(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007875
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】自動判別チップ置台
(51)【国際特許分類】
B23Q 13/00 20060101AFI20240112BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240112BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B23Q13/00
B23Q17/00 F
B23Q11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109247
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】赤津 典孝
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029EE13
(57)【要約】
【課題】チップの取り付けに間違いが生じないようにするための自動判別チップ置台を提供すること。
【解決手段】同一のチップを収納するチップ収納容器、前記チップ収納容器の開口部を塞ぐ蓋部材および、前記蓋部材を開閉動作させるアクチュエータをそれぞれに備えた複数のチップ収納ユニットと、工具交換指令に従い対応するチップを収納した前記チップ収納ユニットについて前記アクチュエータを動作させる駆動回路と、を有する自動判別チップ置台であり、例えば、前記チップ収納ユニットは、前記チップ収納容器が上面を開口するチップ収納箱であり、前記蓋部材が前記チップ収納箱の上面開口部を塞ぐ蓋プレートであり、前記アクチュエータは、前記蓋プレートを上下に変位させるエアシリンダであり、前記駆動回路は、電磁切換弁によってエアポンプから供給されるエアの切り替えを行うエア駆動回路である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のチップを収納するチップ収納容器、前記チップ収納容器の開口部を塞ぐ蓋部材および、前記蓋部材を開閉動作させるアクチュエータをそれぞれに備えた複数のチップ収納ユニットと、
工具交換指令に従い対応するチップを収納した前記チップ収納ユニットについて前記アクチュエータを動作させる駆動回路と、
を有する自動判別チップ置台。
【請求項2】
前記チップ収納ユニットは、前記チップ収納容器が上面を開口するチップ収納箱であり、前記蓋部材が前記チップ収納箱の上面開口部を塞ぐ蓋プレートであり、前記アクチュエータは、前記蓋プレートを上下に変位させるエアシリンダであり、前記駆動回路は、電磁切換弁によってエアポンプから供給されるエアの切り替えを行うエア駆動回路である請求項1に記載の自動判別チップ置台。
【請求項3】
前記駆動回路は、工作機械の工具交換の指令に従い対応するチップを収納した前記チップ収納ユニットについて前記アクチュエータを動作させる請求項1または請求項2に記載の自動判別チップ置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械におけるワークの加工に使用される複数種類のチップを用意し、タレット装置の交換対象工具に対応して所定のチップを判別する自動判別チップ置台に関する。
【背景技術】
【0002】
チップの交換に関しては、例えば下記特許文献1に、フライス盤やマシニングセンタ等の工作機械で使用されるチップ交換装置が開示されている。そのチップ交換装置は、工作機械の近傍に配置され、或は工作機械の一部として構成されるものである。チップ交換装置は、多関節ロボットなどからなる駆動装置、転削工具のねじを自動的に着脱するドライバユニット、チップを保持するチップ保持部、清掃するためのエアブローノズル、ねじの供給と回収を行うねじ供給機、ホルダの位置決めを行うホルダ保持部などによって構成されている。
【0003】
チップ交換装置にはさらに、チップを収納するチップ台が設けられている。ホルダに対して取り外しするチップを収納する従来例のチップ台は、使用前チップ用トレイと、使用済チップ用トレイが設けられている。使用前チップ用トレイは、使用前の複数のチップを並べてセットされたチップマガジンとして機能するものであり、使用済チップ用トレイは、使用済のチップを回収するための回収トレイである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例はチップ交換を自動で行うものであるため、チップ台のチップ用トレイに単にチップが整然と並べられているだけである。使用されるチップは同じような形状のものが多く存在し、作業者が見分けて取り付けようとすれば間違いが生じることがあるものの、自動で行われるチップの取出しに間違いが生じることはない。しかし、従来例のようなチップ交換装置は、コストがかかるだけではなく、可動域も含めた設置スペースが必要になってしまい、その適用が進まない。そこで、作業員が手作業でチップを交換する方法を採用しながらも、取付けに間違いが生じてしまいワークを無駄にしてしまうことが無いようにすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、チップの取り付けに間違いが生じないようにするための自動判別チップ置台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動判別チップ置台は、同一のチップを収納するチップ収納容器、前記チップ収納容器の開口部を塞ぐ蓋部材および、前記蓋部材を開閉動作させるアクチュエータをそれぞれに備えた複数のチップ収納ユニットと、工具交換指令に従い対応するチップを収納した前記チップ収納ユニットについて前記アクチュエータを動作させる駆動回路と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、工具交換指令に従い、対応するチップを収納したチップ収納ユニットについてアクチュエータが動作し、チップ収納容器の開口部を塞ぐ蓋部材が開くことにより、作業者が収納容器から工具交換の対象となっているチップを取り出すことができる。よって、似ている形状のチップが使用されていたとしても、自動によって該当するチップが収納されたチップ収納容器において蓋部材が開くため、作業者は間違うことなくチップの交換が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】工作機械の一例として正面2軸旋盤を示した外観斜視図である。
【
図2】機体カバーを除いた正面2軸旋盤の内部構造を示した斜視図である。
【
図3】自動判別チップ置台の一実施形態を上方から示したイメージ図である。
【
図4】自動判別チップ置台の一実施形態の一部を側方から示したイメージ図である。
【
図5】工作機械を制御する制御システムを示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る自動判別チップ置台の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の自動判別チップ装置は、例えば
図1に示す工作機械に対して近傍に配置され、或はその一部として機体側部などに取り付けられる。
図1は、工作機械の一例として正面2軸旋盤を示した外観斜視図であり、
図2は、機体カバーを除いた正面2軸旋盤の内部構造を示した斜視図である。
【0011】
正面2軸旋盤である工作機械1は、左右それぞれに配置された主軸装置3,4と、タレット装置5,6が設けられている。機体カバー50によって覆われた機内には加工室が設けられ、機体カバー50の正面には中央部51の左右両側に開閉扉53,55が設けられている。また、工作機械1は、外部に配置されるストッカと機内との間でワークを自動搬送するためのワーク自動搬送機2が設けられている。ワーク自動搬送機2は、ガントリ式のワーク搬送機であり、ワークの把持することができるロボットハンドを、上下左右方向および前後方向に移動可能な構造となっている。
【0012】
主軸装置3,4は、ともに主軸チャックによってワークを把持し、スピンドルモータの回転を受けてワークに回転が与えられる。また、各々のタレット装置5は、多角形の刃物台11に複数の工具Tが工具ホルダを介して着脱可能に取り付けられ、刃物台11を回転させるサーボモータの駆動制御によって、複数の工具Tから加工に使用される工具Tの旋回割出しが行われる。そして、刃物台11が各軸方向に移動することにより、回転するワークに対して工具Tが当てられることで外径切削などが行われる。このような加工制御は、左右の旋盤において独立して行われる。
【0013】
工作機械1でワーク加工が繰り返されることにより、タレット装置5,6に取り付けられた複数の工具Tについて交換が必要になる。工具Tの交換は使用頻度の違いによってタイミングが異なる。そのため、各工具Tは加工回数がカウントされ、予め寿命として設定されている交換回数に達したところで、操作表示装置7を通して作業者に対する報知が行われる。そして、工具交換では対象となる工具Tが交換位置に旋回割出しされ、作業者によって工具Tの交換処理が行われる。ただし、バイトなどチップの交換が行われる工具Tは、複数あるチップの形状がそれぞれ似ているため、従来のようにトレイに並べるだけのチップ置台では作業者による間違いが生じ易かった。
【0014】
そこで、本実施形態の工作機械1には、交換する工具Tのチップを自動で判別する自動判別チップ置台が設けられている。
図3は、本実施形態の自動判別チップ置台を上方から示したイメージ図である。また、
図4は、同じ自動判別チップ置台の一部を側方から示したイメージ図である。この自動判別チップ置台8は、チップを種類ごとに分けて収納する複数のチップ収納ユニット20(20A,20B,20C,20D,20E,20F)から構成されている。なお、チップ収納ユニット20の数は、使用されるチップの種類によって適宜増減する。
【0015】
チップ収納ユニット20は、チップ収納容器21内に仕切りのついたトレイ22が入っており、そのトレイ22には同一のチップが複数個整然と並べられている。チップ収納容器21は上面が開口した箱であり、その開口部にはエアシリンダ25によって開閉動作する蓋プレート23が被せられている。
図4に実線で示す状態が蓋プレート23の閉位置であり、作業者がチップ収納容器21内のチップを取ろうとしても、手が入らないようになっている。エアシリンダ25は単動シリンダであり、内蔵されたスプリングによって収縮方向に常時付勢力が作用している。従って、通常時のチップ収納ユニット20は、チップ収納容器21の上方開口部が蓋プレート23に塞がれている。
【0016】
エアシリンダ25は、エアが供給されることにより、そのエア圧によってスプリングの付勢力に抗してピストンが変位し、ピストンロッドによる伸長動作が行われる。それによりチップ収納ユニット20は、蓋プレート23が
図4に一点鎖線で示す位置まで上昇し、チップ収納容器21の上面が開放され、作業者が中のトレイ22からチップを取り出すことが可能になる。工作機械1では、こうしたチップ収納ユニット20を複数有する自動判別チップ置台8がタレット装置5,6に連動するように構成されている。
【0017】
図5は、工作機械1を制御する制御システムを示したブロック図である。工作機械1の制御装置30にはマイクロプロセッサ(CPU)51、ROM32、RAM33、不揮発性メモリ34がバスラインを介して接続されている。CPU31は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM32にはCPU31が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM33には一時的な計算データや表示データ等が格納される。不揮発性メモリ34にはCPU31が行う処理に必要な情報が記憶され、工作機械1のシーケンスプログラムなどが格納されている。特に、タレット装置5,6の交換動作に自動判別チップ置台8を連動させるチップ自動判別プログラムが格納されている。
【0018】
制御装置30にはI/Oポート35が設けられており、そのI/Oポート35を介して主軸装置3,4およびタレット装置5,6、ワーク自動搬送機2などの駆動モータが各々ドライバを介して接続されている。また、工作機械1は、
図1に示すように、機体前面部にモニタを有する操作表示装置7が取り付けられ、I/Oポート35を介して制御装置30に接続されている。自動判別チップ置台8は、複数のエアシリンダ25を選択して伸縮動作させるためのエア駆動回路9を有し、電磁切換弁の制御によってエアポンプから供給されるエアの切り替えが行われるようになっている。制御装置30は、I/Oポート35を介してそのエア駆動回路9に接続されている。
【0019】
ところで、タレット装置5は、刃物台11の周方向に付された工具番号T1-T10の各位置に工具ホルダを介して各種工具Tが取り付けられ、タレット装置6でも同じく、刃物台11の周方向に付された工具番号T11-T20の各位置に工具ホルダを介して各種工具Tが取り付けられている。一方、自動判別チップ置台8には、チップ収納ユニット20A-20Fに対して
図3に示す工具番号に対応して所定のチップがそれぞれ収納されている。そして、制御装置30にはチップ収納ユニット20A-20Fと工具番号T1,T2,T5,T12,T15,T18とを関連付けたテーブルが格納されている。
【0020】
工作機械1は、前述したように工具Tの加工回数が寿命を知らせる交換回数に達したところで、警告とともに対象となる工具番号が操作表示装置7のモニタに表示される。そのため、作業者によって操作表示装置7を使用した工具交換モードへの切り替えが行われ、モニタに表示される工具交換選択画面から対象となる工具番号が選択される。それにより制御装置30からは、タレット装置5又はタレット装置6へ、さらに自動判別チップ置台8へと交換指令信号が送られる。
【0021】
タレット装置5又はタレット装置6では、旋回割り出しによって該当する番号の工具Tが取り換え位置に配置される。工具交換は、作業者が左右の開閉扉53又は開閉扉55を中央側から左右外側へと開いて行うため、作業しやすい正面位置に該当する工具Tが移動して位置決めされる。例えば、
図2に示す左側のタレット装置5は時計における3時の位置(交換位置P1)に対象工具T配置され、同図右側のタレット装置6では9時の位置(交換位置P2)に対象工具Tが配置される。
【0022】
一方、自動判別チップ置台8では、工具番号に従った制御装置30からの制御指令によってエア駆動回路9の電磁切換弁が切り換えられ、該当するチップ収納ユニット20のエアシリンダ25にエアが供給される。エアシリンダ25は、エア圧によって加圧されたピストンがスプリングの付勢力に抗して変位し、
図4の実線で示す収縮状態から一点鎖線で示す伸長状態へと変化することになる。そうしたエアシリンダ25の伸長動作により、チップ収納ユニット20は、蓋プレート23が被せられていたチップ収納容器21の上面が開放される。
【0023】
作業者は、複数あるチップ収納ユニット20A―20Fから該当するものだけが動作するため、迷うことなくトレイ22からチップを取り出すことができる。そして、作業者が開いた開閉扉83又は開閉扉85の加工室内には、正面になる交換位置P1または交換位置P2にタレット装置5又はタレット装置6の対象工具Tが位置している。作業者は、そうした刃物台11から工具Tを取り外し、寿命となったチップを新しいものに交換する。
【0024】
よって、本実施形態によれば、似たような複数種類のチップが使用される場合であっても、作業者が自らチップを探す必要がなくなり、該当するチップ収納ユニット20が自動で蓋プレート23を開けるため、間違うことなく該当するチップを交換することができる。これにより加工ミスがなくなり、ワークを無駄にすることがなくなる。また、工作機械1では工具交換の際に該当する工具Tの旋回割出しと、自動判別チップ置台8におけるチップ収納ユニット20の開動作とを連動させた制御にしているため、作業者にとって操作が簡単である。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では自動判別チップ置台の実施に関して正面2軸旋盤を例に挙げて説明したが、他の工作機械であってもよい。
また、チップ収納ユニットを構成するアクチュエータとしてエアシリンダを例に挙げて説明したが、モータによって蓋の開閉を行うよう構成であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…工作機械 3,4…主軸装置 5,6…タレット装置 8…自動判別チップ置台 9…エア駆動回路 11…刃物台 20…チップ収納ユニット 21…チップ収納容器 22…トレイ 23…蓋プレート 25…エアシリンダ 30…制御装置 T…工具