(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078817
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 17/22 20060101AFI20240604BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240604BHJP
H02P 6/182 20160101ALI20240604BHJP
H02K 7/102 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B60T17/22 C
B60T13/74 G
H02P6/182
H02K7/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191383
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】前野 良汰
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
5H560
5H607
【Fターム(参考)】
3D048BB02
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH58
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048HH79
3D048RR11
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3D049BB02
3D049HH45
3D049HH47
3D049HH48
3D049HH51
3D049HH54
3D049RR05
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3D049RR10
3D049RR11
3D049RR13
5H560BB04
5H560BB07
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5H560DA00
5H560DC13
5H560EB01
5H560SS02
5H560UA06
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE31
5H607EE52
5H607HH01
(57)【要約】
【課題】戻し機構が正常に作動するか否かの判断材料として押圧力センサや回転角センサの検出値を用いることなく、戻し機構が正常に作動するか否かを判定できる電動制動装置を提供すること。
【解決手段】電動制動装置10は、電気モータ26の回転運動を直線運動に変換してピストン42に入力すると、ブレーキディスク22に対してブレーキパッド23,24がピストン42によって押し付けられることにより、電気モータ26の回転角に応じた制動力を車輪100に発生させるように構成されている。電動制動装置10は、ブレーキパッド23,24をブレーキディスク22から離す方向に作用する戻し力をピストン42に付与する戻し機構50と、電気モータ26への通電が停止された後に電気モータ26で発生した逆起電力に基づいて、戻し機構50が正常に作動しているか否かを判定する処理回路90とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転運動を直線運動に変換して車両の車輪と一体に回転する回転体に対して摩擦部材がピストンによって押し付けられることにより、前記電気モータの回転角に応じた制動力を前記車輪に発生させるように構成された電動制動装置であって、
前記摩擦部材を前記回転体から離す方向に作用する戻し力を前記ピストンに付与する戻し機構と、
前記電気モータへの通電が停止された後に当該電気モータで発生した逆起電力に基づいて、前記戻し機構が正常に作動しているか否かを判定する判定部と、を備える
電動制動装置。
【請求項2】
前記電気モータへの給電を調整する駆動回路と、
前記駆動回路に印加される電圧を検出する電圧検出部と、を備え、
前記判定部は、前記電気モータへの通電が停止された後に前記電圧検出部が検出する電圧の変化に基づいて、前記電気モータで逆起電力が発生したか否かを判定する
請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記電気モータへの給電を調整する駆動回路と、
前記駆動回路に流れる電流を検出する電流検出部と、を備え、
前記判定部は、前記電気モータへの通電が停止された後に前記電流検出部が検出する電流の変化に基づいて、前記電気モータで逆起電力が発生したか否かを判定する
請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記駆動回路は、複数のスイッチング素子を有しており、
前記複数のスイッチング素子を作動させることによって前記電気モータを駆動させるモータ制御部を備え、
前記モータ制御部は、前記電気モータへの通電を停止し、且つ前記複数のスイッチング素子のうちの一部のスイッチング素子を操作することによって、当該一部のスイッチング素子と前記電気モータのコイルとを含む閉回路を形成する判定準備処理を実行し、
前記電流検出部は、前記閉回路を流れる電流を検出するようになっており、
前記判定部は、前記判定準備処理によって前記閉回路が前記駆動回路に形成された状態で、前記電気モータで逆起電力が発生したか否かの判定を行う
請求項3に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の電動制動装置の一例を開示している。当該電動制動装置は、電気モータの回転運動を直線運動に変換してピストンに入力すると、車輪と一体に回転する回転体に対して摩擦部材がピストンによって押し付けられることにより、電気モータの回転角に応じた制動力を車輪に発生させる。当該電動制動装置は、回転体に摩擦部材を押し付ける力である押圧力を検出する押圧力センサと、電気モータの回転角を検出する回転角センサと、戻し機構とを備えている。戻し機構は、電気モータへの通電が停止した場合に摩擦部材を回転体から離間させるべく作動する機構である。
【0003】
当該電動制動装置のコントローラは、戻し機構が正常に作動するか否かを判定する処理を実行する。具体的には、コントローラは、電気モータへの通電を停止した後における、上記押圧力の変化又は電気モータの回転角の変化に基づいて、戻し機構が正常に作動するか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、戻し機構が正常に作動するか否かの判断材料として押圧力センサや回転角センサの検出値を用いることなく、戻し機構が正常に作動するか否かを判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電動制動装置は、電気モータの回転運動を直線運動に変換して車両の車輪と一体に回転する回転体に対して摩擦部材がピストンによって押し付けられることにより、前記電気モータの回転角に応じた制動力を前記車輪に発生させるように構成されている。当該電動制動装置は、前記摩擦部材を前記回転体から離す方向に作用する戻し力を前記ピストンに付与する戻し機構と、前記電気モータへの通電が停止された後に当該電気モータで発生した逆起電力に基づいて、前記戻し機構が正常に作動しているか否かを判定する判定部と、を備えている。
【0007】
戻し機構が正常に作動する場合、電気モータへの通電が停止されると、戻し機構によって、摩擦部材を回転体から離す方向にピストンが移動させられる。このようにピストンが移動すると、電気モータの出力軸が回転するため、当該電気モータで逆起電力が発生する。
【0008】
上記電動制動装置では、電気モータへの通電が停止された後に電気モータで発生した逆起電力に基づいて、戻し機構が正常に作動しているか否かが判定される。したがって、上記電動制動装置は、戻し機構が正常に作動するか否かの判断材料として押圧力センサや回転角センサの検出値を用いることなく、戻し機構が正常に作動するか否かを判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電動制動装置の概略を示す構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電動制動装置の戻し機構を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の電動制動装置において、電気モータと、同電気モータの駆動回路と、処理回路とを示す構成図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の電動制動装置で実行される一連の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態の電動制動装置において、電気モータへの通電を停止した場合におけるタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の電動制動装置において、制御装置の概略を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の電動制動装置で実行される一連の処理の流れの一部分を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2実施形態の電動制動装置において、電気モータへの通電を停止した場合におけるタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、車両に設けられる電動制動装置の第1実施形態を
図1から
図5に従って説明する。
【0011】
図1に示すように、電動制動装置10は、車輪100に対して設けられている制動アクチュエータ20と、制動アクチュエータ20を制御する制御装置80とを備えている。例えば車両の運転者がブレーキペダル101を操作している場合、制御装置80は、制動アクチュエータ20を作動させることによって車輪100に制動力を発生させる。
【0012】
<制動アクチュエータ>
図1に示す制動アクチュエータ20は、ディスク型の制動アクチュエータである。制動アクチュエータ20は、車両の車体に支持されているブレーキキャリパ21と、車輪100と一体に回転するブレーキディスク22と、2つのブレーキパッド23,24とを備えている。ブレーキディスク22が「回転体」に相当し、ブレーキパッド23,24が「摩擦部材」に相当する。ブレーキキャリパ21は、2つのブレーキパッド23,24の間にブレーキディスク22が位置するように、2つのブレーキパッド23,24を支持している。2つのブレーキパッド23,24は、ブレーキディスク22に相対的に接近したり、ブレーキディスク22から相対的に離間したりできるようにブレーキキャリパ21にそれぞれ支持されている。
【0013】
制動アクチュエータ20は、電気モータ26と伝達機構30とを備えている。電気モータ26は、出力軸27と、3つのコイル28u,28v,28w(
図3参照)とを有している。複数のコイル28u,28v,28wへの通電を制御することにより、出力軸27が回転する。出力軸27の回転方向のうち、車輪100に制動力を発生させる際の回転方向を「正転方向」といい、正転方向の反対方向を「逆転方向」という。逆転方向は、制動力を減少させる際の出力軸27の回転方向であるとも云える。
【0014】
伝達機構30は、電気モータ26の回転運動を直線運動に変換して出力する。具体的には、伝達機構30は、減速機構31と直動変換機構40とを有している。減速機構31は、電気モータ26の回転運動を減速して直動変換機構40に出力する。例えば、減速機構31は、複数のギヤと出力シャフト34とを有している。複数のギヤのうち、第1ギヤ32は、電気モータ26の出力軸27と一体に回転できるように出力軸27に取り付けられている。複数のギヤのうち、第2ギヤ33は、第1ギヤ32と噛み合うとともに、出力シャフト34と一体に回転できるように出力シャフト34に支持されている。
【0015】
直動変換機構40は、出力シャフト34から入力された回転運動を直線運動に変換する。例えば、直動変換機構40はネジ機構である。直動変換機構40は回転部材と直動部材とを有している。
図1に示す例では、回転部材は出力シャフト34と一体に回転する螺子部材41である。螺子部材41の周面には雄ねじ加工が施されている。すなわち、螺子部材41の周面が雄ねじ部として機能する。一方、直動部材は、内部に螺子部材41が収容されたピストン42である。ピストン42の内周面には雌ねじ加工が施されている。すなわち、ピストン42の内周面が雌ねじ部として機能する。そのため、ピストン42には、螺子部材41の回転運動が直線運動に変換されて入力される。
【0016】
なお、直動変換機構40には、ピストン42が回転することを規制する規制部が設けられている。そのため、螺子部材41の回転に連動してピストン42が直線移動する。
図1に示すように、ピストン42は、2つのブレーキパッド23,24のうち、一方のブレーキパッド23を支持している。そのため、電気モータ26の駆動によって出力軸27が正転方向に回転すると、電気モータ26の回転運動が直線運動に変換されてピストン42に入力される。これにより、ブレーキパッド23をブレーキディスク22に接近させる方向にピストン42が移動する。すると、ブレーキパッド23,24をブレーキディスク22に押し付ける力である押圧力が大きくなる。その結果、車輪100に発生させる制動力が大きくなる。一方、電気モータ26の駆動によって出力軸27が逆転方向に回転すると、ブレーキパッド23をブレーキディスク22から離間させる方向にピストン42が移動する。これにより、ブレーキパッド23,24をブレーキディスク22に押し付ける押圧力が小さくなる。その結果、車輪に発生させる制動力が小さくなる。つまり、制動アクチュエータ20は、電気モータ26の回転角に応じた制動力を車輪100に発生させることができる。
【0017】
制動アクチュエータ20は、ブレーキパッド23をブレーキディスク22から離す方向に作用する戻し力を電気モータ26の出力軸27に付与する戻し機構50を備えている。制動アクチュエータ20では、出力軸27の回転に連動してピストン42が直線移動するようになっている。そのため、戻し機構50は、上記戻し力をピストン42に付与するとも云える。
【0018】
戻し機構50は、出力軸27が正転方向に回転するように電気モータ26が駆動する場合に弾性エネルギを蓄積する。一方、ブレーキパッド23,24がブレーキディスク22に押し付けられている状況下で出力軸27が逆転方向に回転するように電気モータ26が駆動する場合、戻し機構50は、弾性エネルギを徐々に解放することによって、弾性エネルギに応じた大きさの戻し力を出力軸27に付与する。これにより、戻し機構50は、出力軸27の逆転方向への回転、及びブレーキパッド23,24をブレーキディスク22から離すことをアシストする。また、ブレーキパッド23,24がブレーキディスク22に押し付けられている状況下で電気モータ26への通電が停止された場合、戻し機構50は、そのときに蓄積していた弾性エネルギに応じた大きさの戻し力を出力軸27に付与することにより、出力軸27を逆転方向に回転させるとともに、ブレーキパッド23,24をブレーキディスク22から離間させる。
【0019】
図2を参照し、戻し機構50の構成について説明する。
図2に白抜き矢印で示す回転方向は、電気モータ26の出力軸27の正転方向に準じた方向である。
戻し機構50は、ハウジング51と回転軸53と渦巻きばね55とを備えている。ハウジング51はブレーキキャリパ21に固定されている。ハウジング51は円筒部51aを有している。円筒部51aの内側の空間に、回転軸53及び渦巻きばね55が配置されている。円筒部51aには、渦巻きばね55の第1端部56を保持する保持部51bが設けられている。回転軸53は、電気モータ26の出力軸27に連結されているとともに、出力軸27と一体に回転する。回転軸53には係止部53aが形成されている。この係止部53aに渦巻きばね55の第2端部57が係止されている。
【0020】
電気モータ26の出力軸27が正転方向に回転すると、正転方向に準じた方向に回転軸53が回転する。こうした回転軸53の回転によって、渦巻きばね55が回転軸53に巻き取られる。これにより、渦巻きばね55が弾性変形するため、戻し機構50の弾性エネルギの蓄積量が多くなる。一方、電気モータ26の出力軸27が逆転方向に回転すると、逆転方向に準じた方向に回転軸53が回転する。すると、回転軸53に巻き取られていた渦巻きばね55の量が少なくなるため、渦巻きばね55の弾性変形の度合いが小さくなる。その結果、戻し機構50の弾性エネルギの蓄積量が少なくなる。
【0021】
<電動制動装置の検出系>
図1に示すように、電動制動装置10の検出系は、検出結果に応じた信号を制御装置80に出力する複数種類のセンサを有している。複数種類のセンサは、回転角センサ71とブレーキセンサ72とを含んでいる。回転角センサ71は、電気モータ26の出力軸27の回転角を検出する。ブレーキセンサ72は、運転者のブレーキペダル101の操作に関する情報を検出する。ブレーキペダル101の操作に関する情報は、運転者によるブレーキペダル101の操作量、及び、運転者によってブレーキペダル101に入力された操作力の少なくとも一方を含んでいる。以降の記載では、回転角センサ71の検出値に基づいた出力軸27の回転角を「モータ回転角θmt」という。
【0022】
<制御装置>
制御装置80は、電気モータ26への給電を調整する駆動回路81と、駆動回路81を制御することによって電気モータ26を作動させる処理回路90とを備えている。
【0023】
<駆動回路>
図3を参照し、駆動回路81について説明する。駆動回路81は、モータ電源200から出力された直流電圧を交流電圧に変換して電気モータ26の複数のコイル28u,28v,28wに入力させる。駆動回路81は、複数のスイッチング素子を有している。すなわち、駆動回路81では、電気モータ26の1つのコイルに対して2つのスイッチング素子が設けられている。当該2つのスイッチング素子のうち、一方を「第1スイッチング素子82a」とし、他方を「第2スイッチング素子82b」とする。
図3に示す電気モータ26のコイル数は3つであるため、駆動回路81は、3つの第1スイッチング素子82aと3つの第2スイッチング素子82bとを有していることになる。
【0024】
スイッチング素子82a,82bとして、パワーMOSFETを採用している。しかし、オン・オフの切り替えを速やかに行うことができる素子であれば、例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のようにパワーMOSFET以外の他の素子を、スイッチング素子82a,82bとして採用してもよい。
【0025】
なお、複数のスイッチング素子82a,82bは、
図3に示すような寄生ダイオード83をそれぞれ有している。
駆動回路81は、電力線として、モータ電源200の陽極に接続されている第1電力線85と、モータ電源200の陰極に接続されている第2電力線86と、電気モータ26のコイル数と同数のアーム87u,87v,87wとを有している。アーム87u,87v,87wは、第1電力線85と第2電力線86とを繋ぐ電力線である。複数のアーム87u,87v,87wのうち、アーム87uにU相のコイル28uが接続されている。アーム87vにV相のコイル28vが接続されている。アーム87wにW相のコイル28wが接続されている。アーム87u,87v,87wにおいて、コイル28u,28v,28wとの接続点と第1電力線85との間の部分に第1スイッチング素子82aが配置されている一方、当該接続点と第2電力線86との間の部分に第2スイッチング素子82bが配置されている。
【0026】
駆動回路81は、電圧センサ88と電流センサ89とを有している。電圧センサ88は、第1電力線85の電圧を検出し、その検出結果に応じた信号を処理回路90に出力する。電流センサ89は、アーム87uにおける第2スイッチング素子82bと第2電力線86との間の部分を流れる電流を検出し、その検出結果に応じた信号を処理回路90に出力する。なお、以降において、電圧センサ88の検出値に基づいた電圧を「モータ電圧Vmt」という。電流センサ89の検出値に基づいた電流を示す値を「モータ電流Imt」という。
【0027】
<処理回路>
図1を参照し、処理回路90について説明する。処理回路90の一例は電子制御装置である。この場合、処理回路90は実行部91とメモリ92とを有している。例えば、実行部91はCPUである。メモリ92は、実行部91によって実行される制御プログラムを記憶している。
【0028】
処理回路90は、実行部91が制御プログラムを実行することにより、モータ制御部M11と、電圧検出部M12と、判定部M13として機能する。
モータ制御部M11は、電気モータ26を駆動させる。すなわち、モータ制御部M11は、駆動回路81の複数のスイッチング素子82a,82bを動作させることによって電気モータ26の複数のコイル28u,28v,28wに流れる電流の大きさを調整する。これにより、モータ制御部M11は電気モータ26を駆動させることができる。
【0029】
電圧検出部M12は、電圧センサ88の検出信号を基に、駆動回路81に印加されている電圧としてモータ電圧Vmtを検出する。
判定部M13は、戻し機構50が正常に作動するか否かを判定する。この際、判定部M13は、戻し機構50にある程度の弾性エネルギを蓄積させた状態で電気モータ26への通電が停止された後に電気モータ26で逆起電力が発生したかを判定する。そして、判定部M13は、逆起電力が発生した場合に戻し機構50が正常であると判定する。一方、判定部M13は、逆起電力が発生しない場合に戻し機構50が正常ではないと判定する。すなわち、判定部M13は、電気モータ26への通電が停止された後に電気モータ26で発生した逆起電力に基づいて、戻し機構50が正常に作動しているか否かを判定する。
【0030】
<正常判定処理>
図4を参照し、戻し機構50が正常に作動するか否かを判定する際に処理回路90が実行する一連の処理である正常判定処理を説明する。処理回路90は、所定の実行条件が成立している場合に正常判定処理を実行する。所定の実行条件は、電動制動装置10に対する制動要求がないことを含んでいる。
【0031】
正常判定処理のステップS11において、処理回路90は、モータ制御部M11として機能することにより、駆動回路81を動作させることによって、出力軸27が正転方向に回転するように電気モータ26を駆動させる。ステップS13において、処理回路90は、電気モータ26の駆動の開始時点からの経過時間TMaが所定の判定時間TMaThに達したか否かを判定する。所定の判定時間TMaThとして、戻し機構50にある程度の弾性エネルギが蓄積された状態になったか否かを判断できる値が設定されている。ある程度の弾性エネルギの蓄積量とは、戻し機構50が正常であれば電気モータ26への通電を終了させた際に出力軸27を逆転方向に回転させることのできる蓄積量である。ここでの電気モータ26の駆動は、車輪100に制動力を発生させることを目的とした駆動ではない。そのため、ここでの電気モータ26の駆動によって、ブレーキパッド23,24がブレーキディスク22に接触しなくてもよい。
【0032】
処理回路90は、経過時間TMaが所定の判定時間TMaThに達していない場合(S13:NO)、処理をステップS11に移行する。すなわち、処理回路90は、電気モータ26の駆動を継続させる。一方、処理回路90は、経過時間TMaが所定の判定時間TMaThに達した場合(S13:YES)、処理をステップS15に移行する。
【0033】
ステップS15において、処理回路90は、モータ制御部M11として機能することにより、モータ電流の指令値Imt*として0(零)を設定する。すなわち、処理回路90は、電気モータ26への通電を停止する。
【0034】
ステップS17において、処理回路90は、電圧検出部M12として機能することにより、電気モータ26への通電を停止した直後におけるモータ電圧Vmtを基準モータ電圧VmtBとして取得する。
【0035】
ステップS19において、処理回路90は、判定部M13として機能することにより、現在のモータ電圧Vmtと基準モータ電圧VmtBとの差分の大きさを電圧変化量DVmtとして算出する。すなわち、電圧変化量DVmtは、電気モータ26への通電の停止時点からのモータ電圧Vmtの変化量である。ステップS21において、処理回路90は、判定部M13として機能することにより、電圧変化量DVmtが所定の電圧変化量判定値DVmtTh以上であるか否かを判定する。戻し機構50が正常に作動する場合、電気モータ26への通電を停止させると、電気モータ26の出力軸27が逆転方向に回転する。これにより、電気モータ26で逆起電力が発生する。そのため、駆動回路81には、逆起電力の大きさに応じた電流が流れるため、モータ電圧Vmtが変化する。よって、電気モータ26で逆起電力が発生したか否かの判断基準として電圧変化量判定値DVmtThが設定されている。したがって、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上である場合は、電気モータ26で逆起電力が発生したと見なす。一方、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh未満である場合は、電気モータ26で逆起電力が発生してないと見なす。
【0036】
処理回路90は、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上である場合(S21:YES)、処理をステップS23に移行する。一方、処理回路90は、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh未満である場合(S21:NO)、処理をステップS25に移行する。
【0037】
ステップS23において、処理回路90は、判定部M13として機能することにより、戻し機構50が正常に作動すると判定する。すなわち、処理回路90は、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上である場合には、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定できるため、戻し機構50が正常に作動すると判定する。その後、処理回路90は正常判定処理を終了する。
【0038】
ステップS25において、処理回路90は、判定部M13として機能することにより、電気モータ26への通電の停止時点からの経過時間TMbが所定の判定終了時間TMbThに達したか否かを判定する。電気モータ26への通電を停止してからある程度の時間が経過しても電気モータ26で逆起電力が発生しない場合、戻し機構50が弾性エネルギを蓄積できていない可能性がある。すなわち、経過時間TMbが所定の判定終了時間TMbThに達しても電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上にならない場合は、戻し機構50が正常に作動していない可能性があると見なす。
【0039】
処理回路90は、経過時間TMbが判定終了時間TMbThに達していない場合(S25:NO)、処理をステップS19に戻す。一方、処理回路90は、経過時間TMbが判定終了時間TMbThに達した場合(S25:YES)、処理をステップS27に移行する。
【0040】
ステップS27において、処理回路90は、判定部M13として機能することにより、戻し機構50が正常に作動しないと判定する。すなわち、処理回路90は、電気モータ26で逆起電力が発生していないと判定できる場合には、戻し機構50が正常に作動しないと判定する。そして、処理回路90は正常判定処理を終了する。この場合、処理回路90は、電動制動装置10に異常が発生している旨を車両の乗員に通知するとよい。
【0041】
<作用及び効果>
図5を参照し、本実施形態の電動制動装置10の作用及び効果を説明する。
図5の(A)には、正常判定処理の実行によって電気モータ26への通電を停止した際におけるモータ回転数Nmtの推移を示している。モータ回転数Nmtは、電気モータ26の出力軸27の回転速度である。
図5の(B)には、正常判定処理の実行によって電気モータ26への通電を停止した際におけるモータ電圧Vmtの推移を示している。
【0042】
正常判定処理が実行されると、戻し機構50にある程度の弾性エネルギが蓄積された状態のタイミングt11で、電気モータ26への通電が停止される。戻し機構50が正常に作動する場合、蓄積した弾性エネルギが戻し機構50から解放されることにより、電気モータ26の出力軸27が逆転方向に回転する。このように外力によって出力軸27が回転させられると、電気モータ26で逆起電力が発生する。これにより、
図5の(B)に示すように、電気モータ26の複数のコイル28u,28v,28wに電気的に接続されている駆動回路81に入力されるモータ電圧Vmtが大きくなる。そして、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上になる場合には、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定できる。そのため、処理回路90は、戻し機構50が正常に作動すると判定する。
【0043】
一方、タイミングt11から判定終了時間TMbThが経過した時点をタイミングt12としたとき、タイミングt12になっても電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上にならないことがある。この場合、戻し機構50が正常に作動していないため、戻し機構50に弾性エネルギが蓄積できていなかった可能性がある。また、戻し機構50は弾性エネルギを蓄積できているものの、戻し機構50が弾性エネルギを解放できなかった可能性もある。そのため、タイミングt11からタイミングt12までの期間内で、電圧変化量DVmtが電圧変化量判定値DVmtTh以上にならなかった場合には、当該期間内では電気モータ26で逆起電力が発生しなかったと判定できる。したがって、処理回路90は、戻し機構50が正常に作動していないと判定する。
【0044】
したがって、電動制動装置10では、戻し機構50が正常に作動するか否かの判断材料として押圧力センサや回転角センサ71の検出値を用いることなく、戻し機構50が正常に作動するか否かを判定できる。なお、押圧力センサは、ブレーキディスク22にブレーキパッド23,24を押し付ける力又は当該力の相関値を検出するセンサである。
【0045】
(第2実施形態)
電動制動装置の第2実施形態を
図6から
図8に従って説明する。なお、第2実施形態では、モータ電流Imtの推移に基づいて戻し機構50が正常に作動するか否かを判定する点が第1実施形態と異なっている。以下の説明においては、第1実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一の部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0046】
<処理回路の機能部>
図6に示すように、メモリ92の制御プログラムを実行部91が実行することにより、処理回路90は、モータ制御部M11と、電流検出部M15と、判定部M13Aとして機能する。
【0047】
電流検出部M15は、電流センサ89の検出信号を基に、モータ電流Imtを検出する。
判定部M13Aは、戻し機構50が正常に作動するか否かを判定する。この際、判定部M13Aは、戻し機構50にある程度の弾性エネルギを蓄積させた状態で電気モータ26への通電が停止された後に電気モータ26で逆起電力が発生したか否かを判定する。そして、判定部M13Aは、逆起電力が発生したと判定した場合に、戻し機構50が正常であると判定する。一方、判定部M13Aは、逆起電力が発生していない場合に、戻し機構50が正常ではないと判定する。すなわち、判定部M13Aは、電気モータ26への通電が停止された後に電気モータ26で発生した逆起電力に基づいて、戻し機構50が正常に作動しているか否かを判定する。
【0048】
<正常判定処理>
図7を参照し、第2実施形態の電動制動装置10で実行される正常判定処理を説明する。
【0049】
処理回路90は、
図4に示したステップS11,S13,S15の各処理を実行すると、処理をステップS41に移行する。ステップS41において、処理回路90は、モータ制御部M11として機能することにより、駆動回路81の複数のスイッチング素子82a,82bのうちの一部を操作することによって、閉回路を形成する。すなわち、処理回路90は、上記一部のスイッチング素子と電気モータ26のコイルとを含む閉回路を形成する。例えば、駆動回路81は、3つの第2スイッチング素子82bの何れをもオンとする。これにより、駆動回路81は、電気モータ26の3つのコイル28u,28v,28wと3つの第2スイッチング素子82bとを含む閉回路を形成する。したがって、ステップS15,S41が、電気モータ26への通電を停止し、且つ閉回路を形成する「判定準備処理」に対応する。
【0050】
処理回路90は、判定準備処理を実行することによって閉回路を形成すると、処理をステップS43に移行する。ステップS43において、処理回路90は、電流検出部M15として機能することにより、電気モータ26への通電を停止した直後におけるモータ電流Imtを基準モータ電流ImtBとして取得する。
【0051】
ステップS45において、処理回路90は、判定部M13Aとして機能することにより、現在のモータ電流Imtと基準モータ電流ImtBとの差分の大きさを電流変化量DImtとして算出する。すなわち、電流変化量DImtは、電気モータ26への通電の停止時点からのモータ電流Imtの変化量である。ステップS47において、処理回路90は、判定部M13Aとして機能することにより、電流変化量DImtが所定の電流変化量判定値DImtTh以上であるか否かを判定する。戻し機構50が正常に作動する場合では、電気モータ26への通電を停止させると、電気モータ26の出力軸27が逆転方向に回転する。これにより、電気モータ26で逆起電力が発生する。すると、電気モータ26のコイルを含む閉回路には、逆起電力の大きさに応じた電流が流れる。そこで、電気モータ26で逆起電力が発生したか否かの判断基準として電流変化量判定値DImtThが設定されている。そのため、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上である場合は、電気モータ26で逆起電力が発生したと見なす。一方、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh未満である場合は、電気モータ26で逆起電力が発生していないと見なす。
【0052】
処理回路90は、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上である場合(S47:YES)、処理をステップS49に移行する。一方、処理回路90は、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh未満である場合(S47:NO)、処理をステップS51に移行する。
【0053】
ステップS49において、処理回路90は、判定部M13Aとして機能することにより、戻し機構50が正常に作動すると判定する。すなわち、処理回路90は、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上である場合には、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定できるため、戻し機構50が正常に作動すると判定する。その後、処理回路90は正常判定処理を終了する。
【0054】
ステップS51において、処理回路90は、判定部M13Aとして機能することにより、電気モータ26への通電の停止時点からの経過時間TMbが所定の判定終了時間TMbThに達したか否かを判定する。処理回路90は、経過時間TMbが判定終了時間TMbThに達していない場合(S51:NO)、処理をステップS45に戻す。一方、処理回路90は、経過時間TMbが判定終了時間TMbThに達した場合(S51:YES)、処理をステップS53に移行する。
【0055】
ステップS53において、処理回路90は、判定部M13Aとして機能することにより、戻し機構50が正常に作動しないと判定する。すなわち、処理回路90は、電気モータ26で逆起電力が発生していないと判定できる場合には、戻し機構50が正常に作動しないと判定する。そして、処理回路90は正常判定処理を終了する。この場合、処理回路90は、電動制動装置10に異常が発生している旨を車両の乗員に通知するとよい。
【0056】
<作用及び効果>
図8を参照し、本実施形態の電動制動装置10の作用及び効果を説明する。
図8の(A)には、正常判定処理の実行によって電気モータ26への通電を停止した際におけるモータ回転数Nmtの推移を示している。
図8の(B)には、駆動回路81の第2スイッチング素子82bの作動状態の推移を示している。
図8の(C)には、正常判定処理の実行によって電気モータ26への通電を停止した際におけるモータ電流Imtの推移を示している。
【0057】
正常判定処理が実行されると、戻し機構50にある程度の弾性エネルギが蓄積された状態のタイミングt21で、判定準備処理が実行される。これにより、電気モータ26への通電が停止される。また、
図8の(B)に示すように、駆動回路81の複数の第2スイッチング素子82bの何れもがオンとされるため、駆動回路81の3つの第2スイッチング素子82b及び電気モータ26の3つのコイル28u,28v,28wを含む閉回路が形成される。なお、この際、複数の第1スイッチング素子82aはオフとされる。
【0058】
このとき、戻し機構50が正常に作動すると、蓄積した弾性エネルギが戻し機構50から解放される。その結果、電気モータ26の出力軸27が逆転方向に回転する。このように外力によって出力軸27が回転させられると、電気モータ26で逆起電力が発生する。これにより、
図8の(C)に示すように、上記閉回路を流れるモータ電流Imtが大きくなる。そして、電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上になった場合には、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定できる。そのため、処理回路90は、戻し機構50が正常に作動すると判定する。
【0059】
一方、タイミングt21から判定終了時間TMbThが経過した時点をタイミングt22としたとき、タイミングt22になっても電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上にならないことがある。この場合、戻し機構50が正常に作動していないため、戻し機構50に弾性エネルギが蓄積できていなかった可能性がある。また、戻し機構50は弾性エネルギを蓄積できているものの、戻し機構50は弾性エネルギを解放できなかった可能性もある。そのため、タイミングt21からタイミングt22までの期間内で電流変化量DImtが電流変化量判定値DImtTh以上にならなかった場合には、電気モータ26で逆起電力が発生しなかったと判定できる。そのため、処理回路90は、戻し機構50が正常に作動していないと判定する。
【0060】
したがって、電動制動装置10では、戻し機構50が正常に作動するか否かの判断材料として押圧力センサや回転角センサ71の検出値を用いることなく、戻し機構50が正常に作動するか否かを判定できる。
【0061】
<変更例>
上記複数の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記複数の実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・
図3に示したように駆動回路81の複数のスイッチング素子82a,82bには寄生ダイオード83がそれぞれ設けられている。そのため、複数のスイッチング素子のうちの一部をオンとしなくても、スイッチング素子とコイルとを含む閉回路が形成される。そのため、上記第2実施形態では、当該閉回路を流れる電流を検出できる位置に電流センサ89を設けることにより、判定準備処理において第2スイッチング素子82bをオンとしなくてもよい。
【0063】
・上記第2実施形態では、電気モータ26への通電が停止された後におけるモータ電流Imtの変化に基づいて、電気モータ26で逆起電力が発生したか否かを判定できればよい。すなわち、電流変化量DImtと電流変化量判定値DImtThとを比較することは必須ではない。
図8に示したように戻し機構50が正常に作動する場合には、電気モータ26への通電が停止されると、モータ電流Imtが急変する。そこで、判定部M13Aは、所定の判定期間内において、モータ電流Imtの変化速度が所定の判定速度以上になった場合に、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定してもよい。ここでいう所定の判定期間は、タイミングt21からタイミングt22までの期間である。
【0064】
・上記第1実施形態では、電気モータ26への通電が停止された後におけるモータ電圧Vmtの変化に基づいて、電気モータ26で逆起電力が発生したか否かを判定できればよい。すなわち、電圧変化量DVmtと電圧変化量判定値DVmtThとを比較することは必須ではない。
図5に示したように戻し機構50が正常に作動する場合には、電気モータ26への通電が停止されると、モータ電圧Vmtが急変する。そこで、判定部M13は、所定の判定期間内において、モータ電圧Vmtの変化速度が所定の判定速度以上になった場合に、電気モータ26で逆起電力が発生したと判定してもよい。ここでいう所定の判定期間は、タイミングt11からタイミングt12までの期間である。
【0065】
・電気モータは、戻し機構50からの弾性エネルギの解放による出力軸27の逆転方向への回転によって逆起電力が発生するものであれば、
図3に示した電気モータ26とは異なる構成の電気モータであってもよい。
【0066】
・上記の戻し機構50は、正転方向への出力軸27の回転によって弾性エネルギを蓄積する弾性部材として渦巻きばね55を備えたものである。しかし、戻し機構は、ブレーキパッド23をブレーキディスク22から離す方向に作用する戻し力をピストン42に付与できる構成であれば、
図2に示した戻し機構50とは異なる構成のものであってもよい。
【0067】
また、戻し機構は、戻し力をピストン42に付与できるのであれば、
図1に示した位置とは異なる位置に設けてもよい。例えば、戻し機構は、出力シャフト34に取り付けてもよい。
【0068】
・電動制動装置は、モータ回転角θmtを調整することによって摩擦部材を回転体に押し付ける力を調整できるとともに、戻し機構を備えているのであれば、
図1に示した電動制動装置10とは異なる構成の装置であってもよい。例えば、電動制動装置は、電気モータを動力源とする電動シリンダを備える制動装置であってもよい。
【0069】
・処理回路90は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0070】
なお、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」又は「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」又は「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0071】
10…電動制動装置
22…ブレーキディスク(回転体の一例)
23,24…ブレーキパッド(摩擦部材の一例)
26…電気モータ
28u,28v,28w…コイル
30…伝達機構
42…ピストン
50…戻し機構
80…制御装置
81…駆動回路
82a…第1スイッチング素子
82b…第2スイッチング素子
90…処理回路
100…車輪
M11…モータ制御部
M12…電圧検出部
M13,M13A…判定部
M15…電流検出部