(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078720
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ポンプ装置およびポンプ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/60 20060101AFI20240604BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F04D29/60 E
F04D29/42 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191218
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB22
3H130AB46
3H130AC30
3H130BA22A
3H130BA53A
3H130BA95A
3H130CA21
3H130CA23
3H130EA02A
3H130EA07A
3H130EB01A
3H130EC05A
3H130ED01A
(57)【要約】
【課題】ハウジングのフランジ部同士を溶着してポンプ室を構成するポンプ装置において、溶着箇所の溶着不良を抑制する。
【解決手段】ポンプ装置1は、ステータ3を封止する第1ハウジング6の第1フランジ部68と、第1ハウジング6に軸線方向の一方側L1から被せられた第2ハウジング2の第2フランジ部25とを溶着することによりポンプ室20が形成される。第2ハウジング2には、第2フランジ部25と側壁部24とを接続する第1補強リブ29が設けられているので、溶着時に第2フランジ部25に軸線方向の加圧力を加えた場合でも、第2フランジ部25が変形するおそれが少ない。これにより、第1フランジ部68に設けられた第1溶着部680と第2フランジ部25に設けられた第2溶着部250とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できるので、溶着不良が発生するおそれが少ない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータおよび前記ロータの外周を囲む環状のステータを備えるモータと、
前記ステータを封止する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングに対して前記ロータの回転軸線に沿う軸線方向の一方側から被せられて前記第1ハウジングとの間にポンプ室を形成する第2ハウジングと、
前記ポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、
前記第1ハウジングは、前記ステータの前記軸線方向の一方側を覆う第1隔壁部と、前記ステータの外周を覆う胴部と、前記胴部から外周側へ突出する環状の第1フランジ部と、を備え、前記第1フランジ部は、前記軸線方向の一方側を向く面に第1溶着部が設けられ、
前記第2ハウジングは、前記第1隔壁部に前記軸線方向の一方側から対向する端板部と、前記端板部の外周縁から前記軸線方向の他方側へ延びる側壁部と、前記側壁部から外周側へ突出する環状の第2フランジ部と、前記端板部の中央から前記軸線方向の一方側へ延びる第1筒部と、前記側壁部から前記軸線方向と交差する方向へ延びる第2筒部と、を備え、前記第2フランジ部は、前記軸線方向の他方側を向く面に前記第1溶着部に溶着される第2溶着部が設けられ、
前記第2ハウジングには、前記側壁部と第2フランジ部とを接続する第1補強リブが周方向の複数位置に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記第1補強リブは、前記軸線方向から見て前記第2溶着部と重なることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記第1補強リブは、前記第2フランジ部の外周縁まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記第2ハウジングには、周方向の位置が異なる複数のゲート痕が設けられ、
周方向で隣り合う前記ゲート痕の中間の角度位置と、前記第1補強リブのうちのいずれかの角度位置とが一致することを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記第1筒部と前記端板部とが接続される箇所には、前記第1筒部と前記端板部とを接続する第2補強リブが周方向の複数位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記第2ハウジングは、前記第1筒部の内周面から突出して前記軸線方向の他方側へ延びる支持部と、前記支持部の先端に設けられた軸支持部と、を備え、
前記ロータを回転可能に支持する支軸の前記軸線方向の一方側の端部が前記軸支持部に支持され、
前記支持部は、周方向の位置が前記第2補強リブと異なることを特徴とする請求項5に記載のポンプ装置。
【請求項7】
前記側壁部を前記軸線方向から見た形状は、周方向の一方側へ向かうに従って径方向外側へ拡がる形状であり、
前記第2筒部は、前記側壁部の前記回転軸線からの距離が最大の第1角度位置から前記第1角度位置における前記側壁部の接線方向へ延びており、
前記第2フランジ部の外形は、前記回転軸線を中心とする円形であり、
前記第1補強リブは、周方向の複数位置において、前記側壁部の外周面から前記第2フランジ部の外周縁まで延びていることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項8】
前記第1ハウジングは、取付相手の部材に当接する取付面が設けられた取付部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のポンプ装置の製造方法であって、
前記取付部を介して前記第1ハウジングを第1治具に位置決めするとともに、前記第1補強リブを第2治具に設けられた溝に嵌合させることにより、前記第2ハウジングを第2治具に位置決めするステップと、
前記第1治具と前記第2治具を介して、第1ハウジングと第2ハウジングの前記回転軸線を中心とする相対回転位置を合わせてから、第1溶着部と第2溶着部とを溶着するステップと、を行うことを特徴とするポンプ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インペラをモータによって回転させるポンプ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプ室に配置されたインペラをモータで回転させるポンプ装置が記載される。特許文献1のポンプ装置は、ステータを覆う樹脂製の第1ハウジングと、第1ハウジングに対してモータの回転軸線方向の一方側から被せられて第1ハウジングとの間にポンプ室を形成する第2ハウジングとを備える。第2ハウジングは、ポンプ室の径方向の中央から軸線方向に延びる吸入筒部と、ポンプ室の外周から接線方向に延びる吐出筒部とを備える。
【0003】
第1ハウジングのポンプ室側の端部には、第1フランジ部が設けられている。第1フランジ部には、モータの回転軸線を中心とする環状の第1溶着部が形成されている。第2ハウジングは、第1フランジ部と対向する第2フランジ部を備えており、第2フランジ部には、溶着により第1溶着部と接合される第2溶着部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のポンプ装置は、第1ハウジングと第2ハウジングとを溶着により固定する際、溶着箇所を加圧するため、加圧によりフランジ部が変形して、溶着箇所が溶着不良になるおそれがある。例えば、第2フランジ部を第1フランジ部に向けて加圧すると、第2フランジ部の外周端部が第1フランジ部に向かって傾く形状に変形するおそれがある。その場合には、溶着箇所が当接するよりも先に、第1フランジ部と第2フランジ部の外周端部同士が当接してしまい、その結果、溶着箇所に隙間ができるなどして十分に溶着できないおそれがある。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ハウジングのフランジ部同士を溶着してポンプ室を構成するポンプ装置において、溶着箇所の溶着不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のポンプ装置は、ロータおよび前記ロータの外周を囲む環状のステータを備えるモータと、前記ステータを封止する第1ハウジングと、前記第1ハウジングに対して前記ロータの回転軸線に沿う軸線方向の一方側から被せられて前記第1ハウジングとの間にポンプ室を形成する第2ハウジングと、前記ポンプ室に配置されて前記ロータと一体に回転するインペラと、を有し、前記第1ハウジングは、前記ステータの前記軸線方向の一方側を覆う第1隔壁部と、前記ステータの外周側に配置される環状の第1フランジ部と、を備え、前記第1フランジ部は、前記軸線方向の一方側を向く面に第1溶着部が設けられ、前記第2ハウジングは、前記第1隔壁部に前記軸線方向の一方側から対向する端板部と、前記端板部の外周縁から前記軸線方向の他方側へ延びる側壁部と、前記側壁部から外周側へ突出する環状の第2フランジ部と、前記端板部の中央から前記軸線方向の一方側へ延びる第1筒部と、前記側壁部から前記軸線方向と交差する方向へ延びる第2筒部と、を備え、前記第2フランジ部は、前記軸線方向の他方側を向く面に前
記第1溶着部に溶着される第2溶着部が設けられ、前記第2ハウジングには、前記側壁部と第2フランジ部とを接続する第1補強リブが周方向の複数位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1ハウジングの第1フランジ部と、第2ハウジングの第2フランジ部とを軸線方向に当接させて当接箇所を溶着することにより、第1ハウジングと第2ハウジングとの間にポンプ室を形成する。第2ハウジングには、第2フランジ部と側壁部とを接続する第1補強リブが設けられているので、溶着時に第2フランジ部に軸線方向の加圧力を加えた場合でも、第2フランジ部が変形するおそれが少ない。これにより、第1溶着部と第2溶着部とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できるので、溶着不良が発生するおそれが少ない。例えば、加圧力により第2フランジ部が第1フランジ部に向けて傾く形状に変形するおそれが少ないので、第1溶着部および第2溶着部とは異なる部位が先に突き当たってしまい、その結果、第1溶着部と第2溶着部とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できる。従って、溶着不良が発生するおそれが少ない。
【0009】
本発明において、前記第1補強リブは、前記軸線方向から見て前記第2溶着部と重なることが好ましい。このようにすると、第1溶着部および第2溶着部が設けられた箇所を補強でき、第1溶着部および第2溶着部が設けられた箇所の変形を抑制できる。従って、溶着不良を抑制できる。
【0010】
本発明において前記第1補強リブは、前記第2フランジ部の外周縁まで延びていることが好ましい。このようにすると、最も大きく変位する箇所である外周端部の変形を抑制できる。従って、第1フランジ部と第2フランジ部の外周端部同士が先に突き当たってしまい、その結果、第1溶着部と第2溶着部とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できる。従って、溶着不良が発生するおそれが少ない。
【0011】
本発明において、前記第2ハウジングには、周方向の位置が異なる複数のゲート痕が設けられ、周方向で隣り合う前記ゲート痕の中間の角度位置と、前記第1補強リブのうちのいずれかの角度位置とが一致することが好ましい。このようにすると、周方向で隣り合うゲート痕の中間に形成されるウエルドラインの角度位置と、補強リブの角度位置が一致するので、ウエルドラインができる箇所の強度低下を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記第1筒部と前記端板部とが接続される箇所には、前記第1筒部と前記端板部とを接続する第2補強リブが周方向の複数位置に設けられていることが好ましい。このようにすると、第1筒部と端板部との接続箇所を補強できるとともに、第1筒部に接続される筒部材(ポンプ室に流体を供給する供給用のパイプ)を第1筒部に対して位置決めする際の位置決め形状として第2補強リブを利用することができる。
【0013】
本発明において、前記第2ハウジングは、前記第1筒部の内周面から突出して前記軸線方向の他方側へ延びる支持部と、前記支持部の先端に設けられた軸支持部と、を備え、前記ロータを回転可能に支持する支軸の前記軸線方向の一方側の端部が前記軸支持部に支持され、前記支持部は、周方向の位置が前記第2補強リブと異なることが好ましい。このようにすると、製造時にヒケやボイドなどの成形不良を抑制できる。
【0014】
本発明において、前記側壁部を前記軸線方向から見た形状は、周方向の一方側へ向かうに従って径方向外側へ拡がる形状であり、前記第2筒部は、前記側壁部の前記回転軸線からの距離が最大の第1角度位置から前記第1角度位置における前記側壁部の接線方向へ延びており、前記第2フランジ部の外形は、前記回転軸線を中心とする円形であり、前記第1補強リブは、周方向の複数位置において、前記側壁部の外周面から前記第2フランジ部の外周縁まで延びていることが好ましい。このようにすると、ポンプ室の形状を第2筒部
に向かって内径が拡大する形状にすることができる。また、周方向のどの角度位置でも、第1補強リブは第2フランジ部の外周縁まで延びているので、第2フランジ部全体を補強することができる。
【0015】
本発明において、前記第1ハウジングは、取付相手の部材に当接する取付面が設けられた取付部を備えることが好ましい。ポンプ装置を設置する際に相手部材に当接する取付面が第1ハウジングに設けられている場合には、第1ハウジングに対して第2ハウジングを正確に位置決めして溶着することにより第2筒部の向きを取付面に対して精度良く合わせる必要があるが、本発明では第2ハウジングの径方向の中央から遠い位置に第1補強リブが設けられているので、第1補強リブを利用して第2ハウジングを周方向に位置決めすることにより、第2筒部の向きを取付面に対して精度良く合わせることができる。これにより、ポンプ装置を設置する際に、第2筒部の向きのばらつきを抑制できる。
【0016】
次に、本発明は、上記のポンプ装置の製造方法であって、前記取付部を介して前記第1ハウジングを第1治具に位置決めするとともに、前記第1補強リブを第2治具に設けられた溝に嵌合させることにより、前記第2ハウジングを第2治具に位置決めするステップと、前記第1治具と前記第2治具を介して、第1ハウジングと第2ハウジングの前記回転軸線を中心とする相対回転位置を合わせてから、第1溶着部と第2溶着部とを溶着するステップと、を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、第2ハウジングを第2治具に対して位置決めする際、第2ハウジングの径方向の中央から遠い位置に設けられた第1補強リブを第2治具の溝に嵌合させて位置決めする。このようにすると、第2治具の溝の幅を第1補強リブの幅よりもわずかに大きく設定して確実に嵌合できるようにした場合でも、第2治具の溝内において第1補強リブが幅方向に動くことによる第2筒部の向きのばらつきを小さくすることができる。従って、第1治具と第2治具とを介して、取付面に対する第2筒部の中心線の角度(ポート角度)が予め定められた角度となるように第1ハウジングと第2ハウジングとの回転軸線を中心とする相対回転位置を合わせる際、精度良く相対回転位置を合わせることができるので、第2筒部の向きを精度良く位置決めしてポンプ装置を設置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1ハウジングの第1フランジ部と、第2ハウジングの第2フランジ部とを軸線方向に当接させて当接箇所を溶着することにより、第1ハウジングと第2ハウジングとの間にポンプ室を形成する。第2ハウジングには、第2フランジ部と側壁部とを接続する第1補強リブが設けられているので、溶着時に第2フランジ部に軸線方向の加圧力を加えた場合でも、第2フランジ部が変形するおそれが少ない。これにより、第1溶着部と第2溶着部とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できるので、溶着不良が発生するおそれが少ない。例えば、加圧力により第2フランジ部が第1フランジ部に向けて傾く形状に変形するおそれが少ないので、第1溶着部および第2溶着部とは異なる部位が先に突き当たってしまい、その結果、第1溶着部と第2溶着部とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できる。従って、溶着不良が発生するおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を適用したポンプ装置の外観斜視図である。
【
図2】
図1に示すポンプ装置を回転軸線を含む平面で切断した断面図(
図3のA-A断面図)である。
【
図3】
図1に示すポンプ装置を軸線方向の一方側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るポンプ装置1を説明する。以下の説
明において、軸線方向とは、モータ10の回転軸線Lが延在している方向を意味し、径方向の内側および径方向の外側における径方向とは、回転軸線Lを中心とする半径方向を意味し、周方向とは、回転軸線Lを中心とする回転方向を意味する。
【0021】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したポンプ装置1の外観斜視図である。
図2は、
図1に示すポンプ装置1を回転軸線Lを含む平面で切断した断面図であり、
図3のA-A位置で切断した断面図である。
図3は、
図1に示すポンプ装置1を軸線方向の一方側L1から見た平面図である。
図1、
図2に示すように、ポンプ装置1は、樹脂製の第1ハウジング6に覆われたステータ3を備えるモータ10と、モータ10に対して軸線方向の一方側L1から被せられた樹脂製の第2ハウジング2と、第1ハウジング6と第2ハウジング2との間に設けられたポンプ室20に配置されるインペラ7とを有する。
【0022】
本形態のポンプ装置1において、ポンプ室20を流れる流体は液体である。ポンプ装置1は、例えば、環境温度や流体温度が変化しやすい条件で使用される。第2ハウジング2は、モータ10の回転軸線Lに沿って延在する吸入管21(第1筒部)と、モータ10の回転軸線Lに対して直交する方向に延在する吐出管22(第2筒部)を備える。吸入管21はポンプ室20の径方向の中央に接続され、吐出管22はポンプ室20の外周部分に接続される。インペラ7は、モータ10によって回転軸線L周りに回転駆動される。
【0023】
モータ10は、円環状のステータ3と、ステータ3の内側に配置されるロータ4と、ロータ4を回転可能に支持する支軸5と、ステータ3を封止する第1ハウジング6を備える。支軸5は、金属製あるいはセラミック製である。ロータ4は、インペラ7と一体に回転する。第1ハウジング6は、ステータ3を径方向の両側、および軸線方向の両側から覆う樹脂封止部材60である。樹脂封止部材60は、ポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene Sulfide)からなる。ステータ3は、インサート成形により樹脂封止部材60と一体化される。
【0024】
第1ハウジング6(樹脂封止部材60)は、ポンプ室20の軸線方向の一方側L1の端板部23に対向する第1隔壁部61と、ステータ3と駆動マグネット8との間に介在する第2隔壁部62と、第2隔壁部62の他方側L2の端に設けられた底壁63とを有する隔壁部材である。また、第1ハウジング6は、ステータ3を径方向の外側から覆う円筒状の胴部66と、ステータ3の外周側において、胴部66から径方向外側へ拡がる第1フランジ部68とを備える。第1フランジ部68は、樹脂封止部材60の軸線方向の一方側L1の端部に配置される。
【0025】
第2ハウジング2は、第1隔壁部61に軸線方向の一方側L1から対向する端板部23と、端板部23の外周縁から軸線方向の他方側L2へ延びる側壁部24と、側壁部24の軸線方向の他方側L2の端部から外周側へ拡がる第2フランジ部25を備える。端板部23はポンプ室20の軸線方向の一方側L1の壁面を構成し、側壁部24はポンプ室20の外周側の壁面を構成する。端板部23の径方向の中央からは、吸入管21が軸線方向の一方側L1へ突出する。側壁部24からは、吐出管22が側壁部24の接線方向へ延びている。第2フランジ部25は、第1フランジ部68に対して軸線方向の一方側L1から重なる。後述するように、第1フランジ部68と第2フランジ部25は、振動溶着により接合される。
【0026】
図2に示すように、ステータ3は、ステータコア31と、ステータコア31に対して軸線方向の一方側L1から重なるインシュレータ32と、ステータコア31に対して軸線方向の他方側L2から重なるインシュレータ33と、ステータコア31に設けられた複数の突極にインシュレータ32、33を介して巻回された複数のコイル35とを有する。モー
タ10は3相モータである。従って、複数のコイル35は、U相コイル、V相コイル、およびW相コイルによって構成される。
【0027】
ロータ4は、樹脂製のロータ部材40を備える。ロータ部材40は、軸線方向に延在する円筒部41を備える。円筒部41は、ステータ3の径方向の内側からポンプ室20に向けて延在し、ポンプ室20で開口している。円筒部41の外周面には、円筒状の駆動マグネット8が保持される。駆動マグネット8は、ステータ3に径方向の内側で対向する。駆動マグネット8は、例えば、ネオジムボンド磁石からなる。
【0028】
ロータ部材40は、フランジ部45から他方側L2に離間した位置で円筒部41から径方向外側へ突出した円環状の座部42を備える。円筒部41は、座部42から他方側L2へ延びるマグネット保持部410を備える。マグネット保持部410は、円筒状の駆動マグネット8の内側に嵌って駆動マグネット8を保持する。その際、座部42は、駆動マグネット8の軸線方向の一方側L1の端部を支持する。マグネット保持部410における座部42とは軸線方向で反対側(軸線方向の他方側L2)の端部には、駆動マグネット8に軸線方向で重なるカシメ部43が形成されている。
【0029】
ロータ部材40において、円筒部41の軸線方向の一方側L1の端部には、円板状のフランジ部45が形成されており、フランジ部45には、軸線方向の一方側L1から羽根車26が連結される。羽根車26の中央には中央穴260が形成されている。羽根車26のフランジ部45と対向する面には、中央穴260の周囲から円弧状に湾曲しながら径方向の外側に延在する複数の羽根部261が等角度間隔に形成されており、羽根車26は、羽根部261を介してフランジ部45に固定される。従って、フランジ部45と羽根車26とによって、ロータ部材40の円筒部41に接続されたインペラ7が構成される。本形態において、羽根車26は、径方向の外側に向かうにしたがってフランジ部45の側に向かう方向に傾いている。
【0030】
ロータ部材40において、円筒部41の径方向の内側には円筒状のラジアル軸受11が保持される。ロータ4は、ラジアル軸受11を介して支軸5に回転可能に支持される。支軸5の軸線方向の他方側L2の端部は、第1ハウジング6の底壁63に形成された軸穴65に保持される。支軸5の軸線方向の一方側L1の端部は、第2ハウジング2に形成された軸支持部28に保持される。軸支持部28は、支軸5が内側に嵌まる筒部281と、筒部281の軸線方向の一方側L1の端部に設けられた受け部282を備える。受け部282は、支軸5の軸線方向の一方側L1の端部にポンプ室20の側で対向して支軸5のポンプ室20側への可動範囲を制限する。軸支持部28は、第2ハウジング2における吸入管21の内周面から軸線方向の他方側L2に延びる3本の支持部27の先端に設けられている。
【0031】
支軸5の軸線方向の一方側L1の端部には円環状のスラスト軸受12が装着されており、スラスト軸受12は、ラジアル軸受11と筒部281の間に配置されている。ここで、支軸5の他方側L2の端部および軸穴65は、少なくとも一部が断面D字形状である。また、支軸5の一方側L1の端部およびスラスト軸受12の穴は断面D字形状である。従って、第1ハウジング6および第2ハウジング2に対する支軸5およびスラスト軸受12の回転が阻止される。
【0032】
図1、
図2に示すように、第1ハウジング6の軸線方向の他方側L2の端部64には、軸線方向の他方側L2からカバー18が固定される。
図2に示すように、カバー18と第1ハウジング6の底壁63との間には、コイル35に対する給電を制御する回路が設けられた基板19が配置される。基板19には、ステータ3から第1ハウジング6の底壁63を貫通して軸線方向の他方側L2に突出した金属製の巻線端子71が半田により接続され
る。
【0033】
第1ハウジング6は、底壁63から軸線方向の他方側L2に突出した第1柱状部67と、第1柱状部67に対して周方向に離間した位置において底壁63から軸線方向の他方側L2に突出した第2柱状部(図示せず)を備える。基板19は、ねじによって第1柱状部67および第2柱状部(図示せず)に固定される。
【0034】
図1に示すように、第1ハウジング6は、ステータ3の外周側を囲む胴部66から径方向外側へ延びる筒状のコネクタハウジング69を備える。コネクタハウジング69の内側には、一端が基板19に接続されたコネクタ端子が配置される。コネクタハウジング69にコネクタを連結すると、基板19に実装される回路で生成された駆動電流が巻線端子71を介して各コイル35に供給される。その結果、ロータ4がモータ10の回転軸線L周りに回転する。これにより、ポンプ室20内でインペラ7が回転してポンプ室20の内部が負圧となるため、流体は吸入管21からポンプ室20に吸い込まれて、吐出管22から吐出される。
【0035】
(溶着部)
図2に示すように、第1フランジ部68には、軸線方向の一方側L1を向く面に第1溶着部680が設けられており、第2フランジ部25には、軸線方向の他方側L2を向く面に第2溶着部250が設けられている。
図2に示すように、第1溶着部680は、回転軸線Lを中心とする環状溝である。第2溶着部250は、回転軸線Lを中心とする環状の溶着用凸部である。なお、第1溶着部680を凸部とし、第2溶着部250を溝にしてもよい。
【0036】
第2フランジ部25と第1フランジ部68を振動溶着により溶着する際、第2フランジ部25と第1フランジ部68を軸線方向に重ね合わせて第2フランジ部25を軸線方向の一方側L1から加圧する。
図2に示すように、第2溶着部250(溶着用凸部)の軸線方向の高さは、第1溶着部680(環状溝)の深さよりも大きい。従って、第1溶着部680(環状溝)に挿入された第2溶着部250(溶着用凸部)の先端が第1溶着部680の底面681によって潰されることにより、第2溶着部250の先端には、底面681に溶着された溶着部Wが形成される。第2溶着部250(溶着用凸部)の径方向の厚さは、第1溶着部680(環状溝)の幅よりも小さい。従って、第1溶着部680に挿入された第2溶着部250の周囲には、溶着バリを収容可能な隙間が確保される。
【0037】
(第1補強リブ)
図1、
図3に示すように、第2ハウジング2は、側壁部24と第2フランジ部25を接続する第1補強リブ29を周方向の複数位置に備える。第1補強リブ29は、側壁部24の外周面から径方向外側に突出し、第2フランジ部25の軸線方向の一方側L1の面に接続される。複数の第1補強リブ29は、等角度間隔で配置される。
図3に示すように、本形態では、90°の角度間隔で4箇所に第1補強リブ29が配置される。第1補強リブ29は、第2フランジ部25の外周縁まで延びており、軸線方向から見て第2溶着部250および第1溶着部680と重なる。
【0038】
図3に示すように、第2ハウジング2の側壁部24は、軸線方向から見たときの形状が回転軸線Lを中心とする円形ではなく、周方向の一方側R1へ向かうに従って回転軸線Lからの距離が増大する湾曲形状をしている。側壁部24の回転軸線Lからの距離が最大となる角度位置を第1角度位置θ1とするとき、吐出管22(第2筒部)は、第1角度位置θ1における側壁部24の接線方向Fに延びている。
【0039】
このように、側壁部24が周方向の位置によって回転軸線Lからの距離が異なるのに対
して、第2フランジ部25の外形は、回転軸線Lを中心とする円形である。そのため、第1補強リブ29は、周方向の位置によって径方向の長さが異なる。本明細書では、
図3に示すように、複数の第1補強リブ29のうち、吐出管22が接続される第1角度位置θ1に設けられた第1補強リブ29を符号29Aで示す。また、第1角度位置θ1から周方向の他方側R2に90°回転した第2角度位置θ2、180度回転した第3角度位置θ3、270度回転した第4角度位置θ4の3箇所に設けられた第1補強リブ29をそれぞれ符号29B、29C、29Dで示す。第1角度位置θ1に設けられた第1補強リブ29Aの径方向の長さが最も短く、第1補強リブ29B、29C、29Dの順に径方向の長さが増大している。
【0040】
図1に示すように、第1角度位置θ1に設けられた第1補強リブ29Aは、径方向外側へ向かうに従って軸線方向の高さが減少する傾斜部290のみからなる形状であるのに対して、他の3箇所の第1補強リブ29B、29C、29Dは、いずれも、傾斜部290の径方向内側に、軸線方向の高さが一定の平坦部291が接続された形状をしている。平坦部291の径方向の長さは、第1補強リブ29B、29C、29Dの順に増大している。
【0041】
(ゲート痕)
第2ハウジング2は、成形時に樹脂材料が注入された位置に形成されるゲート痕Gを備える。ゲート痕Gは、端板部23において周方向で等間隔に配置される。本形態では、吸入管21を挟んで径方向で反対側の2箇所にゲート痕Gが設けられている。ゲート痕Gが形成された角度位置は、第1補強リブ29A、29Cが形成された角度位置(第1角度位置θ1、第3角度位置θ3)と一致する。他の2箇所の第1補強リブ29B、29Dは、周方向で隣り合うゲート痕Gの中間の角度位置に形成されている。
【0042】
第2ハウジング2を製造する際、吐出管22が延びている側とは径方向で反対側の領域では、周方向で隣り合うゲート痕Gの中間の角度位置にウエルドラインが形成される。従って、第1補強リブ29Bは、ウエルドラインと一致する角度位置に設けられている。一方、吐出管22が延びている側の領域では、ウエルドラインの位置は、2つのゲート痕Gの中間の角度位置である第4角度位置θ4よりも第3角度位置θ3側(すなわち、吐出管22から離れた側)にシフトした位置となる。従って、第1補強リブ29Dの角度位置は、ウエルドラインの角度位置に近い位置ではあるものの、ウエルドラインの角度位置と一致していない。
【0043】
(第2補強リブ)
図1に示すように、第2ハウジング2は、吸入管21と端板部23を接続する第2補強リブ30を周方向の複数位置に備える。第2補強リブ30は、吸入管21の外周面から径方向外側に突出し、端板部23の軸線方向の一方側L1の面に接続される。複数の第2補強リブ30は、等角度間隔で配置される。
図3に示すように、本形態では、90°の角度間隔で4箇所に第2補強リブ30が配置される。各第2補強リブ30が形成される角度位置は、第1補強リブ29が形成される角度位置と一致する。
【0044】
図3に示すように、吸入管21(第1筒部)の内周面からは、複数の支持部27が径方向内側に突出する。
図2に示すように、複数の支持部27の先端には、支軸5の先端を支持する軸支持部28が接続される。本形態では、3箇所の支持部27が等角度間隔で配置されており、4箇所の第2補強リブ30は、いずれも、支持部27とは異なる角度位置に配置される。
【0045】
(第1ハウジングと第2ハウジングの位置決め)
図3に示すように、ポンプ装置1は、吐出管22とは異なる角度位置に設けられた取付部9を備える。なお、
図1、
図2においては、取付部9の図示を省略する。取付部9は、
第1ハウジング6と一体に形成されている。ポンプ装置1を設置する際、取付部9に設けられた取付面90を相手部材に当接させて固定する。
【0046】
本形態では、第1ハウジング6と第2ハウジング2とを振動溶着により接合する際、取付面90に対する吐出管22の中心線の角度φ(ポート角度)が予め定めた目標角度となるように第1ハウジング6と第2ハウジング2を位置決めしてから溶着する。例えば、以下のステップ(1)~(3)を行う。
(1)取付部9を介して第1ハウジング6を第1治具(図示せず)に位置決めするとともに、複数の第1補強リブ29の少なくとも1つを第2治具(図示せず)に設けられた溝に嵌合させることにより、第2ハウジングを第2治具に位置決めする。
(2)第1ハウジング6に対して軸線方向の一方側L1から第2ハウジング2を被せて、第1フランジ部68に第2フランジ部25を重ね合わせ、第1溶着部680に第2溶着部250を挿入する。このとき、第1治具に対して第2治具を位置決めすることにより、第1ハウジング6と第2ハウジング2の回転軸線Lを中心とする相対回転位置を合わせる。第1治具と第2治具は、取付面90に対する吐出管22の中心線の角度φが目標角度となる位置に第1ハウジング6と第2ハウジング2の相対回転位置を合わせることができるように設計されたものを用いる。
(3)(2)の位置決めが完了してから、第2フランジ部25を軸線方向の一方側L1から第1フランジ部68に向けて加圧して、第1溶着部680と前記第2溶着部250とを溶着する。
【0047】
(本形態の主な作用効果)
以上のように、本形態のポンプ装置1は、ロータ4およびロータ4の外周を囲む環状のステータ3を備えるモータと、ステータ3を封止する第1ハウジング6と、第1ハウジング6に対してロータ4の回転軸線Lに沿う軸線方向の一方側L1から被せられて第1ハウジング6との間にポンプ室20を形成する第2ハウジング2と、ポンプ室20に配置されてロータ4と一体に回転するインペラと、を有する。第1ハウジング6は、ステータ3の軸線方向の一方側L1を覆う第1隔壁部61と、ステータ3の外周を覆う胴部66と、胴部66から外周側へ突出する環状の第1フランジ部68と、を備える。第1フランジ部68は、軸線方向の一方側L1を向く面に第1溶着部680が設けられている。第2ハウジング2は、第1隔壁部61に軸線方向の一方側L1から対向する端板部23と、端板部23の外周縁から軸線方向の他方側L2へ延びる側壁部24と、側壁部24から外周側へ突出する環状の第2フランジ部25と、端板部23の中央から軸線方向の一方側L1へ延びる第1筒部である吸入管21と、側壁部24から軸線方向と交差する方向へ延びる第2筒部である吐出管22と、を備える。第2フランジ部25は、軸線方向の他方側L2を向く面に第1溶着部680に溶着される第2溶着部250が設けられている。第2ハウジング2には、側壁部24と第2フランジ部25とを接続する第1補強リブ29が周方向の複数位置に設けられている。
【0048】
本形態のポンプ装置1では、第1ハウジング6の第1フランジ部68と、第2ハウジング2の第2フランジ部25とを軸線方向に当接させて当接箇所を溶着することにより、第1ハウジング6と第2ハウジング2との間にポンプ室20を形成する。第2ハウジング2には、第2フランジ部25と側壁部24とを接続する第1補強リブ29が設けられているので、溶着時に第2フランジ部25に軸線方向の加圧力を加えた場合でも、第2フランジ部25が変形するおそれが少ない。これにより、第1溶着部680と第2溶着部250とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できるので、溶着不良が発生するおそれが少ない。例えば、加圧力により第2フランジ部25が第1フランジ部68に向けて傾く形状に変形するおそれが少ないので、第1溶着部680および第2溶着部250とは異なる部位が先に突き当たってしまい、その結果、第1溶着部680と第2溶着部250とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できる。従って、溶着不良が発生する
おそれが少ない。
【0049】
なお、本形態では、第1補強リブ29は等角度間隔で4箇所に設けられているが、第1補強リブ29の数は4とは異なる数であってもよい。また、第1補強リブ29の配置は等角度間隔でなくてもよい。例えば、吐出管22の近傍では、第1補強リブ29の位置をずらしてもよい。
【0050】
本形態では、第1補強リブ29は、軸線方向から見て第2溶着部250と重なる。従って、第1溶着部680および第2溶着部250が設けられた箇所を補強でき、第1溶着部680および第2溶着部250が設けられた箇所の変形を抑制できる。従って、溶着不良を抑制できる。
【0051】
本形態では第1補強リブ29は、第2フランジ部25の外周縁まで延びている。従って、最も大きく変位する箇所である外周端部の変形を抑制できる。従って、第1フランジ部68と第2フランジ部25の外周端部同士が先に突き当たってしまい、その結果、第1溶着部680と第2溶着部250とが十分に接触できない状態で溶着されることを回避できる。従って、溶着不良が発生するおそれが少ない。なお、第1補強リブ29は、本形態よりも径方向の長さが短い形状であってもよく、第1補強リブ29の外周端部が第2フランジ部25の外周縁よりも内周側の位置にある形状であってもよい。本形態よりも第1補強リブ29の径方向の長さが短くても、第2フランジ部25の変形を抑制する効果は得られるので、溶着不良を抑制する効果は得られる。
【0052】
本形態では、第2ハウジング2には、周方向の位置が異なる複数のゲート痕Gが設けられており、周方向で隣り合うゲート痕Gの中間の角度位置である第2角度位置θ2と、第1補強リブ29Bの角度位置とが一致する。従って、第2角度位置θ2では、ウエルドラインができる箇所を第1補強リブ29Bによって補強できるので、ウエルドラインができる箇所の強度低下を抑制できる。なお、もう1箇所のウエルドラインができる角度位置は、第1補強リブ29Dの角度位置とは一致しないものの、第1補強リブ29Dに近い位置であるため、第1補強リブ29Dによってウエルドラインができる箇所の近傍を補強できる。従って、第2ハウジング2の強度低下を抑制できる。
【0053】
本形態では、吸入管21と端板部23とを接続する第2補強リブ30が周方向の複数位置に設けられている。従って、吸入管21と端板部23との接続箇所を補強できるとともに、吸入管21に接続される筒部材(すなわち、ポンプ室20に流体を供給する供給用のパイプ)を吸入管21に対して位置決めする際の位置決め形状として第2補強リブ30を利用することができる。
【0054】
なお、第2補強リブ30の数および配置は、第1補強リブ29と同様に4とは異なる数であってもよく、その配置は等角度間隔でなくてもよい。また、第2補強リブ30が設けられている角度位置は第1補強リブ29が設けられている角度位置と異なっていてもよい。あるいは、第2補強リブ30を省略することもできる。
【0055】
本形態では、第2ハウジング2は、吸入管21(第1筒部)の内周面から突出して軸線方向の他方側L2へ延びる支持部27と、支持部27の先端に設けられた軸支持部28と、を備え、ロータ4を回転可能に支持する支軸5の軸線方向の一方側L1の端部が軸支持部28に支持される。支持部27は、周方向の位置が第2補強リブ30と異なる。このように、吸入管21の内周面に支持部27を設ける場合には、支持部27と第2補強リブ30の周方向の位置をずらすことにより、ヒケやボイドなどの成形不良が発生しにくい。
【0056】
本形態では、側壁部24を軸線方向から見た形状は、周方向の一方側へ向かうに従って
径方向外側へ拡がる形状になっており、吐出管22(第2筒部)は、側壁部24の回転軸線Lからの距離が最大の第1角度位置θ1から第1角度位置θ1における側壁部24の接線方向へ延びている。これにより、ポンプ室20の形状は、吐出管22向かって内径が拡大する形状になっている。その一方で、第2フランジ部25の外形は、回転軸線Lを中心とする円形である。そのため、第2フランジ部25の径方向の幅は一定ではなく、第1角度位置θ1の側へ向かうに従って狭くなっている。本形態では、第1補強リブ29は、周方向のどの位置でも、第2フランジ部25の外周縁まで延びており、第2フランジ部25の径方向の幅と一致する長さになっている。従って、4箇所の第1補強リブ29は、いずれも第2フランジ部25の全体を補強することができる。
【0057】
本形態では、第1ハウジング6は、取付相手の部材に当接する取付面90が設けられた取付部9を備える。従来、ポンプ装置1を設置する際に相手部材(設置面)に当接する取付面90が第1ハウジング6に設けられている場合には、第1ハウジング6に対して第2ハウジング2を精度良く位置決めして溶着していないと、取付面90に対する吐出管22(第2筒部)の向きのばらつきが大きくなり、その結果、ポンプ装置1の設置の際、吐出管22を目標とする方向に精度良く向けて設置することができなかった。本形態では、第2ハウジング2の径方向の中央から遠い位置である第2フランジ部25に第1補強リブ29が設けられている。従って、第1補強リブ29を利用することにより、第1ハウジング6に対する第2ハウジング2の周方向の位置決めを精度良く行うことができる。これにより、ポンプ装置を設置する際に、吐出管22の向きのばらつきを抑制できる。
【0058】
すなわち、本形態のポンプ装置1の製造方法では、取付部9を介して第1ハウジング6を第1治具に位置決めするとともに、第1補強リブ29を第2治具に設けられた溝に嵌合させることにより、第2ハウジング2を第2治具に位置決めするステップを行う。しかる後に、第1治具と第2治具を介して、第1ハウジング6と第2ハウジング2の回転軸線Lを中心とする相対回転位置を合わせてから、第1溶着部680と第2溶着部250とを溶着するステップを行う。
【0059】
このように、本形態では、第2ハウジング2を第2治具に対して位置決めする際、第2ハウジング2の径方向の中央から遠い位置に設けられた第1補強リブ29を第2治具の溝に嵌合させて位置決めする。これにより、第2治具の溝の幅を第1補強リブ29の幅よりも大きく設定して、確実に嵌合できるようにした場合でも、第2治具の溝内において第1補強リブ29が幅方向に動くことによる吐出管22の向きのばらつきを小さくすることができる。従って、その後に第1治具と第2治具を介して、第1ハウジング6と第2ハウジング2の周方向の位置決めを行えば、取付面90に対する吐出管22の中心線の角度φを目標角度に精度良く合わせることができる。従って、吐出管22の向きのばらつきが小さくなるようにポンプ装置1の設置を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1…ポンプ装置、2…第2ハウジング、3…ステータ、4…ロータ、5…支軸、6…第1ハウジング、7…インペラ、8…駆動マグネット、9…取付部、10…モータ、11…ラジアル軸受、12…スラスト軸受、18…カバー、19…基板、20…ポンプ室、21…吸入管、22…吐出管、23…端板部、24…側壁部、25…第2フランジ部、26…羽根車、27…支持部、28…軸支持部、29、29A、29B、29C、29D…第1補強リブ、30…第2補強リブ、31…ステータコア、32、33…インシュレータ、35…コイル、40…ロータ部材、41…円筒部、42…座部、43…カシメ部、45…フランジ部、60…樹脂封止部材、61…第1隔壁部、62…第2隔壁部、63…底壁、64…端部、65…軸穴、66…胴部、67…第1柱状部、68…第1フランジ部、69…コネクタハウジング、71…巻線端子、90…取付面、250…第2溶着部、260…中央穴、261…羽根部、281…筒部、282…受け部、290…傾斜部、291…平坦部
、410…マグネット保持部、680…第1溶着部、681…底面、G…ゲート痕、L…回転軸線、L1…軸線方向の一方側、L2…軸線方向の他方側、R1…周方向の一方側
R2…周方向の他方側、W…溶着部、θ1…第1角度位置、θ2…第2角度位置、θ3…第3角度位置、θ4…第4角度位置、φ…取付面に対する吐出管の中心線の角度