(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007876
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】車載器及び運行管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240112BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109249
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】大竹 茉希
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181AA14
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC27
5H181FF10
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】簡易な構成にて、車両のバック時に、乗務員が周辺の確認動作を行っているか否かを判定し得る車載器及び運行管理システムを提供する。
【解決手段】車載器(10)は、車両の速度を表す速度信号の入力を受け付け(ステップS11、ステップS16、ステップS43)、車両のシフトレバー信号の入力を受け付け(ステップS13、ステップS41)、速度信号及びシフトレバー信号に基づいて、シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点を含む、前記車両の停止時間を計時し(ステップS12、ステップS14、ステップS42、ステップS44)、停止時間が所定の閾値を超えたか否かを判定し(ステップS20、ステップS50)、停止時間が所定の閾値を超えない場合に警報を発する(ステップS22、ステップS52)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度を表す速度信号の入力を受け付ける速度入力部と、
前記車両のシフトレバー信号の入力を受け付けるシフト信号入力部と、
前記速度信号及び前記シフトレバー信号に基づいて、前記シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点を含む、前記車両の停止時間を計時する計時部と、
前記停止時間が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記停止時間が前記所定の閾値を超えない場合に警報を発する警報部と、を備える、
車載器。
【請求項2】
前記計時部は、前記車両の走行状態が走行中から停止に変更した時点から、前記バック信号が入力された時点までの前記車両の経過時間を前記停止時間として計時し、
前記判定部は、前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項3】
前記計時部は、前記バック信号が入力された時点から、前記車両の走行状態が停止から走行中に変更した時点までの経過時間を、前記停止時間として計時し、
前記判定部は、前記経過時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項4】
前記計時部は、前記車両の走行状態が走行中から停止に変更した時点から、前記バック信号が入力された時点までの経過時間、又は、前記バック信号が入力された時点から、前記車両の走行状態が停止から走行中に変更した時点までの経過時間、のいずれかを前記停止時間として選択的に計時し、
前記判定部は、前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定する、
請求項1に記載の車載器。
【請求項5】
前記判定部は、前記車両が突発的事象を誘発する地点に位置する場合、前記所定の閾値を増加させる、
請求項1に記載の車載器。
【請求項6】
乗務員を撮影する車内カメラが前記車両に設置されている場合であって、
前記車内カメラにより前記乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、前記判定部は、前記所定の閾値を増加させる、
請求項1に記載の車載器。
【請求項7】
前記車内カメラにより前記乗務員の周辺確認動作が確認できた場合、前記判定部は、前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定しない、
請求項6に記載の車載器。
【請求項8】
前記車両の周辺を撮影する車外カメラが前記車両に設置されている場合であって、
前記判定部は前記所定の閾値を減少させる、又は、前記判定部は前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定しない、
請求項1に記載の車載器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の車載器と、
ネットワークを通じて前記車載器を管理するサーバーと、
を含む運行管理システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の車載器と、
前記車載器を管理するコンピュータ装置と、
を含む運行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器及び運行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バック走行時に発生する事故が社会的な問題となっており、その抑制が重要視されている。特許文献1は、ディテントレバーを有するレンジ切り換え装置を開示している。このレンジ切り替え装置は、乗務員が操作するシフトレバーのレンジを示すシフトレバー信号に基づき現在のレンジを判定する。レンジ切り替え装置は、レンジの検出精度の低下を抑制されており、シフトレバーがリバースレンジ(Rレンジ)にあること、すなわち、車両がバックすることを精度良く検出できる。このレンジ切り替え装置を用いて、車両がバックすることを検出すれば、車両のバック時に乗務員に何らかの注意喚起を促すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて、車両のバック時に乗務員に単に注意喚起したとしても、バック時の事故発生抑制効果は限定的である。バック時の事故発生を効果的に抑制するためには、事業者が、乗務員に対し、周囲確認の手順を徹底させる必要がある。しかしながら、たとえ事業者が、手順として周囲確認することをルール化しても、各場面において、乗務員が実際に確認作業を行っているか否かを判定することは困難である。
【0005】
また、事業者が、周辺確認の手順が励行されているか否かを監視するための装置、たとえば乗務員を撮影するカメラ等を車両に取り付ける方法がある。しかしながら、この方法は、装置の取り付けの作業や費用を要するとともに、乗務員への説明をも要するものであり、導入が容易ではない。
【0006】
本発明は、簡易な構成にて、車両のバック時に、乗務員が周辺の確認動作を行っているか否かを判定し得る車載器及び運行管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車載器は、下記を特徴としている。
車両の速度を表す速度信号の入力を受け付ける速度入力部と、
前記車両のシフトレバー信号の入力を受け付けるシフト信号入力部と、
前記速度信号及び前記シフトレバー信号に基づいて、前記シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点を含む、前記車両の停止時間を計時する計時部と、
前記停止時間が所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記停止時間が前記所定の閾値を超えない場合に警報を発する警報部と、を備える、
車載器。
【0008】
また、前述した目的を達成するために、本発明に係る運行管理システムは、下記を特徴としている。
上記車載器と、ネットワークを通じて前記車載器を管理するサーバーと、
を含む運行管理システム。
上記に記載の車載器と、前記車載器を管理するコンピュータ装置と、
を含む運行管理システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構成にて、車両のバック時に、乗務員が周辺の確認動作を行っているか否かを判定することが可能な車載器及び運行管理システムを提供することができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る運行管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した車載器によるバック時警報発生に関する基本動作例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、前検知に則ったバック時警報発生の前半部分のフローチャートである。
【
図4】
図4は、前検知に則ったバック時警報発生の後半部分のフローチャートである。
【
図5】
図5は、後検知に則ったバック時警報発生の前半部分のフローチャートである。
【
図6】
図6は、後検知に則ったバック時警報発生の後半部分のフローチャートである。
【
図8】
図8は、派生処理に含まれるヒヤリハット連動処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、派生処理に含まれる車内カメラ連動処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、派生処理に含まれる車外カメラ連動処理のフローチャートである。
【
図11】
図11は、バック走行がなされたタイミング及びバック走行に対する周辺確認NGのフラグを含むタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、バック評価を含む安全運転評価項目を一覧の形式で表示したレーダーチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
本発明の一実施形態における運行管理システム1の構成例を
図1に示す。
図1に示した運行管理システム1は、トラックやタクシー等の車両の運行を管理する事業者を顧客(ユーザ)とするサービス提供者により運用される運行管理システムである。事業者自身がこの運行管理システムを運用してもよい。
【0014】
図1に示した運行管理システム1は、車両の運行管理を行うサーバー80と、トラック等の車両に搭載した状態で使用される、車両警報装置としての車載器10と、事業者側の管理者に使用される事務所PC30とを含む。車載器10は、ドライブレコーダ機能及びデジタルタコグラフ機能を有し、自車両に乗車した乗務員が、バック走行を開始する際に、当該乗務員に注意喚起を促すことが可能な機能を有する。運行管理システム1は、サーバー80が、車載器10によって収集された、運行データや、車両に設置された車載カメラにより撮影された映像データを収集、蓄積し、顧客の要望に応じて事務所PC30に運行管理に関する解析結果等を提供するものである。
【0015】
事務所PC30は、各車両、ドライバー、作業内容等を管理するために所定の事務所に設置される。サーバー80は、車載器10から収集した車両運行情報に基づく解析を行い、解析結果を用いた各種サービスを顧客側に提供するサービス提供者(サポートセンター)側の設備である。運行管理システム1は、複数の顧客の事務所等に設置される複数の事務所PC30及び複数の車載器10を含む。
【0016】
車載器10において、車両の運行中に、車載カメラ(カメラ23A、23B)により撮影された動画データ(映像データ)及び運行データを含む車両運行情報は、メモリカード等の記録媒体65に記録される。運行データは、一例として、車両の位置、速度、エンジン回転数、警報(車間距離警報、脇見運転警報等)・急旋回等のトリガの情報を含み、動画データが撮影された時刻を示す時刻情報に対応付けて、記録される。記録媒体65に記録された車両運行情報は、例えば一日の運行終了後に車両が事務所へ戻ったときに、事務所PC30にて読み出される。サーバー80は、複数の顧客が保有する各車両の車載器10から収集した運行データを、データベース内に蓄積する。
【0017】
事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成される。事務所PC30は、車両の運行状況などを管理する。サーバー80は、車載器10が収集した動画データ、イベント情報等を含む車両運行情報の解析、事務所PC30への情報提供などを行う。
図1の例では、車載器10とサーバー80との間で行われるデータ通信は、基地局71を介して行われる。車載器10と事務所PC30との間で行われるデータ通信は、基地局71、サーバー80及びネットワーク70によって中継される。基地局71と車載器10との間の無線通信については、LTE(Long Term Evolution)/5G(5th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよい。また、ネットワーク70は、インターネット等のネットワーク(パケット通信網)であり、事務所PC30とサーバー80との間で行われるデータ通信を中継する。
【0018】
車載器10は、様々な信号の入力又は出力を可能にするために、様々なインタフェース(I/F)12A、12B、12C、13、14、16、19、及び29を備えている。
速度I/F12Aは、車両側に搭載されている車速センサ51の出力する車速パルス信号を制御部11に入力するための機能を有する。エンジン回転I/F12Bは、車両側から出力されるエンジン回転パルス信号を制御部11に入力するための機能を有する。外部入力I/F13は様々な外部信号の制御部11への入力に利用される。
【0019】
センサ入力I/F14は、様々なセンサの信号を制御部11に入力するために利用される。
図1の例では、Gセンサ28及びジャイロセンサ52がセンサ入力I/F14に接続されている。Gセンサ28は、この車載器10を搭載する車両に加わった様々な方向、一例として、車両の前後方向、左右方向、上下方向の各加速度の大きさ(前後G、右左G、上下G)を検知する。ジャイロセンサ52は、この車載器10を搭載する車両のピッチ軸、ヨー軸、及びロール軸の各軸周りの回転角速度を検知することにより、ピッチ角、ヨー角、及びロール角の各変化を示す信号を出力できる。ジャイロセンサ52及びGセンサ28の出力に基づいて、制御部11は車両の急旋回を検出する。
【0020】
シフトレバー53は、乗務員が車両のギアをシフトするための装置である。バック時において、乗務員がシフトレバー53をリバースレンジ(Rレンジ)に入れることにより、車両はバック走行が可能となる。シフトレバー信号I/F12Cは、シフトレバー53からのシフトレバー信号を制御部11に入力する。
【0021】
アナログ入力I/F29は、様々なアナログ信号の入力に利用される。
カメラI/F16は、カメラ23A、23Bを接続するための機能を有している。すなわち、カメラI/F16は、カメラ23A、23Bが出力する映像信号をそれぞれ取り込んで、コンピュータの処理に適した所定のデジタル画像データにそれぞれ変換して、動画データを取得する機能を有している。カメラ23Aは、車両の周辺を撮影する車外カメラ(例えば車両の前方に設置されたフロントカメラ)であり、車両の周囲を撮影する。カメラ23Aは、例えば車両の前方、側方及び後方を撮影し、車両周辺に位置する他車両、人、その他の物体を撮影できる。カメラ23Bは、車室内の例えば運転席前方に設置された車内カメラであり、ドライバーの顔、動作等を含む車内の情景を撮影する。尚、カメラI/F16に接続されるカメラの数は3以上でもよい。
【0022】
音声I/F19は、音声による注意喚起などに利用可能な所定の音声信号を生成する機能を有している。
【0023】
車載器10における主要な機能を実現する制御部11は、マイクロコンピュータのプロセッサ(CPU)を主体とする電子回路により構成されている。このマイクロコンピュータは、不揮発メモリ26Aなどに予め保持されているプログラムを実行することにより、後述する車載器10の制御機能を実現する。
【0024】
制御部11の入力に、上述の各インタフェース12A、12B、13、14、16、及び29が接続されている。また、制御部11の出力に音声I/F19を介してスピーカ20が接続されている。スピーカ20は、車間距離警報等の警報音を出力する。
【0025】
また、記録部17、表示部27、電源部25、通信部24、不揮発メモリ26A、揮発メモリ26B、カードI/F18、RTC部21、ビーコン受信部15、及びGPS受信部9が制御部11に接続されている。
【0026】
記録部17は、例えばカメラ23A、23Bが出力する動画データなどの車両運行情報を所定の記憶領域(記録媒体65)に記録する。
表示部27は、車載器10の操作に必要な文字などの可視情報や、運転操作に関する注意喚起の情報などをドライバーが視認できるように表示するために利用できる。また、表示部27は、車間距離警報等の警報発生に係る表示を行う。
【0027】
電源部25は、車両側から供給される電源電力に基づいて安定した電源電力を生成し、生成した電源電力を、制御部11を含む車載器10内の各回路に対して供給する。
通信部24は、この車載器10と基地局71との間でデータ通信するための無線通信機能を提供する。
【0028】
不揮発メモリ26Aは、半導体メモリにより構成され、制御部11のマイクロコンピュータが実行可能なプログラムや、制御上必要になる各種定数データ、テーブルなどを予め保持している。
揮発メモリ26Bは、制御部11が処理中に生成するデータなどを一時的に保持するために利用される。
【0029】
カードI/F18には、ドライバーが所持する記録媒体65が挿抜自在に接続される。制御部11は、カードI/F18に装着された記録媒体65からデータを読み出すことができ、制御部11が生成した各種データをカードI/F18を介して記録媒体65に書き込むこともできる。
【0030】
RTC(real time clock)部21は、時計の機能を有する集積回路により構成されている。すなわち、RTC部21は、現在時刻の情報を生成したり、経過時間などを把握することができる。
【0031】
ビーコン受信部15は、所定範囲内に位置するビーコンからの電波を、アンテナ15aを介して受信する。ビーコンには、ドライバービーコンが含まれる。ドライバーに所持されるドライバービーコンからのビーコン信号がビーコン受信部15を介して車載器10に受信されると、制御部11がドライバーIDを自動認識し、ドライバーを特定する。すなわち、ドライバーが、自身のドライバーIDが記憶されたドライバービーコンを所持して運転席に乗り込むだけで、車載器10がドライバーIDを認識するため、ドライバーに特定の操作を行わせることなく、人別のデータ管理が可能となる。また、制御部11は、敷地内の所定位置に固定配置された固定ビーコンからのビーコン信号を受信することで、現在位置の情報を把握することができる。なお制御部11は、ビーコンに加えて、後述するGPS受信部9が受信した信号に基づく測位を行ってもよい。
【0032】
GPS受信部9は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星からの電波を、アンテナ9aを介して受信する。GPS受信部9が受信した複数の受信信号に基づいて、車両の現在位置を表す位置情報を計算して得ることができる。また、GPS受信部9が受信した信号に基づく位置情報を用いて、車両の移動を検知することができる。さらに、GPS受信部9が受信した信号に基づいて、時刻情報を取得することができる。
【0033】
事務所PC30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCである。事務所PC30は、車両の運転状況や、稼働状況等を把握・管理するための管理装置として利用できる。事務所PC30は、制御部(CPU)31、通信部32、表示部33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、外部I/F37、及び音声I/F38を有する。
【0034】
制御部31は、事務所PC30の各部を統括的に制御する。通信部32は、ネットワーク70を介してサーバー80と通信可能である。
表示部33は、各車両の稼働管理に利用可能な様々な情報を表示することができる。記憶部34は、各車両に搭載された車載器10が生成したデータを取得して管理することができる。
【0035】
カードI/F35には、記録媒体65が挿抜自在に装着される。カードI/F35は、車載器10で記録された様々なデータを記録媒体65から入力するために利用される。
操作部36は、キーボードやマウス等を有し、事務所PC30の管理者の操作を受け付ける。外部I/F37には、運行データデータベース(DB)、ハザードマップデータベース(DB)といった外部記憶装置(図示せず)等が接続可能である。音声I/F38には、マイク41及びスピーカ42が接続される。管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて音声通話を行うことも可能である。
【0036】
サーバー80は、制御部(CPU)81、通信部82、記憶部83、及び外部I/F84を有する。通信部82は、基地局71を介して車載器10と通信を行う。また、通信部82は、ネットワーク70を介して、事務所PC30と通信を行うことができる。記憶部83は、各種データを記憶可能なメモリである。外部I/F84には、データベース(DB)85等が接続可能である。DB85は、複数の車載器10から収集した車両運行情報を記憶することができる。
【0037】
制御部81は、サーバー80の各部を統括的に制御し、車両の運行データを解析し、解析結果である稼働データをDB85に蓄積する。運行データの解析例を以下に示す。制御部81は、警報種類及び回数を解析して、同種類の警報回数が閾値を越えた場合に警報増を一覧リストや動画データに表示する。制御部81は、各ドライバー(乗務員)の運行データを分析した分析レポートから、危険挙動の発生頻度等に基づいて安全点数を算出し、ドライバーの安全教育に活用可能とする。
【0038】
上記のように構成された運行管理システム1において、車載器10が行うバック時警報発生に関する動作について、
図2~
図10を参照して説明する。
【0039】
まず、
図2を参照して、車載器10によるバック時警報発生動作の概要について説明する。バック時警報発生動作は、車両のバック時に、乗務員が周辺の確認動作を十分に行っているか否かを判定し、行っていない場合は乗務員に警告を促すための動作である。本動作により、乗務員は特に周辺の確認が必要なバック時において、周辺の確認動作を十分に行い、安全性を担保し、事故の発生を抑制することが可能となる。
【0040】
まず、車載器10の制御部11は、車両のイグニッション、すなわち点火装置がオンになっているか否かを判定する(ステップS1)。車両が電気自動車等の場合、制御部11は、例えばバッテリがオンか否かを判定する。
【0041】
次に制御部11は、車両のバック時において、車両が所定の停止時間に渡って停止したか否かを監視する停止時間監視設定がなされているか否かを判定する(ステップS2)。停止時間監視設定に関するプログラムは、例えば不揮発メモリ26Aなどに保持可能であり、制御部11は、当該プログラムを不揮発メモリ26Aから読み出して実行することができる。
【0042】
停止時間監視設定が設定されている場合(ステップS2でYes)、制御部11は、停止時間監視設定が前検知か、又は、後検知かを判定する(ステップS3)。制御部11は、設定が前検知である場合は、前検知に則ったバック時警報発生動作を実施し(ステップS4)、設定が後検知である場合は、後検知に則ったバック時警報発生動作を実施する(ステップS5)。前検知は、シフトレバー53におけるRレンジへのシフトチェンジ(ギアチェンジ)の前に、車両が停止状態で経過した経過時間に基づき行う動作であり、
図3及び
図4を用いて説明する。後検知は、シフトレバー53におけるRレンジへのシフトチェンジの後に、車両が停止状態で経過した経過時間に基づき行う動作であり、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0043】
次に
図3及び
図4を参照して、前検知に則ったバック時警報発生動作(
図2のステップS4)について説明する。まず、制御部11は、車両が出庫状態であるか否かを判定する(ステップS10)。制御部11は、例えばGPS受信部9の受信信号に基づく位置情報を取得し、車両が車庫にあるか否かを判定するとともに、車両が出庫状態であるか否かを判定することができる。
【0044】
車両が出庫状態である場合(ステップS10でYes)、制御部11は、現在の車両の車速が0km/hであるか否かを判定する(ステップS11)。制御部11は、速度I/F12Aを介して、車両の速度を表す速度信号の入力を受け付ける速度入力部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0045】
現在の車両の車速が0km/hでない場合(ステップS11でNo)、制御部11は、車速を検知し続ける。一方、現在の車両の車速が0km/hである場合(ステップS11でYes)、すなわち、車両が停止している場合、制御部11は、前検知時停止時間(停止状態の経過時間)t1の計時(カウント)を開始する(ステップS12)。
【0046】
前検知時停止時間t1の計時開始後、制御部11は、シフトレバー信号のバック信号がオンであるか否かを判定する(ステップS13)。制御部11は、シフトレバー信号I/F12Cを介して、シフトレバー信号の入力を受け付けるシフト信号入力部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0047】
バック信号がオンでない場合(ステップS13でNo)、制御部11は前検知時停止時間t1をさらに計時し、前検知時停止時間t1を増加させ(ステップS14)、前検知時停止時間t1の計時を続行する。すなわち、制御部11は、速度信号及びシフトレバー信号に基づいて、前検知時停止時間t1を計時する計時部としても機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0048】
一方、バック信号がオンである場合(ステップS13でYes)、制御部11は、バック信号がオン状態でデバウンス時間Tdが経過したか否かを判定する(ステップS15)。デバウンス時間Tdは、シフトレバー53のポジション変更における機械的なスイッチの誤動作に伴う誤検知を防止するために設けられる時間である。制御部11は、バック信号のオンと同時にバック走行の開始を判定してもよいが、デバウンス時間Tdの経過時点をバック信号が入力された時点と認識してバック走行の開始を判定することで、誤検知を防止可能となる。
【0049】
デバウンス時間Tdが経過していない場合(ステップS15でNo)、制御部11は、再び現在の車両の車速が0km/hであるか否かを判定する(ステップS16)。車速が0km/hである場合(ステップS16でYes)、車両がバック走行をしていないので、制御部11は前検知時停止時間t1をさらに計時し、前検知時停止時間t1を増加させ(ステップS14)、前検知時停止時間t1の計時を続行する。
【0050】
デバウンス時間Tdが経過している場合(ステップS15でYes)、または、車速が0km/hでない場合(ステップS16でNo)、車両がバック走行をしているので、制御部11は、さらに切り返し設定があるか否かを判定する(ステップS17)。切り返し設定に関するプログラムは、例えば不揮発メモリ26Aなどに保持可能であり、制御部11は、当該プログラムを不揮発メモリ26Aから読み出して実行することができる。
【0051】
切り返しとは、車両が狭いカーブや曲がり角等の箇所で通れないときに、通れるように位置や方向を変える動作のことをいう。切り返し設定は、切り返しの動作が発生した場合に、バック信号がオンの状態で、切り返しに必要な時間すなわち切り返し設定時間が経過したか否かを判定するための設定である。
【0052】
切り返し設定がある場合(ステップS17でYes)、制御部11は、前回のバック走行から切り返し設定時間を経過しているか否か、すなわち、切り返しが終了しているか否かを判定する(ステップS18)。切り返し設定時間を経過している場合(ステップS18でYes)、または、切り返し設定がない場合(ステップS17でNo)、制御部11は、任意的な処理である派生処理を実行する(ステップS19)。派生処理については、
図7を用いて説明する。一方、切り返し設定時間を経過していない場合(ステップS18でNo)、切り返し中のため、制御部11は後述するステップS25を実行する。
【0053】
派生処理の終了後、制御部11は、前検知時停止時間t1が前検知用設定停止時間T1を超えたか否かを判定する(ステップS20)。制御部11は、停止状態の経過時間である前検知時停止時間t1が、所定の閾値である前検知用設定停止時間T1を超えたか否かを判定する判定部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0054】
前検知時停止時間t1が前検知用設定停止時間T1を超えていない(t1<T1)場合(ステップS20でYes)、制御部11は、乗務員による周辺確認が不十分であるとして、NGイベントを生成する(ステップS21)。すなわち、ここでは、実際の停止状態の経過時間である前検知時停止時間t1が、予め設定された閾値である前検知用設定停止時間T1を超えていないため、前検知時停止時間t1が短く、乗務員による周辺確認が不十分であると推定される。
【0055】
NGイベントの生成後、制御部11は、警報を発動する(ステップS22)。制御部11は、停止状態の経過時間である前検知時停止時間t1が、所定の閾値である前検知用設定停止時間T1を超えない場合に警報を発する警報部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。制御部11は、音声I/F19を介してスピーカ20に警報音による警報を発動させることができる。また、制御部11は、表示部27に表示による警報を発動させることもできる。制御部11は、警報音による警報及び表示による警報の双方を発動してもよいし、いずれか一方のみを発動してもよい。
【0056】
警報の発動後、制御部11は、警報発動に関し、事務所PC30への送信設定があるか否かを判定する(ステップS23)。事務所PC30への送信設定に関するプログラムは、例えば不揮発メモリ26Aなどに保持可能であり、制御部11は、当該プログラムを不揮発メモリ26Aから読み出して実行することができる。
【0057】
事務所PC30への送信設定がある場合(ステップS23でYes)、制御部11は、警報発動の旨を示す警報イベントを、事務所PC30へ通知する(ステップS24)。この通知は、
図1に示した基地局71、サーバー80、ネットワーク70を介して実行可能であるが、車載器10と事務所PC30を繋ぐ別のネットワークを介して実行してもよい。
【0058】
一方、ステップS18で切り返し設定時間を経過していない場合、すなわち切り返し中の場合(ステップS18でNo)、制御部11は、OKイベントを生成する(ステップS25)。また、ステップS20で前検知時停止時間t1が前検知用設定停止時間T1を超えている(t1≧T1)場合(ステップS20でNo)、制御部11は、OKイベントを生成する(ステップS25)。すなわち、実際の停止状態の経過時間である前検知時停止時間t1が、予め設定された閾値である前検知用設定停止時間T1を超えている場合には、前検知時停止時間t1が長く、乗務員による周辺確認が十分であると推定され、OKイベントが生成される。
【0059】
警報イベントの通知(ステップS24)、または、OKイベントの生成(ステップS25)後、または、事務所PC30への送信設定がない場合(ステップS23でNo)、制御部11は、再び切り返し設定があるか否かを判定する(ステップS26)。切り返し設定がある場合(ステップS26でYes)、制御部11は、切り返しタイマーをスタートさせ(ステップS27)、ステップS18における切り返し設定時間の計時を開始し、前検知時停止時間t1を初期化する(ステップS28)。さらに制御部11は、車両が入庫状態であるか否かを判定する(ステップS29)。制御部11は、例えばGPS受信部9の受信信号に基づく位置情報を取得し、車両が車庫にあるか否かを判定するとともに、車両が入庫状態であるか否かを判定することができる。
【0060】
車両が入庫状態である場合(ステップS29でYes)、制御部11は、前検知に則ったバック時警報発生動作を終了する。車両が入庫状態でない場合(ステップS29でNo)、制御部11は、ステップS11からの処理を再開する。
【0061】
上述したように、前検知に則ったバック時警報発生動作によれば、計時部として機能する制御部11が、バック信号が入力された時点までの車両の前検知時停止時間t1を経過時間として計時する(ステップS12~ステップS16)。また、判定部として機能する制御部11が、前検知時停止時間t1が前検知用設定停止時間T1を超えたか否かを判定する(ステップS20)。このことは、バック走行にシフトチェンジする前までの車両の停止時間、すなわち前検知時停止時間t1を経過時間として計時する(ステップS12~ステップS16)ことを意味する。これにより、シフトチェンジ前までの周辺の確認時間を重要視するケースにあっては、有用な情報を得ることができる。
【0062】
次に
図5及び
図6を参照して、後検知に則ったバック時警報発生動作(
図2のステップS5)について説明する。まず、制御部11は、車両が出庫状態であるか否かを判定する(ステップS40)。制御部11は、例えばGPS受信部9の受信信号に基づく位置情報を取得し、車両が車庫にあるか否かを判定するとともに、車両が出庫状態であるか否かを判定することができる。
【0063】
車両が出庫状態である場合(ステップS40でYes)、制御部11は、シフトレバー信号のバック信号がオンであるか否かを判定する(ステップS41)。制御部11は、シフトレバー信号I/F12Cを介して、シフトレバー信号の入力を受け付けるシフト信号入力部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0064】
バック信号がオンでない場合(ステップS41でNo)、制御部11は、バック信号がオンになるまでシフトレバー信号を検知し続ける。一方、バック信号がオンである場合(ステップS41でYes)、制御部11は、後検知時停止時間(停止状態の経過時間)t2の計時(カウント)を開始する(ステップS42)。
【0065】
さらに制御部11は、現在の車両の車速が0km/hであるか否かを判定する(ステップS43)。制御部11は、速度I/F12Aを介して、車両の速度を表す速度信号の入力を受け付ける速度入力部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0066】
現在の車両の車速が0km/hである場合(ステップS43でYes)、すなわち、車両が停止している場合、制御部11は後検知時停止時間t2をさらに計時し、後検知時停止時間t2を増加させる(ステップS44)。そして制御部11は、後検知時停止時間t2の計時を続行するとともに、バック信号がオンになるまでシフトレバー信号を検知し続ける。すなわち、制御部11は、速度信号及びシフトレバー信号に基づいて、後検知時停止時間t2を計時する計時部としても機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0067】
一方、現在の車両の車速が0km/hでない場合(ステップS43でNo)、車両がバック走行をしているので、制御部11は、さらに切り返し設定があるか否かを判定する(ステップS45)。切り返し設定に関するプログラムは、例えば不揮発メモリ26Aなどに保持可能であり、制御部11は、当該プログラムを不揮発メモリ26Aから読み出して実行することができる。
【0068】
切り返しとは、車両が狭いカーブや曲がり角等の箇所で通れないときに、通れるように位置や方向を変える動作のことをいう。切り返し設定は、切り返しの動作が発生した場合に、バック信号がオンの状態で、切り返しに必要な時間すなわち切り返し設定時間が経過したか否かを判定するための設定である。
【0069】
切り返し設定がある場合(ステップS45でYes)、制御部11は、前回のバック走行から切り返し設定時間を経過しているか否か、すなわち、切り返しが終了しているか否かを判定する(ステップS46)。切り返し設定時間を経過している場合(ステップS46でYes)、または、切り返し設定がない場合(ステップS45でNo)、制御部11は、任意的な処理である派生処理を実行する(ステップS47)。派生処理については、
図7を用いて説明する。一方、切り返し設定時間を経過していない場合(ステップS46でNo)、切り返し中のため、制御部11は後述するステップS55を実行する。
【0070】
派生処理の終了後、制御部11は、後検知時停止時間t2が後検知用設定停止時間T2を超えたか否かを判定する(ステップS50)。制御部11は、停止状態の経過時間である後検知時停止時間t2が、所定の閾値である後検知用設定停止時間T2を超えたか否かを判定する判定部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。
【0071】
後検知時停止時間t2が後検知用設定停止時間T2を超えていない(t2<T2)場合(ステップS50でYes)、制御部11は、乗務員による周辺確認が不十分であるとして、NGイベントを生成する(ステップS51)。すなわち、ここでは、実際の停止状態の経過時間である後検知時停止時間t2が、予め設定された閾値である後検知用設定停止時間T2を超えていないため、後検知時停止時間t2が短く、乗務員による周辺確認が不十分であると推定される。
【0072】
NGイベントの生成後、制御部11は、警報を発動する(ステップS52)。制御部11は、停止状態の経過時間である後検知時停止時間t2が、所定の閾値である後検知用設定停止時間T2を超えない場合に警報を発する警報部として機能する。このような機能部は、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶されたプログラムを制御部11が実行することにより実現される。制御部11は、音声I/F19を介してスピーカ20に警報音による警報を発動させることができる。また、制御部11は、表示部27に表示による警報を発動させることもできる。制御部11は、警報音による警報及び表示による警報の双方を発動してもよいし、いずれか一方のみを発動してもよい。
【0073】
警報の発動後、制御部11は、警報発動に関し、事務所PC30への送信設定があるか否かを判定する(ステップS53)。事務所PC30への送信設定に関するプログラムは、例えば不揮発メモリ26Aなどに保持可能であり、制御部11は、当該プログラムを不揮発メモリ26Aから読み出して実行することができる。
【0074】
事務所PC30への送信設定がある場合(ステップS53でYes)、制御部11は、警報発動の旨を示す警報イベントを、事務所PC30へ通知する(ステップS54)。この通知は、
図1に示した基地局71、サーバー80、ネットワーク70を介して実行可能であるが、車載器10と事務所PC30を繋ぐ別のネットワークを介して実行してもよい。
【0075】
一方、ステップS46で切り返し設定時間を経過していない場合、すなわち切り返し中の場合(ステップS46でNo)、制御部11は、OKイベントを生成する(ステップS55)。また、ステップS50で後検知時停止時間t2が後検知用設定停止時間T2を超えている(t2≧T2)場合(ステップS50でNo)、制御部11は、OKイベントを生成する(ステップS55)。すなわち、実際の停止状態の経過時間である後検知時停止時間t2が、予め設定された閾値である後検知用設定停止時間T2を超えている場合には、後検知時停止時間t2が長く、乗務員による周辺確認が十分であると推定され、OKイベントが生成される。
【0076】
警報イベントの通知(ステップS54)、または、OKイベントの生成(ステップS55)後、または、事務所PC30への送信設定がない場合(ステップS53でNo)、制御部11は、再び切り返し設定があるか否かを判定する(ステップS56)。切り返し設定がある場合(ステップS56でYes)、制御部11は、切り返しタイマーをスタートさせ(ステップS57)、ステップS46における切り返し設定時間の計時を開始し、後検知時停止時間t2を初期化する(ステップS58)。さらに制御部11は、車両が入庫状態であるか否かを判定する(ステップS59)。制御部11は、例えばGPS受信部9の受信信号に基づく位置情報を取得し、車両が車庫にあるか否かを判定するとともに、車両が入庫状態であるか否かを判定することができる。
【0077】
車両が入庫状態である場合(ステップS59でYes)、制御部11は、後検知に則ったバック時警報発生動作を終了する。車両が入庫状態でない場合(ステップS59でNo)、制御部11は、ステップS41からの処理を再開する。
【0078】
上述したように、後検知に則ったバック時警報発生動作によれば、計時部として機能する制御部11が、バック信号が入力された時点からの車両の後検知時停止時間t2を経過時間として計時し(ステップS41~ステップS44)する。また、判定部として機能する制御部11が、後検知時停止時間t2が後検知用設定停止時間T2を超えたか否かを判定する(ステップS50)。このことは、バック走行にシフトチェンジした後からの車両の後検知時停止時間t2を経過時間として計時する(ステップS41~ステップS44)ことを意味する。これにより、シフトチェンジ後からの周辺の確認時間を重要視するケースにあっては、有用な情報を得ることができる。
【0079】
なお、上記の実施形態を総括すると、前検知か後検知かにかかわらず、車載器10は、車両の速度信号とシフトレバーのバック信号とを用いて、バック信号が入力された時点を含む、車両の停止時間、すなわち、前検知時停止時間t1又は後検知時停止時間t2を計時する。言い換えれば、計時部として機能する制御部11は、速度信号及びシフトレバー信号に基づいて、車両の走行状態が走行中から停止に変更した時点と、シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点との間の経過時間である前検知時停止時間t1を計時する。また、計時部として機能する制御部11は、速度信号及びシフトレバー信号に基づいて、シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点と、車両の走行状態が停止から走行中に変更した時点との間の経過時間である後検知時停止時間t2を計時する。これにより、車載器10は、乗務員が、バック走行を開始するにあたり、安全のために十分な周辺確認をするための時間をとっているか否かを判定することができ、バック走行時の事故を抑制するために有用な情報を得ることができる。よって、例えば車両を管理する事業者などが、乗務員が安全確認を励行しているか否かを確認でき、安全対策をより効果的に実行することができる。
【0080】
また、車両に追加的な装置、部品の取り付けを行わず、プログラムの設定変更のみによって前検知時停止時間t1又は後検知時停止時間t2を計時することができるため、装置、部品の取り付けの作業や費用を抑えることができる。また、車内カメラを必ずしも必要としないため、プライバシー保護の観点から乗務員の理解を得やすい。
【0081】
また、前検知時停止時間t1又は後検知時停止時間t2が前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を超えない場合、すなわち、周辺確認をするための時間が十分でない場合に警報を発するため、バック走行時の事故を抑制することができる。特に大型車両はバック時の周辺確認が難しいため、周辺確認をするための時間が十分でない場合に車載器10が警報を発することは、事故の抑制には効果的である。
【0082】
なお、計時部として機能する制御部11は、車両が停止した時点からバック信号が入力された時点までの車両の前検知時停止時間t1、又は、バック信号が入力された時点から走行を開始した時点までの車両の後検知用設定停止時間T2のいずれかを、経過時間として選択的に設定可能である。すなわち車載器10は、車両の停止時間を、バック走行にシフトチェンジする前までの経過時間にするか、又は、バック走行にシフトチェンジした後からの経過時間にするか、選択的に設定可能である。これにより、例えば、車両を利用する事業者などのルールに合わせて、停止時間の確認を、前検知にするか後検知にするか、選択することが可能となる。事業者などは、車載器に合わせて自らのルールを変更する必要がなくなり、利便性が増すことになる。停止時間の確認を前検知にするか後検知にするかの設定は、車載器10の設定用のアプリケーションを介して事業者が自ら行っても良いし、車載器10の販売、取付等を行うサービス店が代行しても良い。
【0083】
次に
図7を参照して、派生処理(
図3のステップS19及び
図5のステップS47)について説明する。派生処理は、車両個別の設定に応じて、バック時警報発生の効果をより高めて安全性を向上させるか、車載器の負担を減らしより円滑な動作を達成するための処理であり、前検知及び後検知に共通な処理である。本例における派生処理は、ヒヤリハットマップ連動処理、車内カメラ連動処理、車外カメラ連動処理、の三つを含む。
図7は、この三つの処理のいずれかを実行するためのフローチャートである。
【0084】
まず、制御部11は、車両にヒヤリハットマップの連動設定があるか否かを判定し(ステップS70)、設定がある場合(ステップS70でYes)、ヒヤリハットマップ連動処理を実行する(ステップS71)。ヒヤリハットマップ連動処理は、車両がヒヤリハットの様な突発的事象(例えば事故、事故には至らないまでの危険事象等)を誘発する地点に位置する場合、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を増加させる処理である。ヒヤリハットマップ連動処理の詳細は、
図8で説明する。
【0085】
ヒヤリハットマップの連動設定がない場合(ステップS70でNo)、制御部11は、車内カメラ(カメラ23B)の時間変更設定があるか否かを判定し(ステップS72)、設定がある場合(ステップS72でYes)、車内カメラ連動処理を実行する(ステップS73)。車内カメラ連動処理は、乗務員を撮影する車内カメラが車両に設置されており、車内カメラにより乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を増加させる処理である。車内カメラ連動処理の詳細は、
図9で説明する。
【0086】
車内カメラ連動処理の実行後、制御部11は、車内カメラ連動処理の一機能である停止時間監視システムのスキップフラグがオンか否かを判定する(ステップS74)。停止時間監視システムのスキップフラグがオンである場合(ステップS74でYes)、乗務員の周辺確認動作が十分に確認されて車内カメラ連動処理の結果が問題なしと判定される。よって、制御部11は、
図4のステップS25(前検知の場合)又は
図6のステップS55(後検知の場合)以降の処理を実行する。
【0087】
一方、車内カメラの時間変更設定がない場合(ステップS72でYes)、又は、停止時間監視システムのスキップフラグがオンでない場合(ステップS74でNo)、制御部11は、車外カメラ(カメラ23A)の時間変更設定があるか否かを判定する(ステップS75)。設定がある場合(ステップS75でYes)、制御部11は、車外カメラ連動処理を実行する(ステップS76)。車外カメラ連動処理は、車両の周辺を撮影する車外カメラが車両に設置されている場合に行われる処理である。車外カメラ連動処理は、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を減少させるか、前検知時停止時間t
1または後検知時停止時間t
2が前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を超えたか否かを判定しない処理である。車外カメラ連動処理の詳細は、
図10で説明する。
【0088】
車外カメラ連動処理の実行後、制御部11は、車外カメラ連動処理の一機能である停止時間監視システムのスキップフラグがオンか否かを判定する(ステップS77)。停止時間監視システムのスキップフラグがオンである場合(ステップS77でYes)、車両の周辺が十分に確認されて車外カメラ連動処理の結果が問題なしの判定である。よって、制御部11は、
図4のステップS25(前検知の場合)又は
図6のステップS55(後検知の場合)以降の処理を実行する。一方、停止時間監視システムのスキップフラグがオンでない場合(ステップS77でNo)、制御部11は派生処理を終了する。
【0089】
次に
図8を参照して、ヒヤリハットマップ連動処理(
図7のステップS71)について説明する。上述したように、ヒヤリハットマップ連動処理は、車両がヒヤリハットの様な突発的事象(例えば事故、事故には至らないまでの危険事象等)を誘発する地点に位置する場合、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を増加させる処理である。ヒヤリハットマップ連動処理及び停止時間監視システムのプログラムは、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶され、制御部11は、このプログラムを実行することにより、ヒヤリハットマップ連動処理を実現することができる。
【0090】
制御部11は、車両が位置する現地点がヒヤリハット地点か否かを判定する(ステップS80)。ヒヤリハット地点は、突発的事象を誘発する地点であり、例えば、事業者などが有する固有のデータベースや、図示せぬカーナビゲーションの地図データに予めヒヤリハット地点を記憶しておくことができる。制御部11は、GPS受信部9が受信した位置情報と照らし合わせて、現地点がヒヤリハット地点か否かを判定することができる。
【0091】
現地点がヒヤリハット地点である場合(ステップS80でYes)、制御部11は、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を、ヒヤリハットマップ連動時間αの分だけ増加させる(ステップS81でT1or 2=T1 or 2+α)。
【0092】
上述したように、ヒヤリハットマップ連動処理によれば、判定部として機能する制御部11が、車両が突発的事象を誘発する地点に位置する場合、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を増加させる(ステップS71、ステップS81)。これにより、車両が当該地点においてバック走行をする場合、乗務員が周辺を確認するために要する時間を延長し、安全性を高めることができる。
【0093】
次に
図9を参照して、車内カメラ連動処理(
図7のステップS73)について説明する。上述したように、車内カメラ連動処理は、乗務員を撮影する車内カメラ(カメラ23B)が車両に設置されており、車内カメラにより乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を増加させる処理である。車内カメラ連動処理のプログラムは、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶され、制御部11は、このプログラムを実行することにより、車内カメラ連動処理を実現することができる。
【0094】
制御部11は、車内カメラのバック時間検知連動設定があるか否かを判定する(ステップS90)。設定がある場合(ステップS90でYes)、制御部11は、車内カメラが乗務員を認識できているか否かを判定する(ステップS91)。認識できている場合(ステップS91でYes)、制御部11は、乗務員による車両の周辺確認動作が確認できたか否かを判定する(ステップS92)。周辺確認動作が確認できた場合(ステップS92でYes)、制御部11は、停止時間監視システムのスキップフラグをオンにして(ステップS93)、車内カメラ連動処理を終了する。
【0095】
一方、周辺確認動作が確認できない場合(ステップS92でNo)、制御部11は、停止時間監視システムにおいて、乗務員による車両の周辺確認が不十分時の延長設定が有効か否かを判定する(ステップS92)。有効である場合(ステップS92でYes)、制御部11は、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を、車内カメラ連動時間βの分だけ増加させ(ステップS95でT1or 2=T1 or 2+β)、車内カメラ連動処理を終了する。
【0096】
上述したように、車内カメラ連動処理によれば、乗務員を撮影する車内カメラが車両に設置されており、車内カメラにより乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、制御部11が、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を増加させる(ステップS73、ステップS95)。これにより、乗務員が周辺確認をすることを期待して、乗務員が周辺を確認するために要する時間を延長し、安全性を高めることができる。
【0097】
また、車内カメラにより前記乗務員の周辺確認動作が確認できた場合、制御部11が、前検知時停止時間t1又は後検知時停止時間t2が前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を超えたか否かを判定しない(ステップS74、ステップS93)。これにより、乗務員の周辺確認動作を監視するための処理を速やかに終わらせ、車載器10の負担を減らしより円滑な動作を達成することができる。
【0098】
次に
図10を参照して、車外カメラ連動処理(
図7のステップS76)について説明する。上述したように、車外カメラ連動処理は、車両の周辺を撮影する車外カメラ(カメラ23A)が車両に設置されている場合において車両周辺を移動する物体が検出されたときに行われる処理である。車外カメラ連動処理は、上述した前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を減少させるか、または、前検知時停止時間t
1または後検知時停止時間t
2が前検知用設定停止時間T
1又は後検知用設定停止時間T
2を超えたか否かを判定しない処理である。車外カメラ連動処理のプログラムは、例えば、不揮発メモリ26Aなどに記憶され、制御部11は、このプログラムを実行することにより、車外カメラ連動処理を実現することができる。
【0099】
制御部11は、車外カメラのバック時間検知連動設定があるか否かを判定し、設定ありの場合に、車両周辺の移動物体が検出されないか否かを判定する(ステップS100)。設定があり、移動物体が検出されない場合(ステップS100でYes)、制御部11は、バック時間検知連動設定が、時間短縮か、又は、監視そのものをしないかのいずれの設定かを判定する(ステップS101)。バック時間検知連動設定が時間短縮の設定の場合(ステップS101で短縮)、制御部11は、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を、車外カメラ連動時間γの分だけ減少させ(ステップS102でT1or 2=T1 or 2-γ)、車内カメラ連動処理を終了する。車外カメラ連動時間γは、車内カメラ連動時間βと同じであってもよい。
【0100】
一方、バック時間検知連動設定が監視そのものをしない設定の場合(ステップS101で監視しない)、制御部11は、停止時間監視システムのスキップフラグをオンにして(ステップS103)、車内カメラ連動処理を終了する。尚、車外カメラのバック時間検知連動設定がないか、または、設定はあるが車両周辺の移動物体を検出した場合(ステップS100でNo)、制御部11は、特段の処理を行わずに車外カメラ連動処理を終了する。
【0101】
上述したように、車外カメラ連動処理によれば、車両の周辺を撮影する車外カメラが車両に設置され車両周辺の移動物体を検出しない場合、制御部11が、前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を減少させる(ステップS76、ステップS102、ステップS77)。又は、この車外カメラ連動処理によれば、制御部11は、制御部11が前検知時停止時間t1または後検知時停止時間t2が前検知用設定停止時間T1又は後検知用設定停止時間T2を超えたか否かを判定しない(ステップS76、ステップS103、ステップS77)。これにより、車載器10は、乗務員の周辺確認動作を監視するための処理を速やかに終わらせて、車載器10の負担を減らしより円滑な動作を達成することができる。
【0102】
図11に示すように、車載器10は、バック走行がなされたタイミングをタイミングチャートに記録することができる。さらに車載器10は、乗務員の周辺確認が不十分であり、警報を発したバック走行について、周辺確認NGの旨のフラグを立てることができる。車載器10が、サーバー80を経由してこのタイミングチャートを事務所PC30に送信することができる。また、記録媒体65がタイミングチャートを記録し、車両が事務所へ戻ったときに、事務所PC30にてタイミングチャートが読み出されてもよい。
【0103】
図12に示すように、事務所PC30がタイミングチャートを読み出し、総バック走行の数(切り返しを除く)に対する周辺確認NGのフラグが立てられたバック走行の数の割合を示すバック評価を算出することができる。事業者は、このバック評価に基づき、安全運転評価の設定が可能である。例えば事業者は、別途、解析ソフトを用いてこのようなバック評価を算出し、乗務員の運転診断評価を行い、日報等で確認することが可能となる。また、車両の運行毎での運転評価への反映やヒヤリハット等、運行に注意が必要な地点の情報に基づき、事業者、顧客等に合わせた監視時間の設定を行うことで、関係者の安全向上対策(たとえば危険予知訓練)に寄与する。また、
図12ではレーダーチャートにて示すように、表示部33が、他の安全運転評価項目(最高速度など)と併せて一覧の形式で表示し、百点満点で評価を行い、1運行ごとに運転の総合評価を行うことが可能である。
【0104】
このように、実施形態の運行管理システム1によれば、サーバー80が車載器10からの情報を、ネットワークを通じて受信可能であり、事業者などが受信した情報を有用に活用することができる。また、運行管理システム1によれば、事業者PCが車載器10からの情報を受信可能であり、事業者などが受信した情報を有用に活用することができる。
【0105】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、車載器10が一連の処理の主体であったが、必要なデータを例えば送受信により取得することにより、処理の一部又は全部を事務所PC30又はサーバー80が行ってもよい。また、上記実施形態では、バック信号が入力された時点が停止時間の開始時点又は終了時点となる例を示したが、バック信号が停止時間の途中(開始時点及び終了時点以外の時点)に入力されてもよい。
【0106】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る車載器及び運行管理システムの特徴をそれぞれ以下[1]~[10]に簡潔に纏めて列記する。
【0107】
[1]車両の速度を表す速度信号の入力を受け付ける速度入力部(制御部11、ステップS11、ステップS16、ステップS43)と、
前記車両のシフトレバー信号の入力を受け付けるシフト信号入力部(制御部11、ステップS13、ステップS41)と、
前記速度信号及び前記シフトレバー信号に基づいて、前記シフトレバー信号としてバック信号が入力された時点を含む、前記車両の停止時間を計時する計時部(制御部11、ステップS12、ステップS14、ステップS42、ステップS44)と、
前記停止時間が所定の閾値(前検知用設定停止時間T1、後検知用設定停止時間T2)を超えたか否かを判定する判定部(制御部11、ステップS20、ステップS50)と、
前記停止時間が前記所定の閾値を超えない場合に警報を発する警報部(制御部11、ステップS22、ステップS52)と、を備える、
車載器(10)。
【0108】
上記[1]の構成の車載器によれば、車両の速度信号とシフトレバーのバック信号とを用いて、バック走行を開始するまでの停止時間を計時する。これにより、乗務員が、バック走行を開始するにあたり、安全のために十分な周辺確認をするための時間をとっているか否かを判定することができ、バック走行時の事故を抑制するために有用な情報を得ることができる。例えば車両を管理する事業者などが、乗務員が安全確認を励行しているか否かを確認でき、安全対策をより効果的に実行することができる。
【0109】
また、車両に追加的な装置、部品の取り付けを行わず、プログラムの設定変更のみによって停止時間を計時することができるため、装置、部品の取り付けの作業や費用を抑えることができる。すなわち、この車載器によれば、簡易な構成にて、車両のバック時に、乗務員が周辺の確認動作を行っているか否かを判定し得る。また、車内カメラを必ずしも必要としないため、プライバシー保護の観点から乗務員の理解を得やすく、バック時の安全確認状況を把握可能なシステムを容易に導入可能となる。
【0110】
また、停止時間が所定の閾値を超えない場合、すなわち、周辺確認をするための時間が十分でない場合に警報を発するため、バック走行時の事故を抑制することができる。特に大型車両はバック時の周辺確認が難しいため、事故の抑制には効果的である。さらに、例えばバック走行時に常に警報が発せられる場合には乗務員に対する注意喚起効果が低減する可能性があるが、上記車載器によれば、バック走行時の実際の状況に即して警報が発生されるので、注意喚起効果を高めることができる。
【0111】
[2]前記計時部は、前記車両の走行状態が走行中から停止に変更した時点から、前記バック信号が入力された時点までの経過時間を、前記停止時間(前検知時停止時間t1)として計時し(ステップS12~ステップS16)、
前記判定部は、前記経過時間が前記所定の閾値(前検知用設定停止時間T1)を超えたか否かを判定する(ステップS20)、
上記[1]に記載の車載器。
【0112】
上記[2]の構成の車載器によれば、車両が停止してから、バック走行にシフトチェンジする前までの車両の経過時間を停止時間として計時する、いわゆる前検知を行う。これにより、シフトチェンジ前までの周辺の確認時間を重要視するケースにあっては、有用な情報を得ることができる。
【0113】
[3]前記計時部は、前記バック信号が入力された時点から、前記車両の走行状態が停止から走行中に変更した時点までの経過時間を、前記停止時間(後検知時停止時間t2)として計時し(ステップS41~ステップS44)、
前記判定部は、前記経過時間が前記所定の閾値(後検知用設定停止時間T2)を超えたか否かを判定する(ステップS50)、
上記[1]に記載の車載器。
【0114】
上記[3]の構成の車載器によれば、バック走行にシフトチェンジした後から走行開始までの車両の経過時間を停止時間として計時する、いわゆる後検知を行う。これにより、シフトチェンジ後からの周辺の確認時間を重要視するケースにあっては、有用な情報を得ることができる。
【0115】
[4]前記計時部は、前記車両の走行状態が走行中から停止に変更した時点から、前記バック信号が入力された時点までの経過時間(前検知時停止時間t1)、又は、前記バック信号が入力された時点から、前記車両の走行状態が停止から走行中に変更した時点までの経過時間(後検知時停止時間t2)、のいずれかを前記停止時間として選択的に計時し、
前記判定部は、前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定する、
上記[1]に記載の車載器。
【0116】
上記[4]の構成の車載器によれば、判定の対象とする、車両の停止時間を、バック走行にシフトチェンジする前までの経過時間にするか、又は、バック走行にシフトチェンジした後からの経過時間にするか、選択することができる。これにより、例えば、車両を利用する事業者などのルールに合わせて、停止時間の確認を、前検知にするか後検知にするか、選択することが可能となる。事業者などは、車載器に合わせて自らのルールを変更する必要がなくなり、利便性が増すことになる。
【0117】
[5]前記判定部は、前記車両が突発的事象を誘発する地点に位置する場合、前記所定の閾値を増加させる(ステップS71、ステップS81)、
上記[1]に記載の車載器。
【0118】
上記[5]の構成の車載器によれば、車両がヒヤリハットの様な突発的事象(例えば事故、事故には至らないまでの危険事象等)を誘発する地点に位置する場合、所定の閾値を増加させる。これにより、車両が当該地点においてバック走行をする場合、乗務員が周辺を確認するために要する時間を延長し、安全性を高めることができる。
【0119】
[6]乗務員を撮影する車内カメラが前記車両に設置されている場合であって、
前記車内カメラにより前記乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、前記判定部は、前記所定の閾値を増加させる(ステップS73、ステップS95)、
上記[1]に記載の車載器。
【0120】
上記[6]の構成の車載器によれば、車内カメラが車両に設置されている場合において、車内カメラにより乗務員の周辺確認動作が確認できない場合、所定の閾値を増加させる。これにより、乗務員が周辺確認をすることを期待して、乗務員が周辺を確認するために要する時間を延長し、安全性を高めることができる。
【0121】
[7]前記車内カメラにより前記乗務員の周辺確認動作が確認できた場合、前記判定部は、前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定しない(ステップS74、ステップS93)、
上記[6]に記載の車載器。
【0122】
上記[7]の構成の車載器によれば、車内カメラが車両に設置されている場合において、車内カメラにより乗務員の周辺確認動作が確認できた場合、停止時間が所定の閾値を超えたか否かを判定しない。これにより、乗務員の周辺確認動作を監視するための処理を速やかに終わらせ、車載器の負担を減らしより円滑な動作を達成することができる。
【0123】
[8]前記車両の周辺を撮影する車外カメラが前記車両に設置されている場合であって、
前記判定部は前記所定の閾値を減少させる、又は、前記判定部は前記停止時間が前記所定の閾値を超えたか否かを判定しない(ステップS76、ステップS102、ステップS103、ステップS77)、
上記[1]に記載の車載器。
【0124】
上記[8]の構成の車載器によれば、車外カメラが車両に設置されている場合において、所定の閾値を減少させるか、又は、停止時間が所定の閾値を超えたか否かを判定しない。これにより、例えば、車両周辺に移動物体が検出されない場合に、乗務員の周辺確認動作を監視するための処理を速やかに終わらせ、車載器の負担を減らしより円滑な動作を達成することができる。
【0125】
[9]上記[1]から[8]のいずれか1つに記載の車載器と、
ネットワークを通じて前記車載器を管理するサーバー(80)と、
を含む運行管理システム(1)。
【0126】
上記[9]の構成の運行管理システムによれば、サーバーが車載器からの情報を、ネットワークを通じて受信可能であり、事業者などが受信した情報を有用に活用することができる。
【0127】
[10]上記[1]から[8]のいずれか1つに記載の車載器と、
前記車載器を管理するコンピュータ装置(事務所PC30)と、
を含む運行管理システム。(1)
【0128】
上記[10]の構成の運行管理システムによれば、コンピュータ装置が車載器からの情報を受信可能であり、事業者などが受信した情報を有用に活用することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 運行管理システム
9 GPS受信部
10 車載器(車両警報装置)
11、31、81 制御部(CPU)
15 ビーコン受信部
23A、23B 車載カメラ
24、32、82 通信部
26A 不揮発メモリ
26B 揮発メモリ
27、33 表示部
28 Gセンサ
30 事務所PC
34、83 記憶部
36 操作部
65 記録媒体
70 ネットワーク
71 基地局
80 サーバー
85 データベース(DB)