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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078830
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】魚釣用リール及び電池ボックス
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/015 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A01K89/015 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191401
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一生
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108ED08
2B108ED15
2B108GA14
(57)【要約】
【課題】リール本体を大型化することなくクラッチのON/OFF動作を検知することが可能なクラッチ位置検出手段を備えた魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リールは、交換可能な電池を収容する電池ボックス30と、スプールがフリー回転状態と釣糸巻き取り状態との間で切り換えるクラッチ操作部材15を備えたクラッチ機構と、クラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかを判別するクラッチ位置検出手段とを有している。クラッチ位置検出手段は、クラッチ操作部材15と一体的に移動可能な保持部材45に保持される磁石41と、磁石41を検知するクラッチ検知センサ42と、を備え、クラッチ検知センサ42は、電池ボックス30内に収容されていることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、
前記スプールを回転駆動するハンドルと、
前記左右側板の内、反ハンドル側の側板に設けられ、交換可能な電池を収容する電池ボックスと、
前記スプールを、フリー回転状態と釣糸巻き取り状態との間で切り換えるクラッチ操作部材を備えたクラッチ機構と、
前記クラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかを判別するクラッチ位置検出手段と、
を有する魚釣用リールであって、
前記クラッチ位置検出手段は、前記クラッチ操作部材と一体的に移動可能な保持部材に保持される被検知部と、前記被検知部を検知するクラッチ検知センサと、を備え、
前記クラッチ検知センサは、前記電池ボックス内に収容されている、
ことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記クラッチ検知センサの一部又は全部が、前記電池ボックスに収容される電池と重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記電池ボックスには、制御基板が配設されており、
前記クラッチ検知センサは、前記制御基板の一方の面に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記反ハンドル側の側板には、前記スプールの回転状態を検知するスプール検出手段が配設されており、前記電池ボックス内に、前記スプール検出手段を構成するスプール検知センサが収容されていることを特徴とする請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記スプール検知センサは、前記制御基板の他方の面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記制御基板の両面側にそれぞれ配置される前記クラッチ検知センサと前記スプール検知センサは、軸方向から見てずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
リール本体の左右側板間に配設され、各種の情報を表示する表示部を備えた制御ケースに電力を供給する電池を収容した電池ボックスであって、
前記リール本体に設けられるクラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかを判別するクラッチ位置検出手段を構成するクラッチ検知センサを収容したことを特徴とする電池ボックス。
【請求項8】
前記電池ボックス内に、スプールの回転状態を検知するスプール検出手段を構成するスプール検知センサが収容されていることを特徴とする請求項7に記載の電池ボックス。
【請求項9】
前記電池ボックス内には、前記クラッチ検知センサ及びスプール検知センサが装着される制御基板が配設されており、
前記クラッチ検知センサ及びスプール検知センサは、前記制御基板の両面にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項8に記載の電池ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルの巻き取り操作によってスプールに釣糸を巻回する魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールとして、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持した両軸受型リールが知られており、このような両軸受型リールには、クラッチ機構をOFFにしてスプールをフリー回転状態にした際、釣糸の放出量(水深)を表示させるカウンター表示機能を搭載したものがある。通常、釣糸の放出量は、スプールの側面に磁石を配設しておき、これをリール本体に設けた磁気センサで検知することで、スプールの回転量を検知し、所定のプログラムに従って算出される。
【0003】
上記した両軸受型リールでは、スプールの回転を検知する以外についても作動部材の動きを検知し、新たな機能を付加したいことがある。例えば、特許文献1には、クラッチ機構のクラッチON状態及びクラッチOFF状態を検知する機能を備えたクラッチセンサをクラッチプレートに設けた電動リールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-103043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に開示されたクラッチセンサは、ハンドル側の側板に配設されるクラッチ機構を構成するクラッチプレートに設けられるため、ハンドル側の側板が大型化してしまい、リール本体を小型化することが難しい。すなわち、クラッチセンサを収容するための収容部を設けると共に、この収容部については防水性を確保する必要があるため、リール本体の小型化を図る上では限界がある。
【0006】
なお、手巻き式の両軸受型リールでは、左右の側板間に表示部を備えた制御ケースを配設し、前記表示部に水深情報や棚情報等を表示するICカウンター付きタイプのものが存在するが、そのような手巻き式の両軸受型リールには、そもそもクラッチセンサを設置する、という技術思想はない。すなわち、電動式や手巻き式の両軸受型リールに関する従来技術には、リール本体を大型化することなく、スペースを効率的に活用して、クラッチのON/OFF動作を検知するクラッチセンサを反ハンドル側の側板に配設する、という技術思想は存在しない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、リール本体を大型化することなくクラッチのON/OFF動作を検知することが可能なクラッチ位置検出手段を備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような目的が達成される電池ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体の左右側板間に回転自在に支持されたスプールと、前記スプールを回転駆動するハンドルと、前記左右側板の内、反ハンドル側の側板に設けられ、交換可能な電池を収容する電池ボックスと、前記スプールを、フリー回転状態と釣糸巻き取り状態との間で切り換えるクラッチ操作部材を備えたクラッチ機構と、前記クラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかを判別するクラッチ位置検出手段と、を有しており、前記クラッチ位置検出手段は、前記クラッチ操作部材と一体的に移動可能な保持部材に保持される被検知部と、前記被検知部を検知するクラッチ検知センサと、を備え、前記クラッチ検知センサは、前記電池ボックス内に収容されていることを特徴とする。
【0009】
上記した構成では、クラッチ機構のON/OFFに伴ってクラッチ操作部材が移動すると、保持部材に保持されている被検知部が一体的に移動し、電池ボックス内に配設されたクラッチ検知センサがこの移動を検知してクラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかが判別される。前記電池ボックスは、予め防水構造が施されており、前記クラッチ検知センサを前記電池ボックス内に収容したことで、別途、クラッチ検知センサを収容する収容部を設ける必要がなく、また、防水構造を設ける必要がない。そして、このような電池ボックスを反ハンドル側の側板に配設することでスペースを有効に活用することができ、リール全体の大型化を回避することが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上記した目的が達成されるように、クラッチ検知センサを収容した電池ボックスを提供することを特徴とする。このような電池ボックスは、魚釣用リールの側板部分に配設することができ、リール本体の構造を簡略化することがに寄与する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リール本体を大型化することなくクラッチのON/OFF動作を検知することが可能なクラッチ位置検出手段を備えた魚釣用リールが得られる。また、本発明の電池ボックスによれば、リール本体を大型化することなくクラッチのON/OFF動作を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る魚釣用リールの一実施形態を示す平面図。
図2図1に示す魚釣用リールを反ハンドル側から見た側面図。
図3図2に示す状態からカバー部材を取り外した状態を示す図。
図4】電池ボックス部分の構成を示す図であり、(a)は後方側から見た図、(b)は前方側から見た図。
図5】電池ボックスの内部構造を示す図であり、図3のA-A線に沿った断面図。
図6】電池ボックスの内部構造を示す図であり、図3のB-B線に沿った断面図。
図7】電池ボックスの内部構造を示す図であり、図4(a)のC-C線に沿った断面図。
図8】電池ボックス内に設置される制御基板、及び、クラッチ位置検出手段とスプール検出手段の位置関係を示す図であり、スプール側から見た概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用リールである手巻き型の両軸受型リール(以下、リールと称する)の実施形態について説明する。
図1は、リールの一実施形態を示す平面図、図2は、反ハンドル側から見た側面図、そして、図3は、図2に示す状態からカバー部材を取り外した状態を示す図である。
【0014】
本実施形態に係るリール1のリール本体1Aは、左右フレーム(図3において左フレーム2が示される)に装着される左右カバー3a,3bを備えた左右側板4A,4Bを有しており、左右フレームは、公知のように複数の支柱を介して一体化されている。また、左右フレーム間には、釣竿のリールシートに装着するためのリール脚5が、フレームと共に一体形成されている。
【0015】
前記リール本体1Aの左右側板間には、スプール軸が軸受を介して回転可能に支持されており、このスプール軸に釣糸が巻回されるスプール7が固定されている。前記スプール7は、一方の側板(本実施形態では右側板4B)に設けられたハンドル8を回転操作することで、右側板内に配設された公知の巻取駆動機構を介して回転駆動されるようになっている。
【0016】
また、前記右側板4Bには、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際、スプール7にドラグ力を付与する公知のドラグ機構12が設けられている。このドラグ機構12は、ハンドル軸に回転可能に装着された巻取駆動機構のドライブギアの側面に摩擦係合する複数枚の制動部材と、この制動部材に対して押圧力を付与する制動力調節体(スタードラグとも称される)13とを備えている。前記制動力調節体13は、ハンドル8の近傍のリール本体側に、前記ハンドル軸に対して回転可能に設けられており、この制動力調節体13を回転操作することで、前記制動部材に押圧力を付与してドライブギアのハンドル軸に対する摩擦力(ドラグ力)が調節可能となっている。
【0017】
前記巻取駆動機構は、ハンドル軸に対して回転可能に装着される前記ドライブギア及びドライブギアに噛合するピニオンギア等を備えており、前記ハンドル軸の回転を、前記ドラグ機構12、ドライブギア及びピニオンギアを介してスプール7に伝達する機能を有する。また、ピニオンギアは、右側板内に配設された公知のクラッチ機構の作動によって軸方向に移動し、前記スプール軸に対して係脱されることで動力伝達状態(クラッチON)と動力遮断達状態(クラッチOFF)の切り換えが行なわれる。
【0018】
前記クラッチ機構は、スプール7の後方側で、左右側板4A,4B間に配設されたクラッチ操作部材15を備えており、クラッチ操作部材15を押し下げ操作するとスプール7が自由に正逆回転するクラッチOFF状態になる。また、この状態でハンドル8を巻き取り操作することで、公知の自動復帰機構を介してクラッチON状態となり、そのままハンドル8を巻き操作することで、スプール7に釣糸を巻き取り可能となる。
【0019】
また、リール本体1Aの左右側板間には、スプール7の上方側に、表示部20aを有する情報表示装置(ICカウンタ)20が配設されている。この情報表示装置20は、サムレストとしての機能を兼ね備えており、表示部20aには、例えば、クラッチOFF時に、スプール7の回転を検知してスプールから繰り出される糸長情報、更には、棚情報、時間情報等、各種の情報が表示される。なお、情報表示装置20には、操作ボタン20bが設けられており、ユーザは、各種の設定情報を入力できるようになっている(図1では1つの操作ボタンを設けているが複数、設けられていても良い)。
【0020】
上記した糸長情報(釣糸の繰り出し長さ、繰り出し速度等)については、スプール7の回転量や回転方向を検知するスプール検出手段を構成するスプール検知センサからの検知信号に基づいて、所定の演算プログラムに従って算出される。反ハンドル側の側板4Aには、前記スプール検知センサ、スプール検知センサからの検知信号を処理する制御基板、制御基板から情報表示装置20側に信号を送受信するケーブル、及び、これらを動作させるための電源(電池ボックス)等、各種の情報を制御する制御装置の構成要素が配設されている。
【0021】
そして、本発明では、上記したようなICカウンター機能付きの手巻き型の両軸受型リールにおいて、スプール7の回転を検知する以外についても、クラッチ機構のクラッチ操作部材15の動作を検知し、新たな機能を付加した構成となっている。具体的に本実施形態では、ドラグ機構が作動している状態で、スプール7が釣糸放出方向に回転した際、その回転状態を音で報知する機能を備えている。この場合、スプール7が釣糸放出方向に回転するのは、クラッチOFF状態でスプール7がフリー回転するとき、或いは、クラッチON状態で魚が掛かり、ドラグ機構が作用しつつスプール7が回転するときがある。本実施形態では、クラッチON状態であることを検知し、この状態のときスプール7が釣糸繰り出し方向に回転したときに報音させるようにしている。
【0022】
すなわち、クラッチ操作部材15の位置を検知して、クラッチON状態とクラッチOFF状態を判別し、クラッチON状態でスプール7が釣糸放出方向に回転した際、その回転を音で報知できるように構成している。
【0023】
上記したような機能を果たすクラッチ位置検出手段は、ハンドル側の側板内に配設されるクラッチ機構に関連して設けることが可能であるが、ハンドル側の側板内には、上記したように、巻取駆動機構、ドラグ機構、自動復帰機構等が配設されることから、ここにクラッチ位置検出手段を配設すると、リール本体が大型化してしまう。特に、本実施形態のような手巻き式の両軸受型リール、更には、手持ち操作が可能な小型電動リールでは、できるだけリール本体を小型化することが要請されることがあり、前記クラッチ位置検出手段については、効率良く、しかも構造を複雑化することなく、安定した検知結果が得られるように構成することが好ましい。
【0024】
本実施形態では、反ハンドル側の側板4Aに設置される電池ボックス30を利用してクラッチ位置検出手段を効率良く配設すると共に、安定した検知動作が得られるように構成している。
以下、本実施形態におけるクラッチ位置検出手段の構成について、図3から図7を参照して説明する。
【0025】
図3は、反ハンドル側の側板4Aを示しており、図2に示す状態から左カバー3aを取り外した状態を示している。
前記側板4Aには、情報表示装置20に対して電力を供給する電池ボックス30が配設されている。電池ボックス30は、500円硬貨と同程度の大きさの電池(ボタン電池;図6参照)80を収容する構成となっており、略円筒状の第1本体30Aと、第1本体30Aと一体化され、リール本体のフレーム2に固定される第2本体30Bと、第1本体30Aの開口部分を閉塞する蓋部材30Cとを備えている。前記制御基板(回路基板)50は、電池ボックス30内に配設されると共に、電池ボックスの形状に合わせて略円板状のものが用いられており、その中心部分が止めビス50aによって第2本体30Bに固定されている。また、制御基板50には、情報表示装置20側に信号を送受信する機能、及び、情報表示装置側に電力を供給する機能を備えたケーブル51が連結されている。
【0026】
このように、本実施形態の電池ボックス30は、断面略円形の外周面を備えた形状となっており、左側板4A内においてフレーム2に固定されている。
なお、電池ボックス30は、図6に示すように、第1本体30Aと第2本体30Bとの間、及び、第1本体30Aと蓋部材30Cとの間に、Oリング(シール部材)32a,32bが介在されており、電池ボックス内の収容部30Sは防水処理が施されている。
【0027】
前記電池ボックス30は、予め定められた固定構造によってフレーム2に対して固定される。本実施形態では、前記第1本体30A(第2本体30Bでも良い)に、径方向に突出する固定片31を形成しておき、これをフレーム2に設けられた固定部2aに固定することで成される。電池ボックス30の固定は、例えば、固定部2aに対してビス31aを螺入することで成され、本実施形態の固定構造は、略180°間隔で2箇所設けられている(図3参照)。
【0028】
前記蓋部材30Cは、図2に示すように、左カバー3aと略面一状になって側面に露出しており、その表面には長溝30aが形成されている。このため、電池が消耗した場合、ユーザは、コイン等を長溝30aに差し込んで蓋部材30Cを取り外し、新たな電池に交換することが可能となっている。
【0029】
上記した電池ボックス30には、クラッチ機構のON操作、OFF操作を検知できるクラッチ位置検出手段40が関連して設けられている。本実施形態のクラッチ位置検出手段40は、クラッチ操作部材15のON/OFF操作を検知する構成となっており、クラッチ操作部材15を初期位置から押し下げた際のOFF状態、及び、クラッチ操作部材15が初期位置に復帰した際のON状態を検知するように構成されている。また、本実施形態のクラッチ位置検出手段40は、変位する側に設けられ被検知部(磁石41)と、電池ボックス30内に設けられて、変位する磁石41の磁界の変化を検知するクラッチ検知センサ42(ホール素子42とも称する)とを備えた構成となっており、構造が簡単で密閉状態であっても検知可能な磁気センサが用いられている。
【0030】
前記クラッチ操作部材15は、スプール7の後方側で、左右フレーム間に上下動可能に配設されている。図3から図7では、反ハンドル側のフレームである左フレーム2が示されており、クラッチ操作部材15の端部15aは、フレーム2に形成された長孔2b内に上下動可能に保持されている。なお、クラッチ操作部材15の他端部についても、左フレームと同様、右フレーム(図示せず)に形成された長孔内に上下動可能に保持されており、これにより、クラッチ操作部材15は、安定して上下動するように構成されている。
【0031】
前記クラッチ操作部材15の端部15aは、長孔2bを挿通しており、長孔2bからの突出部分は、前記磁石41が設けられた保持部材45に連結されている。具体的に、本実施形態の保持部材45は、磁石41を内蔵した保持体45Aと、後述する係合部45Bとを備えており、クラッチ操作部材15の端部15aは、保持体45Aに形成された二股状の突起45a内に嵌合されている。このため、クラッチ操作部材15がクラッチのON/OFF操作によって上下方向に移動した際、保持部材45は一体的に移動可能となっている。
【0032】
また、保持部材45は、電池ボックス30の周辺に形成された案内部に係合しており、保持部材45の上記した移動が安定するように案内される。本実施形態では、保持部材45と案内部が凹凸係合した状態となっており、保持部材45はこの状態で移動するように構成されている。具体的に、案内部は、前記フレーム2の露出面側で、前記電池ボックス30の外周面に沿って円形状(円弧形状でも良い)に形成された溝46で構成されており、保持部材45には、溝46と係合する(嵌合)するように、リング状(Cリング状でも良い)の案内プレート(係合部)45Bが一体形成されている(図4から図7参照)。
【0033】
なお、上記した構成において、前記案内プレート45Bは、電池ボックス30に設けられている前記固定片31によって軸方向に抜け止めされていることが好ましい(図3参照)。さらに、前記クラッチ操作部材15と保持部材45(保持体45A)との連結部分に遊度を設けておくことが好ましい。例えば、クラッチ操作部材15の端部15aと、保持体45Aに形成された二股状の突起45aとの嵌合に、多少の遊度を設けておいても良い。
【0034】
前記側板4Aには、スプール7の回転速度(回転量)、及び、回転方向を検知するスプール検出手段60が設けられており、このスプール検出手段60も前記電池ボックス30に関連して配設されている。本実施形態のスプール検出手段60を構成するスプール検知センサ61は、磁界変化で開閉するリードスイッチが用いられており(以下、リードスイッチ61とも称する)、スプール7の側面の範囲内に、円周方向に沿って3つ配置されている。また、前記スプール検出手段60は、リードスイッチ61が検知する被検知部(磁石62)を備えており、この磁石62は、スプール7の側面7aに固定された磁石保持部材7Aに保持されている(磁石62は、スプール7の側面7aに直接、固定される構成であっても良い)。
【0035】
前記円周方向に沿って配設されるリードスイッチ61は、電池ボックス30内に固定されている制御基板50の裏面側(フレーム側)に装着されており、制御基板50の表面側(カバー3a側)に前記クラッチ位置検出手段であるクラッチ検知センサ42が装着されている。すなわち、図7に示すように、クラッチ位置検出手段40のクラッチ検知センサ(ホール素子42)は、電池ボックス30の第1本体30Aの外周側の所定位置(クラッチ操作部材15がON状態となった位置と略対向する位置)に固定されており、クラッチ検知センサ42とスプール検知センサ61は、予め防水処理が施されている電池ボックス30内に設置された制御基板50の両面にそれぞれ装着された状態となっている。
これにより、クラッチ検知センサ42、及び、スプール検知センサ61は、電池ボックス30にユニット化されていると共に、センサを保護するための防水処理を施す必要がなくなり、検知センサの簡略化及びコンパクト化することが可能となる。
【0036】
この場合、クラッチ検知センサ42は、その一部又は全部が、軸方向から見て電池ボックス30に収容される電池80と重なるように配置されていることが好ましい(図8では、クラッチ検知センサ42の全部が電池80と重なるように固定されている)。
このように構成することで、電池ボックスの大型化を抑制することができ、リール本体が大型化することを防止することができる。特に、クラッチ検知センサ42の全部が電池80に重なるようにすることで、径方向の小型化が図れるようになる。
【0037】
図8は、電池ボックス30内に設置される制御基板50、及び、クラッチ位置検出手段40とスプール検出手段60の位置関係を示す図であり、スプール側から見た概略図である。
本実施形態では、上記したように、クラッチ位置検出手段40とスプール検出手段60は、共に磁界の変化を検知する磁気センサで構成されることから、これらの検知センサを電池ボックス30内に設置する構成では、両センサの配設位置を考慮する必要がある。本実施形態では、電池ボックス30内に密閉して収容されている制御基板50の両面側に夫々の検知センサ(ホール素子42,リードスイッチ61)を設置することで、2つの検出手段を設置する際のスペースの効率化を図ると共に、各磁石の磁界が干渉することを抑制している。また、検知センサ42,61を、制御基板50の外方に設置するのではなく、制御基板の範囲内で、かつ、両面側に設置したことで、電池ボックス内に効率良く収容することが可能となり、また、磁場干渉による誤検知のリスクを低減することができる。
【0038】
この場合、制御基板50の肉厚が厚ければ、磁石41,62は、互いの磁界の影響を相手側に及ぼさないため、各検知センサ42,61の設置位置は特に限定されることはないが、制御基板50の肉厚が薄くなると、互いの磁石41,62の磁界が干渉(磁場干渉)することがある。このため、図8に示すように、各検知センサ42,61は、制御基板50を隔てて一定の距離(磁場干渉しないような距離)を保つように、軸方向で重なることなくずれた位置に配設することが好ましい。こにより、誤検知のリスクを軽減することが可能となる。
【0039】
本実施形態において、上記したクラッチ位置検出手段40は、例えば、クラッチ機構がON状態になったことを判別した場合において、上記したスプール検出手段60が釣糸放出方向の回転を検知したときに音(ドラグ音)を発するのに利用される。例えば、クラッチ機構がON状態のときに魚が掛かった際、釣人は、ドラグ機構が滑って釣糸が繰り出されていることを把握することができる。なお、このような状態での報音は、スプールの回転速度に応じて音量を変えたり、音質を変えるようにすることで、ドラグ機構の制動状態についても釣人に把握させることが可能となる。
【0040】
上記した魚釣用リールによれば、以下のような作用効果が得られる。
前記クラッチ位置検出手段40は、ハンドル側の側板に設置するのではなく、反ハンドル側の側板に設置したことで、リール本体を大型化することはなく、効率的にスペースを活用することができる。特に、手巻き型の両軸受型リールや手持ち操作可能な小型の電動リールでは、リール本体を大型化することなく、新たな機能を設置することが可能となる。
【0041】
また、電池ボックス30の内部空間を利用してクラッチ検知センサ42を配設したことで、電池ボックス30のシール構造を利用した防水対策が図れ、検知センサに、別途、防水構造を設ける必要がなくなり、構造を簡略化できると共に小型化を図ることができる。この場合、クラッチ検知センサとして、磁気センサを用いたことで、構造が簡略化されると共に、電池ボックス30内の内部スペースを効率的に利用することが可能となる。
【0042】
また、クラッチ機構のON/OFF操作に伴ってクラッチ操作部材15が移動すると、保持部材45の保持体45Aに保持されている磁石41は、クラッチ操作部材15の移動と共に一体的に上下方向に移動する。前記電池ボックス30内に配設された検知センサ42は、保持体45A内の磁石41の磁界の変化を検知して、クラッチ操作部材15の位置を検知し、クラッチ機構がON状態にあるかOFF状態にあるかを判別する。前記保持部材45は、リング状の案内プレート45Bが、電池ボックス30の本体の外周面に沿うようにフレーム2に形成された案内部(溝46)に係合しており、案内プレート45Bは安定して回動できるため、磁石41を保持している保持体45Aの移動も安定した状態で案内される。したがって、安定した検知能力を確保することができる。
【0043】
特に、本実施形態では、保持部材45の案内プレート45Bが、電池ボックスの円周方向に沿って回動するため、検知センサ42との間で同一の距離を保つように設定することができ、安定した検知能力を発揮することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、案内プレート45Bが、電池ボックス30に設けられている前記固定片31によって軸方向に抜け止めされているため、案内プレート45Bが軸方向に変位することはなく、安定した検知能力を発揮することが可能となる。また、前記クラッチ操作部材15と保持部材45(保持体45A)との連結部分に遊度を設けておくことで、クラッチ操作部材の移動時にガタが生じても、そのガタを吸収することができ、案内プレート45Bの回動に影響を及ぼすことはなく、安定した検知能力を確保することができる。
【0045】
さらに、本実施形態のようなクラッチ検知センサ42(及びスプール検知センサ61)を組み込んだ電池ボックス30は、予め防水処理が施されてユニット化されているため、両軸受型リールの側板内の様々な場所に組み込むことが可能である。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上記した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
例えば、本実施形態では、円筒形状の電池ボックス30を搭載しており、案内部を効率的に配設するように円形状又は円弧形状にしたが、電池ボックスが立方体(直方体)形状のような場合、その形状に合わせて、案内部は上下方向に延出したり、前後方向に延出する等、適宜変形することが可能である。すなわち、収容される電池の形状、電池ボックスの形状に応じて案内部の形状は適宜変形することが可能である。
【0047】
また、前記保持部材(案内プレート)と案内部は凹凸係合しているが、フレーム2側に凸部を形成し、案内プレート側に凹部を形成する等、案内方法についても適宜変形することが可能である。さらに、クラッチ位置検出手段を構成するクラッチ検知センサについては、磁気センサに限定されることはなく、例えば、光学式センサを用いる等、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 魚釣用リール(両軸受型リール)
1A リール本体
4A,4B 左右側板
7 スプール
15 クラッチ操作部材
30 電池ボックス
40 クラッチ位置検出手段
41 被検知部(磁石)
42 クラッチ検知センサ(ホール素子)
45 保持部材
45A 保持体
45B 案内プレート
46 溝(案内部)
50 制御基板
60 スプール検出手段
61 スプール検知センサ(リードスイッチ)
図1
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図8