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特開2024-78831ガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078831
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】ガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/18 20060101AFI20240604BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20240604BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20240604BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20240604BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20240604BHJP
   F02C 9/00 20060101ALI20240604BHJP
   F02C 9/40 20060101ALI20240604BHJP
   F23R 3/28 20060101ALI20240604BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F02C6/18 B
F02C3/22
F02C3/30 C
F02C7/00 A
F02C7/22 A
F02C7/22 B
F02C9/00 B
F02C9/40 A
F02C9/40 B
F23R3/28 F
F01D25/00 V
F01D25/00 W
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191402
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】麻尾 孝志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 陵
(57)【要約】
【課題】ガスタービンにおける水素ガス燃料混焼率が増加する場合において 、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法を提供する。
【解決手段】ガスタービンコジェネシステムは、排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を脱硝装置に出力するための脱硝制御部を備える。脱硝制御部は、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、制御指令を生成するように構成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するための上流側蒸気ラインと、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置と、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御部と
を備え、
前記脱硝制御部は、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令を生成するように構成される
ガスタービンコジェネシステム。
【請求項2】
前記制御指令は、前記ボイラ出口目標値と、計測によって求まる前記排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量との偏差に基づく演算によって得られる前記還元剤の第2添加量を参照して、前記制御指令を生成するように構成される
請求項1に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項3】
前記NOxパラメータは、前記水素ガス燃料供給設備によって供給される前記水素ガス燃料の供給量である水素ガス燃料供給量と、前記上流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である上流側蒸気供給量とに基づいた演算によって得られる前記タービン出口における推定NOx排出量である
請求項1または2に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項4】
前記上流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である上流側蒸気供給量が許容上限供給量以下となる条件を充足させながら、前記タービン出口における実際のNOx排出量を、前記ボイラ出口目標値よりも高いタービン出口目標値以下になるように、前記上流側蒸気ラインを制御するための上流側蒸気制御部をさらに備える
請求項1または2に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項5】
前記上流側蒸気制御部は、前記タービン出口における前記NOx排出量を前記タービン出口目標値以下にするための前記上流側蒸気供給量である目標上流側蒸気供給量が、前記許容上限供給量を下回る場合、前記上流側蒸気供給量が、前記目標上流側蒸気供給量を上回りかつ前記許容上限供給量以下となるよう、前記上流側蒸気ラインを制御するように構成される
請求項4に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項6】
前記上流側蒸気制御部は、前記タービン出口における実際のNOx排出量を前記タービン出口目標値以下にするための前記上流側蒸気供給量を決定するための上流側蒸気供給量決定部を有し、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器における前記ヘッドエンドよりも前記タービン側に供給するための下流側蒸気ラインと、
前記下流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である下流側蒸気供給量と、前記上流側蒸気供給量決定部によって決定された前記上流側蒸気供給量との合計量である合計蒸気供給量が、前記圧縮機のサージングを回避するための限界供給量以下になる条件を充足させながら、前記下流側蒸気ラインを制御するための下流側蒸気制御部と、
をさらに備える
請求項4に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項7】
前記排熱回収ボイラの前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収システムと、
前記水回収システムによって回収された回収水を、前記排熱回収ボイラに供給するためのボイラ給水を貯める補給水タンクと、
をさらに備える
請求項1または2に記載のガスタービンコジェネシステム。
【請求項8】
ガスタービンコジェネシステムの運転方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するための上流側蒸気ラインと、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置と、
を含み、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御ステップを備え、
前記脱硝制御ステップでは、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令が生成される
ガスタービンコジェネシステムの運転方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素ガス燃料が供給される燃焼器を備えるガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるガスタービンコジェネシステムは、ガスタービンと、ガスタービンの排ガスを利用して蒸気を生成する排熱回収ボイラと、排熱回収ボイラから排出される蒸気を蒸気消費設備に供給するプロセス系統と、プロセス系統から抽気した蒸気をガスタービンの燃焼器における火炎帯の上流側に供給する第1蒸気系統と、プロセス系統から抽気した蒸気を火炎帯の下流側に供給する第2供給系統とを備える。燃焼器では、天然ガスなどの通常燃料と、石炭ガスまたはバイオマスガスなどのガス化ガス燃料との混焼が可能である。上記のガスタービンコジェネシステムでは、通常燃料およびガス化ガスの混焼率と、蒸気設備において求められる蒸気量とに基づいて、第1供給系統および第2供給系統によって供給される蒸気量は制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-173572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス化ガスが水素ガスを主成分とする水素ガス燃料である場合、水素ガス燃料の供給量が変化すると、燃焼器における火炎温度が変化し、ガスタービンから排出される窒素酸化物の濃度が変化する。水素ガス燃料と他の燃料との混焼率である水素ガス燃料混焼率が変化することに伴って、ガスタービンから排出される排ガスから窒素酸化物(以下、「NOx」という場合がある)を除去する脱硝動作が素早く実行されることが好ましい。
【0005】
本開示の目的は、ガスタービンにおける水素ガス燃料混焼率が増加する場合において、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するための上流側蒸気ラインと、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置と、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御部と
を備え、
前記脱硝制御部は、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令を生成するように構成される。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステムの運転方法は、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機、燃焼器、および、タービンを含むガスタービンと、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラと、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するための上流側蒸気ラインと、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置と、
を含み、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御ステップを備え、
前記脱硝制御ステップでは、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令が生成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ガスタービンにおける水素ガス燃料混焼率が増加する場合において、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるガスタービンコジェネシステム、および、その運転方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るガスタービンコジェネレーションシステムを示す概略図である。
図2】一実施形態に係る燃焼器を示す概略図である。
図3】一実施形態に係る水回収システムを示す概略図である。
図4】一実施形態に係るコントローラを示す概略図である。
図5】タービン出口におけるNOx排出量の特性を示す概略図である。
図6】NOxパラメータの特性を示す概略図である。
図7】NOxパラメータの特性を示す別の概略図である。
図8】一実施形態に係るコジェネシステム制御処理のフローチャートである。
図9図8に続く、コジェネシステム制御処理のフローチャートである。
図10】一実施形態に係る脱硝制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0011】
<ガスタービンコジェネシステム100の概要>
図1は、本開示の一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム100(以下、「コジェネシステム100」という場合がある)を示す概略図である。例えば発電プラントであってもよいコジェネシステム100は、ガスタービン9と排熱回収ボイラ14とを備える。ガスタービン9は、圧縮機入口空気6から圧縮空気7を生成するための圧縮機1と、圧縮空気7中の酸素を酸化剤として燃料を燃焼させるとともに圧縮空気7を高温化して燃焼ガス12を生成するための燃焼器3と、燃焼器3から排出される燃焼ガス12を駆動源として回転するためのタービン2と、タービン2に連結される発電機5とを備える。燃焼器3に供給される燃料は炭化水素ガス燃料と水素ガス燃料を含む(詳細は後述する)。排熱回収ボイラ14は、タービン2から排出される排ガス13から回収した熱を利用してボイラ給水から蒸気を生成するように構成される。なお、ボイラ給水は排熱回収ボイラ14に供給されるための水である。
【0012】
コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から排出される蒸気を蒸気需要体10に供給するための蒸気供給ライン21を備える。蒸気供給ライン21は、排熱回収ボイラ14と蒸気需要体10とに接続される蒸気配管21Aと、蒸気配管21Aに設けられる蒸気流調弁21Bとを含む。蒸気流調弁21Bの開度が後述のコントローラ90により制御されることで、蒸気需要体10に供給される蒸気の量である需要体蒸気供給量は制御される。なお、蒸気需要体10は例えば蒸気タービンである。蒸気需要体10は、複合発電プラントの蒸気タービン、或いは産業用プロセス装置などであってもよい。さらに、コジェネシステム100は、蒸気供給ライン21から抽気した蒸気を燃焼器3に供給するための蒸気抽気ライン130を備える。蒸気抽気ライン130の構成の詳細は後述する。
【0013】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13に含まれる水分を回収するための水回収システム40と、水回収システム40から回収した水分を含む回収水をボイラ給水として貯める補給水タンク17と、補給水タンク17にボイラ給水を供給するための給水ライン15と、補給水タンク17と排熱回収ボイラ14とに接続される給水ライン19と、給水ライン19に設けられる給水ポンプ18とを備える。給水ポンプ18が駆動すると、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水は給水ライン19を流れて排熱回収ボイラ14に供給される。排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度は高い方が好ましい。排熱回収ボイラ14が蒸気を生成するために必要とする熱量が低減し、コジェネシステム100の効率は向上するからである。
【0014】
本開示の必須の構成要素ではないが、コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14から水回収システム40までの排ガス13の供給ラインである排ガス供給ライン57と、排ガス供給ライン57から分岐して設けられる排気ライン29と、排気ライン29に設けられる排気ダンパ31とを備える。排気ライン29を流れる排ガス13は、排気塔30から外部に排出される。本開示の一実施形態では、コジェネシステム100から水回収システム40に排ガス13が供給される場合、排気ダンパ31が閉止されて、排気ライン29には排ガス13が流れない。
【0015】
<燃焼器3の概略構成>
図2は、本開示の一実施形態に係る燃焼器3を示す概略図である。燃焼器3は、筒状に形成される燃焼器ケーシング23と、燃焼器ケーシング23の一端部に設けられるヘッドエンド24と、ヘッドエンド24に設けられる燃料ノズル25と、未燃の空気と既燃の燃焼ガス12を隔てる円筒状の燃焼器ライナ26と、燃焼器ライナ26の下流側に連結した燃焼器尾筒27とを備える。圧縮空気7は燃焼器ケーシング23に供給される。燃焼器ケーシング23内において、圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の外側に形成される環状空間を通って、ヘッドエンド24側に向かって流れる。環状空間を流れる圧縮空気7は、燃焼器ライナ26の内部に流入し、燃料ノズル25から燃焼器ライナ26の内部に噴射される燃料と混ざる。燃焼器ライナ26の内部で燃料は燃焼し、火炎28が燃焼器ライナ26の内部で発生する。燃焼器ライナ26の内部で発生した燃焼ガス12は、燃焼器尾筒27から排出されてタービン2に流入するようになっている。
【0016】
<燃焼器3の燃料の供給系統>
図1に戻り、燃焼器3に供給される燃料は炭化水素ガス燃料と水素ガス燃料を含む。コジェネシステム100は、燃焼器3に炭化水素ガス燃料を供給するための炭化水素燃料供給設備51と、燃焼器3に水素ガス燃料を供給するための水素ガス燃料供給設備52とを備える。炭化水素燃料供給設備51は、炭化水素ガス燃料の供給源である第1供給源53と、炭化水素ガス燃料を第1供給源53から燃焼器3の燃料ノズル25(図2参照)に導くための第1配管151と、第1配管151に設けられる第1流調弁153とを含む。同様に、水素ガス燃料供給設備52は、水素ガス燃料の供給源である第2供給源54と、第2供給源54から燃料ノズル25に水素ガス燃料を導くための第2配管152と、第2配管152に設けられる第2流調弁154とを含む。第1流調弁153の開度と第2流調弁154の開度とが後述のコントローラ90によって制御されることで、炭化水素ガス燃料の供給量である炭化水素ガス燃料供給量と水素ガス燃料の供給量である水素ガス燃料供給量とが調整される。つまり、コントローラ90は、燃焼器3における水素ガス燃料混焼率を調整可能である。水素ガス燃料混焼率は、燃焼器3に供給される燃料のうち水素ガス燃料が占める割合である。当該割合は、熱量ベースまたは重量ベースで算出される値である。なお本実施形態の炭化水素ガス燃料はオフガスである。他の実施形態に係る炭化水素ガス燃料は天然ガスであってもよい。また、水素ガス燃料は水素ガスを主成分とする燃料である。
【0017】
水素ガス燃料供給量が増大して水素ガス燃料混焼率が上昇するほど、燃焼器3において生成される二酸化炭素ガスの量は低下する反面、燃焼器3の火炎28の温度は上昇するためNOxの生成量は増大する。従って、水素ガス燃料混焼率が変化する場合には、排熱回収ボイラ14の出口(排熱回収ボイラ出口)におけるNOx排出量がボイラ出口目標値以下となる状態が維持されるよう後述の脱硝装置120は動作する必要がある。なお、ボイラ出口目標値は、コジェネシステム100が設置される地域において規制される規制値に一定の余裕度を反映した値であり、一定の値である。
【0018】
<蒸気抽気ライン130の構成>
図1図2で示される蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21から抽気した蒸気を燃焼器3におけるヘッドエンド24側および燃焼器3におけるタービン2側に供給するように構成される。燃焼器3におけるヘッドエンド24側とは、燃焼器ケーシング23において火炎28が形成される領域よりも、燃焼ガス流れ方向において上流側を示す。また、燃焼ガス流れ方向は燃焼器ライナ26において燃焼ガス12が流れる方向を示し、矢印C(図2参照)によって例示される。さらに、燃焼器3におけるタービン2側とは、燃焼器ケーシング23において火炎28が形成される領域よりも燃焼ガス流れ方向において下流側を示す。
【0019】
図2に示すように、蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21の蒸気配管21Aから抽気した蒸気を燃焼器3におけるヘッドエンド24側に供給するための上流側蒸気ライン131と、抽気した蒸気を燃焼器3におけるタービン2側に供給するための下流側蒸気ライン132とを含む。
【0020】
上流側蒸気ライン131は、抽気した蒸気をヘッドエンド24と燃焼器ライナ26との間に供給するための上流側蒸気配管131Aと、上流側蒸気配管131Aに設けられる上流側蒸気流調弁131Bとを有する。上流側蒸気流調弁131Bの開度が後述のコントローラ90によって制御されることで、上流側蒸気配管131Aによって燃焼器3に導かれる蒸気の流量である上流側蒸気供給量は調整される。上流側蒸気供給量が増えるほど、火炎帯の温度を下げる効果が大きいため、燃焼器3において発生する窒素酸化物の量は低下する。従って、水素ガス燃料混焼率が上昇するほど上流側蒸気供給量は増大することが好ましい。但し、上流側蒸気供給量は、燃焼器3の火炎28の失火を回避するための許容上限供給量以下となる必要がある。上流側蒸気供給量が許容上限供給量を上回ると、燃焼器3における酸素濃度が著しく低下し、火炎28が消失する可能性が高まる。
【0021】
下流側蒸気ライン132は、抽気した蒸気を燃焼器ライナ26の下流側に供給するための下流側蒸気配管132Aと、下流側蒸気配管132Aに設けられる下流側蒸気流調弁132Bとを有する。下流側蒸気流調弁132Bの開度が後述のコントローラ90によって制御されることで、下流側蒸気配管132Aによって燃焼器3に導かれる蒸気の流量である下流側蒸気供給量は調整される。燃焼器3への蒸気供給量すなわち上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量が増えるほど、タービン2に流入して仕事をする蒸気の流量が増え、ガスタービン9の出力である発電機5の発電量は増大する。反対に蒸気供給量の合計量が減ると、燃焼器3における燃料供給が変わらないのであれば、ガスタービン9の出力は減少する。なお、上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量は、圧縮機1のサージングを回避するための限界供給量以下となる必要がある。合計蒸気供給量が限界供給量を上回ると、圧縮機1の出口における圧力が高まり、圧縮機1のサージングが起こる可能性が高まる。
【0022】
図1に戻り、本開示の必須の構成要素ではないが、蒸気抽気ライン130は、蒸気供給ライン21から抽気された蒸気の温度を下げるための減温器22をさらに備える。蒸気が流れる方向において上流側蒸気配管131Aおよび下流側蒸気配管132Aよりも上流側に配置される減温器22は、例えば、排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の一部が冷水として流入するように構成されており(矢印B参照)、該冷水が減温器22の内部で噴射されることによって蒸気は冷まされる。冷まされた蒸気は、上流側蒸気配管131Aおよび下流側蒸気配管132Aを流れる。
【0023】
<脱硝装置120>
図1に示すように、コジェネシステム100は、排熱回収ボイラ14を流れる排ガス13に還元剤を添加することで排ガス13を脱硝するための脱硝装置120を備える。本例の還元剤はアンモニアガスである。脱硝装置120は、排熱回収ボイラ14の内部に形成される排ガス13の流れる流路空間の一部である脱硝領域Rに還元剤を噴射する。より詳細には、脱硝領域Rには触媒が配置されていて、触媒の上流で排ガスに還元剤のアンモニアガスを噴射し、排ガスとアンモニアガスとが混合される。そして、触媒を介したアンモニア接触還元分解法により排ガス13中の窒素酸化物を水分と窒素成分に分解する。
【0024】
脱硝装置120は、還元剤を供給するための供給装置122と、供給装置122と排熱回収ボイラ14とに接続される還元剤供給導管124と、還元剤供給導管124に設けられる還元剤供給流調弁126と、還元剤供給導管124によって導かれる還元剤を脱硝領域Rに噴射するための噴射ノズル128とを備える。還元剤供給導管124の一端部は排熱回収ボイラ14の内部に配置されており、噴射ノズル128は還元剤供給導管124の一端部に設けられる。還元剤供給流調弁126の開度が後述のコントローラ90によって制御されることで、還元剤供給導管124を流れる還元剤の流量が調整され、排ガス13に添加する還元剤の添加量が調整される。
【0025】
<コジェネシステム100の計測器>
図1で例示されるコジェネシステム100は、発電機5の発電量を計測するための発電機出力計測器65、圧縮機1に流入する圧縮機入口空気6の流量を計測するための圧縮機入口空気流量計64、圧縮機1の入口の圧力を計測するための圧縮機入口空気圧力計測器62、圧縮機1の出口の圧力を計測するための圧縮機出口空気圧力計測器63、需要体蒸気供給量を計測するための蒸気流量計66、上流側蒸気供給量を計測するための上流側蒸気流量計67、下流側蒸気供給量を計測するための下流側蒸気流量計68、タービン2の出口における窒素酸化物の量を計測するためのタービン出口NOx計測器69、および、排熱回収ボイラ14から排出される排ガス13に含まれる窒素酸化物の量を計測するための排熱回収ボイラ出口NOx計測器70を備える。これらの計測器の計測結果はいずれも、コジェネシステム100の構成要素である後述のコントローラ90に送られるようになっている。以下では、圧縮機入口空気圧力計測器62と圧縮機出口空気圧力計測器63を総称して「空気圧力計測器61」という場合がある。排熱回収ボイラ出口NOx計測器70とタービン出口NOx計測器69はNOxの濃度を計測するように構成される。
【0026】
<水回収システム40>
図3は本開示の一実施形態に係る水回収システム40を示す概略図である。水回収システム40の概要は以下の通りである。水回収システム40の構成要素である水回収装置33は、排ガス供給ライン57によって導かれる排ガス13と冷媒水とを気液接触させることで排ガス13中の水分を回収水として回収するように構成される。より詳細な一例として、水回収装置33は、排ガス13と冷媒水とが流入する熱交換容器135と、熱交換容器135の内部で冷媒水を散水するための散水装置34と、熱交換容器135の内部で散水装置34の下方に位置する充填物35とを含む。熱交換容器135には、排ガス供給ライン57によって導かれる排ガス13が流入する。散水装置34によって散水される冷媒水は充填物35に付着し、熱交換容器135に流入する排ガス13と熱交換を行う。これにより、排ガス13の水分が凝縮する。凝縮した水分と熱交換を終えた冷媒水とを含む回収水は落下し、熱交換容器135の下部を構成する貯水槽136に貯まる。
【0027】
水回収システム40は、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を冷却するための回収水冷却装置110と、水回収装置33の貯水槽136から排出される回収水を回収水冷却装置110に導くための回収水排出ライン39と、回収水冷却装置110から排出される冷却された回収水を冷媒水として熱交換容器135に導くための回収水供給ライン42とをさらに備える。本例の回収水冷却装置110は、例えば海水などであってもよい冷却水によって、回収水を冷却するように構成される。回収水冷却装置110に冷却水を供給するための冷却水供給ライン41には冷却水供給ポンプ55が設けられる。
【0028】
なお、水回収システム40は、回収水を補給水タンク17に導くための給水ライン4をさらに備え、給水ライン4は、高温給水ライン44と低温給水ライン47とを含む。高温給水ライン44は、回収水排出ライン39に接続されており、回収水排出ライン39から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水排出ライン39から取り出される回収水は、排ガス13から回収された熱を有するため、比較的高い温度を有する。低温給水ライン47は、回収水供給ライン42に接続されており、回収水供給ライン42から取り出された回収水を補給水タンク17に導くように構成される。回収水供給ライン42から取り出される回収水は、回収水冷却装置110による冷却処理が施されているため、比較的低い温度を有する。
【0029】
低温給水ライン47には、水回収システム40の構成要素である水処理装置46が設けられている。水処理装置46は、低温給水ライン47を流れる回収水に対して例えば硫黄などの不純物を除去する処理を施すように構成される。不純物は燃焼器3(図1参照)での燃焼に伴って生じ、排ガス13に混入することがある。この不純物の少なくとも一部は、水回収装置33での排ガス13と冷媒水との熱交換により、回収水に溶解する。水処理装置46が、回収水に含まれる不純物を除去することで、補給水タンク17に貯留されるボイラ給水に不純物が含まれることが抑制される。一般に、処理される水の温度が低い方が、水処理装置46における不純物除去の処理能力は向上する。回収水の温度が高い場合、水処理装置46を構成するイオン交換樹脂146が損傷する可能性があり、不純物除去の処理能力が低下する虞がある。
【0030】
高温給水ライン44には高温給水開閉弁48が設けられ、低温給水ライン47には低温給水開閉弁45が設けられており、いずれの開閉弁も上述のコントローラ90によって制御される。例えば、オフガスなどであってもよい炭化水素ガス燃料の燃焼器3への供給量が多い場合(即ち、水素ガス燃料混焼率が低い場合)であって、排ガス13に混入する硫黄成分が許容値よりも高く、かつ許容上限値以下で存在する場合、排ガス13に混入する硫黄成分が多いため、コントローラ90は、高温給水開閉弁48を閉止し、低温給水開閉弁45を開放する。これにより、不純物の除去処理を要する低温の回収水が、低温給水ライン47に設けられる水処理装置46を経由して、補給水タンク17に流入する。よって、給水ライン19および排熱回収ボイラ14などのコジェネシステム100を構成する機器に不純物が付着するのが回避され、コジェネシステム100の劣化を抑制できる。他方で、水素ガス燃料混焼率が比較的高い場合、即ち、排ガス13に混入する硫黄成分が許容値以下の場合は、コントローラ90は、高温給水開閉弁48を開放し、低温給水開閉弁45を閉止する。これにより、不純物の除去処理を要さない高温の回収水が、高温給水ライン44を経由して補給水タンク17に流入する。補給水タンク17から排熱回収ボイラ14に供給されるボイラ給水の温度を高くできるので、コジェネシステム100の効率は向上する。このように、本例の水回収システム40では、水素ガス燃料混焼率に応じて、補給水タンク17に送る回収水の供給ラインを切り替えることが可能になる。
【0031】
<コントローラ90の構成>
図4は、本開示の一実施形態に係るコントローラ90を示す概略図である。コントローラ90はコンピュータによって構成されており、プロセッサ、メモリ、及び外部通信インタフェースを備える。プロセッサは、CPU、GPU、MPU、DSP、又はこれらの組み合わせなどである。他の実施形態に係るプロセッサは、PLD、ASIC、FPGA、またはMCU等の集積回路により実現されてもよい。メモリは、各種データを一時的または非一時的に記憶するように構成され、例えば、RAM、ROM、またはフラッシュメモリの少なくとも1つによって実現される。メモリにロードされたプログラムの命令にしたがって、プロセッサは各種制御処理を実行する。また、コントローラ90は、コジェネシステム100を構成する複数の制御盤の一つを構成するDCS盤であってもよい。
【0032】
このようなハードウェア構成を有するコントローラ90は、燃焼器3において発生する排ガス13を脱硝するための制御を実行する。より詳細には、コントローラ90は、上流側蒸気の供給制御と、還元剤の供給制御とを実行する。これらの制御は、コントローラ90が、第1流調弁153、第2流調弁154、上流側蒸気流調弁131B、下流側蒸気流調弁132B、および、還元剤供給流調弁126に弁開度を変更または維持するための制御信号を送ることなどによって実現される。これらの流量弁は各々、入力された制御信号に応じて弁開度の変更動作または維持動作を行ったのちに自身の開度を検出し、その検出結果をコントローラ90に返送するように構成されている。
【0033】
コントローラ90は、コジェネシステム100の出力である発電量を増加させるための増出力指令を取得するための増出力指令取得部94と、取得された増出力指令に応じて水素ガス燃料供給量と炭化水素ガス燃料供給量を制御するための燃料供給制御部99と、燃料供給制御部99によって制御された後の水素ガス燃料混焼率を設定するための水素ガス燃料混焼率設定部95とを備える。
【0034】
増出力指令取得部94は、例えば燃焼器3にて炭化水素ガス燃料と水素ガス燃料との混焼が起こっている間に、増出力指令を取得する。本例の燃料供給制御部99は、増出力指令に応じて水素ガス燃料混焼率が上昇するよう、第1流調弁153及び第2流調弁154に制御信号を送る。例えば、第1流調弁153の開度を低減するための制御信号と、第2流調弁154の開度を増加させるための制御信号が送られ、これにより水素ガス燃料混焼率は上昇する。なお、水素ガス燃料混焼率の上昇が増出力指令の取得を契機とすることに本開示は限定されない。別の例を挙げると、コジェネシステム100の二酸化炭素ガス排出量を低減させる指令が取得されたことを契機として、水素ガス燃料混焼率の上昇制御が実行されてもよい。水素ガス燃料混焼率設定部95は、燃料供給制御部99による制御の実行後、水素ガス燃料混焼率を現在の値に設定(更新)する。設定された水素ガス燃料混焼率は、コントローラ90のメモリに記憶され、後述のNOxパラメータの算出時に参照される。
【0035】
コントローラ90は、上流側蒸気ライン131を制御するための上流側蒸気制御部81をさらに備える。上流側蒸気制御部81は、タービン出口における実際のNOx排出量をタービン出口目標値以下になるように、上流側蒸気流調弁131Bに弁開度を変更する制御信号を送る。タービン出口目標値は、上述のボイラ出口目標値よりも高い値である。タービン出口目標値は、以下のように決定される。即ち、はじめに水素ガス燃料混焼率が設定されて、当該水素燃料混焼率に応じた上流側蒸気供給量が決定される。これら2つのパラメータに基づいて火炎28の温度が算出され、後述のソフトウェアモジュールに基づきタービン出口目標値は決定される。
【0036】
上流側蒸気制御部81は供給制御部810を含む。供給制御部810は、タービン出口目標値に基づいて上流側蒸気供給量を決定し、決定された上流側蒸気供給量である目標上流側蒸気供給量が実現されるよう上流側蒸気流調弁131Bを制御する。例えば、増出力指令の取得に伴って水素ガス燃料制御部92が水素ガス燃料混焼率を高い値に更新した場合、燃焼器3で生成されるNOx量が増大することとなるので、現在の上流側蒸気供給量よりも大きな目標上流側蒸気供給量が設定される。そして、供給制御部810は上流側蒸気流調弁131Bに開度を増大させるための制御信号を送る。
【0037】
また、上流側蒸気制御部81は、上流側蒸気供給量が、燃焼器3における失火を回避するための許容上限供給量以下となる条件を充足させるように構成される。具体的には、上流側蒸気制御部81は、上流側蒸気供給量が許容上限供給量を上回ると判定された場合に上流側蒸気供給量を低減させるための上流側蒸気低減制御部811を含む。上流側蒸気低減制御部811は、上流側蒸気流調弁131Bに開度を減少させる制御信号を送る。
【0038】
また、上流側蒸気制御部81は、タービン出口におけるNOx排出量をタービン出口目標値以下にするための上流側蒸気供給量である上述の目標上流側蒸気供給量が、許容上限供給量を下回る場合、上流側蒸気供給量が、目標上流側蒸気供給量を上回りかつ前記許容上限供給量以下となるよう、前記上流側蒸気ラインを制御するように構成される。
具体的には、上流側蒸気制御部81は、目標上流側蒸気供給量が、許容上限供給量を下回る場合において、上流側蒸気供給量を、目標上流側蒸気供給量を上回りかつ許容上限供給量以下となる所定の供給量に再設定するための上流側蒸気供給量再設定部813を含む。本例の上流側蒸気供給量再設定部813は、上流側蒸気供給量を許容上限供給量に近い値に設定し、上流側蒸気流調弁131Bに開度を増大させるための制御信号を送信する。これにより、実際の上流側蒸気供給量は再設定された上流側蒸気供給量まで増大し、当初の目標上流側蒸気供給量を上回る。
【0039】
また、上流側蒸気制御部81は、実際のNOx排出量がタービン出口目標値を上回ると判定された場合に、上流側蒸気供給量を増大させるための上流側蒸気増大制御部812を含む。上流側蒸気増大制御部812は、第1流調弁153に開度を増大させるための制御信号を送信する。また、上流側蒸気制御部81は、最終的な上流側蒸気供給量を決定するための上流側蒸気供給量決定部814をさらに含む。上流側蒸気供給量決定部814は、実際のNOx排出量がタービン出口目標値以下であると判定されたタイミングにおける実際の上流側蒸気供給量を、上流側蒸気流量計67の計測結果、または、上流側蒸気流調弁131Bの開度計測結果の少なくとも一方に基づいて取得する。取得された実際の上流側蒸気供給量が最終的な上流側蒸気供給量として決定され、コントローラ90のメモリに記憶される。この上流側蒸気供給量は、後述のNOxパラメータの算出時に参照される。
【0040】
コントローラ90は、下流側蒸気ライン132を制御するための下流側蒸気制御部82をさらに備える。下流側蒸気制御部82は、増出力指令取得部94によって取得された増出力指令の出力が実現されるよう下流側蒸気流調弁132Bを制御するための供給制御部820を含む。上述の通り、上流側蒸気供給量と下流側蒸気供給量の合計量が、ガスタービン9の出力増大に寄与する。しかし、上流側蒸気供給量の制御には、許容上限供給量と燃焼器3において必要となる脱硝量との兼ね合いから制約がある。そこで、本実施形態では、最終的な上流側蒸気供給量が決定された後に、タービン2に供給すべき蒸気の不足分を供給制御部820による下流側蒸気の供給制御によって賄うようになっている。
【0041】
さらに、下流側蒸気制御部82は、上流側蒸気供給量決定部814によって決定された上流側蒸気供給量と、下流側蒸気供給量との合計量である合計蒸気供給量が、圧縮機1のサージングを回避するための限界供給量以下になる条件を充足させながら、下流側蒸気ライン132を制御するように構成される。合計蒸気供給量が限界供給量に到達すると、圧縮機1の圧力比がサージングを回避するための許容上限圧力比に到達するため、合計蒸気供給量は限界供給量以下となることが好ましい。
そこで、下流側蒸気制御部82は、圧縮機1の圧力比を計測するための上述した空気圧力計測器61の計測結果に基づいて算出される圧力比が許容上限圧力比以下であるかを判定するように構成される圧力比判定部97と、圧力比が許容上限圧力比を上回ると判定された場合に下流側蒸気供給量を低減させるための下流側蒸気低減制御部821とをさらに含む。下流側蒸気低減制御部821は、下流側蒸気流調弁132Bに開度を低減させる制御信号を送る。
【0042】
コントローラ90は、排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量がボイラ出口目標値以下になるよう、脱硝装置120に制御指令を出力するための脱硝制御部93をさらに備える。
【0043】
脱硝制御部93は、タービン2の出口(タービン出口)におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータを取得するためのNOxパラメータ取得部935を含む。本例のNOxパラメータは、水素ガス燃料混焼率、ヘッドエンド蒸気噴射率、及び、火炎28の温度に基づいた演算によって求まる、タービン出口におけるNOx排出量の推定値(以下、「推定NOx排出量」ともいう)である。推定NOx排出量は、タービン出口におけるNOx排出量の目標値として扱われてもよい。
なお、ヘッドエンド蒸気噴射率は、圧縮機入口空気6の流量に対する上流側蒸気供給量の割合である。圧縮機入口空気6の流量は、空気圧力計測器61および圧縮機入口空気流量計64の計測結果に基づき特定可能である。火炎28の温度は、水素ガス燃料供給量、炭化水素ガス燃料供給量、および、圧縮機入口空気6の流量に基づいた演算によって求まる推定値であってもよい。
【0044】
図5は、タービン出口におけるNOx排出量の特性を示す概略図であり、実験により求められるNOx排出量の特性を示す。同図に示すように、蒸気噴射率(圧縮機入口空気6の流量に対する上流側蒸気供給量の割合でヘッドエンド蒸気噴射率)、水素ガス燃料混焼率、火炎28の温度、および、燃焼器3において発生するNOx量は、規定の関係を互いに有する。本実施形態では、同グラフの縦軸のNOx排出量が推定NOx排出量として扱われる。具体的には、同図で示される関係が関数式、データテーブル、または学習モデルとしてソフトウェアモジュールに記憶され、NOxパラメータ取得部935は推定NOx排出量としてのNOxパラメータを取得できる。ソフトウェアモジュールは、関数式、データテーブル、または、機械学習を終えた学習モデルを記憶する演算装置であり、当該演算装置はコントローラ90に組み込まれてもよい。蒸気噴射率、水素ガス燃料混焼率、および、火炎28の温度が入力パラメータとしてソフトウェアモジュールに入力され、ソフトウェアモジュールから出力パラメータとして出力される推定NOx排出量をNOxパラメータ取得部935は取得するようになっている。
【0045】
図6は、本開示の一実施形態に係るNOxパラメータ(推定NOx排出量)の特性を示す概略図である。同図では、NOxパラメータの予測特性を、実験結果に基づいて作成したグラフを示している(図7も同様である)。同図で示されるように、ヘッドエンド蒸気噴射率が上がるほど、NOxパラメータは下がり、また、水素ガス燃料混焼率が上昇するほど、NOxパラメータは上がる。なお、ヘッドエンド蒸気噴射率のA%は、上述の許容上限供給量に相当する蒸気噴射率である。
【0046】
図7は、本開示の一実施形態に係るNOxパラメータ(推定NOx排出量)の特性を示す別の概略図である。同図で示すように、水素ガス燃料混焼率に関わらず、ヘッドエンド蒸気噴射率を上昇させるほど、NOxパラメータは減少し、脱硝装置120において必要な脱硝用の還元剤(アンモニア)の添加量は低下することとなる。また、同図で示される通り、許容上限供給量に相当するヘッドエンド蒸気噴射率(A%)は、水素ガス燃料混焼率に関わらず同じである。その理由は、以下の通りである。ヘッドエンド蒸気噴射率(A%)は、燃焼安定性上決定される噴射率であり、燃焼領域の水蒸気分圧と酸素分圧によって決定されるため、酸化されるガスの成分の影響は小さいためである。
【0047】
図4に戻り、脱硝制御部93は、NOxパラメータに基づく演算によって還元剤の第1添加量を取得(算出)するための第1添加量演算部931と、算出された第1添加量を少なくとも参照して、脱硝装置120の還元剤供給流調弁126に制御指令を出力するための制御指令生成部936とをさらに含む。第1添加量演算部931によって行わる演算は、NOxパラメータ取得部935によって得られたNOxパラメータに基づいたフィードフォワード演算であり、制御指令生成部936によって生成される上記の制御指令は、フィードフォワード制御指令である。
【0048】
排熱回収ボイラ14よりも上流側におけるタービン出口におけるNOxパラメータに基づいて算出される第1添加量は、脱硝装置120に将来的に求められる還元剤の量(脱硝用アンモニア供給量)を示す。脱硝制御部93がフィードフォワード制御指令を生成する構成によれば、脱硝制御部93の制御指令生成部936は、NOxパラメータに基づく還元剤の第1添加量を参照して、還元剤供給流調弁126に入力するための制御指令をフィードフォワード制御指令として生成する。これにより、タービン2にて発生したNOxが排熱回収ボイラ14の内部の脱硝領域Rに到達する前に、脱硝装置120は当該NOxを脱硝するための動作を開始できる。従って、ガスタービン9における水素ガス燃料混焼率が上昇する場合において、ガスタービン9から排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるコジェネシステム100が実現される。
なお、NOxパラメータは推定NOx排出量であることに限定されない。例えば、NOxパラメータがタービン出口NOx計測器69によって計測される実際のNOx排出量であってもよい。この場合であっても、当該NOx排出量に基づいて第1添加量演算部931がフィードフォワード演算を実行して第1添加量が算出されれば、上記利点が得られる。
【0049】
また、NOxパラメータが推定NOx排出量である実施形態によれば、水素ガス燃料供給量および上流側蒸気供給量を制御するための制御指令(弁開度指令)が生成された時点で推定NOx排出量を算出することも可能になる。この制御指令によって示される水素ガス燃料供給量および上流側蒸気供給量が実際に供給されるはじめる前に、脱硝制御部93の制御指令生成部936は脱硝剤の第1添加量を参照して、脱硝装置120に入力するための制御指令を生成できる。よって、脱硝装置120は、ガスタービン9から排出されるNOx量の増大に素早く追従した脱硝動作を実行できる。
【0050】
図4で示される脱硝制御部93は、さらに、還元剤の添加量をフィードバック制御するように構成される。具体的には、脱硝制御部93は、ボイラ出口目標値と、排熱回収ボイラ出口NOx計測器70の計測により求まる排熱回収ボイラ出口における実際のNOx排出量との偏差であるボイラ出口NOx偏差を取得するためのボイラ出口NOx偏差取得部934と、ボイラ出口NOx偏差取得部934に基づく演算によって還元剤の第2添加量を取得(算出)するための第2添加量演算部932をさらに含む。第2添加量演算部932によって実行される演算はフィードバック演算である。なお、ボイラ出口目標値は、コジェネシステム100が設置される地域において規制される規制値に一定の余裕度を反映した値であり、一定の値である。
【0051】
制御指令生成部936は、第1添加量を参照して制御指令を生成することに加えて、第2添加量を参照して制御指令を生成するように構成される。第2添加量に基づいて生成される制御指令は、フィードバック制御指令であり、還元剤供給流調弁126に入力される弁開度の制御信号である。制御指令生成部936がフィードバック制御指令を生成する構成によれば、排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下に確実にすることができる。
【0052】
また、上流側蒸気供給量が許容上限供給量以下となる条件を充足させながら、上流側蒸気制御部81が上流側蒸気ライン131を制御する構成によれば、上流側蒸気供給量が許容上限供給量を上回り、燃焼器3において失火が発生するのを抑制できる。
【0053】
また、上流側蒸気制御部81が上流側蒸気供給量再設定部813を含む構成によれば、燃焼器3のヘッドエンド24側に流入する上流側蒸気供給量を燃焼器3における失火を回避しつつ増大させることができる。燃焼器3における脱硝量を最大限まで増大させることができるので、脱硝装置120における脱硝量を低減することができ、還元剤の添加量を低減することが可能になる。
【0054】
また、合計蒸気供給量が圧縮機1のサージングを回避するための限界供給量以下になる条件を充足させながら、下流側蒸気制御部82が下流側蒸気ライン132を制御する構成によれば、NOx排出量をタービン出口目標値以下にするための上流側蒸気供給量が決定された後に、下流側蒸気制御部82は、合計蒸気供給量が限界供給量以下になる条件を充足させながら、下流側蒸気供給量を制御する。これにより、燃焼器3における脱硝量を増大させつつ、圧縮機1のサージングも併せて回避することが可能になる。
【0055】
また、水素ガス燃料混焼率が上昇するほど、ガスタービン9から排出される燃焼ガス12に含まれる水分の量が増大する。この点、コジェネシステム100が水回収システム40と補給水タンク17を備える構成によれば、ガスタービン出口における排ガス13中の水分は、圧縮機1の圧縮機入口空気6中水分、ガスタービン9での蒸気噴射による水分及び燃焼生成水分からなる。圧縮機入口空気6中水分は、排気塔30、或いは、水回収装置33の出口から系外に排出されるが、蒸気噴射水分及び燃焼生成水分は、水回収システム40で回収され、蒸気噴射水分は、ボイラ給水として再利用され、燃焼生成水分は、余剰水となるため、コジェネシステム100は造水プラントとしても機能することができる。
【0056】
<コジェネシステム100の運転方法>
図8図9は、本開示の一実施形態に係るコジェネシステム制御処理を示すフローチャートであり、コジェネシステム100の運転方法の一例を示す。コジェネシステム制御処理は、水素ガス燃料混焼率の上昇時に上流側蒸気供給量と還元剤の供給量とを変更するための制御処理である。制御処理は、コントローラ90のプロセッサによって実行される。以下の説明では、「コントローラ90のプロセッサ」を「プロセッサ」と略記し、「ステップ」を「S」と略記する場合がある。なお、コジェネシステム制御処理の開始前、燃焼器3では炭化水素ガス燃料と水素ガス燃料との混焼が既に起こっている。
【0057】
はじめに、プロセッサは、増出力指令を取得する(S1)。S1を実行するプロセッサは上述の増出力指令取得部94の一例である。次いで、プロセッサは、S1で取得された増出力指令に応じて、水素ガス燃料供給量と炭化水素ガス燃料供給量を制御する(S3)。具体的には、増出力指令に対応した弁開度の制御信号が第1流調弁153と第2流調弁154に送られる。本例では、第1流調弁153の開度を低減する制御信号と、第2流調弁154の開度を増大する制御信号が送られて、水素ガス燃料混焼率は増大することとなる。S3を実行するプロセッサは上述の燃料供給制御部99の一例である。
【0058】
次いで、プロセッサは水素ガス燃料混焼率を設定する(S5)。例えば、S3が実行された後における、第1流調弁153の開度、第2流調弁154の開度、第1流量計71の計測結果、および、第2流量計72の計測結果に基づき、水素ガス燃料混焼率が算出され、プロセッサは算出された水素ガス燃料混焼率をコントローラ90のメモリに記憶する(S5)。S5を実行するプロセッサは上述の水素ガス燃料混焼率設定部95の一例である。
【0059】
次いで、プロセッサは、上流側蒸気供給量を制御する(S7)。S7を実行するプロセッサは上述の供給制御部810の一例である。次いで、プロセッサは、上流側蒸気供給量が許容上限供給量以下であるかを、例えば上流側蒸気流量計67の計測結果に基づいて判定する。上流側蒸気供給量が許容上限供給量を上回ると判定された場合(S11:NO)、プロセッサは、上流側蒸気供給量を低減する制御を実行する(S13)。S13を実行するプロセッサは上述の上流側蒸気低減制御部811の一例である。
【0060】
上流側蒸気供給量が許容上限供給量以下であると判定された場合(S11:YES)、プロセッサは、上流側蒸気供給量を、現在の上流側蒸気流量計67において計測される上流側蒸気供給量よりも高い値に再設定する(S15)。そして、再設定された値の上流側蒸気供給量が実現されるよう、プロセッサは上流側蒸気流調弁131Bに制御信号を送る。これにより、上流側蒸気供給量は増大する(但し、この上流側蒸気供給量は許容上限供給量以下である)。S15を実行するプロセッサは上述の上流側蒸気供給量再設定部813の一例である。
【0061】
次いで、プロセッサは、タービン出口における実際のNOx排出量がタービン出口目標値以下になるかを判定する(S17)。例えば、タービン出口NOx計測器69によって計測されるNOx量とタービン出口目標値とが比較されて、大小関係が判定される。実際のNOx排出量がタービン出口目標値を上回ると判定された場合(S17:NO)、プロセッサは、上流側蒸気供給量を増大させる制御を実行する(S19)。但し、増大後の上流側蒸気供給量は、許容上限供給量以下である。S19を実行するプロセッサは上述の上流側蒸気増大制御部812の一例である。
【0062】
タービン出口における実際のNOx排出量がタービン出口目標値以下であると判定された場合(S17:YES)、当該判定タイミングにおける上流側蒸気供給量をプロセッサは決定する(S21)。より詳細には当該タイミングにおける、上流側蒸気流量計67と上流側蒸気流調弁131Bの開度とに基づいて、上流側蒸気供給量が決定されて、当該上流側蒸気供給量がコントローラ90のメモリに記憶される(S21)。S21を実行するプロセッサは上述の上流側蒸気供給量決定部814の一例である。
【0063】
次いで、プロセッサは、脱硝装置120を制御する脱硝制御を実行する(S23)。S23を実行するプロセッサは上述の脱硝制御部93の一例である。脱硝制御の詳細は後述する。
【0064】
図9で示すように、プロセッサは、下流側蒸気供給量を制御する(S31)。具体的には、S1で取得された増出力指令が実現されるよう、下流側蒸気流調弁132Bを制御する。S31を実行するプロセッサは上述の供給制御部820の一例である。
【0065】
次いで、プロセッサは、圧力比が許容上限圧力比以下であるかを判定する(S33)。S33を実行するプロセッサは上述の圧力比判定部97の一例である。圧力比が許容上限圧力比を上回ると判定された場合(S33:NO)、プロセッサは下流側蒸気供給量を低減する制御を実行する(S35)。S35を実行するプロセッサは上述の下流側蒸気低減制御部821の一例である。圧力比が許容上限圧力比以下であると判定された場合(S33:YES)、プロセッサは、ガスタービン9の出力がS1で取得された増出力指令の示す目標出力に到達したかを判定する(S37)。発電機出力計測器65で計測される発電量が目標となる発電量に到達していないと判定された場合(S37:NO)、プロセッサは下流側蒸気供給量を増大させる制御を実行する(S39)。S39では、弁開度を増大する制御信号が下流側蒸気流調弁132Bに送られる。計測される発電量が目標となる発電量に到達したと判定された場合(S37:YES)、プロセッサはコジェネシステム制御処理を終了する。
【0066】
図10を参照して、脱硝制御処理を説明する。脱硝制御処理は、脱硝装置120による脱硝動作を制御するための処理である。プロセッサは、S5で設定された水素ガス燃料混焼率、および、S21で決定された上流側蒸気供給量に基づいてNOxパラメータを取得する(S51)。より詳細には、上流側蒸気供給量、および、圧縮機入口空気6の流量に基づく蒸気噴射率と、水素ガス燃料混焼率と、火炎28の温度とが上述のソフトウェアモジュールに入力され、推定NOx排出量が取得される。S51を実行するプロセッサは上述のNOxパラメータ取得部935の一例である。
【0067】
プロセッサは、S51で取得されたNOxパラメータに基づくフィードフォワード演算によって第1添加量を算出する(S53)。S53を実行するプロセッサは上述の第1添加量演算部931の一例である。次いで、プロセッサは、第1添加量に対応する弁開度を示す制御指令をフィードフォワード制御指令として生成し、還元剤供給流調弁126に送る(S55)。
【0068】
次いで、プロセッサは、ボイラ出口NOx偏差を取得する(S57)。S57を実行するプロセッサは上述のボイラ出口NOx偏差取得部934の一例である。そして、プロセッサは、S57で取得したボイラ出口NOx偏差を0または0とみなせる値にするための第2添加量をフィードバック演算により求める(S59)。S59を実行するプロセッサは上述の第2添加量演算部932の一例である。次いで、プロセッサは、第2添加量に対応する弁開度を示す制御指令をフィードバック制御指令として生成し、還元剤供給流調弁126に送る(S61)。S55とS61を実行するプロセッサは上述の制御指令生成部936の一例である。その後、プロセッサは脱硝制御処理を終了する。
【0069】
<まとめ>
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0070】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム(100)は、
圧縮機(7)、燃焼器(3)、および、タービン(2)を含むガスタービン(9)と、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備(51)と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備(52)と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド(24)側に供給するための上流側蒸気ライン(131)と、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤(アンモニアガス)を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置(120)と、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御部(93)と
を備え、
前記脱硝制御部は、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令を生成するように構成される。
【0071】
排熱回収ボイラよりも上流に位置するタービンのタービン出口におけるNOx排出量が判明すれば、脱硝装置に将来的に求められる脱硝量を特定できる。上記1)の構成によれば、脱硝制御部は、NOxパラメータに基づく還元剤の第1添加量を参照して制御指令を生成するので、タービンにて発生したNOxが排熱回収ボイラの内部の脱硝領域に到達する前に、脱硝装置は当該NOxを脱硝するための動作を開始できる。これにより、ガスタービンにおける水素ガス燃料混焼率が上昇する場合において、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるガスタービンコジェネシステムが実現される。
【0072】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記制御指令は、前記ボイラ出口目標値と、計測によって求まる前記排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量との偏差に基づく演算によって得られる前記還元剤の第2添加量を参照して、前記制御指令を生成するように構成される。
【0073】
上記2)の構成によれば、排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量のボイラ出口目標値と計測によって求まる排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量との偏差に基づく還元剤の第2添加量を参照して、脱硝制御部は制御指令を生成するので、排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下に確実にすることができる。
【0074】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記NOxパラメータは、前記水素ガス燃料供給設備によって供給される前記水素ガス燃料の供給量である水素ガス燃料供給量と、前記上流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である上流側蒸気供給量とに基づいた演算によって得られる前記タービン出口における推定NOx排出量である。
【0075】
上記3)の構成によれば、水素ガス燃料供給量および上流側蒸気供給量を制御するための制御指令が生成された時点で推定NOx排出量を算出することが可能になる。制御指令によって示される水素ガス燃料供給量および上流側蒸気供給量が実際に供給されはじめる前に、脱硝制御部は推定NOx排出量に基づく脱硝剤の第1添加量を参照して制御指令を生成できる。よって、脱硝装置は、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従した脱硝動作を実行できる。
【0076】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムは、
前記上流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である上流側蒸気供給量が許容上限供給量以下となる条件を充足させながら、前記タービン出口における実際のNOx排出量を、前記ボイラ出口目標値よりも高いタービン出口目標値以下になるように、前記上流側蒸気ラインを制御するための上流側蒸気制御部(81)をさらに備える。
【0077】
上記4)の構成によれば、上流側蒸気供給量が許容上限供給量を上回りガスタービンの燃焼器において失火が発生するのを抑制できる。
【0078】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記上流側蒸気制御部は、前記タービン出口における前記NOx排出量を前記タービン出口目標値以下にするための前記上流側蒸気供給量である目標上流側蒸気供給量が、前記許容上限供給量を下回る場合、前記上流側蒸気供給量が、前記目標上流側蒸気供給量を上回りかつ前記許容上限供給量以下となるよう、前記上流側蒸気ラインを制御するように構成される。
【0079】
上記5)の構成によれば、上流側蒸気供給量が、目標上流側蒸気供給量と許容上限供給量以下の値に設定されるので、燃焼器に流入する蒸気の流量を燃焼器における失火を回避しつつ増大させることができる。燃焼器における脱硝量を増大させることができるので、脱硝装置における脱硝量を低減することができ、還元剤の添加量を低減することが可能になる。
【0080】
6)幾つかの実施形態では、上記4)または5)に記載のガスタービンコジェネシステムであって、
前記上流側蒸気制御部は、前記タービン出口における実際のNOx排出量を前記タービン出口目標値以下にするための前記上流側蒸気供給量を決定するための上流側蒸気供給量決定部(814)を有し、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器における前記ヘッドエンドよりも前記タービン側に供給するための下流側蒸気ライン(132)と、
前記下流側蒸気ラインによって供給される前記蒸気の供給量である下流側蒸気供給量と、前記上流側蒸気供給量決定部によって決定された前記上流側蒸気供給量との合計量である合計蒸気供給量が、前記圧縮機のサージングを回避するための限界供給量以下になる条件を充足させながら、前記下流側蒸気ラインを制御するための下流側蒸気制御部(82)と、
をさらに備える。
【0081】
上記6)の構成によれば、NOx排出量をタービン出口目標値以下にするための上流側蒸気供給量が決定された後に、下流側蒸気制御部は、合計蒸気供給量が限界供給量以下になる条件を充足させながら、下流側蒸気供給量を制御する。これにより、燃料器における脱硝量を増大させつつ、圧縮機のサージングも併せて回避することが可能になる。
【0082】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載のガスタービンコジェネシステムは、
前記排熱回収ボイラの前記排ガスと冷媒水との熱交換によって前記排ガスから水分を回収するための水回収システム(40)と、
前記水回収システムによって回収された回収水を、前記排熱回収ボイラに供給するためのボイラ給水を貯める補給水タンク(17)と、
をさらに備える。
【0083】
水素ガス燃料混焼率が上昇するほど、ガスタービンから排出される燃焼ガスに含まれる水分の量が増大する。この点、上記7)の構成によれば、水回収システムによって排ガスから回収された水分を排熱回収ボイラに供給されるボイラ給水として再利用でき、ガスタービンコジェネシステは造水プラントとしても機能することができる。
【0084】
8)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンコジェネシステム(100)の運転方法であって、
前記ガスタービンコジェネシステムは、
圧縮機(7)、燃焼器(3)、および、タービン(2)を含むガスタービン(9)と、
炭化水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための炭化水素燃料供給設備(51)と、
水素ガスを主成分とする燃料である水素ガス燃料を前記燃焼器に供給するための水素ガス燃料供給設備(52)と、
前記タービンの排ガスを用いて蒸気を生成するための排熱回収ボイラ(14)と、
前記排熱回収ボイラから排出される前記蒸気を、前記燃焼器におけるヘッドエンド側に供給するための上流側蒸気ライン(131)と、
前記排熱回収ボイラを流れる前記排ガスに還元剤(アンモニアガス)を添加することで前記排ガスを脱硝するための脱硝装置(120)と、
を含み、
排熱回収ボイラ出口におけるNOx排出量をボイラ出口目標値以下にするための制御指令を前記脱硝装置に出力するための脱硝制御ステップ(S23)を備え、
前記脱硝制御ステップでは、タービン出口におけるNOx排出量と相関するパラメータであるNOxパラメータに基づく演算によって得られる前記還元剤の第1添加量を少なくとも参照して、前記制御指令が生成される。
【0085】
上記8)の構成によれば、上記1)と同様の理由により、ガスタービンにおける水素ガス燃料混焼率が上昇する場合において、ガスタービンから排出されるNOx量の増大に素早く追従して脱硝動作を実行できるガスタービンコジェネシステムが実現される。
【符号の説明】
【0086】
1 :圧縮機
2 :タービン
3 :燃焼器
5 :発電機
6 :圧縮機入口空気
7 :圧縮空気
9 :ガスタービン
10 :蒸気需要体
12 :燃焼ガス
13 :排ガス
14 :排熱回収ボイラ
17 :補給水タンク
24 :ヘッドエンド
40 :水回収システム
51 :炭化水素燃料供給設備
52 :水素ガス燃料供給設備
81 :上流側蒸気制御部
82 :下流側蒸気制御部
93 :脱硝制御部
100 :コジェネシステム(ガスタービンコジェネシステム)
120 :脱硝装置
131 :上流側蒸気ライン
132 :下流側蒸気ライン
814 :上流側蒸気供給量決定部
R :脱硝領域

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10