(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078694
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】レーザー干渉計
(51)【国際特許分類】
G01S 17/32 20200101AFI20240604BHJP
【FI】
G01S17/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191189
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 敦司
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA07
5J084AA09
5J084AD04
5J084AD08
5J084BA03
5J084BA04
5J084BA36
5J084BA51
5J084BB04
5J084BB14
5J084BB15
5J084BB16
5J084BB17
5J084BB40
5J084CA07
5J084CA34
5J084CA42
5J084CA49
5J084CA70
5J084EA01
5J084EA31
(57)【要約】
【課題】回折格子を用いることなくレーザー光の周波数シフトを可能にする光変調器を備え、低コスト化が図られたレーザー干渉計を提供すること。
【解決手段】対象物に向けてレーザー光を射出するレーザー光源と、レーザー光が照射される振動素子を備え、振動素子を用いてレーザー光を変調し、レーザー光に変調信号を重畳させる光変調器と、対象物に由来するサンプル信号および変調信号を含むレーザー光を受光し、受光信号を出力する受光素子と、基準信号に基づいて、受光信号からサンプル信号を復調する復調回路と、振動素子を信号源として動作し、復調回路に基準信号を出力する発振回路と、を備え、振動素子は、基部および基部に接続された振動部を有する振動基板を含み、振動部は、振動基板の面内方向に沿って振動し、振動部は、面内方向に交差する側面を含み、側面にレーザー光が照射されることを特徴とするレーザー干渉計。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けてレーザー光を射出するレーザー光源と、
前記レーザー光が照射される振動素子を備え、前記振動素子を用いて前記レーザー光を変調し、前記レーザー光に変調信号を重畳させる光変調器と、
前記対象物に由来するサンプル信号および前記変調信号を含む前記レーザー光を受光し、受光信号を出力する受光素子と、
基準信号に基づいて、前記受光信号から前記サンプル信号を復調する復調回路と、
前記振動素子を信号源として動作し、前記復調回路に前記基準信号を出力する発振回路と、
を備え、
前記振動素子は、
基部および前記基部に接続された振動部を有する振動基板を含み、
前記振動部は、前記振動基板の面内方向に沿って振動し、
前記振動部は、前記面内方向に交差する側面を含み、
前記側面に前記レーザー光が照射されることを特徴とするレーザー干渉計。
【請求項2】
前記振動部は、前記レーザー光が照射される前記側面に設けられている金属膜を有する請求項1に記載のレーザー干渉計。
【請求項3】
前記振動部は、前記面内方向に並んでいる第1振動腕および第2振動腕を含み、
前記第1振動腕および前記第2振動腕は、前記面内方向に沿って屈曲振動する請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項4】
前記振動基板は、水晶基板であり、
前記レーザー光を照射する前記側面は、水晶のX軸のマイナス側の面であって、ウェットエッチング面である請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項5】
前記振動基板は、水晶基板であり、
前記レーザー光を照射する前記側面は、ドライエッチング面である請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項6】
前記光変調器は、前記振動素子を収容する収容部を有する筐体を備え、
前記収容部は、減圧されている請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【請求項7】
前記筐体は、前記レーザー光が照射される前記側面と、前記レーザー光源と、の間に設けられ、前記レーザー光が透過する透過窓を有する請求項6に記載のレーザー干渉計。
【請求項8】
前記透過窓の表面は、曲面形状をなしている請求項7に記載のレーザー干渉計。
【請求項9】
前記透過窓は、入射する前記レーザー光の入射方向に対して傾斜した入射面を有する請求項7に記載のレーザー干渉計。
【請求項10】
前記振動素子は、シリコン振動子またはセラミック振動子である請求項1または2に記載のレーザー干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー干渉計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動いている物の動きを把握するレーザードップラー計測装置が開示されている。レーザードップラー計測装置では、被測定物にレーザー光を照射し、ドップラーシフトを受けた散乱レーザー光に基づいて動きを計測する。具体的には、ヘテロダイン干渉を利用して、レーザー光の周波数のシフト量を得るとともに、このシフト量から、動いている物の速度や変位を求める。
【0003】
特許文献1に記載のレーザードップラー計測装置は、周波数シフター型の光変調器を備える。この光変調器は、厚みすべり振動する水晶AT振動子と、この振動子の変位方向に並設された複数の溝を含む回折格子と、を備える。この光変調器では、厚みすべり振動が面内振動、つまり、入射するレーザー光の入射方向に対して交差する方向に振動するため、レーザー光の周波数をシフトさせにくい。換言すれば、レーザー光の周波数を効率よくシフトさせるためには、レーザー光の入射波数ベクトルと出射波数ベクトルとの差と、水晶AT振動子の振動ベクトルと、の内積が、十分大きいことが求められる。しかしながら、水晶AT振動子のみを用いた場合、この内積は、ほぼゼロとなる。そこで、特許文献1に記載の光変調器では、水晶AT振動子に回折格子を組み合わせている。この回折格子は、水晶AT振動子の振動方向と交差する方向に溝を有する。これにより、振動ベクトルの方向が変換され、前述の内積をゼロ超とすることができ、レーザー光の周波数シフトが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回折格子は、光変調器の製造難易度を高め、レーザー干渉計の高コスト化を招いている。このため、回折格子を用いることなくレーザー光の周波数シフトを可能にする光変調器を用いたレーザー干渉計の実現が課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の適用例に係るレーザー干渉計は、
対象物に向けてレーザー光を射出するレーザー光源と、
前記レーザー光が照射される振動素子を備え、前記振動素子を用いて前記レーザー光を変調し、前記レーザー光に変調信号を重畳させる光変調器と、
前記対象物に由来するサンプル信号および前記変調信号を含む前記レーザー光を受光し、受光信号を出力する受光素子と、
基準信号に基づいて、前記受光信号から前記サンプル信号を復調する復調回路と、
前記振動素子を信号源として動作し、前記復調回路に前記基準信号を出力する発振回路と、
を備え、
前記振動素子は、
基部および前記基部に接続された振動部を有する振動基板を含み、
前記振動部は、前記振動基板の面内方向に沿って振動し、
前記振動部は、前記面内方向に交差する側面を含み、
前記側面に前記レーザー光が照射される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るレーザー干渉計を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示すセンサーヘッド部を示す概略構成図である。
【
図3】
図2に示す光変調器が備える振動素子の構成例を示す斜視図である。
【
図4】ウェットエッチングにより水晶基板から切り出された音叉型水晶振動子である振動素子の断面図である。
【
図5】パッケージ構造を有する光変調器を示す斜視図である。
【
図7】
図6の光変調器の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図6の光変調器の変形例を示す断面図である。
【
図9】
図1のセンサーヘッド部の変形例を示す断面図である。
【
図10】
図1のセンサーヘッド部の変形例を示す断面図である。
【
図11】
図1のセンサーヘッド部の変形例を示す断面図である。
【
図12】第1変形例に係る干渉光学系を示す概略構成図である。
【
図13】第2変形例に係る干渉光学系を示す概略構成図である。
【
図14】第3変形例に係る干渉光学系を示す概略構成図である。
【
図15】第4変形例に係る干渉光学系を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のレーザー干渉計を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るレーザー干渉計1を示す機能ブロック図である。
図2は、
図1に示すセンサーヘッド部51を示す概略構成図である。
【0009】
図1に示すレーザー干渉計1は、干渉光学系50、電流電圧変換器531および発振回路54を備えるセンサーヘッド部51と、干渉光学系50からの光検出信号が入力される復調回路52を備える本体部59と、を有する。レーザー干渉計1は、
図2に示すように、対象物14にレーザー光を照射し、反射した光を検出、解析する。これにより、対象物14の変位や速度を計測する。
【0010】
1.センサーヘッド部
1.1.干渉光学系
図2に示す干渉光学系50は、マイケルソン型干渉光学系である。干渉光学系50は、
図2に示すように、レーザー光源2と、コリメートレンズ3と、光分割器4と、1/2波長板6と、1/4波長板7と、1/4波長板8と、検光子9と、受光素子10と、周波数シフター型の光変調器12と、を備える。
【0011】
レーザー光源2は、レーザー光である出射光L1を射出する。受光素子10は、受けた光を電気信号に変換する。光変調器12は、振動素子30を備えており、出射光L1の周波数を変化させ、変調信号を含む参照光L2(変調信号が重畳されたレーザー光)を生成する。対象物14に入射した出射光L1は、対象物14に由来するドップラー信号であるサンプル信号を含む物体光L3(対象物14に由来するサンプル信号を含むレーザー光)として反射する。
【0012】
光分割器4とレーザー光源2とを結ぶ光路を、光路18とする。光分割器4と光変調器12とを結ぶ光路を、光路20とする。光分割器4と対象物14とを結ぶ光路を、光路22とする。光分割器4と受光素子10とを結ぶ光路を、光路24とする。なお、本明細書の「光路」は、光学部品同士の間に設定された、光が進行する経路を指している。
【0013】
光路18上には、光分割器4側から1/2波長板6およびコリメートレンズ3がこの順で配置されている。光路20上には、1/4波長板8が配置されている。光路22上には、1/4波長板7が配置されている。光路24上には、検光子9が配置されている。
【0014】
レーザー光源2から射出された出射光L1は、光路18を経て、光分割器4で2つに分割される。分割された出射光L1の一方である第1分割光L1aは、光路20を経て、光変調器12に入射する。また、分割された出射光L1の他方である第2分割光L1bは、光路22を経て、対象物14に入射する。光変調器12で位相が変調されて生成された参照光L2は、光路20および光路24を経て、受光素子10に入射する。対象物14での反射により生成された物体光L3は、光路22および光路24を経て、受光素子10に入射する。
【0015】
以上のような干渉光学系50では、光ヘテロダイン干渉法により、対象物14の位相情報を求める。具体的には、周波数がわずかに異なる2つの光(参照光L2および物体光L3)を干渉させ、得られた干渉光から位相情報を取り出す。そして、後述する復調回路52において位相情報から対象物14の変位を求める。光ヘテロダイン干渉法によれば、干渉光から位相情報を取り出すとき、外乱の影響、特にノイズとなる周波数の迷光の影響を受けにくく、高いロバスト性が与えられる。
【0016】
以下、干渉光学系50の各部についてさらに説明する。
1.1.1.レーザー光源
レーザー光源2は、可干渉性を有する出射光L1を射出するレーザー光源である。レーザー光源2には、線幅がMHz帯以下の光源が好ましく用いられる。具体的には、He-Neレーザーのようなガスレーザー、DFB-LD(Distributed FeedBack - Laser Diode:分布帰還型レーザーダイオード)、FBG-LD(Fiber Bragg Grating付き Laser Diode:ファイバーブラッググレーティング付きレーザーダイオード)、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザーダイオード)、FP-LD(Fabry-Perot Laser Diode:ファブリーペロー型半導体レーザーダイオード)のような半導体レーザー素子等が挙げられる。
【0017】
レーザー光源2は、特に半導体レーザー素子であるのが好ましい。これにより、レーザー光源2を特に小型化することが可能になる。このため、レーザー干渉計1の小型化を図ることができる。特に、レーザー干渉計1のうち、干渉光学系50が収容されるセンサーヘッド部51の小型化および軽量化が図られるため、センサーヘッド部51の設置自由度といった、レーザー干渉計1の操作性を高められる点で有用である。
【0018】
1.1.2.コリメートレンズ
コリメートレンズ3は、レーザー光源2と光分割器4との間に配置される光学素子であり、一例として非球面レンズが挙げられる。コリメートレンズ3は、レーザー光源2から射出された出射光L1を平行化する。なお、レーザー光源2から射出される出射光L1が十分に平行化されている場合、例えばHe-Neレーザーのようなガスレーザーをレーザー光源2として用いた場合には、コリメートレンズ3が省略されていてもよい。
【0019】
一方、レーザー光源2が半導体レーザー素子である場合には、レーザー干渉計1は、レーザー光源2と光分割器4との間に配置されているコリメートレンズ3を備えるのが好ましい。これにより、半導体レーザー素子から射出される出射光L1を平行化することができる。その結果、出射光L1がコリメート光になるため、出射光L1を受光する各種光学部品の大型化を抑制することができ、レーザー干渉計1の小型化を図ることができる。
【0020】
コリメート光となった出射光L1は、1/2波長板6を通過することにより、P偏光とS偏光の強度比が例えば50:50である直線偏光に変換され、光分割器4に入射する。
【0021】
1.1.3.光分割器
光分割器4は、レーザー光源2と光変調器12との間、および、レーザー光源2と対象物14との間に配置される偏光ビームスプリッターである。光分割器4は、P偏光を透過し、S偏光を反射させる機能を有する。この機能により、光分割器4は、出射光L1を、光分割器4での反射光である第1分割光L1a、および、光分割器4の透過光である第2分割光L1b、に分割する。
【0022】
光分割器4で反射したS偏光である第1分割光L1aは、1/4波長板8で円偏光に変換され、光変調器12に入射する。光変調器12に入射した第1分割光L1aは、fm[Hz]の周波数シフトを受け、参照光L2として反射する。したがって、参照光L2は、周波数fm[Hz]の変調信号を含む。参照光L2は、再び1/4波長板8を透過するときP偏光に変換される。参照光L2のP偏光は、光分割器4および検光子9を透過して受光素子10に入射する。
【0023】
光分割器4を透過したP偏光である第2分割光L1bは、1/4波長板7で円偏光に変換され、動いている状態の対象物14に入射する。対象物14に入射した第2分割光L1bは、fd[Hz]のドップラーシフトを受け、物体光L3として反射する。したがって、物体光L3は、周波数fd[Hz]のサンプル信号を含む。物体光L3は、再び1/4波長板7を透過するときS偏光に変換される。物体光L3のS偏光は、光分割器4で反射され、検光子9を透過して受光素子10に入射する。
【0024】
前述したように、出射光L1は可干渉性を有しているため、参照光L2および物体光L3は、干渉光として受光素子10に入射する。
【0025】
なお、偏光ビームスプリッターに代えて無偏光ビームスプリッターを用いるようにしてもよい。この場合、1/2波長板6、1/4波長板7および1/4波長板8等が不要となるため、部品点数の削減によるレーザー干渉計1の小型化を図ることができる。また、ビームスプリッター以外の光分割器を用いるようにしてもよい。
【0026】
1.1.4.検光子
互いに直交するS偏光およびP偏光は、互いに独立しているので、単純に重ね合わせただけでは干渉によるうなりが現れない。そこで、S偏光とP偏光を重ね合わせた光波を、S偏光およびP偏光の双方に対して45°傾けた検光子9に通す。検光子9を用いることにより、互いに共通した成分同士の光を透過させ、干渉を生じさせることができる。その結果、検光子9では、参照光L2と物体光L3とが干渉し、|fm-fd|[Hz]の周波数を持つ干渉光が生成される。
【0027】
1.1.5.受光素子
干渉光が受光素子10に入射すると、受光素子10は、干渉光の強度に応じた光電流(受光信号)を出力する。この受光信号から後述する方法でサンプル信号を復調することにより、最終的に、対象物14の動き、すなわち変位や速度を求めることができる。受光素子10としては、例えばフォトダイオード等が挙げられる。なお、受光素子10で受光するのは、レーザー光源2から射出されたレーザー光であって、その周波数が光変調器12および対象物14の各振動とそれぞれ相互作用した結果、変調信号およびサンプル信号が重畳されたレーザー光であればよく、上記の干渉光のみに限定されない。また、本明細書における「受光信号からサンプル信号を復調する」には、光電流(受光信号)から変換された様々な信号からサンプル信号を復調することを含む。
【0028】
1.1.6.光変調器
図3は、
図2に示す光変調器12が備える振動素子30の構成例を示す斜視図である。なお、
図3では、互いに直交する3つの軸として、A軸、B軸およびC軸を設定し、矢印で示している。矢印の先端側を「プラス」とし、矢印の基端側を「マイナス」とする。また、例えば、A軸のプラス側およびマイナス側の両方向を「A軸方向」という。B軸方向およびC軸方向もそれぞれ同様である。
【0029】
1.1.6.1.振動素子
図3では、振動素子30として音叉型水晶振動子が用いられている。
図3に示す振動素子30は、基部301と、第1振動腕302および第2振動腕303とを有する振動基板を有する。このような音叉型水晶振動子は、製造技術が確立されているため、容易に入手可能であり、かつ、発振も安定している。このため、音叉型水晶振動子は、振動素子30として好適である。また、振動素子30は、振動基板に設けられた、電極304、305および光反射面306を有する。
【0030】
基部301は、A軸に沿って延在する部位である。第1振動腕302は、基部301のA軸マイナス側の端部からB軸プラス側に向かって延びる部位である。第2振動腕303は、基部301のA軸プラス側の端部からB軸プラス側に向かって延びる部位である。
【0031】
電極304は、第1振動腕302および第2振動腕303のうち、A-B面と平行な側面に設けられている導電膜である。なお、
図3には図示していないが、電極304は、互いに対向する側面にそれぞれ設けられ、互いに極性が異なるように電圧が印加されることで、第1振動腕302を駆動する。
【0032】
電極305は、第1振動腕302および第2振動腕303のうち、A-B面と交差する側面に設けられている導電膜である。なお、
図3には図示していないが、電極304も、互いに対向する側面にそれぞれ設けられ、互いに極性が異なるように電圧が印加されることで、第2振動腕303を駆動する。
【0033】
光反射面306は、第1振動腕302および第2振動腕303のうち、A-B面と交差する側面に設定され、出射光L1を反射する機能を有する。側面とは、第1振動腕302および第2振動腕303の延在方向に沿って広がる面のことを指す。
図3に示す光反射面306は、第1振動腕302の側面のうち、特に、電極305の表面に設定されている。つまり、第1振動腕302に設けられた電極305は、第1振動腕302に電圧を印加する機能だけでなく、光反射面306としての機能も有している。なお、電極305とは別に、図示しない光反射膜を設けるようにしてもよい。このように、光反射面306が設定されている電極305や図示しない光反射膜は、金属膜であるのが好ましい。金属膜は、出射光L1の反射率が高い。このため、出射光L1の反射に伴う損失を抑制することができ、受光信号のS/N比(信号対雑音比)を高めることができる。金属膜の構成材料としては、例えば、アルミニウム単体やその合金、ニッケル単体やその合金、銀単体やその合金、金単体やその合金等が挙げられる。
【0034】
音叉型水晶振動子には、水晶基板から切り出された水晶片を用いる。音叉型水晶振動子の製造に用いられる水晶基板としては、例えば、水晶Zカット平板等が挙げられる。
図3には、A軸と平行なX軸、B軸と平行なY’軸、C軸と平行なZ’軸を設定している。水晶Zカット平板は、例えば、X軸が電気軸、Y’軸が機械軸、Z’軸が光軸となるように、水晶の単結晶から切り出された基板である。具体的には、X軸、Y’軸およびZ’軸からなる直交座標系において、X軸まわりに、X軸およびY’軸からなるX-Y’平面を反時計方向に約1°から5°傾けた主面を持つ基板が、水晶の単結晶から切り出され、水晶基板として好ましく用いられる。そして、このような水晶基板をエッチングすることにより、
図3に示す振動素子30に用いられる水晶片が得られる。エッチングは、ウェットエッチングであっても、ドライエッチングであってもよい。
【0035】
図4は、ウェットエッチングにより水晶基板から切り出された音叉型水晶振動子である振動素子30の断面図である。
図4の断面図は、振動素子30が有する第1振動腕302および第2振動腕303を、X-Z’平面で切断したときの断面図である。
【0036】
図4に示す第1振動腕302および第2振動腕303の各側面は、好ましくはウェットエッチング面である。ウェットエッチングでは、水晶の結晶方位によるエッチングレートの異方性により、
図4に示すような凹凸を伴うウェットエッチング面が形成される。この場合、電極304、305も、ウェットエッチング面に設けられており、光反射面306も、ウェットエッチング面に設けられた電極305の表面に設定される。特に、
図4に示す光反射面306は、水晶のX軸のマイナス側の面に設定されているのが好ましい。水晶のX軸のマイナス側の面は、水晶の結晶方位によるエッチングレートの異方性により、平坦度および角度精度に優れた面となる。このため、この面に光反射面306を設定することで、入射する出射光L1の反射損失を抑制するとともに、出射光L1および参照光L2の光軸ずれを抑制することができる。その結果、受光信号のS/N比をより高めることができる。
【0037】
一方、第1振動腕302および第2振動腕303の各側面は、ドライエッチング面であってもよい。ドライエッチングでは、水晶の結晶方位によるエッチングレートの異方性が少ないため、目的とする角度や精度で側面が切り出される。このため、レーザー光が照射される側面がドライエッチング面であれば、入射する出射光L1の反射損失を抑制するとともに、出射光L1および参照光L2の光軸ずれを抑制することができる。その結果、受光信号のS/N比の低下を抑制することができる。
【0038】
このような音叉型水晶振動子である振動素子30は、面内屈曲振動モードを有する。面内屈曲振動モードは、
図3に両方向の矢印で示すように、A-B面内において、2本の第1振動腕302および第2振動腕303が互いに接近または離間を繰り返す振動が生じるモードである。つまり、第1振動腕302および第2振動腕303は、前述した振動基板の面内方向に沿って面内屈曲振動する。
図3では、面内屈曲振動モードで振動している第1振動腕302および第2振動腕303が互いに離間するように変位した瞬間の外形が実線で図示され、変形する前の外形が破線で図示されている。このような面内屈曲振動では、各振動腕がB軸方向に十分長いため、先端に近いほど大きく変位する。したがって、第1振動腕302および第2振動腕303がこの面内屈曲振動モードで振動しているとき、A-B面と交差する側面では、他の側面に比べて大きな変位振幅が得られる。よって、A-B面と交差する側面に光反射面306を設定することで、A軸方向(面内方向)に振動する光反射面306は、入射する出射光L1の周波数に対して大きな相互作用を生じさせることができる。
【0039】
なお、光反射面306が設定される側面は、A-B面に交差する面であれば、特に限定されない。つまり、面内屈曲振動がA-B面の面内に沿う振動であるとき、光反射面306は、A-B面と直交している、すなわちA-B面とのなす角度が90°であるのが好ましいが、A-B面とのなす角度が90°未満であってもよく、その場合は、A-B面とのなす角度が45°以上であるのが好ましく、60°以上であるのがより好ましい。
【0040】
面内屈曲振動モードには、共振周波数が異なる複数のモードが含まれていてもよい。例えば、共振周波数が32.768kHzであるモードを主振動モードとするとき、それよりも共振周波数が高い副次振動モードが含まれる場合がある。音叉型水晶振動子の場合、共振周波数が200~300kHz程度であるモード(2次高調波モード)が副次振動モードの例として挙げられる。これらの主振動モードや副次振動モードは、電極304、305に入力される信号を選択することによって、選択的に励振可能である。
【0041】
出射光L1の入射方向と平行な方向に光反射面306を振動させると、光反射面306の振動と出射光L1の周波数との相互作用が大きくなる。その結果、従来の光変調器で必要であった回折格子を用いることなく、出射光L1の周波数シフトが可能な光変調器12を実現することができる。これにより、回折格子が不要な分だけ、光変調器12の製造難易度を下げることができ、レーザー干渉計1の低コスト化を図ることができる。
【0042】
光変調器12による光変調の大きさは、前述したように、光反射面306に入射する出射光L1の入射波数ベクトルと光変調器12から出射する参照光L2の波数ベクトルとの差分と、光反射面306の振動ベクトルと、の内積で与えられる。
【0043】
図3に示すように、光反射面306がA軸に沿って振動している状態で、光反射面306に対し、A軸に沿って出射光L1が入射すると、出射光L1の周波数は、ドップラー効果によりシフトする。そして、変調後の出射光L1は、参照光L2として出射する。このとき、出射光L1の入射波数ベクトルと、参照光L2の出射波数ベクトルと、の差分と、光反射面306の振動ベクトルと、の内積は、ゼロ超となり、かつ、十分に大きくなる。これにより、回折格子を用いることなく、光変調器12による光変調の効率を高めることができる。その結果、光変調器12の製造難易度を下げることができるので、光変調器12およびレーザー干渉計1の低コスト化を容易に図ることができる。
【0044】
振動素子30のB軸方向の長さは、好ましくは0.2mm以上5.0mm以下程度とされる。振動素子30のC軸方向の厚さは、好ましくは0.003mm以上0.5mm以下程度とされ、より好ましくは0.1mm以上0.3mm以下程度とされる。
【0045】
音叉型水晶振動子の形状としては、
図3に示すような、第1振動腕302および第2振動腕303を有する2脚音叉型に限定されず、3脚音叉型、4脚音叉型の片持ち梁形状の他、基部301からB軸プラス側およびB軸マイナス側の双方に延びた振動腕を基部301で支持する形状、基部301からB軸両側およびA軸両側に延びた振動腕を基部301で支持する形状等が挙げられる。
【0046】
なお、
図3に振動素子30では、第1振動腕302の幅および第2振動腕303の幅が、それぞれ、全長にわたって略一定である。幅とは、A軸方向の幅である。これに対し、第1振動腕302の幅および第2振動腕303の幅が、それぞれ部分的に異なっていてもよい。このような形状をなす振動腕を、ハンマーヘッド型の振動腕ともいう。ハンマーヘッド型の振動腕を採用することにより、さらに大きな振動変位を得ることができる。
【0047】
図1および
図2に示す発振回路54から
図3に示す振動素子30に駆動信号Sdを供給する(交流電圧を印加する)と、振動素子30が発振する。振動素子30の発振に必要な電力(励振電力)は、特に限定されないが、0.1μW~100mW程度と小さい。このため、発振回路54から出力した駆動信号Sdを増幅することなく、振動素子30を発振させるために用いることができる。
【0048】
また、従来の光変調器である音響光学変調器(AOM)や電気光学変調器(EOM)に比べて、振動素子30は、その体積が非常に小さく、かつ、動作に要する電力も小さい。このため、振動素子30を用いることで、レーザー干渉計1の小型化および省電力化を容易に図ることができる。
【0049】
また、振動素子30は、水晶振動子に限定されず、面内屈曲振動モードを有する振動子であれば、シリコン振動子であってもよいし、セラミック振動子であってもよい。水晶振動子、シリコン振動子およびセラミック振動子は、その他の振動子、例えばピエゾ素子等とは異なり、共振現象を利用した振動子であるため、Q値が高く、固有振動数の安定化を容易に図ることができる。本明細書では、このように、高いQ値、特に1000≦Qを満たすQ値に基づく共振現象を利用した振動子のことを「自励発振振動子」という。振動素子30として自励発振振動子を用いることにより、変調信号の安定化を図ることができ、かつ、振動素子30を信号源として動作する発振回路54は、より高精度の基準信号Ssを出力することが可能になる。しかも、変調信号および基準信号Ssは、いずれも復調回路52でリアルタイムに処理される。このため、双方の信号が外乱を受けても、互いに相殺または低減され、処理結果に影響を与えにくい。よって、対象物14に由来するサンプル信号を高いS/N比(信号対雑音比)で復調することができ、対象物14の速度や変位をより高精度に計測し得るレーザー干渉計1を実現することができる。
【0050】
シリコン振動子は、単結晶シリコン基板からMEMS技術を用いて製造される単結晶シリコン片と、圧電膜と、を備える振動子である。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、微小電気機械システムのことである。単結晶シリコン片の形状としては、例えば、2脚音叉型、3脚音叉型等の片持ち梁形状が挙げられる。シリコン振動子の発振周波数は、例えば1kHzから数100MHz程度である。
【0051】
セラミック振動子は、圧電セラミックスを焼き固めて製造される圧電セラミック片と、電極と、を備える振動子である。圧電セラミックスとしては、例えば、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BTO)等が挙げられる。セラミック振動子の発振周波数は、例えば数100kHzから数10MHz程度である。
【0052】
また、セラミック振動子では、屈曲振動だけでなく、長さ振動や広がり振動といった面内振動を利用することができる。
【0053】
1.1.6.2.パッケージ構造
光変調器12は、パッケージ構造を有していてもよい。
図5は、パッケージ構造を有する光変調器12を示す斜視図である。
図6は、
図5に示す光変調器12の断面図である。パッケージ構造とは、
図5および
図6に示す容器70(筐体)内に振動素子30を気密封止した構造を指す。
【0054】
図5および
図6に示す光変調器12は、収容部を有する容器70と、容器70に収容されている振動素子30と、を備えている。
【0055】
容器70は、
図5および
図6に示すように、容器本体72と透過窓74とを備える。容器本体72は、例えば、セラミックス材料、ガラス材料等で構成されている。また、図示しないが、容器本体72は、図示しない開口を塞ぐリッド、内面に設けられた内部端子、外面に設けられた外部端子、内部端子と外部端子とを接続する配線等を備えている。
【0056】
容器70の収容部は、前述したように、気密封止されている。これにより、収容部を減圧した状態で維持することができる。収容部を減圧することにより、振動素子30の面内屈曲振動における空気抵抗を低減することができる。このため、収容部に収容された振動素子30の振動効率を高め、振動の安定化を図ることができる。また、光反射面306の経時劣化を抑制し、光反射率を良好に維持することができる。その結果、変調信号のS/N比をより高めることができる。
【0057】
減圧された収容部の圧力は、大気圧未満であれば、特に限定されないが、100Pa以下であるのが好ましい。一方、減圧状態を良好に維持することを考慮すれば、下限値を10Pa程度に設定してもよい。このような圧力下であれば、音叉型水晶振動子のCI値(クリスタルインピーダンス)を下げることができる。例えば、大気圧下でのCI値は、200~400kΩ程度であるが、上記圧力では、20~50kΩ程度まで下げることができる。これにより、変調信号のS/N比を特に高めることができる。
【0058】
なお、容器70を気密封止すること、および、収容部を減圧することは、それぞれ必須ではなく、省略されていてもよい。
【0059】
また、
図5および
図6に示すパッケージ構造は、例えば干渉光学系50全体を気密封止する場合に比べて、真空度を悪化させる原因となる脱ガスを少なく抑えることができる。これにより、パッケージ構造を採用した光変調器12では、長期信頼性を高めやすい。
【0060】
透過窓74は、レーザー光を透過可能な部材であれば、その形状、構成材料、大きさ等は、特に限定されない。透過窓74の構成材料としては、例えば、ガラス材料、結晶材料等が挙げられる。
図6に示す透過窓74は、一例として平板状をなしている。透過窓74を設けることにより、容器本体72の構成材料については、気密性や絶縁性等を重視して自由に選択することが可能になる。このため、より長期信頼性に優れた光変調器12を実現することができる。また、透過窓74の表面には、反射防止膜が設けられていてもよい。これにより、透過する出射光L1や参照光L2が、透過窓74において意図せず反射してしまうのを抑制することができる。
【0061】
図7は、
図6の光変調器12の変形例を示す断面図である。
図7に示す光変調器12は、透過窓74の形状が異なる以外、
図6に示す光変調器12と同様である。
【0062】
図7に示す透過窓74は、その表面が曲面形状をなしている。これにより、透過窓74には、出射光L1および参照光L2が透過する機能だけでなく、これらの光の進行方向を調整する機能を付与することができる。一例として、透過窓74に集光レンズとしての機能を付与することができる。これにより、出射光L1を集束させ、光反射面306に入射する範囲を狭めることができる。その結果、振動素子30が小さくても、光反射面306に出射光L1をより確実に照射することができる。また、参照光L2を平行化し、光分割器4に入射する範囲を狭めることもできる。その結果、干渉光学系50の小型化を図ることができる。
【0063】
曲面形状としては、凸曲面形状が挙げられ、特に、非球面形状が好ましく用いられる。これにより、レンズにおける各種収差を減らすことができる。また、
図7に示す透過窓74の表面にも、反射防止膜が設けられていてもよい。
【0064】
図8は、
図6の光変調器12の変形例を示す断面図である。
図8に示す光変調器12は、透過窓74の姿勢が異なる以外、
図6に示す光変調器12と同様である。
【0065】
図8に示す透過窓74は、
図6に示す透過窓74と同様、レーザー光を透過可能な材料で構成され、平板状をなしている。そして、
図8に示す透過窓74は、出射光L1の入射方向に対して傾斜した姿勢で設けられている。換言すれば、入射面711に対する出射光L1の入射角(入射面711の法線と出射光L1の入射経路とがなす角度)が0°超になるように傾斜した姿勢で設けられている。これにより、入射面711に入射する出射光L1が、入射面711で反射して反射光L4が発生したとしても、その反射光L4が受光素子10やレーザー光源2に入射する確率を下げることができる。反射光L4が受光素子10に入射した場合、受光信号のS/N比が低下するおそれがある。また、反射光L4がレーザー光源2に入射した場合、レーザー光源2におけるレーザー発振が不安定になるおそれがある。このため、傾斜した姿勢で設けられている透過窓74を有する容器70を用いることで、受光信号のS/N比の低下を抑制するとともに、レーザー発振の不安定化を抑制することができる。
【0066】
入射面711の法線と出射光L1の入射経路とがなす角度は、5.0°以下であるのが好ましく、0.05°以上3.0°以下であるのがより好ましく、0.10°以上2.0°以下であるのがさらに好ましい。これにより、反射光L4が受光素子10やレーザー光源2に入射する確率を下げながら、透過窓74における出射光L1の透過効率の低下を抑制することができる。
【0067】
1.2.気密封止構造
図6ないし
図8では、振動素子30を気密封止するパッケージ構造を図示しているが、センサーヘッド部51の一部または全部が気密封止構造を有していてもよい。
【0068】
図9ないし
図11は、それぞれ
図1のセンサーヘッド部51の変形例を示す断面図である。気密封止構造とは、
図9ないし
図11に示すケース502A、502B、502C(筐体)内に少なくとも振動素子30を気密封止した構造を指す。
【0069】
図9に示すセンサーヘッド部51Aは、収容部を有するケース502Aと、ケース502Aに収容されている干渉光学系50と、配線基板507、508、509と、を備える。なお、
図9では、
図2の干渉光学系50が備える光学要素の一部について図示を省略している。
【0070】
ケース502Aは、
図9に示すように、ケース本体503と、透過窓504Aと、を備える。ケース本体503は、例えば、金属材料、セラミック材料等で構成されている。
【0071】
透過窓504Aは、ケース本体503に設けられた孔に嵌められている。透過窓504Aの構成材料には、レーザー光を透過可能な材料、例えばガラス材料、結晶材料等が用いられる。なお、透過窓504Aは、
図6に示す透過窓74と同様の構成および機能を有していてもよい。すなわち、透過窓504Aは、基準面に対して傾斜した姿勢で設けられていてもよいし、表面に反射防止膜が設けられていてもよい。
【0072】
配線基板507は、光変調器12を支持するとともに、光変調器12と電気的に接続されている。配線基板508は、受光素子10およびレーザー光源2を支持するとともに、これらと電気的に接続されている。配線基板509は、配線基板507、508と電気的に接続され、かつ、外部と電気的に接続されている。なお、電気的に接続とは、電力線および通信線で接続されていることをいう。
【0073】
また、
図9に示す干渉光学系50には、反射素子5が追加されている。反射素子5は、光路24上に配置され、参照光L2および物体光L3の進行方向を変更する。
【0074】
図10に示すセンサーヘッド部51Bは、収容部を有するケース502Bと、ケース502Bに収容されている干渉光学系50と、配線基板507、508、509と、を備える。なお、
図10では、
図2の干渉光学系50が備える光学要素の一部について図示を省略している。
【0075】
ケース502Bは、
図10に示すように、ケース本体503と、透過窓504Bと、を備える。透過窓504Bは、ケース本体503に設けられた孔に嵌められている。透過窓504Bは、
図7に示す透過窓74と同様の構成および機能を有する。すなわち、透過窓504Bには、集光レンズとしての機能が付与されている。なお、透過窓504Bの表面にも、反射防止膜が設けられていてもよい。
【0076】
図11に示すセンサーヘッド部51Cは、収容部を有するケース502Cと、ケース502Cに収容されている干渉光学系50と、配線基板507、508、509と、を備える。なお、
図11では、
図2の干渉光学系50が備える光学要素の一部について図示を省略している。
【0077】
ケース502Cは、
図11に示すように、第1ケース505と、第2ケース506と、を備える。また、
図11に示す干渉光学系50には、集光レンズ3a、3b、3cおよび光ファイバー26、27が追加されている。
【0078】
第1ケース505は、ケース本体503と、透過窓504Bと、を備える。第1ケース505には、干渉光学系50のうち、コリメートレンズ3、集光レンズ3a、光分割器4、反射素子5および光変調器12と、配線基板507と、が収容されている。一方、第2ケース506には、干渉光学系50のうち、レーザー光源2、受光素子10、集光レンズ3bおよび集光レンズ3cと、配線基板508、509と、が収容されている。
【0079】
また、光ファイバー26、27は、その大部分が外部に配置され、第1ケース505の収容部と、第2ケース506の収容部と、を光学的に接続している。
【0080】
光分割器4とレーザー光源2とを結ぶ光路18上には、光分割器4側から、コリメートレンズ3、光ファイバー26および集光レンズ3bがこの順で配置されている。光分割器4と受光素子10とを結ぶ光路24上には、光分割器4側から、反射素子5、集光レンズ3a、光ファイバー27および集光レンズ3cがこの順で配置されている。
【0081】
ケース502A、502B、502Cの各収容部は、気密封止されているのが好ましい。これにより、収容部を減圧した状態で維持することができる。収容部を減圧することにより、光変調器12がパッケージ構造を有していなくても、収容部に収容された振動素子30の面内振動における空気抵抗を低減することができる。このため、振動素子30の振動効率を高めることができる。
【0082】
また、このようなケース502A、502B、502Cによれば、レーザー光源2も減圧下に保持することができる。これにより、湿度や気圧変化によるレーザー光源2の劣化、具体的には、発振波長の変動等を抑制することができる。
【0083】
なお、干渉光学系50を構成する光学要素の一部は、ケース502A、502B、502Cの外部に配置されていてもよい。
【0084】
1.3.電流電圧変換器
電流電圧変換器531は、トランスインピーダンスアンプ(TIA)とも呼ばれ、受光素子10から出力された光電流(受光信号)を、電圧信号に変換し、光検出信号として出力する。
【0085】
電流電圧変換器531と復調回路52との間には、
図1に示すADC532が配置されている。また、後述する発振回路54と復調回路52との間には、
図1に示すADC533が配置されている。ADC532、533は、アナログ-デジタル変換器であり、所定のサンプリングビット数でアナログ信号をデジタル信号に変換する。ADC532、533は、センサーヘッド部51に設けられている。
【0086】
なお、干渉光学系50は、受光素子10を複数備えていてもよい。この場合、複数の受光素子10と電流電圧変換器531との間に、差動増幅回路を設けることにより、光電流に対して差動増幅処理を施し、光検出信号のS/N比を高めることができる。なお、差動増幅処理は、電圧信号に対して行うようにしてもよい。
【0087】
1.4.発振回路
発振回路54は、振動素子30に向けて駆動信号Sdを出力する。また、発振回路54は、復調回路52に向けて基準信号Ssを出力する。
【0088】
発振回路54は、振動素子30を信号源として動作し、精度の高い周期信号を生成する。これにより、発振回路54は、精度の高い駆動信号Sdを出力するとともに、基準信号Ssを出力する。そうすると、駆動信号Sdおよび基準信号Ssは、外乱を受けた場合、互いに同じ影響を受けることになる。その結果、駆動信号Sdにより駆動された振動素子30を介して付加される変調信号、および、基準信号Ssも、互いに同じ影響を受ける。このため、変調信号および基準信号Ssが、復調回路52における演算に供されたとき、演算の過程で、双方が含む外乱の影響を互いに相殺または低減させることができる。その結果、復調回路52では、外乱を受けても、対象物14の位置や速度を精度よく求めることができる。
【0089】
発振回路54としては、例えば、特開2022-38156号公報に開示されている発振回路が挙げられる。
【0090】
2.復調回路
復調回路52は、電流電圧変換器531から出力された光検出信号から、対象物14に由来するサンプル信号を復調する復調処理を行う。サンプル信号には、例えば位相情報および周波数情報が含まれている。そして、位相情報からは、対象物14の変位を取得することができ、周波数情報からは、対象物14の速度を取得することができる。このように異なる物理量を取得することができれば、変位計や速度計としての機能を持たせられるため、レーザー干渉計1の高機能化を図ることができる。
【0091】
復調回路52は、前処理部53および復調処理部55を有する。これらの機能部が発揮する機能は、例えば、プロセッサー、メモリー、外部インターフェース、入力部、表示部等を備えるハードウェアによって実現される。具体的には、メモリーに格納されているプログラムをプロセッサーが読み出し、実行することによって実現される。なお、これらの構成要素は、内部バスによって互いに通信可能になっている。
【0092】
プロセッサーとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等が挙げられる。なお、これらのプロセッサーがソフトウェアを実行する方式に代えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が上述した機能を実現する方式を採用するようにしてもよい。
【0093】
メモリーとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等が挙げられる。
【0094】
外部インターフェースとしては、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート、イーサネット(登録商標)ポート等が挙げられる。
【0095】
入力部としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、タッチパッド等の各種入力装置が挙げられる。表示部としては、例えば、液晶ディスプレイパネル、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネル等が挙げられる。
【0096】
なお、外部インターフェース、入力部および表示部は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0097】
前処理部53および復調処理部55には、例えば、特開2022-38156号公報に開示されている前処理部および復調部が適用できる。
【0098】
前処理部53は、基準信号Ssに基づいて光検出信号に前処理を行う。前処理は、光検出信号を2つの信号PASS1、PASS2に分けた後、一方に基準信号Ssを乗算し、その後、2つの信号PASS1、PASS2を合算して前処理済み信号を出力する。
【0099】
復調処理部55は、前処理部53から出力された前処理済み信号から、基準信号Ssに基づいて対象物14の速度や位置に応じたサンプル信号を復調する。
【0100】
ここで、前処理部53における2つの信号PASS1、PASS2の各振幅値をJ1(B)、J2(B)とした場合、これらが等しくなるとき、前処理済み信号のS/N比が特に高くなる。各振幅値J1(B)、J2(B)は、それぞれベッセル係数であり、J1(B)は、1次のベッセル係数、J2(B)は、2次のベッセル係数である。Bは、変調信号の位相偏移である。J1(B)、J2(B)は、それぞれB値に応じて独立に変化するが、J1(B)=J2(B)となるときのB値は、約2.6である。そこで、B=2.6となるように干渉光学系50を構成できれば、前処理済み信号のS/N比を特に高めることができる。
【0101】
例えば、共振周波数が32kHzの音叉型水晶振動子を駆動電圧3Vで発振させたとき、大気圧下であっても、振動腕先端のA軸方向(水晶のX軸方向)における振動変位Lqが1200nm程度になるという実測データがある。この振動変位Lqに基づいて波長λ=850nmのレーザー光を用いた場合の変調信号の位相偏移Bを、B=4πLq/λにより計算すると、B=17.7程度となる。したがって、面内屈曲振動が励振される振動素子30によれば、十分に大きいB値を得ることができる。
【0102】
面内屈曲振動する振動腕では、光反射面306の位置を適宜選択することによって、具体的には、振動腕の先端ではなく、より基端側に光反射面306を配置することにより、振動変位Lqを小さくすることができ、B値を17.7よりも小さくすることができる。このようにして、適切なB値が得られるように、光反射面306の位置を選択すればよい。
【0103】
一方、振動素子30の振動変位Lqは、駆動電圧(励振電力)に基づいて調整することも可能である。一般的には、駆動電圧が高いほど、振動変位Lqを大きくすることができる。このため、例えば、駆動電圧を3Vから下げることにより、振動変位Lqを小さくすることができる。例えば、振動腕の先端に光反射面306を設定する場合、駆動電圧を0.3~1V程度まで下げると、B=2.6程度を実現できる。これにより、B値を最適化することができ、かつ、光変調器12の省電力化を図ることができる。
【0104】
なお、復調回路52の構成によっては、B値をできるだけ大きくすることが望まれる場合もある。B値を大きくすることにより、例えば対象物14の変位計測を行う場合、計測結果が外乱の影響をより受けにくくなる。つまり、計測のロバスト性を高めることができる。また、B値を大きくすることにより、計測精度を高めることもできる。B値は、好ましくは0.5以上とされ、より好ましくは1.0以上とされる。
【0105】
また、面内屈曲振動は、厚みすべり振動に比べて、共振周波数(固有振動数)が低い。このため、面内屈曲振動を利用する本実施形態によれば、厚みすべり振動を利用する従来の光変調器を用いるレーザー干渉計に比べて、変調信号や基準信号Ssの周波数を下げることができる。
【0106】
例えば、厚みすべり振動の共振周波数は、MHz帯である場合が多いのに対し、面内屈曲振動の共振周波数は、kHz帯である場合が多い。したがって、振動素子30の共振周波数は、10kHz以上1MHz未満であるのが好ましく、20kHz以上100kHz以下であるのがより好ましい。これにより、変調信号や基準信号Ssを処理するアナログ-デジタル変換器(ADC)のサンプリングビット数や、CPU、FPGAのようなプロセッサーの処理性能を下げることができる。その結果、レーザー干渉計1の低コスト化を図りやすくなる。
【0107】
3.光学系の変形例
次に、干渉光学系50の第1~第4変形例について説明する。
【0108】
図12は、第1変形例に係る干渉光学系50Aを示す概略構成図である。
図13は、第2変形例に係る干渉光学系50Bを示す概略構成図である。
図14は、第3変形例に係る干渉光学系50Cを示す概略構成図である。
図15は、第4変形例に係る干渉光学系50Dを示す概略構成図である。
【0109】
以下、干渉光学系50の第1~第4変形例について説明するが、以下の説明では、前述した干渉光学系50との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図12ないし
図15において、
図2と同様の事項については、同一の符号を付している。また、
図12ないし
図15では、一部の光学要素の図示を省略している。
【0110】
図12に示す第1変形例に係る干渉光学系50Aは、受光素子10、光変調器12および対象物14に入射する光が異なる以外、
図2に示す干渉光学系50と同様である。具体的には、
図12に示す干渉光学系50Aでは、出射光L1(レーザー光)が受光素子10および光変調器12に入射する。
図12に示す光変調器12では、出射光L1を変調し、変調信号を含む参照光L2を生成する。この参照光L2は、続いて、対象物14に入射する。そして、参照光L2が対象物14で反射されることにより、変調信号およびサンプル信号を含む物体光L3が生成され、この物体光L3が受光素子10に入射する。
【0111】
図13に示す第2変形例に係る干渉光学系50Bは、受光素子10、光変調器12および対象物14の配置が異なる以外、
図12に示す干渉光学系50Aと同様である。
【0112】
以上のような、第1、第2変形例に係る干渉光学系50A、50Bを備えるレーザー干渉計は、レーザー光源2と、光変調器12と、受光素子10と、
図12および
図13には図示しない復調回路および発振回路と、を備える。レーザー光源2は、出射光L1を射出する。光変調器12は、振動素子を用いて出射光L1を変調し、変調信号を含む参照光L2を生成する。この参照光L2は、続いて、対象物14に入射する。そして、変調信号および対象物14に由来するサンプル信号を含む物体光L3、ならびに、出射光L1、が受光素子10に入射する。したがって、
図12および
図13に示す受光素子10は、対象物14に由来するサンプル信号、および、変調信号を含むレーザー光を受光する。復調回路は、基準信号に基づいて、受光信号からサンプル信号を復調する。発振回路は、振動素子を信号源として動作し、復調回路に基準信号を出力する。
【0113】
このような構成によれば、前記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、回折格子を用いることなく、周波数シフトが可能な光変調器12を実現することができる。その結果、光変調器12の製造難易度を下げることができ、レーザー干渉計の低コスト化を図ることができる。また、計測精度が高く、かつ、外乱への耐性に優れるレーザー干渉計が得られる。
【0114】
図14に示す第3変形例に係る干渉光学系50Cは、光変調器12および対象物14の配置が異なるとともに、受光素子10、光変調器12および対象物14に入射する光が異なる以外、
図12に示す干渉光学系50Aと同様である。具体的には、
図14に示す干渉光学系50Cでは、出射光L1(レーザー光)が受光素子10および対象物14に入射する。出射光L1が対象物14で反射することにより物体光L3を生成する。この物体光L3は、続いて、光変調器12に入射する。そして、物体光L3が光変調器12で反射されることにより、変調信号およびサンプル信号を含む参照光L2を生成され、この参照光L2が受光素子10に入射する。
【0115】
図15に示す第4変形例に係る干渉光学系50Dは、受光素子10、光変調器12および対象物14の配置が異なる以外、
図14に示す干渉光学系50Cと同様である。
【0116】
以上のような、第3、第4変形例に係る干渉光学系50C、50Dを備えるレーザー干渉計は、レーザー光源2と、光変調器12と、受光素子10と、
図14および
図15には図示しない復調回路および発振回路と、を備える。レーザー光源2は、出射光L1を射出する。出射光L1は、対象物14に入射し、サンプル信号を含む物体光L3が生成される。光変調器12は、振動素子を用いて物体光L3を変調し、変調信号を含む参照光L2を生成する。そして、対象物14に由来するサンプル信号および変調信号を含む参照光L2、ならびに、出射光L1が受光素子10に入射する。したがって、
図14および
図15に示す受光素子10は、対象物14に由来するサンプル信号、および、変調信号を含むレーザー光を受光する。復調回路は、基準信号に基づいて、受光信号からサンプル信号を復調する。発振回路は、振動素子を信号源として動作し、復調回路に基準信号を出力する。
【0117】
このような構成によれば、前記実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、回折格子を用いることなく、周波数シフトが可能な光変調器12を実現することができる。その結果、光変調器12の製造難易度を下げることができ、レーザー干渉計の低コスト化を図ることができる。また、計測精度が高く、かつ、外乱への耐性に優れるレーザー干渉計が得られる。
【0118】
4.前記実施形態が奏する効果
以上のように、前記実施形態に係るレーザー干渉計1は、レーザー光源2と、光変調器12と、受光素子10と、復調回路52と、発振回路54と、を備える。レーザー光源2は、対象物14に向けてレーザー光を射出する。光変調器12は、レーザー光が照射される振動素子30を備え、振動素子30を用いてレーザー光を変調し、レーザー光に変調信号を重畳させる。受光素子10は、対象物14に由来するサンプル信号および変調信号を含むレーザー光を受光し、受光信号を出力する。復調回路52は、基準信号Ssに基づいて、受光信号からサンプル信号を復調する。発振回路54は、振動素子30を信号源として動作し、復調回路52に基準信号Ssを出力する。
【0119】
そして、振動素子30は、基部301、ならびに、基部301に接続された振動部である第1振動腕302および第2振動腕303を有する振動基板を含む。第1振動腕302および第2振動腕303は、振動基板の面内方向に沿って振動する。また、第1振動腕302および第2振動腕303は、前述した面内方向に交差する側面を含み、この側面にレーザー光が照射される。
【0120】
このような構成によれば、振動素子30の面内振動を出射光L1の周波数シフトに利用することができ、振動素子30の振動と出射光L1の周波数との相互作用を大きくすることができる。これにより、従来の光変調器で必要であった回折格子を用いることなく、出射光L1の周波数シフトが可能な光変調器12を実現することができる。その結果、光変調器12の製造難易度を下げることができ、レーザー干渉計1の低コスト化を図ることができる。
【0121】
また、振動素子30の面内屈曲振動は、厚みすべり振動に比べて振動変位が大きい。このため、面内屈曲振動を利用することにより、変調信号の位相偏移Bを容易に高めることができる。これにより、受光信号のS/N比を高めることができ、最終的に、変位や速度等の計測精度が高く、かつ、外乱への耐性に優れるレーザー干渉計1を実現することができる。
【0122】
さらに、面内屈曲振動は、厚みすべり振動に比べて、共振周波数(固有振動数)が低い。このため、変調信号や基準信号Ssの周波数を下げることができる。その結果、変調信号や基準信号Ssを処理するアナログ-デジタル変換器(ADC)のサンプリングビット数や、CPU、FPGAのようなプロセッサーの処理性能を下げることができる。その結果、レーザー干渉計1の低コスト化を図りやすくなる。
【0123】
また、振動素子30が発振回路54の信号源になっているため、変調信号の温度特性および基準信号Ssの温度特性を、それぞれ振動素子30の温度特性に対応させることができる。変調信号および基準信号Ssは、いずれも復調回路52でリアルタイムに処理されることから、温度変化に伴う変調信号の変動の挙動と基準信号Ssの変動の挙動とが一致または近似する。このため、振動素子30の温度が変化したとしても、復調精度への影響を抑えることができ、対象物14に由来するサンプル信号の復調精度を高めることができる。これにより、外乱への耐性に優れるレーザー干渉計1を実現することができる。
【0124】
また、振動部である第1振動腕302および第2振動腕303は、レーザー光が照射される側面に設けられている金属膜を有していてもよい。
【0125】
金属膜は、出射光L1の反射率が高い。このため、出射光L1の反射に伴う損失を抑制することができ、受光信号のS/N比を高めることができる。
【0126】
また、前記実施形態において、振動部は、振動素子30が含む振動基板の面内方向に並んでいる第1振動腕302および第2振動腕303を含んでいる。第1振動腕302および第2振動腕303は、面内方向に沿って屈曲振動する。
【0127】
このような音叉型水晶振動子は、製造技術が確立されているため、容易に入手可能であり、かつ、発振も安定している。このため、振動素子30として好適である。
【0128】
また、振動基板は、水晶基板であるとき、レーザー光を照射する側面である光反射面306は、水晶のX軸のマイナス側の面であって、ウェットエッチング面であってもよい。
【0129】
このような光反射面306は、水晶の結晶方位によるエッチングレートの異方性により、平坦度および角度精度に優れた面となる。このため、光反射面306に入射する出射光L1の反射損失を抑制するとともに、出射光L1および参照光L2の光軸ずれを抑制することができる。その結果、受光信号のS/N比をより高めることができる。
【0130】
また、振動基板は、水晶基板であるとき、レーザー光を照射する側面である光反射面306は、ドライエッチング面であってもよい。
【0131】
ドライエッチングでは、水晶の結晶方位によるエッチングレートの異方性が少ないため、目的とする角度や精度で側面が切り出される。このため、光反射面306がドライエッチング面であれば、入射する出射光L1の反射損失を抑制するとともに、出射光L1および参照光L2の光軸ずれを抑制することができる。
【0132】
また、光変調器12は、振動素子30を収容する収容部を有する容器70(筐体)を備えることが好ましい。また、この収容部は、減圧されていることが好ましい。
【0133】
これにより、振動素子30の面内屈曲振動における空気抵抗を低減することができる。このため、収容部に収容された振動素子30の振動効率を高め、振動の安定化を図ることができる。その結果、変調信号のS/N比をより高めることができる。
【0134】
また、容器70(筐体)は、レーザー光が照射される側面である光反射面306と、レーザー光源2と、の間に設けられ、レーザー光が透過する透過窓74を有することが好ましい。
【0135】
これにより、容器70のうち、透過窓74以外の容器本体72の構成材料については、気密性や絶縁性等を重視して自由に選択することが可能になる。このため、より長期信頼性に優れた光変調器12を実現することができる。
【0136】
また、透過窓74の表面は、曲面形状をなしているのが好ましい。これにより、透過窓74には、出射光L1および参照光L2が透過する機能だけでなく、これらの光の進行方向を調整する機能を付与することができる。これにより、光反射面306に対してレーザー光が入射する範囲を狭めることができ、干渉光学系50の小型化を図るとともに、コリメートレンズ3の機能を透過窓74に代替させ、干渉光学系50の部品点数を削減することができる。
【0137】
また、透過窓74は、出射光L1(入射するレーザー光)の入射方向に対して傾斜した入射面711を有することが好ましい。
【0138】
このような構成によれば、透過窓74の入射面711で出射光L1が反射して反射光L4が発生したとしても、受光素子10やレーザー光源2に入射する確率を下げることができる。反射光L4は、受光素子10に入射した場合、受光信号のS/N比を低下させる原因となる。また、反射光L4がレーザー光源2に入射した場合、レーザー光源2におけるレーザー発振が不安定になるおそれがある。このため、傾斜した姿勢で設けられている透過窓74を用いることで、受光信号のS/N比の低下を抑制するとともに、レーザー発振の不安定化を抑制することができる。
【0139】
また、振動素子30は、シリコン振動子またはセラミック振動子であることが好ましい。
【0140】
これらの振動子は、共振現象を利用した振動子であるため、Q値が高く、固有振動数の安定化を容易に図ることができる。これにより、変調信号のS/N比を高めることができ、かつ、基準信号Ssの精度を高めることができる。これにより、対象物14に由来するサンプル信号を高いS/N比で復調することができ、対象物14の速度や変位をより高精度に計測し得るレーザー干渉計1を実現することができる。
【0141】
以上、本発明に係るレーザー干渉計を図示の実施形態およびその変形例に基づいて説明したが、本発明に係るレーザー干渉計は、前記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態およびその変形例に係るレーザー干渉計には、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0142】
本発明に係るレーザー干渉計は、前述した変位計や速度計の他、例えば、振動計、傾斜計、距離計(測長器)等にも適用可能である。また、本発明に係るレーザー干渉計の用途としては、距離計測、3Dイメージング、分光等を可能にする光コム干渉計測技術、角速度センサー、角加速度センサー等を実現する光ファイバージャイロが挙げられる。
【0143】
また、レーザー光源、光変調器および受光素子のうちの2つ以上は、同一の基板上に載置されていてもよい。これにより、光学系の小型化および軽量化を容易に図るとともに、組立容易性を高めることができる。
【0144】
さらに、前記実施形態およびその変形例は、いわゆるマイケルソン型干渉光学系を有するが、本発明に係るレーザー干渉計は、その他の方式の干渉光学系、例えばマッハツェンダー型干渉光学系を有するものにも適用可能である。
【符号の説明】
【0145】
1…レーザー干渉計、2…レーザー光源、3…コリメートレンズ、3a…集光レンズ、3b…集光レンズ、3c…集光レンズ、4…光分割器、5…反射素子、6…1/2波長板、7…1/4波長板、8…1/4波長板、9…検光子、10…受光素子、12…光変調器、14…対象物、18…光路、20…光路、22…光路、24…光路、26…光ファイバー、27…光ファイバー、30…振動素子、50…干渉光学系、50A…干渉光学系、50B…干渉光学系、50C…干渉光学系、50D…干渉光学系、51…センサーヘッド部、51A…センサーヘッド部、51B…センサーヘッド部、51C…センサーヘッド部、52…復調回路、53…前処理部、54…発振回路、55…復調処理部、59…本体部、70…容器、72…容器本体、74…透過窓、301…基部、302…第1振動腕、303…第2振動腕、304…電極、305…電極、306…光反射面、502A…ケース、502B…ケース、502C…ケース、503…ケース本体、504A…透過窓、504B…透過窓、505…第1ケース、506…第2ケース、507…配線基板、508…配線基板、509…配線基板、531…電流電圧変換器、532…ADC、533…ADC、711…入射面、L1…出射光、L1a…第1分割光、L1b…第2分割光、L2…参照光、L3…物体光、L4…反射光、Sd…駆動信号、Ss…基準信号