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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078781
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】プラント用の事故対応支援システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G05B23/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191337
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】神田 憲一
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EA10
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH02
(57)【要約】
【課題】対応が困難な事故への対応を支援できるプラント用の事故対応支援システムの提供。
【解決手段】プラントの状態を示すプラント情報と、プラントでの事故に関する事故事象情報、及び事故事象情報が示す事故への対応方法を示す対応方法情報が含まれる手順書情報と、に基づいて対応方法による事故への対応の可否を判定する対応可否判定手段3と、対応可否判定手段3が対応方法で事故に対応できないと判定した場合に、対応方法が非対応の例外事故に関する情報である複数の例外事象情報の中から、プラントの状態に対応する状態を示すものを抽出する例外事故情報抽出手段4と、例外事故情報抽出手段4が抽出した例外事象情報に関連付けられ、且つ例外事故への対応方法を示す例外対応情報を取得する例外対応取得手段5とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの状態を示すプラント情報と、前記プラントで発生することが想定される事故に関する情報である事故事象情報、及び前記事故事象情報が示す事故への対応方法を示す対応方法情報が含まれる手順書情報と、に基づいて前記対応方法情報が示す対応方法による事故への対応の可否を判定する対応可否判定手段と、
前記対応可否判定手段が前記対応方法情報の示す対応方法で事故に対応できないと判定した場合に、前記対応方法情報が示す対応方法が非対応の例外事故に関する情報である複数の例外事象情報の中から、前記プラント情報が示すプラントの状態に対応する状態を示すものを抽出する例外事故情報抽出手段と、
前記例外事故情報抽出手段が抽出した例外事象情報に関連付けられている例外対応情報であって、前記例外事故への対応方法を示す例外対応情報を取得する例外対応取得手段とを備える、
プラント用の事故対応支援システム。
【請求項2】
前記複数の例外事象情報には、プラントで事故が起きた時点でのプラントの状態を示す初期事象情報が含まれ、
前記例外事故情報抽出手段は、前記複数の初期事象情報の中から前記プラント情報が示すプラントの状態に対応する前記初期事象情報を抽出する初期事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記初期事象抽出手段が抽出した前記初期事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、
請求項1に記載のプラント用の事故対応支援システム。
【請求項3】
前記複数の例外事象情報には、プラントで起きている事故が進展した時点のプラントの状態を示す複数の進展事象情報が含まれ、
前記例外事故情報抽出手段は、前記複数の進展事象情報の中から前記プラント情報が示すプラントの状態と同一の状態を示す前記進展事象情報を抽出する進展事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記進展事象抽出手段が抽出した前記進展事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、
請求項1又は請求項2に記載のプラント用の事故対応支援システム。
【請求項4】
前記例外事故情報抽出手段は、
前記複数の例外事象情報の中から、前記プラント情報が示すプラントの状態と類似する状態を示す前記例外事象情報を抽出する類似事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記類似事象抽出手段が抽出した前記例外事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、
請求項3に記載のプラント用の事故対応支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等のプラントで起きた事故への対応を支援するためのプラント用の事故対応支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所等のプラントにおいて、事故への対応を支援する種々のシステムが提案されており、例えば、特許文献1には、プラントで起きた事故の情報に基づいてかかる事故に適した手順書を選出して提示するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2015/151267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラントで起こる事故の中には、手順書の指示に従った対応では事故を収束させることができないような対応が困難な事故があり、このような事故が起きた場合は、適切な対応を模索すること自体が困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、対応が困難な事故への対応を支援できるプラント用の事故対応支援システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプラント用の事故対応支援システムは、
プラントの状態を示すプラント情報と、前記プラントで発生することが想定される事故に関する情報である事故事象情報、及び前記事故事象情報が示す事故への対応方法を示す対応方法情報が含まれる手順書情報と、に基づいて前記対応方法情報が示す対応方法による事故への対応の可否を判定する対応可否判定手段と、
前記対応可否判定手段が前記対応方法情報の示す対応方法で事故に対応できないと判定した場合に、前記対応方法情報が示す対応方法が非対応の例外事故に関する情報である複数の例外事象情報の中から、前記プラント情報が示すプラントの状態に対応する状態を示すものを抽出する例外事故情報抽出手段と、
前記例外事故情報抽出手段が抽出した例外事象情報に関連付けられている例外対応情報であって、前記例外事故への対応方法を示す例外対応情報を取得する例外対応取得手段とを備える。
【0007】
上記構成のプラント用の事故対応支援システムによれば、いわゆる、手順書に相当する手順書情報で想定されていない事故が起きたとしても、プラントで起きている事象に対応する事故の情報(例外事象情報)とその対応方法(例外対応情報)を取得できるため、予め定められている対応方法での対応が困難な事故であっても適切な対応を促すことができる。
【0008】
本発明のプラント用の事故対応支援システムにおいて、
前記複数の例外事象情報には、プラントで事故が起きた時点でのプラントの状態を示す初期事象情報が含まれ、
前記例外事故情報抽出手段は、前記複数の初期事象情報の中から前記プラント情報が示すプラントの状態に対応する前記初期事象情報を抽出する初期事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記初期事象抽出手段が抽出した前記初期事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、ようにしてもよい。
【0009】
上記構成のプラント用の事故対応支援システムによれば、プラントで最初に起きた事故の情報と、その事故の対応方法を取得できるため、プラントで起きた事故に対して初期の段階から適切な対応を促すことができる。
【0010】
本発明のプラント用の事故対応支援システムにおいて、
前記複数の例外事象情報には、プラントで起きている事故が進展した時点のプラントの状態を示す複数の進展事象情報が含まれ、
前記例外事故情報抽出手段は、前記複数の進展事象情報の中から前記プラント情報が示すプラントの状態と同一の状態を示す前記進展事象情報を抽出する進展事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記進展事象抽出手段が抽出した前記進展事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、ようにしてもよい。
【0011】
上記構成のプラント用の事故対応支援システムによれば、プラントで起きた事故が進展していたとしても、進展した事故の情報と、その事故の対応方法を取得できるため、プラントで起きた事故が進展している場合であっても適切な対応を促すことができる。
【0012】
本発明のプラント用の事故対応支援システムは、
前記例外事故情報抽出手段は、
前記複数の例外事象情報の中から、前記プラント情報が示すプラントの状態と類似する状態を示す前記例外事象情報を抽出する類似事象抽出手段を有し、
前記例外対応取得手段は、前記類似事象抽出手段が抽出した前記例外事象情報に関連付けられている前記例外対応情報を取得する、ようにしてもよい。
【0013】
上記構成のプラント用の事故対応支援システムによれば、プラントで起きている現象を類推することにより、適した対応方法の模索を支援することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のプラント用の事故対応支援システムは、対応が困難な事故への対応を支援できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプラント用の事故対応支援システムのブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係るプラント用の事故対応支援システムの記憶手段の一例の説明図である。
図3図3は、同実施形態に係るプラント用の事故対応支援システムで用いられる手順書情報の説明図である。
図4図4は、同実施形態に係るプラント用の事故対応支援システムで用いられるシナリオ情報の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係るプラント用の事故対応支援システムのメインフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかるプラント用の事故対応支援システム(以下、支援システムと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本実施形態に係る支援システム1は、図1に示すように、プラントの状態を示すプラント情報を取得する情報取得手段2と、プラント情報と、プラントで発生する事故と該事故への対応方法とが示される手順書としての手順書情報D1(図3参照)とに基づいて、手順書の対応方法によってプラントで発生している事故への対応が可であるか否かを判定する対応可否判定手段3と、対応可否判定手段3が手順書の対応方法によってプラントで発生している事故に対応できないと判定した場合に、手順書が示す事故とは別の事故(以下、例外事故と称する)の情報を示す複数の例外事故情報D2(図4参照)のなかから、プラント情報が示すプラントの状態に対応する例外事故情報を抽出する例外事故情報抽出手段4と、例外事故情報抽出手段4が抽出した例外事象情報に関連付けられている例外対応情報であって、例外事故への対応方法を示す例外対応情報を取得する例外対応取得手段5と、確率論的リスク評価(いわゆる、PRA)によるリスクの評価を行うリスク評価手段6と、リスク評価手段6の評価結果を表示する表示手段7と、を備えている。
【0018】
なお、事象とは、事故が発生しているプラントで起きている現象のことであり、事象は、時間の経過に伴って変化する。
【0019】
情報取得手段2が取得するプラント情報とは、例えば、機器の動作状態を示す情報や、センサーで計測した情報等のことである。また、情報取得手段2は、プラントに設置されている機器やセンサーからプラント情報を取得するように構成されていてもよいし、ハードディスク等の記憶手段に記憶されているプラント情報を読み出すように構成されていてもよい。
【0020】
本実施形態に係る支援システム1では、複数の手順書情報D1が記憶手段8に記憶されている(図2参照)。
【0021】
手順書情報D1は、図3に示すように、複数の事故事象情報D10と、複数の対応方法情報D11とを有する。
【0022】
複数の事故事象情報D10のそれぞれには、事故事象情報D10によって示される事象を収束させるための対応方法(すなわち、事故事象情報D10によって示される事象が起きているプラントの状態を正常な状態に戻すための対応方法)が示されている対応方法情報D11が関連付けられている。
【0023】
事故事象情報D10には、事故が発生したプラントで起きている事象を識別するための事象識別情報D100と、事象識別情報D100に関連付けられている事故状態情報D101であって、関連付けられている事故事象情報D10により識別される事象が起きている場合のプラントの状態を示す事故状態情報D101と、が含まれている。
【0024】
事象識別情報D100には、例えば、事故が発生したプラントで起こる現象(例えば、原子炉スクラムや、タービントリップ等)を示す情報が設定されている。
【0025】
事故状態情報D101には、例えば、警告の種類や、表示灯の点灯状態の他、機器の動作状態や、計器が示す値等が設定されていればよい。
【0026】
なお、手順書情報D1では、複数の事故事象情報D10が事故の進展(事象の変化)の流れに沿った順番で並べられていてもよい。すなわち、複数の事故事象情報D10は、互いに関連付けられることによってプラントで発生した事故のシナリオを示す状態にされていてもよい。
【0027】
対応可否判定手段3は、図1に示すように、事故が発生しているプラントで起きている事象に対応可能な対応方法が手順書に含まれているか否かを確認する手順書確認手段30と、手順書確認手段30による判定結果を出力する判定結果出力手段31と、を有する。
【0028】
手順書確認手段30は、例えば、手順書情報の事故事象情報に含まれている事故状態情報とプラント情報とを比較し、事故状態情報とプラント情報との差異が所定の閾値よりも小さいか、大きいかを判定するように構成されている。
【0029】
そして、手順書確認手段30は、事故状態情報とプラント情報との差異が所定の閾値よりも小さいと判定した場合は、事故状態情報を含む事故事象情報に関連付けられている対応方法情報が示す対応方法によってプラントで起きている事象に対応できると判断し、事故状態情報とプラント情報との差異が所定の閾値よりも大きいと判定した場合は、事故状態情報を含む事故事象情報に関連付けられている対応方法情報が示す対応方法によってプラントで起きている事象に対応できないと判断するように構成されている。
【0030】
このようにして、手順書確認手段30は、プラントで起きている事象に対応できる対応方法を示す対応方法情報の有無を判断し、プラントで起きている事象に対応できる対応方法がある場合は、手順書による事故への対応が可能であると判定し、プラントで起きている事象に対応できる対応方法がない場合は、手順書による事故への対応が不可能であると判定するように構成されている。
【0031】
なお、上述のように、記憶手段8に複数の手順書情報が記憶されている場合、手順書確認手段30は、全ての手順書情報について事故への対応の可否を判定するように構成されていればよい。
【0032】
判定結果出力手段31は、手順書確認手段30が手順書情報による事故への対応が可能と判定した場合、この判定結果をリスク評価手段6に出力する。
【0033】
一方で、判定結果出力手段31は、手順書確認手段30が手順書情報による事故への対応が不可能であると判定した場合、この判定結果を例外事故情報抽出手段4に出力する。
【0034】
例外事故情報抽出手段4では、手順書情報の対応方法情報では対応できない事故(以下、例外事故と称する)が起きたプラントの状態の進展の流れ(いわゆる、シナリオ)を示す例外事故情報が用いられる。
【0035】
例外事故情報D2には、図4に示すように、プラントで起きている事象(現象)を示す複数の例外事象情報D20が設定されている。また、複数の例外事象情報D20には、例外事故の進展の流れに沿った順番で互いに関連付けられているものが含まれていてもよい。
【0036】
例外事象情報D20には、プラントで起きている事象(現象)を示す例外事象識別情報D200と、例外事象識別情報D200に関連付けられている例外状態情報D201であって、関連付けられている例外事象識別情報D200が示す事故が起きた際のプラントの状態を示す例外状態情報D201と、が含まれている。
【0037】
例外事象識別情報D200も、例えば、プラントで起きると想定した現象(例えば、原子炉スクラムや、タービントリップ等)を示す情報が設定されており、例外状態情報D201もまた、例えば、警告の種類や、表示灯の点灯状態の他、機器の動作状態や、計器が示す値等が設定されている。
【0038】
なお、本実施形態では、複数の例外事象情報D20のうち、例外事故において最初に起こる現象を示す例外事象識別情報D200を含むものを初期事象情報、例外事故において最初に起こる現象に続く現象(最初に起こる現象から進展した現象)を示す例外事象識別情報D200を含むものを進展事象情報と称する。
【0039】
例外事故情報抽出手段4は、図1に示すように、プラント情報が示すプラントの状態と一致する例外状態情報を含む初期事象情報を抽出する初期事象抽出手段40と、プラント情報が示すプラントの状態と一致する例外状態情報を含む進展事象情報を抽出する進展事象抽出手段41と、プラント情報が示すプラントの状態と類似する例外状態情報を含む例外事象情報(初期事象情報、若しくは進展事故事象)を抽出する類似事象抽出手段42と、を有する。
【0040】
初期事象抽出手段40で抽出した初期事象情報、進展事象抽出手段41で抽出した進展事象情報、類似事象抽出手段42で抽出した初期事象情報及び進展事象情報は、リスク評価手段6に出力される。
【0041】
類似事象抽出手段42は、例えば、初期事象情報の例外状態情報や、進展事象抽出手段41の例外状態情報を変化させてプラント情報が示す状態と合致するか否かを判定し、合致すると判定した場合に初期事象情報や、進展事象情報をプラントで起きている現象に該当するものの候補として抽出するように構成されていればよい。
【0042】
リスク評価手段6は、プラントで起きている現象を示す情報と、プラントの状態を示す情報とが入力され、これらの情報に基づいて、いわゆる、イベントツリーを出力するように構成されている。
【0043】
そして、表示手段7は、リスク評価手段6が出力したイベントツリーを視覚的に表示するように構成されている。なお、表示手段7は、イベントツリーを表示する際に重要度の高い項目を他の項目とは異なる表示態様にするように構成されていてもよい。
【0044】
本実施形態に係る支援システムの構成は、以上の通りである。続いて、支援システムの動作を説明する。
【0045】
支援システムは、図5に示すように、情報取得手段2がプラント情報を取得し(S1)、対応可否判定手段3にプラント情報を送信する。そして、対応可否判定手段3がプラント情報と手順書情報D1とに基づいて対応方法情報D11が示す対応方法による事故への対応の可否を判定する(S2)。
【0046】
本実施形態では、手順書確認手段30が手順書情報D1による事故への対応が可能と判定した場合、プラント情報と手順書情報D1とに基づいて対応方法情報D11が示す対応方法による事故への対応が可能であるとみなして(S3でYes)、判定結果出力手段31がこの判定結果をリスク評価手段6に出力する。
【0047】
この場合、判定結果出力手段31の判定結果に基づいてリスク評価手段6がリスク評価を行い(S4)、表示手段7がリスク評価手段6のリスク評価結果を表示し(S5)、支援システムの動作を続行する場合(S6でYes)は、再び情報取得手段2がプラント情報を取得する(S1)。
【0048】
一方で、手順書確認手段30が手順書情報D1による事故への対応が不可と判定した場合、プラント情報と手順書情報D1とに基づいて対応方法情報D11が示す対応方法による事故への対応が不可能であるとみなして(S3でNo)、判定結果出力手段31がこの判定結果を例外事故情報抽出手段4に出力する。
【0049】
この場合、初期事象抽出手段40は、プラント情報が示すプラントの状態と一致する例外状態情報を含む初期事象情報を抽出する処理を実行する(S7)。
【0050】
初期事象抽出手段40により、初期事象情報が抽出された場合(S8でYes)、初期事象抽出手段40によって抽出された初期事象情報に基づいて、リスク評価手段6によるリスク評価が行われ(S4)、表示手段7がリスク評価手段6のリスク評価結果を表示する(S5)。そして、支援システムの動作を続行する場合(S6でYes)は、再び情報取得手段2がプラント情報を取得する(S1)。
【0051】
初期事象抽出手段40が初期事象情報を抽出できなかった場合(S8でNo)は、進展事象抽出手段41により、プラント情報が示すプラントの状態と一致する例外状態情報を含む進展事象情報を抽出する処理を実行する(S9)。
【0052】
進展事象抽出手段41により、進展事象情報が抽出された場合(S10でYes)、進展事象抽出手段41によって抽出された進展事象情報に基づいて、リスク評価手段6によるリスク評価が行われ(S4)、表示手段7がリスク評価手段6のリスク評価結果を表示する(S5)。そして、支援システムの動作を続行する場合(S6でYes)は、再び情報取得手段2がプラント情報を取得する(S1)。
【0053】
進展事象抽出手段41が進展事象情報を抽出できなかった場合(S10でNo)は、類似事象抽出手段42により、プラント情報が示すプラントの状態と類似する例外状態情報を含む例外事象情報(初期事象情報、若しくは進展事象情報)を実行する(S11)。
【0054】
類似事象抽出手段42により、類似事象情報が抽出された場合(S12でYes)、類似事象抽出手段42によって抽出された類似事象情報に基づいて、リスク評価手段6によるリスク評価が行われ(S4)、表示手段7がリスク評価手段6のリスク評価結果を表示する(S5)。そして、支援システムの動作を続行する場合(S6でYes)は、再び情報取得手段2がプラント情報を取得する(S1)。
【0055】
類似事象抽出手段42により、類似事象情報が抽出されず(S12でNo)、支援システムの動作を続行する場合(S6でYes)は、再び情報取得手段2がプラント情報を取得する(S1)。
【0056】
以上のように、プラントの状態に合致する事故状態情報D101を含む手順書情報D1が無い場合は、プラントで起きている現象を特定することが困難になるため、事故への対応方法が模索し難くなるが、本実施形態に係る支援システム1では、手順書情報D1で想定されていない事故が起きたとしても、プラントで起きている事象に対応する事故の情報(例外事象情報D2)とその対応方法(例外対応情報)を取得できるため、予め定められている対応方法での対応が困難な事故であっても適切な対応を促すことができる。
【0057】
従って、支援システム1は、対応が困難な事故への対応を支援できるという優れた効果を奏し得る。
【0058】
また、本実施形態の支援システム1は、例外事故情報抽出手段4の初期事象抽出手段40でプラントで最初に起きた現象の情報(初期事象情報)を取得し、その現象への対応方法を例外対応取得手段5で取得でき、
【0059】
また、例外事故情報抽出手段4の初期事象抽出手段40によりプラントで最初に起きた現象の情報(初期事象情報)を取得し、その現象への対応方法を例外対応取得手段5で取得でき、例外事故情報抽出手段4の進展事象抽出手段41によりプラントで最初に起きた現象から進展した現象の情報(進展事象情報)を取得し、その現象への対応方法を例外対応取得手段5で取得できるため、プラントで起きた事故に対して初期の段階であっても、事故が進展している場合であっても適切な対応を促すことができる。
【0060】
さらに、例外事故情報抽出手段4の類似事象抽出手段42により、プラントの状態に類似する現象の情報を初期事象情報や、進展事象情報の中から抽出でき、その現象への対応方法を例外対応取得手段5で取得することもできるため、より柔軟にプラントで起きている事故に適した対応方法の模索を支援することができる。
【0061】
また、本実施形態の支援システムでは、情報取得手段2によるプラント情報を取得する処理からリスク評価手段6によるリスク評価を行う処理までの一連の流れの処理を連続的に繰り返し実行しつつ、そのリスク評価手段6によるリスク評価の結果を表示手段7に表示することによって、プラントのリスク状態をリアルタイムにモニタリングすることもできる。また、表示手段7にリスク評価の結果として表示されるイベントツリー等の構造を確認することによって、かかる構造に示されているリスクが起こる可能性の大きさを考慮したうえでプラントの現状及び必要な対応を適切に把握することが可能となる。
【0062】
また、リスク評価の中で重要な項目については他の項目とは異なる態様で表示されるため、事故の対応に重要な情報を手早く把握することも可能になる。これにより、的確な対応を取りやすくなり、安全性をより向上させることができる。
【0063】
なお、本発明に係るプラント用の事故対応支援システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、例外事故情報抽出手段4は、初期事象抽出手段40と進展事象抽出手段41と類似事象抽出手段42を必ず実行するように構成されていてもよいし、初期事象抽出手段40で初期事象情報を抽出できなかった場合に進展事象抽出手段41を実行し、さらに、進展事象抽出手段41で進展事象情報を抽出できなかった場合に、類似事象抽出手段42を実行するようにしてもよい。
【0065】
また、例外事故情報抽出手段4は、複数の初期事象抽出手段40と進展事象抽出手段41を抽出した場合は、最もプラントの状態に適したものをリスク評価手段6に出力してもよいし抽出した全ての初期事象抽出手段40と進展事象抽出手段41をリスク評価手段6に出力してもよい。
【0066】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、支援システム1は、対応可否判定手段3による手順書情報による事故への対応の可否の判定結果に基づいて例外事故情報抽出手段4による処理を実行するか否かが決定されていたが、この構成に限定されない。支援システム1は、例えば、対応可否判定手段3が手順書情報による事故への対応の可否の判定と、事故進展予測の可否の判定とを行い、これらの判定結果に基づいて例外事故情報抽出手段4による処理を実行するか否かが決定されるように構成されていてもよい。
するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…支援システム、2…情報取得手段、3…対応可否判定手段、4…例外事故情報抽出手段、5…例外対応取得手段、6…リスク評価手段、7…表示手段、8…記憶手段、30…手順書確認手段、31…判定結果出力手段、40…初期事象抽出手段、41…進展事象抽出手段、42…類似事象抽出手段、D1…手順書情報、D10…事故事象情報、D100…事象識別情報、D101…事故状態情報、D11…対応方法情報、D2…例外事故情報、D20…例外事象情報、D200…例外事象識別情報、D201…例外状態情報
図1
図2
図3
図4
図5