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特開2024-78799乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体
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  • 特開-乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078799
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/00 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B66B31/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191361
(22)【出願日】2022-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 涼介
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321CB11
3F321CB15
3F321CB18
3F321HA03
3F321HA10
(57)【要約】
【課題】乗客コンベアの踏段に移動体が乗って移動し、踏段又は手摺りベルトの異常を検出することができる、乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の実施形態は、乗客コンベア10と移動体100とを含む乗客コンベアシステムにおいて、乗客コンベア10は、手摺りベルト38がそれぞれ走行する左右一対の欄干36と、左右一対の欄干36の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段30と、踏段30、及び手摺りベルト38を移動させる主制御部50と、を有し、移動体100は、踏段30に乗って移動する移動体本体102と、移動体本体102に設けられ、踏段30からの音又は振動を検出するセンサ112,114と、センサ112,114が検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部116と、を有する、乗客コンベアシステム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアと移動体とを含む乗客コンベアシステムにおいて、
前記乗客コンベアは、
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
を有し、
前記移動体は、
前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、
前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、
を有する、乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記主制御部、又は前記移動体制御部は、
前記センサが検出した音又は振動が、基準値よりも高い場合には、前記踏段に異常があると判断し、音又は振動が基準値よりも高い値を示した位置情報を記憶する、請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
乗客コンベアと移動体とを含む乗客コンベアシステムにおいて、
前記乗客コンベアは、
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
を有し、
前記移動体は、
前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの近くまで左右方向に伸びた腕部と、
前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出するセンサと、
前記センサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、
を有する、乗客コンベアシステム。
【請求項4】
前記主制御部、又は前記移動体制御部は、
前記センサが検出した音が、基準値よりも高い場合には、前記手摺りベルトに異常があると判断し、音が基準値よりも高い値を示した位置情報を記憶する、請求項3に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項5】
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
を有する、乗客コンベアの異常を移動体を用いて検出する方法であって、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、
前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有し、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記踏段からの音又は振動を検出し、
前記主制御部、又は前記移動体制御部が、音又は振動が基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、乗客コンベアの異常検出方法。
【請求項6】
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
を有する、乗客コンベアの異常を移動体を用いて検出する方法であって、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの近くまで左右方向に伸びた腕部と、
前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出するセンサと、
前記センサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有し、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記手摺りベルトからの音を検出し、音が基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、乗客コンベアの異常検出方法。
【請求項7】
乗客コンベアの踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、
前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部と
を有する、移動体。
【請求項8】
乗客コンベアの踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記乗客コンベアの左右一対の手摺りベルトの近くまで前記移動体本体から左右方向に伸びた腕部と、
前記腕部に設けられ、前記乗客コンベアの手摺りベルトからの音を検出するセンサと、
前記センサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と
を有する、移動体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗客コンベアについては設置後、踏段や手摺りベルトから振動や騒音が発生していないか確認することで、踏段や手摺りベルトに異常が発生していないか定期的に検査を実施している。しかしながら、振動や騒音から異常と判断するかは保守員の裁量となっている。また、現状として、乗客からの報告や、保守員が定期的に行っている検査以外に異常を検出する方法はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-210994号公報
【特許文献2】特開2018-556055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、乗客コンベアの踏段に移動体が乗って移動し、踏段又は手摺りベルトの異常を検出することができる、乗客コンベアシステム、乗客コンベアの異常検出方法、及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、乗客コンベアと移動体とを含む乗客コンベアシステムにおいて、前記乗客コンベアは、手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、を有し、前記移動体は、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有する、乗客コンベアシステムである。
【0006】
また、本発明の実施形態は、手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、を有する、乗客コンベアの異常を移動体を用いて検出する方法であって、前記移動体が、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有し、前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記踏段からの音又は振動を検出し、前記主制御部、又は前記移動体制御部が、音又は振動が基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、乗客コンベアの異常検出方法である。
【0007】
また、本発明の実施形態は、乗客コンベアの踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出するセンサと、前記センサが検出した音又は振動の情報を時系列に記憶する移動体制御部とを有する、移動体である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータを側面から見た説明図であり、下階から上階を見た場合に、右側の構造物を省略した図。
図2】本発明の一実施形態のエスカレータにおける電気的構成を説明するブロック図。
図3】本発明の一実施形態に係るエスカレータに乗っている移動体を側面から見た説明図。
図4】本発明の一実施形態に係る制御方法を示すエスカレータのフローチャート。
図5】本発明の別の実施形態に係るエスカレータに乗っている移動体を背面から見た説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の乗客コンベアシステムについて図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
実施形態1では、乗客コンベアシステムであるエスカレータ10と移動体100について図1図4を参照して説明する。
【0011】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について図1を参照して説明する。図1は、エスカレータ10を右側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の右側の部材、すなわち手前側の部材の図示を省略している。なお、エスカレータ10の左右方向を説明するときは、下階から上階を見上げたときの左右方向であり、前後方向を説明するときは、下階から上階を見上げ、上階が前側、下階が後側であるものとする。
【0012】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって、支持アングル2,3を用いて前後方向に支持されている。
【0013】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、不図示の左右一対のベルトスプロケットが設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0014】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0015】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0016】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード(内デッキ)44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0017】
手摺りベルト38は、不図示のベルトスプロケットが踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。
【0018】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、踏段30がこのコム60に進入したり、このコム60から引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
(2)移動体100
次に、エスカレータ10の点検を行うための移動体100について、図3を参照して説明する。この移動体100は、自律走行可能なロボットであり、その目的は無人でエスカレータ10の点検を行うことである。
【0020】
移動体100は、ほぼ立方体の本体102を有し、この本体102の大きさは、一段の踏段30に乗ることができる大きさに設計されている。その本体102の内部には、コンピュータなどよりなる移動体制御部であるロボット制御部104が設けられている。本体102の下部には、4個の車輪106が設けられ、この4個の車輪106は移動モータ108で回転する。ロボット制御部104は、移動モータ108の回転、停止、回転方向を制御することにより、移動体100を前進、後進、又は右若しくは左に回転させることができる。
【0021】
本体102には、移動体100の外部の音を取得するためのマイク112と、本体102自身の振動を検出する振動検出部114と、マイク112と振動検出部114が検出した音及び振動を記憶する記憶部116と、外部と通信をするためのロボット通信部118が設けられている。検出する音としては、踏段30の走行音や手摺りベルト38の走行音があり、検出する振動は移動体100が乗っている踏段30の振動などがある。
【0022】
(3)エスカレータ10と移動体100の電気的構成
次に、エスカレータ10と移動体100の電気的構成について、図2のブロック図を参照して説明する。
【0023】
上階の機械室14内部にある制御装置50は主制御部の役割を有し、移動体100のロボット通信部118や外部にある保守センタの監視装置200と接続するための通信部64と、モータ20と電磁ブレーキ23を制御するための駆動回路66と、乗客を検出するセンサ68が接続されている。
【0024】
移動体100のロボット制御部104には、移動モータ108、マイク112、振動検出部114、記憶部116、通信部64と通信するロボット通信部118が接続されている。
【0025】
(4)移動体100による点検
次に、移動体100を用いて、踏段30を点検する方法について図4のフローチャートに基づいて説明する。この説明では、エスカレータ10の踏段30は、上昇するものとする。
【0026】
ステップS1において、エスカレータ10が稼働し、踏段30が通常運転の場合はステップS2に進む。
【0027】
ステップS2において、制御装置50はセンサ68から取得した情報に基づいて、乗客の人数を把握し、基準人数よりも少ない場合はステップS3に進み(Yes)、基準人数よりも多い場合は、乗客の人数が基準人数よりも少なくなるまでステップS2を繰り返す(No)。このようにすることによって、乗客が多数存在しているときには、移動体100の存在が障害にならないようにする。
【0028】
ステップS3において、制御装置50は、ロボット制御部104を制御して、移動体100を、下階側の乗降板34から最も下にある踏段30に乗せる。そして、ステップS4に進む。
【0029】
ステップS4において、ロボット制御部104は、踏段30に乗ったことを確認すると、マイク112と振動検出部114を起動して点検を開始する。また、この点検を開始した時を点検開始時間として、この点検開始時間(通常は、この時間を0秒とする)から時間のカウントを開始する。次いで、ステップS5に進む。
【0030】
ステップS5において、移動体100は踏段30に乗って移動しながら、ロボット制御部104がマイク112と振動検出部114とを用いて、踏段30から発生する音や振動を時系列に検出し、それらの情報を点検開始時間からの時間と共に記憶部116に記憶する。次いで、ステップS6に進む。
【0031】
ステップS6において、ロボット制御部104は、踏段30に乗った移動体100が上階側の降り口に到着すると、踏段30から移動体100を降ろす。次いで、ステップS7に進む。
【0032】
ステップS7において、マイク112と振動検出部114を用いた検出を終了し、点検を終了する。また、この点検を終了した時を点検終了時間として記憶する。次いで、ステップS8に進む。
【0033】
ステップS8において、ロボット制御部104は、点検で得た音と振動に関する時系列の情報を制御装置50に送信する。次いで、ステップS9に進む。
【0034】
ステップS9において、制御装置50は、受信した音と振動に関する時系列の情報から、基準値を超える異常な騒音又は異常な振動の有無を判断する。基準値を超える異常な騒音又は異常な振動とは、例えば、音又は振動の最大振幅値が、基準値よりも高い値である場合である。次いで、ステップS10に進む。
【0035】
ステップS10において、制御装置50は、基準値を超える異常な騒音又は異常な振動を検出した場合には、踏段30などに異常が発生していると判断する。そして、異常があった位置については、踏段30の移動速度と、点検開始時間から異常を検出した時間までの経過時間から、移動体100の点検開始位置からの移動距離を求め、異常が発生している位置を特定する。そしてステップS11に進む(Yes)。基準値を超える騒音又は振動を検出しなかった場合には、異常は発生していないと判断し、この制御を終了する(No)。
【0036】
ステップS11において、制御装置50は、保守センタの監視装置200に、異常が発生していることと、その位置情報を示す信号を送信し、この制御を終了する。
【0037】
(5)効果
本実施形態によれば、移動体100を踏段30に乗せて移動させるだけで踏段30の異常を検出することができる。
【0038】
また、乗客が少ない状態でエスカレータ10が通常運転しているときに点検を実施するので、エスカレータ10を停止させることなく、かつ、乗客の障害にならずに点検ができる。
【0039】
また、エスカレータ10の制御装置50から、踏段30に異常が発生していることと、その位置が保守センタに送られてくるため、保守員は効率的にそのエスカレータ10の保守を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、エスカレータ10から必然的に発生する運転音も収集することができるため、運転音が発生する原因を特定し、より運転音の小さいエスカレータの開発に寄与することもできる。
【実施形態2】
【0041】
実施形態2では、乗客コンベアシステムであるエスカレータ10と移動体101について図1,2,4,5を参照して説明する。なお、実施形態1と共通する点については説明を省略する。
【0042】
(6)移動体101
エスカレータ10の点検を行うための移動体101について、図5を参照して説明する。この移動体101は、自律走行可能なロボットであり、その目的は無人でエスカレータ10の点検を行うことである。
【0043】
移動体101は、ほぼ立方体の本体102を有し、この本体102の大きさは、一段の踏段30に乗ることができる大きさに設計されている。その本体102の内部には、コンピュータなどよりなる移動体制御部であるロボット制御部104が設けられている。本体102の下部には、4個の車輪106が設けられ、この4個の車輪106は移動モータ108で回転する。ロボット制御部104は、移動モータ108の回転、停止、回転方向を制御することにより、移動体101を前進、後進、又は右若しくは左に回転させることができる。
【0044】
本体102の上面には、鉛直方向に伸びる柱状の支持部110と、支持部110から左右方向に伸びる腕部111が設けられ、腕部111の両末端には、手摺りベルト38から発生する音を取得するためのマイク112,113が設けられ、マイク112,113が左右一対の手摺りベルト38,38の上方に位置している。マイク112,113と手摺りベルト38との距離は、接触しない範囲で近ければ近いほど好ましく、例えば、手摺りベルト38とマイク112,113との距離が50cm以下であることが好ましい。なお、マイク112,113の位置は、左右一対の手摺りベルト38,38の上方に限らず、側方にあってもよい。
【0045】
ロボット制御部104は、マイク112,113が検出した音を記憶部116に記憶する。また、ロボット制御部104は、移動体101の外部と通信をするためのロボット通信部118を有している。
【0046】
(7)効果
本実施形態によれば、移動体101を踏段30に乗せて移動させるだけで手摺りベルト38の異常を検出することができる。特に、腕部111の両末端にあるマイク112,113を、左右一対の手摺りベルト38,38の近くに配することができるので、音を確実に検出できる。
【0047】
また、乗客が少ない状態でエスカレータ10が通常運転しているときに点検を実施するので、エスカレータ10を停止させることなく、かつ、乗客の障害にならずに点検ができる。
【0048】
また、エスカレータ10の制御装置50から、手摺りベルト38に異常が発生していることと、その位置が保守センタに送られてくるため、保守員は効率的にそのエスカレータ10の保守を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、エスカレータ10から必然的に発生する運転音も収集することができるため、運転音が発生する原因を特定し、より運転音の小さいエスカレータの開発に寄与することもできる。
【0050】
(8)変更例
上記実施形態1,2では、検出した音又は振動から、基準値を超える値の有無を制御装置50が判断していたが、移動体100(101)のロボット制御部104が判断するものであってもよい。すなわち、ロボット制御部104は、マイク112(113)から取得した音の大きさが、予め設定した基準値を超えた場合には異常音と認識し、振動検出部114が検出した振動値が、予め設定した基準値を超えた場合には異常振動と認識する。そして、ロボット制御部104は、踏段30の移動速度と、点検開始から異常を検出した時間までの経過時間から異常が発生している位置を特定し、その位置情報を記憶部116に記憶するものとすることができる。
【0051】
上記実施形態1では、音と振動とを測定する例について説明したが、音のみ測定するものであってもよく、振動のみ測定するものであってもよい。
【0052】
上記実施形態1では、振動値から基準値を超えるかどうかの判断しか行わなかったが、ノイズフィルターを設けることにより、踏段30の案内レールに異常があるのか、駆動装置18に異常があるのかなど、原因を推定するものであってもよい。すなわち、制御装置50にノイズフィルターを設け、検出した音や振動をこのノイズフィルターに通し、出力された波形から、案内レールの構造異常、駆動系の異常の有無を判断できるようにしてもよい。この場合には、どのような波形が案内レールの構造異常、駆動系の異常に該当するかを予め実験で求めておく。
【0053】
上記実施形態1,2では、保守センタの監視装置200に、異常が発生していることと、その位置情報を示す信号を送信したが、異常が発生していることのみを送信し、その位置情報については、保守時に移動体100(101)やエスカレータ10から保守員が取得するものであってもよい。
【0054】
上記実施形態1では、移動体100が踏段30の音又は振動を測定する例について説明し、上記実施形態2では、移動体101が手摺りベルト38の音を測定する例について説明したが、移動体が踏段30の音と振動の異常と手摺りベルト38の音の異常を検出する機能をそれぞれ有するものであってもよい。
【0055】
また、上記実施形態1,2では、移動体100(101)が下階から上階に上昇するときに点検を行ったが、上階から下階に下降するときに点検を行ってもよい。
【0056】
上記実施形態1,2では、乗客コンベアがエスカレータである例について説明したが、乗客コンベアは動く歩道であってもよく、その場合、上記制御方法と同様の制御を行うことができる。
【0057】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・建屋、10・・・エスカレータ、12・・・トラス、30・・・踏段、36・・・欄干、38・・・手摺りベルト、39・・・手摺りレール、50・・・制御装置、68・・・センサ、100・・・移動体、101・・・移動体、102・・・本体、104・・・ロボット制御部、110・・・支持部、111・・・腕部、112・・・マイク、113・・・マイク、114・・・振動検出部、116・・・記憶部、200・・・監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアと移動体とを含む乗客コンベアシステムにおいて、
前記乗客コンベアは、
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
を有し、
前記移動体は、
前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの上方まで左右方向に伸びた左右一対の腕部と、
前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、
前記第1のセンサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、
を有し、
前記主制御部、又は前記移動体制御部は、
前記第1のセンサが検出した前記音が、第1の基準値よりも高い場合には、前記手摺りベルトに異常があると判断し、音が前記第1の基準値よりも高い値を示した位置情報を記憶する、
乗客コンベアシステム。
【請求項2】
前記移動体は、前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出する第2のセンサを有し、
前記移動体制御部は、前記第2のセンサが検出した前記音又は前記振動の情報を時系列に記憶し、
前記主制御部、又は前記移動体制御部は、
前記第2のセンサが検出した前記音又は前記振動が、第2の基準値よりも高い場合には、前記踏段に異常があると判断し、前記音又は前記振動が前記第2の基準値よりも高い値を示した位置情報を記憶する、
請求項1に記載の乗客コンベアシステム。
【請求項3】
手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、
左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、
前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、
前記踏段に乗って移動する移動体と、
を有する乗客コンベアの異常を移動体を用いて検出する方法であって、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの上方まで左右方向に伸びた左右一対の腕部と、
前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、
前記第1のセンサが検出した前記音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、
を有し、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記手摺りベルトからの前記音を検出し、前記音が第1の基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、
乗客コンベアの異常検出方法。
【請求項4】
前記移動体は、前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出する第2のセンサを有し、
前記移動体制御部は、前記第2のセンサが検出した前記音又は前記振動の情報を時系列に記憶し、
前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記踏段からの前記音又は前記振動を検出し、前記主制御部、又は前記移動体制御部が、前記音又は前記振動が第2の基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、
請求項3に記載の乗客コンベアの異常検出方法。
【請求項5】
乗客コンベアの踏段に乗って移動する移動体本体と、
前記乗客コンベアの左右一対の手摺りベルトの上方まで前記移動体本体から左右方向に伸びた左右一対の腕部と、
前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記乗客コンベアの手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、
前記第1のセンサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部とを有する、
移動体。
【請求項6】
前記移動体本体に設けられ、前記踏段からの音又は振動を検出する第2のセンサを有し、
前記移動体制御部は、前記第2のセンサが検出した前記音又は前記振動の情報を時系列に記憶する、
請求項5に記載の移動体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の実施形態は、乗客コンベアと移動体とを含む乗客コンベアシステムにおいて、前記乗客コンベアは、手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、を有し、前記移動体は、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの上方まで左右方向に伸びた左右一対の腕部と、前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、前記第1のセンサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有し、前記主制御部、又は前記移動体制御部は、前記第1のセンサが検出した前記音が、第1の基準値よりも高い場合には、前記手摺りベルトに異常があると判断し、音が前記第1の基準値よりも高い値を示した位置情報を記憶する、乗客コンベアシステムである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
また、本発明の実施形態は、手摺りベルトがそれぞれ走行する左右一対の欄干と、左右一対の前記欄干の間を一方の乗降口から他方の乗降口に前後方向に移動する踏段と、前記踏段、及び前記手摺りベルトを移動させる主制御部と、前記踏段に乗って移動する移動体と、を有する乗客コンベアの異常を移動体を用いて検出する方法であって、前記移動体が、前記踏段に乗って移動する移動体本体と、前記移動体本体から左右一対の前記手摺りベルトの上方まで左右方向に伸びた左右一対の腕部と、前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、前記第1のセンサが検出した前記音の情報を時系列に記憶する移動体制御部と、を有し、前記移動体が、前記踏段に乗って移動しながら、前記手摺りベルトからの前記音を検出し、前記音が第1の基準値よりも高い値を示した場合、異常があると判断し、異常を検出した位置情報を記憶する、乗客コンベアの異常検出方法である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
また、本発明の実施形態は、乗客コンベアの踏段に乗って移動する移動体本体と、前記乗客コンベアの左右一対の手摺りベルトの上方まで前記移動体本体から左右方向に伸びた左右一対の腕部と、前記手摺りベルトの上方に位置する前記腕部に設けられ、前記乗客コンベアの手摺りベルトからの音を検出する第1のセンサと、前記第1のセンサが検出した音の情報を時系列に記憶する移動体制御部とを有する、移動体である。