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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078774
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電子機器及び電子時計
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20240604BHJP
   G04R 60/10 20130101ALI20240604BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20240604BHJP
【FI】
H01Q1/22 Z
G04R60/10
G04G21/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191317
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松江 剛志
(72)【発明者】
【氏名】麻生 信晴
【テーマコード(参考)】
2F002
5J047
【Fターム(参考)】
2F002AA00
2F002AB02
2F002AC01
2F002AC03
2F002BB04
2F002GA06
5J047AA03
5J047AB06
5J047EF02
(57)【要約】
【課題】アンテナ感度を向上させることのできる電子機器及び電子時計を提供する。
【解決手段】電子機器(1)は、内部に空間を有し、絶縁性材料を含む筐体(2)と、筐体(2)内に位置し、少なくとも筐体(2)の中心軸(C)に垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターン(311)を有するアンテナ素子(31)と、筐体(2)とアンテナ素子(31)との間に位置し、筐体(2)の中心軸(C)に沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、アンテナ素子(31)に対する接地面に電気的に接続する導電性シート(71)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有し、絶縁性材料を含む筐体と、
前記筐体内に位置し、少なくとも前記筐体の中心軸に垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターンを有するアンテナ素子と、
前記筐体と前記アンテナ素子との間に位置し、前記筐体の中心軸に沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、前記アンテナ素子に対する接地面に電気的に接続する第1の導体と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記第1の導体は、前記アンテナパターンの少なくとも一部が前記面を通り当該面に垂直な線上に位置するように配置される請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の導体の少なくとも一部は、前記第二軸方向に沿って見た平面視で、前記中心軸に対し、前記第二軸方向及び前記第一軸方向に直交する第三軸方向から45度以内の範囲に位置する請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
表示面を有する表示部を有し、
前記第一軸方向は、前記表示面の表示に係る左方向又は右方向であり、
前記第三軸方向は、前記平面視で前記表示面の表示に係る上向き方向である
請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記アンテナパターンは、前記平面視で前記中心軸に対して前記第三軸方向から45度以内の範囲に位置する請求項3記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体の中心軸に対し、前記平面視で前記第1の導体と点対称な第1位置、前記中心軸を含み前記第三軸方向に延びる面に対して前記平面視で前記第1の導体と線対称の第2位置、及び前記中心軸を含み前記第三軸方向に延びる面に対して前記平面視で前記第1位置と線対称な第3位置のうち少なくとも1か所を含む範囲に、前記接地面と電気的に接続しない第2の導体面を備える請求項3記載の電子機器。
【請求項7】
前記筐体内に位置する基板と、
前記基板を収容する絶縁性の収容体と、
を備え、
前記第1の導体は、前記収容体と前記筐体との間に位置している
請求項1記載の電子機器。
【請求項8】
前記筐体は、繊維強化樹脂を主成分とする請求項1記載の電子機器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子機器と、
時刻表示が可能な表示部と、
を備える電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器において外部と通信を行うためのアンテナを当該電子機器の内部に配置する技術がある(例えば、特許文献1)。内部の電子部品などによる電波(電磁波)の減衰の影響を避けるために、アンテナの配置には、種々の工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-241396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナ感度は、集積されている筐体の種類や種々の部品などの影響を受けて、送受信共に依然低くなりやすいという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、アンテナ感度を向上させることのできる電子機器及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、
内部に空間を有し、絶縁性材料を含む筐体と、
前記筐体内に位置し、少なくとも前記筐体の中心軸に垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターンを有するアンテナ素子と、
前記筐体と前記アンテナ素子との間に位置し、前記筐体の中心軸に沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、前記アンテナ素子に対する接地面に電気的に接続する第1の導体と、
を備える電子機器である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に従うと、アンテナ感度を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電子機器の平面図である。
図2】電波の送受信に係る構成の位置関係を説明する図である。
図3】電波の送受信に係る構成の位置関係を説明する図である。
図4】利得分布を数値計算した結果を示す図である。
図5】ビームパターンを数値計算により求めた結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電子機器1の平面図である。
電子機器1は、例えば、腕時計型の電子時計(電子腕時計)である。電子機器1は、略円柱状の空洞(内部の空間)を有して上下(±Z方向)が開放された筒形形状の筐体2と、表示部9の文字盤91及び指針92と、押しボタンスイッチB1、B2及びりゅうずC1を含む操作受付部と、文字盤91の上方周縁に沿って位置するベゼル11などを備える。表示部9は、筐体2内に位置し、上面が図示略の透明な風防ガラスにより覆われている。電子機器1の筐体2の内部であって表示部9の下方(-Z側)には、基板3(図3参照)が位置している。電子機器1の底面は、図示略の裏蓋により封止されている。表示部9は、ここでは、指針92が文字盤91上を回転動作するアナログ表示部として示しているが、これに限られない。表示部9は、液晶ディスプレイといったデジタル表示画面を有するデジタル表示部であってもよい。デジタル表示画面への表示は、通常、アナログ表示における12時方向が表示に係る上向き(文字などの上端側)とされ、アナログ表示における3時-9時方向が表示に係る左右方向(横書き文字の配列方向)とされる。しかしながら、実際の表示の向きは変更可能であってもよい。筐体2は、例えば、炭素繊維強化樹脂などの絶縁性材料を含む複合材料である。
【0010】
図2及び図3は、電波の送受信に係る構成の位置関係を説明する図である。
図2(a)には、基板3の上面(表示面側、+Z側)を示す。図2(b)には、基板3の裏面側を押さえ部材4及び中枠部5とともに示す。図3(a)は、図2(a)、(b)の基板3における断面線AAで電子機器1を切断した断面図である。この図3(a)では、本発明と関係ない構成を一部省略している。また、説明のため、各構成のサイズや縦横比などは、本来のものとは異なり得る。
【0011】
基板3は、上記表示部の動作を制御する電子部品及び電子回路を有する。基板3は、積層基板であってもよい。基板3は、筐体2の内側で表示部9の下方(-Z側)に位置して、基板3上に位置する図示略の制御部が表示部9の表示内容を制御するように、当該表示部9と接続されている。
【0012】
基板3の上面(+Z側)には、外部機器と無線通信を行うためのアンテナ素子31が位置している。無線通信は、特に限定するものではないが、ここではブルートゥース(登録商標)である。ブルートゥースに係る無線電波(例えば、2.4GHz帯)の電波を送受信するためのアンテナ素子31は、ここでは、接地型モノポールアンテナである。
【0013】
アンテナ素子31は、例えば、基板3の表面側周縁付近の11時方向(以下、N時方向とは、電子機器1の表示面上において当該表示面を+Z側から平面視する際のN時方向を表す)に固定されている。アンテナ素子31は、電波を送受信するアンテナパターン311と、アンテナパターン311の長さと送受信周波数との整合を取る電子部品を有するアンテナチップ312とを有する。
【0014】
アンテナパターン311は、例えば、ブルートゥースに係る送受信周波数(2.40GHz~2.48GHz)の電波のλ/8程度の長さ(アンテナチップ312の動作などにより、正確なλ/8からずれがあってよい)に対応する。アンテナパターン311は、ここでは、基板3の11時方向(12時方向に近い向き、例えば、アンテナパターン311の少なくとも一部、特に全体が中心軸Cに対してY軸から左回転方向に45度以内の範囲)に位置する。アンテナパターン311は、基板3に対して水平(筐体2の空洞を貫く中心軸Cに垂直)に3時-9時方向(X軸方向;表示部9の表示面の表示に係る左右方向、例えば、+X方向(右向き)が本実施形態における第一軸方向)に沿って平行に伸びている。したがって、アンテナパターン311は、主に電子機器1の上下方向(Z方向;表裏方向、表示面に対して垂直な方向、+Z方向が第二軸方向)及び12時-6時方向(Y軸方向;表示部9の表示面の表示に係る上下方向;第一軸方向及び第二軸方向に直交する方向であって、ここでは上向きが本実施形態の第三軸方向)に感度を持つ。アンテナチップ312は、アンテナパターン311の一端と、基板3上の接地面とにそれぞれ接続されている。アンテナパターン311とアンテナチップ312とによりアンテナ素子31は、平面視でL字状に位置しているが、これに限られるものではない。
【0015】
接地面は、アンテナチップ312との接続位置の近傍でスルービアなどにより基板3を貫通している。なお、基板3が積層基板である場合、スルービアは、複数段階に分かれて基板3を貫通していてもよい。基板3の裏面側では、接地面には、スルービア近傍で又はスルービアに直結するコンタクトパッド32が含まれる。
【0016】
基板3は、バッテリ収容部42とともに押さえ部材4により固定されている。押さえ部材4は、主に導電性(金属)部材であり、基板3の接地面と接続されることで、筐体接地面に含まれる。また、押さえ部材4は、基板3を固定するのに適切な剛性を有する。押さえ部材4は、図3(a)に示すように、基板3の裏面側周縁から側面にかけて位置している。押さえ部材4は、各種部品との位置関係などに応じて隙間や切込みがあってもよい。また、図2(b)に示すように、押さえ部材4の裏面側中央部に上記バッテリ収容部42が位置している。
【0017】
コンタクトパッド32は、押さえ部材4の接続部41に接している。接続部41は、例えば、押さえ部材4から斜めに飛び出た板ばね部であって、確実に基板3のコンタクトパッド32に押し当てられている。これにより、アンテナパターン311の近傍で接地面が押さえ部材4につながっている。
【0018】
中枠部5(収容体)は、上記基板3及びこれを固定している押さえ部材4を更に収容して、筐体2の内部に位置する。中枠部5は、図3(a)に示すように、表面側から基板3及び押さえ部材4を内包している筒形形状、ここでは円筒形状の部材である。中枠部5は、絶縁部材であり、ここでは、例えば、樹脂などであるが、ガラス材料などであってもよい。中枠部5は、押さえ部材4と比較して剛性が高くなくてもよい。例えば、基板3や押さえ部材4の突出部分などに応じて中枠部5が多少歪んでもよい。中枠部5は、筐体2の空洞内でがたつかないサイズとされている。
【0019】
上述のように、中枠部5並びにこれに内包された基板3及び押さえ部材4の上方(+Z側)には、表示部9が位置している。図1に示したようにアナログ表示を行う表示部9は、表示面として、文字盤91及び当該文字盤91上で回転動作する指針92を有している。また、表示部9は、これら表示に係る構成を駆動するための駆動部を有する。駆動部は、基板3上の図示略の制御部により動作制御される。表示部9による表示内容には、時刻表示が含まれる。
【0020】
図2(b)及び図3(b)に示すように、押さえ部材4は、導電性接続部材6に接している。導電性接続部材6は、特には限られないが、例えば、可撓性(特に、折り曲げ可能)のアルミ部材(アルミ箔など)などであってもよい。導電性接続部材6は、裏面側から上記中枠部5の縁を跨いでその外側に引き出されている。なお、押さえ部材4の底面視中央には、バッテリを収容するバッテリ収容部42が位置している。
【0021】
中枠部5の外側面(筐体2の内側面)に沿って、基板3に対して垂直(筐体2の中心軸Cに沿った方向、第二軸に平行な方向))に広がる導電性シート71(第1の導体)が位置している。導電性シート71は、中心軸Cから上記アンテナパターン311が位置する方向と近い角度方向(例えば、中心軸に対し、Y軸(第三軸)から左回転方向に45度程度の範囲、より好ましくは30度程度の範囲)に位置している。特に、導電性シート71は、アンテナパターン311と同一の方向(ここでは11時方向)を含み、この方向(11時方向)を中心に局所的(例えば、30度程度の範囲)に広がって位置しているとよい。導電性シート71は、例えば、アルミテープなどであって、直接中枠部5に張り付けられてもよい。あるいは、導電性シート71は、粘着部材を介して(粘着テープなどであってもよい)導電性シート71が中枠部5の外側面に張り付けられていてもよい。導電性シート71には、導電性接続部材6の上記引き出された側の一端が接続している。すなわち、導電性シート71は、アンテナ素子31のアンテナパターン311の接地面と電気的に接続している。これにより接地面は、アンテナパターン311の延在方向に対して幅を有しかつ垂直な向きに広がっている。
【0022】
アンテナ素子31は、理想的にはアンテナパターン311の延在方向を軸としてその周囲にトーラス状に感度分布が広がる。したがって、上記のように、アンテナ素子31は、基板3に垂直な表裏方向(Z軸方向)及び6、12時方向(Y軸方向)に感度を有する。しかしながら、実際には内部部品や筐体2の影響を受けて、いくらか変化し、全体として低下する。
【0023】
これに対して、電子機器1は、モノポールアンテナとしてのアンテナパターン311に接続する接地面として当該アンテナパターン311の延在方向(第一軸方向)と垂直かつ筐体2の中心軸方向(Z軸方向、第二軸方向)に沿って略平行に延びている導電性シート71を備える。すなわち、導電性シート71は、その面を通り当該面に垂直な線上にアンテナパターン311の少なくとも一部が位置するように配置されている。これにより、電子機器1は、アンテナによる送受信感度、特に、5~6、11~12時方向の送受信感度を向上させる。導電性シート71は、必ずしも平面でなくてもよい。導電性シート71は、筐体2の内側面や中枠部5の外側面に沿って多少湾曲していてもよく、また、多少よれていたり波打ったりしていたりしてもよい。この程度の平面からのずれは、全体の平均として表される平面と略平行の範囲に含まれる。
【0024】
さらに、図3(b)の中枠部5を上方(+Z側)から見た平面図に示すように、電子機器1では、中枠部5の外側面における1時方向(第2位置、中心軸Cから12時方向に延びる面(Y=0の面)に対して導電性シート71の中心位置と略面対称(平面視では線対称)な位置)、5時方向(第1位置、導電性シート71の中心位置と中心軸Cに対して線対称(平面視では点対称)な位置)及び7時方向(第3位置、第2位置と中心軸Cに対して線対称(平面視では点対称)な位置)をそれぞれ含むように、導電性シート72(第2の導体面)が位置している。導電性シート72は、それぞれ接地面などの他の導電性部材とは電気的に接続しておらず、フローティング状態にある。なお、導電性シート72は、互いに又は導電性シート71に対して、正確に平面視線対称又は点対称の位置になくてもよい。上記の通り、基準となる第1位置~第3位置が含まれる範囲で、他の構成との位置関係などに応じて適宜位置、向き、サイズや形状などが調整されてもよい。
【0025】
このような位置に選択的に導電性シート72があることで、当該導電性シート72は、電波の反射板として機能する。これにより、電波送受信に係る6、12時方向(Y軸方向)のビーム幅が拡大される。つまり、アンテナパターン311の位置と、導電性シート71、72の位置とを調整することで、所望の方向へのビーム幅を拡大できる。したがって、本実施形態の電子機器1では、電子機器1の12時方向での電波送受信がより安定して行われ得る。
【0026】
なお、5時方向の導電性シート72と7時方向の導電性シート72とは、一つながりであってもよい。この一つながりの導電性シートは、例えば、6時方向を中心に5時方向側及び7時方向側へそれぞれ上記の導電性シート72の約1枚分の大きさずつ合計2枚分の面積で広がってもよい。
【0027】
図4は、6、12時方向と筐体2の軸方向とを含む面内での利得分布を上記導電性シート71、72がある場合とない場合とで各々数値計算した結果を示す図である。3本の線は、ブルートゥースに係る送受信電波の帯域内である2.40GHz、2.44GHz、2.48GHzの場合の受信感度(放射利得)をそれぞれ示している。
【0028】
図4(a)に示す導電性シート71、72がない場合と比較して、図4(b)に示す導電性シート71、72がある場合では、概ね全方位で受信感度が向上している。ここでは、約2dBの受信感度(放射利得)の上昇が見られている。
【0029】
図5は、6、12時方向と筐体2の軸方向とを含む面内でのビームパターンを数値計算により求めた結果の例を示す図である。図5(a)は、導電性シート71を有するが導電性シート72を有しない場合の例であり、図5(b)は、導電性シート71、72を有する場合の例である。いずれも、2.40GHzの電波を放射する場合の計算結果である。
【0030】
導電性シート72を有しない場合に比較して、導電性シート72を有する場合には、特に12時方向(Y軸方向;表示に係る上向き)において、-3dBiのビーム幅が拡大(ここでは約5度)していることが分かる。ユーザが電子時計である電子機器1を腕に装着した状態で外部機器と通信を行う場合、外部機器がしばしば電子機器1の12時方向に位置する。特に、ブルートゥースを利用して外部機器を探索する場合(Find Me機能:ブルートゥースにより通信接続された相手の外部機器に所定の報知動作を行わせる機能)、ユーザは、電子機器1における通知に応じて12時方向を外部機器に向けながら当該外部機器へ接近移動することが多い。このような場合に12時方向のビーム幅が拡大されることで、外部機器をロストせずに当該外部機器との通信接続を維持し、容易に当該外部機器を発見することが可能となる。
【0031】
以上のように、本実施形態の電子機器1は、内部に空間を有し、絶縁性材料(樹脂)を含む筐体2と、筐体2の内側に位置し、少なくとも筐体2の中心軸Cに垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターン311を有するアンテナ素子31と、筐体2とアンテナ素子31との間に位置し、中心軸Cに沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、アンテナ素子31に対する接地面に電気的に接続する導電性シート71と、を備える。このように電子機器1は、モノポールアンテナとなるアンテナパターン311の電流パターンが投影される当該アンテナパターン近傍の接地面に電気的に接続し、中心軸Cに垂直に延びる面を設ける。このような導電性シート71により、電波送受信の感度、特に、電子機器1の基板3(更に、表示画面)に平行な面内での感度を適切に向上させることができる。
【0032】
また、導電性シート71は、アンテナパターン311の少なくとも一部がこの導電性シート71のシート面(導体面)を通り当該シート面に垂直な線上に位置するように配置される。このようなシート面とアンテナパターン311との位置関係により、電子機器1は、より効率的に送受信感度を向上させることができる。
【0033】
また、導電性シート71の少なくとも一部は、筐体2の中心軸C(第二軸方向)に沿って見た平面視で、中心軸Cに対し、12時方向(第三軸方向)から45度以内の範囲に位置していてもよい。電子機器1において電波送受信感度がアンテナ素子31の本来の感度に比してやや低下しやすい方向に導電性シート71が位置することで、導電性シート71は、適切に送受信感度を補いやすい。特に、アンテナパターン311の直近に導電性シート71による接地面が広がることで、導電性シート71は、適切にアンテナパターン311による電波送受信に好適な影響を及ぼすことができる。
【0034】
また、電子機器1は、表示面を有する表示部9を有する。アンテナパターン311の延在方向に係る第一軸方向は、表示面の表示に係る左方向又は右方向であり、第三軸方向は、平面視で表示面の表示に係る上向き方向である。このように表示部9の表示方向について平面視上向きにアンテナ感度を向上させることで、電子機器1の表示面の先に位置する外部機器との通信をより安定的に行うことができる。
【0035】
また、アンテナパターン311は、中心軸Cに対して第三軸方向から45度以内の範囲に位置している。アンテナパターン311自体が導電性シート71に近い側に位置することで、電子機器1は、より効果的に導電性シート71を電波の送受信時における接地面として利用することができる。
【0036】
また、電子機器1は、筐体2の中心軸Cに対し、平面視で導電性シート71(例えば11時方向)と点対称な第1位置(5時方向)、中心軸Cを含み第三軸方向に延びる面(平面視すると直線)に対して平面視で導電性シート71と線対称の第2位置(1時方向)、及び中心軸Cを含み第三軸方向に延びる面(平面視すると直線)に対して平面視で第1位置と線対称な第3位置(7時方向)のうち少なくとも1か所を含む範囲に、接地面と電気的に接続しない導電性シート72を備えていてもよい。このような導電性シート72が適切に電波の反射板として機能するので、電子機器1の表示面に平行な電波送受信方向(12時方向)のビーム幅を従来よりも拡張することができる。これにより、電子機器1は、ユーザが保持しながら移動するなどで多少姿勢が変動しても、電波の送受信強度が落ちにくくなる。したがって、電子機器1は、装着状態や保持状態での移動中の通信切断などの可能性を低減することができる。
【0037】
また、電子機器1は、筐体2の内側に位置する基板3と、基板3を収容する絶縁性の中枠部5と、を備え、導電性シート71は、中枠部5と筐体2との間に位置している。中心軸Cに垂直な向きに生じている隙間に導電性シート71が挟まれるように位置することで、電子機器1は、薄い導電性シート71を安定して挿入保持することができる。
請求項1記載の電子機器。
【0038】
また、筐体2は、繊維強化樹脂(ここでは、炭素繊維強化樹脂)を主成分としている。繊維強化樹脂(炭素繊維強化樹脂)は、母材の樹脂の影響により誘電損失が発生しやすく、電波を吸収するような振る舞いをすることで電波送受信強度が弱くなる場合がある。上記実施形態の構成、構造により、電子機器1は、概ね全方位での受信感度を向上でき、さらに、所望の方向のビーム幅を拡大できる。
【0039】
また、本実施形態の電子時計は、上記電子機器1であり、表示が可能な表示部9を備える。
この電子時計によれば、腕時計などの携帯型時計において、腕に装着した状態などでもより安定して通信を行うことが可能になる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、アンテナパターン311が完全な直線状であるものとして説明したが、多少曲がっていてもよい。これは、例えば、アンテナパターン311の角がL状に折れて部分的に異なる方向に延びているような形状であってもよいし、あるいは、アンテナパターン311の全体が若干(例えば30度以下程度など)湾曲して平均的にある方向に向いているものは、当該方向を第一軸として第一軸に略平行に延びているものに含まれてもよい。
【0041】
また、アンテナパターン311(第一軸方向)は、X軸方向(3時-9時方向)に沿って延びていなくてもよい。中心軸Cに沿った方向(Z軸方向、第二軸方向)に略垂直な面内で他の方向に延びていてもよい。また、この場合の略垂直は、多少(45度以下。概ね15度以下程度)のZ軸方向への傾きを許容し得る。これらは、例えば、他の部品や筐体2の形状などによる電波への影響を考慮して定められてもよい。
【0042】
また、第一軸方向の向きは、アンテナパターン311のどちら側の端部側に対応してもよい。すなわち、上記実施形態において9時方向(-Y方向;表示に係る左方向)に第一軸方向が定められてもよい。また、第一軸~第三軸は、左手系で定められても右手系で定められてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、筐体2が炭素繊維強化樹脂を主成分とするものであるとして説明したが、これに限られない。その他の繊維強化樹脂が主成分であってもよい。また、本開示の内容によれば、樹脂が主成分の筐体2であっても、電波の送受信感度(特に水平面(XY面)内)の向上が図られる。
【0044】
また、上記実施の形態では、アンテナパターン311の接続する接地面の導電性シート71までの経路は、上記実施形態で説明したものに限られない。例えば、基板3の上面から直接押さえ部材4に接続されていてもよい。あるいは、押さえ部材4を介さずに、基板3上のコンタクトパッド32が直接導電性接続部材6につながっていてもよい。
【0045】
また、上記実施の形態で示した中枠部5を有しない電子機器であってもよい。この場合、導電性シート71は、直接筐体2の内側面に固定されてもよい。あるいは、導電性シート71の形状や位置が大きく崩れたりずれたりするおそれがなければ、導電性シート71は、筐体2や中枠部5に固定されていなくてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、アンテナパターン311及び導電性シート71が11時側に位置するものとして説明したが、これに限られない。1時側に位置していてもよいし、あるいは、横向き使用を前提として2~4時方向の一部に位置していてもよい。この場合、導電性シート72の位置は、導電性シート71の位置に応じて変更される。
【0047】
また、上記実施の形態では、電子機器1の12時方向に通信対象の外部機器がある場合を想定して(上述のFind Me機能などを含む)、12時方向への電波性能を特に向上させる場合を説明したが、これに限られない。電波(通信)の利用用途、電子機器1及び外部機器の機種、並びにこれらの組み合わせなどに応じて、他の方向の電波性能を向上させるように、アンテナパターン311及び導電性シート71、72の位置が定められてもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、導電性シート71、72が筐体2の内側面に沿って中枠部5の外側面に位置するものとして説明したが、これに限られない。中枠部5の内側の任意の位置にあってもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、シート状の導電性シート71、72であるとして説明したが、これに限られない。アンテナパターン311と自身とを結ぶ方向に対して厚みを有する導電性部材や、三次元的な構造を有する構造物であってもよい。
【0050】
また、電子機器1は、3枚全ての導電性シート72を有しなくてもよい。これらのうち一部であってもよい。この場合、優先的に1時方向(第2位置)に導電性シート72を有するように選択されてもよい。あるいは、導電性シート72を一枚も有していなくてもよい。
【0051】
また、導電性シート71、72の位置関係、すなわち距離や導体面の方向などが適切に保たれれば、筐体2や中枠部5は、平面視で断面(筐体の内側面や中枠部5の外側面)が真円形状ではなくてもよい。例えば、筐体2の内側面及び中枠部5の外側面のうち少なくとも一方は、平面視で楕円形状や多角形の筒形形状であってもよい。平面視多角形の筒形形状の場合、中心軸Cは、例えば、当該多角形の対角線の交点や各頂点からの垂直二等分線の交点などに設定されてもよい。
【0052】
また、電子機器1である電子時計は、スマートウォッチなどの多機能を有するものを含む。また、電子機器1は、スマートフォンやタブレット端末など、時計としての機能よりも他の機能が優先されたものであってもよい。また、電子機器1は、表示部9を有さないものであってもよい。例えば、電子機器1は、入力操作を受け付けて信号を出力するリモートコントローラや、物理計測を行って計測結果などを信号出力するセンサ機器などであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0053】
1 電子機器
2 筐体
3 基板
31 アンテナ素子
311 アンテナパターン
312 アンテナチップ
32 コンタクトパッド
4 押さえ部材
41 接続部
42 バッテリ収容部
5 中枠部
6 導電性接続部材
71、72 導電性シート
9 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有し、絶縁性材料を含む筐体と、
前記筐体内に位置し、少なくとも前記筐体の中心軸に垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターンを有するアンテナ素子と、
前記筐体と前記アンテナ素子との間に位置し、前記筐体の中心軸に沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、前記アンテナ素子に対する接地面に電気的に接続する第1の導体と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記第1の導体は、前記アンテナパターンの少なくとも一部が前記面を通り当該面に垂直な線上に位置するように配置される
請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の導体は、前記線上に前記中心軸が位置するように配置され、
前記アンテナパターンは、前記第二軸方向に沿って見た平面視において、前記第1の導体と前記中心軸との間に位置する
請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
表示面を有する表示部を有し、
前記第一軸方向は、前記表示面の表示に係る左方向又は右方向であ
請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1の導体の少なくとも一部は、前記中心軸に垂直な面内での回転において、当該中心軸に対し、前記第二軸方向及び前記第一軸方向に直交し前記表示面の表示に係る上向き方向である第三軸方向から45度以内の範囲に位置する
請求項記載の電子機器。
【請求項6】
前記筐体の中心軸に対し、前記平面視で前記第1の導体と点対称な第1位置、前記中心軸を含み前記第三軸方向に延びる面に対して前記平面視で前記第1の導体と線対称の第2位置、及び前記中心軸を含み前記第三軸方向に延びる面に対して前記平面視で前記第1位置と線対称な第3位置のうち少なくとも1か所を含む範囲に、前記接地面と電気的に接続しない第2の導体面を備える
請求項記載の電子機器。
【請求項7】
前記第2の導体面は、前記第二軸方向に対して略平行な面であり、当該面に垂直な線上に前記中心軸が位置するように設けられている
請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
前記筐体内に位置する基板と、
前記基板を収容する絶縁性の収容体と、
を備え、
前記第1の導体は、前記収容体と前記筐体との間に位置している
請求項1記載の電子機器。
【請求項9】
前記筐体は、繊維強化樹脂を主成分とする
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
内部に空間を有し、絶縁性材料を含む筐体と、
前記筐体内に位置し、少なくとも前記筐体の中心軸に垂直な第一軸方向に略平行に延びている部分を含むアンテナパターンを有するアンテナ素子と、
前記筐体と前記アンテナ素子との間に位置し、前記筐体の中心軸に沿う第二軸方向に対して略平行な面を有し、前記アンテナ素子に対する接地面に電気的に接続する第1の導体と、
時刻表示が可能な表示部と、
を備える電子時計。