(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078702
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】印刷方法およびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20240604BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240604BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240604BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20240604BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B05C5/00 101
B05C13/02
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191197
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳織
(72)【発明者】
【氏名】須貝 圭吾
【テーマコード(参考)】
3C707
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS12
3C707CX01
3C707HS27
3C707HS29
4F035AA03
4F035BA22
4F035BB06
4F035BC02
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA24
4F041BA27
4F041BA38
4F042AA01
4F042AB00
4F042BA08
4F042DF01
4F042DF15
4F042DF30
4F042DH09
4F042ED03
4F042ED10
(57)【要約】
【課題】複数のノズル列を有するインク吐出ヘッドが揺れを伴いながら印刷動作を行う場合でも、印刷不良を少なく抑えられる印刷方法およびロボットシステムを提供すること。
【解決手段】インク吐出ヘッドと、ロボットアームおよびリニアステージを備えるロボットと、を用い、ロボットアームがインク吐出ヘッドを走査させながら印刷を行う印刷方法であって、ロボットアームの基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態で、第1ノズル列からインクを吐出して第1印刷を行う工程と、第2ノズル列が第1印刷のときの第1ノズル列と同じ位置に配置され、かつ、ロボットアームの先端の相対位置が前記所定位置になるように、リニアステージがインク吐出ヘッドを対象物に対して相対的に移動させる工程と、第1印刷のときと同じ走査軌道でロボットアームがインク吐出ヘッドを対象物に対して相対的に走査させながら第2印刷を行う工程と、を有する印刷方法。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルで構成されている第1ノズル列および第2ノズル列を有するインク吐出ヘッドと、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列が並んでいる方向を走査方向とするとき、前記インク吐出ヘッドを対象物に対して前記走査方向に走査させるロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるリニアステージを備えるロボットと、
を用い、
前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを走査させながら、前記インク吐出ヘッドがインクを吐出し、前記対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記ロボットアームの基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態で、前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第1ノズル列からインクを吐出して、前記対象物に第1印刷を行う第1印刷工程と、
前記第1印刷工程の後、前記第2ノズル列が前記第1印刷のときの前記第1ノズル列と同じ位置に配置され、かつ、前記ロボットアームの前記先端の相対位置が前記所定位置になるように、前記リニアステージが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるヘッド位置調整工程と、
前記ヘッド位置調整工程の後、前記第1印刷のときと同じ走査軌道で前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第2ノズル列からインクを吐出して、前記対象物に第2印刷を行う第2印刷工程と、
を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記リニアステージは、
基部と、
前記基部に対して移動するステージと、
前記基部に対して前記ステージを前記走査方向に移動させる移動機構と、
を有する請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記移動機構は、圧電アクチュエーターを有する請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記ロボットアームは、前記基部に接続され、
前記インク吐出ヘッドは、前記ステージに取り付けられている請求項2または3に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記リニアステージは、前記ロボットアームから離れて配置され、
前記対象物は、前記ステージに保持されている請求項2または3に記載の印刷方法。
【請求項6】
インクを吐出する複数のノズルで構成されている第1ノズル列および第2ノズル列を有するインク吐出ヘッドと、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列が並んでいる方向を走査方向とするとき、前記インク吐出ヘッドを対象物に対して前記走査方向に走査させるロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるリニアステージを備えるロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ロボットアームの基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態から、前記ロボットアームに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第1ノズル列からインクを吐出させ、前記対象物の目標位置に対する第1印刷を行わせる第1印刷動作と、
前記第1印刷動作の後、前記第2ノズル列を前記第1印刷のときの前記第1ノズル列と同じ位置に配置させ、かつ、前記ロボットアームの前記先端の相対位置が前記所定位置になるように、前記リニアステージに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるヘッド位置調整動作と、
前記ヘッド位置調整動作の後、前記第1印刷のときと同じ走査軌道で前記ロボットアームに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第2ノズル列からインクを吐出させ、前記対象物の前記目標位置に対する第2印刷を行わせる第2印刷動作と、
を実行することを特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法およびロボットシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の可動部の動作を組み合わせてインクジェットプリントヘッドを移動させ、立体物の表面に印刷を行う立体物印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、三次元的な対象物に印刷を行うシステムであって、ジョイントアーム・ロボットと、印刷ヘッドと、これらの間に配置されたピエゾアクチュエーターと、印刷点の位置を把握する検出器と、を備えるシステムが開示されている。ロボットは、対象物の表面に沿って印刷ヘッドを移動させるように構成されている。これにより、互いに隣り合う印刷軌道を含むマルチパスで印刷を行うことができる。
【0004】
また、特許文献1には、ピエゾアクチュエーターが、ロボットに対して印刷ヘッドを相対運動させることが開示されている。そして、特許文献1には、このシステムを用いて互いに隣り合う2つの印刷軌道で印刷ヘッドを移動させながらマルチパスで印刷を行うとき、第1の印刷軌道の印刷点の実際位置を把握すること、目標位置と実際位置とのずれを算出すること、および、第2の印刷軌道において前記ずれを解消するように補整運動を行わせること、が開示されている。これにより、印刷パス同士のずれが抑えられ、エラーのない像を印刷することができる。
【0005】
一方、ロボットには、動作に伴って振動が発生する。この振動は、インクジェットプリントヘッドを所定の時間周期で揺らす原因となる。このため、例えば、印刷対象物に対してインクジェットプリントヘッドを直線状に走査させながらインクを吐出した場合でも、印刷される画像は、所定の距離周期のうねりを伴うものとなる。ただし、このうねりは、ヘッド全体を揺らすものであるため、局所的な画質低下は少ない。したがって、画像のうねりを許容したり、または、別の手段を用いてうねりを補正したりしながら使用する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、インクジェットプリントヘッドが複数のノズル列を有する場合、上記のうねりが、局所的な画質低下の原因となる。例えば、2つのノズル列から異なる色のインクを吐出する場合、色ごとに異なるノズル列からインクが吐出される。ノズル列は、ヘッド内で互いに離れた位置に配置される。このため、色ごとに、ノズル列とロボットとの位置関係が異なる。そうすると、印刷対象物に対する目的の位置にノズル列を移動させたとき、色ごとに、ロボットの姿勢が異なる。その結果、色ごとに、うねりの位相が異なるという現象が生じる。この現象は、インクの着弾位置が本来の位置からずれる原因となる。その結果、ドットの位置ずれ、色ムラ、色ずれ等の印刷不良が発生する。
【0008】
したがって、複数のノズル列を有するインクジェットプリントヘッドが揺れを伴いながら印刷動作を行う場合でも、印刷不良を少なく抑えられる印刷方法を実現することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の適用例に係る印刷方法は、
インクを吐出する複数のノズルで構成されている第1ノズル列および第2ノズル列を有するインク吐出ヘッドと、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列が並んでいる方向を走査方向とするとき、前記インク吐出ヘッドを対象物に対して前記走査方向に走査させるロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるリニアステージを備えるロボットと、
を用い、
前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを走査させながら、前記インク吐出ヘッドがインクを吐出し、前記対象物に印刷を行う印刷方法であって、
前記ロボットアームの基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態で、前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第1ノズル列からインクを吐出して、前記対象物に第1印刷を行う第1印刷工程と、
前記第1印刷工程の後、前記第2ノズル列が前記第1印刷のときの前記第1ノズル列と同じ位置に配置され、かつ、前記ロボットアームの前記先端の相対位置が前記所定位置になるように、前記リニアステージが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるヘッド位置調整工程と、
前記ヘッド位置調整工程の後、前記第1印刷のときと同じ走査軌道で前記ロボットアームが前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第2ノズル列からインクを吐出して、前記対象物に第2印刷を行う第2印刷工程と、
を有する。
【0010】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
インクを吐出する複数のノズルで構成されている第1ノズル列および第2ノズル列を有するインク吐出ヘッドと、
前記第1ノズル列および前記第2ノズル列が並んでいる方向を走査方向とするとき、前記インク吐出ヘッドを対象物に対して前記走査方向に走査させるロボットアーム、および、前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるリニアステージを備えるロボットと、
前記ロボットの動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記ロボットアームの基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態から、前記ロボットアームに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第1ノズル列からインクを吐出させ、前記対象物の目標位置に対する第1印刷を行わせる第1印刷動作と、
前記第1印刷動作の後、前記第2ノズル列を前記第1印刷のときの前記第1ノズル列と同じ位置に配置させ、かつ、前記ロボットアームの前記先端の相対位置が前記所定位置になるように、前記リニアステージに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に移動させるヘッド位置調整動作と、
前記ヘッド位置調整動作の後、前記第1印刷のときと同じ走査軌道で前記ロボットアームに前記インク吐出ヘッドを前記対象物に対して相対的に走査させながら、前記第2ノズル列からインクを吐出させ、前記対象物の前記目標位置に対する第2印刷を行わせる第2印刷動作と、
を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る印刷装置(ロボットシステム)の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す印刷装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図1に示すリニアステージおよび液体吐出ヘッド(インク吐出ヘッド)を示す平面図である。
【
図4】
図3に示す液体吐出ヘッドの部分拡大図である。
【
図5】第1実施形態に係る印刷方法が解決しようとする課題を説明するため、従来技術としての印刷装置の一部を模式的に示す側面図である。
【
図6】
図5に示す印刷装置を用いて作成された印刷パターンの例を示す平面図である。
【
図7】
図6に示す印刷パターンを形成するのに用いられた液体吐出ヘッドのノズルの配置を示す平面図である。
【
図8】
図6に示す印刷パターンを形成する過程で、対象物の目標位置に対して、1回目から4回目の走査でドットdYB、dYA、dCB、dCAを順次形成する瞬間の、液体吐出ヘッドの位置およびロボットアームの位置を模式的に示す図である。
【
図9】
図1に示す印刷装置の一部を模式的に示す側面図である。
【
図10】
図9に示す印刷装置を用いて作成された印刷パターンの例を示す平面図である。
【
図11】第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
【
図12】
図10に示す印刷パターンを形成する過程で、対象物の目標位置に対して、1回目から4回目の走査でドットdYB、dYA、dCB、dCAを順次形成する瞬間の、液体吐出ヘッドの位置およびロボットアームの位置を模式的に示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る印刷方法に用いる印刷装置の一部を模式的に示す側面図である。
【
図14】第2実施形態に係る印刷方法に用いる印刷装置の一部を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の印刷方法およびロボットシステムの好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る印刷方法およびロボットシステムについて説明する。
【0014】
1.1.印刷装置
図1は、第1実施形態に係る印刷装置(ロボットシステム)100の全体構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す印刷装置100の機能ブロック図である。
図3は、
図1に示すリニアステージ300および液体吐出ヘッド(インク吐出ヘッド)400を示す平面図である。
【0015】
図1に示す印刷装置100は、ロボット200と、液体吐出ヘッド400と、対象物Qを支持および固定する固定部材700と、制御装置900と、を備える。
【0016】
ロボット200は、6つの駆動軸を有する6軸の垂直多関節ロボットである。ロボット200は、床に固定された基台210と、基台210に接続されたロボットアーム220と、ロボットアーム220に取り付けられたリニアステージ300と、を有する。なお、ロボット200が有する駆動軸は、6つより少なくても多くてもよい。また、ロボット200は、水平多関節ロボットであってもよいし、複数のロボットアームを有する多腕ロボットであってもよい。
【0017】
ロボットアーム220は、複数のアーム221、222、223、224、225、226が回動自在に連結されたロボティックアームであり、6つの関節J1~J6を備えている。このうち、関節J2、J3、J5は、曲げ関節であり、関節J1、J4、J6は、ねじり関節である。また、ロボットアーム220には、
図2に示すアーム駆動機構230が設けられている。アーム駆動機構230は、
図1に示す関節J1、J2、J3、J4、J5、J6にそれぞれ設けられたモーターMおよびエンコーダーEで構成されている。モーターMは、関節J1、J2、J3、J4、J5、J6をそれぞれ駆動する駆動源である。エンコーダーEは、モーターMの回転量(アームの回動角)を検出する。
【0018】
アーム226の先端部には、
図3に示すように、リニアステージ300を介して液体吐出ヘッド400が取り付けられている。
図3に示す液体吐出ヘッド400は、図示しないインク室およびインク室の壁面に配置された振動板と、インク室に繋がる複数のノズル411と、を有し、振動板が振動することによりインク室内のインクがノズル411から吐出する構成となっている。
【0019】
図4は、
図3に示す液体吐出ヘッド400の部分拡大図である。
図4に示すように、ノズル411は、X軸に沿って等間隔に並んでなるノズル列を構成している。
図4に示す液体吐出ヘッド400は、一例として、第1ノズル列431および第2ノズル列432を有する。第1ノズル列431および第2ノズル列432は、所定の間隔でY軸に沿って並んでいる。ただし、液体吐出ヘッド400の構成は、特に限定されない。例えば、液体吐出ヘッド400は、3つ以上のノズル列を有していてもよい。また、
図4に示す第1ノズル列431および第2ノズル列432は、X軸方向におけるノズル411の位置が互いに対応している(X軸方向の位置が揃っている)が、互いにずれていてもよい。例えば、第1ノズル列431を構成するノズル411同士の中間に対応して、第2ノズル列432を構成するノズル411が配置されていてもよい。
【0020】
第1ノズル列431から吐出されるインク(液体)と第2ノズル列432から吐出されるインク(液体)とは、互いに同じ種類のインクであってもよいし、互いに異なる種類のインクであってもよい。同じ種類とは、含まれる成分、例えば、顔料、染料のような色材、金属粉末、セラミック粉末、樹脂粉末のような粉末等の成分が、互いに同じであることをいう。異なる種類とは、これらの成分が互いに異なることをいう。
【0021】
また、印刷装置100は、プリントコントローラー420を備える。液体吐出ヘッド400は、
図2に示すように、プリントコントローラー420に接続されている。
図1の例では、プリントコントローラー420が液体吐出ヘッド400と同様、リニアステージ300を介してアーム226の先端部に取り付けられている。プリントコントローラー420は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、液体吐出ヘッド400の動作を制御する。
【0022】
プリントコントローラー420は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、プリントコントローラー420は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。また、プリントコントローラー420は、制御装置900に組み込まれていてもよい。
【0023】
リニアステージ300は、
図3に示すように、アーム226に接続された基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を移動させる移動機構330と、を有する。
図3に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸としたとき、ステージ320は、基部310に対してY軸に沿う方向に移動可能である。ステージ320は、図示しないリニアガイドによってY軸方向に直動案内されており、滑らかに移動することができる。そして、液体吐出ヘッド400は、ステージ320に取り付けられている。このようなリニアステージ300は、小型かつ軽量であるにもかかわらず、ロボットアーム220の動作とは独立して液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的にかつ高精度に移動させることができる。このため、本実施形態のように、ロボットアーム220に対する液体吐出ヘッド400の相対的な位置を変えた場合でも、ロボットアーム220の動作に影響が及びにくい。
【0024】
移動機構330は、ステージ320を基部310に対してY軸に沿う方向に移動させる。移動機構330は、駆動源として圧電アクチュエーター340を有する。圧電アクチュエーター340は、圧電素子の伸縮を利用して振動し、その振動をステージ320に伝達することによって移動させる。これにより、リニアステージ300のさらなる小型化および軽量化を図ることができる。また、リニアステージ300の駆動精度が向上する。さらに、圧電アクチュエーター340は、停止時の保持トルクが大きいため、ブレーキを追加する必要がない点、および、停止時のステージ320の位置安定性が高い点でも有用である。なお、駆動源には、圧電アクチュエーター340以外の機構、例えば、ラック・アンド・ピニオンギアと回転モーターとを組み合わせた機構、ボールネジと回転モーターとを組み合わせた機構等が用いられてもよい。
【0025】
また、印刷装置100は、ロボットコントローラー240を備える。モーターMおよびエンコーダーEは、ロボットコントローラー240に接続されている。ロボットコントローラー240は、制御装置900から出力される制御信号に基づいて、ロボット200の動作を制御する。
【0026】
ロボットコントローラー240は、機能部として、アーム制御部242、リニアステージコントローラー244、および、記憶部246を有する。
【0027】
アーム制御部242は、アーム駆動機構230の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220を目的とする姿勢に制御する。
【0028】
リニアステージコントローラー244は、リニアステージ300の動作を制御する制御信号を出力することにより、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を目的とする位置に移動させる。その結果、固定部材700に固定されている対象物Qに対して液体吐出ヘッド400を相対的に移動させる。なお、リニアステージコントローラー244は、ロボットコントローラー240から独立していてもよい。
【0029】
記憶部246は、ロボットコントローラー240の動作に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0030】
ロボットコントローラー240は、例えば、1個以上のCPUのようなプロセッサー、メモリー、外部インターフェース等を含む。なお、ロボットコントローラー240は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでいてもよい。
【0031】
制御装置900は、ロボットコントローラー240およびプリントコントローラー420の動作を制御して、対象物Qに対する印刷を実行させる。制御装置900は、機能部として、印刷制御部910、および、記憶部930を有する。印刷制御部910は、印刷データ生成部912、および、移動量設定部914を含む。
【0032】
印刷データ生成部912は、印刷データを生成し、ロボットコントローラー240およびプリントコントローラー420に出力する。
【0033】
移動量設定部914は、印刷データおよび液体吐出ヘッド400の仕様情報等に基づいて、リニアステージ300による液体吐出ヘッド400の相対的な移動量を設定する。そして、設定した移動量を、リニアステージコントローラー244に出力する。
【0034】
記憶部930は、制御装置900の動作に必要なプログラム、プログラムの実行に必要なデータ等を格納する。
【0035】
制御装置900は、例えば、コンピューターで構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することにより、前述した機能を実現する。
【0036】
1.2.印刷方法
1.2.1.本実施形態が解決しようとする課題
まず、第1実施形態に係る印刷方法の説明に先立ち、この印刷方法が解決しようとする課題について説明する。
【0037】
図5は、第1実施形態に係る印刷方法が解決しようとする課題を説明するため、従来技術としての印刷装置100Xの一部を模式的に示す側面図である。
図6は、
図5に示す印刷装置100Xを用いて作成された印刷パターンPXの例を示す平面図である。
図7は、
図6に示す印刷パターンPXを形成するのに用いられた液体吐出ヘッド400のノズル411の配置を示す平面図である。
【0038】
図5に示す印刷装置100Xは、ロボットアーム220および液体吐出ヘッド400を備える。印刷装置100Xは、リニアステージ300が省略されていること以外、前述した印刷装置100と同様である。なお、
図5では、Y軸方向に8つのノズル列が並んでなる液体吐出ヘッド400を図示している。また、
図5では、8つのノズル列のうちの2つを第1ノズル列431および第2ノズル列432としている。
【0039】
前述した第1実施形態に係るロボットシステム(印刷装置100)が備えるリニアステージ300は、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を目的とする位置に移動させる機能を有している。これに対し、
図5に示す印刷装置100Xは、リニアステージ300を備えていない。このため、
図5に示す第1ノズル列431からインクを吐出する第1印刷、および、第2ノズル列432からインクを吐出する第2印刷を、同じ目標位置を狙って行ったとしても、ドットの位置ずれ、色ムラ、色ずれ等の印刷不良が発生する。本明細書において、ドットとは、ノズル411から吐出されたインクが対象物Qに着弾して形成される点状のインク痕である。このような印刷不良は、次の2つの原因(a)、(b)によって発生すると考えられる。
【0040】
(a)ロボットアーム220の振動により、液体吐出ヘッド400に揺れが生じる
(b)目標位置に第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、目標位置に第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、が異なるため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第2印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、が異なる
【0041】
原因(a)は、
図6に示すように、印刷パターンPXのうねりの原因となる。印刷パターンPXは、ドットの集合体で構成された印刷結果である。うねりとは、本来は帯状(長方形)になるはずの印刷パターンPXが、所定の距離周期を持って振動している状態を指す。
【0042】
また、
図6には、対象物Qの印刷面に引いた格子状の基準線と、その上に印刷されている印刷パターンPXと、が図示されている。
図6に示す基準線は、走査方向D1に平行に延在し、改行方向D2に等間隔で並ぶ直線と、改行方向D2に平行に延在し、走査方向D1に等間隔で並ぶ直線と、で構成されている。そして、基準線の内側には、正方形の格子LAが形成されている。この格子LAは、うねりがない場合にドットが配置されるはずの位置を表している。
【0043】
また、走査方向D1に延在し、改行方向D2に並ぶ格子LAの列を、A列またはB列とする。
図6には、それぞれ複数のA列およびB列が設けられ、これらは、改行方向D2において交互に並んでいる。
【0044】
図6に示す印刷パターンPXを構成するドットは、説明の便宜のため、ドットdYA、dYB、dCA、dCBの4種類に分かれている。ドットdYAは、A列に配置されるはずのイエロー(Y)のドットであり、ドットdYBは、B列に配置されるはずのイエロー(Y)のドットであり、ドットdCAは、A列に配置されるはずのシアン(C)のドットであり、ドットdCBは、B列に配置されるはずのシアン(C)のドットである。これらのドットdYA、dYB、dCA、dCBは、それぞれ、走査方向D1に沿って所定の個数連なることにより、ドット列を形成している。
【0045】
このような印刷パターンPXは、
図7に示す液体吐出ヘッド400から吐出されたインクで形成されている。
【0046】
図7に示す液体吐出ヘッド400は、ノズル列の数、ノズル411の配置等が、
図3に示す液体吐出ヘッド400とは異なっている例である。
【0047】
図7に示す液体吐出ヘッド400は、ノズル列431A、ノズル列431B、ノズル列432A、ノズル列432B、ノズル列433A、ノズル列433B、ノズル列434Aおよびノズル列434Bを有する。ノズル列431Aおよびノズル列431Bは、ノズル411の数が同じであるものの、X軸方向の位置が、ノズル411のピッチの半分ずれている。ノズル列432Aおよびノズル列432B、ノズル列433Aおよびノズル列433B、ならびに、ノズル列434Aおよびノズル列434Bにおいても、同様である。
【0048】
そして、ノズル列431Aおよびノズル列431Bからは、イエロー(Y)のインクが吐出され、ノズル列432Aおよびノズル列432Bからは、マゼンタ(M)のインクが吐出され、ノズル列433Aおよびノズル列433Bからは、ブラック(K)のインクが吐出され、ノズル列434Aおよびノズル列434Bからは、シアン(C)のインクが吐出されるようになっている。
【0049】
液体吐出ヘッド400が有するノズル列の数は、特に限定されず、3~7であっても、9以上であってもよい。
【0050】
前述した
図6に示す印刷パターンPXは、液体吐出ヘッド400を次のように4回走査して形成されている。
【0051】
1回目の走査では、ノズル列431Bからイエローインクが吐出され、ドットdYBが形成される。
【0052】
2回目の走査では、ノズル列431Aからイエローインクが吐出され、ドットdYAが形成される。
【0053】
3回目の走査では、ノズル列434Bからシアンインクが吐出され、ドットdCBが形成される。
【0054】
4回目の走査では、ノズル列434Aからシアンインクが吐出され、ドットdCAが形成される。
【0055】
図8は、
図6に示す印刷パターンPXを形成する過程で、対象物Qの目標位置TPに対して、1回目から4回目の走査でドットdYB、dYA、dCB、dCAを順次形成する瞬間の、液体吐出ヘッド400の位置およびロボットアーム220の位置を模式的に示す図である。
【0056】
図8に示すように、目標位置TPに対してドットdYB、dYA、dCB、dCAを形成する場合、液体吐出ヘッド400の位置およびロボットアーム220の位置が異なる。つまり、
図8では、1回目の走査から4回目の走査にかけて、固定部材700により固定されている対象物Qに対し、ロボットアーム220の先端位置が徐々にずれている。このため、1回目から4回目の各走査において、ロボットアーム220の姿勢もそれぞれ異なっており、液体吐出ヘッド400の揺れの位相もそれぞれ異なっている。
【0057】
このような揺れの位相の相違が、
図6に示す、ドットdYBで構成されるドット列の揺れの位相と、ドットdYAで構成されるドット列の揺れの位相と、を異ならせる原因となっていることがわかる。したがって、前述した原因(b)は、
図8を用いて説明できる。
【0058】
そして、前述した原因(a)、(b)は、走査ごとのドットの配置がずれる原因となるため、様々な印刷不良をもたらす。
【0059】
例えば、
図6に印刷不良NG1として示すドットの位置ずれや、印刷不良NG2として示す色ムラが生じる。ドットの位置ずれは、単色の濃度差で形成される画像に単色ズレを生じさせ、画質の低下を招く。また、色ムラは、ドット同士の重なり幅のずれが大きくなって、下地が広く見える部分が生じた結果、認識される色の濃度にムラが生じた状態をいう。
【0060】
また、
図6に印刷不良NG3は、ドットdYB、dYAで構成されるパターンと、ドットdCB、dCAで構成されるパターンと、のつなぎ目がずれる不良である。このような不良は、色ズレともいう。
【0061】
1.2.2.本実施形態に係る印刷方法の構成
上述した課題に鑑み、本発明者は、液体吐出ヘッド400に揺れがあっても、印刷不良の発生を抑制する手段について、鋭意検討を行った。そして、ノズル411からインクを吐出するタイミングで、ノズル411の位置に応じて液体吐出ヘッド400の位置を調整することにより、揺れの位相のずれを抑制し、印刷不良の発生を抑制可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0062】
図9は、
図1に示す印刷装置100の一部を模式的に示す側面図である。
図10は、
図9に示す印刷装置100を用いて作成された印刷パターンPの例を示す平面図である。
【0063】
図9に示す印刷装置100は、前述したように、ロボットアーム220、リニアステージ300および液体吐出ヘッド400を備える。
図9に示すリニアステージ300は、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を目的とする位置に移動させる。つまり、結果的に、固定部材700により固定されている対象物Qに対して液体吐出ヘッド400を相対的に移動させる。これにより、
図10に示す印刷パターンPは、
図6と同様のうねりを持つパターンとなるが、印刷不良NG1~NG3の発生は抑制されている。
【0064】
以下、第1実施形態に係る印刷方法の各工程について説明する。なお、以下の説明では、前述した印刷装置100を用いた印刷方法を例に説明する。
【0065】
図11は、第1実施形態に係る印刷方法を説明するためのフローチャートである。
図12は、
図10に示す印刷パターンPを形成する過程で、対象物Qの目標位置TPに対して、1回目から4回目の走査でドットdYB、dYA、dCB、dCAを順次形成する瞬間の、液体吐出ヘッド400の位置およびロボットアーム220の位置を模式的に示す図である。
【0066】
図11に示す印刷方法は、1回目の走査S102(第1印刷工程)と、2回目の走査に向けたヘッド位置の調整S104(ヘッド位置調整工程)と、2回目の走査S106(第2印刷工程)と、3回目の走査に向けたヘッド位置の調整S108(ヘッド位置調整工程)と、3回目の走査S110(第2印刷工程)と、4回目の走査に向けたヘッド位置の調整S112(ヘッド位置調整工程)と、4回目の走査S114(第2印刷工程)と、を有する。
【0067】
1.2.2.1.1回目の走査(第1印刷工程)
1回目の走査S102では、液体吐出ヘッド400の1回目の走査を行い、対象物Qに第1印刷を行う。そして、1回目の走査S102では、ノズル列431Bからイエローインクを吐出する。このとき、
図12に示す対象物Qの目標位置TPに対してドットdYBを形成する瞬間を見ると、ノズル列431Bは、目標位置TPの真上に位置している。また、この瞬間では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置は、
図12に示す所定位置になっている。なお、
図12では、図示の便宜上、ロボットアーム220の基端は図示していない。制御装置900は、この所定位置を記憶する。
【0068】
そして、この状態から、所定の走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる1回目の走査を行いながら、ノズル列431Bからイエローインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdYBからなるドット列を形成する第1印刷を行う。
【0069】
1.2.2.2.2回目の走査に向けたヘッド位置の調整(ヘッド位置調整工程)
2回目の走査に向けたヘッド位置の調整S104では、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400の位置を調整する。具体的には、
図12に示す目標位置TPの真上にノズル列431Aが配置されるように、かつ、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査S102で記憶した所定位置になるように、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400を移動させる。つまり、対象物Qから見ると、リニアステージ300は、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。そうすると、本実施形態では、液体吐出ヘッド400とロボットアーム220との位置関係を、第1印刷時から変えることができる。具体的には、ノズル列431Aを、第1印刷時のノズル列431Bと同じ位置に配置した状態で、ベース座標系におけるロボットアーム220の先端の位置を第1印刷時と同じにする。その結果、第1印刷で使用したノズル列431Bとは異なるノズル列431Aを目標位置TPの真上に配置したにもかかわらず、ロボットアーム220の姿勢を、第1印刷のときと同じ姿勢にすることができる。
【0070】
1.2.2.3.2回目の走査(第2印刷工程)
2回目の走査S106では、液体吐出ヘッド400の2回目の走査を行い、対象物Qに第2印刷を行う。そして、2回目の走査S106では、ノズル列431Aからイエローインクを吐出する。このとき、
図12に示す対象物Qの目標位置TPに対してドットdYAを形成する瞬間を見ると、ノズル列431Aは、目標位置TPの真上に位置している。また、この瞬間では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査と同じ位置になっている。
【0071】
そして、この状態から、第1印刷のときと同じ走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる2回目の走査を行いながら、ノズル列431Aからイエローインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdYAからなるドット列を形成する第2印刷を行う。
【0072】
そうすると、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、を同じにすることができる。つまり、1回目の走査の最中、および、2回目の走査の最中で、ロボットアーム220の姿勢は、互いに揃っている。このため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第2印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。その結果、前述した印刷不良NG1、NG2の発生を抑制することができる。
【0073】
1.2.2.4.3回目の走査に向けたヘッド位置の調整(ヘッド位置調整工程)
3回目の走査に向けたヘッド位置の調整S108では、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400の位置を調整する。具体的には、
図12に示す目標位置TPの真上にノズル列434Bが配置されるように、かつ、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査S102で記憶した所定位置になるように、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400を移動させる。その結果、第1印刷で使用したノズル列431Bとは異なるノズル列434Bを目標位置TPの真上に配置したにもかかわらず、ロボットアーム220の姿勢を、第1印刷のときと同じ姿勢にすることができる。
【0074】
1.2.2.5.3回目の走査(第2印刷工程)
3回目の走査S110では、液体吐出ヘッド400の3回目の走査を行い、対象物Qに第3印刷を行う。そして、3回目の走査S110では、ノズル列434Bからシアンインクを吐出する。このとき、
図12に示す対象物Qの目標位置TPに対してドットdCBを形成する瞬間を見ると、ノズル列434Bは、目標位置TPの真上に位置している。また、この瞬間では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査と同じ位置になっている。
【0075】
そして、この状態から、第1印刷のときと同じ走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる3回目の走査を行いながら、ノズル列434Bからシアンインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdCBからなるドット列を形成する第3印刷を行う。
【0076】
そうすると、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第3印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、を同じにすることができる。このため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第3印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。その結果、前述した印刷不良NG3の発生を抑制することができる。
【0077】
1.2.2.6.4回目の走査に向けたヘッド位置の調整(ヘッド位置調整工程)
4回目の走査に向けたヘッド位置の調整S112では、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400の位置を調整する。具体的には、
図12に示す目標位置TPの真上にノズル列434Aが配置されるように、かつ、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査S102で記憶した所定位置になるように、リニアステージ300を動作させ、液体吐出ヘッド400を移動させる。その結果、第1印刷のときとは異なるノズル列434Bを、目標位置TPの真上に配置したにもかかわらず、ロボットアーム220の姿勢は、第1印刷のときと同じ姿勢にすることができる。
【0078】
1.2.2.7.4回目の走査(第2印刷工程)
4回目の走査S114では、液体吐出ヘッド400の4回目の走査を行い、対象物Qに第4印刷を行う。そして、4回目の走査S114では、ノズル列434Aからシアンインクを吐出する。このとき、
図12に示す対象物Qの目標位置TPに対してドットdCAを形成する瞬間を見ると、ノズル列434Aは、目標位置TPの真上に位置している。また、この瞬間では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が、1回目の走査と同じ位置になっている。
【0079】
そして、この状態から、第1印刷のときと同じ走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる4回目の走査を行いながら、ノズル列434Aからシアンインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdCAからなるドット列を形成する第4印刷を行う。
【0080】
そうすると、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第4印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、を同じにすることができる。このため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第4印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。その結果、前述した印刷不良NG3の発生を抑制することができる。
【0081】
以上のようにして、液体吐出ヘッド400が揺れを伴いながら印刷動作を行う場合でも、リニアステージ300を適切に動作させることで、印刷不良NG1~NG3の発生を抑制することができる。
【0082】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る印刷方法およびロボットシステムについて説明する。
【0083】
図13および
図14は、それぞれ、第2実施形態に係る印刷方法に用いる印刷装置の一部を模式的に示す側面図である。
【0084】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図13および
図14において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0085】
第2実施形態に係る印刷方法は、リニアステージ300がロボットアーム220から離れた位置に配置されていること以外、第1実施形態に係る印刷方法と同様である。
【0086】
前述した第1実施形態では、リニアステージ300がロボットアーム220に接続されている。これに対し、本実施形態では、リニアステージ300が固定部材700に固定されている。そして、対象物Qは、リニアステージ300に保持されている。つまり、対象物Qと固定部材700との間にリニアステージ300が配置されている。
【0087】
このような第2実施形態に係る印刷方法でも、第1実施形態に係る印刷方法と同様の効果が得られる。
【0088】
以下、第2実施形態に係る印刷方法の各工程について説明する。なお、以下の説明では、
図13および
図14に示す印刷装置100を用いた印刷方法を例に説明するが、印刷方法に用いる印刷装置は、これに限定されない。
【0089】
2.1.1回目の走査(第1印刷工程)
1回目の走査S102では、ノズル列431Bは、目標位置TPの真上に位置している。また、この瞬間では、ロボットアーム220の先端の相対位置は、
図13に示す所定位置になっている。
【0090】
そして、この状態から、所定の走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる1回目の走査を行いながら、ノズル列431Bからイエローインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdYBからなるドット列を形成する第1印刷を行う。
【0091】
2.2.2回目の走査に向けたヘッド位置の調整(ヘッド位置調整工程)
2回目の走査に向けたヘッド位置の調整S104では、リニアステージ300を動作させ、対象物Qを液体吐出ヘッド400に対して移動させる。換言すれば、リニアステージ300は、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。その結果、第1印刷で使用したノズル列431Bとは異なるノズル列431Aを目標位置TPの真上に配置したにもかかわらず、固定部材700に対するロボットアーム220の先端位置は変化していない。したがって、ロボットアーム220の姿勢を、第1印刷のときと同じ姿勢にすることができる。
【0092】
2.3.2回目の走査(第2印刷工程)
2回目の走査S106では、第1印刷のときと同じ走査軌道に沿って液体吐出ヘッド400を走査させる2回目の走査を行いながら、ノズル列431Aからイエローインクを吐出することにより、対象物Qに対し、ドットdYAからなるドット列を形成する第2印刷を行う。
【0093】
そうすると、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、が同じであるため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第2印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。つまり、
図13に示すノズル列431Bを目標位置TPの真上に配置するときと、
図14に示すノズル列431Aを目標位置TPの真上に配置するときとで、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置は変化していない。その結果、前述した印刷不良NG1、NG2の発生を抑制することができる。
【0094】
以上、2回目の走査まで説明したが、3回目および4回目の走査は、第1実施形態と同様である。したがって、3回目および4回目の走査を行うことで、印刷不良NG3の発生も抑制することができる。
【0095】
以上のようにして、液体吐出ヘッド400が揺れを伴いながら印刷動作を行う場合でも、リニアステージ300を適切に動作させることで、印刷不良NG1~NG3の発生を抑制することができる。
【0096】
また、第2実施形態では、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を固定することができる。これにより、ロボットアーム220の先端では、重心移動が生じないため、ロボットアーム220における振動の変化をより少なく抑えることができる。
【0097】
3.各実施形態が奏する効果
以上のように、前記各実施形態に係る印刷方法は、液体吐出ヘッド400と、ロボットアーム220およびリニアステージ300を備えるロボット200と、を用い、ロボットアーム220が液体吐出ヘッド400を走査させながら、液体吐出ヘッド400がインク(液体)を吐出し、対象物Qに印刷を行う方法であって、第1印刷工程と、ヘッド位置調整工程と、第2印刷工程と、を有する。液体吐出ヘッド400は、インクを吐出する複数のノズル411で構成されている第1ノズル列431および第2ノズル列432を有する。ロボットアーム220は、第1ノズル列431および第2ノズル列432が並んでいる方向を走査方向D1とするとき、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して走査方向D1に走査させる。リニアステージ300は、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。
【0098】
そして、第1印刷工程では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態で、ロボットアーム220が液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に走査させながら、第1ノズル列431からインクを吐出して、対象物Qに第1印刷を行う。
【0099】
ヘッド位置調整工程では、第1印刷工程の後、第2ノズル列432が第1印刷のときの第1ノズル列431と同じ位置に配置され、かつ、ロボットアーム220の先端の相対位置が前述した所定位置になるように、リニアステージ300が液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。
【0100】
第2印刷工程では、ヘッド位置調整工程の後、第1印刷のときと同じ走査軌道でロボットアーム220が液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に走査させながら、第2ノズル列432からインクを吐出して、対象物Qに第2印刷を行う。
【0101】
このような構成によれば、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、が同じになっているため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第2印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。したがって、複数のノズル列を有する液体吐出ヘッド400が揺れを伴いながら印刷動作を行う場合でも、印刷不良を少なく抑えられる印刷方法を実現することができる。
【0102】
また、リニアステージ300は、基部310と、基部310に対して移動するステージ320と、基部310に対してステージ320を走査方向D1に移動させる移動機構330と、を有することが好ましい。
【0103】
このような構成によれば、リニアステージ300を用いて、ロボットアーム220に対する液体吐出ヘッド400の相対的な位置を変えた場合でも、リニアステージ300が小型かつ軽量であるため、ロボットアーム220の動作に影響が及びにくい。
【0104】
また、移動機構330は、圧電アクチュエーターを有することが好ましい。これにより、リニアステージ300のさらなる小型化および軽量化を図ることができる。また、リニアステージ300の駆動精度が向上する。さらに、圧電アクチュエーター340は、停止時の保持トルクが大きいため、ブレーキを追加する必要がない点、および、停止時のステージ320の位置安定性が高い点でも有用である。
【0105】
また、第1実施形態に係る印刷方法に用いる印刷装置では、ロボットアーム220が、基部310に接続され、液体吐出ヘッド400が、ステージ320に取り付けられている。
【0106】
このような構成によれば、リニアステージ300は、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を目的とする位置に移動させることができる。したがって、対象物Qを固定した状態でも、対象物Qに対して液体吐出ヘッド400を相対的に移動させることが可能になる。このため、対象物Qを固定した状態でも、上記の効果、つまり、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、を同じにできるという効果を得ることができる。
【0107】
また、第2実施形態に係る印刷方法に用いる印刷装置では、リニアステージ300が、ロボットアーム220から離れて配置され、対象物Qが、ステージ320に保持されている。
【0108】
このような構成によれば、ロボットアーム220に対して液体吐出ヘッド400を固定することができる。これにより、ロボットアーム220の先端では、重心移動が生じないため、ロボットアーム220における振動の変化をより少なく抑えることができる。
【0109】
また、前記各実施形態に係るロボットシステム(印刷装置100)は、液体吐出ヘッド400と、ロボットアーム220およびリニアステージ300を備えるロボット200と、ロボット200の動作を制御する制御装置900と、を備える。液体吐出ヘッド400は、液体吐出ヘッド400は、インクを吐出する複数のノズル411で構成されている第1ノズル列431および第2ノズル列432を有する。ロボットアーム220は、第1ノズル列431および第2ノズル列432が並んでいる方向を走査方向D1とするとき、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して走査方向D1に走査させる。リニアステージ300は、液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。制御装置900は、ロボット200の動作を制御する。
【0110】
そして、制御装置900は、第1印刷動作と、ヘッド位置調整動作と、第2印刷動作と、を実行する。
【0111】
第1印刷動作では、ロボットアーム220の基端に対する先端の相対位置が所定位置にある状態から、ロボットアーム220に液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に走査させながら、第1ノズル列431からインク(液体)を吐出させ、対象物Qの目標位置TPに対する第1印刷を行わせる。
【0112】
ヘッド位置調整動作では、第1印刷動作の後、第2ノズル列432を第1印刷のときの第1ノズル列431と同じ位置に配置させ、かつ、ロボットアーム220の先端の相対位置が前述した所定位置になるように、リニアステージ300に液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に移動させる。
【0113】
第2印刷動作では、ヘッド位置調整動作の後、第1印刷のときと同じ走査軌道でロボットアーム220に液体吐出ヘッド400を対象物Qに対して相対的に走査させながら、第2ノズル列432からインクを吐出させ、対象物Qの目標位置TPに対して第2印刷を行わせる。
【0114】
このような構成によれば、第1印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、第2印刷を行うときのロボットアーム220の姿勢と、が同じにすることができるため、第1印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、第2印刷時の液体吐出ヘッド400の揺れの位相と、を揃えることができる。したがって、複数のノズル列を有する液体吐出ヘッド400に揺れを伴いながら印刷動作を行わせる場合でも、印刷不良を少なく抑えられる印刷装置を実現することができる。
【0115】
以上、本発明の印刷方法およびロボットシステムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明の印刷方法およびロボットシステムは、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の印刷方法は、前記実施形態に任意の目的の工程や動作が付加されたものであってもよい。また、本発明のロボットシステムは、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0116】
100…印刷装置(ロボットシステム)、100X…印刷装置、200…ロボット、210…基台、220…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、230…アーム駆動機構、240…ロボットコントローラー、242…アーム制御部、244…リニアステージコントローラー、246…記憶部、300…リニアステージ、310…基部、320…ステージ、330…移動機構、340…圧電アクチュエーター、400…液体吐出ヘッド、411…ノズル、420…プリントコントローラー、431…第1ノズル列、431A…ノズル列、431B…ノズル列、432…第2ノズル列、432A…ノズル列、432B…ノズル列、433A…ノズル列、433B…ノズル列、434A…ノズル列、434B…ノズル列、700…固定部材、900…制御装置、910…印刷制御部、912…印刷データ生成部、914…移動量設定部、930…記憶部、D1…走査方向、D2…改行方向、E…エンコーダー、J1…関節、J2…関節、J3…関節、J4…関節、J5…関節、J6…関節、LA…格子、M…モーター、NG1…印刷不良、NG2…印刷不良、NG3…印刷不良、P…印刷パターン、PX…印刷パターン、Q…対象物、S102…1回目の走査、S104…ヘッド位置の調整、S106…2回目の走査、S108…ヘッド位置の調整、S110…3回目の走査、S112…ヘッド位置の調整、S114…4回目の走査、TP…目標位置、dCA…ドット、dCB…ドット、dYA…ドット、dYB…ドット