(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078813
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191379
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
(72)【発明者】
【氏名】本野 智大
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸嗣
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157CB14
5F157CB27
5F157CF22
5F157CF66
5F157DA21
5F157DB32
5F157DB33
5F157DB51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止する。
【解決手段】基板処理装置は、支持トレイで支持された基板の上面に処理流体を流して処理する。支持トレイは、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、基板対向面を取り囲むようにトレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有し、支持部材により基板対向面から基板を上方に離間させた状態で基板を支持する。トレイ部材は、複数の支持部材により支持された基板の下流側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設された下流側立設部位と、基板対向面の外周領域のうち下流側立設部位に隣接する下流側隣接領域に設けられ、基板と下流側立設部位との隙間から下流側隣接領域に侵入してきた液体を捕集する溝と、溝の内部と内部空間とを連通し、溝により捕集された液体を内部空間に排出する排出部と、を有している。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置であって、
前記基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、前記基板対向面を取り囲むように前記トレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有し、前記支持部材により前記基板対向面から前記基板を上方に離間させた状態で前記基板を支持する支持トレイと、
前記基板を支持する前記支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、
前記内部空間の一方端側から前記内部空間に前記処理流体を供給することで、前記支持トレイに支持された前記基板の上面に沿って前記内部空間の他方端側に流れる前記処理流体の層流を形成する流体供給部と、を備え、
前記基板対向面の中心を通過するとともに前記層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、前記内部空間の他方端側を下流側としたとき、
前記トレイ部材は、
前記複数の支持部材により支持された前記基板の前記下流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設された下流側立設部位と、
前記基板対向面の外周領域のうち前記下流側立設部位に隣接する下流側隣接領域に設けられ、前記基板と前記下流側立設部位との隙間から前記下流側隣接領域に侵入してきた前記液体を捕集する溝と、
前記溝の内部と前記内部空間とを連通し、前記溝により捕集された前記液体を前記内部空間に排出する排出部と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記排出部は、前記溝の底面から下方に貫通する第1貫通孔である、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記排出部は、前記第1貫通孔を複数個有する、基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記第1貫通孔は、前記基板対向面の中心を通過するとともに前記流れ方向と平行に延びる第2仮想線に対し、対称に配置されている、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記トレイ部材に設けられた第2貫通孔を介して上端部が前記基板対向面よりも上方に突出して前記基板の下面に当接することで、前記基板を下方から支持可能な複数のリフトピンをさらに備え、
前記第2貫通孔の少なくとも1個が、前記溝の底面を貫通して設けられ、前記排出部として機能する、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記下流側立設部位の上面は、前記流れ方向に進むにしたがって低くなる傾斜面である、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記第1仮想線に対し、前記内部空間の一方端側を上流側としたとき、
前記トレイ部材は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の前記上流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設される上流側立設部位を有し、
前記上流側立設部位の上面が、上下方向において、前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面と同じ高さである、基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理装置であって、
前記溝は、上方からの平面視で環状形状を有するように、前記基板対向面の外周領域の全周に設けられる、基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記上流側立設部位および前記下流側立設部位が前記流れ方向において互いに離間することで、前記溝の側面を切り欠いた切欠部が設けられ、
前記切欠部は、前記溝により捕集された前記液体を前記トレイ部材から水平方向に排出可能に設けられ、前記排出部として機能する、基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記支持トレイは、上端部が前記複数の支持部材により支持された前記基板の周縁部の下面に近接するように前記溝の底面から突出した第1ブロック部を有し、
前記第1ブロック部は、前記溝の内部を、前記基板と前記下流側立設部位との隙間に連通することで前記下流側隣接領域に侵入してきた前記液体を捕集する主捕集ゾーンと、前記基板と前記第1ブロック部の上端との隙間に連通することで前記第1ブロック部を超えて前記下流側隣接領域に侵入してきた前記液体を捕集する副捕集ゾーンとに仕切る、基板処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の基板処理装置であって、
上下方向において、前記第1ブロック部の上端の高さ位置は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の下面の高さ位置よりも低く、基板対向面の高さ位置よりも高い、基板処理装置。
【請求項12】
請求項10に記載の基板処理装置であって、
前記支持トレイは、前記副捕集ゾーンにおいて、前記溝の底面から立設された第2ブロック部を有し、
前記第2ブロック部は、前記副捕集ゾーンの内部を複数に仕切る、基板処理装置。
【請求項13】
請求項12に記載の基板処理装置であって、
上下方向において、前記第2ブロック部の上端の高さ位置は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の下面の高さ位置よりも低く、前記基板対向面の高さ位置よりも高い、基板処理装置。
【請求項14】
その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理方法であって、
前記基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材に対して前記基板対向面を取り囲むように取り付けられた複数の支持部材により前記基板を前記基板対向面から上方に離間して支持する、支持トレイをチャンバーの内部空間に収容する収容工程と、
前記内部空間の一方端側から前記内部空間に前記処理流体を供給することで、前記支持トレイに支持された前記基板の上面に沿って前記内部空間の他方端側に流れる前記処理流体の層流を形成する供給工程と、
排出工程と、を備え、
前記基板対向面の中心を通過するとともに前記層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、前記内部空間の他方端側を下流側としたとき、
前記排出工程は、
前記層流により前記基板の上面から前記処理流体とともに前記液体を、前記基板の下流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設された下流側立設部位の上面を経由して前記内部空間の他方端側に排出する工程と、
前記基板と前記下流側立設部位との隙間から侵入してきた前記液体を、前記基板対向面の外周領域のうち前記下流側立設部位に隣接する下流側隣接領域に設けられた溝で捕集するとともに、前記溝の内部と前記内部空間とを連通する排出部を介して前記溝により捕集された前記液体を前記内部空間に排出する工程を含む、ことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を液体により湿式処理すると、当該基板の表面に液体が付着する。この湿式処理後に、当該基板を乾燥させる基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この装置では、平板状の支持トレイに浅い窪みが設けられている。そして、その窪みの中で、その表面を上方に向けたフェースアップ姿勢のまま基板が支持トレイの上面との間に微小な隙間を持ちつつ水平に支持される。この状態で支持トレイが処理チャンバーに搬入され、チャンバー内が超臨界状態の処理流体により満たされることで基板が処理(超臨界処理)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬入時に基板を覆っていた液膜を構成する液体は、処理流体によって置換され、基板表面から除去されると想定されている。しかしながら、液体の一部が基板下面と支持トレイ上面との間の狭い隙間に入り込んでしまうことがある。隙間に残留した液体、つまり残液が基板の表面に逆流することがある。その結果、残液が基板の上面に再付着するという問題が生じ得る。
【0005】
このことから、超臨界処理において、残液が基板の上面に逆流するのを防止することが求められる。この点において、上記従来技術には改良の余地が残されていると言える。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置であって、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、基板対向面を取り囲むようにトレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有し、支持部材により基板対向面から基板を上方に離間させた状態で基板を支持する支持トレイと、基板を支持する支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、内部空間の一方端側から内部空間に処理流体を供給することで、支持トレイに支持された基板の上面に沿って内部空間の他方端側に流れる処理流体の層流を形成する流体供給部と、を備え、基板対向面の中心を通過するとともに層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、内部空間の他方端側を下流側としたとき、トレイ部材は、複数の支持部材により支持された基板の下流側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設された下流側立設部位と、基板対向面の外周領域のうち下流側立設部位に隣接する下流側隣接領域に設けられ、基板と下流側立設部位との隙間から下流側隣接領域に侵入してきた液体を捕集する溝と、溝の内部と内部空間とを連通し、溝により捕集された液体を内部空間に排出する排出部と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の態様は、その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理方法であって、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材に対して基板対向面を取り囲むように取り付けられた複数の支持部材により基板を基板対向面から上方に離間して支持する、支持トレイをチャンバーの内部空間に収容する収容工程と、内部空間の一方端側から内部空間に処理流体を供給することで、支持トレイに支持された基板の上面に沿って内部空間の他方端側に流れる処理流体の層流を形成する供給工程と、排出工程と、を備え、基板対向面の中心を通過するとともに層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、内部空間の他方端側を下流側としたとき、排出工程は、層流により基板の上面から処理流体とともに液体を、基板の下流側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設された下流側立設部位の上面を経由して内部空間の他方端側に排出する工程と、基板と下流側立設部位との隙間から侵入してきた液体を、基板対向面の外周領域のうち下流側立設部位に隣接する下流側隣接領域に設けられた溝で捕集するとともに、溝の内部と内部空間とを連通する排出部を介して溝により捕集された液体を内部空間に排出する工程を含む、ことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、支持トレイがその基板対向面から上方に基板を離間しながら支持している。また、支持トレイでは、基板の下流側の周面に近接して下流側立設部位が設けられている。このため、基板と下流側立設部位との隙間から基板の下面と基板対向面との間に液体の一部が侵入するが、この侵入した液体、つまり残液は、溝で捕集される。そして、捕集された残液は排出部を介して内部空間に排出される。その結果、残液の逆流が効果的に防止され、基板の上面への残液の再付着は防がれる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明では、基板と下流側立設部位との隙間から基板の下面と基板対向面との間に侵入してきた残液を溝で捕集するとともに、当該溝から排出部を介して内部空間に排出されるように、支持トレイが構成されている。そのため、処理流体によって基板から液体を除去した際に、残液の量が大幅に減少し、当該液体が基板に再付着するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。
【
図1B】
図1Aの基板処理装置に装備された移載ユニットの構成を示す図である。
【
図2A】支持トレイの第1実施形態を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示す支持トレイの平面図である。同図は、支持トレイに設けられた貫通孔および切欠部を介して液体が排出される様子を模式的に示す部分拡大図を含んでいる。
【
図3】従来技術における支持トレイの構造を模式的に示す図である。
【
図4A】支持トレイの第2実施形態を示す斜視図である。
【
図5】支持トレイの第3実施形態を示す平面図である。
【
図6】支持トレイの第4実施形態を示す斜視図である。
【
図7】支持トレイの第5実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る基板処理装置のいくつかの実施形態について説明するが、各実施形態の間では後述する支持トレイの構造が一部異なるものの、基本的な装置構成は共通である。そこで、まず基板処理装置の全体構成について説明し、その後に、各実施形態の特徴部分について分説する。
【0013】
<装置の全体構成>
図1Aは本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。また、
図1Bは、
図1Aの基板処理装置に装備された移載ユニットの構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の上面を超臨界流体により処理するための装置である。例えば、基板に付着する液体(
図2A、
図4A、
図6中の符号L)を超臨界処理流体により置換して基板を乾燥させる超臨界乾燥処理を、この基板処理装置1は実行可能である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1Aおよび
図1Bに示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は上下方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が下向きを表す。
【0014】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また、以下の説明において、一方主面のみに回路パターン等が形成されている基板Sを例として用いる。ここで、回路パターン等が形成されている主面の側を「表面」と称し、その反対側の回路パターン等が形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板Sの面を「下面」と称し、上方に向けられた基板Sの面を「上面」と称する。尚、以下においては基板Sの表面が上方に向けられた姿勢、つまり当該表面を上面とした姿勢の基板Sに対して処理する場合を例示して説明する。
【0015】
基板処理装置1は、処理ユニット10、移載ユニット30、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、移載ユニット30は、図示しない外部の搬送装置により搬送されてくる未処理基板を受け取って処理ユニット10に搬入し、また処理後の基板を処理ユニット10から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10および移載ユニット30に供給する。
【0016】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0017】
処理ユニット10は、処理チャンバー12を備えている。処理チャンバー12は、それぞれ金属ブロックにより形成された第1部材12a、第2部材12bおよび第3部材12cを備えている。第1部材12aと第2部材12bとが図示しない結合部材により上下方向に結合され、その(+Y)側側面に、図示しない結合部材により第3部材12cが結合されて、内部が空洞となった構造の処理チャンバー12が構成される。この空洞の内部空間が、基板Sに対する処理が実行される内部空間SPとなっている。処理対象の基板Sは内部空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバー12の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口101が形成されており、開口101を介して内部空間SPと外部空間とが連通している。
【0018】
処理チャンバー12の(-Y)側側面には、開口101を閉塞するように蓋部材13が設けられている。蓋部材13の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。なお、支持トレイ15の各実施形態については、後で詳述する。
【0019】
蓋部材13は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。また、蓋部材13は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバー12に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材13をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0020】
蓋部材13が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が内部空間SPから開口101を介して外部へ引き出されると、外部から支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材13が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ15は内部空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに内部空間SPに搬入される。
【0021】
液体の表面張力に起因するパターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させることを主たる目的とする超臨界乾燥処理においては、基板Sは、その上面Saが露出してパターン倒壊が発生するのを防止するために、上面Saが液膜で覆われた状態で搬入される。液膜を構成する液体としては、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の表面張力が比較的低い有機溶剤を好適に用いることができる。
【0022】
蓋部材13が(+Y)方向に移動し開口101を塞ぐことにより、内部空間SPが密閉される。蓋部材13の(+Y)側側面と処理チャンバー12の(-Y)側側面との間にはシール部材16が設けられ、内部空間SPの気密状態が保持される。シール部材16としては、弾性樹脂材料、例えばゴムにより形成された環状のものを用いることができる。また、図示しないロック機構により、蓋部材13は処理チャンバー12に対して固定される。このようにして内部空間SPの気密状態が確保された状態で、内部空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0023】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素が、気体または液体の状態で処理ユニット10に供給される。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0024】
より具体的には、流体供給部57は、基板Sを処理する処理流体として、超臨界状態の流体、または、ガス状もしくは液状で供給され所定の温度・圧力が与えられることで事後的に超臨界状態となる流体を出力する。例えば、ガス状もしくは液状の二酸化炭素が加圧状態で出力される。流体は配管571およびその途中に介挿されたバルブ572,573を介して、処理チャンバー12の(+Y)側側面に設けられた入力ポート102,103に圧送される。すなわち、制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ572,573が開成されることで、流体は流体供給部57から処理チャンバー12へ送られる。
【0025】
入力ポート102,103から内部空間SPに至る流体の流路17は、流体供給部57から供給される処理流体を内部空間SPに導入する導入流路として機能する。具体的には、入力ポート102には、流路171が接続されている。入力ポート102とは反対側の流路171の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間172が設けられている。
【0026】
バッファ空間172と内部空間SPとを接続するように、流路173がさらに設けられている。流路173は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間172とは反対側の流路171の端部は、内部空間SPに臨んで開口する吐出口174となっており、この吐出口174から処理流体が内部空間SP内に導入される。
【0027】
望ましくは、流路173の高さは、支持トレイ15が内部空間SPに収容された状態で、内部空間SPの天井面と基板Sの上面Saとの距離と等しい。そして、吐出口174は、内部空間SPの天井面と支持トレイ15の上面との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路173の天井面と内部空間SPの天井面とが同一平面をなすようにすることができる。このように、吐出口174は、内部空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0028】
支持トレイ15の下方にも同様にして処理流体の流路が形成される。具体的には、入力ポート103には流路175が接続されている。入力ポート103とは反対側の流路175の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間176が設けられている。
【0029】
そして、バッファ空間176と内部空間SPとは流路175を介して連通している。流路175は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間176とは反対側の流路177の端部は、内部空間SPに臨んで開口する吐出口178となっており、この吐出口178から処理流体が内部空間SP内に導入される。
【0030】
望ましくは、流路177の高さは、内部空間SPの底面と支持トレイ15の下面との距離と同等とされる。そして、吐出口178は、内部空間SPの底面と支持トレイ15の下面との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路177の底面と内部空間SPの底面とが同一平面をなすようにすることができる。つまり、吐出口178は、内部空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0031】
Z方向において、流路171の配設位置と流路173の配設位置とが異なっていることが望ましい。両者が同一高さにあるとき、流路171からバッファ空間172に流入した処理流体の一部がそのまま直進して流路173に流入することになる。そうすると、流通方向に直交する流路の幅方向、つまりX方向においては、流路171に対応する位置とそれ以外の位置とで、流路173に流れ込む処理流体の流量や流速に差が生じるおそれがある。このことは、流路173から内部空間SPに流れ込む処理流体の流れにX方向の不均一性を生じさせ、乱流の原因となる。
【0032】
流路171と流路173とをZ方向に異ならせて配置することにより、このような流路171から流路173への処理流体の直進は生じなくなり、幅方向において均一な層流として処理流体を内部空間SPに導入することが可能となる。
【0033】
このように構成された導入流路17から導入される処理流体は、内部空間SP内で支持トレイ15の上面および下面に沿って流れ、以下のように構成される流路18を介してチャンバー外へ排出される。基板Sよりも(-Y)側において、内部空間SPの天井面と支持トレイ15の上面とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の上面および基板Sの上面Saに沿って流れた処理流体を後述の排出流路に導く上側流路181として機能する。すなわち、上側流路181は上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有している。
【0034】
上側流路181の内部空間SPとは反対側の端部はバッファ空間182に接続している。詳しい構造については後述するが、バッファ空間182は、チャンバー100と、蓋部14と、シール部材16とで囲まれた空間である。X方向におけるバッファ空間182の幅は上側流路181の幅と同等またはこれより大きく、Z方向におけるバッファ空間182の高さは上側流路181の高さよりも大きい。したがって、バッファ空間182は上側流路181より大きな流路断面積を有している。
【0035】
バッファ空間182の上部に排出流路183が接続されている。排出流路183はチャンバー100を構成する上部ブロックである第1部材12aを貫通して設けられた貫通孔である。その上端はチャンバー100の上面に開口する出力ポート104を構成し、下端はバッファ空間182に臨んで開口している。
【0036】
同様に、内部空間SPの底面と支持トレイ15の下面とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の下面に沿って流れた処理流体を排出流路に導く下側流路185として機能する。すなわち、下側流路185は上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有している。
【0037】
下側流路185の内部空間SPとは反対側の端部はバッファ空間186に接続している。バッファ空間182と同様、バッファ空間186は、チャンバー100と、蓋部14と、シール部材16とで囲まれた空間である。X方向におけるバッファ空間186の幅は下側流路185の幅と同等またはこれより大きく、Z方向におけるバッファ空間186の高さは下側流路185の高さよりも大きい。したがって、バッファ空間186は下側流路185より大きな流路断面積を有している。
【0038】
バッファ空間186の上部に排出流路187が接続されている。排出流路187はチャンバー100を構成する下部ブロックである第2部材12bを貫通して設けられた貫通孔である。その下端はチャンバー100の下面に開口する出力ポート105を構成し、下端はバッファ空間186に臨んで開口している。
【0039】
内部空間SPにおいて支持トレイ15の上方を流れた処理流体は、上側流路181、バッファ空間182および排出流路183を介して出力ポート104へ送出される。出力ポート104は、配管551によって流体回収部55に接続されており、配管551の途中にはバルブ552が介挿されている。
【0040】
同様に、内部空間SPにおいて支持トレイ15の下方を流れた処理流体は、下側流路185、バッファ空間186および排出流路187を介して出力ポート105へ送出される。出力ポート105は、配管553によって流体回収部55に接続されており、配管553の途中にはバルブ554が介挿されている。
【0041】
バルブ552,554は制御ユニット90により制御されている。制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ552,554が開成すると、内部空間SP内の処理流体が配管551,553を介して流体回収部55に回収される。
【0042】
流体供給部57から入力ポート102へ圧送されてくる処理流体は、流路171を経て比較的大空間であるバッファ空間172に放出される。流体が液体として供給される場合であっても、流路上での圧力損失の変動等に起因して、流路内で気化し膨張することがあり得る。このような急激な膨張が基板Sの近傍で発生すると、基板Sにダメージを与えてしまうおそれがある。
【0043】
これを回避するため、内部空間SPに至る流路171の一部に圧力損失が大きく変動する部分を設けておき、起こり得る気化、膨張はこの部分で起こるようにする。このための空間としてバッファ空間172が設けられている。また、管状の流路171を流通する流体を、内部空間SPに対し薄層状に供給可能とするために整流するマニホールドとしての作用も、バッファ空間172は有している。バッファ空間176の機能も同様である。
【0044】
バッファ空間172から一定の流路断面積を有する流路173を経て、吐出口174から内部空間SPに供給される処理流体は、一定幅および一定厚さを維持した層流として基板Sの上面Saの上方を通過することになる。同様に、バッファ空間176から一定の流路断面積を有する流路177を経て、吐出口178から内部空間SPに供給される処理流体は、一定幅および一定厚さを維持した層流として支持トレイ15の下面に沿って流れる。
【0045】
基板Sの周囲を通過した処理流体は上側流路181、下側流路185を経てさらに下流側へ流れる。ここでも流路の断面形状が概ね同じに維持されているため、層流の状態が保たれる。上側流路181、下側流路185を流れた処理流体はバッファ空間182,186に放出された後、排出流路183,187を経てチャンバー外へ排出される。このように、内部空間SP内での処理流体は一方向、具体的には(-Y)方向に流れる。そのため、基板Sの周囲で処理流体の乱流が発生することは回避されている。
【0046】
開口101から内部空間SPを見ると、処理流体は内部空間SP内で基板Sの(+Y)側(奥側)から(-Y)側(手前側)に向けて、略一様で連続したな層流として流れることになる。内部空間SPの奥側から常に清浄な処理流体が供給されており、基板Sの周囲を通過した処理流体は下流側、つまり開口101側へ流れる。したがって、基板Sから遊離した残存液体成分等は、処理流体とともに開口101まで一方向に押し流されることとなり、基板Sの周囲の乱流により運ばれて基板Sに再付着することは防止される。
【0047】
移載ユニット30は、外部の搬送装置と支持トレイ15との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット30は、本体31と、昇降部材33と、ベース部材35と、それぞれが複数設けられたリフトピン37とを備えている。昇降部材33はZ方向に延びる柱状の部材であり、本体31によりZ方向に移動自在に支持されている。
【0048】
昇降部材33の上部には略水平の上面を有するベース部材35が取り付けられており、ベース部材35の上面から上向きに、複数のリフトピン37が立設されている。リフトピン37の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン37が設けられることが望ましい。
【0049】
昇降部材33は、供給ユニット50に設けられた昇降制御部(図示省略)により制御されて昇降移動可能となっている。具体的には、移載ユニット30の本体31には例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構(図示省略)が設けられており、このような直動機構が昇降制御部に制御されて昇降部材33をZ方向に移動させる。昇降制御部は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0050】
昇降部材33の昇降によりベース部材35が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン37が上下動する。これにより、移載ユニット30と支持トレイ15との間での基板Sの受け渡しが実現される。具体的は以下の通りである。
【0051】
後述するように、支持トレイ15には、移載ユニット30のリフトピン37に対応する貫通孔が設けられている。すなわち、支持トレイ15が処理チャンバー12から引き出されたときに各リフトピン37の真上に対応する位置のそれぞれに、貫通孔が形成されている。昇降部材33の昇降によりベース部材35が上昇すると、リフトピン37は支持トレイ15の貫通孔を通ってその先端が支持トレイ15の上面よりも高い位置まで到達する。この状態で、外部の搬送手段、例えば基板を保持可能なハンドを有する搬送ロボットにより搬送されてきた未処理の基板Sがリフトピン37に受け渡される。
【0052】
基板Sを支持するリフトピン37が下降すると基板Sも下降し、基板Sが支持トレイ15の上面に接触した状態からさらにリフトピン37が下降することで、基板Sはリフトピン37から支持トレイ15に受け渡されて、支持トレイ15により支持された状態となる。このようにして、基板処理装置1への基板Sの搬入が実現される。最終的にリフトピン37は、蓋部材13の開閉動作に干渉しない位置まで下降する。
【0053】
基板処理装置1からの処理済み基板Sの搬出は、上記とは逆の動作により実現される。すなわち、基板Sが支持トレイ15に支持された状態でリフトピン37が上昇し、基板Sを持ち上げる。こうしてできた基板Sの下面と支持トレイ15の上面との間に搬送ロボットのハンドを進入させて、基板Sをリフトピン37から搬送ロボットに受け渡すことができる。
【0054】
以上のように、この基板処理装置1では、基板Sに対する超臨界乾燥処理が行われる。この処理の一連の流れは以下の通りである。まず、上面Saが液膜で覆われた基板Sが外部から搬入され、支持トレイ15に載置される。支持トレイ15が処理チャンバー12の内部空間SPに進入することで、基板Sが内部空間SPに収容される(収容工程)。そして、蓋部材13により内部空間SPが閉塞された状態で、流体供給部57から気体または液体状の処理流体が内部空間SPに供給される(供給工程)。処理流体は、支持トレイ15に支持された基板Sの上面Saに沿って(+Y)方向側から(-Y)方向側に流れる。この層流状態の処理流体が内部空間SPで加圧されて超臨界状態となり、これにより基板S上の液体が超臨界処理流体により置換される。流体供給部57からの処理流体の供給および流体回収部55による排出を一定期間継続することで、基板Sから離脱した液体は排出される(排出工程)。最終的に、処理流体が超臨界状態から液相を介さずに気相に相転移し排出されることで、基板Sは乾燥状態となる。
【0055】
次に、上記した基板処理装置1における支持トレイ15のいくつかの実施形態(支持トレイ15A~15E)について説明する。各実施形態の間では支持トレイ15の構造が部分的に異なっているが、その他の点では共通しており、その動作も上記した通りのものである。なお、以下の各実施形態の説明において、構造や機能が共通または類似する構成については共通のまたは対応する符号を付し、それらについては説明を繰り返さないこととする。また、複数の図面間で相互に対応関係が明らかな構成については、一部の図面における符号の記載を省略することがある。
【0056】
<第1実施形態>
図2Aは支持トレイの第1実施形態を示す斜視図である。
図2Bは
図2Aに示す支持トレイの平面図である。同図は、支持トレイに設けられた貫通孔および切欠部を介して液体が排出される様子を模式的に示す部分拡大図を含んでいる。
図2Cは
図2BのC-C線断面図である。なお、
図2Bおよび
図2C(後で説明する
図3、
図4C、
図5)において、残液を示す目的でドットを参考的に付している。第1実施形態の支持トレイ15Aは、トレイ部材151と、複数の支持ピン152とを有している。トレイ部材151は、例えば平板状の構造体の水平かつ平坦な上面に、基板Sの平面サイズに対応した、より具体的には円形の基板Sの直径より僅かに大きい直径を有する窪み153を設けた構造を有している。窪み153の底面153aは水平面となっており、本発明の「基板対向面」の一例に相当している。この底面153aのうち外周領域の全周が中央領域よりもさらに窪んでおり、これによって溝153eが形成されている。
【0057】
窪み153は部分的にトレイ部材151の側面154(
図2A)まで延びている。つまり、窪み153の側壁面は円形ではなく、部分的に切り欠かれている。より具体的には、この切り欠き部分(以下「切欠部153b」という)は、上記溝153eの側面を切り欠いて直接側面154に接続している。この例では、支持トレイ15AのX側両端部および(+Y)側端部にこのような切欠部153bが設けられており、これらの切欠部153bにおいて、溝153eが支持トレイ15Aの外部と連通している。このため、後述するようにして溝153eに捕集された液体L(より詳しくは後で説明する残液La)が切欠部153bを介して支持トレイ15Aの外側に排出可能となっている。このように切欠部153bは、本発明の「排出部」として機能する。
【0058】
また、切欠部153bを設けたことで、トレイ部材151において、3つの立設部位155~157が存在している。なお、トレイ部材151は平板状のベースプレートであり、立設部位155~157は、トレイ部材(ベースプレート)151上に設置または一体的に形成された平板状のプレートであるが、その詳しい構造および機能については、後で詳述する。
【0059】
また、底面153aのうち移載ユニット30のリフトピン37に対応する位置には、リフトピン37を挿通させるための貫通孔158が穿設されている。貫通孔158を通ってリフトピン37が昇降することで、基板Sが窪み153に収容された状態と、これより上方へ持ち上げられた状態とが実現される。また、本実施形態では、4つの貫通孔158はいずれも底面153aの外周領域に相当する溝153eに配置されている。このため、
図2Bの部分拡大図に示すように、溝153eに捕集された液体L(より詳しくは後で説明する残液La)は貫通孔158を介して支持トレイ15Aの下方に排出可能となっている。このように貫通孔158は、本発明の「第2貫通孔」の一例に相当し、リフトピン37を昇降させる機能以外に、本発明の「排出部」としても機能する。
【0060】
また、本実施形態では、上記したリフトピン37用の貫通孔158以外に、
図2Bに示すように、溝153eの底面から下方に貫通する貫通孔153dが設けられている。このため、溝153eに捕集された液体L(より詳しくは後で説明する残液La)は貫通孔153dを介して支持トレイ15Aの下方に排出可能となっている。このように本発明の「排出部」として専門的に機能する貫通孔153dは、本発明の「第1貫通孔」の一例に相当している。
【0061】
窪み153の周縁部には複数の支持ピン152が配置されている。支持ピン152の配設数は任意であるが、基板Sを安定的に支持するという点からは3以上であることが望ましい。本実施形態では、3つの支持ピン152が、上方からの平面視で底面153aを取り囲むように、それぞれ立設部位155~157に取り付けられている。
図2A中の部分拡大図に示すように、支持ピン152は高さ規制部位152aと水平位置規制部位152bとを有している。
【0062】
高さ規制部位152aは、上面が平坦となっており、基板Sの下面Sbの周縁部に当接することで、基板Sを支持するとともにその上下方向Zにおける位置(以下「高さ位置」という)を規制する。一方、水平位置規制部位152bは、高さ規制部位152aの上端よりも上方まで延びており、基板Sの側面に当接することで、基板Sの水平方向(XY方向)における位置を規制する。このような支持ピン152により、
図2Cに示すように、基板Sは窪み153の底面153aと対向しながら底面153aから上方に離間した水平姿勢で支持される。
【0063】
こうして支持された基板Sの上面Saおよび下面Sbは、
図2Cに示すように、それぞれ上下方向Zにおいて高さ位置H1、H2に位置している。また、当該基板Sの下面Sbの直下位置に底面153aの中央領域が位置するとともに、上下方向Zにおいて中央領域の高さ位置(
図5中の符号H4)よりもさらに低い位置H5に溝153eの底面が位置している。ここで、基板Sと溝153eとの隙間GP0の大きさ、つまり基板Sの下面Sbから溝153eの底面までの距離については任意であるが、本実施形態では3.5mmに設定している。
【0064】
次に、立設部位155~157の構成および機能について、
図2Aないし
図2Cを参照しつつ説明する。ここで、立設部位155~157の位置関係を明確にするため、
図2Bに示すように、本明細書では、第1仮想線VL1および第2仮想線VL2を定義する。すなわち、第1仮想線VL1は、底面153aの中心153cを通過するとともに処理液の層流の流れ方向Yと直交する水平方向Xに延びる線を意味する。第2仮想線VL2は、底面153aの中心153cを通過するとともに流れ方向Yと平行に延びる線を意味する。
【0065】
立設部位155、156は、第1仮想線VL1に対し、ともに内部空間SPの(+Y)方向側に位置するとともに、第2仮想線VL2に対し、それぞれ(+X)方向側および(-X)方向側に振り分けられている。また、上下方向Zにおいて、それらの上面155a、156aがともに支持ピン152により支持された基板Sの上面Saの高さ位置H1と一致するように、立設部位155、156は当該基板Sの周面に近接して設けられている。このため、立設部位155、156の上面155a、156aを経由して基板Sの上面Saに処理流体が流れたとき、処理流体により形成される層流において乱れが発生することなく、基板S上の液体Lが超臨界処理流体により効率よく置換される。なお、本明細書では、処理流体の流れ方向Yにおいて、第1仮想線VL1に対して内部空間SPの(+Y)方向側および(-Y)方向側をそれぞれ「上流」および「下流」と称する。
【0066】
立設部位157は、第1仮想線VL1に対し、内部空間SPの(-Y)方向側、つまり下流側で、立設部位155、156と同様に、その上面157aが基板Sの上面Saの高さ位置H1と一致するように、当該基板Sの周面に近接して設けられている。このため、基板Sの上面Saを通過してきた処理流体および液体Lは立設部位157の上面157aを経由して排出される。ただし、既述の通り、液体Lの一部が基板Sの下面Sbと窪み153の底面153aとの間の狭い隙間に入り込んでしまうことがある。しかしながら、本実施形態では、支持トレイ15Aが、溝153eと、排出部(=切欠部153b、貫通孔153d、158)とを有しているため、次のような作用効果が得られる。ここでは、従来技術のように、溝および排出部を有さない構成を従来例として
図3に示すとともに、従来例と比較しながら作用効果について説明する。
【0067】
図3は従来技術における支持トレイの構造を模式的に示す図である。
図3に示す従来技術は、支持トレイ15に対し、第1実施形態の溝153eおよび排出部に相当する構成を有さない点を除き、第1実施形態と同様の構成を有している。特に、立設部位157が、支持ピン152により支持された基板Sの上面Saの高さ位置H1と一致するように、当該基板Sの周面に近接して設けられている。このため、基板Sと下流側の立設部位157との隙間GP1から残液Laが侵入し、基板Sの下面Sbと支持トレイ15の底面153aとの間の狭いギャップに入り込んで残留しやすい。そして、当該残液Laが逆流すると、残液Laの一部が基板Sの上面Saに再付着することがあった。
【0068】
これに対し、第1実施形態では、
図2Aないし
図2Cに示すように、基板Sと下流側の立設部位157との隙間GP1から残液Laが侵入してくるが、当該残液Laは溝153eに捕集される。そして、
図2B中の点線矢印および
図2C中の実線矢印で示すように、溝153e内を流動しながら排出部として機能する貫通孔153d、158および切欠部153bからそれぞれ内部空間SPに排出される。このため、基板Sの下面Sbと支持トレイ15の底面153aとの間に残留する残液Laの量は従来技術に比べ、大幅に削減され、基板Sへの残液Laの逆流が効果的に防止される。その結果、基板処理装置1により基板Sを良好に乾燥することができる。
【0069】
また、本実施形態では、3種類の排出部が設けられているが、排出部の種類や個数については任意であるが、切欠部153bを3個、貫通孔153dを3個、貫通孔158を4個、それぞれ設けているため、溝153eから残液Laを効率よく排出することができる。しかも、それらの排出部を第2仮想線VL2に対して対称に設けているため、
図2Aおよび
図2Bに示すように、上方からの平面視で環状形状を有している溝153e内を流動する残液Laがバランス良く排出される。このため、溝153e内に残液Laが滞留するのを効果的に防止することができる。
【0070】
このように第1実施形態では、支持ピン152が本発明の「支持部材」の一例に相当している。また、内部空間SPの(+Y)方向側および(-Y)方向側が、それぞれ本発明の「内部空間の一方端側」および「内部空間の他方端側」に相当している。立設部位155、156が本発明の「上流側立設部位」の一例に相当する一方、立設部位157が本発明の「下流側立設部位」の一例に相当している。
【0071】
<第2実施形態>
図4Aは支持トレイの第2実施形態を示す斜視図である。
図4Bは
図4Aに示す支持トレイの平面図である。同図は、貫通孔158の近傍構成および貫通孔158を介して液体が排出される様子を模式的に示す部分拡大図を含んでいる。
図4Cは
図4BのC-C線断面図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、溝153eに第1ブロック部159aを追加配置したことであり、その他の構成は第1実施形態と基本的に同一である。
【0072】
第1ブロック部159aは、支持トレイ15Bの一構成要素であり、溝153eに沿って貫通孔153d、158の中心を繋いだ仮想円(図示省略)上に配置されている。つまり、互いに隣り合う貫通孔153d、158の間および互いに隣り合う貫通孔158、158の間で、第1ブロック部159aは溝153eの底面から上方に突出して設けられている。
図4Cに示すように、各第1ブロック部159aは、その上端が支持ピン152により支持された基板Sの下面Sbの近傍に位置するように、溝153eの底面から立設されている。ただし、本実施形態では、第1ブロック部159aは、上下方向Zにおいて、その上端の高さH3(
図5参照)が底面153aの中央領域よりも高くなるように、設けられている。このため、溝153eの内部は、
図4Cに示すように、第1ブロック部159aにより2つのエリアに仕切られている。1つ目のエリアは、基板Sの径方向において第1ブロック部159aよりも外側に位置しており、基板Sと立設部位155~157との隙間GP1を臨む主捕集ゾーンZN1である。また、2つ目のエリアは、基板Sの径方向において第1ブロック部159aよりも内側に位置しており、基板Sと第1ブロック部159aの上端との隙間GP2を臨む副捕集ゾーンZN2である。つまり、主捕集ゾーンZN1は隙間GP1と繋がっている。このため、隙間GP1から侵入してきた液体の大部分は第1ブロック部159aにより主捕集ゾーンZN1に案内され、捕集される。この捕集を確実なものとするため、上下方向Zにおいて窪み153の底面153a(基板対向面)よりも高く、しかも基板Sの下面Sbに近接させるのが望ましく、本実施形態では、支持ピン152により支持された基板Sの下面Sbから第1ブロック部159aの上端までの距離D1(
図4C参照)が1.5mmに設定されている。
【0073】
また、隙間GP2をすり抜けて侵入してきた液体については、副捕集ゾーンZN2に案内され、捕集される。このように2段階で残液Laを捕集しており、主捕集ゾーンZN1および副捕集ゾーンZN2により捕集された残液Laは、第1実施形態と同様に、溝153e内を流動して排出部(=切欠部153b、貫通孔153d、158)からそれぞれ内部空間SPに排出される。
【0074】
このように構成された第2実施形態によれば、隙間GP1から侵入してきた液体を効率的に捕集し、排出部を介して排出することができる。また、第1ブロック部159aにより残液Laが底面153aの中央領域に侵入するのを確実に防止することができる。したがって、基板Sの下面Sbと支持トレイ15の底面153aとの間に残留する残液Laの量を第1実施形態よりも低減させることができる。その結果、残液Laの逆流防止効果を第1実施形態よりも高め、基板処理装置1により基板Sを良好に乾燥することができる。
【0075】
また、隙間GP2をすり抜けてくる液体の多くは、基板Sの下面Sbを伝わって移動してくる。したがって、上下方向Zにおいて第1ブロック部159aの上端が支持トレイ15の底面153aの中央領域よりも低く設定すると、副捕集ゾーンZN2に捕集されず、支持トレイ15の底面153aと基板Sの下面との間に入り込んでしまう可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、その上端の高さ位置(
図5中の符号H3)が支持トレイ15の底面153aの高さ位置(
図5中の符号H4)となるように、第1ブロック部159aの突設量(=H3-H5)が設定されている。この点については、次に説明する第2ブロック部についても同様である。
【0076】
<第3実施形態>
上記第2実施形態では、溝153eの内部を主捕集ゾーンZN1および副捕集ゾーンZN2に区画しているが、副捕集ゾーンZN2に1または複数個のブロック部を追加して副捕集ゾーンZN2をさらに複数のゾーンに区画してもよい。例えば
図5に示す第3実施形態では、副捕集ゾーンZN2に第2ブロック部159bが1個追加配置されている。
【0077】
図5は支持トレイの第3実施形態を示す斜視図である。第2ブロック部159bは、基板Sの径方向において第1ブロック部159aよりも内側に配置されている。第2ブロック部159bは、互いに隣り合う貫通孔153d、158の間および互いに隣り合う貫通孔158、158の間で、第1ブロック部159aと同様に、溝153eの底面から上方に突出して設けられている。このため、同図中の部分拡大図に示すように、各第2ブロック部159bも、その上端が支持ピン152により支持された基板Sの下面Sbの近傍に位置するように、溝153eの底面から立設されている。このため、副捕集ゾーンZN2の内部は、第2ブロック部159bにより2つのエリア、つまり、
・第1副捕集ゾーンZN2a…基板Sの径方向において第1ブロック部159aと第2ブロック部159bとの間に位置しており、隙間GP2をすり抜けて侵入してきた液体を捕集するためのエリア、
・第2副捕集ゾーンZN2b…基板Sの径方向において第2ブロック部159bの内側に位置しており、基板Sの下面Sbと第2ブロック部159bの上端との隙間GP3をすり抜けて侵入してきた液体を捕集するためのエリア、
に区画されている。このように主捕集ゾーンZN1で捕集し切れなかった残液Laを確実に捕集することが可能となる。
【0078】
<第4実施形態>
図6は支持トレイの第4実施形態を示す斜視図である。この第4実施形態が第1実施形態と相違する点は、立設部位157の上面157aの形状である。つまり、第1実施形態の支持トレイ15Aでは、上面157aはいずれの領域も高さ位置H1を有する単一の水平面である。これに対し、第4実施形態の支持トレイ15Dでは、上面157aは傾斜面で構成されている。この傾斜面は、第1実施形態と同様に基板Sと隣接する隣接領域で高さ位置H1であるものの、処理流体の流れ方向Y、つまり(+Y)方向側から(-Y)方向側に進むにしたがって低くなっている。しかも、上記第2仮想線VL2に対して第1仮想線VL1の(+X)方向側および(-X)方向側をそれぞれ左側および右側としたとき、立設部位157の上面157aは、第2仮想線VL2から左側に進むにしたがって低くなる左側傾斜領域157a1と、第2仮想線VL2から右側に進むにしたがって低くなる右側傾斜領域157a2と、を有している。このため、基板Sの上面Saを通過してきた処理流体はもちろんのこと、逆流してきた残液Laを、
図6中の2点鎖線で示すように、左右に振り分けながら支持トレイ15の(+X)側端面および(-X)側端面から効率的に排出することができる。その結果、第1実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。
【0079】
<第5実施形態>
図7は支持トレイの第5実施形態を示す斜視図である。第5実施形態の支持トレイ15Eは、第4実施形態の支持トレイ15Dに対し、下流側貫通孔157bを追加したものである。この第5実施形態の支持トレイ15Dでは、
図7に示すように、左側傾斜領域157a1のうち(+X)方向側でかつ(-Y)方向側に位置する部位(以下「左側低位部位」という)が上下方向Zにおいて最も低くなっており、当該部位に左側貫通孔157bが設けられている。また、右側傾斜領域157a2のうち(-X)方向側でかつ(-Y)方向側に位置する部位(以下「右側低位部位」という)が上下方向Zにおいて最も低くなっており、当該部位に右側貫通孔157bが設けられている。隣接領域Rに流れてきた処理流体および残液Laは立設部位157の上面157aに沿って左側低位部位および右側低位部位に集められた後、貫通孔157b、157bを介して支持トレイ15の下方に排出される。その結果、第4実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。
【0080】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、第4実施形態で採用した傾斜面構造については、第1実施形態ないし第3実施形態に追加適用してもよい。また、第5実施形態で採用した貫通孔157bについても、第1実施形態ないし第3実施形態に追加適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、底面153aの外周領域全周に溝153eを形成しているが、液体Lの侵入が問題となる領域、例えば立設部位157に近接する領域や第1仮想線VL1よりも下流側に位置する領域においてのみ、連続した溝を設けてもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、支持ピン152により、基板Sを支持トレイ15の底面153aから離間させた状態で支持している。しかしながら、支持ピン152の設置に代えて、底面153aに突起部を設けて基板を支持するようにしてもよい。この場合、当該突起部が本発明の「支持部材」に該当することとなる。
【0083】
また、上記実施形態では、支持トレイ15にリフトピン37を挿通させるための貫通孔158が溝153eの底面に設けられているが、溝153eを外してリフトピン昇降用の貫通孔158を設けてもよい。また、このようなリフトピン昇降用の貫通孔を設けない基板処理装置に対して本発明を適用してもよい。これらの基板処理装置では、リフトピン昇降用の貫通孔は本発明の「排出部」として機能しないため、貫通孔153dおよび/または切欠部153bを設けることが必須となる。
【0084】
また、上記実施形態における各種の化学物質、例えばIPAおよび二酸化炭素は、使用され得る物質の代表的な事例として挙げたものであり、本発明の適用対象がこれらの物質を使用した技術に限定されることを意味するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明は、表面に液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…基板処理装置
12…処理チャンバー
15,15A,15B,15C,15D,15E…支持トレイ
37…リフトピン
57…流体供給部
151…トレイ部材
152…支持ピン(支持部材)
153a…(支持トレイの)底面(基板対向面)
153b…切欠部(排出部)
153c…(底面の)中心
153d、158…貫通孔(排出部)
155,156…(上流側)立設部位
157…(下流側)立設部位
157a…(下流側立設部位)の上面
159a…第1ブロック部
159b…第2ブロック部
GP1…(基板と下流側立設部位との)隙間
GP2…(基板と第1ブロック部の上端との)隙間
GP3…(基板と第2ブロック部の上端との隙間
H1…(基板の上面の)高さ位置
H2…(基板の下面の)高さ位置
H3…(第1ブロック部、第2ブロック部の)高さ位置
H4…(基板対向面の)高さ位置
L…液体
La…残液
S…基板
Sa…(基板の)上面
Sb…(基板の)下面
SP…内部空間
VL1…第1仮想線
VL2…第2仮想線
X…水平方向
Y…流れ方向
Z…上下方向
ZN1…主捕集ゾーン
ZN2、ZN2a、ZN2b…副捕集ゾーン