(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078766
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】360度撮影装置
(51)【国際特許分類】
G03B 15/00 20210101AFI20240604BHJP
H04N 23/698 20230101ALI20240604BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240604BHJP
H04N 23/951 20230101ALI20240604BHJP
G03B 19/07 20210101ALI20240604BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20240604BHJP
G02B 13/06 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G03B15/00 W
H04N23/698
H04N23/55
H04N23/951
G03B19/07
G03B37/00 A
G02B13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191305
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小出 大一
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭孝
(72)【発明者】
【氏名】久富 健介
(72)【発明者】
【氏名】原 一宏
(72)【発明者】
【氏名】林田 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】大川 裕司
(72)【発明者】
【氏名】米内 淳
(72)【発明者】
【氏名】中村 友洋
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 誉行
【テーマコード(参考)】
2H054
2H059
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H054BB05
2H054BB07
2H059BA02
2H059BA11
2H087KA01
2H087LA01
2H087RA41
2H087RA44
5C122DA30
5C122EA40
5C122FA03
5C122FB02
5C122FB03
5C122FC04
5C122FH20
5C122GE05
5C122GE11
5C122HB05
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】複数の撮像素子で視差のない複数の映像を撮影し、各撮像素子で撮影した映像を合成して、360度の映像を生成する撮影装置を提供すること。
【解決手段】集光レンズ群1と補正レンズ群1と撮像素子1とで、1組の光学系が形成される。5組の光学系のノーダル点は、いずれも中心と一致している。360度の映像を5つ部分に分けて撮影する。第1の(360/5=)72度以上の部分の映像は、集光レンズ群1で集光され、中心を通過して、補正レンズ群1によりコリメート光に変換され、撮像素子に像を形成する。撮像素子1~5で撮影された映像を画像処理により合成して360度の映像を生成する。5組の光学系のノーダル点は、いずれも中心と一致しているので、5つの撮像素子で撮影した映像間には視差がない。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正五角柱の頂点部分を一部平坦とし辺にするよう変形した、又は辺の長さの等しい十角柱形をした光学透過する光学素子を中心に配置し、水平視野角が72度以上の映像を取得する集光レンズ群と撮像素子とが一対となって1組の光学レンズ群を形成し、五組の前記光学レンズ群がそれぞれ前記光学素子の同一円周上に放射方向に72度間隔で配置された撮像装置。
【請求項2】
2N角柱形(Nは、5以上の奇数。)をした光学透過する光学素子を中心に配置し、水平視野角が(360/N)度以上の映像を取得する集光レンズ群と撮像素子とが一対となって1組の光学レンズ群を形成し、N組の光学レンズ群がそれぞれ前記光学素子の同一円周上に放射方向に(360/N)度間隔で配置された撮像装置。
【請求項3】
1つの前記撮像素子が水平視野角(360/N)度以上で映像取得し、N個の前記撮像素子が取得した映像を合成して360度映像を生成する、請求項2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記光学素子を輪切りにした断面は、長辺と短辺とが交互に接続された多角形であり、前記光学素子の前記長辺側には、前記集光レンズ群として、水平視野角(360/N)度以上を持つ広角レンズ、又は水平視野角及び垂直視野角180度以上をもつ魚眼型超広角群のレンズ(以下、群レンズという。)を備え、前記光学素子を通して対向する前記短辺側に前記撮像素子を設置する、請求項2又は3に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記群レンズから前記光学素子を通して前記撮像素子を設置する際に、前記群レンズは、前記光学素子の中心に撮影された映像の光学ノーダル点がくるように光学距離が設計された群レンズであり、且つ、N組の前記群レンズ及び前記撮像素子の光学ノーダル点が前記光学素子の中心で一致する、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光学素子は、その中が、屈折率n≧1.0の光学透過する材料にて均一に満たされて構成される、請求項1-3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学素子は、屈折率n≧1.0の材料による一定の厚さの光学板を組み合わせて十角形又は2N角形が構成され、前記十角形又は前記2N角形の中は、n=1.0の空気又はn=1.0近傍の気体媒質で満たされる、請求項1-3に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光学素子をn=1.0の空気とし、前記光学素子の周辺を構成する前記集光レンズ群及び前記撮像素子が、前記光学素子を中心に配置されて構成される、請求項1-3に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記光学素子において、5又はN個のノーダル点が一致し、5又はN個の撮影された映像を視差がなく撮影された水平方向に結合処理する手段を有し、360度映像を実時間で生成する、請求項1-3に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記集光レンズ群と前記撮像素子の形状と光学設計により、5又はN個のノーダル点がそれぞれの前記集光レンズ群と前記撮像素子の組み合わせについて一致するように、前記撮像素子の受光部の前には、前記撮像素子の前で平行に入射し被写体画角が大きくとれるようコリメート型レンズ手段で構成される光学補正手段が備わった、請求項1-3に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、15Kや30K、45Kなどの高解像度の複数撮像素子で取得した映像を視差なしで高品位に映像結合する、360度全天周撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、360度撮影装置は、いくつか提案されている。
[従来技術1]
非特許文献1-3の360度撮影装置は、複数撮像素子を同一円周上に放射状に並べて配置し、取得された複数の映像を結合する360度撮影装置である。これらは、非特許文献4-5に見られる視野角180度以上の性能もつ広視野角の魚眼レンズを装着する撮像素子を180度対向で背中合わせに配置し撮影した映像を結合して全天周映像を生成する360度撮影装置に比べ、3つ以上の複数撮像素子を使うことにより高解像度化することができる点に特徴がある。
【0003】
従来技術1は、360度映像の生成に各撮像素子で得られた映像を水平方向に結合し360度映像を生成する装置である。この同一円周上に配置した各カメラ間には、視差が存在する。このため、カメラから被写体までの結合距離を予め想定し、360度映像を生成するためにこれら各撮像素子の映像を結合した際に、カメラ(撮影装置)から被写体までの距離が、所望の設定どおりの距離に設定されていればスティッチ面が正常に結合され撮影できる(
図13)。しかし、被写体のカメラからの距離が、想定した結合距離より被写体が遠い場合には二重像が発生してしまう問題が生じる(
図14)。また、逆に想定した結合距離より被写体が近い場合、すなわち1カメラの撮影範囲と隣のカメラの撮影範囲に入らないほどカメラ群位置に近い被写体については、隠蔽(オクルージョン)が発生してしまい被写体が撮影されなくなる課題が発生する(
図15)。
【0004】
[従来技術2]
特許文献1-2には、複数撮影素子を用いて360度撮影する際に撮影装置を小型化する構成の技術が公開されている。
これらの装置では、六角柱型の光学透過する部材(以下、光学部材Aという。)を中心に置き、水平視野角120度以上の広角レンズから入射した映像(光)が光学部材Aを通し対向する場所に撮像素子を置く。これら広角レンズと撮像素子のセットを、120度間隔で水平に3セットがそれぞれ受光するように配置し、これら3セットで水平方向を撮影した映像と、同時に垂直方向から入射し光学部材Aを通して対向する撮像素子で天頂部を撮影した映像とを互いに結合し、360度映像を生成する構成の撮像装置である。
【0005】
従来技術2は、レンズから、光学素子Aを通して、対向する位置に撮像素子を置くことで360度カメラを小型化できるものである。現在多く市場に出回っているアスペクト比横:縦が16:9の高精細テレビジョン撮影用撮像素子や、近い横辺が縦辺より長い撮像素子を用いた場合は、結合後、多く使われる正距円筒投影(エクイレクタングラー、equirectangular projection、ERP)形式のアスペクト比横:縦が2:1となる映像を生成する場合、撮像素子で取得し利用できる範囲が限定される課題があり、解像度を高くすることができない課題も存在する。また、従来技術1と同様に特許文献1-2にはノーダル点の一致や視差をなくす技術については記載がない。
【0006】
[従来技術3]
特許文献3には、1つのカメラをスタンドに固定し、光学主点であるノーダル点を一致させながら回転させ、視差ずれのない水平パノラマ映像を作成することのできるカメラ雲台が公開されている。
【0007】
従来技術3に代表されるように、1台のカメラを放射状に回転させ、視差のない高品質な水平パノラマ映像を製作するためのカメラ雲台の技術が存在する。しかし、1台のカメラを時分割で回転させながら撮影する必要があり、視差なしで且つ、同時刻タイミングで高品質な360度パノラマ映像を一斉に取得し結合する撮像装置の技術は、特許文献3をはじめ周辺技術には見当たらない。
【0008】
[従来技術4]
特許文献4には、複数の撮像システムの非視差ポイント(NPポイント)を一致させることにより、視差のない360度画像を作成するパノラマ撮像システムが開示されている。
しかし、特許文献4では、画像を形成する撮像素子の存在が考慮されておらず、実現可能性が疑わしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-134938号公報
【特許文献2】特開2020-137114号公報
【特許文献3】特開2009-229578号公報
【特許文献4】特表2017-519250号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Insta360 Pro 2、[令和4年9月13日検索]、インターネット<https://www.insta360.com/jp/product/insta360-pro2/>
【非特許文献2】Insta360 Titan、[令和4年9月13日検索]、インターネット<https://www.insta360.com/jp/product/insta360-titan/>
【非特許文献3】KANDAO Obsidian Pro、[令和4年9月13日検索]、インターネット<https://www.kandaovr.com/ja/obsidian-s-r/>
【非特許文献4】KANDAO QOOCAM 8K、[令和4年9月13日検索]、インターネット<https://www.kandaovr.com/ja/qoocam-8k/index.html>
【非特許文献5】RICOH THETA Z1、[令和4年9月13日検索]、インターネット<https://theta360.com/ja/about/theta/z1.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
複数の撮像素子で視差のない複数の映像を撮影し、各撮像素子で撮影した映像を合成して、360度の映像を生成することは、従来技術では不可能であった。
【0012】
本発明は、複数の撮像素子で視差のない複数の映像を撮影し、各撮像素子で撮影した映像を合成して、360度の映像を生成する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、水平視野角が72度以上の映像を取得する集光レンズ群と撮像素子とが一対となって1組の光学レンズ群を形成し、十角柱形をした光学透過する光学素子の回りに、五組の光学レンズ群をそれぞれ放射方向に72度間隔で配置することにより、視差のない5つの映像を撮影し、それらの映像を結合することにより360度の映像を生成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
(1)正五角柱の頂点部分を一部平坦とし辺にするよう変形した、又は辺の長さの等しい十角柱形をした光学透過する光学素子を中心に配置し、水平視野角が72度以上の映像を取得する集光レンズ群と撮像素子とが一対となって1組の光学レンズ群を形成し、五組の前記光学レンズ群がそれぞれ前記光学素子の同一円周上に放射方向に72度間隔で配置された撮像装置。
【0015】
(2)2N角柱形(Nは、5以上の奇数。)をした光学透過する光学素子を中心に配置し、水平視野角が(360/N)度以上の映像を取得する集光レンズ群と撮像素子とが一対となって1組の光学レンズ群を形成し、N組の光学レンズ群がそれぞれ前記光学素子の同一円周上に放射方向に(360/N)度間隔で配置された撮像装置。
【0016】
(3)1つの前記撮像素子が水平視野角(360/N)度以上で映像取得し、N個の前記撮像素子が取得した映像を合成して360度映像を生成する、上記(2)の撮像装置。
【0017】
(4)前記光学素子を輪切りにした断面は、長辺と短辺とが交互に接続された多角形であり、前記光学素子の前記長辺側には、前記集光レンズ群として、水平視野角(360/N)度以上を持つ広角レンズ、又は水平視野角及び垂直視野角180度以上をもつ魚眼型超広角群のレンズ(以下、群レンズという。)を備え、前記光学素子を通して対向する前記短辺側に前記撮像素子を設置する、上記(2)又は(3)の撮像装置。
【0018】
(5)前記群レンズから前記光学素子を通して前記撮像素子を設置する際に、前記群レンズは、前記光学素子の中心に撮影された映像の光学ノーダル点がくるように光学距離が設計された群レンズであり、且つ、N組 の前記群レンズ及び前記撮像素子の光学ノーダル点が前記光学素子の中心で一致する、上記(4)の撮像装置。
【0019】
(6)前記光学素子は、その中が、屈折率n≧1.0の光学透過する材料にて均一に満たされて構成される、上記(1)-(3)の撮像装置。
【0020】
(7)前記光学素子は、屈折率n≧1.0の材料による一定の厚さの光学板を組み合わせて十角形又は2N角形が構成され、前記十角形又は前記2N角形の中は、n=1.0の空気又はn=1.0近傍の気体媒質で満たされる、上記(1)-(3)の撮像装置。
【0021】
(8)前記光学素子をn=1.0の空気とし、前記光学素子の周辺を構成する前記集光レンズ群及び前記撮像素子が、前記光学素子を中心に配置されて構成される、上記(1)-(3)の撮像装置。
【0022】
(9)前記光学素子において、5又はN個のノーダル点が一致し、5又はN個の撮影された映像を視差がなく撮影された水平方向に結合処理する手段を有し、360度映像を実時間で生成する、上記(1)-(3)の撮像装置。
【0023】
(10)前記集光レンズ群と前記撮像素子の形状と光学設計により、5又はN個のノーダル点がそれぞれの前記集光レンズ群と前記撮像素子の組み合わせについて一致するように、前記撮像素子の受光部の前には、前記撮像素子の前で平行に入射し被写体画角が大きくとれるようコリメート型レンズ手段で構成される光学補正手段が備わった、上記(1)-(3)の撮像装置。
【0024】
(1)の撮像装置により、視差のない5つの映像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、従来の複数撮像素子による360度撮影装置では成し得なかった、視差のない二重像と隠蔽を回避した、360度映像を生成する結合と撮影装置を提供することができる。また、複数の撮像素子での撮像且つ視差のない映像を生成できることで、多画素で高解像度と自然な映像を兼ね備えた360度映像を提供することができる。これにより、より自然で高品位な360度映像を視聴者に提供する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1の十角注型の通過光学素子を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1の十角注型の通過光学素子を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態1の集光レンズ群と撮像素子を設置した通過光学素子を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態1の光学補正手段を設置した通過光学素子を示す図である。 を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1の集光レンズ群と撮像素子を設置した通過光学素子における光の通過する模様を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態1の集光レンズ群と撮像素子を設置した通過光学素子における光の通過する模様を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態1の光学補正手段を設置した通過光学素子における光の通過する模様を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態1の集光レンズ群と光学補正手段の構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態1における複数の撮影映像を結合する過程を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態1における複数の撮影映像を結合する過程を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態2における360度映像を作成する過程を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態3における360度映像を作成する過程を示す図である。
【
図13】従来技術1において、2つの撮影映像を正常に結合できた状態を示す図である。
【
図14】従来技術1において、2つの撮影映像を結合した際に、二重像が発生した模様を示す図である。
【
図15】従来技術1において、2つの撮影映像を結合した際に、隠蔽(オクルージョン)が発生した模様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[発明の実施形態1]
以下、本発明の実施形態1について、図を使って説明する。
ここでは、集光レンズ群と撮像素子のセット数Nが「5」である構成の撮影装置の例について説明する。
【0028】
図1、及び
図2は、本発明の実施形態1に係る、正五角柱100のうち、頂点部分を一部平坦とするよう、切削又は成型することにより、辺の長さが異なる十角柱形、又は辺の長さの等しい水平に十角柱形となるよう構成した透過光学素子200の例である。
図1は元となる正五角柱100の図、
図2はそこから十角柱の形状として透過光学素子200を構成した図である。撮影装置を構成した際に、中心に、撮影のノーダル点が一致するような形状の透過型光学素子である。透過光学素子200は、集光レンズ群と撮像素子のセット数Nが増える場合は、更にその2N角柱形に応じた形状をなす。材料は、光学透過する、石英ガラス(屈折率n:1.45)、アクリル(PMMA)(n:1.49)、ポリカーボネート(n:1.58)などが挙げられる。
【0029】
図3は、本発明の実施形態1に係る、十角柱型透過光学素子に、5つの撮像素子21~25とそれぞれに対応する5つの集光レンズ群11~15が設置され構成された撮影装置の光学系の例である。集光レンズ群11~15は、それぞれの被写体映像を集光し、ノーダル点を一致させながら撮像素子に像を再現する手段である。
水平視野角72度以上の映像を取得する1つの光学集光レンズ群と1つの撮像素子が一対となり、それぞれ同心円から放射方向に72度間隔で配置され、光線がノーダル点で交差するような光学系を持つ撮像装置を構成する。例えば、集光レンズ群14に入射した光線は、十角柱型透過光学素子を通して、撮像素子24の撮像面に到達する。
【0030】
図4は、
図3の構成に加え、光学補正手段31~35が備わった撮影装置を構成する例である。光学補正手段31~35は、入力した光線をコリメートする機能を有しており、透過光学素子200内に像を再現することを避け、透過光学素子200の外側に撮像素子21~25を置けるように光学補正する手段である。
図4は、集光レンズ群11~15から入射した光がノーダル点を通って撮像面に像を形成する際、十角柱型透過光学素子の外側に撮像素子21~25が設置されるが、所望の像高が撮像素子21~25の手前側に形成される際に、像面全体を撮像面に形成できるよう、光線群をコリメートし、撮像素子21~25に形成できるようにした例である。これにより、5つそれぞれに入射した光のノーダル点が中心で一致しやすくなるような構成として備えている。
【0031】
図5、及び
図6は、
図3の構成で撮影装置周辺の視野角360度の被写体の光線が集光レンズ群、十角柱型光学素子を通って、撮像素子に入射する様子(水平方向)を示した例の図である。
図5(a)のように、被写体からの被写体光線1は、集光レンズ群1で集光され、ノーダル点を通過して、撮像素子1の撮像面に像を形成する。
【0032】
図5(b)を使って光線の流れを説明する。例えば、水平視野角72度(=360度/5)から例えば200度分で入射した、被写体光線1は、一定の広がりをもって入射するが、集光レンズ群1を通して集光される。このとき集光レンズ群1は、単一のレンズ、又は、120度以上の広い視野角の光線を集光するために複数のレンズを組み合わせて構成したレンズ群である。集光された光線は、十角柱型光学素子を通って撮像素子に向かう。このとき、一定の視野角からの被写体の光線は中心のノーダル点で交差し、撮像素子1の撮像面に到達する。
同様にして、別の角度における、水平視野角72度以上の被写体は、被写体光線2、3、4、5のそれぞれにおいて、それぞれの番号の集光レンズ群2、3、4、5、同じ中心のノーダル点を通って、撮像素子2、3、4、5に像をそれぞれ形成する。
【0033】
図6では、撮像素子が十角柱型光学素子に接してない例、又は、カメラを取り囲む被写体の360度から、それぞれの集光レンズ群と撮像素子がそれぞれの中心から72度の範囲を中心に撮影する様子を模式的に示している。
【0034】
また、
図4で説明した光学補正手段を用いて、撮影装置の光学系を構成した例を
図7に示す。
図4での説明、
図5、6での説明と同様に、入射した光線は集光レンズ群1を通して、ノーダル点で交差し、その後の光線がコリメートする光学補正手段1(
図7の補正レンズ群1)を通して、撮像素子1に到達する例である。このとき、光学補正手段前で一定の像高を形成した場合、撮像面においては所望の像高での撮影は得られないため、光線を平行光にコリメートして、撮像素子で受光する。このとき光学補正手段は、単体のコリメート型レンズでもよいし、又は本機能を有するために複数のレンズを組み合わせてコリメート機能を有する補正レンズ群で形成されてもよい。
【0035】
図8に集光レンズ群と光学補正手段(
図8の補正レンズ群)の構成を示す。
図3~
図7では、集光レンズ群と光学補正手段は、あたかも一枚のレンズであるかのように描いているが、実際は、
図8のように複数枚のレンズで構成されたレンズ群である。
【0036】
図9に、これら5つの撮像素子で撮影された映像信号が、エクイレクタングラー(equirectangular、ERP、正距円筒投影)による形式で射影変換され、一部重なり合う撮影映像が水平方向に電気的に結合され、画素アスペクト1:2となるERP形式360度映像を形成するまでの模式図を示す。
このとき、5つの視野範囲の光線群は、すべて十角柱型光学素子の中心にノーダル点を形成するので、それぞれの視野が72度を超える範囲で映像が取得された場合、隣接する撮像映像と重なり、結合した場合でも、視差のない映像を結合することができる。すなわち、被写体の二重像の形成や、隠蔽(オクルージョン)の問題を起こすことなく、映像を結合することができ、理想的な350度映像を撮影し形成することができる。
【0037】
図10を用いて、
図9の内容を詳しく説明する。
図10(a)は、集光レンズ群及び撮像素子の一セットにおいて、視野角(FoV)180度の魚眼レンズと、縦7680×横4320又は縦15360×横4320又は8640の画素をもつ撮像素子で撮影する際の、投影するイメージサークルと撮像素子の関係例、及びそこから水平方向に画素をトリミングした場合の有効画素の関係を示している。1撮像素子で取得した画像は、隣接する撮像素子で取得した画像と一部同じ被写体の画像を撮影しており、これらを結合する際、透明率を徐々に変更して互いに結合するαブレンディング手法による結合や、画像の特徴点を抽出し、類似の画素や画素領域(ブロック)を比較しマッチングさせ、スティッチングして結合する画素・ブロックマッチング手法による画像結合を行う。
【0038】
また、
図10(b)には、垂直画素数7680又は15360(以下、16K/30K映像という。)、水平視野角360度で水平画素数15360又は30720の映像を形成するためのERP画像(アスペクト比1:2)の画素マッピング図を示している。ここでは、ERP変換後の画像に対し、水平方向の端の画素を一部トリミングし結合し、一定の水平画素に収める処理を行い、360度映像を形成する。
【0039】
[発明の実施形態2]
360度映像撮影装置の構成と形態例を
図11(a)に示す。
図1から
図7で説明したとおりの構成において、十角柱型光学素子の外側に、集光レンズ群が5つ、撮像素子が5つ、光線を光学素子の中心でノーダル点を形成するように、放射状に等間隔に並べて配置されている。集光レンズ群及び撮像素子のセットがN個の場合は、この数を増やすことに相当して配置し形成する。このとき、集光レンズ群は、水平及び垂直視野角(FoV)が180度以上を備えていることが望ましい。このとき、
図11(b)のように並べて画像を結合する際、水平方向は結合して水平視野角360度を撮影し、垂直方向は下(足元)から上(天頂)まで180度を撮影し、結合して全体で視差のない(すなわち二重像や隠蔽のない)360度映像を形成することができる。
【0040】
[発明の実施形態3]
もし、集光レンズ群の視野角が180度未満で且つ(360/N)度以上の視野角のレンズ群を使用する場合、
図11(a)に示す形態の360度映像撮影装置を構成する際に、
図12に示す形態の撮影装置を構成する。
図12は、
図11の5セットの集光レンズ群と撮像素子に加え、十角柱型光学素子の上部に、視野角90度以上の集光レンズ群No.6が供えられ、光学素子の下に撮像素子No.6が供えられ、天頂部を専用に撮影する手段を構成する。このとき、水平に一致したノーダル点に、本垂直方向に供えられた集光レンズ群及び撮像素子で構成される光学系のノーダル点が一致されるよう、配置される。更には光学系によっては、
図4、
図7に示した補正光学素子が付加して供えられてもよい。
【0041】
図12の構成によれば、水平方向には、撮像素子No.1からNo.5を撮影し結合することで水平360度映像を形成できるが、これに撮像素子No.6で撮影した天頂映像を付加し、これら映像にαブレンディング又は画素・ブロックマッチングにより画素をスティッチングし結合することで、天頂を網羅する視差のない全天球映像を生成することができる。
【符号の説明】
【0042】
11-15 集光レンズ群
21-25 撮像素子
31-35 光学補正手段
100 正五角柱
200 透過光学素子
500 中心