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特開2024-78790ビームキャッチャー及び電子線照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078790
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ビームキャッチャー及び電子線照射装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/04 20060101AFI20240604BHJP
   B29C 35/08 20060101ALI20240604BHJP
   G21K 1/00 20060101ALI20240604BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G21K5/04 E
B29C35/08
G21K1/00 E
G21K5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191348
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 寿男
【テーマコード(参考)】
4F203
【Fターム(参考)】
4F203AH56
4F203AK03
4F203AR07
4F203DA12
4F203DB01
4F203DC07
4F203DD01
4F203DM02
4F203DM12
4F203DM23
(57)【要約】
【課題】本体部と側壁部とに温度の偏りが生じにくいビームキャッチャー及び電子線照射装置を提供する。
【解決手段】ビームキャッチャー6は、電子線を照射する照射部に対向するように配置される本体部61と、本体部61の一端から立ち上がる第1の側壁部62と、本体部61の他端から立ち上がる第2の側壁部63と、本体部61、第1の側壁部62及び第2の側壁部63に設けられ、冷却流体の経路である流体経路7と、を備える。流体経路7は、第1の側壁部62から、本体部61と第2の側壁部63との順に流れる往路部73と、往路部73につながり、第2の側壁部63から、本体部61と第1の側壁部62との順に流れる復路部74と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を照射する照射部に対向するように配置される本体部と、
前記本体部の一端から立ち上がる第1の側壁部と、
前記本体部の他端から立ち上がる第2の側壁部と、
前記本体部、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部に設けられ、冷却流体の経路である流体経路と、を備え、
前記流体経路は、
前記第1の側壁部から、前記本体部と前記第2の側壁部との順に流れる往路部と、
前記往路部につながり、前記第2の側壁部から、前記本体部と前記第1の側壁部との順に流れる復路部と、
を有する、ビームキャッチャー。
【請求項2】
前記照射部に電子線を照射される被照射物が搬送される方向を第1方向とし、
前記本体部は、平面視において前記第1方向に交差する方向に延びて前記流体経路の一部を形成する複数の丸パイプを有しており、
前記複数の丸パイプは、平面視において、前記第1方向に平行な方向に並ぶように配置されている、
請求項1に記載のビームキャッチャー。
【請求項3】
前記複数の丸パイプのうちの隣り合う丸パイプは、中心同士が電子線の照射方向にずれ、かつ平面視において一部が重なり合っている、
請求項2に記載のビームキャッチャー。
【請求項4】
前記本体部は、前記丸パイプの中心軸方向に沿って見て、中央部ほど前記照射部側に位置するように、複数の前記丸パイプが山型に並んでいる、
請求項3に記載のビームキャッチャー。
【請求項5】
被照射物に対して電子線を照射する照射部と、
前記照射部との間に前記被照射物が位置するように配置されるビームキャッチャーと、
を備えた電子線照射装置であって、
前記ビームキャッチャーは、
前記照射部に対向するように配置される本体部と、
前記本体部の一端から立ち上がる第1の側壁部と、
前記本体部の他端から立ち上がる第2の側壁部と、
前記本体部、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部に設けられ、冷却流体の経路である流体経路と、を備え、
前記流体経路は、
前記第1の側壁部から、前記本体部と前記第2の側壁部との順に流れる往路部と、
前記往路部につながり、前記第2の側壁部から、前記本体部と前記第1の側壁部との順に流れる復路部と、
を有する、電子線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビームキャッチャー及び電子線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のビームキャッチャーが開示されている。特許文献1に記載のビームキャッチャーは、電子線が照射される開口に対向するようにビームキャッチャー(本体部)が配置され、ビームキャッチャーの両端部に遮蔽側板(側壁部)が取り付けられている。
【0003】
本体部の背面には水冷ダクトが設けられている。側壁部の背面には、本体部の水冷ダクトとは別系統の水冷ダクトが設けられている。本体部と側壁部とは、個別に冷却するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5-27700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本体部と側壁部とを個別に冷却すると、本体部と側壁部とに温度の偏りが生じやすい。被照射物の近傍で、場所によって温度差があると、電子線の照射効果が安定しないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、本体部と側壁部とに温度の偏りが生じにくいビームキャッチャー及び電子線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様のビームキャッチャーは、電子線を照射する照射部に対向するように配置される本体部と、前記本体部の一端から立ち上がる第1の側壁部と、前記本体部の他端から立ち上がる第2の側壁部と、前記本体部、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部に設けられ、冷却流体の経路である流体経路と、を備える。前記流体経路は、前記第1の側壁部から、前記本体部と前記第2の側壁部との順に流れる往路部と、前記往路部につながり、前記第2の側壁部から、前記本体部と前記第1の側壁部との順に流れる復路部と、を有する。
【0008】
本発明に係る一態様の電子線照射装置は、被照射物に対して電子線を照射する照射部と、前記照射部との間に前記被照射物が位置するように配置されるビームキャッチャーと、を備えた電子線照射装置である。前記ビームキャッチャーは、前記照射部に対向するように配置される本体部と、前記本体部の一端から立ち上がる第1の側壁部と、前記本体部の他端から立ち上がる第2の側壁部と、前記本体部、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部に設けられ、冷却流体の経路である流体経路と、を備える。前記流体経路は、前記第1の側壁部から、前記本体部と前記第2の側壁部との順に流れる往路部と、前記往路部につながり、前記第2の側壁部から、前記本体部と前記第1の側壁部との順に流れる復路部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る上記態様のキャッチャー及び電子線照射装置は、本体部と側壁部とに温度の偏りが生じにくい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る電子線照射装置の模式断面図である。
図2図2は、実施形態に係るビームキャッチャーの斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るビームキャッチャーの平面図である。
図4図4(A)は、図3のA-A線断面図である。図4(B)は、図3のB-B線断面図である。
図5図5は、実施形態に係るビームキャッチャーにおける第1の側壁部と丸パイプとの接続構造の模式断面図である。
図6図6は、実施形態に係るビームキャッチャーを他の使用態様に使用した場合を示す模式断面図である。
図7図7は、変形例に係るビームキャッチャーの斜視図である。
図8図8(A)は、図7のC-C線断面図である。図8(B)は、図8(A)のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本実施形態に係る電子線照射装置100は、電子線を発生し、被照射物9に対して電子線を照射する装置である。電子線照射装置100は、図1に示すように、照射装置本体1と、ビームキャッチャー6と、を備える。照射装置本体1は、被照射物9に対して電子線を照射する照射部3を有する。ビームキャッチャー6は、照射部3に対向するように配置され、照射部3から照射された電子線を捕捉する。ビームキャッチャー6が捕捉する電子線の一部は、照射部3から直接照射された電子線であり、その他の一部は、被照射物9を透過した電子線である。
【0012】
本実施形態に係る電子線照射装置100は、非走査型(エリア型)の電子線照射装置であるが、本発明では、走査型の電子線照射装置であってもよい。
【0013】
ここで、被照射物9は、電子線が照射される対象物を意味する。被照射物9としては、特に制限はなく、例えば、食品、食品包装容器、飲料容器、医療機器、検査器具、半導体、タイヤ、電線被覆、発泡シート、熱収縮チューブ、フィルム、ハイドロゲル、炭化ケイ素繊維、繊維強化プラスチック、電池用セパレータ、吸着材、機能性衣類、屋外パネル、床材、化粧板、転写フィルム等が挙げられる。被照射物9に対して電子線を照射することによって、被照射物9に、例えば、架橋、改質、硬化、グラフト重合、殺菌、滅菌等の処理を施すことができる。
【0014】
本実施形態では、被照射物9は、図示しない搬送装置によって搬送される。図1に示すように、被照射物9は、搬送面8上において一方向に沿って搬送される。被照射物9の搬送方向は、照射部3から放射される電子線の放射方向に交差する。
【0015】
本実施形態では、図1に示すように、照射部3から放射される電子線の照射方向に沿う方向を「Z方向」として定義し、Z方向に直交する平面上において互いに直交する2方向を「X方向」及び「Y方向」として定義する。本実施形態では、X方向及びY方向が含まれる平面が搬送面8である。X方向は、平面視において、搬送方向(「第1方向」という場合がある)に平行である。ただし、X方向は、搬送方向に対して、平面視において平行であればよく、側面視において、X方向と搬送方向とは必ずしも平行である必要はない。本実施形態では、第1方向とX方向とは平行である。また、Y方向を「第2方向」という場合がある。「平面視」は、対象物をZ方向の一方側から見ることを意味する。
【0016】
搬送面8は、水平面に平行であってもよいし、水平面に対して傾斜していてもよいし、鉛直面であってもよい。また、搬送面8は、ベルトコンベア等のように実体のある平面であってもよいし、ローラコンベヤ又はホイールコンベア等のような仮想平面であってもよい。
【0017】
(照射装置本体1)
照射装置本体1は、電子線照射装置100の主体を構成する部分である。照射装置本体1は、図1に示すように、真空容器2と、照射部3と、電子線発生部4と、電源装置5と、を備える。
【0018】
(真空容器2)
真空容器2は、中空の容器であり、内部に電子線発生部4を収容する。真空容器2の内部の空間は、図示しない真空ポンプによって減圧可能に構成されている。これによって、真空容器2の内部を、真空にすることができる。なお、本明細書でいう「真空」とは、厳密な意味の真空を意味するのではなく、大気圧よりも圧力の低い空間を意味する。
【0019】
真空容器2は、Y方向に中心軸を有する略円筒状に形成されており、中心軸方向の両端は閉じている。真空容器2の一部には、角筒状の開口部21が形成されている。開口部21の被照射物9に対向する端部は、開口面を有する。開口部21の端部には、開口面を閉じるようにして、照射部3が設けられている。真空容器2は、照射部3によって、内部が気密状態に保たれる。
【0020】
真空容器2と照射部3とは互いに電位差がなく、同じ電位である。本実施形態では、真空容器2と照射部3とは、接地されている。
【0021】
(照射部3)
照射部3は、電子線発生部4によって生成された電子線を、真空容器2の内から外に向かって透過し、これによって、被照射物9に対して電子線を照射する。照射部3は、窓箔31と、窓箔31の外周部を支持する枠部32と、を備える。
【0022】
窓箔31は、電子線が通過する部分である。窓箔31は、金属箔で構成されている。金属箔としては、例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、ベリリウム等が挙げられる。窓箔31は、耐熱性を有し、かつ電子線が透過し得る比重をもつ材料で構成されている。
【0023】
枠部32は、窓箔31によって開口部21の開口面を閉じた状態で、開口部21の先端面に対して固定される。これによって、窓箔31は、搬送面8に平行に配置され、電子線に交差する。また、枠部32が開口部21に固定されることで、照射部3は真空容器2を密閉することができる。
【0024】
(電子線発生部4)
電子線発生部4は、電源装置5から電圧が印加されることで、電子線を生成する。電子線発生部4は、真空容器2内に収容されている。電子線発生部4は、図1に示すように、引出し電極41と、複数のフィラメント42と、を備える。引出し電極41は、複数のフィラメント42に対向するように配置された電極(グリッド)である。引出し電極41は、複数のフィラメント42から放出された電子を電子線として引き出すことができる。
【0025】
(電源装置5)
電源装置5は、図1に示すように、電子線発生部4に対して電圧を印加する。電源装置5は、フィラメント変圧器51と、引出し電源52と、加速電源53と、制御器54と、を備える。
【0026】
フィラメント変圧器51は、電源から供給された電圧を、フィラメント42を加熱可能な電圧に変える装置である。フィラメント変圧器51は、フィラメント支持部43に電気的に接続されている。フィラメント変圧器51によって変圧された電力は、複数のフィラメント42に供給される。フィラメント42に供給される電力は、直流電力であってもよいし、交流電力であってもよい。
【0027】
引出し電極41とフィラメント42との間には、フィラメント変圧器51及び制御器54を介して、引出し電源52から直流の引出し電圧が印加される。制御器54は、電子線の量を制御する。引出し電源52によれば、電子線を効率よく引き出すことができる。
【0028】
照射部3及び真空容器2と、引出し電極41との間には、加速電源53から直流の加速電圧が印加される。加速電圧によれば、引出し電極41から引き出された電子線を加速させることができる。
【0029】
(ビームキャッチャー6)
ビームキャッチャー6は、照射部3から照射された電子線を捕捉する。ビームキャッチャー6は、図2に示すように、本体部61と、第1の側壁部62と、第2の側壁部63と、流体経路7(図3)と、を備える。
【0030】
(本体部61)
本体部61は、ビームキャッチャー6の主体を構成する部分である。本体部61は、照射部3に対向するように配置される。したがって、被照射物9は、図1に示すように、照射部3と本体部61との間に位置する。本体部61は、図3に示すように、平面視において、Y方向に長手方向を有する長方形状に形成されている。本体部61は、複数の丸パイプ611で構成されている。各丸パイプ611は、中空であり、流体経路7の一部を構成する。丸パイプ611の中心軸はY方向に平行である。本体部61が複数の丸パイプ611で構成されることで、内部を流れる冷却流体に対する耐圧性を向上することができ、漏液等の発生を軽減することができる。
【0031】
丸パイプ611の呼び径としては、特に制限はないが、例えば、25A以上65A以下が好ましく、より好ましくは32A以上50A以下である。このようにすることで、冷却流体の流速を損なわないようにしながら、強度を保つことができる。
【0032】
丸パイプ611の肉厚としては、例えば、スケジュール10S以上が好ましく、より好ましくは20S以上である。このようにすることで、冷却流体の圧力(例えば、1.0MPaG以上)に耐えることができる。また、各丸パイプ611の材質としては、電子線照射室の環境に対応でき、かつ熱伝導率が高い材料が好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウム、ステンレススチール等が挙げられる。
【0033】
複数の丸パイプ611は、平面視において、X方向に並ぶように配置されている。隣り合う丸パイプ611の間は、平面視において、隙間が生じないように配置されることが好ましい。本実施形態に係る隣り合う丸パイプ611は、図4(A)に示すように、中心同士がZ方向にずれており、かつ平面視において一部が重なり合っている。すなわち、隣り合う丸パイプ611の外面の共通内接線は、Z方向に対して傾斜する。このように構成することで、隣り合う丸パイプ611の間は、平面視において、隙間が生じないように構成されている。なお、隣り合う丸パイプ611同士は、長手方向において部分的に溶接されることが好ましい。
【0034】
平面視において、隣り合う丸パイプ611が重なり合う領域には、丸パイプ611の肉厚部分だけでなく、流路の一部を含むことが好ましい。このようにすることで、本体部61を透過する電子線を低減することができる。
【0035】
本体部61は、図4(A)に示すように、Y方向に沿って見て、X方向における中央部に近付くほどZ方向において照射部3側に位置するように、複数の丸パイプ611が山型に並んでいる。本発明においては、複数の丸パイプ611は、Y方向に沿って見て、搬送面8に対して傾斜した一方向に沿って並べられてもよいが、本実施形態のように山型に並べることで、本体部61がZ方向に大きくなるのを抑制することができる。
【0036】
(第1の側壁部62)
第1の側壁部62は、図2に示すように、本体部61のY方向の一端から立ち上がる。第1の側壁部62は、被照射物9に対して、Y方向に対向する。被照射物9は、第1の側壁部62と第2の側壁部63との間に位置する。第1の側壁部62は、図3に示すように、内壁板621と、外壁板622と、複数の周壁板623と、複数の仕切り板624(図4(A))と、を備える。第1の側壁部62は、扁平な箱状に形成されている。
【0037】
内壁板621は、Y方向において被照射物9に対向する面を有する板である。内壁板621は、Y方向に直交している。内壁板621の板厚は、外壁板622の板厚よりも厚いことが好ましい。外壁板622は、内壁板621に対してY方向の外側に間隔をおいて配置されている。外壁板622は、内壁板621に対して平行に配置されている。周壁板623は、内壁板621と外壁板622との外周を囲む板である。内壁板621、外壁板622及び複数の周壁板623で形成された箱体を、「側壁本体」という場合がある。
【0038】
仕切り板624は、側壁本体の内部を仕切る。仕切り板624は、図4に示すように、X方向に直交しかつ内壁板621と外壁板622とをつなぐようにして配置される。複数の仕切り板624は、Z方向の全長にわたる第1板625と、Z方向の全長のうちの一部(ここではZ方向の照射部3側の端部)に開口面を有する第2板626と、を備える。第1板625と第2板626とは、X方向に交互に配置されている。
【0039】
第2板626の開口面は、Z方向において、丸パイプ611よりも照射部3側に位置していればよいが、照射部3側の端部に近いほうが好ましい。本実施形態では、第2板626の開口面は、Z方向の照射部3側の端部に形成されている。
【0040】
丸パイプ611と内壁板621とは、図5に示すように接続される。内壁板621には丸パイプ611を通すための貫通穴が形成され、当該貫通穴に丸パイプ611の端部が通される。丸パイプ611の端部に対して、貫通穴に通した状態で拡管加工を行い、丸パイプ611の先端部612を拡げる。この後、丸パイプ611の先端部612と内壁板621との間において全周溶接W1を行う。これによって、丸パイプ611と内壁板621とが接続される。ただし、丸パイプ611と内壁板621との接続方法としては、本実施形態のものに限定されない。
【0041】
(第2の側壁部63)
第2の側壁部63は、図2に示すように、本体部61のY方向の端部のうち第1の側壁部62とは反対側の端部(すなわち、他端)から立ち上がる。第2の側壁部63は、被照射物9に対して、Y方向に対向する。第2の側壁部63は、図3に示すように、内壁板631と、外壁板632と、複数の周壁板633と、複数の仕切り板634(図4(B))と、を備える。第2の側壁部63は、扁平な箱状に形成されている。
【0042】
内壁板631は、Y方向において被照射物9に対向する面を有する板である。内壁板631は、Y方向に直交している。外壁板632は、内壁板631に対してY方向の外側に間隔をおいて配置されている。外壁板632は、内壁板631に対して平行に配置されている。周壁板633は、内壁板631と外壁板632との外周を囲む板である。内壁板631、外壁板632及び複数の周壁板633で形成された箱体を、「側壁本体」という場合がある。
【0043】
仕切り板634は、図4(B)に示すように、側壁本体の内部を仕切る。仕切り板634は、X方向に直交しかつ内壁板631と外壁板632とをつなぐようにして配置される。複数の仕切り板634は、Z方向の全長にわたる第1板635と、Z方向の全長のうちの一部(ここではZ方向の照射部3側の端部)に開口面を有する第2板636と、を備える。第1板635と第2板636とは、X方向に交互に配置されている。
【0044】
第2板636の開口面は、Z方向において、丸パイプ611よりも上側に位置すればよいが、照射部3側の端部に近いほうが好ましい。本実施形態では、第2板636の開口面は、Z方向の照射部3側の端部に形成されている。丸パイプ611と内壁板631とは、第1の側壁部62で説明した方法と同じ方法で接続される。ここでは、重複する説明は省略する。
【0045】
(流体経路7)
流体経路7は、冷却流体の経路である。流体経路7は、本体部61、第1の側壁部62及び第2の側壁部63の内部を通る。冷却流体は、流体経路7を通ることで、移動しながら本体部61、第1の側壁部62及び第2の側壁部63と熱交換を行い、これらを冷却する。第1の側壁部62及び第2の側壁部63の流体経路7は、側壁本体と仕切り板624,634とで囲まれた流路で構成されている。本体部61の流体経路7は、丸パイプ611の内部の流路で構成されている。流体経路7は、流入口71と流出口72とをつなぐ1つの経路である。
【0046】
ここで、冷却流体は、ビームキャッチャー6を冷却可能な冷媒であれば、液体であってもよいし、気体であってもよい。冷却流体が液体の場合、特に制限はないが、例えば、水道水、純水、油、ブライン、その他の液冷媒等が挙げられる。
【0047】
流入口71は、図3に示すように、第1の側壁部62の周壁板623のうちの第1の方向の先端側(搬送方向の下流側)の面に形成されている。本実施形態では、流入口71は、第1の側壁部62の周壁板623から突き出したパイプの開口である。すなわち、流入口71は周壁板623を貫通する。
【0048】
流出口72は、第1の側壁部62の周壁板623のうちの第1の方向の基端側(搬送方向の上流側)の面に形成されている。本実施形態では、流出口72も、第1の側壁部62の周壁板623から突き出したパイプの開口であり、流入口71は周壁板623を貫通している。ただし、流入口71及び/又は流出口72は、第2の側壁部63に設けられてもよい。また、流入口71と流出口72とは、一方が第1の側壁部62に設けられ、他方が第2の側壁部63に設けられてもよい。
【0049】
流体経路7は、複数の往復経路を備える。1つの往復経路は、図3に示すように、1つの往路部73と1つの復路部74とで構成されている。隣り合う往復経路同士は、一方の往復経路の復路部74と他方の往復経路の往路部73とが、第1の側壁部62において接続されている。本実施形態では、複数の往復経路として、6つの往復経路が平面視でX方向に並んでいる。
【0050】
往路部73は、冷却流体が、第1の側壁部62から、本体部61と第2の側壁部63との順に流れる流体経路7の一部である。復路部74は、冷却流体が、第2の側壁部63から、本体部61と第1の側壁部62との順に流れる流体経路7の一部である。復路部74は、往路部73につながっている。往路部73は、平面視において、復路部74よりも第1方向の先端側(搬送方向の下流側)に位置している。
【0051】
ここで、図4(A)に示すように、第1の側壁部62において、第1板625は、流体経路7において、往路部73をなす丸パイプ611(「P」と表記)と、これに隣接する復路部74をなす丸パイプ611(「P」と表記)との間に配置される。また、第2板626は、復路部74をなす丸パイプ611(「P」と表記)と、これに隣接する別の往復路における往路部73をなす丸パイプ611(「P」と表記)との間に配置される。
【0052】
また、図4(B)に示すように、第2の側壁部63において、第2板636は、流体経路7において、往路部73をなす丸パイプ611(「P」と表記)と、これに隣接する復路部74をなす丸パイプ611(「P」と表記)との間に配置される。また、第1板635は、復路部74をなす丸パイプ611(「P」と表記)と、これに隣接する別の往復路における往路部73をなす丸パイプ611(「P」と表記)との間に配置される。
【0053】
流入口71から第1の側壁部62内に流入した冷却流体は、図4(A)に示すように、往路部73に沿って移動する。すなわち、冷却流体は、第1の側壁部62をZ方向に沿って丸パイプ611側に移動した後、図3に示すように、丸パイプ611に沿ってY方向の第2の側壁部63側に移動し、第2の側壁部63に入る。
【0054】
この後、冷却流体は、復路部74に沿って移動する。すなわち、冷却流体は、図4(B)に示すように、第2の側壁部63をZ方向に沿って照射部3側に移動した後、折り返して丸パイプ611側に移動し、図3に示すように、丸パイプ611に沿ってY方向の第1の側壁部62側に移動し、第1の側壁部62に入る。
【0055】
この後、冷却流体は、図4(A)に示すように、第1の側壁部62内において、隣接する別の往復経路の往路部73に沿って移動する。すなわち、冷却流体は、第1の側壁部62をZ方向に沿って照射部3側に移動した後、第2板626の開口面を通って折り返し、Z方向に沿って丸パイプ611側に移動した後、図3に示すように、丸パイプ611に沿ってY方向の第2の側壁部63側に移動し、この後、上述したように、復路部74に沿って移動する。冷却流体は、これを複数の往復路において繰り返し、流出口72から排出される。
【0056】
このように、本実施形態に係るビームキャッチャー6は、流体経路7が、第1の側壁部62から、本体部61と第2の側壁部63の順に流れた後、第2の側壁部63から、本体部61と第1の側壁部62との順に流れるため、第1の側壁部62、本体部61及び第2の側壁部63とで温度に偏りが生じにくい。
【0057】
しかも、本体部61が複数の丸パイプ611で構成されており、耐圧性が高いため、冷却効率を上げるために冷却流体の流速を上げても、冷却流体の漏洩の発生を軽減することができる。
【0058】
また、複数の丸パイプ611のうちの隣り合う丸パイプ611は、中心同士が電子線の照射方向にずれ、かつ平面視において一部が重なり合っているため、本体部61を透過する電子線を低減することができる。
【0059】
また、被照射物9は、X方向において、ビームキャッチャー6の中央部の直上で、電子線が照射された後、高温になって第1方向に移動する。このため、ビームキャッチャー6は、被照射物9の熱により、X方向において、本体部61の中央部よりも先端側の領域が、基端側の領域よりも温度が高くなりやすい。しかし、本実施形態では、往路部73は、平面視において、復路部74よりも第1方向の先端側に配置されているため、温度が高くなりやすい領域に対して、比較的温度の低い冷却流体を流すことができる。
【0060】
また、本実施形態に係るビームキャッチャー6は、図6に示すように、キャプスタン装置10の一対のドラム11に対して、たすき掛けされた被照射物9にも好適に使用することができる。この場合、搬送方向(第1方向D1)は、側面視において、X方向に対して傾斜するが、平面視においてX方向に平行である。この場合、被照射物9は、例えば、ワイヤ、電線、光ケーブル、ゴムホース、チューブ等が挙げられる。
【0061】
キャプスタン装置10は、一対のドラム11と、各ドラム11を回転可能に支持する支持体12と、一対のドラム11の少なくとも一方を駆動する駆動装置13と、を備える。一対のドラム11の回転軸は、Y方向に延びており、互いに平行である。
【0062】
ビームキャッチャー6は、本体部61が被照射物9の下方に配置される。本体部61は断面山型に形成されているため、たすき掛けされた被照射物9と本体部61との間の距離を、略一定の距離とすることができる。このようにすることで、照射部3とビームキャッチャー6との距離を極力短くすることができ、電子線によるオゾンの発生を低減することができる。また、電子線の少なくとも一部は本体部61に当たると反射するが、このとき、被照射物9と本体部61との間の距離が略一定の距離であるため、反射により被照射物9に与える影響を均一化することができる。
【0063】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0064】
(変形例1)
上記実施形態に係るビームキャッチャー6では、本体部61は、Y方向に見て、複数の丸パイプ611が山型に並ぶように配置されたが、例えば、図7,8に示すような態様であってもよい。図8に示すように、本変形例に係る本体部61は、複数の丸パイプ611のうちの隣り合う丸パイプ611は、中心同士が電子線の照射方向にずれ、かつ平面視において一部が重なり合っている点で、実施形態の本体部61と共通する。一方、本変形例の本体部61では、1つ飛びの丸パイプ611は、Z方向に同じ位置に配置されており、いわゆる千鳥状に配置されている。隣り合う丸パイプ611の外面の共通内接線K1は、図8(B)に示すように、上記実施形態と同様、Z方向に対して傾斜する。
【0065】
(その他の変形例)
上記実施形態では、往路部73が復路部74よりも第1方向の先端側に位置したが、往路部73は、復路部74よりも第1方向の基端側に位置してもよい。すなわち、実施形態の流出口72を流入口とし、実施形態の流入口71を流出口として用いてもよい。
【0066】
上記実施形態では、搬送方向に向かって左側に第1の側壁部62が配置され、右側に第2の側壁部63が配置されたが、左側に第2の側壁部63が配置され、右側に第1の側壁部62が配置されてもよい。
【0067】
上記実施形態では、流体経路7は、第1の側壁部62、本体部61及び第2の側壁部63において、くまなく行き渡るように、全面にわたって配置されたが、X方向における、温度が高くなりやすい領域にのみ、流体経路7を設けてもよい。
【0068】
本明細書において「平行」とは、2つの直線、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。また「直交」とは、2つの直線、面等を延長したときに90°に交差する場合だけでなく、2つの直線、面等を延長したときに90°±10°以内の範囲で交差する場合も含む。
【0069】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【0070】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係るビームキャッチャー6は、電子線を照射する照射部3に対向するように配置される本体部61と、本体部61の一端から立ち上がる第1の側壁部62と、本体部61の他端から立ち上がる第2の側壁部63と、本体部61、第1の側壁部62及び第2の側壁部63に設けられ、冷却流体の経路である流体経路7と、を備える。流体経路7は、第1の側壁部62から、本体部61と第2の側壁部63との順に流れる往路部73と、往路部73につながり、第2の側壁部63から、本体部61と第1の側壁部62との順に流れる復路部74と、を有する。
【0071】
この態様によれば、往路部73と復路部74とが、第1の側壁部62、本体部61及び第2の側壁部63を順に流れるため、第1の側壁部62、本体部61及び第2の側壁部63に温度の偏りが生じにくい。
【0072】
第2の態様に係るビームキャッチャー6では、第1の態様において、照射部3に電子線を照射される被照射物9が搬送される方向を第1方向とする。本体部61は、第1方向に交差する方向に延びて流体経路7の一部を形成する複数の丸パイプ611を有している。複数の丸パイプ611は、平面視において、第1方向に平行な方向に並ぶように配置されている。この態様によれば、耐圧性が高い丸パイプ611を用いているため、冷却流体の流速を上げても、冷却流体の漏洩を軽減することができる。
【0073】
第3の態様に係るビームキャッチャー6では、第2の態様において、複数の丸パイプ611のうちの隣り合う丸パイプ611は、中心同士が電子線の照射方向にずれ、かつ平面視において一部が重なり合っている。この態様によれば、本体部61を透過する電子線を低減することができる。
【0074】
第4の態様に係るビームキャッチャー6では、第3の態様において、本体部61は、丸パイプ611の中心軸方向に沿って見て、第1方向における中央部ほど照射部3側に位置するように、複数の丸パイプ611が山型に並んでいる。この態様によれば、本体部61がZ方向に大きくなるのを抑制することができるため、電子線照射装置100の小型化を実現することができる。
【0075】
第5の態様に係る電子線照射装置100は、被照射物9に対して電子線を照射する照射部3と、照射部3との間に被照射物9が位置するように配置されるビームキャッチャー6と、を備える。ビームキャッチャー6は、照射部3に対向するように配置される本体部61と、本体部61の一端から立ち上がる第1の側壁部62と、本体部61の他端から立ち上がる第2の側壁部63と、本体部61、第1の側壁部62及び第2の側壁部63に設けられ、冷却流体の経路である流体経路7と、を備える。流体経路7は、第1の側壁部62から、本体部61と第2の側壁部63との順に流れる往路部73と、往路部73につながり、第2の側壁部63から、本体部61と第1の側壁部62との順に流れる復路部74と、を有する。
【0076】
この態様によれば、第1の側壁部62、本体部61及び第2の側壁部63に温度の偏りが生じにくいビームキャッチャー6を有する電子線照射装置100を提供することができる。この結果、被照射物9への電子線の照射効果が安定する電子線照射装置100を提供することができる。
【符号の説明】
【0077】
100 電子線照射装置
3 照射部
6 ビームキャッチャー
61 本体部
611 丸パイプ
62 第1の側壁部
63 第2の側壁部
7 流体経路
71 流入口
72 流出口
73 往路部
74 復路部
9 被照射物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8