(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078821
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240604BHJP
F04D 29/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F04D29/28 N
F04D29/02
F04D29/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191387
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】柳川 厚司
(72)【発明者】
【氏名】東原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】昭和 秀明
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB44
3H130AB47
3H130AC11
3H130AC13
3H130AC19
3H130BA66C
3H130DA02Z
3H130DD02Z
3H130EA02C
3H130EA06C
3H130EC02C
3H130EC13C
3H130EC14C
3H130EC17C
(57)【要約】
【課題】送風機使用時の消費電力を低減し、環境負荷を低減する。
【解決手段】シャフト130に固定されたブッシング140と、ブッシング140の径方向外側に固定されたハブ150と、ハブ150の径方向外側にインペラ200が配置された送風機である。ハブ150およびインペラ200の比重をブッシング140の比重よりも小さくした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに直接または間接的に固定されたブッシングと、
前記ブッシングの径方向外側に固定されたハブと、
前記ハブの径方向外側に羽根が配置された送風機において、
前記ハブおよび前記羽根の比重が前記ブッシングの比重よりも小さい送風機。
【請求項2】
前記羽根の比重が前記ハブの比重よりも小さい請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記ハブの熱膨張係数が前記羽根の熱膨張係数よりも小さく、前記ブッシングの熱膨張係数よりも大きい請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記ブッシングおよび前記ハブが金属からなり、前記羽根が樹脂からなる請求項2または3に記載の送風機。
【請求項5】
前記ハブが鍛造品からなる請求項4に記載の送風機。
【請求項6】
前記ブッシングがステンレス鋼からなり、前記ハブがアルミニウムまたは銅合金からなる請求項5に記載の送風機。
【請求項7】
前記羽根と前記ハブとが一体構造である請求項1に記載の送風機。
【請求項8】
前記羽根およびハブの一体構造の熱膨張係数が前記ブッシングの熱膨張係数よりも大きい請求項7に記載の送風機。
【請求項9】
前記ブッシングが金属からなり、前記羽根およびハブの一体構造が樹脂からなる請求項7または8に記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に係り、環境負荷を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、OA機器、産業機器の冷却、換気、空調や、車両用の空調、送風などには送風機が広く用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題への意識が高まるなかで、できるだけ環境負荷の少ない製品およびサービスを社会に普及させていくことが求められている。本発明は、送風機使用時の消費電力を低減し、環境負荷を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、シャフトに直接または間接的に固定されたブッシングと、前記ブッシングの径方向外側に固定されたハブと、前記ハブの径方向外側に羽根が配置された送風機において、前記ハブおよび前記羽根の比重が前記ブッシングの比重よりも小さい送風機である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、送風機使用時の消費電力を低減し、環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】実施形態の送風機の蓋体を取った斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.送風機の構成
図1は、本発明の実施形態の送風機1を示す斜視図である。送風機1は、ベース部20に蓋体30を装着したケーシング10内に、モータ100と、モータ100に固定したインペラ200とから概略構成されている。
【0009】
ベース部20は、平板状をなし、その外周部のほぼ対角上の位置には、外周側へ突出するフランジ部21が形成されている。フランジ部21には貫通孔21aが形成され、貫通孔21aにネジ等の締結具を貫通させて所望の機器に締結し、送風機1を機器に装着するようになっている。
【0010】
蓋体30は、天板部31と、天板部31の外周部に形成された側板部32とからなり、天板部31のほぼ中央部に円形に開口した吸込口33を備えている。そして、ベース部20に蓋体30を固定することにより、吹出口11が形成されている。
【0011】
図3はモータ100とインペラ200を示す断面図である。なお、以下の説明においては、モータ100の回転軸方向を軸方向と称し、軸方向と直交する方向を径方向と称する。また、「上」、「下」といった方向を示す用語は、
図3における方向を示すものとする。
【0012】
ベース部20には、軸方向に突出する環状凸部22が形成されている。環状凸部22の外周には、他の部分よりも小径となる部分の境界に段部22aが形成され、段部22aには、ステータ110が載置されている。ステータ110は、ステータコア111、インシュレータ112およびステータコイル113により構成されている。
【0013】
ステータコア111は、電磁鋼板等の軟磁性材料の薄板を複数積層した構造を有している。ステータコア111は、円環形状を有するコアバック部から径方向外側に放射状に延在する複数の極歯を備えている。ステータコア111は、圧入や接着等の手段により環状凸部22の外周面に固定されている。ステータコア111には、樹脂製のインシュレータ112が装着され、複数の極歯にはインシュレータ112を介して、ステータコイル113が巻かれている。
【0014】
環状凸部22の内周面には、軸受120が固定されている。軸受120は、玉軸受であっても流体動圧軸受であってもよい。軸受120の内周面にはシャフト130が回転可能に支持されている。シャフト130は、例えばステンレス鋼で構成される。シャフト130の軸受から突出した上端部には、ブッシング140が圧入や接着等の手段で固定されている。
【0015】
ブッシング140は、環状をなす平板部141と、平板部141の外周面と下面との境界部から軸方向下側へ向かって延在する円筒部142とからなっている。ブッシング140は、例えばステンレス鋼で構成される。円筒部142の上端面と平板部141の外周面には、ハブ150が圧入や接着等の手段で固定されている。
【0016】
ハブ150は、例えばアルミニウムで構成され、冷間鍛造によって成形されている。ハブ150は、環状をなす平板部151と、平板部151の外周縁部から軸方向下側へ向かって延在する円筒部152と、円筒部152の外周下端縁部から径方向外側に突出するフランジ部153とからなっている。
【0017】
ハブ150の円筒部152の内周面には、軟磁性材(鉄材)からなる環状のロータヨーク154が固定され、ロータヨーク154の内周面には、環状のロータマグネット155が接着剤により固着されている。ロータマグネット155は、周方向に沿ってNSNS・・と交互に磁極の極性が反転する状態で着磁されている。
【0018】
ハブ150の円筒部152とフランジ部153には、インペラ200が固定されている。インペラ200は、樹脂の射出成形で一体に成形されたもので、
図1に示すように、環状の本体部210と、本体部210の外周から径方向外側に延在する複数の羽根220とからなっている。以上の構成からなるロータは、ベース部20に取り付けられた回路基板160からモータ100に駆動電流を供給することで回転する。回路基板160には、モータ100の駆動に必要な電子回路及び電子部品が搭載されている。ステータコイル113から引き出された端線113aは、半田161で回路基板160の配線パターンに電気的に接続されている。
【0019】
2.作用および効果
回路基板160からモータ100に駆動電流が供給されると、シャフト130が回転し、ハブ150とともにインペラ200が回転する。そして、羽根220の作用により空気が吸込口33からケーシング10内に流入し、吹出口11から吹き出される。
【0020】
上記構成の送風機1においては、ハブ150がアルミニウムで構成され、インペラ200が樹脂で構成され、それらはステンレス鋼で構成されたブッシング140よりも比重が小さいから、ロータのイナーシャ(慣性モーメント)が小さくなる。送風機1は、都度適正な温度を保つために頻繁に速度を変えることが必要になるため、可能な限りロータのイナーシャを小さくすることで、加減速に伴う消費電力を低減することができる。
【0021】
特に、上記実施形態では、最も径方向外側に位置するインペラ200の比重がハブ150の比重よりも小さいから、ロータのイナーシャを効果的に低減することができる。
【0022】
また、上記実施形態では、ハブ150の熱膨張係数はアルミニウムの23.1μm/mKであり、樹脂からなるインペラ200の熱膨張係数よりも小さく、ステンレス鋼製のブッシング140の熱膨張係数(Fe:11.8μm/mK)よりも大きい。つまり、ブッシング140→ハブ150→インペラ200の順番で熱膨張係数が大きくなるから、部材間での熱膨張係数の差が低減される。したがって、熱膨張に伴う変形が低減され、接着強度の低減が抑制される。なお、ハブ150の材料はアルミニウムに変えて真鍮(Cuの熱膨張係数:16.5μm/mK)とすることもできる。
【0023】
また、上記実施形態では、ハブ150が冷間鍛造品であるから、ムク材を機械加工して切り出す場合と比較すると材料費を大幅に低減することができる。このように製造工程において使用する材料の削減を行うことで、環境負荷をより低減できる。
【0024】
3.変更例
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように種々の変更が可能である。
インペラ200とハブ150とを樹脂の射出成形で一体に成形することができる。この場合、ブッシング140よりも径方向外側の構成がかなり軽量化されるので、加減速したときのロータのイナーシャをさらに低減することができる。また、インペラの部分とハブの部分との間に接合部が存在しないので、熱膨張に伴う変形が低減され、接着強度の低減が抑制される。
【0025】
上記実施形態は、本発明をアウターロータ型の送風機に適用したものであるが、インナーロータ型の送風機に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、家電機器、OA機器、産業用や車両用の空気調和装置における送風、換気、冷却等に用いられる送風機に利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1…送風機、10…ケーシング、11…吹出口、20…ベース部、21…フランジ部、21a…貫通孔、22…環状凸部、22a…段部、30…蓋体、31…天板部、32…側板部、33…吸込口、100…モータ、110…ステータ、111…ステータコア、112…インシュレータ、113…ステータコイル、113a…端線、120…軸受、130…シャフト、140…ブッシング、141…平板部、142…円筒部、150…ハブ、151…平板部、152…円筒部、153…フランジ部、154…ロータヨーク、155…ロータマグネット、160…回路基板、161…半田、200…インペラ、210…本体部、220…羽根。