(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078835
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】アジャスター付き台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20240604BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B62B3/02 H
B62B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191409
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037051
【氏名又は名称】ダイワアドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊代 琢
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA13
3D050BB02
3D050BB22
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050FF03
3D050GG01
3D050HH02
3D050KK19
(57)【要約】
【課題】機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車において、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとっても、操作が容易なアジャスター付き台車を提供する。
【解決手段】移動フレーム3は、樹脂である合成樹脂材料によって成形されたフレーム部材によって構成している。ここで合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン等の合成樹脂材など、積載物を搬送する搬送用パレットと同様の合成樹脂材料で成形している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内に据付設置される機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車であって、
高さ調整を行えるアジャスター装置が下部に設けられ、前記機械設備等を上方で支持するベース部材と、
自由に移動できるようにキャスターが下部に設けられ、前記ベース部材に付勢手段を介して吊下げ支持されて、該ベース部材に対して上下動できるように構成された移動部材と、
該移動部材に一端が連係されて、他端には作業者が踏み込む踏込み面が設けられており、作業者が足で踏み込み操作を行うと、前記移動部材が上下動する踏込み操作ペダルと、を備えており、
前記移動部材は、金属材料よりも軽量な樹脂材料で成形されていることを特徴とする
アジャスター付き台車。
【請求項2】
前記移動部材は、中空のフレーム部材で構成されていることを特徴とする
請求項1記載のアジャスター付き台車。
【請求項3】
前記移動部材は、平面視矩形のフレーム構造で構成されており、該フレーム構造の角部の下面に、前記キャスターを設けていることを特徴とする
請求項1又は2記載のアジャスター付き台車。
【請求項4】
前記ベース部材は、樹脂材料よりも剛性の高い金属材料で成形されていることを特徴とする
請求項1記載のアジャスター付き台車。
【請求項5】
前記ベース部材は、金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されていることを特徴とする
請求項1記載のアジャスター付き台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジャスター付き台車に関し、特に、機械設備等の下部に配置されて、その機械設備等の据付作業や移動作業等を容易に行うことができるアジャスター付き台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工場内には様々な機械設備等が設置されて、各種製品の製造ラインや検査ライン等の機械設備のラインが組まれることがある。このように、機械設備のライン等を工場内に組む場合には、各機械設備の設置高さや傾き角度を微細に調整して据付ける必要があるため、機械設備等の下部にはアジャスター装置を配置して、このアジャスター装置を利用して高さや傾きを調整することが知られている。
【0003】
ところで、工場内の清掃を行う際は、機械設備等を据付けた床面も清掃する。その場合には、機械設備等の下方にキャスター付き台車を設置し、このキャスター付き台車で、機械設備等を据付位置から別の位置に移動させて床面を清掃することが行われる。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載された台車のように、四角の隅にアジャスター装置を設けたキャスター付き台車を利用して、機械設備等を移動することが考えられる。この台車のように、台車にアジャスター装置があることで、機械設備等の高さや傾き角度を微細に調整することができる。また、台車がキャスター付きであることで、機械設備等を工場内で自由に移動させることもできる。
【0005】
もっとも、このアジャスター付き台車を利用して機械設備等を移動させる場合には、4つのアジャスター装置の設置面(フット部)を上昇させて、キャスターを床面に接地させるため、機械設備等を移動させる度に、アジャスター装置の設置面(フット部)を、操作して上昇させる必要がある。しかし、このように、アジャスター装置の設置面を操作して上昇させてしまうと、再度、機械設備等を据付位置に据付ける際に、4つのアジャスター装置を再度調整しなければならず、機械設備等の移動作業と据付作業の切り替えが、非常に煩雑になるという問題がある。
【0006】
こうした問題を解消するため、例えば、下記特許文献2に記載された台車のように、ベース部材(ベース板)に対して上下方向に移動する移動部材(接地部材)を設けて、この移動部材(接地部材)に連係されたペダルを踏み込むと、その移動部材(接地部材)が上下方向に移動して、移動作業と据付作業の切り替えを、単にペダルを踏み込むという簡単な作業だけで行えるように構成することが考えられる。
【0007】
なお、上記特許文献2の台車には、アジャスター装置が設けられていないものの、仮にこの特許文献2に記載された技術を参考にして、アジャスター付き台車を考えると、ベース部材側にアジャスター装置を設けて、移動部材側にキャスターを設けるというアジャスター付き台車が考えられる。
【0008】
このようにアジャスター付き台車を考えると、ベース部材を基準にして、アジャスター装置の調整作業を行うことができるため、機械設備等の据付位置の調整精度を、より高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-16779号公報
【特許文献2】特開2013-43533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、こうしたアジャスター付き台車では、機械設備等の重量物が載置されるため、重量物に耐えうる強い剛性が必要である。このため、こうした台車は、通常、金属材料によって構成される。例えば、アルミニウム合金等の金属材料でベース部材や移動部材を構成されるのが一般である。
【0011】
もっとも、このうち移動部材は、ベース部材に対して、コイルスプリング等の付勢手段によって吊下げ支持されており、移動部材に連係されたペダルを、この付勢手段の付勢力に抗する力で踏み込んで、移動部材をベース部材に対して上下動させるように構成している。
【0012】
このため、移動部材を金属材料で構成した場合には、移動部材が必然的に重たくなり、この重たくなった移動部材を吊下げ支持するために、コイルスプリング等の付勢手段の付勢力は高めなければならない。
【0013】
しかし、付勢手段の付勢力が高まると、この付勢力に抗してペダルを踏み込む際の踏み込み力も高まってしまい、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとっては、操作がしにくいアジャスター付き台車になってしまうという問題がある。
【0014】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車において、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとっても、操作が容易なアジャスター付き台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
その目的を達成するために、この発明では、機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車であって、アジャスター装置が設けられるベース部材と、該ベース部材に付勢手段を介して吊下げ支持されて、キャスターが設けられる移動部材と、該移動部材に連係されて該移動部材を上下動させる踏込み操作ペダルと、を備えており、前記移動部材が金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されたことを特徴とするものである。
【0016】
具体的に、第1の発明では、工場内に据付設置される機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車であって、高さ調整を行えるアジャスター装置が下部に設けられ、前記機械設備等を上方で支持するベース部材と、自由に移動できるようにキャスターが下部に設けられ、前記ベース部材に付勢手段を介して吊下げ支持されて、該ベース部材に対して上下動できるように構成された移動部材と、該移動部材に一端が連係されて、他端には作業者が踏み込む踏込み面が設けられており、作業者が足で踏み込み操作を行うと、前記移動部材が上下動する踏込み操作ペダルと、を備えており、前記移動部材は、金属材料よりも軽量な樹脂材料で成形されていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、移動部材が金属材料よりも軽量な樹脂材料で成形されているため、移動部材を吊下げ支持する付勢手段の付勢力をあまり高めなくても、移動部材をベース部材に吊下げ支持することができる。
【0018】
このため、踏込み操作ペダルの踏み込み力が低くても、移動部材を上下動させることができ、比較的、楽に、移動部材に設けたキャスターを床面に接地させることができる。
【0019】
なお、移動部材は、樹脂材料で成形されていれば、どのような樹脂材料で成形されていても良いが、望ましくは、積載物を搬送する搬送用パレットと同様の合成樹脂材料のように、成形後にある程度の剛性を有する樹脂材料の方が良い。
【0020】
また、移動部材は、全てを樹脂材料で成形していなくても、一部を金属材料で構成していても良い。
【0021】
さらに、移動部材の形状についても、ベース部材に対して、付勢手段で吊下げ支持されるものであれば、どのような形状であっても良い。
【0022】
加えて、移動部材の成形方法についても、射出成形や押出成形等、どのような成形方法であっても良い。
【0023】
第2の発明では、前記移動部材は、中空のフレーム部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、移動部材が中空のフレーム部材で構成されているため、移動部材をさらに軽くすることができ、移動部材を吊下げ支持する付勢手段の付勢力が低くても、移動部材をベース部材に吊下げ支持することができる。
【0025】
このため、踏込み操作ペダルの踏み込み力がさらに低くても、移動部材を上下動させることができ、より楽に、移動部材に設けたキャスターを床面に接地させることができる。
【0026】
よって、機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車において、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとって、より操作が容易なアジャスター付き台車とすることができる。
【0027】
第3の発明では、前記移動部材は、平面視矩形のフレーム構造で構成されており、該フレーム構造の角部の下面に、前記キャスターを設けていることを特徴とするものである。
【0028】
この構成によれば、移動部材を平面視矩形のフレーム構造で構成して、そのフレーム構造の角部の下面にキャスターを設けたため、移動部材を樹脂材料で成形して剛性が低くても、フレーム構造の角部というフレーム構造の中でも比較的剛性の高い場所にキャスターを設けることになる。
【0029】
このため、機械設備等を移動させる際に、移動部材に機械設備等の重量が作用しても、キャスターの設置位置に変形等が生じることがない。
【0030】
よって、機械設備等を移動する際に、キャスターが安定して作動するため、機械設備等の移動を安定して行うことができる。
【0031】
第4の発明では、前記ベース部材は、樹脂材料よりも剛性の高い金属材料で成形されていることを特徴とするものである。
【0032】
この構成によれば、ベース部材は、移動部材と異なり樹脂材料よりも剛性の高い金属材料で成形されることで、ベース部材で機械設備等を支持した際、ベース部材の変形を抑えることができる。
【0033】
よって、ベース部材に設けたアジャスター装置の高さ調整の精度が、長期間維持されて、機械設備等の据付精度を、長期間に亘って安定して維持することができる。
【0034】
第5の発明では、前記ベース部材は、金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されていることを特徴とするものである。
【0035】
この構成によれば、移動部材だけでなく、ベース部材も、金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されることで、アジャスター付き台車の全体を、軽量に構成することができる。
【0036】
よって、アジャスター付き台車自体の持ち運び作業等を、比較的楽に行えるようにできる。
【発明の効果】
【0037】
以上、説明したように、本発明によれば、踏込み操作ペダルの踏み込み力が低くても、移動部材を上下動させることができ、比較的楽に、移動部材に設けたキャスターを床面に接地させることができる。
【0038】
よって、機械設備等の下部に配置されるアジャスター付き台車において、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとっても、操作が容易なアジャスター付き台車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施形態1に係るアジャスター付き台車の前方斜視図である。
【
図2】実施形態1のアジャスター付き台車の側面図である。
【
図3】実施形態1のアジャスター付き台車のキャスター降下時の側面図である。
【
図5】実施形態1のアジャスター付き台車のキャスター上昇時の縦断面図である。
【
図6】実施形態1のアジャスター付き台車のキャスター降下時の縦断面図である。
【
図8】実施形態2に係るアジャスター付き台車の前方斜視図である。
【
図9】実施形態2のアジャスター付き台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
(実施形態1)
図1は本実施形態のアジャスター付き台車の前方斜視図で、
図2は、このアジャスター付き台車の側面図である。また、
図3は、このアジャスター付き台車のキャスター降下時の側面図で、
図4は、
図1のA-A線矢視断面図である。さらに、
図5は、キャスター上昇時の縦断面図、
図6は、キャスター降下時の縦断面図、
図7は、
図6のB部詳細図である。
【0042】
このアジャスター付き台車Dは、金属製のベース部材としてのベースフレーム1と、該ベースフレームの下部に設けたアジャスター装置2,2,2,2と、樹脂製の移動部材としての移動フレーム3と、該移動フレーム3の下部に設けたキャスター4,4,4,4と、この移動フレーム3をベースフレーム1に対して吊下げ支持する付勢手段としてのコイルスプリング5(5A,5B)と、この移動フレーム3をベースフレーム1に対して上下に平行移動するように支持するリンク機構部6(6A,6B)と、移動フレーム3を作業者の踏込み力で上下動させるペダル機構部7と、を備えている。
【0043】
まず、前述のベースフレーム1は、金属材料であるアルミ合金材料によって成形された複数のフレーム部材によって構成されている。具体的には、前後方向に延びる長尺の角柱状の2つの縦フレーム11a,11bと、短尺で左右方向に延びる角柱状の4つの横フレーム12a,12b,12c,12dと、短尺の上下方向に延びる角柱状の4つの脚フレーム13a,13b,13c,13dとからなり、このうち、2つの縦フレーム11a,11bと2つの横フレーム12a,12bとで、ベースフレーム1の長方形の外枠部10Aを構成している。
【0044】
そして、残りの2つの横フレーム12c,12dは、一対の縦フレーム11a,11bの間で、前後方向に所定間隔を空けて配置され、縦フレーム11a,11bの内側側面に固定ブラケット14…を介して固定されることで、ベースフレーム1の桟部10B,10Bを構成している。
【0045】
さらに、4つの脚フレーム13a,13b,13c,13dは、ベースフレーム1の外枠部10Aの各四隅の下方に、固定ブラケット14…を介して固定されることで、ベースフレーム1の脚部10C,10C,10C,10Cを構成している。
【0046】
また、このベースフレーム1の外枠部10Aの上面には、
図2や
図3で、二点鎖線で示すように、大型の機械設備Mが載置できるように構成している。なお、この機械設備Mとベースフレーム1の外枠部10Aは、図示しないが、機械設備Mがベースフレーム1からズレ落ちないように、固定部材等を介して固定するのが望ましい。
【0047】
前述したアジャスター装置2は、各脚フレーム13a,13b,13c,13dの下端に、それぞれに対応して設けている。このアジャスター装置2は、下端に設けた接地パッド21と、上下方向に延びるボルト軸22と、ボルト軸に螺合して上下位置を調整できる調整ナット23と、で構成している。
【0048】
このうち、調整ナット23を、回転操作(調整操作)することで、ボルト軸22の下方への突出量を変化させて、接地パッド21の上下位置を変させる。これにより、ベースフレーム1高さ位置や傾き角度等が変化して、アジャスター装置2として機能させる。
【0049】
前述の移動フレーム3は、樹脂である合成樹脂材料によって成形されたフレーム部材によって構成している。ここで合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン等の合成樹脂材など、積載物を搬送する搬送用パレットと同様の合成樹脂材料で成形している。これら合成樹脂材料を、所定の金型を使って射出成形することで、移動フレーム3を成形している。
【0050】
この移動フレーム3は、
図4に示すように、上側に位置する上部フレーム形成部31と、下側に位置する下部フレーム形成部32とで構成されており、両者を互いに対向配置して溶着することで、中空状の直方体形状となるように構成している。この移動フレーム3は、この上部フレーム形成部31と下部フレーム形成部32によって、平面視略「日」字状となるような直方体を構成している。
【0051】
この移動フレーム3を構成する上部フレーム形成部31と上部フレーム形成部32は、
図4に示すように、内部を中空30にしつつも、上下方向の剛性を高めるように上下方向に延びる複数の上下リブ部33,34を形成しており、上下方向に潰れ変形が生じないように構成している。また、詳細は図示しないものの、移動フレーム3の各角部には、格子状に広がる上下方向に延びる複数のリブ部を形成しており、さらに剛性を高めるように構成している。
【0052】
前述したキャスター4,4,4,4は、この移動フレーム3の各角部の下方に4つ設けられている。これらのキャスター4…は、それぞれゴム製の車輪41と、この車輪41を軸支する車軸42と、この車軸42を支持するフォーク43と、フォーク43を移動フレーム3に固定する取付フレート44と、この取付プレート44とフォーク43との間に設けられた旋回部45と、から構成されており、この旋回部45によって、フォーク43の向きが自由に回動するように構成されている。このため、このキャスター4…も、車輪41が床面Fに接地して台車Dが押されると、あらゆる方向に向きを変えるように回転して、台車Dをあらゆる方向に移動させることができる。
【0053】
前述のコイルスプリング5は、ベースフレーム1と移動フレーム2との間に掛け渡されるように配置されたコイル状の金属製スプリングで構成されている。このコイルスプリング5によって、移動フレーム3を、ベースフレーム1に対して吊下げ支持するように構成している。
【0054】
具体的には、2本のコイルスプリング5A,5Bを設けて、それぞれのコイルスプリング5A,5Bの一端51(
図5参照)を、ベースフレーム1に設けた軸支部15に係止して、コイルスプリングの他端52を、移動フレーム3側に設けた移動側シャフト部35に係止して、移動フレーム3とベースフレーム1の間を繋ぐように構成している。なお、コイルスプリング5の他端52を係止した移動側シャフト部35は、前述のリンク機構部6の構成部品としても兼用される。
【0055】
前述したリンク機構部6は、前側に設けられた第一リンク機構6Aと、後側に設けられた第二リンク機構6Bと、を備えている。
【0056】
前側の第一リンク機構6Aは、左右一対で上下方向に伸びるリンクアーム61と、この左右一対のリンクアーム61の上側一端を左右方向に伸びて連結するベース側シャフト部62と、一対のリンクアーム61の下側他端を左右方向に伸びて連結する移動側シャフト部63と、を備えている。
【0057】
また、後側の第二リンク機構6Bも、左右一対の上下方向に伸びるリンクアーム64と、この一対のリンクアーム64の上側一端を左右方向に伸びて連結するベース側シャフト部65と、一対のリンクアーム64の下側他端を左右方向に伸びて連結する移動側シャフト部35と、を備えている。
【0058】
そして、第一リンク機構6Aのリンクアーム61と、第二リンク機能6Bのリンクアーム64とが、平行に上下方向に回動することで、この二つのリンクアーム61,64が平行リンクとして機能し、移動フレーム3が、ベースフレーム1に対して、上下方向で平行移動するように構成されている。
【0059】
具体的には、
図2と
図5に示した状態が、移動フレーム3が上昇した状態で、
図3と
図6に示した状態が、移動フレーム3が降下した状態である。
【0060】
図2や
図5に示すように、移動フレーム3が上昇していると、アジャスター装置2の接地パッド21が床面Fに接地して、キャスター4の車輪41が床面Fから離れる(キャスター4上昇)。一方、
図3と
図6に示すように、移動フレーム3が降下していると、キャスター4の車輪41が床面Fに接地して(キャスター4降下)、アジャスター装置2の接地パッド21が床面Fから離れる。
【0061】
このため、アジャスター付き台車Dは、移動フレーム3が上昇していると、上下方向を調整するアジャスター装置2によって、高さ位置や傾き角度を調整できて、機械設備Mの据付位置を規定することができる。一方、移動フレーム3が降下していると、キャスター4によって、アジャスター付き台車Dを自由に移動させることができ、機械設備Mの位置を自由に変えることができる。
【0062】
前述のペダル機構部7は、大きめのサイズで前面視略門型形状に形成された踏込み操作ペダルとしてのフットペダル71と、小さめのサイズで前面視略門型形状に形成されたロックペダル72と、ベースフレーム1に設けられたストッパープレート73に固設されたガイドストッパー74と、ロックペダル72に対して上向きの付勢力を与える捩れバネ75(
図5参照)と、移動フレーム3の下側位置を規定する移動ストッパー76と、を備えている。
【0063】
前述のフットペダル71は、
図5等に示すように、側面視略クランク形状に形成されて、一端部71aがベースフレーム1側に軸支されて、中間部71bが移動フレーム3側に軸支されて、前側の他端部71cには、作業者が踏み込む踏込み面71dが設けられている。
【0064】
前述のロックペダル72は、
図5等に示すように、側面視略カップ形状に形成されて、一端部72aがガイドストッパー74に係止されて、中間部72bが移動フレーム3側に軸支されて、前側の他端部72cには、作業者が踏み込む解除踏込み面72dが設けられている。
【0065】
前記ガイドストッパー74は、金属製の中実ブロック体で構成されており、側面視略レ字形状に形成されている。具体的には、
図7に示すように、前側に上下方向に伸びるロックペダル72の一端部72aを係止する係止面74aと、その下方で、斜め後方側に伸びる傾斜ガイド面74bと、下部先端にロックペダル72の一端部72aを係止固定する固定凹部74cと、を設けている。
【0066】
ガイドストッパー74は、このように構成されることで、後述するように、作業者が、移動フレーム3を上下動させる際には、ロックペダル72の一端部72aの位置等をガイドして、移動フレーム3の位置を規定する。
【0067】
前述の捩れバネ75は、
図5に示すように、いわゆるツル巻き状のバネによって構成されており、ロックペダル72とフットペダル71の中間部72b,71bを軸支する移動フレーム3の軸部材36に、巻き付けられている。そして、その一端を、ロックペダル72に設けた係止ピン72eに係止して、他端を移動フレーム3の前端に当接係止している。
【0068】
このように、捩れバネ75が配置されることで、捩れバネ75が、常時ロックペダル72を解除踏込み面72dが上方(
図5で示す軸部材36の反時計回り)側に付勢されるように構成されている。
【0069】
前述の移動ストッパー76は、ベースフレーム1に設けた下側に延びるストッパープレート76aと、該ストッパープレート76aに貫通して配置されたストッパーボルト76bと、によって構成されており、ストッパーボルト76bの頭部で、移動フレーム3の後方側への移動を規制して、移動フレーム3の下側位置を規定している。
【0070】
次に、このように構成されたアジャスター付き台車Dの操作方法について、説明する。
【0071】
図2に示すように、アジャスター付き台車Dの移動フレーム3が上側位置にあるときには、ベースフレーム1に設けたアジャスター装置2が床面Fに接地している。このため、作業者は、この状態で、アジャスター付き台車Dに設けたアジャスター装置2を調整する。
【0072】
具体的には、アジャスター装置2の調整ナット23を回転操作することで、ボルト軸22の突出量を変化させて、接地パッド21の位置を上下方向に変化させる。これにより、アジャスター装置2の接地パッド21の上下位置が変化する。このアジャスター装置2の調整ナット23の調整作業を4つのアジャスター装置2,2,2,2ごとに行うことで、ベースフレーム1に載置した機械設備Mの高さ位置や傾き角度を調整する。
【0073】
特に、ベースフレーム1が金属製のアルミ合金材料で形成されていることで、ベースフレーム1には全く変形が生じないため、高さ位置や傾き角度を微細に調整していても、その高さ位置や傾き角度が、長期間、安定して維持される。
【0074】
そして、床面F等を清掃するために、機械設備Mを移動したい場合には、作業者は、
図5の矢印に示すように、フットペダル71の踏込み面71dを下側に踏み込む。この踏み込み時に、作業者は前述したコイルスプリング5の付勢力に抗する程度の踏込み力で踏み込みを行う。
【0075】
そして、作業者がフットペダル71を最後まで踏み込むと、
図6に示すように、フットペダル71が下側に移行し、移動フレーム3もリンク機構部6の平行リンクの動きに沿って下側に移動する。なお、この移動フレーム3の下側位置は、前述の移動ストッパー76のストッパーボルト76bによって規定される。
【0076】
また、このフットペダル71の踏み込みによって、ロックペダル72も、中間部72bが移動フレーム3の軸部材36に軸支されているため、この軸部材36を回転中心として下側に移行する。もっとも、この下側移行も、捩れバネ75の付勢力に抗するように移行して、ロックペダル72の一端部72aがガイドストッパー74の傾斜ガイド面74bに沿って下側にスライド移動していき、固定凹部74cに嵌まり込むことで下側位置が規定(ロック)される(
図7参照)。
【0077】
こうして、移動フレーム3等の下側位置が規定されると、キャスター4の車輪41が床面Fに接地する。このように、キャスター4の車輪41が床面Fに接地すると、アジャスター付き台車Dを自由に移動させることができる。これにより、作業者は、機械設備Mの位置を据付位置から自由に移動させることができ、その機械設備Mを据付けていた床面Fを、清掃することができる。
【0078】
そして、清掃が終わって、機械設備Mをもとの据付位置に戻す場合には、作業者は、その機械設備Mを、アジャスター付き台車Dごと、もとの据付位置に移動する。
【0079】
その後、作業者がロックペダル72を踏み込むと、ロックペダル72の一端部72aがガイドストッパー74の固定凹部74cから外れる。これにより、ロックが解除されて、機械設備Mの自重によってベースフレーム1が降下し、それと同時に、移動フレーム3がコイルスプリング5の付勢力によってベースフレーム1側に引き上げられて(上方に移動して)、
図5に示す上側位置に移動する。
【0080】
こうして、移動フレーム3が上側位置に移動してベースフレーム1に当接すると、各アジャスター装置2の接地パッド21が、床面Fに接地する。そして、この接地パッド21の高さ位置は、機械設備Mをもとの据付位置に据付けるのであれば、そのままの高さ位置で良いため、調整作業を行わず、機械設備Mを据付けることができる。
【0081】
このように、本実施形態のアジャスター付き台車Dによると、機械設備Mの移動作業と据付作業の切替を、単純なペダルの踏込み作業だけで行うことができる。
【0082】
このとき、ペダルの踏込み力、特に、フットペダル71の踏込み力は、前述のように、コイルスプリング5の付勢力に抗する程度の力で踏み込む必要がある。本実施形態のアジャスター付き台車Dにおいては、移動フレーム3が樹脂部材で構成されていることから、金属材料で構成されている場合よりも軽量である。このため、移動フレーム3を吊下げ支持するコイルスプリング5の付勢力も、比較的弱くてもよいため、作業者の踏込み力があまり強くなくても、移動フレーム3を下側位置に移動させることができる。
【0083】
以上のように、本実施形態のアジャスター付き台車Dは、工場内に据付設置される機械設備の下部に配置されるアジャスター付き台車Dであって、高さ調整を行えるアジャスター装置2が下部に設けられ、機械設備Mを上方で支持するベースフレーム1と、自由に移動できるようにキャスター2が下部に設けられ、前記ベースフレーム1にコイルスプリング5を介して吊下げ支持されて、そのベースフレーム1に対して上下動できるように構成された移動フレーム3と、その移動フレーム3に一端が連係されて、他端には作業者が踏み込む踏込み面71dが設けられており、作業者が足で踏み込み操作を行うと、移動フレーム3が下側に移動するフットペダル71と、を備えており、前記移動フレーム3は、金属材料よりも軽量な樹脂材料で成形されていることを特徴としている。
【0084】
これにより、本実施形態のアジャスター付き台車Dは、移動フレーム3が金属材料よりも軽量な樹脂材料で成形されているため、移動フレーム3を吊下げ支持するコイルスプリング5の付勢力をあまり高めなくても、移動フレーム3をベースフレーム1に吊下げ支持することができる。
【0085】
このため、フットペダル71の踏み込み力が低くても、移動フレーム3を下側に移動させることができ、比較的、楽に、移動フレーム3に設けたキャスター4を床面Fに接地させることができる。
【0086】
よって、機械設備Mの下部に配置されるアジャスター付き台車Dにおいて、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとっても、操作が容易なアジャスター付き台車Dを提供することができる。
【0087】
また、この実施形態では、移動フレーム3は、中空のフレーム部材で構成されていることを特徴としている。
【0088】
これにより、移動フレーム3をさらに軽くすることができ、移動フレーム3を吊下げ支持するコイルスプリング5の付勢力を低くしても、移動フレーム3をベースフレーム1に吊下げ支持することができる。
【0089】
このため、フットペダル71の踏み込み力がさらに低くても、移動フレーム3を下側に移動させることができ、より楽に、移動フレーム3に設けたキャスター3を床面Fに接地させることができる。
【0090】
よって、機械設備Mの下部に配置されるアジャスター付き台車Dにおいて、足の踏み込み力が弱い女性や高齢者にとって、より操作が容易なアジャスター付き台車Dとすることができる。
【0091】
また、この実施形態では、移動フレーム3は、平面視略「日」形状のフレーム構造で構成されており、この移動フレーム3の角部の下面に、キャスター4を設けていることを特徴としている。
【0092】
これにより、移動フレーム3を樹脂材料で成形して剛性が低くても、フレーム構造の角部というフレーム構造の中でも比較的剛性の高い場所にキャスター4を設けることになる。
【0093】
このため、機械設備Mを移動させる際に、移動フレーム3に機械設備Mの重量が作用しても、キャスター4の取付位置に変形等が生じることがない。
【0094】
よって、機械設備Mを移動する際に、キャスター4が安定して作動するため、機械設備Mの移動を安定して行うことができる。
【0095】
また、この実施形態では、ベースフレーム1は、樹脂材料よりも剛性の高い金属材料であるアルミ合金材料で成形されていることを特徴としている。
【0096】
これにより、ベースフレーム1は、移動フレーム3と異なり樹脂材料よりも剛性の高いアルミ合金材料で成形されることで、ベースフレーム1で機械設備Mを支持した際、ベースフレーム1の変形を抑えることができる。
【0097】
よって、ベースフレーム1に設けたアジャスター装置2の高さ調整の精度が、長期間維持されて、機械設備Mの据付精度を、長期間に亘って安定して維持することができる。
【0098】
(実施形態2)
次に、実施形態2のアジャスター付き台車D2について、
図8、
図9を使って説明する。
図8は、実施形態2に係るアジャスター付き台車D2の前方斜視図で、
図9は、その実施形態2のアジャスター付き台車D2の側面図である。なお、この実施形態2では、実施形態1と異なる部分について説明して、実施形態1と同じ部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
この実施形態2のアジャスター付き台車D2では、移動フレーム3だけでなく、ベースフレーム101も、樹脂材料で成形している。具体的には、ベースフレーム101を、上面に機械設備Mを載置するフレーム本体110Aと、下部にアジャスター装置2…を取付ける4つのフレーム脚110Bとで構成して、それぞれを樹脂材料で成形している。
【0100】
前述のフレーム本体110も、上側に位置する上部フレーム形成部111と、下側に位置する下部フレーム形成部112とで構成されており、両者を互いに対向配置して溶着することで、中空状の直方体形状となるように構成している。このフレーム本体110は、
図8に示すように、上部フレーム形成部111と下部フレーム形成部112によって、平面視略「目」字状となる直方体を構成している。
【0101】
前述のフレーム脚110Bは、前側に位置する前部フレーム形成部113と、後側に位置する後部フレーム形成部114とで構成されており、両者を互いに対向配置して溶着することで、中空状の直方体形状となるように構成している。そして、このフレーム脚110B…の4つを、フレーム本体110Aの四隅の角部に接着固定して、ベースフレーム101を構成している。
【0102】
そして、このように構成したベースフレーム101には、リンク機構部6やペダル機構部7等を取付けるための複数の取付金具120…を設けており、これら取付金具120…を介して、各種構成要素を取付けている。
【0103】
以上のように、本実施形態のアジャスター付き台車D2は、ベースフレーム101も、金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されていることを特徴としている。
【0104】
これにより、移動フレーム3だけでなく、ベースフレーム101も、金属材料よりも軽量の樹脂材料で成形されることで、アジャスター付き台車D2の全体を、軽量に構成することができる。
【0105】
よって、アジャスター付き台車D2自体の持ち運び作業等を、比較的楽に行えるようにできる。
【0106】
もっとも、図示はしないが、ベースフレーム101の内部にも、複数の上下リブ部を設けて、機械設備Mをしっかりと支持できる程度の剛性を有するのが望ましい。
【0107】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0108】
まず、移動フレームについては、必ずしも、実施形態1や実施形態2のように、平面視略「日」字状の形状に限定されず、例えば、略「ロ」字状であってもよい。また、断面中空状のフレーム構造にも限定されず、例えば、プレート状の移動部材であっても、樹脂材料で成形するものであれば良い。
【0109】
さらに、移動フレームを上下動するペダル機構部についても、2つのペダルで構成するのではなく、1つのペダルで移動フレームを上下動させるように構成しても良い。
【0110】
また、移動フレームの移動軌跡を規定するリンク機構部についても、平行リンクではなく、レールとスライダーで構成されるスライド機構で、移動フレームの移動軌跡を規定しても良い。また、単なるガイド部材で、移動フレームの移動軌跡を規定しても良い。
【0111】
そして、移動フレームに設けられるキャスターについても、その位置で停止できるように、さらにブレーキ機構を追加して設けても良い。
【0112】
その他、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本実施形態のアジャスター付き台車を改良して構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上、説明したように、本発明は、機械設備等の下部に配置されて、その機械設備等の据付作業や移動作業等を容易に行うことができるアジャスター付き台車において有用である。
【符号の説明】
【0114】
D…アジャスター付き台車
D2…アジャスター付き台車
M…機械設備
1…ベースフレーム(ベース部材)
2…キャスター
3…移動フレーム(移動部材)
4…アジャスター装置
5(5A,5B)…コイルスプリング(付勢手段)
6…リンク機構部
7…ペダル機構部
71…フットペダル(踏込み操作ペダル)
71d…踏込み面