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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078699
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20240604BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240604BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240604BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240604BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20240604BHJP
   G02F 1/13 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
G02F1/1333
G02F1/1335
G09F9/30 349C
G09F9/00 348Z
G09F9/30 330
G03B21/14 Z
G09F9/00 304C
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191194
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】和田 正行
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H291
2K203
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H088EA14
2H088EA15
2H088HA13
2H088HA21
2H088HA23
2H088HA24
2H088HA28
2H088MA20
2H189AA14
2H189AA18
2H189HA05
2H189HA06
2H189HA08
2H189HA11
2H189HA16
2H189LA03
2H189LA04
2H189LA10
2H189LA15
2H189LA18
2H189LA20
2H189LA24
2H189MA07
2H291FA13Y
2H291FA56Y
2H291LA03
2H291LA11
2H291MA13
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA42
2K203FA62
2K203GB02
2K203LA03
2K203LA18
2K203LA46
2K203LA56
2K203MA35
5C094AA45
5C094BA03
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA13
5C094DB03
5C094EA05
5C094ED01
5C094ED15
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB02
5C094FB12
5C094FB15
5C094JA13
5G435AA17
5G435BB12
5G435CC09
5G435DD04
5G435EE47
5G435EE49
5G435FF01
5G435FF13
5G435HH01
5G435LL15
(57)【要約】
【課題】ヒーターと額縁領域とを設ける場合において構成の簡易化を図る。
【解決手段】電気光学装置10は、遮光膜330を含む素子基板30と、ヒーター230、接続部231bおよび231cを含む対向基板20と、素子基板30と対向基板20ととで挟持される液晶50と、を備え、ヒーター230は、遮光性および導電性を有し、平面視で表示領域5の外側に沿って設けられ、遮光膜330と平面視で重なる位置に設けられたスリットS1によって開いた枠部241aであり、接続部231bは、枠部241aの一端から、平面視で素子基板30の外側に延在し、接続部231cは、枠部241aの他端から、平面視で素子基板30の外側に延在し、接続部231bおよび231cには順にFPC基板62、63が電気的に接続される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1遮光部材が配置された第1基板と、
導電性を有する第2遮光部材が配置された第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置される電気光学層と、
を備え、
前記第2遮光部材は、
前記第2基板の一辺に沿って設けられた第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に沿って延在する第1部分と、前記第1部分と隙間を介して設けられ、前記第2接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に延在する第2部分と、前記第1部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第3部分と、前記第2部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第4部分と、を有し、
前記第1遮光部は、前記第1部分と前記第2部分との隙間と重なる位置に配置されている、
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1接続部及び前記第2接続部と電気的に接続される第1フレキシブル基板を備える、
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
第2フレキシブル基板を備え、
前記第1基板は、
平面視で、前記第1接続部および前記第2接続部が設けられる辺と対向する辺であって、前記第2基板の外側に延在し、前記第2フレキシブル基板と電気的に接続される第3接続部を含む、 請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1フレキシブル基板は、前記第2遮光部材に一定の電圧を印加する配線が設けられている
請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項5】
温度センサーを有し、
前記第1フレキシブル基板の配線は、前記温度センサーの検出値に応じた一定の電圧が印加される
請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記第2基板において、前記第1基板との対向面に配置された絶縁膜は開孔部を有し、
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記開孔部に配置される
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記開孔部において中継電極で覆われる
請求項6に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第2遮光部材における前記枠の形状は、
第1方向に沿った第1辺と、
前記第1方向と交差する第2方向に沿った第2辺とを含み、
前記第1辺の幅と前記第2辺との幅とは異なる
請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項9】
前記第1軸は、前記第2基板の短辺に沿い、
前記第2軸は、前記第2基板の長辺に沿い、
前記第1辺の幅は、前記第2辺との幅よりも広い、
請求項8に記載の電気光学装置。
【請求項10】
前記第2遮光部材は、
前記表示領域と平面視で重なる透明電極と、
前記第2基板の厚さ方向と交差する前記透明電極の第1面と第2面との少なくとも一方に設けられる屈折膜と、
を含む請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項11】
前記屈折膜は、前記透明電極と絶縁層との間に配置され、
前記絶縁層の屈折率は、1.45以上1.70未満であり、
前記屈折膜の屈折率は、1.50以上1.80未満であり、
前記透明電極の屈折率は、1.80以上2.00未満である
請求項10記載の電気光学装置。
【請求項12】
第1遮光部材を含む第1基板と、
前記第1基板と対向して配置される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置される電気光学層と、
前記第1基板と前記第2基板とのいずれか一方の基板において、前記電気光学層と対向する面と反対側の面に配置され、導電性を有する第2遮光部材が配置された第3基板と、
を備え、
前記第2遮光部材は、前記第2基板の一辺に沿って設けられた第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に沿って延在する第1部分と、前記第1部分と隙間を介して設けられ、前記第2接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に延在する第2部分と、前記第1部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第3部分と、前記第2部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第4部分と、
を有し、
前記第1遮光部は、前記第1部分と前記第2部分との隙間と重なる位置に配置されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の電気光学装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気光学層として液晶を用いた液晶パネルでは、液晶の温度が低いと光学応答性が低下する。このため、ヒーターを内蔵し、当該ヒーターの発熱によって液晶の温度を上昇させて、光学応答性を改善する液晶パネルが知られている(例えば特許文献1参照)。具体的には特許文献1に記載された液晶パネルでは、第1基板と第2基板との間に挟持された液晶と、平面視したときに表示領域と、当該表示領域より外側に区画される額縁領域(見切り)と、を有し、上記第2基板に、ヒーターが表示領域および額縁領域に平面視で重なるように設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-276909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、上記第2基板に、ヒーターと額縁領域とを別途設ける必要があるので、構成が複雑化する、という課題がある。
このような事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、ヒーターと額縁領域とを設ける場合において構成の簡易化を図ることができる技術を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る電気光学装置は、遮光性を有する第1遮光部材を含む第1基板と、第2遮光部材、第1接続部および第2接続部を含む第2基板と、前記第1基板と、前記第2基板または第3基板とで挟持される電気光学層と、を備え、前記第2遮光部材は、遮光性および導電性を有し、平面視で表示領域の外側に沿って設けられ、前記第1遮光部材と平面視で重なる位置に設けられた隙間によって開いた枠の形状であり、前記第1接続部は、前記開いた枠の一端から、平面視で前記第1基板の外側に延在し、前記第2接続部は、前記開いた枠の他端から、平面視で前記第1基板の外側に延在し、前記第1接続部および前記第2接続部には第1フレキシブル基板が電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る電気光学装置を適用した投射型表示装置の光学的な構成を示す図である。
図2】電気光学装置における駆動系の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】電気光学装置のヒーターを制御する構成を示す図である。
図4】電気光学装置を示す斜視図である。
図5】電気光学装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図6】電気光学装置における画素回路の構成を示す図である。
図7】電気光学装置の対向基板を示す平面図である。
図8】電気光学装置の素子基板を示す平面図である。
図9】電気光学装置の構造を示す断面図である。
図10】第1実施形態の第1変形例に係る電気光学装置の構造を示す断面図である。
図11】第1変形例における接続電極を示す平面図である。
図12】第1実施形態の第2変形例における対向基板を示す平面図である。
図13】第2実施形態に係る電気光学装置に対向基板を示す平面図である。
図14】電気光学装置の構造を示す断面図である。
図15】電気光学装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係る電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る電気光学装置を適用した投射型表示装置100の光学的な構成を示す図である。図に示されるように、投射型表示装置100は、電気光学装置10R、10Gおよび10Bを含む。また、投射型表示装置100には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は電気光学装置10Rに、Gの光は電気光学装置10Gに、Bの光は電気光学装置10Bに、それぞれ入射する。
なお、Bの光路は、Rの光路およびGの光路と比較して長いので、Bの光路での損失を防ぐ必要がある。このため、Bの光路には、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121が設けられる。
【0009】
電気光学装置10Rは、実施形態では、複数の画素回路を有する液晶パネルである。複数の画素回路の各々は、それぞれ液晶素子を含む。電気光学装置10Rの液晶素子は、後述するようにRに対応するデータ信号に基づいて駆動され、当該データ信号の電圧の実効値に応じた透過率になる。したがって、電気光学装置10Rでは、液晶素子の透過率が個別に制御されることで、Rの透過像が生成される。同様に、電気光学装置10Gでは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像が生成され、電気光学装置10Bでは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像が生成される。
【0010】
電気光学装置10R、10Gおよび10Bによってそれぞれ生成された各色の透過像が、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。ダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、ダイクロイックプリズム2112が各色の画像を合成する。ダイクロイックプリズム2112による合成像は投射レンズ2114に入射する。
投射レンズ2114は、ダイクロイックプリズム2112による合成像を、スクリーンScrに拡大して投射する。
【0011】
なお、電気光学装置10R、10Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に出射されるのに対し、電気光学装置10Gによる透過像は直進して出射される。したがって、電気光学装置10R、10Bによる各透過像は、電気光学装置10Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
【0012】
図2は、投射型表示装置100の電気的な構成のうち、表示を制御するための構成を示すブロック図である。図に示されるように、投射型表示装置100は、上述した電気光学装置10R、10G、10Bと、表示制御回路15と、を含む。
【0013】
表示制御回路15には、図示省略されたホスト装置等の上位装置から、映像データVid-inが同期信号Syncに同期して供給される。映像データVid-inは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、RGB毎に例えば8ビットで指定する。
【0014】
投射型表示装置100では、スクリーンScrに投射されるカラー画像が、上述したように電気光学装置10R、10Gおよび10Bの各透過像を合成することで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、電気光学装置10Rによる赤の副画素、電気光学装置10Gによる緑の副画素、および、電気光学装置10Bによる青の副画素に分けることができる。ただし、電気光学装置10R、10Gおよび10Bにおける副画素について、色について特定する必要がない場合や、単に明暗のみを問題とする場合等では、副画素と敢えて表記する必要がない。そこで本説明では、電気光学装置10R、10Gおよび10Bにおける表示単位について、単に画素と表記する。
【0015】
同期信号Syncには、映像データVid-inの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データVid-inにおける映像画素の1つ分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0016】
表示制御回路15は、上位装置からの映像データVid-inをRGB成分毎に分けるとともに、アナログ電圧のデータ信号に変換して電気光学装置10R、10Gおよび10Bに供給する。具体的には、表示制御回路15は、映像データVid-inのうち、R成分をアナログに変換し、データ信号Vid-RとしてFPC(Flexible Printed Circuits)基板61を介して電気光学装置10Rに供給する。同様に、表示制御回路15は、映像データVid-inのうち、G成分をアナログに変換し、データ信号Vid-GとしてFPC基板61を介して電気光学装置10Gに供給し、B成分をアナログに変換し、データ信号Vid-BとしてFPC基板61を介して電気光学装置10Bに供給する。
なお、表示制御回路15は、データ信号Vid_R、Vid_GおよびVid_Bを、順に電気光学装置10R、10Gおよび10Bの駆動を制御するための制御信号Ctrに同期して、FPC基板61を介して供給する。
【0017】
次に、電気光学装置10R、10Gおよび10Bについて説明する。電気光学装置10R、10Gおよび10Bについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、その構造は共通である。そこで、電気光学装置10R、10Gおよび10Bについては、符号を10として、色を特定しないで一般的に説明する。
【0018】
図3は、電気光学装置10の加熱を制御するための構成を示すブロック図である。電気光学装置10には、ヒーター230と温度センサー17とが設けられる。ヒーター230は加熱部材の一例である。また、温度制御回路16は、ヒーター230にFPC基板62、63を介して、電圧を印加する。
温度センサー17は、電気光学装置10の温度を検出して、当該温度を示す情報Tempを検出値として出力する。なお、情報Tempは、FPC基板62、63とは別のFPC基板、例えばFPC基板61を介して温度制御回路16に供給される。
【0019】
温度制御回路16は、情報Tempで示される温度が目的温度になるように、ヒーター230に印加する電圧を制御する。具体的には、温度制御回路16は、情報Tempで示される温度が目的温度よりも低ければ、ヒーター230に印加する電圧を高くする。
なお、目的温度とは、電気光学装置10の使用に適した温度であり、温度制御回路16において予め設定される。また、ヒーター230への印加電圧の変動はノイズ源になる。このため、温度制御回路16は、ヒーター230への印加電圧を定電圧で制御するとともに、情報Tempで示される温度に応じて、当該印加電圧を例えば1分毎に段階的に切り替える。
【0020】
図4は、電気光学装置10の外観を示す斜視図である。
液晶パネルである電気光学装置10では、周知のようにコモン電極が設けられた対向基板20と、画素電極が設けられた素子基板30とが、一定の間隙を保ちつつ、互いに電極形成面が対向するようにシール材によって貼り合わせられ、この間隙に液晶が封入される。
なお、素子基板30が第1基板の一例であり、対向基板20が第2基板の一例であり、液晶50が電気光学層の一例である。
【0021】
図4に示されるように、本実施形態において対向基板20および素子基板30では、X軸に沿った辺の長さが同じであり、揃えられて貼り合わせられている。対向基板20におけるY軸に沿った辺の長さは、素子基板30におけるY軸に沿った辺の長さとほぼ同じであるが、Y軸に沿ってずらして貼り合わせられている。このため、対向基板20には、素子基板30から張り出した張出部200aが設けられ、素子基板30には、対向基板20から張り出した張出部300aが設けられる。
【0022】
本説明において、X軸とは、電気光学装置10において後述する走査線が延在する方向において向きを定めないものをいい、表示領域の長辺に沿っている。X軸に沿った方向のうち、図4において右方向をX方向という。X軸は第1軸の一例であり、X方向は第1方向の一例である。また、Y軸とは、平面視でX軸と交差し、電気光学装置10においてデータ線が延在する方向において向きを定めないものをいい、表示領域の短辺に沿っている。Y軸のうち、図4において手前方向をY方向という。Y軸は第2軸の一例であり、Y方向は、第2方向の一例である。
平面視とは、基板面の垂直方向、すなわち基板の厚み方向に沿って基板を眺めることをいい、断面視とは、基板面の垂直方向に破断して基板を眺めることをいう。
【0023】
対向基板20および素子基板30としては、それぞれガラスや石英などの光透過性および絶縁性を有する基材が用いられる。張出部300aには、後述する複数の端子が設けられて、FPC(Flexible Printed Circuits)基板61の一端が接続される。FPC基板61は第2フレキシブル基板の一例である。
FPC基板61の他端は表示制御回路15および温度制御回路16に接続される。これによって、上述したデータ信号および制御信号が、表示制御回路15から電気光学装置10に供給され、温度を示す情報Tempが、電気光学装置10から温度制御回路16に供給される。
【0024】
張出部200aには、ヒーター230に接続される2つ端子が設けられて、それぞれFPC基板62、63の一端が接続される。当該FPC基板62、63の他端は、温度制御回路16に接続される。これにより、ヒーター230には、温度制御回路16により制御された電圧がFPC基板62、63を介して印加される。FPC基板62および63は第1フレキシブル基板の一例である。
【0025】
なお、当該FPC基板62、63は、それぞれ90度の屈曲を2回繰り返した構成となっているが、この理由は、温度制御回路16が、電気光学装置10に対して、表示制御回路15と同じ側に設けられるためである。
また、電気光学装置10では、ランプユニット2102からの光が対向基板20に入射して素子基板30から出射する。
【0026】
ここで便宜上、電気光学装置10の電気的な構成について説明する。図5は、電気光学装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
電気光学装置10の素子基板30には、平面視で表示領域5の外側に、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370が設けられる。
【0027】
詳細には、素子基板30には、複数本の走査線36がX軸に沿って延在して設けられる。複数本のデータ線37がY軸に沿って延在し、かつ、走査線36と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。複数本の走査線36と複数本のデータ線37との交差に対応して画素回路38がマトリクス状に設けられる。
【0028】
走査線36の本数をmとし、データ線37の本数をnとした場合、画素回路38は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線36と画素回路38とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線37および画素回路38において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0029】
走査線駆動回路360は、表示制御回路15からの制御信号Ctrにしたがって走査線36を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線36への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路360は、選択した走査線36以外の走査線36への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路370は、表示制御回路15から供給されるデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線36への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線36に位置する画素回路38に、データ線37を介して出力する。
【0030】
張出部300aにおける領域310aには、制御信号Ctrを走査線駆動回路360に供給するための端子や、データ信号等をデータ線駆動回路370に供給するための端子、さらには、温度センサー17による情報Tempを温度制御回路16に供給するための端子が、設けられる。領域310aに設けられる複数の端子が第3接続部の一例である。
【0031】
図6は、画素回路38の等価回路を示す図である。なお、図6では、隣り合う2本の走査線36と、隣り合う2本のデータ線37との交差に対応する縦2つ横2つの計4個の画素回路38についての等価回路を示している。画素回路38の回路構成についてはそれぞれ共通である。
【0032】
画素回路38は、トランジスター382と液晶素子384と蓄積容量386とを含む。トランジスター382は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路38において、トランジスター382のゲート電極は走査線36に電気的に接続される。また、トランジスター382のソース領域はデータ線37に電気的に接続され、そのドレイン領域は、画素電極32および蓄積容量386の一端に電気的に接続される。
【0033】
トランジスター382では、電流が流れる方向が反転すると、ソース領域とドレイン領域とが入れ替わるが、本説明では、データ線37に電気的に接続される領域をソース領域とし、画素電極32と電気的に接続される領域をドレイン領域とする。
また、本説明において「電気的に接続」または単に「接続」とは、2以上の要素間の直接的または間接的な接続または結合を意味し、例えば素子基板において2以上の要素間が直接的ではなくても、異なる配線がコンタクトホールを介して接続されることも含む。
【0034】
画素電極32に対向するようにコモン電極22が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極22には時間経過に対して一定の電圧LCcomが印加される。そして、画素電極32とコモン電極22との間には上述したように液晶50が挟持される。したがって、画素回路38毎に、画素電極32およびコモン電極22によって液晶50を挟持した液晶素子384が構成される。
また、液晶素子384に対して電気的に並列に蓄積容量386が設けられる。蓄積容量386において、一端が画素電極32に電気的に接続され、他端が容量線39に電気的に接続される。容量線39には、時間経過に対して一定の電圧、例えばコモン電極22への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。
【0035】
走査信号がHレベルになった走査線36では、当該走査線36に対応して設けられる画素回路38のトランジスター382がオン状態になる。トランジスター382のオン状態になれば、データ線37と画素電極32とが電気的に接続された状態になるので、データ線37に供給されたデータ信号が、オン状態のトランジスター382を介して画素電極32および蓄積容量386の一端に到達する。走査線36がLレベルになると、トランジスター382がオフ状態になるが、画素電極32に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子384および蓄積容量386によって保持される。
【0036】
周知のように、液晶素子384では、画素電極32およびコモン電極22によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子384は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。
なお、液晶素子384がノーマリーブラックモードであれば、液晶素子384への印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなる。
【0037】
液晶素子384の画素電極32にデータ信号を供給する動作が、一垂直走査期間において1、2、3、…、m行目という順番で実行される。これによりm行n列で配列する画素回路38の液晶素子384の各々にデータ信号に応じた電圧が保持され、各液晶素子384が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子384によって、対応する色の透過像が生成される。
このように透過像の生成がRGB毎に実行されて、RGBを合成したカラー画像がスクリーンScrに投射される。
【0038】
なお、電気光学装置10において、透過像が生成される領域は、平面視したときに、マトリクス状に配列する画素電極32とコモン電極22とが重なる領域である。したがって表示領域5は、マトリクス状に配列する画素電極32とコモン電極22とが平面視で重なる領域になる。
【0039】
投射型表示装置100は、室内のみならず、室外で使用される場合がある。液晶素子384の光学応答性、具体的には、液晶素子384への電圧変化に対する透過率の変化特性は、温度が低くなるにつれて低下する。液晶の光学応答性が低下すると、動画表示に悪影響を与えたり、本説明では省略しているが、光学シフト素子を用いた場合には、シフト位置に対応した表示ができなくなったりする。
そこで、本実施形態では、外気温が低下しても、光学応答性が低下するのを防ぐために、液晶素子384、特に液晶50を加熱するためにヒーター230が設けられる。
【0040】
表示領域5において液晶50がヒーター230によって不均一に加熱されると、光学応答性が表示領域5でばらつくことになり、特に動画の表示品位が低下する。そこでまず、本実施形態では、ヒーター230を、表示領域5の外周縁に設ける構成とした。表示領域5の外周縁には額縁として機能する遮光膜が設けられるが、ヒーター230と遮光膜とが別々に設けられると、構成が複雑化する。そこで次に、本実施形態では、ヒーター230に遮光性を持たせて、額縁として機能する遮光膜を兼用する構成とした。
【0041】
図7は、電気光学装置10のうち、対向基板20の平面図であり、図8は、素子基板30の平面図である。
なお、図7は、説明のために、電気光学装置10のうち、対向基板20を、素子基板30から分離して、ランプユニット2102からの光が入射する方向から眺めた図である。このように、電気光学装置10から素子基板30を分離して、ヒーター230が設けられる対向基板20を、光が入射する方向から眺めることについては、後述する図12および図13において同様である。
また、図8は、説明のために、電気光学装置10のうち、素子基板30を、対向基板20から分離して光の入射方向から眺めた図である。
【0042】
シール材40は、平面視で対向基板20と素子基板30とが重なる矩形状の領域の周縁の内側に沿って設けられる。
なお、図7および図8において、対向基板20と素子基板30とが平面視で重なる矩形状の領域の四つの角をそれぞれA、B、CおよびDとする。換言すれば、矩形状の領域が辺AB、BC、CDおよびDAの四辺で構成されるとする。対向基板20では、張出部200aが辺DAの外側に設けられ、素子基板30では、破線で示されるように張出部300aが辺BCの外側に設けられる。
【0043】
ヒーター230は、平面視で図7に示されるように、表示領域5とシール材40との間において枠状に設けられる。ただし、ヒーター230は、辺DAの中点付近においてスリットS1が設けられて、一端と他端とに電気的に分断される。そして、一端は張出部200aにまで延長されて接続部231bになり、他端は同様に延長されて接続部231cになっている。
なお、ヒーター230のうち、接続部231bおよび接続部231cを除いた部分、換言すれば、スリットS1で開いた枠状部分の符号を231aとする。また、接続部231bが第1接続部の一例であり、接続部231cが第2接続部の一例であり、スリットS1が隙間の一例である。
【0044】
このようなヒーター230は、アルミニウム(Al)や、窒化チタン(TiN)、タングステンシリサイド(WSi)などの遮光性および導電層をパターニングした配線膜であり、電気的にみれば一端および他端を有し、一端または他端の一方から他方に電流が流れることによって発熱する。
【0045】
特に図示しないが、走査線駆動回路360は、ヒーター230の枠部231aのうち、辺ABに沿った部分、および、辺CDに沿った部分に重なるように設けられる。すなわち、2つの走査線駆動回路360は、枠部231aのうち、Y軸に沿った両辺部分に重なるように設けられる。データ線駆動回路370は、ヒーター230の枠部231aのうち、辺BCに沿った部分に重なるように設けられる。
走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370が遮光性を有するヒーター230に重なるように設けられることによって、対向基板20から素子基板30に向かって入射する光が、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370を構成するトランジスターに侵入することが抑えられる。これにより、光リークによる走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370の誤動作が防止される。
【0046】
素子基板30には、図8において外形が破線で示され、図8においてハッチングが付された遮光膜330が、平面視でシール材40と表示領域5との間においてスリットS1と重なるように設けられる。
このような遮光膜330は、ヒーター230と同様に、アルミニウムや、窒化チタン、タングステンシリサイドなどの遮光性を有する部材をパターニングしたものである。ただし、遮光膜330は、導電性を有する必要がないので、遮光性を有する有機物や無機物であってもよい。
【0047】
なお、素子基板30には、画素回路38のトランジスター382に、戻り光の侵入によるリークを低減するための遮光膜が設けられる場合がある。この場合、リークを低減するための遮光膜と、スリットS1を隠す遮光膜330とを同一プロセスで形成することができるので、遮光膜330の形成においてプロセスの複雑化を避けることができる。
また、遮光膜330が第1遮光部材の一例であり、ヒーター230が第2遮光部材の一例である。
【0048】
次に、電気光学装置10の断面構造について説明する。
【0049】
図9は、電気光学装置10をE-e線に沿って切断した部分断面図である。E-e線は、図7および図8に示されるように、電気光学装置10を、Y軸に沿って接続部231bを含むように切断するための仮想線である。
【0050】
素子基板30は、基材31に、遮光膜330、駆動回路層34および画素電極32が、この順で設けられる。
基材31は、ガラスや石英などの透明性および絶縁性を有する基板である。遮光膜330は、上述したように遮光性を有する部材のパターニングにより設けられる。駆動回路層34は、詳細には省略するが、走査線36や、データ線37、画素回路38、走査線駆動回路360およびデータ線駆動回路370が設けられる回路層である。画素電極32は、ITOなどの透明性および導電性を有する導電層のパターニングにより設けられる。
なお、素子基板30には、このほかにも配向膜などが設けられるが、説明を省略する。
【0051】
対向基板20は、基材21に、ヒーター230、接続電極251、レンズ膜24および絶縁層25が、この順で設けられる。
基材21は、基材31と同様にガラスや石英などの透明性および絶縁性を有する基板である。ヒーター230は、上述したように遮光性および導電性を有する導電層のパターニングにより設けられる。
【0052】
接続電極251は、接続部231bを保護するために、ITOなどの導電層のパターニングにより、接続部231bに重なるように設けられる。このため、接続電極251は、接続部231bと電気的に接続される。
なお、図9では、接続部231cが示されていないが、接続部231cについても同様に接続電極251が設けられて電気的に接続される。
【0053】
レンズ膜24は、熱処理等によって、画素電極32と一対一に設けられるマイクロレンズを含んだ透明性を有する絶縁膜である。絶縁層25は、レンズ膜24によって生じる起伏を平坦化するための透明性および絶縁性を有する層である。
コモン電極22は、画素電極32と同様に、ITOなどの透明性および導電性を有する導電層である。
【0054】
張出部200aには、レンズ膜24および絶縁層25を開孔する開孔部291が設けられる。この開孔部291によって、FPC基板62の接続前において、接続電極251が露出する。そして、接続部231bは、開孔部291で露出した接続電極251を介してFPC基板62に接続される。
図9では示されていないが、接続部231cにあっては、開孔部291で露出した接続電極251を介してFPC基板63に接続される。
なお、接続電極251は、開孔部291で接続部231b(231c)が露出しないように、接続部231b(231c)を覆い、かつ、平面視で開孔部291よりも広い範囲で設けられる。
【0055】
第1実施形態によれば、ヒーター230の遮光性が表示領域5の額縁として機能する。すなわち、液晶50を加熱するためのヒーター230が表示領域5の額縁と兼用されるので、兼用されない構成と比較して構成の簡易化が図られる。
また、ヒーター230は、平面視でスリットS1により隙間が生じる。このため、ヒーター230の単体では、表示領域5の額縁としては不完全である。ただし、素子基板30に設けられる遮光膜330によってスリットS1が塞がれるので、ヒーター230と遮光膜330とによって表示領域5の額縁が実現される。
ヒーター230にアルミニウムが用いられる場合であっても、開孔部291では、接続電極251で覆われる。このため、FPC基板62、63との接続前に接続部231b、231cにおける腐食を防止することができる。
【0056】
図9では、接続電極251が接続部231b、231cにそれぞれ重なった構造が示されたが、このような構造に限られない。そこで、接続電極251の設け方を図9とは異ならせた第1変形例について説明する。
なお、第1変形例におけるヒーター230および遮光膜330を平面視した形状は、順に図7および図8に示される通りであり、変更がない。
【0057】
図10は、第1実施形態の第1変形例に係る電気光学装置の構造を示す部分断面図であり、図11は、第1変形例における中継電極を示す平面図である。
【0058】
第1変形例では、枠部231aおよび接続部231bを含むヒーター230が導電膜のパターニングにより設けられた後、絶縁層からなるレンズ膜24が形成される。この後、平面視で接続部231b含む範囲において複数のコンタクトホールCtが設けられて、レンズ膜24を含む絶縁層が開孔される。コンタクトホールCtにより接続部231bが露出した状態になる。この状態において、複数のコンタクトホールCtを充填するように中継電極241が設けられる。これにより、中継電極241が接続部231bに電気的に接続される。
なお、中継電極241としては、例えばヒーター230と同様に、アルミニウムや、窒化チタン、タングステンシリサイドなどの導電層のパターニングにより設けられる。また、複数のコンタクトホールCtは、例えば平面視で図11に示されるように規則的なパターンで設けられてもよいし、不規則なパターンで設けられてもよい。
【0059】
第1変形例において、絶縁層25は、レンズ膜24および中継電極241を覆うように設けられる。この後、絶縁層25には、平面視で中継電極241を露出させる開孔部292が設けられる。
そして、第1変形例において、接続電極251は、ITOなどの導電層のパターニングにより、開孔部292において中継電極241に重なるように設けられる。このため、第1変形例において、接続電極251は、中継電極241を介して接続部231bと電気的に接続される。
なお、接続電極251は、コモン電極22とは別プロセスで設けてもよいし、導電層のパターニングによってコモン電極22と接続電極251とを一括して設けてもよい。
【0060】
なお、図10では、接続部231bのみが示されているが、接続部231cについても同様にコンタクトホールCt、中継電極241、開孔部292および接続電極251が設けられて、当該接続電極251が接続部231cに電気的に接続される。
【0061】
第1変形例では、FPC基板62と中継電極241との異方性接着材を用いた接続に際して、ヒーター230の接続部231bに対し、中継電極241および接続電極251が緩衝材として機能する。このため、FPC基板62を熱圧着するに際してのダメージを緩和することができる。また、中継電極241により対向基板20の表面と接続電極251との段差を減らすことができるため、異方性接着材とFPC基板62との圧着マージンを増やせる。このため、中継電極241とFPC基板62との接触面積が減少してしまうおそれを低くすることができる。
また、図9の構成では、開孔部291として、レンズ膜24および絶縁層25を一括して開孔させる必要があるので、比較的深いエッチングが必要になる。これに対し、図10に示される第1変形例では、エッチングが、レンズ膜24を開孔するコンタクトホールCtと、絶縁層25を開孔する開孔部292との2回にわけられる。このため、各エッチング量が、比較的浅くて済むので、エッチングを容易化することができる。
【0062】
ヒータ-230における枠部231aは、X軸に沿った部分の幅と、Y軸に沿った部分の幅とが同一である必要はない。そこで次に、枠部231aにおいて、X軸に沿った部分の幅とY軸に沿った部分の幅とが互いに異なる第2変形例について説明する。
【0063】
図12は、第1実施形態における第2変形例の対向基板20におけるヒーター230の平面形状を示す図である。
X軸は走査線36に沿った軸であり、Y軸はデータ線37に沿った軸である。このため、図に示されるように一般的には、X軸は表示領域5の長手になり、Y軸は表示領域5の短手になる。枠部241aの幅が狭いと抵抗が高くなり、発熱が大きくなる。反対に枠部241aの幅が広いと抵抗が小さくなり、発熱が小さくなる。このため、図に示されるように、X軸に沿った部分の幅を、Y軸に沿った部分の幅よりも狭い構成にすれば、矩形状の表示領域5に対して均一に加熱することができ、表示領域5における光学応答性のばらつきの発生を抑えることができる。
【0064】
なお、枠部241aにおいて、X軸に沿った部分が第1辺の一例であり、枠部241aにおいて、Y軸に沿った部分が第2辺の一例である。また、枠部241aにおいて、X軸に沿った部分の幅とは、当該X軸に直交するY軸に沿った寸法をいい、Y軸に沿った部分の幅とは、当該Y軸に直交するX軸に沿った寸法をいう。
【0065】
次に、第2実施形態に係る電気光学装置10について説明する。第2実施形態では、透明性を有するヒーター膜が表示領域5を加熱する構成である。
【0066】
図13の上欄は、第2実施形態に係る電気光学装置10の対向基板20を示す平面図であり、同図の下欄は、ヒーター230における各要素を説明するための図である。
第2実施形態においてヒーター230は、接続部231b、231c、枠部231d、231eと、ヒーター膜232とに分けられる。
【0067】
第2実施形態における枠部231d、231eは、第1実施形態における枠部231aをスリットS2によって分断されたものである。このため、第2実施形態において、接続部231bおよび枠部231dと、接続部231cおよび枠部231eと、は、ヒーター膜232の存在を無視すれば電気的には非接続である。
【0068】
平面視で矩形状のヒーター膜232は、図13の上欄において外形が破線で示され、図13の下欄においてハッチングが付された領域に設けられる。
ヒーター膜232は、透明性および導電性を有する、例えばITO(酸化インジウムスズ)などの導電層が矩形状にパターニングされたものである。
ヒーター膜232は、枠部231dのうちY軸に沿った部分、および、枠部231eのうちY軸に沿った部分にのみに電気的に接続される。換言すれば、ヒーター膜232は、枠部231dおよび231eのうち、X軸に沿った部分に対しては、局所的に電流が流れるのを防止するため電気的に非接続である。
【0069】
また、素子基板30においては、スリットS1を遮光する遮光膜330に加えて、スリットS2を遮光する遮光膜340が設けられる。詳細には、遮光膜340は、平面視でシール材40と表示領域5との間においてスリットS2と重なるように設けられる。このような遮光膜340は、遮光膜330と同プロセスにより設けられる構成が好ましい。
【0070】
なお、ヒーター膜232は、透明電極の一例である。
また、第2実施形態に係る電気光学装置10の外観は、例えば図4で斜視図が示される第1実施形態と同様である。
【0071】
図14は、第2実施形態に係る電気光学装置10を、図13のE-e線で切断した部分断面図であり、図15は、電気光学装置10を、図13のF-f線で接続部231bを含むようにY軸に沿って切断した部分断面図である。なお、F-f線は、図13に示されるように、電気光学装置10を、X軸に沿って切断するための仮想線である。
【0072】
第2実施形態では、基材21に形成された絶縁層のパターニングによって屈折膜261が平面視で矩形状の表示領域5に重なるように設けられる。屈折膜261が設けられた後に、接続部231b、231c、枠部231dおよび231eが遮光性および導電性を有する導電膜のパターニングによって設けられる。
【0073】
この後、ヒーター膜232が上述したように透明性および導電性を有する導電層のパターニングによって平面視で図13に示されるように設けられる。なお、ヒーター膜232は、上述したように、枠部231dのうち、X軸に沿った部分とは、図14に示されるように電気的に非接続であり、枠部231dのうち、Y軸に沿った部分とは、図15に示されるように電気的に接続される。
【0074】
ヒーター膜232が設けられた後、絶縁層のパターニングによって屈折膜262が平面視で矩形状の表示領域5に重なるように設けられる。この後、接続電極251が設けられる。なお、先に接続電極251を設け、後に屈折膜262を設けてもよい。
以降の図9に示される第1実施形態と同様である。
【0075】
この構成では、ヒーター膜232のうち、光の入射面に、すなわち図において上面に屈折膜261が設けられ、ヒーター膜232うのち、光の出射面に、すなわち図において下面に屈折膜262が設けられる。
なお、例えばヒーター膜232の上面が第1面の一例であり、ヒーター膜232の下面が第2面の一例である。
【0076】
屈折膜261の屈折率は、ヒーター膜232の屈折率と基材21の屈折率との間の値に設定される。例えばヒーター膜232の屈折率が1.80であり、基材21の屈折率が1.45であれば、屈折膜752の屈折率は、それらの間の1.45以上1.80未満の範囲で設定される。また例えばヒーター膜232の屈折率が2.00であり、基材21の屈折率が1.70であれば、屈折膜261の屈折率は、それらの間の1.70以上2.00未満の範囲で設定される。
このように、屈折膜261の屈折率は、基材21の屈折率以上であって、ヒーター膜232の屈折率未満であればよく、好ましくは、1.80以上2.00未満であればよい。
【0077】
屈折膜261が設けられない構成では、ヒーター膜232と基材21とが直接接触することになる。このように接触した構成では、ヒーター膜232の屈折率と基材21の屈折率との差が大きくなって、界面での反射光が多くなる。このため、液晶素子384を通過する光量が少なくなるので、コントラスト比が低下し、表示品位が低下する。
これに対し、本実施形態では、ヒーター膜232と基材21との間に屈折膜261が設けられるので、屈折率の差が小さくなり、界面での反射光が少なくなる。このため、液晶素子384を通過する光量は、屈折膜261が設けられない構成と比較して多くなるので、コントラスト比の低下が抑えられて、表示品位の低下を抑制することができる。
【0078】
ヒーター膜232とレンズ膜24との間に設けられる屈折膜262の屈折率についても屈折膜261と同様であり、ヒーター膜232の屈折率とレンズ膜24の屈折率との間の値に設定される。
なお、屈折膜261、262は、例えばシリコン窒化膜(SiON)や、窒化シリコン(SiN)、アルミナ(Al2O3)などの絶縁性および透明性を有する絶縁層をパターニングすることにより設けられる。
【0079】
第2実施形態では、屈折膜261がヒーター膜232の上面に設けられ、屈折膜262がヒーター膜232の下面に設けられたが、どちらか一方の面にだけに設ける構成であってもよい。一方の面にだけに設ける構成であっても、当該面の界面での反射光が少なくなるので、屈折膜261または262の他方が設けられない構成と比較して、多くなる。
【0080】
第2実施形態においては、特に図示しないが、基材21と屈折膜261との間に絶縁膜を設けてもよい。絶縁膜が設けられる構成では、屈折膜261が当該絶縁膜とヒーター膜232との間に位置する。このため、屈折膜261の屈折率は、当該絶縁膜の屈折率以上であって、ヒーター膜232の屈折率未満であればよい。
【0081】
なお、第2実施形態において、張出部200aにおいてFPC基板62、63が接続される部分を、図10に示される第1実施形態の第1変形例のような構成としてもよい。
【0082】
第2実施形態によれば、ヒーター膜232が枠部231d、231eに電気的に接続されるとともに、当該ヒーター膜232が平面視で表示領域5を覆う。このため、ヒーター膜232による発熱が、第1実施形態と比較して、表示領域5にわたって均等で発生することが可能になるので、表示領域5における発熱ムラを抑えることができる。
また、第2実施形態では、上述したように、屈折膜261、262によってコントラスト比の低下が抑えられて、表示品位の低下を抑制することができる。
【0083】
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下「実施形態等」という)については、以下のような応用、変形が可能である。
対向基板20および素子基板30がシール材40に貼り合わせられた構成に、保護および防塵のための別途の基板を、対向基板20または素子基板30の一方に貼り合わせ、当該別途の基板に、ヒーター230を設ける構成としてもよい。当該別途の基板は透明性および絶縁性を有し、当該別途の基板に設けられるヒーター230については、第1実施形態または第2実施形態において対向基板20に設けられたヒーター230と平面視で同様な形状であればよい。
なお、当該別途の基板が第2基板の一例になり、対向基板20が第3基板の一例になる。
【0084】
<付記>
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0085】
ひとつの態様(態様1)に係る電気光学装置は、第1遮光部材が配置された第1基板と、導電性を有する第2遮光部材が配置された第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置される電気光学層と、を備え、前記第2遮光部材は、前記第2基板の一辺に沿って設けられた第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に沿って延在する第1部分と、前記第1部分と隙間を介して設けられ、前記第2接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に延在する第2部分と、前記第1部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第3部分と、前記第2部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第4部分と、を有し、前記第1遮光部は、前記第1部分と前記第2部分との隙間と重なる位置に配置されている。
この態様によれば、第2遮光部材が、表示領域を区画する額縁と、表示領域を加熱するヒーターとを兼用する。第2遮光部材における隙間では額縁としての機能が失われるが、当該隙間は第1遮光部材と平面視で重なるので、第1遮光部材および第2遮光部材の全体でみれば、額縁として成立することができる。
【0086】
態様1の具体的な態様2に係る電気光学装置では、前記第1接続部及び前記第2接続部と電気的に接続される第1フレキシブル基板を備える。
【0087】
態様2の具体的な態様3に係る電気光学装置は、第2フレキシブル基板を備え、前記第1基板は、平面視で、前記第1接続部および前記第2接続部が設けられる辺と対向する辺であって、前記第2基板の外側に延在し、前記第2フレキシブル基板と電気的に接続される第3接続部を含む。
【0088】
態様2の具体的な態様4に係る電気光学装置では、前記第1フレキシブル基板には、前記第2遮光部材に一定の電圧を印加する配線が設けられている。
【0089】
態様4の具体的な態様5に係る電気光学装置は、温度センサーを有し、前記第2フレキシブル基板の配線には、前記温度センサーの検出値に応じた一定の電圧が印加される。態様8によれば、温度センサーの検出値に応じて電気光学装置の加熱を制御することでができる。
【0090】
態様1の別の具体的な態様6に係る電気光学装置は、前記第2基板において、前記第1基板との対向面に配置された絶縁膜は開孔部を有し、前記第1接続部および前記第2接続部は、前記開孔部に配置される。
【0091】
態様6の別の具体的な態様7に係る電気光学装置は、前記第1接続部および前記第2接続部は、前記開孔部において中継電極で覆われる。
【0092】
態様1の別の具体的な態様8に係る電気光学装置において、前記第2遮光部材における前記枠の形状は、第1方向に沿った第1辺と、前記第1方向と交差する第2方向に沿った第2辺とを含み、前記第1辺の幅と前記第2辺との幅とは異なる。
態様8によれば、矩形の表示領域において、第1方向に沿った加熱と、第2方向に沿った加熱とを揃えることが可能になる。
【0093】
態様8の具体的な態様9に係る電気光学装置において、前記第1方向は、前記第2基板の短辺に沿い、前記第2方向は、前記第2基板の長辺に沿い、前記第1辺の幅は、前記第2辺との幅よりも広い。
【0094】
態様1の別の具体的な態様10に係る電気光学装置において、前記第2遮光部材は、前記表示領域と平面視で重なる透明電極と、前記第2基板の厚さ方向と交差する前記透明電極の第1面と第2面との少なくとも一方に設けられる屈折膜と、を含む。態様10によれば、透明電極が表示領域をムラなく加熱することができる。
【0095】
態様10の具体的な態様11に係る電気光学装置では、前記屈折膜が、前記透明電極と絶縁層との間に配置され、前記絶縁層の屈折率は、1.45以上1.70未満であり、前記屈折膜の屈折率は、1.50以上1.80未満であり、前記透明電極の屈折率は、1.80以上2.00未満である。態様11によれば、透明電極による透過率の低下を抑えることができる。
【0096】
別の態様12に係る電気光学装置は、第1遮光部材を含む第1基板と、前記第1基板と対向して配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置される電気光学層と、前記第1基板と前記第2基板とのいずれか一方の基板において、前記電気光学層と対向する面と反対側の面に配置され、導電性を有する第2遮光部材が配置された第3基板と、を備え、前記第2遮光部材は、前記第2基板の一辺に沿って設けられた第1接続部及び第2接続部と、前記第1接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に沿って延在する第1部分と、前記第1部分と隙間を介して設けられ、前記第2接続部から前記第2基板の一辺と交差する方向に延在する第2部分と、前記第1部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第3部分と、前記第2部分から前記第2基板の一辺に沿って前記表示領域の外側を延在する第4部分と、を有し、前記第1遮光部は、前記第1部分と前記第2部分との隙間と重なる位置に配置されている。
【0097】
態様13に係る電子機器は、態様1乃至12のいずれかに係る電気光学装置を有する。
【符号の説明】
【0098】
10…電気光学装置、15…表示制御回路、20…対向基板、22…コモン電極、30…素子基板、32…画素電極、40…シール材、50…液晶、 61、62、63…FPC基板、230…ヒーター230、231b、231c…接続部、232…ヒーター膜。
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