(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078771
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】樹脂発泡体、樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20240604BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191313
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AB05
4F074AD12
4F074AG04
4F074BA01
4F074BA28
4F074BB25
4F074CA23
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA08
4F214AA04
4F214AB02
4F214AB03
4F214AC01
4F214AG20
4F214AR17
4F214AR20
4F214UA01
4F214UA08
4F214UB01
4F214UF01
4F214UH24
(57)【要約】
【課題】製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体、及び製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂発泡体1は、ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、架橋原料を型内で発泡した樹脂発泡体である。ポリエチレンは下記条件(1)及び(2)を満たす。
条件(1):ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)が、10分以下である。
条件(2):ポリエチレンと酸化防止剤とを組成物における質量割合で混合した試料に対して、樹脂発泡体の形成に際して照射される電子線を照射させた測定試料の、せん断速度122sec
-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、前記架橋原料を型内で発泡した樹脂発泡体であって、
前記ポリエチレンは下記条件(1)及び(2)を満たす、樹脂発泡体。
条件(1):前記ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)が、10分以下である。
条件(2):前記ポリエチレンと前記酸化防止剤とを前記組成物における質量割合で混合した試料に対して、前記樹脂発泡体の形成に際して照射される前記電子線を照射させた測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下である。
【請求項2】
JIS K 6796に準じて測定した前記測定試料のゲル分率が、1%以上80%以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
前記樹脂発泡体の形成において照射する電子線照射線量が、150kGy以下である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、前記架橋原料を型内で発泡する樹脂発泡体の製造方法であって、
前記ポリエチレンは下記条件(1)及び(2)を満たす、樹脂発泡体の製造方法。
条件(1):前記ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)が、10分以下である。
条件(2):前記ポリエチレンと前記酸化防止剤とを前記組成物における質量割合で混合した試料に対して、前記樹脂発泡体の形成に際して照射される前記電子線を照射させた測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂発泡体、樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、物理架橋発泡性粒子を金型内で発泡させた発泡体が開示されている。物理架橋発泡性粒子は、ポリオレフィン樹脂などの発泡性粒子を、電子線照射などの物理架橋法を用いて架橋させて得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体が求められている。
本開示は、製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体、及び製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体の製造方法を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、前記架橋原料を型内で発泡した樹脂発泡体であって、
前記ポリエチレンは下記条件(1)及び(2)を満たす、樹脂発泡体。
条件(1):前記ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)が、10分以下である。
条件(2):前記ポリエチレンと前記酸化防止剤とを前記組成物における質量割合で混合した試料に対して、前記樹脂発泡体の形成に際して照射される前記電子線を照射させた測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体、及び製造が容易であり、発泡性が良好な樹脂発泡体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】シート状の原料組成物に電子線を照射する工程を説明する説明図である。
【
図2】架橋樹脂組成物をペレットにした後、金型内に入れる工程を説明する説明図である。
【
図3】金型内で架橋樹脂組成物を発泡させる工程を説明する概略図である。
【
図4】(A)は、実施例1と同様の条件で作製した樹脂発泡体を写した写真である。(B)は、比較例2と同様の条件で作製した樹脂発泡体を写した写真である。(C)は、比較例3,4と同様の条件で作製した樹脂発泡体を写した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕JIS K 6796に準じて測定した前記測定試料のゲル分率が、1%以上80%以下である、〔1〕に記載の樹脂発泡体。
〔3〕前記酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂発泡体。
〔4〕前記樹脂発泡体の形成において照射する電子線照射線量が、150kGy以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂発泡体。
〔5〕ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、前記架橋原料を型内で発泡する樹脂発泡体の製造方法であって、
前記ポリエチレンは下記条件(1)及び(2)を満たす、樹脂発泡体の製造方法。
条件(1):前記ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)が、10分以下である。
条件(2):前記ポリエチレンと前記酸化防止剤とを前記組成物における質量割合で混合した試料に対して、前記樹脂発泡体の形成に際して照射される前記電子線を照射させた測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下である。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.樹脂発泡体
本実施形態の樹脂発泡体1(
図4参照)は、ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物を架橋して、発泡させた発泡体である。樹脂発泡体1は、組成物に電子線を照射して架橋原料とし、架橋原料を型内で発泡させた発泡体である。
【0011】
(1)樹脂発泡体1の原料
(1.1)ポリエチレン
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、炭素数3~10のα-オレフィン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、共役ジエン、及び非共役ジエンから選ばれる1種以上のコモノマーと、の共重合体が挙げられる。炭素数3~10のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが例示される。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが例示される。不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが例示される。
これらの中でも、分子鎖の架橋および発泡時の高温における溶融張力の観点から、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されない。ポリエチレンのMFRは、成形性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.3g/10分以上であることがより好ましく、0.5g/10分以上であることがさらに好ましい。ポリエチレンのMFRは、成形性の観点から、100g/10分以下であることが好ましく、60g/10分以下であることがより好ましく、30g/10分以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、ポリエチレンのMFRは、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましく、0.3g/10分以上60g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上30g/10分以下であることがさらに好ましい。ここでいうポリエチレンのMFRは、JIS K 7210-1に準じて測定できる。
【0012】
ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)は、10分以下であり、8分以下が好ましく、5分以下がさらに好ましい。ポリエチレンについて、示差走査熱量計を用いて200℃で測定した酸化誘導時間は、1分以上が好ましい。したがって、ポリエチレンについて、示差走査熱量計を用いて200℃で測定した酸化誘導時間は、10分以下であり、1分以上8分以下が好ましく、1分以上5分以下がさらに好ましい。ここでいう酸化誘導時間は、以下のようにして測定できる。窒素気流中(50mL/min)で、30℃から200℃まで昇温速度20℃/minで昇温する。200℃で8分間維持した後、200℃の酸素気流中(50mL/min)に暴露するときに、試料(ポリエチレン)の暴露開始から重量変化が開始するまでの時間(酸素吸収による発熱ピークの立ち上がりまでの時間)を酸化誘導時間として測定できる。ポリエチレンについて、示差走査熱量計を用いて200℃で測定した酸化誘導時間が、10分以下であることは、本開示の「条件(1)」に相当する。
【0013】
(1.2)酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などをあげることができ、特に、分子量が、500以上が好ましく、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましく、800以上が特に好ましい。また、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0014】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Pentaerythritol tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Octadecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートがより好ましい。
【0015】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシラート(Tetrakis(1,2,2,6,6-pentamethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylate)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ポリ((6-((1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ)-s-テトラジン-2,4-ジジル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)))、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどを挙げられる。
【0016】
酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、8.0質量部以下がさらに好ましい。したがって、酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上8.0質量部以下がさらに好ましい。
【0017】
(1.3)発泡剤
発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好適である。
【0018】
発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましく、10.0質量部以上がさらに好ましい。発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して40.0質量部以下が好ましく、30.0質量部以下がより好ましく、20.0質量部以下がさらに好ましい。したがって、発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.0質量部以上40.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以上30.0質量部以下がより好ましく、10.0質量部以上20.0質量部以下がさらに好ましい。
【0019】
(1.4)その他の成分
組成物は、必要に応じて、発泡助剤、内添離型剤、表面張力調整剤、充填剤(炭酸カルシウム等)、顔料、可塑剤、機能付与剤(例えば、難燃剤)等を含んでいてもよい。
【0020】
発泡助剤は特に限定されない。発泡助剤として、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩、尿素及びその誘導体等を挙げることができる。発泡助剤は、これらを単独または複数種類組み合わせて使用することができる。
発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して20.0質量部以下が好ましく、15.0質量部以下がより好ましく、10.0質量部以下がさらに好ましい。したがって、発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下が好ましく、0.03質量部以上15.0質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上10.0質量部以下がさらに好ましい。
【0021】
(2)樹脂発泡体1の構成
(2.1)架橋構造
樹脂発泡体1には、架橋構造が形成されている。樹脂発泡体1がシート状の場合には、樹脂発泡体1における表層部又は樹脂発泡体1の全体に架橋構造が形成されている。樹脂発泡体1は、後述する原料組成物を得る工程A、電子線を照射して架橋樹脂組成物を得る工程Bの後に、架橋樹脂組成物を発泡させる工程Cにおいて、加熱等により発泡させて得られる。工程Bにおいて、電子線を照射して架橋構造を形成することが好ましい。このとき、工程Aで得られた原料組成物がシート状の場合には、そのシートの少なくとも一方の面、好ましくは両面に電子線が照射され、シートの少なくとも一方の面、好ましくは両面が照射面であることが好ましい。原料組成物のシートの厚さに応じた加速電圧で電子線を照射することで、シートにおける表層部又はシート内部に適度な架橋構造が形成され、樹脂発泡体1を得る工程Cにおいて適切に発泡することができる。
【0022】
(2.2)溶融粘度
ポリエチレンと酸化防止剤とを、樹脂発泡体1の組成物(ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物)における質量割合で混合したものを試料とする。試料に対して、樹脂発泡体1の形成に際して照射される電子線を照射させたものを測定試料とする。
測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、樹脂発泡体1にワレや亀裂等を生じにくくする観点から、10000Pa・s以下であり、5000Pa・s以下が好ましく、4000Pa・s以下が更に好ましい。測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、気泡を破れにくくする観点から、500Pa・s以上が好ましく、600Pa・s以上がより好ましく、700Pa・s以上がさらに好ましく、800Pa・s以上が特に好ましい。これらの観点から、測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、10000Pa・s以下であり、500Pa・s以上10000Pa・s以下が好ましく、600Pa・s以上5000Pa・s以下がより好ましく、700Pa・s以上4000Pa・s以下がさらに好ましく、800Pa・s以上4000Pa・s以下が特に好ましい。溶融粘度の測定方法は、JIS K 7199:1999「プラスチックーキャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法」に従ってすることができる。
測定試料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、10000Pa・s以下であることは、本開示の「条件(2)」に相当する。
【0023】
(2.3)ゲル分率
上記測定試料のゲル分率は、気泡を破れにくくする観点から、1%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。測定試料のゲル分率は、樹脂発泡体1にワレや亀裂等を生じにくくする観点から、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。これらの観点から、測定試料のゲル分率は、1%以上80%以下が好ましく、10%以上70%以下がより好ましく、20%以上60%以下がさらに好ましい。
ここでいう樹脂発泡体のゲル分率は、JIS K 6796に基づいて測定できる。
【0024】
(2.4)架橋原料の密度
発泡前の架橋原料の密度は、910kg/m3以上が好ましく、915kg/m3以上がより好ましく、920kg/m3以上がさらに好ましい。発泡前の架橋原料の密度は、1300kg/m3以下が好ましく、1200kg/m3以下がより好ましく、1100kg/m3以下がさらに好ましく、1000kg/m3以下が特に好ましい。したがって、発泡前の架橋原料の密度は、910kg/m3以上1300kg/m3以下が好ましく、915kg/m3以上1200kg/m3以下がより好ましく、920kg/m3以上1100kg/m3以下がさらに好ましく、920kg/m3以上1000kg/m3以下が特に好ましい。架橋原料の密度は、JIS K 7222;2005に基づいて測定できる。
【0025】
(2.5)樹脂発泡体1の密度
樹脂発泡体1の密度は、成形性の観点から、30kg/m3以上が好ましく、50kg/m3以上がより好ましく、70kg/m3以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1の密度は、軽量性の観点から、800kg/m3以下が好ましく、500kg/m3以下がより好ましく、150kg/m3以下がさらに好ましく、100kg/m3以下が特に好ましい。これらの観点から、樹脂発泡体1の密度は、30kg/m3以上800kg/m3以下が好ましく、50kg/m3以上500kg/m3以下がより好ましく、70kg/m3以上150kg/m3以下が更に好ましく、70kg/m3以上100kg/m3以下が特に好ましい。樹脂発泡体1の密度は、JIS K 7222;2005に基づいて測定できる。
【0026】
(2.6)樹脂発泡体1の引張強度
樹脂発泡体1の引張強度は、0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、0.3MPa以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1の引張強度は、5MPa以下が好ましく、3MPa以下がより好ましく、1MPa以下がさらに好ましい。したがって、樹脂発泡体1の引張強度は、0.1MPa以上5MPa以下が好ましく、0.2MPa以上3MPa以下がより好ましく、0.3MPa以上1MPa以下がさらに好ましい。樹脂発泡体1の引張強度は、JIS K 6767に基づいて測定できる。
【0027】
(2.7)樹脂発泡体1の最大伸び率
樹脂発泡体1の最大伸び率は、10%以上が好ましく、12%以上がより好ましく、14%以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1の最大伸び率は、例えば、30%以下、50%以下が例示される。樹脂発泡体1の最大伸び率は、JIS K 6767に基づいて測定できる。
【0028】
(2.8)樹脂発泡体1のセル数
樹脂発泡体1のセル数は、発泡状態の観点で、10個/25mm以上が好ましく、15個/25mm以上がより好ましく、20個/25mm以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1のセル数の上限は、例えば、100個/25mm以上(超え)も許容され、100個/25mm以下、90個/25mm以下、80個/25mm以下が例示できる。
【0029】
2.樹脂発泡体1の製造方法
樹脂発泡体1の製造方法は、ポリエチレンを含む樹脂、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物に電子線を照射して架橋原料とし、架橋原料を型内で発泡する。
【0030】
樹脂発泡体1の製造方法は、例えば、以下の工程A-Cを含む。
工程A:ポリエチレン、酸化防止剤、発泡剤、及び必要に応じて配合されるその他添加剤(架橋助剤など)を加熱ニーダー、二軸押出機等で溶融混練して原料組成物を得る工程
工程B:工程Aで得た原料組成物に電子線を照射して、架橋して架橋樹脂組成物を得る工程
工程C:成形用型内に工程Bで得た架橋樹脂組成物をシート状、ペレット状等の所定形状にして配置し、成形用型の内部で加熱して発泡させることで、樹脂発泡体1を形成する工程
【0031】
工程Bにおいて、工程Aで得た原料組成物がシート状である場合には、少なくとも一方の面から、好ましくは両面側から電子線を少なくとも1回ずつ照射すればよい。
【0032】
樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、170kGy以下が好ましく、150kGy以下がより好ましく、130kGy以下がさらに好ましく、110kGy以下が特に好ましい。樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、1kGy以上が好ましく、3kGy以上がより好ましく、5kGy以上がさらに好ましく、10kGy以上が特に好ましい。したがって、樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、1kGy以上170kGy以下が好ましく、3kGy以上150kGy以下がより好ましく、5kGy以上130kGy以下がさらに好ましく、5kGy以上110kGy以下が特に好ましい。加速電圧は、発泡前のシート厚みに応じて調整する。電子線の照射による架橋の進行は、組成物の組成に影響されるため、通常はゲル分率(架橋度)を測定しながら照射量を調整する。
【0033】
架橋樹脂組成物を成形用型内で発泡させる際に、架橋樹脂組成物の融点よりも高い温度(例えば200℃)で加熱して発泡成形する。
【0034】
3.本実施形態の効果
本実施形態の樹脂発泡体1は、発泡性が良好である。
本実施形態の樹脂発泡体1の製造方法は、樹脂架橋度をコントロールすることで、圧縮成形することなく、簡便な方法で、樹脂発泡体1を製造できる。
本実施形態の樹脂発泡体1の製造方法は、外観、強度、軽量化、耐熱収縮性に優れる樹脂発泡体1を得ることができる。
【実施例0035】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0036】
1.樹脂発泡体の作製
表1,2に示す配合割合で、実施例及び比較例の樹脂発泡体を作製した。表1,2における樹脂発泡体の原料の詳細を以下に示す。表1,2において、配合割合はポリエチレンを100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。
【0037】
【0038】
【0039】
(1)樹脂発泡体の原料
・ポリエチレン1:5321(ハンファ・ソリューションズ社製)
・ポリエチレン2:LD2426H(GC Marketing Solutions Company Limted社製)
・ポリエチレン3:202(東ソー社製)
・ポリエチレン4:248(東ソー社製)
・ポリエチレン5:172(東ソー社製)
・発泡剤:UNIFOAM AZ VI-50L3ST(大塚化学社製)
・発泡助剤1:酸化亜鉛1種(白水化学工業社製)
・発泡助剤2:ジンクステアレートN(淡南化学工業社製)
・酸化防止剤:アデカスタブ AO-60(ADEKA社製)
【0040】
(2)実施例及び比較例の樹脂発泡体の作製
各樹脂発泡体は、具体的には以下のように作製した。
(2.1)実施例1
表1に記載の配合割合でポリエチレン1に対して発泡剤、発泡助剤1、発泡助剤2及び酸化防止剤を添加して原料を得た。ポリエチレン1の酸化誘導時間は、1.0分であった。ポリエチレン1のMFRは、3.0g/10分であった。
原料の架橋及び発泡は、実施形態の「2.樹脂発泡体1の製造方法」に記載の方法で行った。原料を加熱ニーダーで混錬して原料組成物を得た後、
図1に示すように、厚さ2mmのシート状の原料組成物(組成物10という)にしてから、電子線照射装置20(加速電圧:550kV、照射線量:25kGy)による照射によって架橋して架橋樹脂組成物を得た。電子線の照射は、組成物10に対して両面照射した。架橋樹脂組成物をペレタイザーでペレット30にした後、
図2に示すように、150mm×200mm×10mmの金型40(成形用型)内に入れた。金型40を200℃で8分間加熱して、
図3に示すように、発泡するとともに成形した。その後、水冷により金型40を冷却した後、金型40を開けることで、樹脂発泡体を得た。樹脂発泡体は、金型40内のキャビティ容積が満たされた150mm×200mm×10mmの形状(金型40と同じ形状)になった。
【0041】
(2.2)実施例2
実施例2では、電子線照射時の照射線量を50kGyとした点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0042】
(2.3)実施例3
実施例3では、電子線照射時の照射線量を100kGyとした点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0043】
(2.4)実施例4
実施例4では、樹脂原料にポリエチレン2を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。ポリエチレン2の酸化誘導時間は、6.8分であった。ポリエチレン2のMFRは、1.9g/10分であった。
【0044】
(2.5)実施例5
実施例5では、樹脂原料にポリエチレン3を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。ポリエチレン3の酸化誘導時間は、1.5分であった。ポリエチレン3のMFRは、24g/10分であった。
【0045】
(2.6)実施例6
実施例6では、電子線照射時の照射線量を50kGyとした点以外は、実施例5と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0046】
(2.7)実施例7
実施例7では、樹脂原料にポリエチレン4を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。ポリエチレン4の酸化誘導時間は、1.8分であった。ポリエチレン4のMFRは、58g/10分であった。
【0047】
(2.8)比較例1
比較例1では、電子線照射時の照射線量を200kGyとした点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0048】
(2.9)比較例2
比較例2では、樹脂原料にポリエチレン5を用いた点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。ポリエチレン5の酸化誘導時間は、12.2分であった。ポリエチレン5のMFRは、0.3g/10分であった。
【0049】
(2.10)比較例3
比較例3では、電子線架橋を行っていない点以外は、実施例1と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0050】
(2.11)比較例4
比較例4では、電子線架橋を行っていない点以外は、比較例2と同様の方法で樹脂発泡体を作製した。
【0051】
2.評価方法
(1)発泡前の評価
ポリエチレンと酸化防止剤とを、樹脂発泡体の組成物(ポリエチレン、酸化防止剤、及び発泡剤を含む組成物)における質量割合で混合したものを試料とした。試料に対して、樹脂発泡体の形成に際して照射される電子線を照射させたものを測定試料とした。
(1.1)ゲル分率
測定試料のゲル分率は、JIS K 6796に準じて測定した。
【0052】
(1.2)溶融粘度
測定試料の溶融粘度は、200℃の測定温度下で、キャピログラフを用い、せん断速度122sec-1で測定した。
【0053】
(1.3)発泡前密度
架橋樹脂組成物の発泡前密度(kg/m
3)は、JIS K 6268(ISO-2781)に準じて測定した。
(2)樹脂発泡体の評価
(2.1)発泡性(外観、状態)
図4(A)は、実施例1と同様の条件で作製した樹脂発泡体の写真である。なお、
図4(A)では、樹脂発泡体の一部を切断し、断面を見せている。
図4(B)は、比較例2と同様の条件で作製した樹脂発泡体の写真である。
図4(C)は、比較例3,4と同様の条件で作製した樹脂発泡体の写真である。
樹脂発泡体の外観の評価は、目視により確認し、以下の基準とした。樹脂発泡体の状態の評価は、樹脂発泡体をタチ機で切断してマイクロスコープで観察し、以下の基準とした。
A :型に対して同程度の寸法まで膨らんでおり、外観および状態が良好である。
B :未発泡、又は外観および状態が不良である。
【0054】
(2.2)発泡体密度
樹脂発泡体の密度(kg/m3)は、JIS K 7222:2005に準じて測定した。
【0055】
(2.3)引張強度
樹脂発泡体の引張強度は、JIS K 6767:2010に基づいて測定した。
【0056】
(2.4)最大伸び率
樹脂発泡体の最大伸び率は、JIS K 6767:2010に基づいて測定した。
【0057】
(2.5)セル数
樹脂発泡体のセル数を測定した。JIS K 6767:1999に準じて測定した。
【0058】
3.結果
結果を表1,2に併記する。
実施例1-7では、発泡性(外観、状態)が良好である樹脂発泡体が得られた。比較例1-4では、発泡が不良であった。比較例1では、電子線架橋時の照射線量が大きすぎ、架橋樹脂組成物の溶融粘度が大きくなり、発泡し難かったことが考えられる。比較例2では、ポリエチレン5の酸化誘導時間が比較的長く、架橋反応が十分に行われなかったことが考えられる。比較例3,4では、原料組成物を電子線架橋することなく発泡工程を行っているため、発泡が不良であったと考えられる。
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、樹脂架橋度(電子線の照射線量)をコントロールすることで、圧縮成形することなく、簡便な方法で、樹脂発泡体を製造できた。
【0059】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。