(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078824
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】締結装置のハンドル
(51)【国際特許分類】
F16B 5/10 20060101AFI20240604BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F16B5/10 D
F16B21/04 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191390
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】592063401
【氏名又は名称】株式会社ナベヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】酒井 正一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 泰成
(72)【発明者】
【氏名】岡本 將義
【テーマコード(参考)】
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA01
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD22
3J001KA19
3J037AA01
3J037BA01
3J037BB01
3J037CA04
(57)【要約】
【課題】着脱式締結装置のハンドルについて、締結及び解除の回動方向を把握しやすくする。
【解決手段】回動軸L1を中心にケースとカバーが締結される締結方向Cとその締結が解除される解除方向Oに回動可能とした、締結装置のハンドル320であって、前記ハンドル320は、平面視で、前記回動軸L1を通り前記回動軸L1の径方向外方に突出する指掛部326を有し、同指掛部326は、平面視で、前記回動軸L1と前記指掛部326の頂点326aを結ぶ対称線L2に対して非線対称形状をなし、前記対称線L2を挟んで前記締結方向Cとは反対側には前記締結方向Cに凹となる締結操作部326bを有し、前記対称線L2を挟んで前記解除方向Oとは反対側には前記締結方向Cに凸となる解除操作部326cを有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心に部材同士が締結される締結方向と前記部材同士の締結が解除される解除方向に回動可能とした、締結装置のハンドルであって、
前記ハンドルは、平面視で、前記回動軸を通り前記回動軸の径方向外方に突出する指掛部を有し、
同指掛部は、平面視で、前記回動軸と前記指掛部の頂点を結ぶ対称線に対して非線対称形状をなし、前記対称線を挟んで前記締結方向とは反対側には前記締結方向に凹となる締結操作部を有し、前記対称線を挟んで前記解除方向とは反対側には前記締結方向に凸となる解除操作部を有する、締結装置のハンドル。
【請求項2】
前記締結操作部と前記解除操作部との間に前記回動軸の径方向外方に凸となる頂部が形成されており、前記頂点は前記頂部に位置する、請求項1に記載の締結装置のハンドル。
【請求項3】
前記ハンドルは、外周面の上端にその下方に位置する外周面に対して段差を介して大径となるフランジが形成されている、請求項1に記載の締結装置のハンドル。
【請求項4】
前記ハンドルの外周形状は、前記回動軸に直交する断面において相似形状に形成されており、下方に向かうほど小さくなっている、請求項1に記載の締結装置のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結装置のハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば機械装置を収納したケースには、内部に収納した機械装置の点検等のためにケースの一部を開口した点検窓が形成され、この点検窓を介してケースの外からケース内部を視認等可能となっている。また、点検窓は点検等のとき以外はカバーで覆われており、カバーはケースに着脱可能に取り付けられている。このため、ケースとカバーとの間に着脱式締結装置を配置し、その着脱式締結装置によりカバーをケースに着脱可能としている。この着脱式締結装置として、締結操作のためのハンドルを備えた締結装置がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】タキゲン製造株式会社ホームページ 製品一覧/ファスナー・ラッチ錠・キャッチ・錠前装置・周辺機器/ファスナー〈URL:https://www.takigen.co.jp/products/list/13015〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この着脱式締結装置は、ケースに固定される受具と、カバーに固定される締結具とからなり、締結具は受具との締結及びその解除の際に操作するハンドルを備えている。このハンドルは回動可能となっており、一方に回動させるとケースとカバーとが締結され、また他方に回動させるとケースとカバーとの締結が解除される。
【0005】
ところで、このハンドルは平面視(ハンドルの回動軸方向の上方から見た状態)において回動軸を通り回動軸の径方向に延びる直線に対して線対称となっている。このため、使用者は感覚的にどの方向がハンドルの締結方向であるか、また逆にどの方向がハンドルの解除方向であるかがわかりにくいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、締結装置のハンドルについて、締結及び解除の回動方向を把握しやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の発明は、回動軸を中心に部材同士が締結される締結方向と前記部材同士の締結が解除される解除方向に回動可能とした、締結装置のハンドルであって、前記ハンドルは、平面視で、前記回動軸を通り前記回動軸の径方向外方に突出する指掛部を有し、同指掛部は、平面視で、前記回動軸と前記指掛部の頂点を結ぶ対称線に対して非線対称形状をなし、前記対称線を挟んで前記締結方向とは反対側には前記締結方向に凹となる締結操作部を有し、前記対称線を挟んで前記解除方向とは反対側には前記締結方向に凸となる解除操作部を有する。このため、平面視で非線対称な形状の指掛部について締結の操作方向と解除の操作方向を把握しやすくなる。
【0008】
第2の発明は、前記締結操作部と前記解除操作部との間に前記回動軸の径方向外方に凸となる頂部が形成されており、前記頂点は前記頂部に位置する。このため、頂部により締結操作部と解除操作部とをなめらかに連結される。
【0009】
第3の発明は、前記ハンドルは、外周面の上端にその下方に位置する外周面に対して段差を介して大径となるフランジが形成されている。このため、フランジに指を掛けてハンドルを把持することができる。
【0010】
第4の発明は、前記ハンドルの外周形状は、前記回動軸に直交する断面において相似形状に形成されており、下方に向かうほど小さくなっている。このため、ハンドルを把持する場合でも上方にすべりにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締結装置のハンドルについて、締結及び解除の回動方向を把握しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】
図3(a)は受具の平面斜視図、
図3(b)は同底面斜視図。
【
図4】
図4(a)は締結具の平面斜視図、
図4(b)は同底面斜視図。
【
図5】
図5(a)は締結具のハンドルを押圧していない状態の断面図、
図5(b)はハンドルを押圧した状態の断面図。
【
図6】
図6(a)はハンドルの平面図、
図6(b)はハンドルの左側面図、
図6(c)は背面図。
【
図7】
図7(a)は解除状態にある着脱式締結装置の説明用断面図、
図7(b)はハンドルを押圧した状態の同説明用断面図、
図7(c)は締結状態にある同説明用断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、ケース(部材)1とケース1に形成された点検窓Wを覆うカバー(部材)2に用いる着脱式締結装置(以下、単に「締結装置」という。)10に具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。なお、締結とは連結、クランプ、組付け、止め、ロック等と同義である。
【0014】
図1に内部に機械装置等を収納したケース1の点検窓W部分に使用されている締結装置10の斜視図を、また、
図2に締結装置10の同拡大図を示す。なお、
図2では説明の便宜上、締結装置10のみを図示しており、ケース1及びカバー2の図示を略している。ケース1は一定の厚みの金属板を用いて例えば立体の箱状に形成されており、内部に図示しない機械装置が収納されている。ケース1の一面には矩形状の点検窓Wが開口形成されており、この点検窓Wを覆う一定厚みの金属板のカバー2が着脱可能に配置されている。カバー2は、点検窓Wより大きな矩形上に形成されており、ケース1における点検窓Wの周囲とカバー2とが重なる積層部分に締結装置10が配置されている。なお、カバー2はケース1より薄い金属板を用いて形成されている。
【0015】
図1、
図2に示すように締結装置10は受具20と締結具30とから構成されている。
図1に示すようにケース1に受具20が固定されており、カバー2に締結具30が固定されている。なお、図示しないがケース1及びカバー2の複数箇所に
図2に示す締結装置10が配置されており、これら複数の締結装置10を操作することによりケース1に対してカバー2が着脱可能となっている。
【0016】
(受具20)
図3(a)に受具20の平面斜視図を、
図3(b)に同底面斜視図を示す。これらの図に示すように、受具20は、円盤状の受具本体210と、受具本体210から下方に突出する円筒状の保護筒220とからなり、金属にて一体形成されている。受具本体210の上面211の外周には上方及び径方向外方に開口した固定用凹部212が2箇所、周方向に180度離間した位置に形成されている。各固定用凹部212には受具本体210を貫通するボルト挿通孔213が形成されている。固定用凹部212は受具20をケース1に固定する際にボルト(
図1参照)を装着する部分であり、ボルトの頭部が固定用凹部212内に位置する。また、ボルト挿通孔213は受具20の下面214において保護筒220よりも径方向外方に位置している。
【0017】
図3(a)に示すように、受具本体210の上面211には受具本体210の中央に向かうほど上面211の高さが低くなる円錐状にくぼんだ上面案内部215が、受具本体210と同心に形成されている。また、上面案内部215には受具20を上下方向に貫通する嵌合孔216が形成されている。嵌合孔216は上面案内部215と同心で形成された円孔216aとこの円孔216aを横断し円孔216aから径方向両側に直線状に延びる長孔216bとからなる。長孔216bは円孔216aの直径よりもその幅(短手方向の長さ)が短く、長孔216bの長さ(長手方向の長さ)は上面案内部215の直径よりもわずかに短くなっている。このため、嵌合孔216は長孔216bの長手方向中央が円弧状に膨らんだ形状となっている。
【0018】
図3(b)に示すように、受具本体210の下面214には円筒状の保護筒220が一体形成されている。保護筒220は、受具本体210に形成された長孔216bの長さと同径の内径を有する円筒である。受具本体210の下面214において、保護筒220の内側には嵌合孔216の円孔216aを中心に長孔216bを周方向に90度回転させた位置に締結凹部217が形成されている。締結凹部217は受具本体210の下面214を半円柱状に凹ませた形状をなす。また、保護筒220の内側における受具本体210の下面214は締結凹部217を挟んだ両側でその厚みが異なっている。具体的には底面視で締結凹部217を基準として長孔216bまでのうち反時計回り方向は肉厚の回動規制部218となっている。また、時計回り方向は肉薄の回動許容部219となっている。なお、ボルト挿通孔213は円孔216aから締結凹部217の延長上に位置する。
【0019】
(締結具30)
図4(a)に締結具30の平面斜視図を、
図4(b)に同底面斜視図を示す。締結具30は、締結具本体310と、ハンドル320と、締結具本体310及びハンドル320の内部に配置される締結部330とからなる。
【0020】
図4(a)、
図4(b)に示すように、締結具本体310は、円柱状の台座311と台座311の下面311bから下方に突出する案内凸部312と、台座311上面から上方に延びる円筒状のハンドル支持筒313とからなり、金属にて一体形成されている。
【0021】
図5(a)、
図5(b)にも示すように、台座311は受具20とほぼ同径の円柱状をなす。台座311の軸心を含む中央には、台座311を上下方向に貫通する軸孔314と、この軸孔314より上方に軸孔314と同心で軸孔314より大径の孔であるコイルバネ装着部315が形成されている。台座311の下面311bには締結具30をカバー2に固定するボルト(図示せず)を螺合可能なボルト孔316が周方向に180度離間した2箇所に形成されている。台座311の下面311bには下方に突出する略円柱状の案内凸部312が形成されている。案内凸部312の中央には台座311から連続する軸孔314が貫通形成されている。また、案内凸部312には軸孔314を中心として径方向両方に延びる案内溝317が案内凸部312の側方に開口し、かつ案内凸部312の上下方向に貫通して形成されている。このため、案内凸部312は軸孔314及びこれから径方向両方に延びる案内溝317により円柱を径方向に2等分して対向させたような形状となっている。案内溝317の上端は台座311の下面311bを上方に凹ませせた着座部318となっている。
【0022】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ハンドル支持筒313はコイルバネ装着部315よりも大径で台座311の上面311aから上方に延びる円筒状をなしている。ハンドル支持筒313の外周面に沿ってハンドル320が締結具本体310に対して上下動可能となっている。ハンドル支持筒313内には台座311の上面311aより高い着座面319が形成されている。
【0023】
図4、
図5、
図6に示すように、ハンドル320は締結部330を締結具本体310に対して上下及び回動させる際に使用者が把持する部材である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、ハンドル320は、基本形状として上方が蓋部321により閉塞され下方が開口された有蓋円筒状をなし、金属により一体形成されている。蓋部321の上面は中央に向かって高くなる緩やかな円錐状に形成され、中央は平坦面322になっている。また、平坦面322の中央にはハンドル320を締結部330に固定する固定ボルト340を挿通させるためのボルト挿通孔323が貫通形成されている。このボルト挿通孔323はハンドル320の回動軸L1と同心となる。蓋部321の下面にはボルト挿通孔323と同心でボルト挿通孔323より大径の円筒状のボス部324が下方に向かって形成されており、ボス部324には雌ネジ324aが形成されている。また、ハンドル320の下方は開口されており、開口に連通する円筒状の内周面325が形成されている。この内周面325は締結具本体310のハンドル支持筒313に遊嵌可能な内径となっている。
【0024】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)に示すように、ハンドル320はその外観形状、すなわちハンドル320を回動軸L1に沿った方向である上方から見た平面視形状及びハンドル320を回動軸L1に直交する方向から見た側面視形状について特徴を有する。
図6(a)に示すように、ハンドル320は、平面視において一定の曲率の円Rを基本とし、その円Rの外周から回動軸L1を通り回動軸L1の径方向外方に突出する指掛部326が形成されている。ハンドル320の外周は、平面視で、指掛部326が形成されている部分以外は一定の曲率の円Rとなっている。なお、
図6(a)にハンドル320の指掛部326が形成されていない場合、すなわち円Rを構成する一定の曲率で指掛部326の周方向両端を結んだ場合の仮想線を破線で示す。
【0025】
指掛部326は、ハンドル320の回動軸L1と指掛部326の頂点(平面視におけるハンドル320外周のうち回動軸L1から最も離れた位置)326aとを通る仮想線を対称線L2として対称線L2に対して平面視で非線対称形状をなしている。
【0026】
具体的には、
図6(a)のように指掛部326が図中上方に位置する平面視で、対称線L2に対して締結方向Cと反対側(図中左方)には締結操作部326bが形成されている。また、対称線L2に対して解除方向Oと反対側(図中右方)には解除操作部326cが形成されている。締結操作部326bは、平面視で、ハンドル320の外周形状である一定の曲率の円Rから連続して逆の曲率の円弧である締結方向Cに凹となる外周形状を有し、円Rから径方向外方に突出する形状に形成されている。解除操作部326cは、平面視で、ハンドル320の外周形状である一定の曲率の円Rの外周から連続してより小さい曲率の円弧である締結方向Cに凸となる外周形状を有し、円Rから径方向外方に突出する形状に形成されている。
【0027】
図6(a)に示すように、平面視で、締結操作部326bと解除操作部326cとの間にはハンドル320の外周形状である円Rの一定の曲率よりも大きな曲率の円弧で円Rの外方である回動軸L1の径方向外方に凸となる頂部326dが形成されている。この頂部326dに頂点326aが位置する。
【0028】
図6(b)、
図6(c)に示すように、ハンドル320は側面視では下方から上方に向かうほど外周、外径が大きくなる形状を有しており、ハンドル320の外周面の上端には段差を介してその下方よりも大径となるフランジ327が全周に形成されている。したがって、
図6(a)にて平面視として説明したハンドル320の外周形状はハンドル320に形成されたフランジ327の外周形状でもある。なお、フランジ327よりも下方におけるハンドル320の回動軸L1に直交する断面の外周形状は、
図6(a)に示す平面視におけるハンドル320の形状と相似形状であり、下方に向かうほどハンドル320断面の外周形状は小さくなっている。このため、指掛部326はハンドル320の下方に向かうほど小さくなるがフランジ327を含めてハンドル320の上下方向全体にわたって形成されている。
【0029】
図5(a)及び
図5(b)に示すようにハンドル320は、締結具本体310に対して上下動可能であり、また、ハンドル320は
図5(b)に示す押圧した状態で締結具本体310に対して回動可能である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、締結部330は、締結具本体310に対して上下動可能とした駆動軸331を有する。駆動軸331は、上方に位置し小径の小径軸332とその下方に位置し小径軸332と同心の大径軸333とからなる金属製の棒状である。小径軸332の上部外周面には雄ネジ332aが形成されており、ハンドル320のボス部324に内嵌めされて雌ネジ324aに螺合されている。また、小径軸332の上端面には雌ネジ332bが形成されたボルト孔332cが開口している。ハンドル320のボルト挿通孔323とボルト孔332cは同一直線上に配置されてハンドル320の上方から固定ボルト340でハンドル320と駆動軸331とを固定している。このため、ハンドル320と締結部330は相対移動不可となっている。
【0030】
また、小径軸332にはダンパ334が配置されている。ダンパ334は2枚の金属製の平座金334aとその間に配置された複数枚の金属製の皿バネ334bとからなる。上方に位置する平座金334aはCリング334cによりその上方への移動を規制された状態で小径軸332に外嵌されている。また下方に位置する平座金334aは小径軸332と大径軸333との段差に着座している。複数の皿バネ334bは小径軸332に直列に外嵌めされており、2枚の平座金334aを互いに離間する方向に付勢している。
【0031】
大径軸333は、締結具本体310に形成された軸孔314に摺動可能に挿通されており、軸孔314に挿通されている部分よりも上方にはコイルバネ335が螺旋状に外嵌されている。このコイルバネ335は下方が台座311に形成されたコイルバネ装着部315に収納されてその底部に着座している。また、その上方は小径軸332に装着された下方の平座金334aに当接して、この平座金334aを介して駆動軸331を締結具本体310に対して上方に付勢している。なお、下方の平座金334aに対して、コイルバネ335による上方への付勢力と皿バネ334bによる下方への付勢力では皿バネ334bが大きく、下方の平座金334aは通常の状態では小径軸332の段差に着座するよう付勢されている。大径軸333の下部には大径軸333を径方向に貫通する取付孔333aが形成されており、大径軸333の下端面には取付孔333aに連通するネジ孔333bが形成されている。取付孔333aには円柱状の締結片336が挿通されて、ネジ孔333bに螺合されたイモネジ333cにて大径軸333に固定されている。締結片336は大径軸333の直径より長く、また案内溝317の長さよりも短く形成された金属製の円柱部材であり、軸孔314よりも下方に位置している。
【0032】
図5(a)に示すように、ハンドル320を押圧しない状態では、締結部330はコイルバネ335の付勢力により上方に付勢されて、締結片336は台座311の下面311bに形成された着座部318に着座している。また、同状態では、大径軸333の下端は案内凸部312の下端よりも上方に位置し、案内溝317内に収納されている。一方、
図5(b)に示すように、ハンドル320を押圧した状態では、締結部330はコイルバネ335の付勢力に抗して下方に移動し、締結片336は締結具本体310の下方に露出する。
【0033】
(締結装置10の使用方法)
まず、
図1に示すように、受具20をケース1に、締結具30をカバー2にそれぞれ取り付ける。受具20をケース1に取り付ける場合、ケース1に受具本体210の直径及び高さに合わせた円環有底状の取付穴と保護筒220が挿入できる貫通孔(
図7参照)を同心で形成する。また、ボルト挿通孔213に対応させてケース1にボルト孔(図示せず)を形成し、受具20をボルトで固定する。締結具30をカバー2に取り付ける場合、案内凸部312を挿入できる大きさの貫通孔(
図7参照)をカバー2に貫通形成し、カバー2の下からボルト(図示せず)で固定する。なお、ケース1には保護筒220が下側となる向きで固定する。また、締結具30は解除位置(
図7(a))にある締結片336の鉛直下方に受具20の嵌合孔216が位置するような位置関係とする。
【0034】
図7(a)に示すようにカバー2をケース1に重ねた状態では、締結具30の駆動軸331が受具20の嵌合孔216の円孔216aに対向し、締結具30の締結片336が受具20の嵌合孔216の長孔216bに対向する。なお、
図7(a)では長孔216bは円孔216aの図面上前後に位置するため図示されない。
図7(b)に示すように締結具30のハンドル320を押し下げると、締結部330の駆動軸331はコイルバネ335の付勢力に抗して下方に移動し、駆動軸331は軸孔314を摺動しつつ下方に移動し、受具20の嵌合孔216を通過する。そして、ダンパ334が着座面319に着座して、締結部330の締結具本体310に対する下方移動が規制される。
【0035】
図7(b)に示すハンドル320の押圧位置では、締結片336の上端は、受具本体210に形成された保護筒220内で、回動規制部218の下端より上かつ回動許容部219の下端より下に位置している。そして、同位置から、ハンドル320の指掛部326のうち締結操作部326b(
図6(a)参照)に指を掛け、ハンドル320を締結方向Cである時計回り方向に回動させる。ハンドル320の回動に伴い締結部330の締結片336も回動し、締結片336が受具本体210の回動許容部219の下を通過し、
図7(c)に示す位置になると締結片336は締結凹部217の下方で回動規制部218に当接して回動が規制される。なお、
図7(b)に示す位置から反時計回り方向の回動は、締結片336が受具本体210の回動規制部218に当接して規制される。
【0036】
図7(c)に示すように、ハンドル320の押圧を解除するとコイルバネ335の付勢力によりハンドル320と締結部330の駆動軸331は上昇するが、一定距離上昇すると締結片336が受具20の締結凹部217に着座してそれ以上の上昇は規制される。これにより、受具20と締結具30とが締結されて、ケース1とカバー2も締結される。この状態から締結装置10の締結を解除するには、ハンドル320を押圧し、ハンドル320の指掛部326のうち解除操作部326cに指を掛けて解除方向Oである反時計回り方向(
図6(a)参照)に回動させる。そうすると、締結片336は受具本体210の回動許容部219の下を通過し、嵌合孔216の下方で回動規制部218に当接してそれ以上の回動が規制された
図7(b)に示す回動位置となる。この状態で、ハンドル320の押圧を解除すればハンドル320と締結部330はコイルバネ335の付勢力により締結具本体310に対して上昇し、
図7(a)に示す状態となる。これにより、受具20と締結具30の締結が解除されて、カバー2をケース1の締結が解除される。
【0037】
上記実施形態の締結装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)
図6(a)に示すように、ハンドル320の指掛部326は、ハンドル320の回動軸L1と指掛部326の頂点326aとを通る対称線L2に対して平面視で非線対称形状としている。具体的には、対称線L2に対して締結方向Cと反対側に、締結方向Cに凹となる外周形状を有する締結操作部326bが形成されている。また、対称線L2に対して解除方向Oと反対側(図中右方)にはハンドル320の外周形状である円Rの一定の曲率より小さい曲率で締結方向Cに凸となる外周形状を有する解除操作部326cが形成されている。
【0038】
このため、締結方向Cは力が掛かる方向であることを感覚的に理解している使用者は、ハンドル320の指掛部326を見て締結時にどこ(締結操作部326b)に指を掛ければよいかを感覚的に把握し、さらに締結の回動方向も感覚的に把握しやすくなる。また、反対に締結解除時にどこ(解除操作部326c)に指を掛けてどの方向に回動させればよいかも感覚的に把握しやすくなる。
【0039】
(2)
図6(a)に示すように、締結操作部326bと解除操作部326cとの間にはハンドル320の外周形状である一定の曲率の円Rよりも大きな曲率の円弧で円Rの外方である回動軸L1の径方向外方に凸となる頂部326dが形成されている。このため、形状の異なる締結操作部326bと解除操作部326cとをなめらかに結ぶことができる。
【0040】
(3)
図6(b)、
図6(c)に示すように、ハンドル320は側面視では下方から上方に向かうほど外周が大きくなる形状を有しており、ハンドル320の外周面上端には段差を介して大径となるフランジ327が形成されている。このため、例えば、ハンドル320を把持してカバー2を持ち上げる場合等に、ハンドル320の外周面におけるフランジ327の段差に指を掛け止めることができ、ハンドル320の持ち上げ方向への把持が容易となる。
【0041】
(4)フランジ327よりも下方におけるハンドル320の回動軸L1に直交する断面の外周形状は相似形状であり、下方に向かうほどハンドル320断面の外周形状は小さくなっている。このため、ハンドル320はくさび状に上に向かうほど大きくなり、ハンドル320を手で把持した場合に手がハンドル320の上方向に滑りにくくなる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態の締結具30は、ハンドル320と締結部330とが締結具本体310に対して上下動する構成としたが、これに限られずハンドル320と締結部330が締結具本体310に対して上下動しないものとしてもよい。
【0043】
○受具20、締結具本体310、ハンドル320に使用する材質を樹脂材料に変更してもよい。
○ハンドル320は下方に向かうほど断面形状が小さくなる形状としたが、上下方向において断面形状が同一でもよい。
【0044】
○ハンドル320の外周面に凹凸模様等の滑り止め加工をしてもよい。
○ハンドル320の締結方向Cと解除方向Oとをそれぞれ逆方向に回動させるものとしてもよい。
【0045】
○ハンドル320に指掛部326を複数箇所形成してもよい。
○締結装置10をケース1とカバー2の締結以外の用途に使用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
L1・・・回動軸
L2・・・対称線
C・・・締結方向
O・・・解除方向
R・・・円
1・・・ケース(部材)
2・・・カバー(部材)
10・・・締結装置
20・・・受具
30・・・締結具
310・・・締結具本体
320・・・ハンドル
326・・・指掛部
326a・・・頂点
326b・・・締結操作部
326c・・・解除操作部
326d・・・頂部
327・・・フランジ