称する。
【0018】
給送ローラ21は、給送モータ21a(
図2参照)の駆動により回転する。制御部9の制御により給送モータ21aが駆動されると、給送ローラ21が回転して、給送ローラ21と接触する用紙Pに対して前方から後方に向かう方向の搬送力が付与される。これにより、用紙Pが給送トレイ1から送り出される。なお、給送トレイ1の後方側の端部に設けられた後壁15は、上端部が下端部よりも後方に位置するように傾斜している。したがって、給送トレイ1から送り出された用紙Pは、斜め上方に向かう。
【0019】
中間ローラ対22は、中間モータ22a(
図2参照)の駆動により回転する駆動ローラと駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。制御部9の制御により中間モータ22aが駆動されると、中間ローラ対22が用紙Pを挟持しつつ回転して用紙Pを搬送する。中間ローラ対22は、給送トレイ1の後方側の端部の上方に位置している。中間ローラ対22は、給送ローラ21によって給送トレイ1から送り出されて斜め上方に向かう用紙Pを挟持しつつ上方に搬送する。ガイド部材25は、中間ローラ対22の上方に位置している。ガイド部材25は、中間ローラ対22によって上方に搬送される用紙Pを前方に案内する。
【0020】
搬送ローラ対23は、搬送モータ23a(
図2参照)の駆動により回転する駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。排紙ローラ対24は、排紙モータ24a(
図2参照)の駆動により回転する駆動ローラと、駆動ローラに連れ回る従動ローラとで構成されている。
【0021】
制御部9の制御により搬送モータ23a及び排紙モータ24aが駆動されると、搬送ローラ対23及び排紙ローラ対24が用紙Pを挟持しつつ回転して、搬送方向である前方に向かって用紙Pを搬送する。搬送ローラ対23はヘッド5の後方に位置しており、排紙ローラ対24はヘッド5の前方に位置している。搬送ローラ対23は、ガイド部材25によって前方に案内された用紙Pを排紙ローラ対24に向かってさらに前方に搬送する。排紙ローラ対24は、搬送ローラ対23によって前方に搬送される用紙Pを挟持しつつさらに前方に搬送し、排紙トレイ7に排紙する。
【0022】
カッター3(本発明の「切断部」に相当する)は、搬送経路において中間ローラ対22より上流側であって、給送トレイ1の後方側の端部と中間ローラ対22との間の位置に配置されている。カッター3は、例えば円板状の回転刃及び従動刃からなる。カッター3は、切断モータ3a(
図2参照)の駆動により回転刃が回転し、且つ、左右方向に沿って往復移動する。ロール体Rから巻き解かれて搬送されたロール紙Rpは、制御部9の制御により切断モータ3aが駆動されることで、カッター3によりロール紙Rpの横方向に切断される。これにより、ロール体Rから切り離された側のロール紙Rpは、切断端が後端となった1枚ごとの用紙として排紙トレイ7に排紙される。一方、ロール体Rと繋がった側のロール紙Rpの切断端は、次の画像形成に用いられる用紙の先端となる。
【0023】
ヘッド5(本発明の「画像形成部」に相当する)は、下面に形成された複数のノズルと、ドライバIC52(
図2参照)とを含む。制御部9の制御によりドライバIC52が駆動されると、ノズルからインクが吐出され、そのインクが用紙Pに付着してドットを形成する。ヘッド5は、キャリッジ4に搭載されている。
【0024】
移動機構6は、2つのガイドレール61、62と、キャリッジモータ63(
図2参照)と、を有している。2つのガイドレール61、62は、前後方向に互いに離隔して配置され、各々が左右方向に延設されている。キャリッジ4は、2つのガイドレール61、62を跨ぐように配置されている。キャリッジ4は、ベルト(不図示)などを介してキャリッジモータ63に接続されている。制御部9の制御によりキャリッジモータ63が駆動されると、キャリッジ4がガイドレール61、62に沿って走査方向(左右方向)に移動する。これにより、キャリッジ4に搭載されたヘッド5は、走査方向に関して用紙Pを跨ぐように移動可能である。
【0025】
ヘッド5の下方にはプラテン51が配置されている。プラテン51は、搬送機構2によって搬送された用紙Pを上面において支持する平板部材である。プラテン51は、前後方向及び左右方向の両方向についてヘッド5からインクが吐出される領域を跨ぐように延びている。プラテン51はインクを吸収する吸収部材53を有している。吸収部材53は、ヘッド5からのインクのうち、用紙Pが存在する領域から外れた位置へと吐出されたインクを吸収して保持する。プラテン51には、吸収部材53が保持しているインクの状態を検出するインク受け状態センサ95が設置されている。インク受け状態センサ95は、吸収部材53が限界までインクを保持している(プラテンフルエラー)か否かを検出可能である。インク受け状態センサ95による検出結果は制御部9に出力される。
【0026】
ヘッド5がキャリッジ4の移動に伴って走査方向に往復移動しつつ吐出したインクが用紙Pに到達した場合には、走査方向に沿ってドットが順に用紙P上に形成される。このような走査方向に沿ったドットの列が、搬送機構2によって用紙Pが搬送されつつ順に形成される。用紙P上の画像形成対象領域内のいずれかにおける長方形の領域には、走査方向及び搬送方向の両方向にドットが並び、このようなドットの配列からなる画像が表れる。画像形成対象領域は、カット紙Kpについてはその一表面全体の領域に相当し、ロール紙Rpについてはその一表面における後述のユーザ定義領域に相当する。ヘッド5は、走査方向について用紙Pの外側に向かってインクを吐出することも可能である。この場合、インクはプラテン51の吸収部材53に吸収される。
【0027】
排紙トレイ7は、筐体100a内においてヘッド5の前方であって、給送トレイ1の上方に配置されている。排紙トレイ7は、筐体100aの前壁に形成された開口100qを介して筐体100aに対して前後方向に沿って挿抜可能である。ヘッド5により画像が記録された用紙Pは、排紙トレイ7に受容される。
【0028】
用紙Pがロール紙Rpに相当する場合、排紙トレイ7に排出されたロール紙Rpは、それ自体がユーザの所望する最終的な印刷物であるか、ユーザによって適宜のサイズに切断されたものが最終的な印刷物となる。ユーザによる切断は、主に、排出されたロール紙Rpの縦方向(ロール紙Rpの搬送方向に対応する方向)に沿ってなされる(後述)。以下、このように最終的に得られる印刷物を「最終印刷物」とする。
【0029】
筐体100a内にはカートリッジ装着部が設置されている。カートリッジ装着部には、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの各色のインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジが着脱自在に装着可能である。チューブなどを介して、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジからヘッド5にインクが供給される。
【0030】
筐体100aの外側の前面にはタッチパネルディスプレイ96が設置されている。タッチパネルディスプレイ96は制御部9の制御により文字や画像等を画面に表示する。また、タッチパネルディスプレイ96は、画面に指等が接触するとその接触位置を検出し、検出結果を制御部9に送信する。
【0031】
制御部9は、プリンタ100全体の制御を行うものである。制御部9には、
図2に示すように、給送モータ21a、中間モータ22a、搬送モータ23a、排紙モータ24a、切断モータ3a、ドライバIC52、キャリッジモータ63及びインク受け状態センサ95が電気的に接続されている。
【0032】
制御部9は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)94等を備えている。ROM92には、CPU91及びASIC94が実行するプログラム等が格納されている。また、ROM92(本発明の「設定情報記憶部」に相当する)には、後述の情報入力処理において入力された設定情報を示すデータが格納される。RAM93は、プログラム実行時に必要なデータを一時的に記憶するものである。このデータには、PC等の外部装置から送信されたり記録媒体から読み出されたりした画像データが含まれる。画像データは、後述のフチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に指示するデータ、ロール紙Rpが使用される場合におけるユーザ定義サイズを示すデータ及び用紙P上に掲載されるべき画像を示すデータを含んでいる。ただし、本実施形態では、フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に指示するデータは、画像データに含まれている場合と含まれていない場合とがある。ユーザ定義サイズは、ロール紙Rpが使用される場合に、縦方向及び横方向に関してユーザが所望する用紙の実寸値(例えば、200mm×200mm)を示す。なお、画像データ中のユーザ定義サイズを示すデータが本発明の「サイズ指示データ」に相当する。
【0033】
なお、制御部9は、CPU91のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC94のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU91とASIC94とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、制御部9は、1つのCPU91が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU91が処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部9は、1つのASIC94が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC94が処理を分担して行うものであってもよい。
【0034】
制御部9は、主に、各種の設定情報をユーザに入力させる情報入力処理及び用紙Pに画像を形成する画像形成処理を実行する。
【0035】
情報入力処理においては、制御部9は、設定情報として、フチあり印刷及びフチなし印刷のいずれを選択するかをユーザに入力させる。この処理では、情報を入力させるための文字や画像等の表示を含んだ画面表示がタッチパネルディスプレイ96によって行われると共に、ユーザがタッチパネルディスプレイ96に指等を接触させた位置に基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷の選択が行われる。選択の結果は、制御部9によりROM92に設定情報として格納される。なお、このような情報の入力が最初になされるまでは、ROM92には、フチなし印刷かフチあり印刷かを示す設定情報が格納されていない状態である。
【0036】
画像形成処理においては、制御部9は、搬送機構2、カッター3及びヘッド5を以下のように制御する。制御部9は、RAM93に格納された画像データに基づき、用紙Pを搬送経路に沿って所定距離ずつ搬送させる搬送動作を搬送機構2に行わせることと、移動機構6にキャリッジ4を走査方向に往復移動させつつ、複数のノズルから用紙Pに対してインクを吐出させる画像形成動作をヘッド5に行わせることとを交互に繰り返し実行する。これにより、制御部9は、フチなし印刷及びフチあり印刷のいずれかの方法で用紙Pに画像形成を行わせる。
【0037】
フチなし印刷は、画像形成対象領域全体に亘って画像を形成する方法である。本実施形態においては、フチなし印刷に当たって、縦方向及び横方向の両方について画像形成対象領域を跨ぐ領域に対してヘッド5からインクを吐出させる。これにより、用紙Pの画像衛星対象領域の周縁部に空白が形成されにくく、確実にその全体に亘って画像が形成されやすい。その一方、フチなし印刷では、用紙Pの外側にインクが吐出される可能性がある。用紙Pの外側にインクが吐出された場合、そのインクはプラテン51の吸収部材53に吸収される。フチあり印刷は、画像形成対象領域の周縁部の内側にインクが吐出されることにより、画像が形成されない空白の範囲を画像形成対象領域の周縁部に確保しつつ画像を形成する方法である。フチあり印刷によると、用紙Pの外側にインクが吐出されにくい。
【0038】
例えば、用紙Pがカット紙Kpである場合には、画像形成対象領域がカット紙Kpの一表面全体の領域に設定される。そして、フチあり印刷においてインクが吐出される領域αは、
図3の一点鎖線に示すように、画像形成対象領域の周縁部に空白Δを確保しつつ空白Δの内側に設定される。これにより、カット紙Kpの領域αに画像が形成されることになる。なお、本実施形態において、用紙P又は画像の周縁部とは、用紙P又は画像の外縁の四辺全体に沿って延びる帯状の部分(
図3のハッチングを付した部分)を示すものとする。また、フチなし印刷においてインクが吐出される領域αは、
図4の一点鎖線に示すように、縦方向及び横方向の両方について画像形成対象領域を跨ぐように設定される。これにより、画像形成対象領域全体に亘って画像が形成されることになる。フチあり印刷又はフチなし印刷で画像が形成されたカット紙Kpは、画像形成済みの用紙となって排紙トレイ7へと排出される。
【0039】
また、用紙Pがロール紙Rpである場合には、画像形成対象領域がユーザ定義領域βに設定される。ユーザ定義領域βは、ロール紙Rp上のユーザ定義サイズの大きさを有する領域である。そして、フチあり印刷においてインクが吐出される領域αは、
図5の一点鎖線に示すように、画像形成対象領域の周縁部に空白Δを確保しつつ空白Δの内側に設定される。これにより、ロール紙Rpの領域αに画像が形成されることになる。また、フチなし印刷においてインクが吐出される領域αは、
図6の一点鎖線に示すように、縦方向及び横方向の両方について画像形成対象領域を跨ぐように設定される。これにより、画像形成対象領域全体に亘って画像が形成されることになる。フチあり印刷又はフチなし印刷で画像が形成されたロール紙Rpは、制御部9による制御に従ったカッター3の切断動作によって、縦方向に関してユーザ定義領域βの上流端において切断される。カッター3の切断動作によって切断されたロール紙Rpは、縦方向に関してユーザ定義サイズの大きさを有する1枚ごとの画像形成済みの用紙となって排紙トレイ7へと排出される。
【0040】
ところで、本実施形態では、上述の通り、フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータを画像データが含んでいない場合がある。フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータを画像データが含んでいない場合に、仮に、一律にフチなし印刷で画像形成を行ったり、一律にフチあり印刷で画像形成を行ったりする構成が採用されたとすると、ユーザの意図に沿わない画像形成となるケースが頻発するおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態に係る制御部9は、フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータを画像データが含んでいない場合に、プリンタ100の状況及び画像データの内容に基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択するように構成されている。プリンタ100の状況には、例えば、ROM92に格納されている設定情報の内容が含まれる。また、画像データの内容には、例えば、ユーザ定義サイズや画像を示すデータの内容が含まれる。制御部9は、これらのようなユーザの意図を示唆する情報に基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択する。
【0042】
具体的には、制御部9は、
図7に示す処理を実行する。なお、
図7の処理は用紙Pとしてロール紙Rpが使用される場合に実行される。まず、制御部9は、インク受け状態センサ95の検出結果に基づき、吸収部材53が限界までインクを保持している状態、つまり、プラテンフルエラーの状態かどうかを判定する(S1)。プラテンフルエラーの状態であると判定すると(S1、Yes)、制御部9は、フチあり印刷を選択する(S7)。プラテンフルエラーの状態でフチなし印刷を行うと、プラテン51の吸収部材53がインクを受け切れず、あふれたインクが装置内を汚染するおそれがあるためである。フチあり印刷においては、画像データが示す画像全体が
図5に示す領域α一杯に形成されるように画像形成が実行される。
【0043】
一方、プラテンフルエラーの状態でないと判定すると(S1、No)、制御部9は、フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータが画像データに含まれているか否かを判定する(S2)。この判定は、例えば、画像データのフォーマットとしてフチなし印刷のオン・オフを指示する文字列が設定されている場合に、その文字列を示すデータが画像データに含まれているか否かを判定することによってなされる。フチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータが画像データに含まれていると判定すると(S2、Yes)、制御部9は、そのデータの指示内容に基づいてフチあり印刷又はフチなし印刷を選択する(S8、フチあり→S7又はS8、フチなし→S10)。フチあり印刷においては、画像データが示す画像全体が
図5に示す領域α一杯に形成されるように画像形成が実行される。フチなし印刷においては、画像データが示す画像全体に対応するインクの吐出が
図6に示す領域α一杯に対して行われる(以下のフチなし印刷において同様である)。
【0044】
S2において、画像データ中にフチあり印刷かフチなし印刷かを明示的に示すデータが含まれていないと判定すると(S2、No)、制御部9は、フチあり印刷かフチなし印刷かを示す設定情報がROM92に格納されているか否かを判定する(S3)。このような設定情報がROM92に格納されていると判定すると(S3、Yes)、制御部9は、その設定情報に基づいてフチあり印刷又はフチなし印刷を選択する(S9、フチあり→S7又はS9、フチなし→S10)。
【0045】
S3において、フチあり印刷かフチなし印刷かを示す設定情報がROM92に格納されていないと判定すると(S3、No)、制御部9は、画像データが示す横方向に関するユーザ定義サイズが所定の値より小さいか否かを判定する(S4)。所定の値は、
図8に示すように、ロール紙Rpの横方向の長さから空白Δの大きさの2倍の値を減算した値に設定されている。横方向に関するユーザ定義サイズが所定の値より小さいと判定すると(S4、Yes)、制御部9はフチあり印刷を選択する。フチあり印刷においては、画像データが示す画像全体が
図5に示す領域α一杯に形成されるように画像形成が実行される。
【0046】
S4において、横方向に関するユーザ定義サイズが所定の値以上であると判定すると(S4、No)、制御部9は、画像データが示す画像の周縁部に
図5の空白Δに相当する空白が存在するか否かを判定する(S5)。つまり、制御部9は、画像の周縁部に、その外縁の四辺全体に沿って延びる
図9に示すような帯状の空白部分が存在するか否かを判定する。このような空白が画像の周縁部に存在すると判定した場合(S5、Yes)、制御部9は、元の画像から周縁部の空白が削除された残りの部分に対応する切り取り画像(
図9参照)を取得する(S6)と共に、フチあり印刷を選択する(S7)。フチあり印刷においては、S6で取得された切り取り画像に基づく画像形成が行われる。つまり、切り取り画像の全体が
図5に示す領域α一杯に形成されるように画像形成が実行される。S5において、上記のような空白が画像の周縁部に存在しないと判定すると(S5、No)、制御部9は、フチなし印刷を選択する(S10)。
【0047】
以上説明した本実施形態によると、画像データがフチなし印刷及びフチあり印刷のいずれを行うかを明示的に指示するデータを含んでいない場合であっても、いずれかを一律に選択することはせず、プリンタ100の状況及び画像データの内容に基づいていずれかを選択する(
図7のS2~S10)。例えば、フチなし印刷及びフチあり印刷のいずれかを指示する設定情報がROM92に格納されている等、プリンタ100の状況によっては、ユーザの意図が示唆される場合がある。また、例えば、画像データが示す画像中に空白がある場合(
図9参照)等、画像データの内容によっては、フチなし印刷及びフチあり印刷のいずれをユーザが意図しているかが示唆される場合がある。したがって、プリンタ100の状況及び画像データの内容に基づいてフチなし印刷かフチあり印刷かが選択されることにより、ユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい。
【0048】
また、本実施形態においては、画像データの内容に基づくフチなし印刷及びフチあり印刷の選択として、ユーザ定義サイズに基づく選択がなされる(
図7のS4、Yes→S7)。ユーザ定義サイズはユーザの意図を示唆する場合がある。例えば、ユーザ定義サイズが上記所定の値より小さいと、画像の周囲に空白を形成するように画像形成を行うようにユーザが意図している可能性がある。特に、ユーザ定義サイズが所定の値より小さいが、所定の値に近い場合には、画像の周囲に空白を形成するフチあり印刷をユーザが要望している可能性が比較的高い。したがって、ユーザ定義サイズに基づいてフチあり印刷を選択することにより、ユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい。
【0049】
また、本実施形態においては、画像データが示す画像の周縁部に含まれる空白の範囲の状況に少なくとも基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択する。具体的には、横方向に関するユーザ定義サイズが所定の値以上である場合(
図7のS4、No)に、画像データが示す画像の周縁部に
図5の空白Δに相当する空白が存在するとき(同S5、Yes)には、フチあり印刷が選択される(同S7)。このように、画像の周縁部に存在する空白によっては、ユーザがフチあり印刷を意図している可能性がある。特に、横方向に関するユーザ定義サイズがロール紙Rpの幅に近く、且つ、画像の周縁部に空白Δに相当する空白が存在するときには、ユーザがフチあり印刷を意図している可能性が比較的高い。したがって、空白の範囲の状況に基づいてフチあり印刷を選択することにより、ユーザの意図に沿った画像形成がなされやすい。
【0050】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、
図7に示すように、フチあり印刷かフチなし印刷かを示す設定情報がROM92に格納されているか否か(S3)、画像データが示す横方向に関するユーザ定義サイズが所定の値より小さいか否か(S4)、画像データが示す画像の周縁部に
図5の空白Δに相当する空白が存在するか否か(S5)の判定ステップがこの順序で並んでおり、それぞれの判定内容に基づいてフチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを選択している。これに対し、判定ステップの順序が変更されてもよい。例えば、S4→S5の順序で判定ステップが並んだ後にS3の判定ステップが配置されてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態に係る
図7のフローチャートによる処理がロール紙Rpを使用する場合に実行される。これに対し、カット紙Kpが用いられるが、フチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかを明示的に指示するデータが画像データに含まれていない場合にも同様の処理が実行されてもよい。例えば、フチあり印刷及びフチなし印刷のいずれかが、ROM92に格納された設定情報に基づいて選択されたり、画像データが示す画像の周縁部に含まれる空白の範囲の状況に基づいて選択されたりしてもよい。
【0053】
加えて、上述の各実施形態においては、プリンタ200、300又は400を有するプリンタシステムに対して本発明を適用する場合について説明したが、これには限定されない。本発明は、ヘッドからインクを吐出するインクジェット式のその他の画像形成装置、例えば、複合機やコピー機などを有するシステムに適用されてもよい。また、インクジェット方式でインクを印刷用紙に付着させる代わりに、トナー(本発明の「着色剤」に相当する)を印刷用紙に付着させることで画像記録処理を実行するレーザー式の画像形成装置を有するシステムに適用されてもよい。この場合、画像形成装置にはトナーを収容するトナーカートリッジが着脱可能に装着される。
【符号の説明】
【0054】
1 給送トレイ
2 搬送機構
3 カッター
5 ヘッド
9 制御部
51 プラテン
53 吸収部材
95 インク受け状態センサ
100 プリンタ
P 用紙
Kp カット紙
Rp ロール紙