(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078728
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240604BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240604BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240604BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240604BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B21/02
H04N7/18 K
A61B5/01 350
A61B5/11 230
A61B5/11 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191232
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】522468423
【氏名又は名称】小西 照郎
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】小西 照郎
(72)【発明者】
【氏名】白井 康夫
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5C054
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VA17
4C038VB14
4C038VB35
4C038VC05
4C117XD04
4C117XD16
4C117XE48
4C117XJ13
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054EA01
5C054FC01
5C054FC07
5C054FC12
5C054FC15
5C054HA12
5C086AA22
5C086BA01
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5C086BA30
5C086CA09
5C086CA28
5C086CB01
5C086CB26
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5C086FA17
5C086FA18
5C087AA02
5C087AA09
5C087AA10
5C087AA19
5C087AA21
5C087AA25
5C087DD03
5C087DD20
5C087DD23
5C087DD27
5C087DD31
5C087DD49
5C087EE18
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】組織的に熱中症対策を実施することができる熱中症リスク管理装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる熱中症リスク管理装置1は、たとえば、ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を3次元的に測定し、これらの測定結果を3D測定情報として出力するAIカメラ14と、体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、手のひらを向けて歩行するユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を表面温度情報として出力するサーモグラフィーカメラ15と、熱中症リスクの判定結果を表示するためのモニター16と、3D測定情報および表面温度情報に基づいて熱中症リスクを判定する制御装置11と、を備えることとした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定する熱中症リスク管理装置において、
ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を測定し、これらの測定結果を第1の情報として出力するAIカメラと、
体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、ユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を第2の情報として出力するサーモグラフィーカメラと、
熱中症リスクの判定結果を表示するためのモニターと、
前記第1の情報および前記第2の情報に基づいて熱中症リスクを判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
熱中症リスクを判定するための基準となるしきい値を、前記第1の情報および前記第2の情報における測定種目単位に予め記憶部に記憶しておき、
前記第1の情報および前記第2の情報と前記しきい値に基づいて熱中症リスクを判定し、判定結果を前記モニターに表示させる、
ことを特徴とする熱中症リスク管理装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
「歩行による頭の振れ幅」の最大値と前記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩行時の体の傾き」の最大値と前記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
前記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、前記モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、
熱中症リスクが大となる前記判定の結果が1つでもある場合に、前記モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱中症リスク管理装置。
【請求項3】
前記制御装置の制御によって特定の周波数の音を出力するスピーカー、
をさらに備え、
前記AIカメラは、さらに、ユーザーが白線上を歩行中に、前記スピーカーから出力される音が聞こえたことを知らせるユーザー動作を検出し、その旨を示す音検出情報を前記制御装置に通知することとし、
前記制御装置は、
ユーザーが予め規定した白線上の特定の地点に達したときに、前記スピーカーから前記音を出力させる制御を行い、
熱中症リスクを判定する際に、さらに、前記音検出情報の有無を考慮する、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱中症リスク管理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
「歩行による頭の振れ幅」の最大値と前記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、「歩行時の体の傾き」の最大値と前記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
また、前記音検出情報の有無に基づいて熱中症リスクの大小を判定し、
前記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、前記モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、
熱中症リスクが大となる前記判定の結果が1つでもある場合に、前記モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の熱中症リスク管理装置。
【請求項5】
白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定する熱中症リスク管理装置による熱中症リスク判定方法であって、
前記熱中症リスク管理装置が、
ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を測定し、これらの測定結果を第1の情報として出力するAIカメラと、
体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、ユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を第2の情報として出力するサーモグラフィーカメラと、
熱中症リスクの判定結果を表示するためのモニターと、
前記第1の情報および前記第2の情報に基づいて熱中症リスクを判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置において、制御部が、
熱中症リスクを判定するための基準となるしきい値を、前記第1の情報および前記第2の情報における測定種目単位に予め記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記記憶部から前記しきい値を読み出し、当該しきい値と前記第1の情報および前記第2の情報とに基づいて熱中症リスクを判定する判定ステップと、
前記判定の結果を前記モニターに表示させる表示ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする熱中症リスク判定方法。
【請求項6】
前記判定ステップは、
「歩行による頭の振れ幅」の最大値と前記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第1の判定ステップと、
「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第2の判定ステップと、
「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第3の判定ステップと、
「歩行時の体の傾き」の最大値と前記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第4の判定ステップと、
歩行中の「顔の表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第5の判定ステップと、
歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第6の判定ステップと、
を含み、
前記表示ステップでは、
前記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、前記モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、
熱中症リスクが大となる前記判定の結果が1つでもある場合に、前記モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の熱中症リスク判定方法。
【請求項7】
前記熱中症リスク管理装置が、
前記制御装置の制御によって特定の周波数の音を出力するスピーカー、
をさらに備え、
前記AIカメラは、さらに、ユーザーが白線上を歩行中に、前記スピーカーから出力される音が聞こえたことを知らせるユーザー動作を検出し、その旨を示す音検出情報を前記制御装置に通知することとし、
前記制御部は、
ユーザーが予め規定した白線上の特定の地点に達したときに、前記スピーカーから前記音を出力させる音出力ステップ、
を実行し、
前記判定ステップにおいては、さらに、前記音検出情報の有無を考慮する、
ことを特徴とする請求項5に記載の熱中症リスク判定方法。
【請求項8】
前記判定ステップは、
「歩行による頭の振れ幅」の最大値と前記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第1の判定ステップと、
「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第2の判定ステップと、
「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と前記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第3の判定ステップと、
「歩行時の体の傾き」の最大値と前記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第4の判定ステップと、
歩行中の「顔の表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第5の判定ステップと、
歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と前記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第6の判定ステップと、
前記音検出情報の有無に基づいて熱中症リスクの大小を判定する第7の判定ステップと、
を含み、
前記表示ステップでは、
前記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、前記モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、
熱中症リスクが大となる前記判定の結果が1つでもある場合に、前記モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の熱中症リスク判定方法。
【請求項9】
白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定する熱中症リスク管理装置において制御装置として動作するコンピュータにより実行される熱中症リスク判定プログラムであって、
前記制御装置において、制御部が、
請求項5~8のいずれか1つに記載の熱中症リスク判定方法の各ステップ、
をコンピュータに実行させることを特徴とする熱中症リスク判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱中症を未然に防止するための熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状が起きた状態の総称である。熱中症を引き起こす要因としては、気温が高い、湿度が高い、日差しが強いなどの環境条件のほか、暑さに慣れていないなどの体の条件、長時間の屋外作業などの行動の条件があると考えられている。そして、このような熱中症の予防のために、さまざまな対策がとられている。
【0003】
たとえば、環境省では、環境省熱中症予防情報サイトにおいて、熱中症へのかかりやすさを示す「暑さ指数(WBGT)」の情報提供を行っている。さらに、環境省と気象庁では、WBGTに基づき、熱中症の危険性が極めて高いと予測される場合に、熱中症予防行動を効果的に促す「熱中症警戒アラート」を発表している。
【0004】
一方、熱中症を未然に防止するためのより具体的な対策として、近年、ウェアラブル端末を用いてバイタルデータを検知し、インターネットを通じてそのデータを熱中症予防に活用するIoT(Internet of Things)技術、が多く開発されている。
【0005】
たとえば、下記特許文献1には、熱中症予測装置が、ユーザーのバイタルサイン(体温、脈拍、血圧、発汗量、血中酸素濃度)、ユーザーの周囲の環境情報(気温、湿度、輻射熱)およびユーザーの運動量(心拍数、高度、加速度)を、ユーザーに装着されたウェアラブル端末から受信し、これらの情報に基づいてユーザーの熱中症の傾向を判定し、その結果を所定の消防機関へ通報する、ことが記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、熱中症判定装置が、外気温データおよび表皮体温データをユーザーに装着されたウェアラブル端末から受信し、これらの情報に基づいてユーザーの深部体温および血流量を推定し、さらに、これらの推定結果に基づいてユーザーの熱中症レベルを判定し、その判定結果をユーザーに通知する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-140935号公報
【特許文献2】特開2022-106098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ウェアラブル端末を利用して熱中症対策を行うためには、不特定多数のユーザーにウェアラブル端末を持たせる必要があり、コスト的にも時間的にも現実的ではない。すなわち、ウェアラブル端末(装置)による熱中症対策は、あくまでも個人的な熱中症対策であり、各種建物、イベント会場、作業場等、不特定多数のユーザーが利用する場所に適した対策ではない。
【0009】
たとえば、職場のビル、学校、マンション等の建物や、製造現場、建設現場、工事現場等の作業場や、各種イベント、スポーツ観戦、コンサート等の会場では、実際に多くの熱中症患者が出ており、熱中症による体調等についても自己申告制や自己管理に委ねられているため、組織的な熱中症対策が十分に実施されていないのが現状である。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、組織的に熱中症対策を実施することができる熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる熱中症リスク管理装置は、白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定するものである。また、この熱中症リスク管理装置において、AIカメラは、ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を測定し、これらの測定結果を第1の情報として出力する。また、サーモグラフィーカメラは、体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、手のひらを熱中症リスク管理装置に向けて歩行するユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を第2の情報として出力する。また、モニターは、熱中症リスクの判定結果を表示する。また、制御装置は、第1の情報および第2の情報に基づいて熱中症リスクを判定する。
【0012】
そして、制御装置は、熱中症リスクを判定するための基準となるしきい値を、第1の情報および第2の情報における測定種目単位に予め記憶部に記憶しておき、第1の情報および第2の情報としきい値に基づいて熱中症リスクを判定し、判定結果をモニターに表示させる。
【0013】
本発明にかかる熱中症リスク管理装置によれば、自己申告制や自己管理による熱中症対策に頼ることなく、白線上を歩行するユーザー全員に対して組織的に熱中症対策を実施することができる。
【0014】
また、本発明にかかる熱中症リスク管理装置において、制御装置は、「歩行による頭の振れ幅」の最大値と上記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩行時の体の傾き」の最大値と上記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する。そして、制御装置は、上記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、熱中症リスクが大となる判定の結果が1つでもある場合に、モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させることとした。
【0015】
また、本発明にかかる熱中症リスク管理装置は、制御装置の制御によって特定の周波数の音を出力するスピーカーをさらに備え、AIカメラは、さらに、ユーザーが白線上を歩行中に、スピーカーから出力される音が聞こえたことを知らせるユーザー動作を検出し、その旨を示す音検出情報を制御装置に通知することとした。そして、制御装置は、ユーザーが予め規定した白線上の特定の地点に達したときに、スピーカーから音を出力させる制御を行い、熱中症リスクを判定する際に、さらに、音検出情報の有無を考慮する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる熱中症リスク管理装置によれば、さらに高い精度で熱中症リスクを判定することができる。
【0017】
また、本発明にかかる熱中症リスク管理装置において、制御装置は、
「歩行による頭の振れ幅」の最大値と上記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、「歩行時の体の傾き」の最大値と上記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定し、また、音検出情報の有無に基づいて熱中症リスクの大小を判定することとした。そして、制御装置は、上記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、熱中症リスクが大となる判定の結果が1つでもある場合に、モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させることとした。
【0018】
また、本発明にかかる熱中症リスク判定方法は、白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定する熱中症リスク管理装置による熱中症リスク判定方法である。この熱中症リスク管理装置は、ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を測定し、これらの測定結果を第1の情報として出力するAIカメラと、体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、ユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を第2の情報として出力するサーモグラフィーカメラと、熱中症リスクの判定結果を表示するためのモニターと、第1の情報および第2の情報に基づいて熱中症リスクを判定する制御装置と、を備える。そして、制御装置において、制御部が、熱中症リスクを判定するための基準となるしきい値を、第1の情報および第2の情報における測定種目単位に予め記憶部に記憶する記憶ステップと、記憶部からしきい値を読み出し、当該しきい値と第1の情報および第2の情報とに基づいて熱中症リスクを判定する判定ステップと、判定の結果をモニターに表示させる表示ステップと、を実行する。
【0019】
本発明にかかる熱中症リスク判定方法によれば、自己申告制や自己管理による熱中症対策に頼ることなく、白線上を歩行するユーザー全員に対して組織的に熱中症対策を実施することができる。
【0020】
また、本発明にかかる熱中症リスク判定方法において、判定ステップは、「歩行による頭の振れ幅」の最大値と上記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第1の判定ステップと、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第2の判定ステップと、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第3の判定ステップと、「歩行時の体の傾き」の最大値と上記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第4の判定ステップと、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第5の判定ステップと、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第6の判定ステップと、を含むこととした。そして、表示ステップでは、上記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、熱中症リスクが大となる判定の結果が1つでもある場合に、モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させることとした。
【0021】
また、本発明にかかる熱中症リスク判定方法は、熱中症リスク管理装置が、制御装置の制御によって特定の周波数の音を出力するスピーカーをさらに備え、AIカメラは、さらに、ユーザーが白線上を歩行中に、スピーカーから出力される音が聞こえたことを知らせるユーザー動作を検出し、その旨を示す音検出情報を制御装置に通知することとした。そして、制御部は、ユーザーが予め規定した白線上の特定の地点に達したときに、スピーカーから音を出力させる音出力ステップ、を実行し、判定ステップにおいては、さらに、音検出情報の有無を考慮することとした。
【0022】
本発明にかかる熱中症リスク判定方法によれば、さらに高い精度で熱中症リスクを判定することができる。
【0023】
また、本発明にかかる熱中症リスク判定方法において、判定ステップは、「歩行による頭の振れ幅」の最大値と上記しきい値の1つである第1のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第1の判定ステップと、「歩幅」の最大値と最小値の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第2のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第2の判定ステップと、「歩行リズム」である一歩一歩の周期の最大周期と最小周期の差分値を計算し、その差分値と上記しきい値の1つである第3のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第3の判定ステップと、「歩行時の体の傾き」の最大値と上記しきい値の1つである第4のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第4の判定ステップと、歩行中の「顔の表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第5のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第5の判定ステップと、歩行中の「手のひらの表面温度」の最大値と上記しきい値の1つである第6のしきい値とに基づいて熱中症リスクの大小を判定する第6の判定ステップと、音検出情報の有無に基づいて熱中症リスクの大小を判定する第7の判定ステップと、を含むこととした。そして、表示ステップでは、上記判定の結果において、熱中症リスクがすべて小の場合に、モニターに熱中症リスクが低いことを示す情報を表示させ、熱中症リスクが大となる判定の結果が1つでもある場合に、モニターに熱中症リスクが高いことを示す情報を表示させることとした。
【0024】
また、本発明にかかる熱中症リスク判定プログラムは、白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定する熱中症リスク管理装置において制御装置として動作するコンピュータにより実行される熱中症リスク判定プログラムであって、制御部が、上記記載の熱中症リスク判定方法の各ステップ、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、組織的に熱中症対策を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置による熱中症リスクの判定処理の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、AIカメラによる撮影画像とその撮影画像から生成される骨格データのイメージを示す図である。
【
図4】
図4は、制御装置として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、制御部による熱中症リスク判定処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、制御部による熱中症リスク判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明にかかる熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、本願の明細書および図面において、同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0028】
<第1の実施形態>
本発明にかかる熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラムの第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
<熱中症リスク管理装置>
図1は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置の一例を示す模式図である。本実施形態の熱中症リスク管理装置1は、制御装置11と電源装置13とAIカメラ14とサーモグラフィーカメラ15とモニター16とを備え、たとえば、制御装置11が、AIカメラ14およびサーモグラフィーカメラ15から得られる情報に基づいて、ユーザーが熱中症にかかる危険度(熱中症リスク)を判定する。
【0030】
また、本実施形態の熱中症リスク管理装置1は、制御装置11、電源装置13、AIカメラ14、サーモグラフィーカメラ15およびモニター16を一体型とし、容易に持ち運べる構造とした。
【0031】
図2は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置による熱中症リスクの判定処理の一例を示す図であり、(a)は判定イメージを示す図であり、(b)は測定エリアを示す図である。本実施形態においては、ユーザーが白線の上を矢印の方向へ(熱中症リスク管理装置1に向かって)歩くことによって、略10秒以内で熱中症リスクが判定され、たとえば、ユーザーが白線の終端を超えたあたりで、モニター16に熱中症リスクの判定結果(「OK」(熱中症リスク:小)または「NG」(熱中症リスク:大))が表示される。この際、ユーザーは、手のひらを熱中症リスク管理装置(サーモグラフィーカメラ15)に向けて白線の上を歩行する。なお、白線(直線)の長さは、AIカメラ14およびサーモグラフィーカメラ15による撮影精度が十分に得られればよく、任意とするが、本実施例では、一例として、3~5mとする。また、本実施形態においては、説明の便宜上、白線の上を歩くこととしたが、これに限るものではなく、白線はあくまでも目安であり、たとえば、白線に沿って直線的に歩いていればよく、また、線の色についても任意である。
【0032】
上記のように構成される熱中症リスク管理装置1において、電源装置13は、スイッチ操作等により熱中症リスク管理装置1のON/OFFを制御する。また、AIカメラ14は、たとえば、撮影したユーザーの奥行きを捕えて骨格データを生成(トラッキング)するキネクトカメラであり、本実施形態においては、ふらつきを検知するための測定種目として、歩行による頭の振れ幅、歩幅、歩行リズム、歩行時の体の傾きを3次元的に測定し、これらの測定結果を3D測定情報として制御装置11に送信する。
図3は、AIカメラ14による撮影画像とその撮影画像から生成される骨格データのイメージを示す図である。このAIカメラ14により、いろいろな方向(上方、左右等)から歩行者を撮影することなく、正面からの撮影のみで歩行者の3D画像を再現することができる。
【0033】
また、本実施形態の熱中症リスク管理装置1において、サーモグラフィーカメラ15は、熱を色で視覚化する一般的なサーモグラフィーであり、本実施形態においては、体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、手のひらを向けて歩行するユーザーの顔の表面温度と手のひらの表面温度を測定し、これらの測定値を表面温度情報として制御装置11に送信する。また、モニター16は、制御装置11による熱中症リスクの判定結果をユーザーに向けて表示する。
【0034】
<制御装置>
ここで、本実施形態の熱中症リスク管理装置1における制御装置11の構成を具体的に説明する。
図4は、制御装置11として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。本実施形態の熱中症リスク管理装置1における制御装置11は、熱中症リスクを判定する処理(熱中症リスク判定処理)を行うホストコンピュータとして動作する。
【0035】
図4において、制御装置11は、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部21と、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリを含む記憶部22と、所定のネットワークを介して外部と通信を行う通信部23とを備える。
【0036】
図4において、制御部21は、本実施形態の熱中症リスク判定処理を実現するために、たとえば、AIカメラ14およびサーモグラフィーカメラ15から得られる情報に基づいて白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定するための熱中症リスク判定プログラムを実行する。記憶部22は、本実施形態の熱中症リスク判定処理にかかるプログラム(熱中症リスク判定プログラム)および各種情報(後述するしきい値等)や、処理の過程で得られた各種データ(歩行者の骨格データ、歩行による頭の振れ幅、歩幅、歩行リズム、歩行時の体の傾き、顔の表面温度、手のひらの表面温度等)等を記憶する。制御部21では、記憶部22に記憶されている熱中症リスク判定プログラムを読み出すことにより、本実施形態の熱中症リスク判定処理を実行する。
【0037】
なお、本実施形態の制御部21のハードウェア構成は、説明の便宜上、本実施形態の熱中症リスク判定処理にかかわる構成を列挙したものであり、制御装置11を構成するコンピュータのすべての機能を表現したものではない。また、制御装置11は、上記記載の専用のコンピュータを想定しているが、これに限定するものではなく、たとえば、デスクトップパソコン、ノートパソコン等の汎用PCであってもよいし、また、スマートフォン、タブレット端末等の携帯型端末であってもよい。また、制御装置11の記憶部22は、内部メモリに限るものではなく、たとえば、外部メモリとしての外付けHDD(ハードディスク)や、DVD(Digital Versatile Disc)およびSDメモリ等の外部記憶媒体であってもよいし、また、内部メモリ、外部メモリおよび外部記憶媒体を適宜組み合わせた構成であってもよい。
【0038】
<熱中症リスク判定処理>
つづいて、制御部21による熱中症リスク判定処理について説明する。
【0039】
図5は、制御部21による熱中症リスク判定処理を示すフローチャートである。本実施形態においては、たとえば、熱中症リスク管理装置1が建物の通路等に設置され(
図2参照)、熱中症リスク管理装置1の正面に向かって直線的に描かれた白線の上を歩行するすべてのユーザーに対して、熱中症リスク判定処理が行われる。
【0040】
なお、熱中症リスク管理装置1の管理者(操作者)は、熱中症リスクを判定(「OK」(熱中症リスク:小)または「NG」(熱中症リスク:大))するための基準となる値(しきい値)を設定し、予め記憶部22に記憶しておく。具体的には、歩行による頭の振れ幅(cm)のしきい値(第1のしきい値と呼ぶ)、歩幅の変化(cm)のしきい値(第2のしきい値と呼ぶ)、歩行リズム(一歩の周期(sec)の変化)のしきい値(第3のしきい値と呼ぶ)、歩行時の体の傾き(度)のしきい値(第4のしきい値と呼ぶ)、顔の表面温度(℃)のしきい値(第5のしきい値と呼ぶ)、手のひらの表面温度(℃)のしきい値(第6のしきい値と呼ぶ)が、予め記憶部22に記憶されていることを前提とする。
【0041】
本実施形態においては、上記のように各種しきい値情報が予め記憶部22に記憶されていることを前提として、たとえば、
図5に示すように、制御部21が、熱中症リスク判定処理を実行する。
【0042】
具体的にいうと、熱中症リスク管理装置1は、電源OFFの状態において(ステップS1、No)、スイッチ操作で電源装置13がON状態となることにより動作を開始する(ステップS1、Yes)。このとき、熱中症リスク管理装置1においては、AIカメラ14が撮影を開始し、サーモグラフィーカメラ15が表面温度の測定を開始し、モニター16が初期画面を表示し、この状態で、制御部21は、白線上を矢印方向へ歩行するユーザーに対する熱中症リスク判定処理を開始する。
【0043】
まず、制御部21は、記憶部22から第1のしきい値~第6のしきい値を読み出す(ステップS2)。そして、制御部21は、白線上を歩行するユーザーを待つ。すなわち、ここでは、制御部21は、電源ONと同時にAIカメラ14およびサーモグラフィーカメラ15から常時送られてくる情報の中から、白線上の歩行によって得られる上記3D測定情報(歩行による頭の振れ幅、歩幅、歩行リズム、歩行時の体の傾き)、および上記表面温度情報(顔の表面温度、手のひらの表面温度)を検出する処理を行う(ステップS3、No ステップS4、No)。
【0044】
この状態において、たとえば、ユーザーが白線上を歩行し、AIカメラ14から送られてくる白線歩行中の3D測定情報を検出した場合(ステップS3、Yes)、制御部21は、ステップS2にて読み出しておいたしきい値(第1~第4のしきい値)と3D測定情報に基づいて、測定種目単位に熱中症リスクを判定する(ステップS5)。具体的にいうと、たとえば、制御部21は、3D測定情報から、歩行による頭の振れ幅の最大値を抽出し、この最大値と第1のしきい値とを比較して「頭の振れ幅の最大値≦第1のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。また、制御部21は、3D測定情報から、白線歩行中の歩幅の最大値と最小値を抽出し、それらの差分値を計算し、この差分値と第2のしきい値とを比較して「差分値≦第2のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。また、制御部21は、3D測定情報から、歩行リズムである一歩一歩の周期(sec)の最大周期と最小周期を抽出し、それらの差分値を計算し、この差分値と第3のしきい値とを比較して「差分値≦第3のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。また、制御部21は、3D測定情報から、歩行時の体の傾きの最大値を抽出し、この最大値と第4のしきい値とを比較して「体の傾きの最大値≦第4のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。
【0045】
一方で、たとえば、ユーザーが白線上を歩行し、サーモグラフィーカメラ15から送られてくる白線歩行中の表面温度情報を検出した場合(ステップS4、Yes)、制御部21は、ステップS2にて読み出しておいたしきい値と表面温度情報に基づいて、測定種目単位に熱中症リスクを判定する(ステップS6)。具体的にいうと、たとえば、制御部21は、表面温度情報から、歩行中の顔の表面温度の最大値を抽出し、この最大値と第5のしきい値とを比較して「顔の表面温度の最大値≦第5のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。また、制御部21は、表面温度情報から、歩行中の手のひらの表面温度の最大値を抽出し、この最大値と第6のしきい値とを比較して「手のひらの表面温度の最大値≦第6のしきい値」を満たせば「危険度:小」、それ以外は「危険度:大」、と判定する。
【0046】
つぎに、制御部21は、白線上を歩行したユーザーに対応するステップS5およびステップS6による判定処理が完了したかどうかを判断し(ステップS7,No)、判定処理が完了したと判断した場合(ステップS7、Yes)、さらに、判定処理(第1~第6のしきい値との比較処理)において、3D測定情報および表面温度情報における測定種目単位の判定結果がすべて「危険度:小」であったかどうかを判断する(ステップS8)。
【0047】
たとえば、すべて「危険度:小」であった場合(ステップS8、Yes)、制御部21は、このユーザーは熱中症リスクが低いと判断し、モニター16に対して「OK」を表示させるための制御を行う(ステップS9)。一方、ステップS5およびステップS6の判定処理において、3D測定情報および表面温度情報を構成する測定種目のうち、「危険度:大」と判定された測定種目が1つでもあった場合(ステップS8、No)、制御部21は、このユーザーは熱中症リスクが高いと判断し、モニター16に対して「NG」を表示させるための制御を行う(ステップS10)。
【0048】
その後、制御部21は、電源OFFになるまで、白線上を歩行するユーザーに対して順次熱中症リスク判定処理(ステップS3~ステップS10)を実行し(ステップS11、No)、電源OFFで熱中症リスク判定処理を終了する(ステップS11、Yes)。すなわち、電源装置13のOFFにより、AIカメラ14、サーモグラフィーカメラ15、モニター16および制御装置11が動作を停止する。
【0049】
なお、本実施形態において、3D測定情報および表面温度情報を構成する測定種目単位に行うリスク判定処理(ステップS5、S6に相当)は、しきい値を用いた絶対比較により実施することとしたが、これに限るものではなく、たとえば、ユーザーの通常時の個人データ(3D測定情報、表面温度情報)を事前に取得している場合には、個人データを用いた相対比較によってリスク判定処理を実施することとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態の熱中症リスク管理装置1は、特に、熱中症リスクを判定する装置として記載したが、これに限るものではなく、その他の体調不良や病気のリスクを判定する装置として使用することも可能である。
【0051】
<効果>
以上のように、本実施形態の熱中症リスク管理装置1は、白線上を歩行するユーザーの熱中症リスクを判定するためのものである。この熱中症リスク管理装置1は、たとえば、ふらつきを検知するための測定種目として、「歩行による頭の振れ幅」、「歩幅」、「歩行リズム」、「歩行時の体の傾き」を3次元的に測定し、これらの測定結果を3D測定情報として出力するAIカメラ14と、体温調節機能の働きを検知するための測定種目として、手のひらを向けて歩行するユーザーの「顔の表面温度」と「手のひらの表面温度」を測定し、これらの測定結果を表面温度情報として出力するサーモグラフィーカメラ15と、熱中症リスクの判定結果を表示するためのモニター16と、3D測定情報および表面温度情報に基づいて熱中症リスクを判定する制御装置11と、を備えることとした。
【0052】
そして、制御装置11は、熱中症リスクを判定するための基準となるしきい値(上記第1のしきい値~第6のしきい値に相当)を、3D測定情報および表面温度情報における測定種目単位に、予め記憶部22に記憶しておき、白線上を歩行するユーザーの3D測定情報および表面温度情報と上記しきい値に基づいて熱中症リスクを判定し、その判定結果をモニター16に表示させることとした。
【0053】
したがって、本実施形態の熱中症リスク管理装置1によれば、自己申告制や自己管理による熱中症対策に頼ることなく、白線上を歩行するユーザー全員に対して組織的に熱中症対策を実施することができる。
【0054】
<第2の実施形態>
つづいて、本発明にかかる熱中症リスク管理装置、熱中症リスク判定方法および熱中症リスク判定プログラムの第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、前述した第1の実施形態と同様に説明することが可能な要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する。以下、前述した第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0055】
<熱中症リスク管理装置>
図6は、本発明にかかる熱中症リスク管理装置の一例を示す模式図である。本実施形態の熱中症リスク管理装置1’は、前述した第1の実施形態と同様の制御装置11と電源装置13とAIカメラ14とサーモグラフィーカメラ15とモニター16とに加え、さらに、スピーカー17を備える。本実施形態の熱中症リスク管理装置1’において、スピーカー17は、制御装置11の制御によって特定の周波数の音(モスキート音等)を出力する。本実施形態では、たとえば、可聴領域における2種類の周波数の音を順に出力する。また、音量については、制御装置11にて予め初期設定されているものとするが、周囲の雑音等に応じて装置外部からも微調整可能な構成とする。
【0056】
すなわち、本実施形態においては、白線上を歩行するユーザーに対して、さらに聴力検査を行い、この検査結果(聴力低下)も考慮して熱中症リスクを判定する。この際、スピーカー17から出力される音が聞こえたユーザーは、たとえば、片方の手(手のひらをカメラに向けて歩行している場合はもう片方の手)を挙げてその旨を表現する。そして、AIカメラ14は、白線上を歩行するユーザーが片手を挙げて表現した場合に、その動作を検出し、その旨(音検出情報)を制御装置11に通知する。なお、スピーカー17から出力される音が聞こえたことを知らせる方法は、これに限るものではなく、AIカメラ14において検出可能であればどのような方法であってもよい。
【0057】
また、本実施形態の熱中症リスク管理装置1’は、制御装置11、電源装置13、AIカメラ14、サーモグラフィーカメラ15、モニター16およびスピーカー17を一体型とし、前述した第1の実施形態と同様に、容易に持ち運べる構造とした。
【0058】
<熱中症リスク判定処理>
つづいて、制御部21による熱中症リスク判定処理について説明する。
【0059】
図7は、制御部21による熱中症リスク判定処理を示すフローチャートである。なお、
図7において、ステップS1~S11の処理については、前述した第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態においては、熱中症リスク判定処理を開始後(ステップS1、S2)、制御部21が、AIカメラ14から得られる撮影画像に基づいて白線上を歩行するユーザーを待つ(ステップS21、No)。そして、白線上を歩行するユーザーを検出し(ステップS21、Yes)、ユーザーが予め規定した白線上の第1の地点に達したときに、制御部21は、スピーカー17から第1の周波数の音を出力させる制御を行い、さらに、第2の地点に達したときに、スピーカー17から第2の周波数の音を出力させる制御を行う(ステップS22)。
【0061】
その後、制御部21は、AIカメラ14から送られてくる音検出情報の有無に基づいて、第1の周波数の音および第2の周波数の音のそれぞれについて、熱中症リスクを判定する(ステップS23)。具体的にいうと、たとえば、制御部21は、第1の周波数の音の出力に対してAIカメラ14から音検出情報の通知があれば「危険度:小」、通知がなければ「危険度:大」、と判定する。また、制御部21は、第2の周波数の音の出力に対してAIカメラ14から音検出情報の通知があれば「危険度:小」、通知がなければ「危険度:大」、と判定する。
【0062】
そして、制御部21は、白線上を歩行したユーザーに対応するステップS5、S6およびステップS23による判定処理が完了したかどうかを判断し(ステップS7,No)、判定処理が完了したと判断した場合(ステップS7、Yes)、さらに、判定処理において、3D測定情報、表面温度情報および音検知情報の判定結果がすべて「危険度:小」であったかどうかを判断する(ステップS8)。
【0063】
なお、その他の処理については、前述した第1の実施形態を同様である。また、本実施形態においては、スピーカー17から、第1の周波数の音と第2の周波数の音を2回に分けて出力することとしたが、これに限るものではない。たとえば、1つの音を一回だけ出力することとしてもよいし、3種類以上の音を出力することとしてもよいし、同じ音を複数回出力することとしてもよい。
【0064】
<効果>
以上のように、本実施形態の熱中症リスク管理装置1’は、前述した第1の実施形態の熱中症リスク管理装置1の構成に加え、制御装置11の制御によって特定の周波数の音を出力するスピーカー17、をさらに備えることとした。また、AIカメラ14は、さらに、ユーザーが白線上を歩行中に、スピーカー17から出力される音が聞こえたことを知らせるユーザー動作を検出し、その旨を示す音検出情報を制御装置11に通知することとした。
【0065】
そして、制御装置11は、ユーザーが予め規定した白線上の特定の地点に達したときに、スピーカー17から音を出力させる制御を行い、熱中症リスクを判定する際には、さらに、上記音検出情報の有無を考慮することとした。
【0066】
したがって、本実施形態の熱中症リスク管理装置1’によれば、さらに高い精度で熱中症リスクを判定することができる。
【0067】
<その他>
なお、本発明は、上記第1および第2の実施形態に限定されるものではない。上記各実施形態は、例示であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
1,1’ 熱中症リスク管理装置
11 制御装置
13 電源装置
14 AIカメラ
15 サーモグラフィーカメラ
16 モニター
17 スピーカー
21 制御部
22 制御部
23 通信部