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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078759
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】放射線診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20240604BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20240604BHJP
   G01T 1/20 20060101ALN20240604BHJP
【FI】
G01T1/161 C
A61B6/03 320W
G01T1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191288
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 博樹
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 将太
(72)【発明者】
【氏名】林 奈々世
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁人
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
4C188
【Fターム(参考)】
2G188AA02
2G188BB04
2G188CC12
2G188CC21
2G188DD13
2G188DD16
4C093AA22
4C093CA13
4C093CA35
4C093CA41
4C093EB20
4C093EC45
4C188EE02
4C188FF02
4C188FF04
4C188FF07
4C188GG14
4C188GG18
4C188JJ04
(57)【要約】
【課題】放射線診断装置の動作状態が変化しても、発熱体における、温度の均一性を確保しつつ、冷却すること。
【解決手段】実施形態に係る放射線診断装置は、発熱体と、ヒートシンクと、ダクトと、ファンとを備える。ダクトは、発熱体に着接し、ヒートシンクを当該発熱体側に収容し、吸気用開口と当該吸気用開口よりも小さい排気用開口とを有する。ファンは、ダクトの吸気用開口および排気用開口の少なくとも一方に設けられる。ダクトは、発熱体の温度分布に基づいてダクトの内部空間を変形させる変形機構を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体と、
ヒートシンクと、
前記発熱体に着接し、前記ヒートシンクを当該発熱体側に収容し、吸気用開口と当該吸気用開口よりも小さい排気用開口とを有するダクトと、
前記ダクトの前記吸気用開口および前記排気用開口の少なくとも一方に設けられたファンと、
を備え、
前記ダクトは、
前記発熱体の温度分布に基づいて前記ダクトの内部空間を変形させる変形機構、
を有する放射線診断装置。
【請求項2】
前記変形機構は、前記内部空間のうち、前記発熱体側の温度分布に応じて前記内部空間を変形させる、
請求項1に記載の放射線診断装置。
【請求項3】
前記変形機構は、複数箇所において測定した温度の最大差が閾値よりも大きい場合に前記内部空間を小さくするように変形させる、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項4】
前記変形機構は、所定箇所において測定した温度と、上限閾値および下限閾値との比較結果に応じて、前記内部空間を変形させる、
請求項2に記載の放射線診断装置。
【請求項5】
前記変形機構は、前記ダクトの内部空間のうち、前記発熱体側に対向する内側面の形状を変形させる、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の放射線診断装置。
【請求項6】
前記変形機構は、
前記発熱体側に対向する内側面を構成する複数の部品と、
前記複数の部品を接続する接続部と、
前記内部空間の温度分布に応じて前記発熱体に近付く方向または前記発熱体から遠ざかる方向に前記接続部を移動させる動力部と、
を備える、
請求項5に記載の放射線診断装置。
【請求項7】
前記変形機構は、
前記発熱体側に対向する内側面を構成し、前記内部空間の温度分布に応じて弓状に変形するバイメタル
を備える、
請求項5に記載の放射線診断装置。
【請求項8】
前記発熱体は、複数の放射線検出器である、
請求項5に記載の放射線診断装置。
【請求項9】
前記内部空間の変形量と撮影条件とを関連付けたテーブルを記憶する記憶部と、
撮影ごとに、当該撮影の撮影条件と前記内部空間の変形量とを関連付けて前記記憶部に記憶させる制御部と、
をさらに備えた請求項1ないし8のいずれか1項に記載の放射線診断装置。
【請求項10】
前記制御部は、
撮影の開始時に、前記テーブルにおいて当該撮影の撮影条件に関連付けられた前記内部空間の変形量を初期値として前記変形機構に与える、
請求項9記載の放射線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書および図面に開示の実施形態は、放射線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PET(Positron Emission Tomography)装置等の放射線診断装置を構成するコンポーネントには、動作に応じて発熱する発熱体が含まれる。たとえば、放射線検出器は、放射線が照射された際に、検出素子や回路基板等が発熱してしまう。このため、この種の発熱体の発熱による撮影画像の画質低下や故障を防ぐよう、発熱体の冷却を行うことが好ましい。
【0003】
発熱体を冷却する方法として、ヒートシンクを利用する方法がある。図9には、直方体形状を有し、上流端と下流端がそれぞれ同形状の吸気用開口と排気用開口として開放されたダクト4cの内部に、スリットが入った直方体形状のヒートシンク3が設けられる場合の例を示した。この場合、ダクト4cの内部に風を通すことにより、ヒートシンク3を冷却することができる。このため、ダクト4cを発熱体(図9では図示せず、たとえば検出器モジュール)に当接させ、ダクト4cに空気を通すことにより、ヒートシンク3を介して発熱体を冷却することができる。
【0004】
しかし、図9に示す形状のダクト4cを用いた場合、ダクト4cに冷風を流すと、風上側の温度は低くなるが、風下側になるほどヒートシンク3の放熱を受けて温度が高くなってしまう。このため、ヒートシンク3の風上から風下に至る温度の均一性を確保することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-307040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書および図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、放射線診断装置の動作状態が変化しても、発熱体における、温度の均一性を確保しつつ、冷却することである。ただし、本明細書および図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限らない。後述する各実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る放射線診断装置は、発熱体と、ヒートシンクと、ダクトと、ファンとを備える。ダクトは、前記発熱体に着接し、前記ヒートシンクを当該発熱体側に収容し、吸気用開口と当該吸気用開口よりも小さい排気用開口とを有する。ファンは、前記ダクトの前記吸気用開口および前記排気用開口の少なくとも一方に設けられる。前記ダクトは、前記発熱体の温度分布に基づいて前記ダクトの内部空間を変形させる変形機構を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る放射線診断装置の外観を示す斜視図。
図2図2は、実施形態1に係るダクトの構造を示す断面図。
図3図3は、実施形態1に係る変形機構の動作を示すフローチャート。
図4図4は、実施形態1に係る変形機構の一例を示す断面図。
図5図5は、実施形態1に係る変形機構の他の例を示す断面図。
図6図6は、実施形態2に係るダクトの構造を示す断面図。
図7図7は、実施形態3に係るダクトの構造を示す断面図。
図8図8は、実施形態1のシミュレーション結果を示す図。
図9図9は、従来技術に係る放射線診断装置の外観を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、放射線診断装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
[実施形態1]
実施形態1は、2つの部材を回転機構で連結させることにより、ダクトの内部空間を変形させる放射線診断装置1に関する。
【0011】
図1は、実施形態1に係る放射線診断装置1の外観を示す斜視図である。放射線診断装置1は、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、X線CT(Computed Tomography)装置等である。
【0012】
放射線診断装置1は、放射線検出器2と、ヒートシンク3と、ダクト4と、ファン5とを備えている。放射線診断装置1がPET装置である場合は、放射線検出器2は、ガンマ線を検出するガンマ線検出器であり、複数設置される。放射線検出器2は、発熱体の一例である。図1では、ダクト4の手前側側面および上面を切断してダクト4の内部構造を示してある。
【0013】
たとえば放射線検出器2がガンマ線を検出するガンマ線検出器である場合には、放射線検出器2は、ガンマ線の入射角度を規定するためのコリメータと、コリメータによってコリメートされたガンマ線が入射すると瞬間的な閃光を発するシンチレータと、ライトガイドと、シンチレータから射出された光を検出する2次元に配列された複数の光電子増倍管と、シンチレータ用電子回路などを有する。シンチレータは、たとえばタリウム活性化ヨウ化ナトリウムNaI(Tl)により構成される。
【0014】
ヒートシンク3は、たとえば、風上側から風下側に貫通する複数のスリットが入った直方体形状をなし、吸収した熱を空気中に発散(放熱)することにより冷却を行う。ヒートシンク3の複数のスリットは、例えば、ヒートシンク3の内部を複数のフィンで区切ることで設けられる。
【0015】
ダクト4は、複数の放射線検出器2に1つの側面が着接し、ヒートシンク3を放射線検出器2側に収容し、吸気用開口41と、排気用開口42と、変形機構43とを有する。吸気用開口41は、ダクト4外部の空気をダクト4内部に取り入れるための開口であり、ヒートシンク3の高さよりも高い高さを有するよう形成される。排気用開口42は、ダクト4内部の空気を排出するための開口であり、吸気用開口41よりも小さいサイズ(たとえばヒートシンク3の高さと同程度の高さを有するサイズ)に形成される。吸気用開口41と、排気用開口42との間の距離は、たとえば、200mmである。変形機構43は、複数の放射線検出器2の温度分布に基づいてダクト4の内部空間を変形させる。変形機構43の詳細は、後述する。
【0016】
ファン5は、ダクト4の排気用開口42に設けられ、ダクト4内部の空気を排気する。なお、ファン5は、ダクト4の吸気用開口41および排気用開口42の少なくとも一方に設けられてもよい。すなわち、ファン5は、ダクト4の吸気用開口41に設けられ、ダクト4外部の空気を吸気してもよい。また、ファン5は、ダクト4の吸気用開口41および排気用開口42の両方に設けられ、吸気用開口41に設けられたファン5がダクト4外部の空気を吸気し、排気用開口42に設けられたファン5がダクト4内部の空気を排気するようにしてもよい。
【0017】
冷却する空気の温度上昇ΔTは、式(1)で求められる。
ΔT = W/(Cp・ρ・Q)・・・(1)
ただし、Wは発熱体の発熱量[W]、Cpは空気の定圧比熱[kJ/kg・℃]、ρは空気の密度[kg/m]、Qはヒートシンク3のフィン間を通る風量[m/s]である。たとえば、図1に示すように排気用開口42から吸気用開口41に向かって流路断面積が小さいダクト4を用いる場合、ヒートシンク3のフィン間を通る風量Qは、排気用開口42に向かうほど大きくすることができる。
【0018】
また、熱伝達による放熱の際の温度上昇ΔT’は、式(2)で求められる。
ΔT’ = W/S・h・・・(2)
ただし、Sは面積[m]、hは熱伝導率[W/m・K]である。
【0019】
このように、ヒートシンク3を通る空気の温度ΔTおよび風量Qを調整することにより、全体の温度上昇を調整できることがわかる。そこで、実施形態に係る放射線診断装置1は、ダクト4の風上側から風下側に着接された発熱体を均一に冷却するよう、放射線診断装置1の動作状態、すなわち発熱体発熱状況に合わせて、ダクト4の内部形状を変化させる。
【0020】
図2は、実施形態1に係るダクト4の構造を示す断面図である。放射線検出器2の温度分布は、放射線検出器2の温度を直接計測することで取得することが好ましいが、図2に示すように、たとえばダクト4の内側面のうち、ヒートシンク3が載置された放射線検出器2側の内側面の複数箇所の温度から推定してもよい。この場合、温度センサ6は、図2に示すように、ヒートシンク3の底面と、ダクト4の、放射線検出器2側の内側面との間に、風上から風下にかけて複数箇所に設置される。各温度センサ6は、温度の計測値のデータを制御機能435に出力する。
【0021】
変形機構43は、ダクト4の内部空間のうち、放射線検出器2側の温度分布に応じて当該内部空間を変形させる。変形機構43は、ダクト4の内部空間のうち、放射線検出器2側に対向する内側面の形状を変形させる。変形機構43は、板状部材431、432と、回転機構433と、移動機構434と、制御機能435と、支持部436、437とを備えている。
【0022】
変形機構43の板状部材431、432は、ダクト4の、放射線検出器2側の内側面に対向する内側面を構成する。板状部材431、432は、複数の部品の一例である。回転機構433は、板状部材431および432を、回転機構433を軸に回動自在に接続する。たとえば回転機構433が上下に移動することにより、板状部材431と、432とがなす角度が任意の角度に変更される。回転機構433は、たとえば、蝶番などを用いて構成することができる。回転機構433は、接続部の一例である。なお、板状部材は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。たとえば、板状部材が3つである場合には、回転機構は、2つ用いられる。板状部材の数を増やすことにより、ダクト4の放射線検出器2側の内側面に対向する内側面の形状の自由度を高めることができる。
【0023】
移動機構434は、制御機能435による制御の下において、放射線検出器2に近付く方向または放射線検出器2から遠ざかる方向に回転機構433を移動させる機構を含む。図2に示すように、移動機構434は、たとえば、回転機構433を上下方向(放射線検出器2側の内側面に垂直な方向)に移動させる。移動機構434は、たとえば、モータの回転運動を当該上下運動に変換するラックアンドピニオン等であり、動力部の一例である。
【0024】
制御機能435は、複数の温度センサ6から温度の計測値を示すデータを取得し、ダクト4内部の、放射線検出器2側の温度分布に応じて、移動機構434を制御して、回転機構433を上下方向に移動させる機能を含む。なお、移動機構434および制御機能435は、板状部材431、432の上側側面とダクト4とで形成される空間(図1右上のデッドスペース(板状部材431、432の上側)参照)に設けてもよい。
【0025】
制御機能435は、プロセッサがRAMおよびROMをはじめとする記憶媒体などに記憶されたプログラムを読み出し実行することで実現される。記憶媒体には、プログラムのほか、撮影条件と変形機構43によるダクト4の内部空間の変形量とを関連付けたテーブルが記憶されるとよい。記憶媒体は、記憶部の一例である。
【0026】
このテーブルは、制御機能435によって撮影ごとに更新されるとよい。具体的には、制御機能435は、撮影ごとに、当該撮影の撮影条件に関連付けられてテーブルに記憶された変形量を、当該撮影を行うことで前記変形機構が実行した変形の結果としての撮影終了時における前記内部空間の変形量で更新するとよい。テーブルの更新例については図3を用いて後述する。制御機能435は、制御部の一例である。
【0027】
支持部436は、板状部材431の左端部、すなわち、板状部材431の、回転機構433とは反対側の端部を支持する。支持部436は、たとえばコの字状の断面を有する。支持部437は、板状部材432の右端部、すなわち、板状部材432の、回転機構433とは反対側の端部を支持する。支持部437は、たとえばコの字状の断面を有する。
【0028】
板状部材431の左端と、板状部材432の右端とは、回転機構433の上下移動に応じて、支持部436、437から引き出されたり、押し込められたりする。図2に示す支持部436、437は、その厚み方向において板状部材431、432との間に隙間があることで角度が変化する動きを許容する。また、支持部436、437の長さは、板状部材431、432が脱落しない長さを有する。
【0029】
上述したように、図1に示すように排気用開口42から吸気用開口41に向かって流路断面積が小さいダクト4を用いる場合、風量Qは、排気用開口42に向かうほど大きくすることができる。また、吸気用開口41側の空間は取り込んだばかりの外気により冷めやすい。換言すれば、ダクト4内部の中央部分は、吸気用開口41側および排気用開口42側に比べ、冷却しづらく高温になりやすい。そこで、回転機構433を下方向に移動させ、回転機構433直下の流路断面積を小さくすることで、高温となる中央部分の内部空間が冷却されやすくする。
【0030】
図3は、実施形態1に係る変形機構43の動作を示すフローチャートである。図3は、放射線診断装置1の制御機能435の処理、および、当該処理に応じた変形機構43の動作を示す。
【0031】
ステップS1において、制御機能435は、設定された撮影条件を取得する。撮影条件には、たとえばスキャン方法、スライス厚、ウィンドウレベル、ウィンドウ幅などの情報が含まれる。なお、制御機能435は、ユーザがコンソールを介して手動で設定した撮影条件を取得してもよいし、検査オーダなどに含まれて自動設定された撮影条件を取得してもよい。
【0032】
ステップS2において、制御機能435は、回転機構433の初期位置を移動機構434に設定する。移動機構434は、制御機能435からの初期位置の設定を受けて、回転機構433を当該初期位置に移動させる。
【0033】
具体的には、制御機能435は、記憶媒体に記憶され撮影条件と回転機構433の移動量とが関連付けられたテーブルから、ステップS1において設定された撮影条件に関連付けられた回転機構433の移動量の値を取得して、初期位置の決定に利用する。当該テーブルに格納される移動量の初期値としては、たとえば基準位置が用いられる。この初期値は、ステップS11において実際に行われた撮影における移動量に置き替えられることで、撮影ごとに適応的に更新される。
【0034】
ステップS3において、制御機能435は、ダクト4内部の、放射線検出器2側の温度の計測値を、吸気用開口41と排気用開口42との間に設置された、複数の温度センサ6から取得する。なお、温度センサ6は、放射線検出器2と一対一に対応している必要はない。温度センサ6は、回転機構433の直下(図2に示す板状部材が2つの場合の例では中間地点)に必ず設けられるようにしてもよい(図2参照)。
【0035】
ステップS4において、制御機能435は、複数箇所の温度計測値の幅(以下、温度幅という)が基準値以内であるか否かを判定する。温度幅は、たとえば、温度計測値の最大値から最小値を引いた値であり、温度の最大差の一例である。温度幅が基準値以内である場合(ステップS4のYES)、制御機能435は、ステップS9の処理に進む。他方、温度幅が基準値より大きい場合(ステップS4のNO)、制御機能435は、ステップS5の処理に進む。なお、制御機能435は、所定地点(たとえば回転機構433の直下)の温度が下限閾値と上限閾値との間にあるか否かを判定してもよい。
【0036】
ステップS5において、制御機能435は、回転機構433の位置を示す制御信号を移動機構434から受信する。
【0037】
ステップS6において、制御機能435は、温度幅に応じて回転機構433の位置を変更するように、移動機構434に制御信号を送信する。移動機構434は、制御機能435から制御信号を受信し、当該制御信号が示す位置に回転機構433を移動させる。たとえば、変形機構43は、複数箇所において測定した温度幅が基準値よりも大きい場合には、ダクト4の内部空間を小さくすることで冷却効率を上げるよう、回転機構433を下げる。
【0038】
なお、制御機能435は、所定地点(たとえば回転機構433の直下)の温度が上限閾値を上回ると回転機構433を下方向(放射線検出器2側の内側面に垂直な方向に沿って当該内側面に近づく方向)に移動させ、所定地点の温度が下限閾値を下回ると回転機構433を上方向に移動させるように、移動機構434に制御信号を送信してもよい。すなわち、変形機構43は、所定地点において測定した温度と、上限閾値および下限閾値との比較結果に応じて、ダクト4の内部空間を小さく、または、大きくなるように変形させてもよい。
【0039】
ステップS7において、回転機構433が移動することにより、ダクト4の上面(放射線検出器2側の内側面に対向する内側面)の形状が変化する。たとえば、回転機構433が下方向に移動すると、ダクト4の上面の中央部分が下がり、凹むような形状に変化する。これにより、ダクト4の内部空間が小さくなる。一方、回転機構433が上方向に移動すると、ダクト4の上面の中央部分が上がり、突出するような形状に変化する。これにより、ダクト4の内部空間が大きくなる。
【0040】
ステップS8において、ダクト4の上面の中央部分が上下移動することにより、ダクト4内部の温度が変化する。たとえば、中央部分が下がると、ダクト4内部の温度が下がる。一方、中央部分が上がると、ダクト4内部の温度が上がる。
【0041】
ステップS9において、制御機能435は、一定時間が経過するのを待つ。一定時間が経過すると、制御機能435は、ステップS10の処理に進む。これにより、ステップS10の判定において制御終了にならない限り、ステップS3~S8の処理が一定時間ごとに行われることになる。
【0042】
ステップS10において、制御機能435は、制御終了か否かを判定する。たとえばユーザにより温度制御の終了が指示された場合や、放射線診断装置1が稼働を終了している場合には、制御終了と判定される。制御終了でない場合(ステップS10のNO)、制御機能435は、ステップS3の処理に戻る。
【0043】
一方、制御終了の場合(ステップS10のYES)、制御機能435は、記憶媒体に記憶されたテーブルに対して、今回の撮影条件と、最終的な回転機構433の移動量、すなわち温度のばらつきを最小化する回転機構433の移動量とを関連付けて格納する。このように、撮影ごとにステップS1-S11を繰り返すことにより、撮影条件と回転機構433の最適な移動量とを関連付けたテーブルが更新される。このため、制御機能435は、ステップS2の初期位置設定において、撮影ごとに繰り返し更新されてダクト4等の個体差が反映された最適な移動量が関連付けられたテーブルを利用することができる。
【0044】
図4は、実施形態1に係る変形機構43の一例を示す断面図である。図4に示す例では、支持部436、437が固定される。回転機構433は、移動機構434(図2参照)により上下方向にのみ移動可能であり、水平方向には移動不可である。
【0045】
図4(A)では、板状部材431、432が一直線状に位置し、板状部材431、432が回転機構433を中心に180度の角度をなす。板状部材431の下面の左端部は、支持部436の下側内側面に接している。また、板状部材432の下面の右端部は、支持部437の下側内側面に接している。なお、この状態における回転機構433の位置を基準位置としてもよい。
【0046】
図4(B)では、回転機構433が図4(A)の位置から下方向に移動している。回転機構433の下方向への移動に伴って、板状部材431の左端部は、支持部436から引き出されて、図4(A)の状態よりも放射線検出器2側の内側面に平行な面(以下、水平面という)との角度が大きくなる。一方、支持部436は固定されたままである。その結果、板状部材431の下面の左端は支持部436の下側内側面から離れて浮いた状態となり、板状部材431の下面は支持部436の下側内側面の右先端により支持される。
【0047】
一方、回転機構433の下方向への移動に伴って、板状部材432の右端部は、支持部437の奥に押し込まれて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が小さくなる。一方、支持部437は固定されたままである。その結果、板状部材432の下面の右先端は支持部437の下側内側面から離れ、板状部材432の下面は支持部437の下側内側面の左先端により支持される。
以上の動作により、板状部材431、432は、回転機構433の付近が凹んだ状態になる。
【0048】
図4(C)では、回転機構433が図4(A)の位置から上方向に移動している。回転機構433の、上方向への移動に伴って、板状部材431の左端部は、支持部436の奥に押し込まれて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が小さくなる。一方、支持部436は固定されたままである。その結果、板状部材431の下面の左端部の左先端以外は支持部436の下側内側面から離れ、板状部材431の下面の左先端のみが支持部436の下側内側面により支持される。
【0049】
また、回転機構433の、上方向への移動に伴って、板状部材432の右端部は、支持部437から引き出されて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が大きくなる。一方、支持部437は固定されたままである。その結果、板状部材432の下面の右端部の右先端以外は支持部437の下側内側面から離れ、板状部材432の下面の右先端のみが支持部437の下側内側面により支持される。
以上の動作により、板状部材431、432は、回転機構433の付近が上に突出した状態になる。
【0050】
図5は、実施形態1に係る変形機構43の他の例を示す断面図である。図5に示す例では、支持部436、437が回転機構433の上下移動に応じて回動可能である。板状部材431は、回転機構433の上下移動に応じて、支持部436の上側内側面と下側内側面とに挟持されつつ摺動する。同様に、板状部材432は、回転機構433の上下移動に応じて、支持部437の上側内側面と下側内側面とに挟持されつつ摺動する。
【0051】
回転機構433は、たとえば図4に示す例と同様に、移動機構434(図2参照)により上下方向にのみ移動可能であり、水平方向には移動不可である。なお、図4(A)を変形機構43の初期状態とする。
【0052】
図5(A)では、回転機構433が図4(A)の位置から下方向に移動している。回転機構433の下方向への移動に伴って、板状部材431の左端部は、支持部436から引き出されて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が大きくなる。これに伴い、支持部436は下方向に回動する。その結果、板状部材431の下面の左端部は、支持部436の下側内側面に接したまま引き出されるように摺動するため、板状部材431の下面の左端部と、支持部436の下側内側面とが接する部分の面積は減少する。
【0053】
一方、回転機構433の下方向への移動に伴って、板状部材432の右端部は、支持部437の奥に押し込まれて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が小さくなる。これに伴い、支持部437は下方向に回動する。その結果、板状部材432の下面の右端部は、支持部437の下側内側面に接したまま押し込まれるように摺動するため、板状部材432の下面の右端部と、支持部437の下側内側面とが接する面積は増加する。
以上の動作により、図4(B)に示す例と同様に、板状部材431、432は、回転機構433の付近が凹んだ状態になる。
【0054】
図5(B)では、回転機構433が図4(A)の位置から上方向に移動している。回転機構433の上方向への移動に伴って、板状部材431の左端部は、支持部436の奥に押し込まれて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が小さくなる。これに伴い、支持部436は上方向に回動する。その結果、板状部材431の下面の左端部は、支持部436の下側内側面に接したまま、支持部436の下側内側面の右先端から遠ざかる。すなわち、板状部材431の下面の左端部と、支持部436の下側内側面とが接する部分の面積は増加する。
【0055】
一方、回転機構433の上方向への移動に伴って、板状部材432の右端部は、支持部437から引き出されて、図4(A)の状態よりも水平面との角度が大きくなる。これに伴い、支持部437は上方向に回動する。その結果、板状部材432の下面の右端部は、支持部437の下側内側面に接したまま、支持部437の下側内側面の左先端に近付く。すなわち、板状部材432の下面の右端部と、支持部437の下側内側面とが接する面積は減少する。
以上の動作により、板状部材431、432は、回転機構433の付近が突出した状態になる。
【0056】
[実施形態2]
実施形態2は、弾性変形する素材によりダクトの内部空間を変形させる放射線診断装置1aに関する。本実施形態は、変形機構43aが弾性変形する部材を有する点で実施形態1と異なる。実施形態1と同じ構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0057】
図6は、実施形態2に係るダクト4aの構造を示す断面図である。ダクト4aは、実施形態1と同様に、放射線検出器2に着接し、ヒートシンク3を放射線検出器2側に収容し、吸気用開口41と、排気用開口42と、変形機構43aとを有する。
【0058】
変形機構43aは、ダクト4aの内部空間のうち、放射線検出器2側の温度分布に応じて当該内部空間を変形させる。変形機構43aは、部材431aと、作用点433aと、移動機構434aと、制御機能435と、支持部436a、437aとを備えている。
【0059】
部材431aは、ダクト4aの、放射線検出器2側に対向する内側面を構成する。部材431aは、外力を加えると変形するとともに外力を取り除くと元の形状に戻る弾性変形をする部材であり、たとえば、ゴム等を用いることができる。この場合、部材431aは1つの部材で構成することができる。作用点433aは、部材431aの、長さ方向の中央に位置するとよい。なお、作用点は複数箇所に設定されてもよい。
【0060】
移動機構434aは、制御機能435による制御の下において、放射線検出器2に近付く方向または放射線検出器2から遠ざかる方向に作用点433aを移動させる機構を含む。図6に示すように、移動機構434aは、作用点433aを上下方向に移動させる。移動機構434aは、たとえば、モータの回転運動を上下運動に変換するラックアンドピニオン等である。
【0061】
支持部436aは、部材431aの左端部を支持する。支持部437aは、部材431aの右端部を支持する。支持部436a、437aは、固定されていてもよいし、部材431aの作用点433aの上下移動に応じて回動可能であってもよい。
【0062】
放射線診断装置1aの制御機能435の処理、および、当該処理に応じた変形機構43aの動作は、実施形態1と同様である。一方、実施形態1の板状部材431、432、回転機構433、および、支持部436、437は、実施形態2の部材431a、作用点433a、および、支持部436a、437aに置き換わる。実施形態2に係る放射線診断装置1aによっても、実施形態1に係る放射線診断装置1aと同様の効果を奏する。
【0063】
[実施形態3]
実施形態3は、バイメタルによりダクトの内部空間を変形させる放射線診断装置1bに関する。本実施形態は、変形機構43bが熱変形するバイメタルを有する点で実施形態1と異なる。実施形態1、2と同じ構成については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0064】
図7は、実施形態3に係るダクト4bの構造を示す断面図である。ダクト4bは、放射線検出器2に着接し、ヒートシンク3を放射線検出器2側に収容し、吸気用開口41と、排気用開口42と、変形機構43bを有する。
【0065】
変形機構43bは、ダクト4bの内部空間のうち、放射線検出器2側の温度分布に応じて当該内部空間を変形させる。変形機構43bは、バイメタル431bと、支持部436b、437bとを備えている。
【0066】
バイメタル431bは、放射線検出器2側に対向する内側面を構成し、ダクト4bの内部空間の温度分布に応じて弓状に変形する。バイメタル431bは、ヒートシンク3の発熱によりダクト4bの内部空間の温度が上昇すると、下方向に湾曲するように設置される。これにより、ダクト4bの内部空間が小さくなるので、当該内部空間の温度が調整される。バイメタル431bは周囲の温度の変化に応じて自律的に湾曲するので、変形機構43bは移動機構および制御機能が不要になる。温度センサも不要である。
【0067】
支持部436bは、バイメタル431bの左端部を支持する。支持部437bは、バイメタル431bの右端部を支持する。バイメタル431bの湾曲状態に応じてバイメタル431bの左端部、右端部の角度(たとえば、水平面との間の角度)が変化するので、支持部436a、437aは、回動可能であることが好適である。
【0068】
バイメタル431bは、形状、材質、寸法等を変更することにより、温度変化に応じた変形量を調整することができる。ここで、変形量とは、水平面上にバイメタル431bを設置した場合、上方向に湾曲したバイメタル431bの中央部分と、水平面との間の距離である。一例として、ステンレスおよびアルミニウムの部材をそれぞれ幅2mm、長さ40mm、厚さ0.05mmに成形し、各部材を重ね合わせたバイメタル431bを作製する。このバイメタル431bは、周囲の温度を20℃から40℃まで上昇させた場合、変形量が0.74mmになるという解析結果がある。実施形態3に係る放射線診断装置1aによっても、実施形態1に係る放射線診断装置1aと同様の効果を奏する。
【0069】
[実施形態4]
放射線診断装置1の操作によって放射線検出器2が発熱することが推定される場合には、実際に放射線診断装置1が動作を開始する前に、制御機能435が移動機構434を通じて当該動作により推定される温度変化に応じて回転機構433をあらかじめ移動しておいてもよい。なお、当該動作は、ユーザによる操作に基づく動作に限られない。制御機能435は、たとえば、スキャンプロトコルや検査オーダから自動的に推定される、これから行われようとしている検査における放射線検出器2の発熱量から、回転機構433をあらかじめ移動するか否かを判定するとともに、移動する場合はあらかじめ移動させておく移動量を決定してもよい。
【0070】
[シミュレーション結果例]
図8は、実施形態1のシミュレーション結果を示す図である。図8は、放射線検出器2の発熱量1~3[W]の時の、ダクト4内の温度のばらつきと、実施形態1で示した回転機構433の移動量との関係を示している。温度のばらつきは、ダクト4内の各位置における、温度の最大値と、最小値との差である。
【0071】
本シミュレーションでは、移動量が-5~5mmの範囲内で回転機構433を上下移動させることにより、効率的な冷却を維持しつつ、温度の均一性を確保できることがわかった。特に、放射線検出器2の発熱量が1Wの場合、回転機構433の移動量が-5mmのとき、すなわち、回転機構433を基準位置から5mm下げたとき、温度のばらつきが最小になることがわかった(図8の破線の丸で囲ったプロット参照)。このように、回転機構433には、発熱量に応じて最適な位置があることがわかる。
【0072】
本シミュレーションによれば、放射線診断装置1の動作状態(放射線検出器2などの発熱体の発熱量)が変化して発熱体の温度が変化した場合においても、変形機構43を用いることで複数地点の冷却を均一に行うことができることがわかる。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、放射線診断装置の動作状態が変化しても、発熱体における、温度の均一性を確保しつつ、冷却することができる。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b…放射線診断装置
2…放射線検出器
3…ヒートシンク
4、4a、4b…ダクト
5…ファン
41…吸気用開口
42…排気用開口
43、43a、43b…変形機構
431、432…板状部材
431b…バイメタル
433…回転機構
434…移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9