(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078696
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1333 20060101AFI20240604BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240604BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240604BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240604BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20240604BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/1335
G09F9/00 304C
G09F9/30 349C
G03B21/14 Z
G09F9/30 349Z
G09F9/00 348Z
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191191
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】田中 信宇
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H291
2K203
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H088EA14
2H088EA15
2H088HA13
2H088HA14
2H088HA21
2H088HA24
2H088HA28
2H088MA01
2H088MA20
2H189AA14
2H189AA18
2H189DA72
2H189FA52
2H189HA06
2H189HA16
2H189LA15
2H189LA18
2H189LA19
2H189LA20
2H189LA24
2H189MA07
2H291FA13Y
2H291FA51Y
2H291FA56Y
2H291GA04
2H291GA19
2H291LA21
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA42
2K203FA62
2K203GB02
2K203LA03
2K203LA18
2K203LA46
2K203LA56
2K203MA05
5C094AA03
5C094AA13
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094EA05
5C094ED01
5C094ED15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB12
5C094FB15
5C094JA13
5G435AA01
5G435AA12
5G435BB12
5G435CC09
5G435DD04
5G435EE47
5G435EE49
5G435FF13
5G435HH02
5G435HH12
5G435HH14
5G435LL15
(57)【要約】
【課題】液晶層等の電気光学層の温度を上昇させる際に発熱ムラが生じにくいようにする。
【解決手段】電気光学装置10は、素子基板30と、液晶50と、液晶50を介して素子基板30と対向して設けられる対向基板20と、を有し、対向基板20は、平面視で表示領域5の外側に配置される遮光膜241と、平面視で遮光膜241と重なり、当該表示領域5に沿って設けられるヒーター230と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
電気光学層と、
前記電気光学層を介して前記第1基板と対向して配置される第2基板と、
を有し、
前記第2基板は、
平面視で表示領域の外側に配置される遮光部材と、
平面視で前記遮光部材と重なり、少なくとも前記第2基板の一辺に沿って配置される第1加熱部と、前記第2基板の一辺に対向する他の辺に沿って配置される第2加熱部と、を有する加熱部材と、
を含む
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記加熱部材は、平面視で前記遮光部材と重なる部分において、前記遮光部材よりも狭い幅を有する
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記加熱部材は、
前記表示領域と平面視で重なる透明電極と、
前記第2基板の厚さ方向と交差する前記透明電極の第1面と第2面との少なくとも一方に配置される屈折膜と、
を含む請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記屈折膜は、前記透明電極と絶縁層との間に配置され、
前記絶縁層の屈折率は、1.45以上1.70未満であり、
前記屈折膜の屈折率は、1.50以上1.80未満であり、
前記透明電極の屈折率は、1.80以上2.00未満である
請求項3記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1基板に配置される第1接続部と電気的に接続される第1フレキシブル基板と、
前記第2基板に配置される第2接続部を介して加熱部材と電気的に接続される第2フレキシブル基板と、
を含む請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第1接続部は、平面視で前記第1基板と前記第2基板とが重なる矩形よりも外側の一辺にに配置さ、
前記第2接続部は、平面視で前記矩形よりも外側であって、前記一辺以外の他辺にに配置される
請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第2フレキシブル基板には、前記加熱部材に一定の電圧を印加する配線が配置される
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
温度センサーを有し、
前記第2フレキシブル基板の配線には、前記温度センサーの検出値に応じた一定の電圧が印加される
請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記他辺は、
平面視で前記矩形よりも外側で対向する二辺のうち、一辺に対向する辺である
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記他辺は、
平面視で前記一辺と交差する辺である
請求項5に記載の電気光学装置。
【請求項11】
第1基板と、
第2基板と、
平面視で表示領域の外側に配置され、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、
を備え、
前記第2基板は、
平面視で、表示領域の外側であって、かつ、前記シール材の内側に配置される遮光部材と、
平面視で前記遮光部材と重なり、少なくとも前記第2基板の一辺に沿って配置される第1加熱部と、前記第2基板の一辺に対向する他の辺に沿って配置される第2加熱部と、を有する加熱部材と、
を含む
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気光学層として液晶を用いた液晶パネルでは、液晶の温度が低いと光学応答性が低下する。このため、ヒーターを内蔵し、当該ヒーターの発熱によって液晶の温度を上昇させて、光学応答性を改善する液晶パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には特許文献1に記載された液晶パネルでは、第1基板と第2基板との間に挟持された液晶と、平面視したときに表示領域と、当該表示領域より外側に区画される遮光領域(額縁領域)と、を有し、上記第2基板に、ヒーターが表示領域および額縁領域に配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、発熱ムラが生じやすい、という課題がある。発熱ムラが生じると、表示領域において光学応答性に差が生じることから、特に動画の表示品位の低下につながりやすい。
このような事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、温度を上昇させる際に発熱ムラが生じにくい技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電気光学装置は、第1基板と、電気光学層と、前記電気光学層を介して前記第1基板と対向して配置される第2基板と、を有し、前記第2基板は、平面視で表示領域の外側に配置される遮光部材と、平面視で前記遮光部材と重なり、少なくとも前記第2基板の一辺に沿って配置される第1加熱部と、前記第2基板の一辺に対向する他の辺に沿って配置される第2加熱部と、を有する加熱部材と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る電気光学装置を適用した投射型表示装置の光学的な構成を示す図である。
【
図2】投射型表示装置における駆動系の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】投射型表示装置におけるヒーターを制御する構成を示す図である。
【
図6】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図7】電気光学装置における画素回路の構成を示す図である。
【
図8】電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【
図9】第1実施形態の第1変形例に係る電気光学装置の構造を示す断面図である。
【
図10】第1実施形態の第2変形例に係る電気光学装置の構造を示す断面図である。
【
図11】第1実施形態の第3変形例に係る電気光学装置の構造を示す断面図である。
【
図12】第3変形例に係る電気光学装置を示す斜視図である。
【
図13】第1実施形態の第4変形例に係る電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【
図14】第4変形例に係る電気光学装置の交差部を示す平面図である。
【
図15】第2実施形態に係る電気光学装置を示す斜視図である。
【
図16】電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【
図18】第3実施形態に係る電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【
図19】第3実施形態の電気光学装置の構造を示す断面図である。
【
図20】第4実施形態の電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電気光学装置を適用した投射型表示装置100の光学的な構成を示す図である。図に示されるように、投射型表示装置100は、電気光学装置10R、10Gおよび10Bを含む。また、投射型表示装置100には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は電気光学装置10Rに、Gの光は電気光学装置10Gに、Bの光は電気光学装置10Bに、それぞれ入射する。
なお、Bの光路は、Rの光路およびGの光路と比較して長いので、Bの光路での損失を防ぐ必要がある。このため、Bの光路には、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121が設けられる。
【0009】
電気光学装置10Rは、実施形態では、複数の画素回路を有する液晶パネルである。複数の画素回路の各々は、それぞれ液晶素子を含む。電気光学装置10Rの液晶素子は、後述するようにRに対応するデータ信号に基づいて駆動され、当該データ信号の電圧の実効値に応じた透過率になる。したがって、電気光学装置10Rでは、液晶素子の透過率が個別に制御されることで、Rの透過像が生成される。同様に、電気光学装置10Gでは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像が生成され、電気光学装置10Bでは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像が生成される。
【0010】
電気光学装置10R、10Gおよび10Bによってそれぞれ生成された各色の透過像が、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。ダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、ダイクロイックプリズム2112が各色の画像を合成する。ダイクロイックプリズム2112による合成像は投射レンズ2114に入射する。
投射レンズ2114は、ダイクロイックプリズム2112による合成像を、スクリーンScrに拡大して投射する。
【0011】
なお、電気光学装置10R、10Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に出射されるのに対し、電気光学装置10Gによる透過像は直進して出射される。したがって、電気光学装置10R、10Bによる各透過像は、電気光学装置10Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
【0012】
図2は、投射型表示装置100の電気的な構成のうち、表示を制御するための構成を示すブロック図である。図に示されるように、投射型表示装置100は、上述した電気光学装置10R、10G、10Bと、表示制御回路15と、を含む。
【0013】
表示制御回路15には、図示省略されたホスト装置等の上位装置から、映像データVid-inが同期信号Syncに同期して供給される。映像データVid-inは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、RGB毎に例えば8ビットで指定する。
【0014】
投射型表示装置100では、スクリーンScrに投射されるカラー画像が、上述したように電気光学装置10R、10Gおよび10Bの各透過像を合成することで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、電気光学装置10Rによる赤の副画素、電気光学装置10Gによる緑の副画素、および、電気光学装置10Bによる青の副画素に分けることができる。ただし、電気光学装置10R、10Gおよび10Bにおける副画素について、色について特定する必要がない場合や、単に明暗のみを問題とする場合等では、副画素と敢えて表記する必要がない。そこで本説明では、電気光学装置10R、10Gおよび10Bにおける表示単位について、単に画素と表記する。
【0015】
同期信号Syncには、映像データVid-inの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データVid-inにおける映像画素の1つ分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0016】
表示制御回路15は、上位装置からの映像データVid-inをRGB成分毎に分けるとともに、アナログ電圧のデータ信号に変換して電気光学装置10R、10Gおよび10Bに供給する。具体的には、表示制御回路15は、映像データVid-inのうち、R成分をアナログに変換し、データ信号Vid-RとしてFPC(Flexible Printed Circuits)基板61を介して電気光学装置10Rに供給する。同様に、表示制御回路15は、映像データVid-inのうち、G成分をアナログに変換し、データ信号Vid-GとしてFPC基板61を介して電気光学装置10Gに供給し、B成分をアナログに変換し、データ信号Vid-BとしてFPC基板61を介して電気光学装置10Bに供給する。
なお、表示制御回路15は、データ信号Vid_R、Vid_GおよびVid_Bを、順に電気光学装置10R、10Gおよび10Bの駆動を制御するための制御信号Ctrに同期して、FPC基板61を介して供給する。
【0017】
次に、電気光学装置10R、10Gおよび10Bについて説明する。電気光学装置10R、10Gおよび10Bについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、その構造は共通である。そこで、電気光学装置10R、10Gおよび10Bについては、符号を10として、色を特定しないで一般的に説明する。
【0018】
図3は、電気光学装置10の加熱を制御するための構成を示すブロック図である。電気光学装置10には、ヒーター230と温度センサー17とが設けられる。ヒーター230は加熱部材の一例である。また、温度制御回路16は、ヒーター230にFPC基板62、63を介して、電圧を印加する。
温度センサー17は、電気光学装置10の温度を検出して、当該温度を示す情報Tempを検出値として出力する。なお、情報Tempは、FPC基板62、63とは別のFPC基板、例えばFPC基板61を介して温度制御回路16に供給される。
【0019】
温度制御回路16は、情報Tempで示される温度が目的温度になるように、ヒーター230に印加する電圧を制御する。具体的には、温度制御回路16は、情報Tempで示される温度が目的温度よりも低ければ、ヒーター230に印加する電圧を高くする。
なお、目的温度とは、電気光学装置10の使用に適した温度であり、温度制御回路16において予め設定される。また、ヒーター230への印加電圧の変動はノイズ源になる。このため、温度制御回路16は、ヒーター230への印加電圧を定電圧で制御するとともに、情報Tempで示される温度に応じて、当該印加電圧を例えば1分毎に段階的に切り替える。
【0020】
図4は、電気光学装置10の外観を示す斜視図であり、
図5は、
図4におけるH-h線で切断した断面図である。なお、H-h線は、電気光学装置10のうち、対向基板20と素子基板30とが重なる領域をX軸に沿って切断する仮想線である。
図5に示されるように、電気光学装置10では、コモン電極22が設けられた対向基板20と、画素電極32が設けられた素子基板30とが、一定の間隙を保ちつつ、互いに電極形成面が対向するようにシール材40によって貼り合わせられ、この間隙に液晶50が封入される。
なお、素子基板30が第1基板の一例であり、対向基板20が第2基板の一例であり、液晶50が電気光学層の一例である。
【0021】
図4に示されるように、本実施形態において対向基板20および素子基板30では、X軸に沿った辺の長さが同じであるが、互いにY軸に沿ってズレて貼り合わせられている。このため、対向基板20には、素子基板30から張り出した張出部200aが設けられ、素子基板30には、対向基板20から張り出した張出部300aが設けられる。
【0022】
なお、Y軸とは電気光学装置10においてデータ線が延在する方向において向きを定めないものをいい、後述する表示領域の短辺に沿っている。後述するX軸とは、平面視でY軸と交差し、電気光学装置10において走査線が延在する方向において向きを定めないものをいう。X軸は、表示領域で言えば長辺に沿っている。
また、本説明において平面視とは、基板面の垂直方向、すなわち基板の厚さ方向から基板を眺めることをいい、断面視とは、基板面の垂直方向に破断して基板を眺めることをいう。
【0023】
対向基板20および素子基板30としては、それぞれガラスや石英などの光透過性および絶縁性を有する基材が用いられる。張出部300aには、複数の端子(図示省略)が設けられて、FPC(Flexible Printed Circuits)基板61の一端が接続される。FPC基板61は第1フレキシブル基板の一例である。
FPC基板61の他端は表示制御回路15および温度制御回路16に接続される。これによって、上述したデータ信号および制御信号が、表示制御回路15から電気光学装置10に供給され、温度を示す情報Tempが、電気光学装置10から温度制御回路16に供給される。
【0024】
張出部200aには、ヒーター230に接続される2つの端子が設けられて、それぞれFPC基板62、63の一端が接続される。当該FPC基板62、63の他端は、温度制御回路16に接続される。これにより、ヒーター230には、温度制御回路16により制御された電圧がFPC基板62、63を介して印加される。FPC基板62および63は第2フレキシブル基板の一例である。
【0025】
なお、当該FPC基板62、63は、それぞれ90度の屈曲を2回繰り返した構成となっているが、この理由は、温度制御回路16が、電気光学装置10に対して、表示制御回路15と同じ側に設けられるためである。
また、電気光学装置10では、ランプユニット2102からの光が対向基板20に入射して素子基板30から出射する。
【0026】
ここで便宜上、電気光学装置10の電気的な構成について説明する。
図6は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
電気光学装置10の素子基板30には、表示領域5の周縁に、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370が設けられる。
【0027】
詳細には、素子基板30には、複数本の走査線36がX軸に沿って延在して設けられる。複数本のデータ線37がY軸に沿って延在し、かつ、走査線36と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。複数本の走査線36と複数本のデータ線37との交差に対応して画素回路38がマトリクス状に設けられる。
【0028】
走査線36の本数をmとし、データ線37の本数をnとした場合、画素回路38は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線36と画素回路38とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線37および画素回路38において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0029】
走査線駆動回路360は、表示制御回路15からの制御信号Ctrにしたがって走査線36を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線36への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路360は、選択した走査線36以外の走査線36への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路370は、表示制御回路15から供給されるデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線36への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線36に位置する画素回路38に、データ線37を介して出力する。
【0030】
張出部300aにおける領域310aには、制御信号Ctrを走査線駆動回路360に供給するための端子や、データ信号等をデータ線駆動回路370に供給するための端子、さらには、温度センサー17による情報Tempを温度制御回路16に供給するための端子が、設けられる。領域310aに設けられる端子が第1接続部の一例である。
【0031】
図7は、画素回路38の等価回路を示す図である。なお、
図7では、隣り合う2本の走査線36と、隣り合う2本のデータ線37との交差に対応する縦2つ横2つの計4個の画素回路38についての等価回路を示している。画素回路38の回路構成についてはそれぞれ共通である。
【0032】
画素回路38は、トランジスター382と液晶素子384と蓄積容量386とを含む。トランジスター382は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路38において、トランジスター382のゲート電極は走査線36に電気的に接続される。また、トランジスター382のソース領域はデータ線37に電気的に接続され、そのドレイン領域は、画素電極32および蓄積容量386の一端に電気的に接続される。
【0033】
トランジスター382では、電流が流れる方向が反転すると、ソース領域とドレイン領域とが入れ替わるが、本説明では、データ線37に電気的に接続される領域をソース領域とし、画素電極32と電気的に接続される領域をドレイン領域とする。
また、本説明において「電気的に接続」または単に「接続」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば素子基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線がコンタクトホールを介して接続されることも含む。
【0034】
画素電極32に対向するようにコモン電極22が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極22には時間経過に対して一定の電圧LCcomが印加される。そして、画素電極32とコモン電極22との間には上述したように液晶50が挟持される。したがって、画素回路38毎に、画素電極32およびコモン電極22によって液晶50を挟持した液晶素子384が構成される。
また、液晶素子384に対して電気的に並列に蓄積容量386が設けられる。蓄積容量386において、一端が画素電極32に電気的に接続され、他端が容量線39に電気的に接続される。容量線39には、時間経過に対して一定の電圧、例えばコモン電極22への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。
【0035】
走査信号がHレベルになった走査線36では、当該走査線36に対応して設けられる画素回路38のトランジスター382がオン状態になる。トランジスター382のオン状態になれば、データ線37と画素電極32とが電気的に接続された状態になるので、データ線37に供給されたデータ信号が、オン状態のトランジスター382を介して画素電極32および蓄積容量386の一端に到達する。走査線36がLレベルになると、トランジスター382がオフ状態になるが、画素電極32に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子384および蓄積容量386によって保持される。
【0036】
周知のように、液晶素子384では、画素電極32およびコモン電極22によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子384は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。
なお、液晶素子384がノーマリーブラックモードであれば、液晶素子384への印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなる。
【0037】
液晶素子384の画素電極32にデータ信号を供給する動作が、一垂直走査期間において1、2、3、…、m行目という順番で実行される。これによりm行n列で配列する画素回路38の液晶素子384の各々にデータ信号に応じた電圧が保持され、各液晶素子384が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子384によって、対応する色の透過像が生成される。
このように透過像の生成がRGB毎に実行されて、RGBを合成したカラー画像がスクリーンScrに投射される。
【0038】
なお、電気光学装置10において、透過像が生成される領域は、平面視したときに、マトリクス状に配列する画素電極32とコモン電極22とが重なる領域である。したがって表示領域5は、マトリクス状に配列する画素電極32とコモン電極22とが平面視で重なる領域になる。
【0039】
投射型表示装置100は、室内のみならず、室外で使用される場合がある。液晶素子384の光学応答性、具体的には、液晶素子384への電圧変化に対する透過率の変化特性は、温度が低くなるにつれて低下する。このため、本実施形態では、外気温が低下しても、光学応答性が低下するのを防ぐために、液晶素子384、特に液晶50を加熱するためにヒーター230が設けられる。
【0040】
表示領域5の液晶50がヒーター230によって不均一に加熱されると、光学応答性が表示領域5でばらつくことになり、特に動画の表示品位が低下する。そこで、本実施形態では、ヒーター230を、表示領域5の外周縁であって、平面視で額縁(見切り)に重なる位置に設ける構成とした。
【0041】
図8は、電気光学装置10に設けられるヒーター230の構成を示す平面図である。なお、
図8は、説明便宜のために、電気光学装置10のうち、素子基板30を分離して、ヒーター230が設けられる対向基板20を、ランプユニット2102からの光が入射する方向から眺めた図である。
このように、電気光学装置10から素子基板30を分離して、ヒーター230が設けられる対向基板20を、光が入射する方向から眺めることについては、後述する
図13、
図16、
図17、
図18および
図20において同様である。
【0042】
図8においてシール材40は、素子基板30と平面視で重なる領域の周縁において枠状に設けられる。遮光部材の一例である遮光膜241は、シール材40の内側に枠状に設けられる。遮光膜241は、表示領域5の外周縁を規定する額縁であって、遮光性を有する。
説明の便宜上、遮光膜241を平面視したときの枠が、
図8において左下欄に示されるように簡略的に辺AB、BC、CDおよびDAの四辺の矩形で構成されるとする。ここで、辺DAの外側に、張出部200aが設けられる。
【0043】
遮光膜241のうち、Y軸に沿った二つの辺ABおよびCDに隠れるように走査線駆動回路360がそれぞれ設けられる。また、遮光膜241のうち、辺DAに対向してX軸に沿った辺BCに隠れるようにデータ線駆動回路370が設けられる。
【0044】
走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370が遮光膜241に隠れることによって対向基板20から素子基板30に向かって入射する光が、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370を構成するトランジスターに侵入することが抑えられる。これにより、光リークによる走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370の誤動作が防止される。
【0045】
また、シール材40として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合、遮光膜241は、シール材40と平面視で重ならないように設けられる。シール材40の塗布後、対向基板20と素子基板30とを貼り合わせて、シール材40を硬化するために対向基板20から素子基板30に向かう方向で紫外線を照射した際に、遮光膜241の遮光によってシール材40の硬化を妨げないようにするためである。
【0046】
ヒーター230は、アルミニウム(Al)や、窒化チタン(TiN)、タングステンシリサイド(WSi)などの導電層をパターニングした配線膜であり、電気的にみれば一端および他端を有し、一端または他端の一方から他方に電流が流れることによって発熱する。ヒーター230は、第1実施形態では平面視で
図8に示されるように一体形状であるが、説明の便宜のために各要素で分解すれば、
図8の右下欄に示されるように、枠部231aと、接続部231b、231cと、交差部231d、231eとに大別される。
なお、本説明において、「層」とは、導電層および配線層において、パターニングを伴わないものをいい、「膜」とは、導電層および配線層において、パターニングしたものをいう。
【0047】
枠部231aは、遮光膜241に重なるように、遮光膜241の幅よりも狭く設けられた部分であり、一端および他端を有する。なお、遮光膜241の幅とは、遮光膜241の延在方向に対して直交する方向の寸法をいう。
【0048】
接続部231bおよび231cは、それぞれ張出部200aに設けられ、このうち接続部231bはFPC基板62に接続される部分であり、接続部231cは、FPC基板63に接続される部分である。なお、張出部200aにおける接続部231bおよび231cが第2接続部の一例である。
【0049】
第1実施形態では、素子基板30の領域310aが、平面視で対向基板20と素子基板30と重なる矩形状のシール材40の外側の一辺に設けられ、対向基板20におけるヒーター230の接続部231bおよび231cが、平面視で対向基板20と素子基板30と重なる矩形状のシール材40における上記一辺以外の他辺であって、当該他辺が当該一辺と対向する辺に設けられた例である。
【0050】
交差部231dは、接続部231bと枠部231aの一端との間において、平面視でシール材40と交差する部分を含む。交差部231eは、接続部231bと枠部231aの他端との間において、平面視でシール材40と交差する部分を含む。
【0051】
再び説明を
図5に戻す。
図5において対向基板20は、基材201に対し、凹レンズ211、ヒーター230、絶縁層221、凸レンズ212、絶縁層222、遮光膜241、絶縁層223およびコモン電極22がこの順で設けられた構成となっている。
なお、
図5は、
図4におけるH-h線で電気光学装置10を切断した断面図であるから、厳密にいえば、ヒーター230については枠部231aであるが、積層の順を示すために、包括的にヒーター230として表記される。
【0052】
凹レンズ211および凸レンズ212の組は、ランプユニット2102からの光が液晶素子384に効率良く入射させるためのものであり、画素回路38に対して一対一に設けられる。凹レンズ211および凸レンズ212の組でマイクロレンズアレイが構成される。
なお、
図5は、ヒーター230が断面視でマイクロレンズアレイの凹レンズ211および凸レンズ212の間に設けられた例である。
また、対向基板20には、他にコモン電極22を覆うように配向膜が設けられるが、
図5では省略される。素子基板30では、画素電極32以外に、配向膜や、走査線36、データ線37、走査線駆動回路360などが設けられるが、なお、
図5では省略される。
【0053】
ヒーター230が設けられる位置は、断面視で
図5に示される位置のほか、
図9、
図10および
図11に示される位置が考えられる。
図9は、第1実施形態の第1変形例に係る電気光学装置10の構造を示す断面図である。第1変形例は、遮光膜241およびヒーター230が断面視でマイクロレンズアレイの間、すなわち凹レンズ211および凸レンズ212の間の位置に設けられた例である。第1変形例において対向基板20では、基材201における光の入射面とは反対の面に、凹レンズ211、遮光膜241、絶縁層221、ヒーター230、絶縁層222、凸レンズ212、絶縁層223、224およびコモン電極22がこの順で設けられる。
【0054】
図10は、第1実施形態の第2変形例に係る電気光学装置10の構造を示す断面図である。第2変形例は、ヒーター230と遮光膜241との位置が断面視で
図9に示される構成と逆転した例である。第2変形例において対向基板20では、基材201における光の入射面とは反対の面に、凹レンズ211、ヒーター230、絶縁層221、遮光膜241、絶縁層222、凸レンズ212、絶縁層223、224およびコモン電極22がこの順で設けられる。
【0055】
なお、
図6、
図9または
図10に示される構成では、張出部200aが、図において基材201の下面または絶縁層221の下面が露出する。この露出した部分に、ヒーター230の接続部231bおよび231cが設けられて、FPC基板62、63にそれぞれ接続される。
【0056】
図11は、第1実施形態の第3変形例に係る電気光学装置10の構造を示す断面図である。第3変形例は、ヒーター230が対向基板20において光の入射面に設けられた例である。詳細には、第3変形例では、基材201において入射面にヒーター230がパターニングにより設けられる一方、基材201において入射面の反対面において、凹レンズ211、遮光膜241、絶縁層221、222、凸レンズ212、絶縁層223、224およびコモン電極22がこの順で設けられる。
【0057】
第3変形例では、対向基板200において張出部200aが不要になる。具体的には、
図12に示されるように、ヒーター230における接続部231bおよび231cが、例えば素子基板300における張出部300aと同じ辺に沿って設けられて、FPC基板62、63の一端にそれぞれ接続される。
なお、
図12では、平面視したときのヒーター230の形状は、
図8におけるヒーター230の形状に対して180度回転した関係にある。
【0058】
このような第1変形例、第2変形例および第3変形例を含む第1実施形態によれば、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370を遮光する遮光膜241が、平面視で表示領域5よりも外側であってシール材40の内側に、枠状に設けられる。このため、シール材40として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合であっても、遮光膜241がシール材40と平面視で重ならないので、遮光膜241が紫外線の照射によるシール材40の硬化を妨げられることはない。このため、対向基板20と素子基板30との貼り合わせの不良の発生を抑えることができる。
枠状の遮光膜241に対し、ヒーター230の枠部231aは、平面視で重なり、かつ、遮光膜241の幅よりも狭い形状である。枠部231aによる発熱は、表示領域5の外側においてほぼ均等で発生するので、表示領域5において発熱ムラが生じにくい。
【0059】
図13は、第1実施形態の第4変形例に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図である。第4変形例では、ヒーター230の交差部231dおよび231eに開孔部Sltが設けられた例である。
詳細には、交差部231eを例にとれば、
図14に示されるように、当該交差部231eには、複数箇所(図では3箇所)の開孔部Sltが設けられる。シール材40として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合において、交差部231eに開孔部Sltが設けられると、紫外線が開孔部Sltを介してシール材40に侵入するので、当該シール材40の硬化を促進することができる。
【0060】
図8における交差部231eの幅を、
図14の左欄に示されるように、Waとする。また、右欄に示されるように、第4変形例における交差部231eのうち、開孔部Sltで生じた1本の幅をWbとし、当該交差部231eにおいて開孔部Sltで生じた線数をk(kは2以上の整数)とする。なお、右欄は、線数kが「4」の例である。
このような幅Wa、Wbおよび線数kは、次のような関係にあることが好ましい。
Wa≦k・Wb
すなわち、第4変形例において交差部231eの幅合計(k・Wb)が、実施形態における交差部231eの幅Wa以上であれば、接続部において抵抗値が増大することによる発熱への悪影響を抑えることができる。
なお、ここでは交差部231eについて説明したが、交差部231dについても同様である。
【0061】
次に、第2実施形態について説明する。
図15は、第2実施形態に係る電気光学装置10を示す斜視図である。
第2実施形態では、対向基板20におけるX軸の長さが、素子基板30におけるX軸の長さよりも長く、対向基板20における短辺二辺において素子基板30から張り出した張出部200bおよび200cが設けられた例である。
なお、第2実施形態において素子基板30には、対向基板20から張り出した張出部300aが設けられる点については、第1実施形態と同様である。
【0062】
図16は、第2実施形態に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図である。
第2実施形態において、シール材40は、第1実施形態と同様に、素子基板30と平面視で重なる領域の周縁において枠状に設けられる。遮光膜241についても、第1実施形態と同様に、
図8の左下欄に示されるように、シール材40の内側であって、表示領域5の外側において枠状に設けられる。
【0063】
第2実施形態においてヒーター230は平面視で
図17に示される形状であり、説明の便宜のために各要素で分解すれば、
図17の下欄に示されるように接続部231b、231cと、交差部231d、231eと、枠部231fとに大別される。
【0064】
枠部231fは、四辺の枠形状であり、遮光膜241に重なるように、遮光膜241の幅よりも狭い幅で設けられる。
第2実施形態において、接続部231bは、張出部200bに設けられ、
図15に示されるようにFPC基板62に接続される。また、接続部231cは、張出部200cに設けられ、
図15に示されるようにFPC基板63に接続される。
【0065】
交差部231dは、平面視で接続部231bと枠部231fとの間において、シール材40と交差する部分であり、
図8における左下欄の遮光膜241でいえば辺ABと交差する部分である。交差部231eは、平面視で接続部231cと枠部231fとの間において、シール材40と交差する部分であり、遮光膜241でいえば辺CDと交差する部分である。
【0066】
第2実施形態では、素子基板30の領域310aが、平面視で対向基板20と素子基板30と重なる矩形状のシール材40の外側の一辺に設けられ、対向基板20におけるヒーター230の接続部231bおよび231cが平面視で対向基板20と素子基板30と重なる矩形状のシール材40における上記一辺以外の他辺であって、当該他辺が当該一辺とそれぞれ交差する辺に設けられた例である。
【0067】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ヒーター230の枠部231aが、枠状の遮光膜241に対し、平面視で重なり、かつ、遮光膜241の幅よりも狭い幅で設けられる。このため、シール材40として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合であっても、遮光膜241がシール材40の硬化を妨げられることはなく、また、枠部231aによる発熱が、表示領域5の外側において均等で発生するので、表示領域5における発熱ムラを抑えることができる。
【0068】
さらに、第2実施形態において、接続部231bまたは231cの一方から他方までに流れる電流の経路長は、第1実施形態と比較して半分になるので、電流が流れやすくなる。このため、接続部231bおよび231cに印加される電圧が第1実施形態と同じであって、ヒーター230の材質が同じであれば(抵抗率が同じであれば)、第2実施形態におけるヒーター230の膜厚を第1実施形態と比較して半分に抑えて、第1実施形態と同じ発熱量を得ることができる。
【0069】
図17は、第2実施形態における変形例に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図である。第2実施形態における変形例は、ヒーター230の交差部231dおよび231eに、第1実施形態と同様な開孔部Sltが設けられた例である。
このように交差部231dおよび231eに開孔部Sltが設けられると、対向基板20と素子基板30との貼り合わせにおいて、シール材40の紫外線が開孔部Sltを介してシール材40に侵入するので、当該シール材40の硬化を促進することができる。
【0070】
図18は、第3実施形態に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図である。
第3実施形態において、シール材40は、第1実施形態および第2実施形態と同様に、素子基板30と平面視で重なる領域の周縁において枠状に設けられる。遮光膜241についても、第1実施形態および第2実施形態と同様に、
図18の左下欄に示されるようにシール材40の内側であって、表示領域5の外側において枠状に設けられる。
【0071】
第3実施形態においてヒーター230は、ヒーター配線231とヒーター膜232とに分けられる。
ヒーター配線231は、第3実施形態では、導電膜のパターニングにより2つに分離された電極であり、説明の便宜のために各要素で分解すれば、
図18の右下欄に示されるように、一方の電極が、接続部231b、交差部231dおよび枠部231gに分けられ、他方の電極が、接続部231c、交差部231eおよび枠部231hに大別される。
枠部231gは、遮光膜241の辺DAのほぼ中点から、角Aで直角に屈曲して点Bまでに沿うように設けられ、枠部231hは、遮光膜241の辺DAのほぼ中点から、点Dで直角に屈曲して点Cまでに沿うように設けられる。
図18において外形が白破線で示されるヒーター膜232は、透明性および導電性を有するITO(酸化インジウムスズ)などの導電層が矩形状にパターニングされたものである。ヒーター膜232は、枠部231gと枠部231hとに電気的に接続される。
なお、ヒーター膜232は、透明電極の一例である。
【0072】
第3実施形態に係る電気光学装置10の外観は、
図4で斜視図が示される第1実施形態と同様である。
図19は、第3実施形態に係る電気光学装置10を、
図4のH-h線で破断した断面図である。
第3実施形態において対向基板20は、基材201に対し、凹レンズ211、遮光膜241、絶縁層221、凸レンズ212、絶縁層222、屈折膜251、枠部231gおよび231h、屈折膜252、絶縁層223、およびコモン電極22がこの順で設けられた構成となっている。
【0073】
この構成では、ヒーター膜232における光の入射面、すなわち図において上面に屈折膜251が設けられ、ヒーター膜232における光の出射面、すなわち図において下面に屈折膜252が設けられる。
なお、例えばヒーター膜232における光の入射面が第1面の一例であり、ヒーター膜232における光の出射面が第2面の一例である。
【0074】
このうち、ヒーター膜232と絶縁層222との間に設けられる屈折膜251の屈折率は、ヒーター膜232の屈折率と絶縁層222の屈折率との間の値を有する。例えばヒーター膜232の屈折率が1.80であり、絶縁層222の屈折率が1.45であれば、屈折膜251の屈折率は、それらの間の1.45以上1.80未満の範囲で設定される。また例えばヒーター膜232の屈折率が2.00であり、絶縁層222の屈折率が1.70であれば、屈折膜52の屈折率は、それらの間の1.70以上2.00未満の範囲で設定される。
このように、屈折膜251の屈折率は、絶縁層222の屈折率以上であって、ヒーター膜232の屈折率未満であればよく、好ましくは、1.80以上2.00未満であればよい。
【0075】
屈折膜251が設けられない構成では、表示領域5においてヒーター膜232と絶縁層222とが直接接触することになる。このように接触した構成では、ヒーター膜232の屈折率と絶縁層222の屈折率との差が大きくなって、界面での反射光が多くなる。このため、液晶素子384を通過する光量が少なくなるので、コントラスト比が低下し、表示品位が低下する。
これに対し、本実施形態では、ヒーター膜232と絶縁層222との間に屈折膜251が設けられるので、屈折率の差が小さくなり、界面での反射光が少なくなる。このため、液晶素子384を通過する光量は、屈折膜251が設けられない構成と比較して、多くなるので、コントラスト比の低下が抑えられて、表示品位の低下を抑制することができる。
【0076】
ヒーター膜232と絶縁層223との間に設けられる屈折膜252の屈折率についても屈折膜251と同様であり、ヒーター膜232の屈折率と絶縁層223の屈折率との間の値を有する。
なお、屈折膜251、252は、例えばシリコン窒化膜(SiON)や、窒化シリコン(SiN)、アルミナ(Al2O3)などの絶縁性および透明性を有する絶縁層をパターニングすることによって設けられる。
【0077】
また、第3実施形態では、屈折膜251がヒーター膜232における光の入射面に設けられ、屈折膜252がヒーター膜232における光の入射面に設けられたが、どちらか一方の面にだけに設ける構成であってもよい。一方の面にだけに設ける構成であっても、当該面の界面での反射光が少なくなるので、屈折膜251または252の他方が設けられない構成と比較して、多くなる。
【0078】
第3実施形態によれば、ヒーター膜232がヒーター配線231の枠部231g、231hに電気的に接続されるとともに、当該ヒーター膜232が平面視で表示領域5の全面を覆う。このため、ヒーター膜232による発熱が、第1実施形態や第2実施形態と比較して、表示領域5の全面にわたって均等で発生することが可能になるので、表示領域5における発熱ムラを抑えることができる。
また、第3実施形態では、上述したように、屈折膜251、252によってコントラスト比の低下が抑えられて、表示品位の低下を抑制することができる。
【0079】
図20は、第4実施形態に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図である。
第4実施形態では、ヒーター配線231が、第2実施形態と同様な接続部231b、231c、交差部231dおよび231eと、第2実施形態の枠部231gに代わるコンタクトバー231pおよび231qと、第3実施形態と同様なヒーター膜232とで構成される。
コンタクトバー231pは、遮光膜241の辺ABと平面視で重なり、かつ、遮光膜241の幅よりも狭い幅で設けられる。 コンタクトバー231qも同様に、遮光膜241の辺CDと平面視で重なり、かつ、遮光膜241の幅よりも狭い幅で設けられる。
図20において外形が白破線で示される矩形形状のヒーター膜232は、コンタクトバー231pよび231qに電気的に接続される。
【0080】
第4実施形態によれば、ヒーター膜232がヒーター配線231のコンタクトバー231p、231qに電気的に接続されるとともに、当該ヒーター膜232が平面視で表示領域5の全面を覆う。このため、ヒーター膜232による発熱が、第3実施形態と同様に、表示領域5の全面にわたって均等で発生するので、表示領域5における発熱ムラを抑えることができる。
第4実施形態では、特に図示しないが、ヒーター膜232が第3実施形態と同様な屈折膜251および252で挟持される。このため、第4実施形態においてもコントラスト比の低下が抑えられて、表示品位の低下を抑制することができる。
【0081】
なお、第4実施形態においても、第3実施形態の第1変形例と同様に、交差部231dおよび231eに開孔部Sltを設けてもよい。交差部231dおよび231eに開孔部Sltを設けると、シール材40として紫外線硬化性樹脂が用いられる場合に、紫外線が開孔部Sltを介してシール材40に侵入するので、当該シール材40の硬化を促進することができる。
【0082】
上述した第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態および第4実施形態(以下「実施形態等」という)については、以下のような応用、変形が可能である。
実施形態等では、電気光学装置10として、対向基板20と素子基板30とで電気光学層としての液晶50を挟持した液晶パネルを例にとって説明したが、例えば電気光学層として有機発光層を用いたOLED(Organic Light Emitting Diode)装置にも適用可能である。なお、OLED装置では、例えば画素電極、有機発光層およびコモン電極が順に形成された素子基板に、封止のための封止基板が貼り合わせられ、当該封止基板に、遮光膜およびヒーターが実施形態等と同様に設けられる構成になる。この構成では封止基板が第2基板の一例になる。
【0083】
実施形態等では、マイクロレンズアレイの構成として凸レンズ211と凹レンズ212レンズとを設ける構成としたが、それに限られない。例えば、凸レンズ211を少なくとも1つ以上、かつ、凹レンズ212を少なくとも1つ以上備える構成や、凸レンズ211のみを少なくとも1つ以上備える構成、凹レンズ212のみを少なくとも1つ以上備える構成としてもよい。また、凸レンズ211および凹レンズ212の順番を変えた構成としてもよい。
【0084】
<付記>
以上に例示した形態から、例えば、以下の態様が把握される。
【0085】
ひとつの態様(態様1)に係る電気光学装置は、第1基板と、電気光学層と、前記電気光学層を介して前記第1基板と対向して配置される第2基板と、を有し、前記第2基板は、平面視で表示領域の外側に配置される遮光部材と、平面視で前記遮光部材と重なり、少なくとも前記第2基板の一辺に沿って配置される第1加熱部と、前記第2基板の一辺に対向する他の辺に沿って配置される第2加熱部と、を有する加熱部材と、を含む。
この態様によれば、表示領域への加熱ムラを抑えることができる。
【0086】
態様1の具体的な態様2に係る電気光学装置では、前記加熱部材が、平面視で前記遮光部材と重なる部分において、前記遮光部材よりも狭い幅を有する。態様2によれば、加熱部材が遮光部材の遮光性に影響を与えない。
【0087】
態様1の具体的な態様3に係る電気光学装置では、前記加熱部材が、前記表示領域と平面視で重なる透明電極と、前記第2基板の厚さ方向と交差する前記透明電極の第1面と第2面との少なくとも一方に配置される屈折膜と、を含む。態様3によれば、透明電極が表示領域をムラなく加熱することができる。
【0088】
態様3の具体的な態様4に係る電気光学装置では、前記屈折膜が、前記透明電極と絶縁層との間に設けられ、前記絶縁層の屈折率は、1.45以上1.70未満であり、前記屈折膜の屈折率は、1.50以上1.80未満であり、前記透明電極の屈折率は、1.80以上2.00未満である。態様4によれば、透明電極による透過率の低下を抑えることができる。
【0089】
態様1の具体的な態様5に係る電気光学装置は、前記第1基板に配置される第1接続部と電気的に接続される第1フレキシブル基板と、前記第2基板に配置される第2接続部を介して加熱部材と電気的に接続される第2フレキシブル基板と、を含む。
【0090】
態様5の具体的な態様6に係る電気光学装置では、前記第1接続部は、平面視で前記第1基板と前記第2基板とが重なる矩形よりも外側の一辺に配置され、前記第2接続部は、平面視で前記矩形よりも外側であって、前記一辺以外の他辺に配置される。
【0091】
態様6の具体的な態様7に係る電気光学装置では、前記第2フレキシブル基板には、前記加熱部材に一定の電圧を印加する配線が配置される。
【0092】
態様7の具体的な態様8に係る電気光学装置は、温度センサーを有し、前記第2フレキシブル基板の配線には、前記温度センサーの検出値に応じた一定の電圧が印加される。態様8によれば、温度センサーの検出値に応じて電気光学装置の加熱を制御することでができる。
【0093】
態様5の具体的な態様9に係る電気光学装置では、前記他辺が、平面視で前記矩形よりも外側で対向する二辺のうち、一辺に対向する辺である。
態様5の具体的な態様10に係る電気光学装置では、前記他辺が、平面視で前記一辺と交差する辺である。
【0094】
別の態様(態様10)に係る電気光学装置は、第1基板と、第2基板と、平面視で表示領域の外側に配置され、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されるシール材と、を備え、前記第2基板は、平面視で、表示領域の外側であって、かつ、前記シール材の内側に配置される遮光部材と、平面視で前記遮光部材と重なり、少なくとも前記第2基板の一辺に沿って配置される第1加熱部と、前記第2基板の一辺に対向する他の辺に沿って配置される第2加熱部と、を有する加熱部材と、を含む。
【0095】
態様12に係る電子機器は、態様1乃至11のいずれかに係る電気光学装置を有する。
【符号の説明】
【0096】
10…電気光学装置、15…表示制御回路、20…対向基板、22…コモン電極、30…素子基板、32…画素電極、40…シール材、50…液晶、 61、62、63…FPC基板、230…ヒーター230、231b、231c…接続部、232…ヒーター膜、241…遮光膜。