(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078735
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20240604BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191246
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健太郎
【テーマコード(参考)】
3E013
3E064
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BA26
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF23
3E064AA08
3E064AA09
3E064AA13
3E064BA26
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC01
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA12
3E064GA01
3E064HD02
3E064HN05
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】ナイロンを用いながら電子レンジ調理中に蒸気抜きのための小孔が形成されやすい包装体を提供する。
【解決手段】包装体1は、合掌状にヒートシールされた背貼りシール部3aと、これに直交するようにヒートシールされた端部シール部3b,3cとを備えてなる。包装体1を構成している包装材は、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体である。背貼りシール部3aに設けられた開封開始部7を起点として引っ張って開封した際に進行する裂け目を捕捉してその進行を誘導するための一対の開封誘導部5,5が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部と、前記背貼りシール部に直交するように前記包装材の他の一対の両端部がそれぞれヒートシールされて形成された端部シール部と、を備える包装体であって、
前記包装材は、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、
前記背貼りシール部には開封開始部が設けられており、
前記開封開始部を起点として前記背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に進行する裂け目を捕捉して前記裂け目の進行を誘導するための一対の開封誘導部が、前記背貼りシール部を挟むようにして、且つ、当該包装体を背貼りシール部側から見たときに前記背貼りシール部の位置から裏側に回り込まない位置までの範囲内に設けられており、
前記開封誘導部は、前記包装材を貫通しない程度に設けられた切目線である、包装体。
【請求項2】
前記メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートは、全ジカルボン酸単位に占めるイソフタル酸の割合が0.5mol%~5mol%である、請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記ヒートシール性樹脂層は、C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合したポリエチレンである、請求項1記載の包装体。
【請求項4】
前記基材層は、二軸延伸されたフィルムである、請求項1記載の包装体。
【請求項5】
前記開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなる、請求項1~4のいずれか一項記載の包装体。
【請求項6】
前記開封誘導部は、出力を18W~30Wとした炭酸ガスレーザを照射して形成されたものである、請求項5記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚の包装材を筒状にして合掌状の背貼りシール部を形成し、その内部空間に内容物を収容してその天部と底部をシールした、いわゆるピロー包装体が、さまざまな用途に使用されている。特許文献1には電子レンジ調理用途の例が開示されている。電子レンジ調理用途のピロー包装体は、調理済み又は半調理状態の食品を、常温、低温、又は冷凍で保存することが可能であるとともに、調理時は開封せずに電子レンジで加熱する。このピロー包装体は、背貼りシール部の両側に設けられている開封誘導線が他の箇所と比べて脆弱になっているので、加熱に伴う内圧の上昇により、開封誘導線に蒸気抜きのための小孔が形成される。これにより過剰な内圧が下がり、包装体の破裂を防ぎながら、食品の蒸らしを十分に行うことができる。
【0003】
このピロー包装体を電子レンジ調理後に開封するには、背貼りシール部に設けられた開封開始部から一方向へ引き裂く。すると、背貼りシール部の両側に設けた開封誘導線に沿って開封が進み、内容物を取り出すのに適した形状の開口部が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
包装体を構成する材料としては、特許文献1にも開示されているとおりポリエチレンテレフタレートやナイロン等が用いられる。開封誘導線に沿った引き裂きの観点からはポリエチレンテレフタレートよりもナイロンのほうが優れているが、ナイロンは、開封誘導線の形成のための脆弱加工をレーザで行う際にレーザの出力変動の影響を受けやすく、電子レンジ調理時の通蒸安定性が劣る傾向がある。また、環境への配慮の観点からは、包装体の構成材料としては再生材料を用いることが好ましい。
【0006】
そこで本発明は、再生材料を用いながら、電子レンジ調理時の通蒸安定性が良好である包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、略矩形の包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部と、背貼りシール部に直交するように包装材の他の一対の両端部がそれぞれヒートシールされて形成された端部シール部と、を備える包装体であって、包装材は、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、背貼りシール部には開封開始部が設けられており、開封開始部を起点として背貼りシール部の延在方向に引っ張って開封した際に進行する裂け目を捕捉して裂け目の進行を誘導するための一対の開封誘導部が、背貼りシール部を挟むようにして、且つ、当該包装体を背貼りシール部側から見たときに背貼りシール部の位置から裏側に回り込まない位置までの範囲内に設けられており、開封誘導部は、包装材を貫通しない程度に設けられた切目線である包装体を提供する。
【0008】
この包装体によれば、再生材料であるメカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートを基材層に用いているので、環境負荷が小さい。また、電子レンジ調理時に蒸気抜きのための小孔(以下「通蒸口」と呼ぶ。)が適切に形成されるので、内圧の上昇による破裂を防止できるとともに、収容した食品を十分に蒸らすことができる。また、この包装体は、開封誘導部に沿った開封を行えることから、開封誘導部の形状次第では開口を広くとることができ、包装材が食器を兼ねることができる。
【0009】
メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレートは、全ジカルボン酸単位に占めるイソフタル酸の割合が0.5mol%~5mol%であってもよい。この場合、基材層の柔軟性が高くなり、積層体にピンホールが発生することが抑制される。
【0010】
ヒートシール性樹脂層がC4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合したポリエチレンであってもよい。この場合、手切れ性がよく、電子レンジ調理時に通蒸口が形成されやすい。
【0011】
基材層は、二軸延伸されたフィルムであってもよい。
【0012】
開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなっていてもよい。この開封誘導部は、出力を18W~30Wとした炭酸ガスレーザを照射して形成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、再生材料を用いながら、電子レンジ調理時の通蒸安定性が良好である包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は、包装体の外観を示す図である。(B)は、(A)の包装体の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、いわゆるピロー型の包装体に関する。この包装体は、開封誘導部があらかじめ形成されたフィルム状ないしシート状の積層体から構成されており、内部に食品を収容している。電子レンジ調理において包装体の一部に通蒸口を形成することで、内部圧による破裂を防止することができる。また、調理後には背貼りシール部に設けた開封開始部から開封して、包装体の長手方向に比較的大きな開口幅を有する開口部を容易に形成することができるので、食品を取り出しやすく、包装材を食器として兼用することも可能である。以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1(A)に示されているとおり、本実施形態の包装体1は、食品を内部に密封した袋体であり、合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部3aと、背貼りシール部3aに直交するようにヒートシールされた二か所の端部シール部3b,3cとを備えている。背貼りシール部3aと端部シール部3b,3c以外の部分で、食品を収容する部分である胴部4を構成している。背貼りシール部3aが形成されている側と形成されていない側とで包装体1の表裏をなしており、その両側を接続する部分は包装体1の厚さに相当するマチを構成している。背貼りシール部3aには、端部シール部3b側に寄った位置に、開封開始部であるノッチ7が設けられている。
【0017】
包装体1は、背貼りシール部3a側から見たときに、背貼りシール部3aの基部6を中心線として、背貼りシール部3aをその両側から挟むようにして線対称に一対の開封誘導線(開封誘導部)5,5が設けられている。ここで基部6とは、背貼りシール部3aと胴部4との境目を指している。開封誘導線5,5は、包装体1を背貼りシール部3a側から見たときに、基部6から胴部4の裏側に回り込まない位置まで(ここでは胴部4のマチに達する手前まで)の範囲内にある。開封誘導線5,5の詳細については後述する。
【0018】
図1(B)は
図1(A)の展開図であり、包装体1の構成材料である包装材100は、樹脂フィルムの積層体からなる矩形の樹脂シートである。包装体1の展開図に相当する包装材100は、その全ての周縁領域において、帯状に縁取られたヒートシール予定部3を有している。すなわち、ヒートシール予定部3は、矩形の縁から矩形の内側へ進入した所定の距離を幅として、矩形の全周に延在している。
図1(B)では、開封誘導線5,5が設けられている図示表面が包装体1の外面側、図示裏面が包装体1の内面側である。ヒートシール予定部3は、図示裏面にある。
図1(B)では、包装材100のうち、図示左右方向にあって図示上下方向に延在している互いに平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされることで、背貼りシール部3aが形成される。
【0019】
包装材100を構成している積層体は、メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(以下「MRPET」とも呼ぶ。)を含む基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を少なくとも備えている。ヒートシール性樹脂層は、包装体1の最内層として積層されている。基材層とヒートシール性樹脂層との間には、両者を貼合する接着剤や、印刷層を備えていてもよい。他に、ガスバリア層、遮光層、紫外線吸収層等を備えていてもよい。基材層は、実質的にMRPETのみからなるフィルムであってもよい。MRPETフィルムは、一軸延伸又は二軸延伸されたフィルムであってもよい。
【0020】
MRPETは、使用済みのPET製品を粉砕して洗浄し、表面の汚れや異物を取り除いた後、高温下に樹脂を曝して樹脂内部に留まっている汚染物質を除去したものである。MRPETは、その化学構造として、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸とイソフタル酸とを含む。本実施形態のMRPETは、全ジカルボン酸単位に占めるイソフタル酸の割合が0.5mol%~5mol%であってもよい。この場合、基材層の柔軟性が高くなり、積層体にピンホールが発生することが抑制される。ケミカルリサイクルポリエチレンテレフタレートの場合は分解・再重合の工程が必要であって環境負荷が大きくなるが、MRPETでは分解・再重合の工程が不要である。
【0021】
基材層の厚さは、例えば10μm~30μmである。基材層が延伸されたフィルムである場合は、延伸の方向は、包装体1の背貼りシール部3aの延在方向と一致していることが好ましい。
【0022】
ヒートシール性樹脂層(シーラント)としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が最も一般的なものとして用いることができる。ポリエチレン樹脂の中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。本実施形態の包装体1の場合には特に、C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合した直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。このポリエチレンは手切れ性が良く、かつ、電子レンジでの加熱時に開封誘導線5,5が部分的に破断して開口し、蒸気抜きとして機能する通蒸口が形成されやすい。ヒートシール性樹脂層は、樹脂を溶融して基材層に押出して積層してもよいし、フィルムに成形されたものを貼り合せてもよい。
【0023】
本実施形態において、ヒートシール性樹脂層は、応力-歪み曲線の、弾性変形範囲における直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.2ギガパスカル(GPa)以上である。このヤング率は0.3ギガパスカル以上であってもよく、0.4ギガパスカル以上であってもよい。ヤング率がこの範囲内にあるとヒートシール性樹脂層が伸びにくく、電子レンジでの加熱時に通蒸口が形成されやすくなる。
【0024】
ヒートシール性樹脂層の厚さは、例えば10μm~50μmであってもよく、20μm~40μmであってもよい。
【0025】
積層体は、耐ピンホール性が高いことが好ましい。耐ピンホール性は、ゲルボ試験や突き刺し強度試験で確認することができる。ゲルボ試験は、局部屈曲疲労試験の一種であり、包装体が輸送中の振動によって繰返し屈曲を受け疲労破壊することを想定する試験である。測定条件等の詳細は実施例にて説明する。突き刺し強度試験は、JIS K 7100に準拠した方法で測定することができる。当該方法に従ったときの突き刺し強度は3N~10Nであってもよく、5N~8Nであってもよい。
【0026】
積層体は、柔軟性が高いことが好ましい。柔軟性は腰強度で表すことができ、例えば、フィルムをループ状に変形させたときの腰の強さ(ループスティフネス)を評価する方法が挙げられる。この測定方法としては、国際公開第2019/182017号公報に記載された方法が挙げられる。この測定方法にて、切り出し幅15mm、ループ長100mm、押込み量10mmの腰強度が10mN~25mNであってもよく、13mN~20mNであってもよく、15mN~18mNであってもよい。
【0027】
積層体は、電子レンジ調理時の通蒸口の形成のされやすさの観点から、破断強度が適切な値であることが好ましい。破断強度はK7127:1999(ISO 527-3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」、及び、JIS K7161-1:2014(ISO 527-1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に準拠して、引張破壊応力として測定することができる。標線間距離50mm、試験速度100mm/分としたとき、積層体の破断強度は8N~20Nであってもよく、10N~15Nであってもよい。
【0028】
また、積層体は、応力-歪み曲線の、弾性変形範囲における直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.45ギガパスカル(GPa)以上であることが好ましい。この測定では、開封誘導線5を形成したサンプルを用意し、これを測定対象として、開封誘導線5を跨いだ二か所(後述する切目線として伸びる方向に垂直な方向における二か所)を引っ張る。当該ヤング率の値が0.45ギガパスカル以上であると、電子レンジでの加熱時に、内圧による積層体の伸び(包装体1の破裂に耐える程度)と通蒸口の形成のされ具合がバランスしやすい。
【0029】
開封誘導線5,5は、包装材100を貫通しない程度の深さで設けられた切目線である。本実施形態において、開封誘導線5,5はいずれも、それぞれが直線形状である三つの部位からなっている。すなわち、開封誘導線5,5はいずれも、端部シール部3bに近い側、かつ、背貼りシール部3aの基部6に近い側において背貼りシール部3aの延在方向と平行に延びている第1の並走部5aと、第1の並走部5aの端部シール部3c側の端点から引き続き、端部シール部3c側に、かつ、背貼りシール部3aから遠ざかるように延びている横断部5bと、横断部5bの端部シール部3c側の端点から引き続き、背貼りシール部3aの延在方向と平行に延びている第2の並走部5cとからなる。ここで第1の並走部5aは、背貼りシール部3aの延在方向においてノッチ7の存在位置を内包するように位置している。第2の並走部5cの終点5dは、背貼りシール部3aの延在幅の中央を過ぎ、かつ、端部シール部3cまでは達しない位置にある。終点5dから端部シール部3cまでの距離は、2cm~15cmであってもよく、3cm~12cmであってもよく、4cm~10cmであってもよい。
【0030】
開封誘導線5,5における切れ目の深さは、当該部分を他の部分と比べて脆弱な構造とすることができ、かつ、包装材100を貫通しない程度(いわゆる「ハーフカット」)であればよく、例えば、ヒートシール性樹脂層以外の層が切れているように形成されてもよい。このような切目線は、ダイカッターやロータリーダイカッター等の刃物を用いる方法や、炭酸ガスレーザ等のレーザ加工機を用いる方法によって形成することができる。レーザの出力は、10W~15Wであってもよく、15W~18Wであってもよく、18W~30Wであってもよい。レーザ加工による場合は、レーザの線幅に基づいて材料が融けることで、幅のある切目線を形成することができる。この材料が融けて形成された切目線の幅は、例えば50~300μm、好ましくは100~250μmである。
【0031】
包装体1は、内部に収容した食品を電子レンジ調理によって加熱し蒸らすことができる。通常、密封された包装体を加熱すると内圧が高まって包装体が破裂するが、本実施形態の包装体1では、内圧が高まって膨らみ、胴部4全体に張力が掛かる格好となったときに、引張応力に対して脆弱とされた開封誘導線5,5が部分的に破断し、通蒸口が形成される。通蒸口から蒸気が噴出することで、内圧が下がって包装体1の破裂が防止されるとともに、内部に充満している蒸気によって食品を蒸らすことができる。
【0032】
包装体1を開封するときは、はじめに、倒れた状態になっている背貼りシール部3aを起こす。次に、背貼りシール部3aのうちノッチ7の両側をそれぞれ指でつまんだ後、端部シール部3c側へ引っ張ることで包装体1の引き裂きが始まる。ノッチ7を起点として引き裂くと、裂け目9は背貼りシール部3aを胴部4側へ下りて基部6に達し、基部6において二股に分かれて進行し、開口部11を形成しながら第1の並走部5a,5aに達する。換言すれば、進行する裂け目9を第1の並走部5a,5aが捕捉する。その後、引き裂きを続けると(
図2)、裂け目9は第1の並走部5a,5a、横断部5b,5b、第2の並走部5c,5cに順次誘導されて進行し、第2の並走部5c,5cの終点5d,5dに到達する。更に端部シール部3c側への引き裂きを続けると、開封誘導線5,5が存在しない部分において裂け目9が直線的に進行し、開口部11を大きく形成することができる(
図3)。これにより、食品13を取り出しやすくなる。また、開口部11が十分に大きいことから、包装材が食器を兼ねることができ、食品13を他の食器に移し替える必要がない。
【0033】
包装体1によれば、基材としてバージン材料ではなく再生材料であるMRPETを用いているので、環境負荷が小さい。従来の包装体に用いていた包装材では、基材であるナイロンフィルムの吸湿性が高いために、開封誘導線5,5が設けられている部分でヒートシール性樹脂層を支持する力が弱くなり、ヒートシール性樹脂層が伸びてしまうことで通蒸口が形成されにくかったが、本実施形態の包装体1は基材がMRPETで構成されているので、吸湿しにくく通蒸口が適切に形成される。また、レーザ加工による加工深さの調整に関し、特にレーザ出力が低い領域(例えば10W~15W)において、ナイロンフィルムよりもMRPETフィルムのほうが調整しやすい。
【0034】
そして開封時には、第1の並走部5a,5aが背貼りシール部3aの延在方向においてノッチ7の存在位置を内包するように位置しているので、基部6から二股に分かれて進行した裂け目9を第1の並走部5a,5aが捕捉しやすい。また、包装材の基材層が一軸延伸ナイロンフィルムからなり、その延伸方向が引き裂く方向と一致しているので、開封誘導線5,5による誘導を終えた後の引き裂きにおいても直線的に引き裂きやすい。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では胴部にマチがある形状の包装体を例にしたが、マチがない形状であってもよい。また、上記実施形態では開封誘導線の形状を三つの直線部位からなる連続線で構成したものとしたが、曲線で構成してもよく、連続線のみならず破線、点線、又はこれらの組み合わせからなるものとしてもよい。また、上記実施形態では二本の開封誘導線を背貼りシール部に関して対称形としているが、非対称形としてもよい。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
<使用材料>
(基材層)
・メカニカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(MRPET)
二軸延伸されたMRPETフィルム。商品名「R-8100」、東洋紡株式会社製。厚さ12μm。
・ポリエチレンテレフタレート(PET)
二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム。商品名「E-5100」、東洋紡株式会社製。厚さ12μm。
・ナイロン
一軸延伸されたナイロンフィルム。商品名「ユニアスロン TB-1000」、出光ユニテック株式会社製。厚さ15μm。
【0038】
(ヒートシール性樹脂層)
C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合した直鎖状低密度ポリエチレンを用いた。
・LLDPE(KF101)
直鎖状低密度ポリエチレン。商品名「KF101」、スカイフィルム株式会社製。厚さ40μm。ヤング率0.40GPa。
【0039】
<積層体の作製>
・積層体1
基材層としての二軸延伸されたMRPETフィルムに、インキ「リオグラン」(商品名、東洋インキ株式会社製)を用いて印刷を施した。この印刷面に対して、ヒートシール性樹脂層としての「LLDPE(KF101)」を接着剤「タケラックA626」(商品名、三井化学株式会社製)及び「タケネートA50」(商品名、三井化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、積層体1を作製した。
・積層体2
基材層を二軸延伸されたPETフィルムに変更したこと以外は上記と同様にして、積層体2を作製した。
・積層体3
基材層を一軸延伸されたナイロンフィルムに変更したこと以外は上記と同様にして、積層体2を作製した。
【0040】
<ゲルボ試験>
積層体1~3のそれぞれを対象として、装置「BE-1006恒温槽付ゲルボフレックステスター」(テスター産業株式会社製)を用いて、ゲルボ試験を行った。積層体をA4判にカットし、基材層側を装置に装着した。下記の条件で試験をし、試験後に積層体1が全貫通していないかどうかを、チェック液が浸透しているかどうかによって確認した。
[条件]25℃、1000往復、440度ねじり×3.5インチ直進+2.5インチ直進。この条件においては、ピンホール数が50個以下であれば包装体の構成材料としての実用に耐え得る。
積層体1~3のそれぞれについて三つのサンプルで試験したところ、ピンホール数は以下のとおりであった。
・積層体1…20個、22個、23個
・積層体2…28個、30個、30個
・積層体3…2個、1個、3個
いずれの積層体も、ピンホール数は包装体の構成材料としての実用に耐えうる数であった。
【0041】
<突き刺し強度試験>
積層体1~3のそれぞれを対象として、JIS K 7100に準拠した方法で突き刺し強度試験を行った。直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の梁を毎分50mmで動かした。この条件では、突き刺し強度が3N以上であれば包装体の構成材料としての実用に耐え得る。結果は以下のとおりであった。
・積層体1…6.8N、6.7N、6.8N
・積層体2…6.7N、6.8N、6.7N
・積層体3…9.7N、9.9N、9.5N
いずれの積層体も、突き刺し強度は包装体の構成材料としての実用に耐え得る大きさであった。
【0042】
<腰強度試験>
積層体1~3のそれぞれを対象として、装置「LooP Stiffness Tester」(型式:DA、株式会社東洋精機製作所製)を用い、国際公開第2019/182017号公報に記載された方法で腰強度測定を行った。積層体を、幅15mm、ループ長を100mmとできる大きさにカットし、ヒートシール性樹脂層側を内側にしてループ状に変形させた。下記の条件で試験をした。この試験では、数値が小さいほど積層体が柔らかいことを意味する。
[条件]切り出し幅15mm、ループ長100mm、押込み量10mm。
積層体1~3のそれぞれについて三つのサンプルで試験したところ、腰強度は以下のとおりであった。
・積層体1…16mN、16mN,18mN
・積層体2…22mN,24mN,24mN
・積層体3…36mN、36mN、38mN
【0043】
<破断強度の測定>
積層体1~3のそれぞれを対象として、積層体の基材層側から炭酸ガスレーザを照射し(最大出力33.0W、スキャン速度800mm/秒)、ヒートシール性樹脂層を貫通しない開封誘導線を形成した。レーザの出力の種類を9.9W、13.2W、16.5W、19.8W、23.1W、26.4W、29.7Wとした。破断強度の測定方法としては、積層体1~3のそれぞれを対象として、K7127:1999(ISO 527-3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」、及び、JIS K7161-1:2014(ISO 527-1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に準拠して、引張破壊応力を測定した。積層体1~3のそれぞれについて、レーザの各出力につき三回ずつ破断強度を測定した。破断強度の測定条件は、標線間距離50mm、試験速度100mm/分とした。結果を表1に示す。また、平均の値をグラフ化したものを
図4に示す。
【0044】
【0045】
表1及び
図4に示した結果によれば、積層体1~3のいずれも、レーザ出力が15W以上の領域で破断強度が安定していることが分かる。
【0046】
<包装体の形成と通蒸確認>
積層体1~3の基材層側から炭酸ガスレーザを照射し(出力25W、スキャン速度800mm/秒)、
図1(B)に示した形状となるように、ヒートシール性樹脂層を貫通しない開封誘導線を形成した。図示上下方向の存在領域が50mm、図示左右方向の存在領域が70mmであるようにした。内部に水30mLを充填し、
図1(A)に示した形状となるように各端部をヒートシールし、それぞれ包装体1~3を得た。背貼りシール部にアイノッチを設けた。包装体の大きさは、155mm×250mm×20mmであった。
【0047】
各包装体を電子レンジにて600Wで2分間加熱した。それぞれの包装体の電子レンジ調理中の通蒸性を確認した。レーザ加工時の各出力につき三回ずつ試験を行い、通蒸口が形成され正常に蒸気が抜けた場合を「良好」、一つのサンプルでも蒸気が抜けなかった場合や、開封誘導線以外の部分で破袋が発生した場合を「不良」とした。結果を表2に示す。
【0048】
【0049】
表2に示した結果によれば、基材層としてMRPRTを用いた場合でも、レーザ出力が19.8W以上であれば問題なく通蒸することができることが分かる。
1…包装体、3…ヒートシール予定部、3a…背貼りシール部、3b,3c…端部シール部、4…胴部、5…開封誘導線(開封誘導部)、5a…第1の並走部、5b…横断部、5c…第2の並走部、5d…第2の並走部の終点、6…基部、7…ノッチ(開封開始部)、9…裂け目、11…開口部、13…食品、100…包装材。