(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078800
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20240604BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240604BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240604BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q50/30
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191363
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康彦
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
5L099
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L049CC41
5L050CC11
5L050CC41
5L099AA13
(57)【要約】
【課題】患者や被介護者が安心して参加することができる船旅を実現する。
【解決手段】一態様に係る船舶は、クルーズプランに従って出港地から寄港地を経て帰港するクルーズ船として使用される船舶であって、患者または被介護者である要支援者が乗客として滞在する少なくとも1つの客室と、要支援者を医療または介護の面で支援するための少なくとも1つの医療介護機器と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルーズプランに従って出港地から寄港地を経て帰港するクルーズ船として使用される船舶であって、
患者または被介護者である要支援者が乗客として滞在する少なくとも1つの客室と、
前記要支援者を医療または介護の面で支援するための少なくとも1つの医療介護機器と、を備える、船舶。
【請求項2】
前記少なくとも1つの医療介護機器は、少なくとも前記船舶が前記出港地を出発する前に前記要支援者が有していた医療または介護に関する症状に対応している、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記少なくとも1つの医療介護機器は、前記客室に設置された個人用医療介護機器を含み、
前記個人用医療介護機器は、前記個人用医療介護機器と同じ前記客室に滞在する前記要支援者の医療または介護に関する症状に対応している、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記船舶が前記出港地から出港する前に前記要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報を記憶するメモリを更に備える、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項5】
陸上にいる前記要支援者の担当医または家族である陸上支援者との対話を可能にする対話型コミュニケーション装置を更に備える、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項6】
前記対話型コミュニケーション装置は、
通信衛星を介して陸上に位置する端末装置と通信可能に構成された通信装置と、
前記通信装置により前記端末装置から受信した音声情報を出力するスピーカと、
前記通信装置により前記端末装置から受信した画像情報を出力するディスプレイと、
前記要支援者が発した音声を取得するマイクと、を含む、請求項5に記載の船舶。
【請求項7】
前記乗客を識別するための乗客識別情報と、前記医療介護機器を識別するための機器識別情報とを互いに対応付けて記憶するメモリを更に備える、請求項1または2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗客に船旅を提供可能なクルーズ船が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
継続的な診療が必要な患者や継続的な介護が必要な被介護者にとって、クルーズ船に乗って長期間にわたる船旅に参加することは難しい。
【0005】
そこで、本開示は、患者や被介護者が安心して参加することができる船旅を実現する船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る船舶は、クルーズプランに従って出港地から寄港地を経て帰港するクルーズ船として使用される船舶であって、患者または被介護者である要支援者が乗客として滞在する少なくとも1つの客室と、前記要支援者を医療または介護の面で支援するための少なくとも1つの医療介護機器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、患者や被介護者が安心して参加することができる船旅を実現する船舶を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るクルーズ運営システムにより実現可能なサービスの概要を示すイメージ図である。
【
図2】
図1のクルーズ運営システムにおけるクルーズ管理装置、端末装置、遠隔操作システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図4】
図3に示す船舶の客室、支援室および手術室について説明するためのブロック図である。
【
図6】クルーズプランの作成からクルーズの実施までの流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】クルーズ航路と寄港地情報との対応関係を説明するためのマップの一例である。
【
図8】クルーズ運営システムを用いた申込受付の流れを示すフローチャートである。
【
図9】クルーズ申込画面の一例を示す模式図である。
【
図10】陸上の担当医が見ている遠隔診察画面の一例である。
【
図11】陸上の医師と船上の医師とで船上の患者の診療情報を共有する情報共有処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<システムの概要>
従来からクルーズ船は、レストランやバー、プールなどの様々な設備を備えており、乗客は、船上で快適に過ごしながら船旅を楽しむことができる。しかしながら、病院に入院している患者、定期的な通院を必要とする病気を抱える患者、継続的な介護を必要とする被介護者などにとって、長期間の船旅に参加することは難しい。従来のクルーズ船において医師や看護師が乗船することがあったが、これらの医師や看護師は、船旅中に船内で乗客が体調を壊したりケガをしたりしたときに対処してもらうために乗船しており、従来のクルーズ船では、当初から何らかの病気やケガをもった患者や、継続的な介護を必要とする被介護者が乗船することは想定されていなかった。以下に説明する船舶、クルーズ管理装置およびクルーズ運営システムでは、何らかの病気やケガをもっており継続的な診療が必要な患者や継続的な介護が必要な被介護者であっても、乗船中の健康維持が支援され、安心して船旅を楽しむことが可能となっている。
【0011】
図1は、本実施形態に係るクルーズ運営システム1により実現可能なサービスの概要を示すイメージ図である。クルーズ運営システム1は、患者や被介護者が乗船することを想定した船旅を運営するためのシステムである。クルーズ運営システム1では、クルーズ中の健康維持を支援するための様々なサービスが、クルーズへ参加した患者や被介護者に提供される。クルーズ運営システム1により運営される船旅の参加者には、当該船旅へ参加する前から何らかの病気やケガをもっており継続的な診療を必要としていた患者、または、当該船旅へ参加する前から継続的な介護を必要としていた被介護者が含まれる。以下、このような患者および被介護者を総称して、「要支援者」と称する場合がある。要支援者には、高齢者が含まれ得る。
【0012】
例えば要支援者が船旅への参加を希望する場合、端末装置20からクルーズへの申込が可能である。端末装置20は、例えば、要支援者または当該要支援者が所有する端末装置でもよいし、要支援者が入院または通院する病院H,H1の端末装置でもよい。クルーズへの申込は、例えば患者が入院または通院する病院H,H1の担当医の許可制であり得る。
【0013】
船舶40は、クルーズ中に、通信衛星Sを介して陸上の各種端末装置と通信可能となっている。例えば、患者は、船上において、当該患者が入院または通院する病院H,H1の担当医の診察を遠隔で受けることができる。クルーズ中に、船舶40に設置した医療介護機器61,62(
図4参照)を用いて、患者の症状の状態を検出することができる。本実施形態では、検出された患者の症状の状態を示す状態情報を、担当医が確認できるよう、当該状態情報を船舶40から陸上の装置(後述のクルーズ管理装置10など)に送ることも可能である。本実施形態では、後述するように、船上の医師と陸上の担当医とで、患者の症状に関する情報の共有化が実現されている。
【0014】
船舶40には、医師、看護師、介護士などが乗船している。クルーズ中、要支援者である乗客は、船上の医師から診療を受けることができる。例えば、クルーズ中に患者の症状が悪化した場合など緊急の手術が必要となった場合には、船舶40内の手術室において、船上の医師によって手術が行われ得る。
【0015】
例えば患者の症状の状態を確認するために、船舶40に乗船した複数の医師や看護師は、クルーズ中、交代制で客室43を訪問したり、客室43以外の船室を見回ったりし得る。船舶40に乗船した複数の医師や看護師またはそれ以外の船上スタッフは、船舶40の各箇所に設置した監視カメラで撮像した映像を見ることで、遠隔で船舶40の各箇所を監視してもよい。
【0016】
乗船する医師は、クルーズに参加する患者の症状に対応した専門医であり得る。すなわち、クルーズに参加する患者の診療領域において適切な教育を受け、その診療領域に関する十分な技量や知識を習得した医師であり得る。例えば透析患者が乗客として船旅に参加する場合に、少なくとも1名の透析専門医が乗船する。
【0017】
船舶40は手術支援ロボット90を備えており、手術支援ロボット90を用いた手術も可能である。手術支援ロボット90は、船上の医師が遠隔操作システム80(
図4参照)を用いて、遠隔操作可能である。また、手術支援ロボット90は、陸上の医師が遠隔操作システム30を用いて、遠隔操作可能である。
【0018】
例えば、必要があれば、寄港地の病院H,H2において、患者は精密検査を受けることができてもよい。また、必要があれば、寄港地の病院H,H2において、患者は手術を受けることができてもよい。寄港地の病院H,H2の医師は、当該医師が操作可能な端末装置20を介して、例えば、船舶40が寄港地に到着する前に、当該寄港地の病院H,H2において精密検査または手術を受ける予定の患者の診療情報(例えばカルテ)を確認することも可能となっている。本実施形態では、後述するように、船上の医師と寄港地の病院H,H2の医師とで、患者の症状に関する情報の共有化が実現されている。
【0019】
また、クルーズ中、要支援者は、船舶40の客室からリモートで、陸上の家族などとコミュニケーションをとることも可能である。これにより、クルーズ中の患者や被介護者の心理的側面からのケアを図ることができる。
【0020】
クルーズ中、患者には、船上にて当該患者の症状に適した食事が提供される。
【0021】
<システムの構成>
図2は、
図1のクルーズ運営システム1におけるクルーズ管理装置10、端末装置20、遠隔操作システム30のハードウェア構成を示す図である。クルーズ運営システム1は、クルーズ管理装置10、複数の端末装置20、複数の遠隔操作システム30および船舶40を有する。クルーズ管理装置10、複数の端末装置20、複数の遠隔操作システム30は、ネットワークNに接続可能である。ネットワークNは、例えばインターネットである。ただし、ネットワークNは、携帯電話網、衛星通信回線などであり得る。また、船舶40には通信装置42(
図3参照)が搭載されており、通信装置42は、通信衛星SやネットワークNを介して、陸上の各種装置、例えばクルーズ管理装置10、複数の端末装置20、複数の遠隔操作システム30と通信可能である。
【0022】
(クルーズ管理装置)
クルーズ管理装置10は、要支援者が乗船することを想定した船旅を運営する運営者の端末装置である。クルーズ管理装置10は、患者などからの船旅への申し込みを受け付ける装置として機能する。また、クルーズ管理装置10は、船上の医師と陸上の医師とで船上の患者の状態についての情報を共有するために、船上の患者の情報を蓄積する装置として機能する。なお、患者などからの船旅への申し込みを受け付ける装置と、船上の患者の情報を蓄積する装置とは、一体的でなくてもよく、別個の装置であってもよい。
【0023】
クルーズ管理装置10は、プロセッサ11、メモリ12および通信インターフェース13を含む。これらの要素は、バス11aによって互いに接続されているが、他のいかなる有線通信または無線通信で接続されてもよい。プロセッサ11は例えばCPUにより構成される。メモリ12は、例えば、RAMやROMなどのメインメモリと、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージを含む。通信インターフェース13は、ネットワークNと有線または無線で通信するための通信インターフェースである。
【0024】
クルーズ管理装置10は、サーバ装置でもよい。また、クルーズ管理装置10は、デスクトップパーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などであってもよい。クルーズ管理装置10は、ユーザの操作を受け付ける入力機器や画像を表示する表示器を備えてもよい。
【0025】
(端末装置)
端末装置20は、船旅への参加申し込みを行うための装置である。
図2に示すように、端末装置20は、船旅への参加を希望する患者が入院または通院している病院H,H1に配置された端末装置20aであり得る。例えば病院H,H1の関係者、例えば担当医や看護師などが端末装置20aを操作して、患者の船旅への参加申し込みを行い得る。また、端末装置20は、船旅への参加を希望する要支援者または当該要支援者の家族が所有する端末装置20bであり得る。陸上にいる要支援者の担当医または家族を、便宜上、「陸上支援者」と称する場合がある。陸上支援者には、寄港地の医師も含まれ得る。
【0026】
端末装置20は、プロセッサ21、メモリ22、通信インターフェース23、入力器24、表示器25、カメラ26、スピーカ27、マイク28を含む。これらの要素は、バス21aによって互いに接続されているが、他のいかなる有線通信または無線通信で接続されてもよい。プロセッサ21は例えばCPUにより構成される。メモリ22は、例えば、RAMやROMなどのメインメモリと、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージを含む。通信インターフェース23は、ネットワークNと有線または無線で通信するための通信インターフェースである。入力器24は、ユーザの操作を受け付ける機器である。表示器25は、例えば液晶ディスプレイである。例えば入力器24は、マウスやキーボードなどであり得る。例えば入力器24と表示器25とは、タッチスクリーンとして一体的に構成されてもよい。マイク28は、音声を集音する機器である。
【0027】
端末装置20は、デスクトップパーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などであってもよい。
【0028】
本実施形態のクルーズ運営システム1において、要支援者は、端末装置20から、例えば運営者が運営するウェブサイトを介して、船旅の申し込みを行うことができる。船旅への参加が決定すると、船舶40に乗り、クルーズプランにより定められた期間、船旅を楽しむことができる。船舶40に乗っている間、要支援者は、船上において、医療または介護の面で当該要支援者が必要とする支援を継続的に受けることができる。
【0029】
遠隔操作システム30は、病院H,H1に配置されている。遠隔操作システム30は、船舶40に配置された手術支援ロボット90(
図4参照)を遠隔操作するためのシステムである。船上の患者の手術を支援する際に、例えば船上の患者の診療を担当していた担当医により操作されてもよいし、それ以外の医師により操作されてもよい。遠隔操作システム30は、担当医の病院になくてもよく、別の病院などに設置されていてもよい。
【0030】
遠隔操作システム30は、プロセッサ31、メモリ32、通信インターフェース33、入力器34、表示器35、カメラ36、スピーカ37、マイク38を含む。これらの要素は、バス31aによって互いに接続されているが、他のいかなる有線通信または無線通信で接続されてもよい。プロセッサ31は例えばCPUにより構成される。メモリ32は、例えば、RAMやROMなどのメインメモリと、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージを含む。通信インターフェース33は、ネットワークNと有線または無線で通信するための通信インターフェースである。入力器34は、医師である遠隔操作者の操作を受け付ける機器である。例えば入力器34としては、例えば、ジョイスティック、キーボード、テンキー、ティーチペンダント等の公知の操作器を用いることができる。表示器35は、例えば据え置き型のディスプレイであってもよいし、遠隔操作者が身に着けて使用するヘッドマウントディスプレイまたはメガネで構成されていてもよい。カメラ36、スピーカ37、マイク38は、船上の医師や看護師と、手術中などにコミュニケーションをとるために使用され得る。
【0031】
(船舶の構成)
船舶40は、クルーズプランに従って出港地から寄港地を経て帰港するクルーズ船として使用される。船舶40は、一般的な船舶と同様に、船体41、推進器、主機、発電機、及び蓄電池を備える。主機は推進器の駆動動力を生成する機関である。主機は、ディーゼル機関、タービン機関、電気推進機関、及び、これらの組み合わせのうち一つであってよい。発電機は、発電用機関(図示略)から動力を得て発電し、生成した電力を船内電力系統や蓄電池へ供給する。主機が発電用機関としての機能を有していてもよい。
【0032】
また、船舶40は、通信衛星Sと通信するための通信装置42を備えている。
【0033】
船舶40は、一般的な船舶と同様に、各種の航海計器を備える。航海計器には、例えば、クロノメーター、ジャイロコンパス、速度計、風向風速計、測深器、レーダー、GPS受信機などが含まれる。GPS受信機は、上空にあるGPS衛星(図示略)からの信号を受け取って、船舶40の現在位置を測位する。
【0034】
船舶40には、複数の要支援者が乗客として乗船する。また、船舶40には、患者に対して医療行為を行う医師や看護師、被介護者を介護する介護者などが乗船している。このような船上の要支援者を医療または介護の面で支援する船上の医師、看護師、介護者などを、便宜上、「船上支援者」と称する場合がある。
【0035】
船舶40は、複数の客室43と、少なくとも1つの支援室44と、少なくとも1つの手術室45とを備える。客室43は、乗客、つまり患者または被介護者である要支援者が滞在する部屋である。手術室45は、船体41における船底41aに近い位置に配置されている。すなわち、手術室45は、船舶40の揺れの影響を受けにくい位置に配置されている。その他、船舶40には、レストラン、バー、フィットネスなど、娯楽を楽しむための部屋も用意され得る。
【0036】
客室43には、要支援者が使用するベッドが備えられている。各客室43内の一部の機器は、支援室44内の機器と船内LAN46により互いに通信可能に接続されている。また、船内LAN46には、通信装置42が接続されている。このため、各客室43内の機器や支援室44内の機器は、船内LAN46および通信装置42を介して陸上の各種装置と通信可能である。
【0037】
図4は、
図3に示す船舶40の客室43、支援室44および手術室45について説明するためのブロック図である。客室43には、客室支援装置50と、少なくとも1つの医療介護機器61とが設置されている。
【0038】
客室支援装置50は、客室43内の要支援者を支援するための装置である。客室43内の客室支援装置50は、船内LAN46に接続されている。例えば、客室支援装置50は、要支援者が支援室44に居る船上支援者に助けを求めたり、船上支援者とコミュニケーションをとったりするために使用され得る。例えば、客室支援装置50は、通信衛星Sおよび通信装置42を介して、要支援者が陸上の家族とコミュニケーションをとったり、陸上の医師の診察を受けたりするために使用され得る。客室支援装置50は、陸上支援者との対話を可能にする対話型コミュニケーション装置の一例である。
【0039】
客室支援装置50は、プロセッサ51、メモリ52、通信インターフェース53、入力器54、表示器55、カメラ56、スピーカ57、マイク58を含む。これらの要素は、バス51aによって互いに接続されているが、他のいかなる有線通信または無線通信で接続されてもよい。プロセッサ51は例えばCPUにより構成される。メモリ52は、例えば、RAMやROMなどのメインメモリと、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージを含む。通信インターフェース53は、船内LAN46と通信するための通信インターフェースである。通信インターフェース53は、通信装置42や支援管理装置70などの外部装置と有線または無線で通信可能に構成されていればよい。入力器54は、ユーザの操作を受け付ける機器である。表示器55は、例えば液晶ディスプレイである。例えば入力器54は、マウスやキーボードなどであり得る。例えば入力器54と表示器55とは、タッチスクリーンとして一体的に構成されてもよい。マイク58は、音声を集音する機器である。
【0040】
医療介護機器61は、要支援者を医療または介護の面で支援するためのものである。客室43に配置される医療介護機器61には、支援室44内の支援管理装置70と通信可能な医療介護機器61aと、支援室44内の支援管理装置70と通信不能な医療介護機器61bとが含まれ得る。医療介護機器61aは、同じ客室43の客室支援装置50を介して支援室44内の支援管理装置70と通信してもよいし、医療介護機器61aが、客室支援装置50を介さずに支援室44内の支援管理装置70と通信してもよい。
【0041】
客室43に設置された医療介護機器61は、少なくとも船舶40が出港地を出発する前に当該要支援者が有していた医療または介護に関する症状に対応した医療介護機器が含まれ得る。これを実現するためには、参加した要支援者の医療または介護に関する症状を、船旅実施前に船旅の運営者が把握する必要があるが、後述するように、クルーズ運営システム1を用いた申込受付では、要支援者が船旅に申し込んだ時点で、当該要支援者が有している医療または介護に関する症状を、船旅の運営者が把握することを可能にする。
【0042】
図5は、客室43の内観の一例を示す図である。
図5に示す客室43は、定期的な人工透析を必要とする患者が滞在するための客室である。客室43には、医療介護機器61として人工透析装置が配置されている。例えば透析患者は、通常、1回4時間、週3回の人工透析を受ける必要がある。本実施形態の船舶40を使用した船旅に参加した透析患者は、客室43に居ながら人工透析を受けることが可能である。このように例えば要支援者が定期的な人工透析を必要とする場合、症状に対応した医療介護機器61は、人工透析装置であり得る。
【0043】
例えば要支援者が不整脈の症状を有する場合、その要支援者の客室43に設置された医療介護機器61aは、要支援者の不整脈を検知し、検知した情報を支援管理装置70に通知するデバイスであり得る。
【0044】
例えば要支援者が植込み型ペースメーカを有する場合、医療介護機器61aは、植込み型ペースメーカの異常を検知し、検知した情報を支援管理装置70に通知するデバイスであり得る。
【0045】
例えば医療介護機器61は、点滴装置などであり得る。
【0046】
例えば医療介護機器61は、介護ベッドであり得る。
【0047】
例えば医療介護機器61は、船上での要支援者のバイタルデータを計測する機器であり得る。例えば医療介護機器61は、船上での要支援者のメンタルヘルスデータを計測する機器であり得る。メンタルヘルスデータは、例えば脳波、血液、発汗などなどが例示される。医療介護機器61は、船上で患者が身につけるウェアラブルデバイスであり得る。
【0048】
また、客室43だけでなく、支援室44および手術室45の一方または双方にも、医療介護機器62が設置されている。支援室44または手術室45に設置された医療介護機器62は、複数の要支援者に共用のものである。医療介護機器62は、各要支援者にとって使用頻度が少なかったり、各客室43に配置することが難しかったりする医療介護機器であり得る。例えば、医療介護機器62は、MRI装置、CT装置、X線装置、超音波検査装置、人工透析装置などが例示され得る。
【0049】
図4に戻って、支援室44には、支援管理装置70が設置されている。支援管理装置70は、支援室44から遠隔で客室43内の要支援者を支援するための装置である。支援管理装置70は、複数の客室43に設置された複数の客室支援装置50と船内LAN46により通信可能に接続されている。例えば、支援管理装置70は、支援室44の医師や看護師が客室43の患者とコミュニケーションをとるために使用され得る。また、支援管理装置70は、客室43の医療介護機器61と通信するために使用され得る。例えば、支援管理装置70は、陸上にいる要支援者の家族や要支援者の担当医と通信衛星Sを介してコミュニケーションをとったり情報共有したりするために使用され得る。
【0050】
支援管理装置70は、プロセッサ71、メモリ72、通信インターフェース73、入力器74、表示器75、カメラ76、スピーカ77、マイク78を含む。これらの要素は、バス71aによって互いに接続されているが、他のいかなる有線通信または無線通信で接続されてもよい。プロセッサ71は例えばCPUにより構成される。メモリ72は、例えば、RAMやROMなどのメインメモリと、ハードディスクやフラッシュメモリなどのストレージを含む。通信インターフェース73は、船内LAN46と通信するための通信インターフェースである。通信インターフェース73は、通信装置42や客室支援装置50などの外部装置と有線または無線で通信可能に構成されていればよい。入力器74は、ユーザの操作を受け付ける機器である。表示器75は、例えば液晶ディスプレイである。例えば入力器74は、マウスやキーボードなどであり得る。例えば入力器74と表示器75とは、タッチスクリーンとして一体的に構成されてもよい。
【0051】
支援管理装置70のメモリ72には、各客室43の要支援者の健康維持を支援できるよう、各種情報が記憶されている。
【0052】
例えば、支援管理装置70のメモリ72は、要支援者、つまり乗客を識別するための乗客識別情報と、医療介護機器61を識別するための機器識別情報とを対応付けて記憶している。乗客識別情報は乗客IDと、機器識別情報は機器IDと称し得る。
【0053】
また、支援管理装置70のメモリ72は、船舶40が出港地から出港する前に要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報(クルーズ前診療情報とも称し得る)を記憶している。診療情報は、例えば、陸上の担当医による患者の診療記録、いわゆるカルテであり得る。診療情報は、要支援者である乗客を識別するための乗客識別情報と対応付けてメモリ72に記憶されている。
【0054】
また、支援管理装置70のメモリ72は、乗客を識別するための乗客識別情報と、陸上において乗客を治療または介護を担当していた人または施設を識別するための陸上側担当者識別情報とを対応付けて記憶している。陸上側担当者識別情報は、例えば、船舶40が出港地を出発する前に陸上において要支援者に対して診察、診断または治療を行った医師または当該医師が所属する病院を識別するための情報でありうる。支援管理装置70は、通信装置42および通信衛星Sを介して、陸上に設置された陸上側担当者識別情報に対応する端末装置20と通信する。陸上側担当者識別情報は、担当者IDと称し得る。また、支援管理装置70のメモリ72は、乗客を識別するための乗客識別情報と、船上において乗客を治療または介護を担当する人(例えば船上の医師や看護師)を識別するための船側担当者識別情報とを対応付けて記憶している。
【0055】
また、支援管理装置70のメモリ72は、クルーズプランに関する情報を記憶する。また、クルーズプランに関する情報には、寄港地を示す寄港地情報および寄港地に対応する病院に関連する病院情報が含まれ得る。病院情報は、その病院名、病院にて治療可能な病気に関する情報、医師に関する情報などを含む。
【0056】
支援管理装置70のメモリ72は、客室43の医療介護機器61aから受信した情報を記憶し得る。例えば医療介護機器61aは、要支援者の症状の状態をモニタリングする装置でもよい。例えば医療介護機器61aは、要支援者の症状の状態を示す状態情報を検出し、検出した状態情報を支援管理装置70に送ってもよい。支援管理装置70は、各客室43の医療介護機器61aから受信した状態情報を、メモリ72に記憶してもよいし、表示器75に表示させてもよい。
【0057】
また、支援管理装置70のメモリ72は、乗客を識別するための乗客識別情報と、乗客に対応する医療介護機器61aから受信した状態情報と、船上支援者による診療記録などを示す診療情報(クルーズ中診療情報または船上診療情報とも称し得る)とを対応付けて記憶する。後述の情報共有処理では、クルーズ中診療情報は、クルーズ管理装置10に、通信装置42および通信衛星Sを介して送られる。
【0058】
支援管理装置70は、医療介護機器61aに対する指示を送ることができてもよい。すなわち、船上支援者は、支援管理装置70の入力器74を操作することにより、医療介護機器61aを遠隔で操作できてもよい。
【0059】
また、手術室45には、遠隔操作システム80および手術支援ロボット90が配置されている。遠隔操作システム80は、船舶40に配置された手術支援ロボット90を遠隔操作するためのシステムである。遠隔操作システム80は、プロセッサ、メモリ、通信インターフェース、入力器、表示器、カメラ、スピーカ、マイクを含む。遠隔操作システム80について、遠隔操作システム30と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0060】
手術支援ロボット90は、船外または船内から遠隔で手術を行うまたは手術を支援するためのロボットである。以下、手術支援ロボット90を、単にロボット90と称し得る。ロボット90は、船上の遠隔操作システム80または陸上の遠隔操作システム30により遠隔操作されるロボット90は、船内LAN46に接続されており、遠隔操作システム30と通信衛星Sを介して通信可能である。ロボット90は、遠隔操作システム30の入力器34から入力された操作情報に基づいて動作するように構成されている。ロボット90としては、周知の手術支援ロボットを採用し得る。
【0061】
<クルーズの運営の一例>
次に、クルーズ運営システム1を用いたクルーズの用意からクルーズの実施までの流れの一例について説明する。以下、運営会社Xが作成したクルーズプランに、定期的に通院している患者Yが参加を申し込み、クルーズに参加するという例に沿って説明する。
【0062】
(クルーズの用意)
図6は、クルーズプランの作成からクルーズの実施までの流れの一例を説明するためのフローチャートである。
図6に示すように、クルーズが実施される前に、クルーズプランの作成、クルーズの準備、クルーズへの申込受付が実施される。例えば、運営会社Xは、クルーズプランとして、クルーズに使用する船、出港地、行先である寄港地、クルーズ期間などを決定する。また、運営会社Xは、クルーズプランの参加可能な患者の症状と、症状ごとの参加可能人数などを決定する。運営会社Xは、客室や支援室などに、決定した症状に応じた医療介護機器を設置する。運営会社Xは、クルーズ期間に乗船するスタッフの手配を行う。スタッフには、クルーズ中に患者を診療する医師や看護師、被介護者を介護する介護者、つまり船上支援者が含まれる。
【0063】
また、運営会社Xは、クルーズ期間中に寄港地でサービスを提供してもらえるよう、サービスの手配を行う。
図7は、クルーズ航路と寄港地情報との対応関係を説明するためのマップの一例である。運営会社Xは、寄港地での観光に関連するサービスの手配だけでなく、寄港地での医療サービスの手配も行う。寄港地での医療サービスの手配には、寄港地の病院にて乗客である患者が診療してもらったり、必要な場合には手術を受けられたりするための病院との契約などが含まれる。
【0064】
症状ごとの参加可能人数が決定した後に、クルーズへの申込受付を行う。
図8は、クルーズ運営システム1を用いた申込受付の流れを示すフローチャートである。
【0065】
クルーズ管理装置10から端末装置20にクルーズプランの内容を通知する(ステップS1)。例えば運営会社Xは、クルーズ管理装置10によってネットワークN上に申込受付サイトを開設することにより、クルーズプランの内容を宣伝するとともに、クルーズプランへの参加申し込みを募ってもよい。例えば、クルーズ管理装置10は、クルーズプランの内容を、電子メールを介して端末装置20に通知してもよい。例えば、クルーズ管理装置10が、クルーズプランの内容を、電子メールを介して病院Hの端末装置20aに通知する場合、患者は、病院Hの関係者からクルーズプランの内容を知らされ得る。
【0066】
クルーズへ参加したいと思った患者Yは、端末装置20を介してクルーズへの申込ができる。具体的には、端末装置20からクルーズ管理装置10にクルーズへの申込情報が送られる(ステップS2)。例えば、端末装置20からクルーズ管理装置10への申込情報の送信は、患者Yやその家族などが端末装置20bを操作してネットワークN上に開設された申込受付サイトにアクセスし、必要な情報を入力することによって行われ得る。また、例えば、端末装置20からクルーズ管理装置10への申込情報の送信は、患者Yが通院する病院Hの関係者(例えば担当医または看護師)が、患者Yからクルーズへの参加申し込みをするよう頼まれた後に、端末装置20aを操作してネットワークN上に開設された申込受付サイトにアクセスし、必要な情報を入力することによって行われ得る。
【0067】
図9は、クルーズ申込画面の一例を示す模式図である。端末装置20が申込受付サイトにアクセスすると、端末装置20の表示器25にクルーズ申込画面が表示される。このクルーズ申込画面は、申込に必要な事項を入力するための複数の入力項目が表示されている。各入力項目に入力して、申込を選択および実行することで、端末装置20からクルーズ管理装置10にクルーズへの申込情報が送られる。
【0068】
クルーズ申込画面の複数の入力項目には、例えば、「参加者の氏名」、「参加者の症状の種類」、「必要な医療介護機器」、「現在服用している薬」、「現在の治療形態」、「担当医ID」、「担当医の許可」などが含まれる。患者または患者から入力を依頼された病院Hの関係者は、「参加者の氏名」、「参加者の症状の種類」、「必要な医療介護機器」、「現在服用している薬」、「現在の治療形態」、「担当医ID」、「担当医の許可」に、必要事項を入力する。申込情報には、各入力項目に入力した事項の内容を示す情報が含まれる。
【0069】
入力項目に、「必要な医療介護機器」があることで、どのような医療介護機器があれば申込者の健康維持を支援できるかを確認できる。例えば船舶40の客室43に用意した医療介護機器で、申込者の健康維持を支援できるかを確認できる。
【0070】
入力項目の「担当医ID」は、出港地を出発する前に陸上において要支援者に対して診察、診断または治療を行った医師を識別するための情報であり、陸上側担当者識別情報の一例である。入力項目に、「担当医ID」があることで、申込者の担当医を特定できる。また、入力項目に、「担当医の許可」があることで、申込段階において申込者がクルーズに参加できると担当医が判断していることを確認できる。「担当医の許可」には、クルーズ前の患者の診療情報を船上の医師などと共有化することに対する許可が含まれてもよい。また、「担当医の許可」には、クルーズ中に、リモートで船上の患者を診療することを受け入れることに対する許可が含まれてもよい。
【0071】
入力項目に入力された情報の一部または全部が、船舶40が備えるメモリ72に記憶される。
【0072】
図8に戻って、クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、端末装置20からにクルーズへの申込情報を受信すると、申込情報に基づき、申込者の参加の可否を決定する(ステップS3)。例えば、プロセッサ11は、申込情報が含む各入力事項の内容が、所定の条件を満たすか否かを判定し、1つでも条件を満たさない入力事項が含まれると判定した場合には、申込者の参加を拒否してもよい。例えば「必要な医療介護機器」という入力項目に、船舶40に設置されていない、または、設置できない機器が入力されていると判定した場合、申込者の参加は拒否され得る。
【0073】
本実施形態では、クルーズ管理装置10は、申込情報に基づき、自動的に申込者の参加の可否を決定するが、運営会社Xが申込者情報を精査して、申込者の参加の可否を決定してもよい。
【0074】
申込者の参加の可否が決定されると、クルーズ管理装置10から端末装置20にクルーズへ、決定した内容を示す参加可否情報が送られる(ステップS4)。
【0075】
なお、上述の説明では、クルーズプランの作成、クルーズの準備、クルーズへの申込受付の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上述の説明では、参加可能な患者の症状と、症状ごとの参加可能人数を決定した後に、クルーズへの申込受付を行ったが、参加可能人数を決定せずにクルーズへの申込受付を実施してもよい。この場合、クルーズへの申込受付により各参加申込者の症状が把握され、その後、各参加申込者の症状に応じて、船舶40の各部屋に設置する医療介護機器61,62の種類や数が決定され得る。
【0076】
(クルーズの実施)
参加者が決定すると、クルーズプランに従ってクルーズが実施される。船舶40は、クルーズプランに従って出港地から寄港地へ向かって出港する。
【0077】
客室43および支援室44の少なくとも一方には、参加者である乗客が、船舶40が出港地を出る前に有していた医療または介護に関する症状に対応した医療介護機器61,62が設置されている。このため、乗客は船上にいながら継続的に必要な治療または介護を受けることができる。
【0078】
クルーズ中、乗客は、船上支援者から定期的または不定期に診療を受けることができる。乗客が支援室44を訪問して、支援室44にて船上支援者から診療を受けてもよい。船上支援者が各客室43を訪問して、乗客は客室43にて船上支援者から診療を受けてもよい。客室43に居る乗客は、客室支援装置50および支援管理装置70が互いに通信することにより、支援室44に居る船上支援者からリモートで診察を受けてもよい。支援室44に居る船上支援者は、客室支援装置50および支援管理装置70が互いに通信することにより、各客室43の医療介護機器61をリモートで操作してもよい。
【0079】
また、クルーズ中、乗客は、陸上の担当医から定期的または不定期にリモートで診療を受けることができる。
図10は、陸上の担当医が見ている遠隔診察画面の一例である。遠隔診察画面には、カメラ56で撮像された船上にいる患者の顔を表示する領域と、患者の状態を示す状態情報を表示する領域とが含まれる。状態情報は、船上において医療介護機器61により検出された情報である。状態情報は、医療介護機器61によりリアルタイムで検出された情報を含み得る。例えば状態情報は、患者の血圧や脈拍であり得る。また、遠隔診察画面には、船上の医師による診療結果を示す診療情報が表示されてもよい。
【0080】
例えば、クルーズ中に患者の症状が悪化した場合など緊急の手術が必要となった場合には、船舶40内の手術室45において、船上の医師によって手術が行われ得る。また、陸上の医師が、遠隔操作システム30を介して船舶40に設置された手術支援ロボット90を遠隔操作することによって、船上の患者をリモートで手術することもできる。
【0081】
クルーズ中に船上において行われた診療結果は、陸上の医師にも共有される。
図11は、陸上の医師と船上の医師とで船上の患者の診療情報を共有する情報共有処理の流れを示すフローチャートである。
【0082】
乗客が、船上支援者から定期的または不定期に診療を受けると、船上支援者は、入力器74を操作して、支援管理装置70に診療結果を入力する。入力された診療結果、すなわち、クルーズ中診療情報は、支援管理装置70のメモリ72に記憶される。また、船上支援者は、入力器74を操作して、診療結果を患者の識別情報である乗客IDとともにクルーズ管理装置10へ送る(ステップT1)。
【0083】
クルーズ管理装置10には、乗客IDごとに診療結果が記憶される(ステップT2)。乗客IDには、乗客IDを示す乗客の担当医に対応する担当医IDが対応付けて記憶されている。
【0084】
クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、最新の診療結果を受信および記憶すると、最新の診療結果が送られてきたことを、乗客IDに対応付けられた担当医IDに対応する端末装置20へ通知する(ステップT3)。担当医は、端末装置20から、クルーズ管理装置10に記憶された最新の診療結果にアクセスする(ステップT4)。担当医は、最新の診療結果に関するコメントを端末装置20に入力する(ステップT5)。
【0085】
クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、端末装置20から送られたコメント情報を、乗客IDと対応付けて記憶する(ステップT6)。クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、コメント情報を記憶した場合に、コメント情報が記憶されたことを支援管理装置70に通知する(ステップT7)。船上支援者は、クルーズ管理装置10のメモリ72に記憶されたコメント情報にアクセスする(ステップT8)。
【0086】
このような処理により、船上の患者の診療結果を、陸上の医師も確認でき、コメントできる。従って、船上の患者の状態を、船上の医師と陸上の医師とでダブルチェックできる。
【0087】
なお、診療結果に加えてまたは代わりに、医療介護機器61,62により取得された要支援者の症状の状態を示す状態情報を船上の医師と陸上の医師とでダブルチェックできてもよい。すなわち、医療介護機器61,62により検出された要支援者の症状の状態を示す状態情報が、クルーズ管理装置10に手動でまたは自動的に送られ、記憶されてもよい。特に状態情報として、医療介護機器61,62により撮像された体内の画像などの医用画像やその関連情報を船舶40から陸上へ送ることで、遠隔画像診断も実施できる。状態情報は、医療介護機器61,62から、支援管理装置70を経由せずに陸上のクルーズ管理装置10に送られてもよい。
【0088】
なお、クルーズ管理装置10に記憶された患者の診療結果には、患者の担当医だけがアクセスできるようにアクセス権が付与されてもよい。例えば、クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、クルーズプランに従って航行中の船舶40において要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報を、船舶40から受信する。診療情報は、例えば、患者の診療記録、いわゆるカルテであり得る。クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、診療情報を、船舶40が出港地を出発する前に陸上において要支援者に対して診察、診断または治療を行った医師または当該医師が所属する病院を識別するための陸上側担当者識別情報と対応付けて記憶する。
【0089】
クルーズ管理装置10のプロセッサ11は、診療情報に対応する陸上側担当者識別情報が示す医師または病院に対し、診療情報に対するアクセス権を付与する。つまり、プロセッサ11は、クルーズ管理装置10が端末装置20から情報へのアクセス要求を受信した場合に、情報へのアクセスを要求した当該端末装置20の陸上側担当者識別情報を判定し、判定した陸上側担当者識別情報に対応付けられた情報へのアクセスを許可し、判定した陸上側担当者識別情報に対応付けられていない情報へのアクセスを拒否する。
【0090】
なお、診療情報や状態情報は、出港地または出港国の病院H,H1の医師だけでなく、寄港地または寄港国の病院H,H2の医師とも共有され得る。この場合、診療情報は、クルーズ前診療情報およびクルーズ中診療情報の少なくとも一方を含む。また、クルーズ管理装置10に記憶された患者の診療結果には、登録された寄港地の医師だけがアクセスできるようにアクセス権が付与されてもよい。すなわち、陸上側担当者識別情報は、寄港地または寄港国の病院や医師を識別する情報であってもよい。
【0091】
なお、クルーズ管理装置10を介さずに、船舶40から陸上の担当医の端末装置20aに送ってもよい。
【0092】
以上に説明したように、船舶40では、クルーズ中、患者または被介護者である要支援者を支援するための医療介護機器61,62を備えるため、要支援者が安心して参加することができる船旅を実現することができる。
【0093】
例えば透析患者は、通常、1回4時間、週3回の人工透析を受ける必要がある。このような患者であっても、医療介護機器61,62としての人工透析装置を用いて船上にて人工透析を受けつつ、クルーズを楽しむことができる。
【0094】
また、本実施形態では、医療介護機器61,62が、船舶40が出港地を出発する前に要支援者が有していた医療または介護に関する症状に対応しているため、要支援者は、当該船舶40を使用した船旅に抵抗なく参加できる。
【0095】
また、本実施形態では、医療介護機器61,62が客室42に設置されているため、クルーズ中、要支援者は、客室42で医療介護機器61,62を用いた支援を受けることができる。
【0096】
また、本実施形態では、船舶内のメモリに、出港前に要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報が記憶されているため、要支援者は、船舶に同乗する人、例えば医師などから、診療情報に基づいた医療や介護に関する支援を受けることができる。
【0097】
また、本実施形態では、客室支援装置50を用いて陸上にいる担当医や家族と対話できるため、要支援者は、船上にいながら陸上にいる担当医や家族の支援を受けることができる。
【0098】
また、本実施形態では、メモリ72には、乗客を識別するための乗客識別情報と、医療介護機器を識別するための機器識別情報とが互いに対応付けられて記憶されているため、各医療介護機器61,62を、クルーズ中の乗客である要支援者専用の医療介護機器61,62として管理できる。要支援者は、専用の医療介護機器61,62が船上にあることで、安心して船旅を楽しむことができる。
【0099】
<その他の実施形態>
以上、実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で変更、削除および追加することができる。
【0100】
例えば上記実施形態で説明されたクルーズ運営システム1が含む各要素のハードウェア構成は一例であり、上記実施形態で説明されたものに限定されない。
【0101】
医療介護機器は、客室内と客室外との間で移動可能に車輪を備えてもよい。客室の医療介護機器は、支援室などの別の機器と通信可能でなくてもよい。医療介護機器は、客室になくてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、乗客を識別するための乗客識別情報、医療介護機器を識別するための機器識別情報、船舶40が出港地から出港する前に要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報、陸上において乗客を治療または介護を担当していた人または施設を識別するための担当者識別情報、クルーズプランに関する情報、寄港地を示す寄港地情報、寄港地に対応する病院に関連する病院情報が互いに対応付けられて支援管理装置70のメモリ72に記憶されていたが、これらの情報の一部または全部は、メモリ72に記憶されていなくてもよい。例えば、これらの情報の一部または全部は、支援管理装置70のメモリ72の代わりにまたは加えて、船上の支援室44以外の機器のメモリに記憶されてもよい。また、例えば、これらの情報の一部または全部は、船上からアクセス可能なメモリ(例えばクルーズ管理装置のメモリ)に記憶されてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、陸上にいる前記要支援者の担当医または家族である陸上支援者との対話を可能にする対話型コミュニケーション装置として、客室支援装置50が説明されたが、対話型コミュニケーション装置は、客室になくてもよく、乗客が交替で使用可能な船内の共用室に設置されてもよい。対話型コミュニケーション装置として、通信衛星を介して陸上に位置する端末装置と通信可能に構成された通信装置と、通信装置により端末装置から受信した音声情報を出力するスピーカと、通信装置により端末装置から受信した画像情報を出力するディスプレイと、要支援者が発した音声を取得するマイクとを備える構成が説明されたが、対話型コミュニケーション装置はこれ以外の構成であってもよい。
【0104】
上記実施形態では、船舶40に、患者または被介護者である要支援者が乗客として乗船することが説明されたが、船舶40には、要支援者以外の者が乗客として乗船してもよい。言い換えれば、船舶40を用いた船旅に、要支援者以外の者が参加申し込みして、参加できてもよい。例えば、健常者がクルーズ中に健康診断や人間ドックを受けるために、船舶40に健康診断を行うための設備や人間ドックを行うための設備を設置してもよい。
【0105】
健常者として参加した乗客の健康診断の結果や人間ドッグの結果は、船外医師と共有できてもよい。すなわち、健常者の診療情報についても、上述した情報共有処理を適用可能である。健常者として参加した乗客も、必要があれば寄港地で精密検査や治療、手術などを受けられてもよい。
【0106】
例えば、クルーズへ参加した参加者が船上で提供されるサービスは、上述したサービスに限られない。参加者は、様々な医療関連のサービスの他、医療に関連しないサービスも受けられてもよい。例えば船上では、クルーズ中、様々な体験を参加者が受けられる体験プログラムが実施されてもよい。例えば、イルカセラピーや波音のヒーリングセラピー、身体不自由者向け遠隔マインドフルネスや座禅体験など様々なサービスが、クルーズの参加者に提供され得る。クルーズ中、患者は、患者向けのマリンアクティビティを行うことができてもよい。船舶が、クルーズ中の水中を撮像する水中カメラを備えてもよく、水中カメラで撮像した映像を、客室などの表示器に映し出してもよい。
【0107】
クルーズ管理装置10は、患者などからの船旅への申し込みを受け付ける装置として機能し、且つ、船上の医師と陸上の医師とで船上の患者の状態についての情報を共有するために、船上の患者の情報を蓄積する装置として機能したが、いずれか一方の機能を有さなくてもよい。例えば、クルーズ管理装置10は、患者などからの船旅への申し込みを受け付けなくてもよい。また、例えば、クルーズ管理装置10は、船上の患者の情報を蓄積しなくてもよい。
【0108】
船舶には、医療介護機器の他、要支援者の支援に寄与する様々な設備が搭載されてもよい。例えば、要支援者の船内での移動を支援するために、船内に、水平型エスカレーター、いわゆる動く歩道が配置されてもよいし、人を乗せて船内を移動する小型ビークルが配置されてもよい。
【0109】
上記実施形態で説明された船舶は、クルーズ船として使用可能であるが、病院船としても使用可能である。また、船舶は、ベッドが乗るエレベータを備えてもよい。また、船舶は、バイオハザードエリアを特定して、特定したエリアを隔離する設備を備えてもよい。また、船舶は、手術に必要な機器などに優先的に電力を供給する電源システムを備えてもよい。また、船舶は、客室43に食事を配送するロボットを備えてもよく、この場合、ロボットは、患者の薬なども配送してもよい。すなわち、食事を配送するロボットと薬を配送するロボットを共通化してもよい。
【0110】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの任意の組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0111】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0112】
[項目1]
クルーズプランに従って出港地から寄港地を経て帰港するクルーズ船として使用される船舶であって、
患者または被介護者である要支援者が乗客として滞在する少なくとも1つの客室と、
前記要支援者を医療または介護の面で支援するための少なくとも1つの医療介護機器と、を備える、船舶。
【0113】
前記構成によれば、クルーズ中、患者または被介護者である要支援者を支援するための医療介護機器を備えるため、要支援者が安心して参加することができる船旅を実現することができる。
【0114】
[項目2]
前記少なくとも1つの医療介護機器は、少なくとも前記船舶が前記出港地を出発する前に前記要支援者が有していた医療または介護に関する症状に対応している、項目1に記載の船舶。
【0115】
前記構成によれば、医療介護機器が、船舶が出港地を出発する前に要支援者が有していた医療または介護に関する症状に対応しているため、要支援者は、当該船舶を使用した船旅に抵抗なく参加できる。
【0116】
[項目3]
前記少なくとも1つの医療介護機器は、前記客室に設置された個人用医療介護機器を含み、
前記個人用医療介護機器は、前記個人用医療介護機器と同じ前記客室に滞在する前記要支援者の医療または介護に関する症状に対応している、項目1または2に記載の船舶。
【0117】
前記構成によれば、医療介護機器が客室に設置されているため、クルーズ中、要支援者は、客室で医療介護機器を用いた支援を受けることができる。
【0118】
[項目4]
前記船舶が前記出港地から出港する前に前記要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報を記憶するメモリを更に備える、項目1乃至3のいずれかに記載の船舶。
【0119】
前記構成によれば、船舶内のメモリに、出港前に要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報が記憶されているため、要支援者は、船舶に同乗する人、例えば医師などから、診療情報に基づいた医療や介護に関する支援を受けることができる。
【0120】
[項目5]
陸上にいる前記要支援者の担当医または家族である陸上支援者との対話を可能にする対話型コミュニケーション装置を更に備える、項目1乃至4のいずれかに記載の船舶。
【0121】
前記構成によれば、対話型コミュニケーション装置を用いて陸上にいる担当医や家族と対話できるため、要支援者は、船上にいながら陸上にいる担当医や家族の支援を受けることができる。
【0122】
[項目6]
前記対話型コミュニケーション装置は、
通信衛星を介して陸上に位置する端末装置と通信可能に構成された通信装置と、
前記通信装置により前記端末装置から受信した音声情報を出力するスピーカと、
前記通信装置により前記端末装置から受信した画像情報を出力するディスプレイと、
前記要支援者が発した音声を取得するマイクと、を含む、項目5に記載の船舶。
【0123】
[項目7]
前記乗客を識別するための乗客識別情報と、前記医療介護機器を識別するための機器識別情報とを互いに対応付けて記憶するメモリを更に備える、項目1乃至6のいずれかに記載の船舶。
【0124】
前記構成によれば、メモリには、乗客を識別するための乗客識別情報と、前記医療介護機器を識別するための機器識別情報とが互いに対応付けられて記憶されているため、各医療介護機器を、クルーズ中の乗客である要支援者専用の医療介護機器として管理できる。要支援者は、専用の医療介護機器が船上にあることで、安心して船旅を楽しむことができる。
【0125】
また、以下の項目のそれぞれも、クルーズ管理装置の好ましい実施形態の開示である。
【0126】
(構成1)
患者または被介護者である要支援者から、クルーズ船で出港地から寄港地を経て帰港するクルーズプランへの申込を受け付けるクルーズ管理装置であって、
前記クルーズ管理装置は、処理回路を備え、
前記処理回路は、複数の端末装置から、それぞれ、複数の要支援者の前記クルーズプランへの申込に関する申込情報を受信し、受信した前記申込情報を記憶するように構成され、
前記申込情報には、前記要支援者を識別するための申込者識別情報と、前記要支援者が有している医療または介護に関する症状または前記症状に対応した医療介護機器を示す症状識別情報とが含まれる、クルーズ管理装置。
【0127】
(構成2)
構成1において、前記申込情報には、前記申込者識別情報と前記症状識別情報に加え、前記クルーズ船が前記出港地を出発する前に陸上において前記要支援者に対して診察、診断または治療を行った医師または当該医師が所属する病院を識別するための担当者識別情報が含まれる。
【0128】
(構成3)
構成1または2において、前記メモリには、前記要支援者が前記クルーズプランに参加することに対する前記医師の許可の有無を示す許可情報が、前記申込情報に対応付けて記憶されている。
【0129】
(構成4)
患者または被介護者である要支援者が乗船したクルーズ船での前記要支援者の健康維持を支援するためのクルーズ管理装置であって、
前記クルーズ管理装置は、処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記クルーズプランに従って航行中の前記クルーズ船において前記要支援者が受けた診察、診断または治療に関する診療情報を、前記クルーズ船から受信し、
前記診療情報を、前記クルーズ船が前記出港地を出発する前に陸上において前記要支援者に対して診察、診断または治療を行った医師または当該医師が所属する病院を識別するための担当者識別情報と対応付けて記憶し、
前記診療情報に対応する前記担当者識別情報が示す医師または病院に対し、前記診療情報に対するアクセス権を付与するように構成される、クルーズ管理装置。
【符号の説明】
【0130】
40 :船舶
41 :船体
41a :船底
42 :通信装置
43 :客室
44 :支援室
45 :手術室
46 :船内LAN
50 :客室支援装置
51 :プロセッサ
52 :メモリ
53 :通信インターフェース
54 :入力器
55 :表示器
56 :カメラ
57 :スピーカ
58 :マイク
61 :医療介護機器
61a :医療介護機器
61b :医療介護機器
62 :医療介護機器
70 :支援管理装置
71 :プロセッサ
71a :バス
72 :メモリ
73 :通信インターフェース
74 :入力器
75 :表示器
76 :カメラ
77 :スピーカ
78 :マイク