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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078843
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 647A
H01L21/304 651L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191422
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 勤
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AC03
5F157AC26
5F157BB23
5F157BB24
5F157BB45
5F157BF03
5F157BF32
5F157BF33
5F157BF34
5F157CB14
5F157CE04
5F157CE07
5F157CE25
5F157CE52
5F157DA21
5F157DB32
5F157DB33
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】より短時間で基板の全面を適切に疎水化させることができる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板保持部2と、少なくとも一つの中央ノズル3と、第1疎水管31hと、第1疎水調整弁32hと、少なくとも一つの周縁ノズル4と、第2疎水管41hと、第2疎水調整弁42hと、制御部9とを備える。中央ノズル3は、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって流体を吐出する。第1疎水調整弁32hは、第1疎水管31hを流れる疎水化液の第1疎水流量Fh1を調整する。周縁ノズル4は、基板Wの主面の周縁部に向かって流体を吐出する。第2疎水調整弁42hは、第2疎水管41hを流れる疎水化液の第2疎水流量Fh2を調整する。制御部9は第2疎水流量Fh2に対する第1疎水流量Fh1の疎水流量比を調整する。制御部9は第1期間における疎水流量比を第1期間の後の第2期間における疎水流量比よりも高くする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持しつつ回転させる基板保持部と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の主面の中央部に向かって流体を吐出する少なくとも一つの中央ノズルと、
前記流体としての疎水化液を前記中央ノズルに供給するための第1疎水管と、
前記第1疎水管を流れる疎水化液の第1疎水流量を調整する第1疎水調整弁と、
前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面の周縁部に向かって流体を吐出する少なくとも一つの周縁ノズルと、
前記流体としての疎水化液を前記周縁ノズルに供給するための第2疎水管と、
前記第2疎水管を流れる疎水化液の第2疎水流量を調整する第2疎水調整弁と、
前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第2疎水流量に対する前記第1疎水流量の疎水流量比を調整する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記基板の前記主面に疎水化液を供給する疎水処理期間のうちの第1期間における前記疎水流量比を、前記疎水処理期間のうちの前記第1期間の後の第2期間における前記疎水流量比よりも高くする、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量を、前記第1期間における前記第2疎水流量よりも大きくし、前記第2期間における前記第1疎水流量を、前記第2期間における前記第2疎水流量よりも小さくする、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量を、前記第2期間における前記第1疎水流量よりも大きくし、前記第1期間における前記第2疎水流量を、前記第2期間における前記第2疎水流量よりも小さくする、基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量および前記第2疎水流量の和を、前記第2期間における前記第1疎水流量および前記第2疎水流量の和と等しくする、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記第2期間は前記第1期間よりも長い、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記第2期間における前記基板の回転速度は、前記第1期間における前記基板の回転速度よりも低い、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記周縁ノズルは固定ノズルであり、平面視において、前記基板の回転方向に沿う方向に前記疎水化液を吐出する、基板処理装置。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記周縁ノズルを、前記基板の前記主面の前記周縁部と対向する周縁処理位置と、前記基板よりも径方向外側の周縁待機位置との間で移動させるノズル移動機構をさらに備える、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも一つの中央ノズルに接続され、前記少なくとも一つの中央ノズルに前記流体としての有機溶剤を供給するための第1溶剤管と、
前記第1溶剤管に介挿されており、前記第1溶剤管を流れる有機溶剤の第1溶剤流量を調整する第1溶剤調整弁と、
前記少なくとも一つの周縁ノズルに接続され、前記少なくとも一つの周縁ノズルに前記流体としての有機溶剤を供給するための第2溶剤管と、
前記第2溶剤管に介挿されており、前記第2溶剤管を流れる有機溶剤の第2溶剤流量を調整する第2溶剤調整弁と
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1溶剤調整弁および前記第2溶剤調整弁を制御して、前記第2溶剤流量に対する前記第1溶剤流量の溶剤流量比を調整し、
前記基板に有機溶剤を供給する溶剤処理期間のうちの第1溶剤期間における前記溶剤流量比を、前記溶剤処理期間のうちの前記第1溶剤期間よりも後の第2溶剤期間における前記溶剤流量比よりも高くする、基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記第1疎水流量と前記第2疎水流量との和は、前記第1溶剤流量と前記第2溶剤流量との和よりも小さい、基板処理装置。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記少なくとも一つの中央ノズルに接続され、前記少なくとも一つの中央ノズルに前記流体としての不活性ガスを供給するための第1ガス管と、
前記第1ガス管に介挿されており、前記第1ガス管を流れる不活性ガスの第1ガス流量を調整する第1ガス調整弁と、
前記少なくとも一つの周縁ノズルに接続され、前記少なくとも一つの周縁ノズルに前記流体としての不活性ガスを供給するための第2ガス管と、
前記第2ガス管に介挿されており、前記第2ガス管を流れる不活性ガスの第2ガス流量を調整する第2ガス調整弁と
をさらに備える、基板処理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記基板に不活性ガスを供給するガス処理期間において、前記第1ガス調整弁および前記第2ガス調整弁の開度を一定に制御する、基板処理装置。
【請求項13】
(a)基板を保持する工程と、
(b)前記基板を回転させつつ、中央ノズルが前記基板の主面の中央部に向かって疎水化液を吐出し、周縁ノズルが前記基板の前記主面の周縁部に向かって前記疎水化液を吐出する工程と
を備え、
前記工程(b)において、
前記基板の前記主面の前記周縁部に着液する前記疎水化液の第2疎水流量に対する、前記基板の前記主面の前記中央部に着液する前記疎水化液の第1疎水流量の疎水流量比を、第1期間よりも、前記第1期間の後の第2期間において小さくする、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板に処理液を供給して基板を処理する基板処理装置が提案されている。該基板処理装置は、基板に処理液を用いた液処理を行った後に、揮発性の高いリンス液を基板に供給し、その後、該リンス液を蒸発させて基板を乾燥させる乾燥処理を行う。該乾燥処理では、リンス液の表面張力に起因して基板のパターンが倒壊する可能性がある。
【0003】
この基板のパターンの倒壊の発生を抑制することができる基板処理装置も提案されている(例えば特許文献1,2)。特許文献1,2では、基板処理装置は疎水化液を基板の表面に供給して基板の表面を疎水化させた後に、揮発性の高いリンス液を基板の表面に供給する。そして、基板処理装置はリンス液を蒸発させて基板を乾燥させる。これによれば、基板の表面が疎水化されるので、パターン間においてリンス液の液面の接触角が大きくなり、表面張力に起因したパターンへの倒壊応力を低減させることができる。このため、パターンの倒壊の発生を抑制しつつ、基板を乾燥させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-197571号公報
【特許文献2】特開2021-125473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疎水化液を回転中の基板の中央部に着液させた場合、基板の周縁部に対する疎水化が不十分になるという問題がある。これは、基板の中央部に着液した疎水化液が基板の主面に沿って広がる際に、疎水化液がチャンバの内部空間の水分と反応することにより、疎水化液が失活するからと考えられる。疎水化液が基板の周縁部に到達した時点で失活していれば、疎水化液を長時間にわたって基板に供給し続けても、基板の周縁部を十分に疎水化させることができない。また、より短い処理時間で基板を疎水化することも望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、より短時間で基板の全面をより適切に疎水化させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、基板処理装置であって、基板を保持しつつ回転させる基板保持部と、前記基板保持部によって保持された前記基板の主面の中央部に向かって流体を吐出する少なくとも一つの中央ノズルと、前記流体としての疎水化液を前記中央ノズルに供給するための第1疎水管と、前記第1疎水管を流れる疎水化液の第1疎水流量を調整する第1疎水調整弁と、前記基板保持部によって保持された前記基板の前記主面の周縁部に向かって流体を吐出する少なくとも一つの周縁ノズルと、前記流体としての疎水化液を前記周縁ノズルに供給するための第2疎水管と、前記第2疎水管を流れる疎水化液の第2疎水流量を調整する第2疎水調整弁と、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第2疎水流量に対する前記第1疎水流量の疎水流量比を調整する制御部とを備え、前記制御部は、前記基板の前記主面に疎水化液を供給する疎水処理期間のうちの第1期間における前記疎水流量比を、前記疎水処理期間のうちの前記第1期間の後の第2期間における前記疎水流量比よりも高くする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量を、前記第1期間における前記第2疎水流量よりも大きくし、前記第2期間における前記第1疎水流量を、前記第2期間における前記第2疎水流量よりも小さくする。
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量を、前記第2期間における前記第1疎水流量よりも大きくし、前記第1期間における前記第2疎水流量を、前記第2期間における前記第2疎水流量よりも小さくする。
【0010】
第4の態様は、第3の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記第1疎水調整弁および前記第2疎水調整弁を制御して、前記第1期間における前記第1疎水流量および前記第2疎水流量の和を、前記第2期間における前記第1疎水流量および前記第2疎水流量の和と等しくする。
【0011】
第5の態様は、第1から第4のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記第2期間は前記第1期間よりも長い。
【0012】
第6の態様は、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記第2期間における前記基板の回転速度は、前記第1期間における前記基板の回転速度よりも低い。
【0013】
第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記周縁ノズルは固定ノズルであり、平面視において、前記基板の回転方向に沿う方向に前記疎水化液を吐出する。
【0014】
第8の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記周縁ノズルを、前記基板の前記主面の前記周縁部と対向する周縁処理位置と、前記基板よりも径方向外側の周縁待機位置との間で移動させるノズル移動機構をさらに備える。
【0015】
第9の態様は、第1から第8のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記少なくとも一つの中央ノズルに接続され、前記少なくとも一つの中央ノズルに前記流体としての有機溶剤を供給するための第1溶剤管と、前記第1溶剤管に介挿されており、前記第1溶剤管を流れる有機溶剤の第1溶剤流量を調整する第1溶剤調整弁と、前記少なくとも一つの周縁ノズルに接続され、前記少なくとも一つの周縁ノズルに前記流体としての有機溶剤を供給するための第2溶剤管と、前記第2溶剤管に介挿されており、前記第2溶剤管を流れる有機溶剤の第2溶剤流量を調整する第2溶剤調整弁とをさらに備え、前記制御部は、前記第1溶剤調整弁および前記第2溶剤調整弁を制御して、前記第2溶剤流量に対する前記第1溶剤流量の溶剤流量比を調整し、前記基板に有機溶剤を供給する溶剤処理期間のうちの第1溶剤期間における前記溶剤流量比を、前記溶剤処理期間のうちの前記第1溶剤期間よりも後の第2溶剤期間における前記溶剤流量比よりも高くする。
【0016】
第10の態様は、第9の態様にかかる基板処理装置であって、前記第1疎水流量と前記第2疎水流量との和は、前記第1溶剤流量と前記第2溶剤流量との和よりも小さい。
【0017】
第11の態様は、第1から第10のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記少なくとも一つの中央ノズルに接続され、前記少なくとも一つの中央ノズルに前記流体としての不活性ガスを供給するための第1ガス管と、前記第1ガス管に介挿されており、前記第1ガス管を流れる不活性ガスの第1ガス流量を調整する第1ガス調整弁と、前記少なくとも一つの周縁ノズルに接続され、前記少なくとも一つの周縁ノズルに前記流体としての不活性ガスを供給するための第2ガス管と、前記第2ガス管に介挿されており、前記第2ガス管を流れる不活性ガスの第2ガス流量を調整する第2ガス調整弁とをさらに備える。
【0018】
第12の態様は、第11の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記基板に不活性ガスを供給するガス処理期間において、前記第1ガス調整弁および前記第2ガス調整弁の開度を一定に制御する。
【0019】
第13の態様は、基板処理方法であって、(a)基板を保持する工程と、(b)前記基板を回転させつつ、中央ノズルが前記基板の主面の中央部に向かって疎水化液を吐出し、周縁ノズルが前記基板の前記主面の周縁部に向かって前記疎水化液を吐出する工程とを備え、前記工程(b)において、前記基板の前記主面の前記周縁部に着液する前記疎水化液の第2疎水流量に対する、前記基板の前記主面の前記中央部に着液する前記疎水化液の第1疎水流量の疎水流量比を、第1期間よりも、前記第1期間の後の第2期間において小さくする。
【発明の効果】
【0020】
第1、第10および第13の態様によれば、第1期間では、疎水流量比が高い。このため、第1期間では、比較的に大きな流量で疎水化液が基板の中央部に着液する。したがって、基板の主面上に処理液が存在してたとしても、その処理液をより速やかに中央部から径方向外側に押し流すことができる。よって、基板の中央部において処理液を疎水化液により短時間で置換することができる。言い換えれば、疎水化液の使用量を低減させつつ、基板の中央部の処理液を疎水化液に置換することができる。また、基板の主面の中央部に対してより速やかに疎水化液を作用させることもできる。したがって、基板の中央部をより効果的に疎水化させることができる。
【0021】
一方、疎水化液は空気中の水分と反応して失活するので、基板の中央部に着液した疎水化液は、基板の周縁部に到達する際には失活し得る。このため、該疎水化液は基板の周縁に対して効果的に作用しない。また、基板の周縁部に向かって吐出される疎水化液の流量は比較的に小さいので、周縁部はあまり疎水化しない。
【0022】
第1期間では、疎水流量比が低い。このため、第2期間では、比較的に大きな流量で疎水化液が周縁部に供給される。このため、疎水化液は基板の周縁部に効果的に作用し、基板の周縁部を効果的に疎水化させることができる。
【0023】
第2の態様によれば、第1期間において、基板の主面上の処理液をさらに速やかに基板の径方向外側に押し流すことができつつ、基板の主面の中央部をさらに速やかに疎水化させることができ、第2期間において、さらに速やかに基板の主面の周縁部を疎水化させることができる。
【0024】
第3の態様によれば、第1期間における第1疎水流量および第2疎水流量の和と、第2期間における第1疎水流量および第2疎水流量の和との差異を低減させることができる。
【0025】
第4の態様によれば、第1期間における第1疎水流量および第2疎水流量の和と、第2期間における第1疎水流量および第2疎水流量の和との差異を解消させることができる。
【0026】
第5の態様によれば、基板の周縁部をより適切に疎水化させることができる。
【0027】
第6の態様によれば、基板の周縁部をより適切に疎水化させることができる。
【0028】
第7の態様によれば、基板の主面上での疎水化液の液はねを抑制することができる。
【0029】
第8の態様によれば、基板の主面に近い位置で疎水化液を基板の周縁部に吐出することができる。
【0030】
第9の態様によれば、第1溶剤期間では、溶剤流量比が高い。このため、第1溶剤期間では、比較的に大きな流量で有機溶剤が基板の中央部に着液する。したがって、基板の主面上の疎水化液をより速やかに中央部から径方向外側に押し流すことができる。よって、基板の中央部において疎水化液により速やかに有機溶剤に置換することができる。しかも、基板の主面上の周縁部にも有機溶剤が着液するので、基板の主面の全面をより適切に有機溶剤で覆うことができる。
【0031】
第2溶剤期間では、比較的に大きな流量で有機溶剤が基板の周縁部に着液する。このため、基板の周縁部における疎水化液をより効果的に有機溶剤に置換することができる。
【0032】
第11の態様によれば、基板を速やかに乾燥させることができる。
【0033】
第12の態様によれば、制御部の処理負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
図2】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す縦断面図である。
図3】処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
図4】疎水化処理中の処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図5】第1疎水流量および第2疎水流量の時間変化の第1例を示すグラフである。
図6】第1疎水流量および第2疎水流量の時間変化の第2例を示すグラフである。
図7】第1の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図8】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す図である。
図9】プレ溶剤処理またはポスト溶剤処理中の処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
図10】第1溶剤流量および第2溶剤流量の時間変化の一例を示すグラフである。
図11】第2の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図12】第3の実施の形態にかかる処理ユニットの構成の一例を概略的に示す平面図である。
図13】疎水化処理中の処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成及び機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0036】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0037】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0038】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0039】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0040】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、薄い平板形状を有する。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの厚さは例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。基板Wの主面にはパターンが形成されている。ここでいうパターンは、例えば、配線パターン、電極パターン、半導体パターンおよび絶縁パターンの少なくとも一つを含む。パターンにおけるアスペクト比は、例えば、5以上かつ500以下である。パターン幅は、例えば、3nm以上かつ50nm以下である。このような高アスペクト比のパターンは倒壊しやすい。
【0041】
図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部9とを含んでいる。処理ブロック120は、主として基板Wの処理を行う部分であり、インデクサブロック110は、主として、基板処理装置100の外部と処理ブロック120との間での基板Wの搬送を行う部分である。
【0042】
インデクサブロック110は、ロードポート111と、第1搬送部112とを含んでいる。ロードポート111には、外部から搬入されたキャリアCが載置される。つまり、ロードポート111は、キャリアCを載置する載置台を含む。キャリアCには、複数の基板Wが収容されている。例えば複数の基板Wは鉛直方向において互いに間隔を空けて並んだ状態で、キャリアCに収容される。図1の例では、複数のロードポート111が配列されており、各ロードポート111に1つのキャリアCが載置される。
【0043】
第1搬送部112は搬送ロボットであって、各ロードポート111に載置されたキャリアCから未処理の基板Wを取り出すことができる。第1搬送部112はインデクサロボットとも呼ばれ得る。第1搬送部112は、キャリアCから取り出した未処理の基板Wを処理ブロック120に搬送する。処理ブロック120は該未処理の基板Wに処理を行うことができる。また、第1搬送部112は、処理済みの基板Wを処理ブロック120から受け取り、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送することができる。
【0044】
図1の例では、処理ブロック120は、複数の処理ユニット1と、第2搬送部122とを含んでいる。第2搬送部122は搬送ロボットであって、第1搬送部112と複数の処理ユニット1との間で基板Wを搬送することができる。図1の例では、処理ブロック120は載置部123も含んでいる。載置部123は第1搬送部112と第2搬送部122とに間に設けられている。載置部123は、例えば、複数の基板Wを鉛直方向に並べた状態で載置することができる棚である。第1搬送部112は未処理の基板Wを載置部123に載置する。第2搬送部122は載置部123から未処理の基板Wを取り出し、未処理の基板Wを処理ユニット1に搬送する。処理ユニット1は基板Wを処理する。処理ユニット1の構成については後に述べる。第2搬送部122は処理済みの基板Wを処理ユニット1から取り出し、処理済みの基板Wを載置部123に搬送する。第1搬送部112は載置部123から処理済みの基板Wを取り出し、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送する。
【0045】
第2搬送部122は必要に応じて複数の処理ユニット1間で基板Wを搬送してもよい。例えば、第2搬送部122は、ある処理ユニット1で処理された基板Wを別の処理ユニット1に搬送し、該別の処理ユニット1で処理された基板Wを載置部123に搬送してもよい。
【0046】
図1の例では、複数の処理ユニット1は平面視において第2搬送部122の周りを囲むように設けられている。この第2搬送部122はセンターロボットとも呼ばれ得る。図1の例では、4つの処理ユニット1が第2搬送部122を囲んでいる。各処理ユニット1が設けられた平面視上の各位置において、複数の処理ユニット1が鉛直方向に積層されていてもよい。つまり、鉛直方向に積層された複数の処理ユニット1によって構成されるタワーTWの複数(図では4つ)が、平面視において、第2搬送部122を囲むように設けられてもよい。
【0047】
制御部9は基板処理装置100の各構成を制御することができる。制御部9は電子回路機器であって、例えば演算処理装置および記憶部を有していてもよい。演算処理装置は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))を有していてもよい。非一時的な記憶部には、例えば制御部9が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。処理装置がこのプログラムを実行することにより、制御部9が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部9が実行する処理の一部または全部がハードウェアによって実行されてもよい。
【0048】
<処理ユニットの概要>
図2は、第1の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す縦断面図である。なお、基板処理装置100に属する全ての処理ユニット1が、図2に例示された構成を有している必要はない。基板処理装置100の少なくとも一つの処理ユニット1が、図2に例示された構成を有していればよい。
【0049】
処理ユニット1は、基板Wの主面を疎水化させる疎水化処理を行うことができる。図2の例では、処理ユニット1は、チャンバ10と、基板保持部2と、少なくとも一つの中央ノズル3と、第1疎水管31hと、第1疎水調整弁32hと、少なくとも一つの周縁ノズル4と、第2疎水管41hと、第2疎水調整弁42hとを含んでいる。
【0050】
チャンバ10は箱形の形状を有し、その内部空間は、基板Wを処理する処理空間に相当する。チャンバ10には、開閉可能な搬出入口(不図示)が設けられる。第2搬送部122は搬出入口を通じて未処理の基板Wをチャンバ10内に搬入し、また、搬出入口を通じて処理済みの基板Wをチャンバ10から搬出する。
【0051】
基板保持部2はチャンバ10内に設けられており、基板Wを水平姿勢で保持しつつ、基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。回転軸線Q1は、基板Wの中心を通り、かつ、鉛直方向に沿う軸である。このような基板保持部2はスピンチャックとも呼ばれ得る。ここでは、パターンが形成された基板Wの主面が鉛直上方を向いている。つまり、基板保持部2によって保持された基板Wの上面にパターンが形成されている。
【0052】
少なくとも一つの中央ノズル3はチャンバ10内に設けられており、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって流体を吐出する。図2の例では、中央ノズル3の一つとして中央ノズル3hが示されている。中央ノズル3hは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって流体としての疎水化液を吐出する。中央ノズル3hは、例えば、疎水化液を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。図2の例では、中央ノズル3hは基板Wの上面に向かって疎水化液を吐出する。つまり、図2の例では、中央ノズル3hは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。中央ノズル3hから吐出された疎水化液は、基板Wの主面の中央部に着液する。
【0053】
疎水化液とは、基板Wに疎水性を付与する液体である。疎水化液は、例えば、シリコン系の疎水化液を含む。シリコン系の疎水化液は、シリコン(Si)自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させる疎水化液である。疎水化液は、例えば、液体状のシリル化剤(シランカップリング剤ともいう)を含むシリル化液である。このシリル化剤は、分子の一端に加水分解でシラノール基(Si-OH)を与えるエトキシ(またはメトキシ)基を有し、他端にアミノ基やグリシジル基などの有機官能基を有する有機ケイ素化合物である。シリル化剤は、シリル化剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化液の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化液は、たとえば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0054】
中央ノズル3hには第1疎水管31hの下流端が接続されている。第1疎水管31hの上流端は、不図示の疎水化液供給源に接続される。疎水化液供給源は、疎水化液を貯留するタンク(不図示)を含む。
【0055】
第1疎水調整弁32hは第1疎水管31hに介挿される。第1疎水調整弁32hは、第1疎水管31hを流れる疎水化液の流量、つまり、中央ノズル3hから吐出される疎水化液の流量を調整する。第1疎水調整弁32hは例えばマスフローコントローラである。なお、後述の他の流量調整弁の具体的な一例にもマスフローコントローラを適用することができる。以下では、第1疎水管31hを流れる疎水化液の流量、つまり、中央ノズル3hから吐出される疎水化液の流量を、第1疎水流量Fh1と呼ぶ。
【0056】
少なくとも一つの周縁ノズル4はチャンバ10内に設けられており、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の周縁部に向かって流体を吐出する。図2の例では、周縁ノズル4の一つとして周縁ノズル4hが示されている。周縁ノズル4hは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の周縁部に向かって流体としての疎水化液を吐出する。周縁ノズル4hは、例えば、疎水化液を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。一例として、周縁ノズル4hは基板Wの上面に向かって疎水化液を吐出する。つまり、周縁ノズル4hは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。図2に示されるように、周縁ノズル4hは、平面視において、基板Wよりも径方向外側に設けられてもよい。周縁ノズル4hはチャンバ10に対して移動不能に固定されていてもよい。つまり、周縁ノズル4hは固定ノズルであってもよい。周縁ノズル4hは例えば斜め下方に沿って疎水化液を吐出する。周縁ノズル4hから吐出された疎水化液は基板Wの主面の周縁部に着液する。
【0057】
周縁ノズル4hから吐出された疎水化液の基板Wの主面上の着液位置は、例えば、次に説明する仮想的な円環領域内にあってもよい。該円環領域の仮想的な中心は回転軸線Q1と一致する。該円環領域の仮想的な外径は、例えば、基板Wの直径の90%であってもよく、80%であってもよく、70%であってもよい。該円環領域の仮想的な内径は、例えば、基板Wの直径の10%であってもよく、20%であってもよく、30%であってもよく、40%であってもよい。
【0058】
周縁ノズル4hには第2疎水管41hの下流端が接続されている。第2疎水管41hの上流端は、不図示の疎水化液供給源に接続される。
【0059】
第2疎水調整弁42hは第2疎水管41hに介挿される。第2疎水調整弁42hは、第2疎水管41hを流れる疎水化液の流量、つまり、周縁ノズル4hから吐出される疎水化液の流量を調整する。以下では、第2疎水管41hを流れる疎水化液の流量、つまり、周縁ノズル4hから吐出される疎水化液の流量を、第2疎水流量Fh2と呼ぶ。
【0060】
第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hは制御部9によって制御される。つまり、制御部9は第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御して、中央ノズル3hおよび周縁ノズル4hからそれぞれ第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2で疎水化液を吐出させる。
【0061】
なお、第1疎水管31hおよび第2疎水管41hの少なくともいずれか一方には、疎水化液を加熱するヒータが設けられてもよい。ヒータは、例えば、電熱線を有する電気抵抗式のヒータであってもよく、加熱用の光を照射する光学式のヒータであってもよい。該ヒータは、疎水化液の温度を疎水化処理に適した温度まで昇温させてもよい。
【0062】
図2の例では、第1疎水管31hには第1疎水開閉弁33hが介挿され、第2疎水管41hには第2疎水開閉弁43hが介挿されている。第1疎水開閉弁33hは第1疎水管31hの流路の開閉を切り替える。第2疎水開閉弁43hは第2疎水管41hの流路の開閉を切り替える。第1疎水開閉弁33hおよび第2疎水開閉弁43hは制御部9によって制御される。
【0063】
第1疎水開閉弁33hおよび第2疎水開閉弁43hの少なくともいずれか一方が開くことにより、基板Wの主面に疎水化液が供給される。以下では、疎水化液が基板Wに供給される処理期間を疎水処理期間とも呼ぶ。
【0064】
制御部9は、疎水処理期間において、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御して、第2疎水流量Fh2に対する第1疎水流量Fh1の比(=Fh1/Fh2)を調整する。以下では、当該比を疎水流量比と呼ぶ。後に詳述するように、制御部9は、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御して、疎水処理期間の一部の第1期間における疎水流量比を、疎水処理期間のうちの第1期間よりも後の第2期間における疎水流量比よりも高くする。この技術的な意義については後に詳述する。
【0065】
<処理ユニットの具体的な構成の一例>
図2を参照して、処理ユニット1のより具体的な構成の一例を説明する。図2の例では、ファンフィルタユニット11がチャンバ10の天井部に設けられている。ファンフィルタユニット11は、チャンバ10の外部の空気を取り込んで清浄化し、その清浄化後の空気をチャンバ10の内部に送風する装置である。ファンフィルタユニット11は制御部9によって制御される。ファンフィルタユニット11の作動により、チャンバ10内には清浄な空気によるダウンフローが形成される。
【0066】
図2の例では、処理ユニット1には排気ダクト13が設けられている。図2の例では、排気ダクト13はチャンバ10の側壁のうち下側部分に接続されている。チャンバ10内のガスは排気ダクト13を通じて外部に排出される。
【0067】
図2の例では、基板保持部2は、スピンベース21と、複数のチャックピン22と、回転機構23とを含んでいる。スピンベース21は円板形状を有し、その厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢で設けられる。スピンベース21は、その中心が回転軸線Q1と一致する位置に設けられている。複数のチャックピン22は、回転軸線Q1についての周方向に沿って等間隔で、スピンベース21の周縁部に立設される。各チャックピン22は、次に説明する当接位置と離間位置との間で移動可能に設けられている。当接位置は、チャックピン22が基板Wの周縁に当接する位置である。各チャックピン22が当接位置に位置する状態では、複数のチャックピン22が基板Wを保持することができる。離間位置は、チャックピン22が基板Wから離れた位置である。各チャックピン22が離間位置に位置する状態では、複数のチャックピン22による基板Wの保持が解除される。なお、基板保持部2は必ずしもチャックピン22を含んでいる必要はなく、例えば、ベルヌーイチャック、吸引チャックもしくは静電チャックによって基板Wを保持してもよい。
【0068】
回転機構23は基板Wを回転軸線Q1のまわりで回転させる。図2の例では、回転機構23はシャフト231とモータ232とを含んでいる。シャフト231の上端はスピンベース21の下面に接続されており、回転軸線Q1に沿って延びている。モータ232はシャフト231を回転軸線Q1のまわりで回転させる。これにより、シャフト231に固定されたスピンベース21が回転軸線Q1のまわりで回転し、複数のチャックピン22によって保持された基板Wも回転軸線Q1のまわりで回転する。
【0069】
図2の例では、処理ユニット1は、チャンバ10内に設けられた薬液ノズル6も含んでいる。薬液ノズル6は、基板保持部2によって保持された基板Wの主面(ここでは上面)に向かって薬液を吐出する。薬液ノズル6は、例えば、薬液を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。薬液は、酸性薬液またはアルカリ性薬液であってもよい。具体的な一例として、薬液には、希弗酸、弗酸と過酸化水素水との混合液またはリン酸を適用することができる。
【0070】
薬液ノズル6には薬液管61の下流端が接続されている。薬液管61の上流端は不図示の薬液供給源に接続される。薬液供給源は、薬液を貯留する不図示のタンクを含む。薬液管61には薬液調整弁62および薬液開閉弁63が介挿されている。薬液調整弁62は、薬液管61を流れる薬液の流量を調整する。薬液開閉弁63は、薬液管61の流路の開閉を切り替える。薬液調整弁62および薬液開閉弁63は制御部9によって制御される。
【0071】
図2の例では、処理ユニット1には、薬液ノズル6を移動させるノズル移動機構65が設けられている。ノズル移動機構65は薬液ノズル6を次に説明する薬液処理位置と薬液待機位置との間で移動させる。薬液処理位置は、薬液ノズル6が、基板保持部2によって保持された基板Wに向かって薬液を吐出する位置であり、例えば、基板Wの主面の中央部と鉛直方向において対向する位置である。薬液待機位置は、薬液ノズル6が薬液を基板Wに向かって吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。図2の例では、薬液待機位置で停止する薬液ノズル6が示されている。例えば、ノズル移動機構65は駆動源としてのモータを含む。ノズル移動機構65の具体的な構成の一例は、後述のノズル移動機構35の具体的な構成の一例と同様である。
【0072】
薬液処理位置で停止した薬液ノズル6から吐出された薬液が回転中の基板Wの主面の中央部に着液すると、薬液が基板Wの主面上で広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。このとき、薬液が基板Wの主面に作用する。これにより、薬液に応じた処理が基板Wに対して行われる。例えば、基板Wの主面に付着した異物を除去する処理(洗浄処理)が行われる。
【0073】
図2の例では、処理ユニット1は中央ノズル3としての中央ノズル3rおよび中央ノズル3iも含んでいる。中央ノズル3rは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かってリンス液を吐出する。中央ノズル3rは、例えば、リンス液を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。図2の例では、中央ノズル3rは基板Wの上面に向かってリンス液を吐出する。つまり、中央ノズル3rは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。中央ノズル3rから吐出されたリンス液は、基板Wの主面の中央部に着液する。リンス液は、例えば、純水、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および、塩酸水(希釈濃度が10~100ppm程度の塩酸水)のうちのいずれかである。
【0074】
中央ノズル3rには第1リンス管31rの下流端が接続されている。第1リンス管31rの上流端は、不図示のリンス液供給源に接続される。リンス液供給源は、リンス液を貯留するタンク(不図示)を含む。第1リンス管31rには第1リンス調整弁32rおよび第1リンス開閉弁33rが介挿されている。第1リンス調整弁32rは、第1リンス管31rを流れるリンス液の流量を調整する。第1リンス開閉弁33rは、第1リンス管31rの流路の開閉を切り替える。第1リンス調整弁32rおよび第1リンス開閉弁33rは制御部9によって制御される。
【0075】
中央ノズル3rから吐出されたリンス液が回転中の基板Wの主面の中央部に着液すると、リンス液が基板Wの主面上で広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。リンス液は基板Wの主面上の薬液を外側に押し流すことができる(リンス処理)。これにより、基板Wの主面上の薬液をリンス液に置換することができる。
【0076】
中央ノズル3iは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって有機溶剤を吐出する。中央ノズル3iは、例えば、有機溶剤を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。図2の例では、中央ノズル3iは基板Wの上面に向かって有機溶剤を吐出する。つまり、中央ノズル3iは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。中央ノズル3iから吐出された有機溶剤は、基板Wの主面の中央部に着液する。
【0077】
有機溶剤は例えばイソプロピルアルコールである。有機溶剤の揮発性はリンス液の揮発性よりも高い。なお、有機溶剤には、メチルアルコール、エタノールおよびプロピルアルコール等のアルコールを採用することもできる。有機溶剤として、その他、ケトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、EGMEA(エチレングリコールモノメチルエーテル)、およびフッ素系溶剤の少なくとも一つを採用することができる。
【0078】
中央ノズル3iには第1溶剤管31iの下流端が接続されている。第1溶剤管31iの上流端は、不図示の有機溶剤供給源に接続される。有機溶剤供給源は、有機溶剤を貯留するタンク(不図示)を含む。第1溶剤管31iには第1溶剤調整弁32iおよび第1溶剤開閉弁33iが介挿されている。第1溶剤調整弁32iは、第1溶剤管31iを流れる有機溶剤の流量を調整する。第1溶剤開閉弁33iは、第1溶剤管31iの流路の開閉を切り替える。第1溶剤調整弁32iおよび第1溶剤開閉弁33iは制御部9によって制御される。
【0079】
中央ノズル3iから吐出された有機溶剤が回転中の基板Wの主面の中央部に着液すると、有機溶剤が基板Wの主面上で広がり、基板Wの周縁から外側に飛散する。有機溶剤は基板Wの主面上の液体(例えばリンス液または疎水化液)を外側に押し流すことができる(溶剤処理)。これにより、基板Wの主面上の液体を有機溶剤に置換することができる。
【0080】
図2の例では、処理ユニット1は中央ノズル3としての中央ノズル3gも含んでいる。中央ノズル3gは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって不活性ガスを吐出する。図2の例では、中央ノズル3gは基板Wの上面に向かって不活性ガスを吐出する。つまり、中央ノズル3gは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。不活性ガスは、例えば、窒素ガスおよび希ガスの少なくともいずれかを含む。希ガスは、例えば、アルゴンガスを含む。
【0081】
図2の例では、中央ノズル3h、中央ノズル3r、中央ノズル3iおよび中央ノズル3gは一体に構成されている。図2の例では、中央ノズル3h、中央ノズル3rおよび中央ノズル3iは、中央ノズル3gの内部流路に配置されている。中央ノズル3h、中央ノズル3rおよび中央ノズル3iは水平方向において互いに隣り合う位置に設けられており、例えば中央ノズル3gの上端部に固定される。中央ノズル3gの内部流路は下方において開口している。このため、中央ノズル3hから吐出された疎水化液は、中央ノズル3gの下方の開口から基板Wの上面に向かって流下する。中央ノズル3rからのリンス液および中央ノズル3iからの有機溶剤も同様に、それぞれ、中央ノズル3gの下方の開口から基板Wの上面に向かって流下する。
【0082】
中央ノズル3gの内部流路は、第1ガス管31gの下流端に接続されている。第1ガス管31gの上流端は、不図示のガス供給源に接続される。ガス供給源は、不活性ガスを貯留する貯留部(不図示)を含む。第1ガス管31gには第1ガス調整弁32gおよび第1ガス開閉弁33gが介挿されている。第1ガス調整弁32gは、第1ガス管31gを流れる不活性ガスの流量を調整する。第1ガス開閉弁33gは、第1ガス管31gの流路の開閉を切り替える。第1ガス調整弁32gおよび第1ガス開閉弁33gは制御部9によって制御される。
【0083】
中央ノズル3gから吐出された不活性ガスが回転中の基板Wの主面の中央部に衝突すると、不活性ガスは基板Wの主面に沿って径方向外側に流れる。このように不活性ガスが基板Wの主面に供給されることにより、基板Wの主面の乾燥を促進させることができる。
【0084】
図2の例では、処理ユニット1には、中央ノズル3を移動させるノズル移動機構35が設けられている。ここでは、ノズル移動機構35は、中央ノズル3h、中央ノズル3r、中央ノズル3iおよび中央ノズル3gを一体に移動させる。以下では、中央ノズル3h、中央ノズル3i、中央ノズル3rおよび中央ノズル3gからなる構成を、中央ノズルヘッドとも呼ぶ。ノズル移動機構35は中央ノズルヘッドを次に説明する中央処理位置とヘッド待機位置との間で移動させる。中央処理位置とは、中央ノズル3の少なくともいずれか一つが、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の中央部に向かって流体を吐出する位置であり、例えば、基板Wの中央部と鉛直方向において対向する位置である。ヘッド待機位置とは、各中央ノズル3が流体を基板Wの主面に向かって吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。
【0085】
図2の例では、ノズル移動機構35は、アーム351と、支持柱352と、駆動源353とを含んでいる。支持柱352は、後述のガード部7よりも径方向外側に設けられており、鉛直方向に沿って延びている。アーム351は水平方向に沿って延びており、その先端が中央ノズルヘッドに接続され、その基端が支持柱352に接続されている。駆動源353は、支持柱352をその中心軸Q2のまわりで回動させる。駆動源353は例えばモータを含む。支持柱352が中心軸Q2のまわりで回動すると、中央ノズルヘッドは、中心軸Q2についての周方向に沿って移動する。支持柱352は、中央ノズルヘッドの移動軌跡上に中央処理位置およびヘッド待機位置が位置するように、設置される。なお、ノズル移動機構35は必ずしも図2の態様に限らず、例えばリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。
【0086】
図2の例では、処理ユニット1には、基板Wの周縁から飛散した各種の処理液を受け止めるガード部7が設けられている。ここでいう処理液とは、薬液、リンス液および有機溶剤の総称である。ガード部7は少なくとも一つのガード71を含む。ガード71は、基板保持部2によって保持された基板Wを囲む筒状(例えば円筒状)の形状を有している。図2の例では、ガード部7は、同心状に配置された複数(図では3つ)のガード71を含んでいる。
【0087】
複数のガード71の各々はガード昇降機構73によって、次に説明するガード処理位置とガード待機位置との間で昇降する。ガード処理位置は、ガード71の上端が、基板保持部2によって保持された基板Wの上面よりも鉛直上方となる位置である。ガード71がガード処理位置で停止した状態では、基板Wの周縁から飛散した処理液はガード71の内周面で受け止められる。ガード待機位置は、ガード処理位置よりも低い位置であり、例えば、ガード71の上端がスピンベース21の上面よりも下方となる位置である。ガード昇降機構73は、例えば、駆動源としてのモータと、駆動機構としてのボールねじ機構とを含んでいてもよい。あるいは、ガード昇降機構73はエアシリンダーを含んでいてもよい。
【0088】
図2の例では、ガード部7は、各ガード71に対応した排液槽72を含んでいる。各排液槽72は、対応するガード71の内周面に沿って流下した処理液を受け止める。各排液槽72の底面には、排液管12の上流端が接続されている。該処理液は排液槽72から排液管12を通じて回収される。
【0089】
処理ユニット1には、基板保持部2によって保持された基板Wを加熱するヒータ(不図示)が設けられてもよい。例えば、スピンベース21と基板Wとの間にヒータが設けられてもよい。ヒータは、例えば、電熱線を有する電気抵抗式のヒータであってもよく、加熱用の電磁波を照射する光学式のヒータであってもよい。また、ヒータは、高温の流体を基板Wの例えば下面に供給することで、基板Wを加熱してもよい。ヒータは、各処理液に適した温度となるように基板Wを加熱してもよい。
【0090】
<基板処理装置の動作の一例>
次に処理ユニット1の動作の一例について説明する。図3は、処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、第2搬送部122が基板Wを処理ユニット1に搬送し、基板保持部2が、第2搬送部122から受け取った基板Wを保持する(ステップS1:保持工程)。
【0091】
次に、基板保持部2は基板Wの回転を開始する(ステップS2:回転工程)。これにより、基板Wは回転軸線Q1のまわりで回転する。基板保持部2は、基板Wに対する一連の処理が終了するまで基板Wの回転を継続してもよい。
【0092】
次に、処理ユニット1は薬液処理を行う(ステップS3:薬液工程)。具体的には、まず、ガード昇降機構73は、薬液に応じたガード71をガード処理位置に移動させ、ノズル移動機構65は薬液ノズル6を薬液処理位置に移動させる。そして、薬液開閉弁63が開く。これにより、薬液ノズル6が回転中の基板Wの主面に向かって薬液を吐出する。薬液は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの主面上で広がって基板Wの周縁から飛散する。薬液は、薬液に応じたガード71の内周面で受け止められる。このとき、薬液が基板Wの主面に作用することにより、薬液に応じた処理が基板Wの主面に対して行われる。薬液の供給開始から所定の薬液処理時間が経過すると、薬液開閉弁63が閉じる。時間は、例えば制御部9に属するタイマ回路(不図示)によって計測され得る。薬液開閉弁63が閉じることにより、薬液処理が実質的に終了する。そして、ノズル移動機構65は薬液ノズル6を薬液待機位置に移動させる。
【0093】
次に、処理ユニット1はリンス処理を行う(ステップS4:リンス工程)。具体的には、まず、ノズル移動機構35は中央ノズルヘッドを中央処理位置に移動させる。リンス液に応じたガード71が薬液に応じたガード71と異なる場合には、ガード昇降機構73は、リンス液に応じたガード71をガード処理位置に移動させる。そして、第1リンス開閉弁33rが開く。これにより、中央ノズル3rは基板Wの主面の中央部に向かってリンス液を吐出する。リンス液の流量は、例えば、1500ccm程度以上かつ2000ccm程度以下に設定される。リンス液は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの主面上で広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。リンス液は、リンス液に応じたガード71の内周面で受け止められる。基板Wの主面の中央部に着液したリンス液は基板Wの主面上の薬液を径方向外側に押し流すので、基板Wの主面の薬液をリンス液に置換することができる。リンス液の供給開始から所定のリンス処理時間が経過すると、第1リンス開閉弁33rが閉じる。これにより、リンス処理が実質的に終了する。
【0094】
次に、処理ユニット1はプレ溶剤処理を行う(ステップS5:プレ溶剤工程)。具体的には、有機溶剤に応じたガード71がリンス液に応じたガード71と異なる場合には、ガード昇降機構73は、有機溶剤に応じたガード71をガード処理位置に移動させる。そして、第1溶剤開閉弁33iが開く。これにより、中央ノズル3iは回転中の基板Wの主面の中央部に向かって有機溶剤を吐出する。有機溶剤の流量はリンス液の流量よりも小さく、例えば、リンス液の流量の2分の1以下、もしくは、3分の1以下に設定される。より具体的な一例として、有機溶剤の流量は200ccmよりも大きく、かつ、400ccm以下に設定され、例えば300ccm程度に設定される。有機溶剤は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの主面上で広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。有機溶剤は、有機溶剤に応じたガード71の内周面で受け止められる。基板Wの主面の中央部に着液した有機溶剤は基板Wの主面上のリンス液を径方向外側に押し流すので、基板Wの主面上のリンス液を有機溶剤に置換することができる。有機溶剤の供給開始から所定のプレ処理時間が経過すると、第1溶剤開閉弁33iが閉じる。これにより、プレ溶剤処理が実質的に終了する。
【0095】
次に、処理ユニット1は疎水化処理を行う(ステップS6:疎水化工程)。具体的には、疎水化液に応じたガード71が有機溶剤に応じたガード71と異なる場合には、ガード昇降機構73は、疎水化液に応じたガード71をガード処理位置に移動させる。そして、第1疎水開閉弁33hおよび第2疎水開閉弁43hが開く。これにより、中央ノズル3hおよび周縁ノズル4hは回転中の基板Wの主面に向かって疎水化液を吐出する。中央ノズル3hから吐出された疎水化液は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの主面上で広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。周縁ノズル4hから吐出された疎水化液は基板Wの主面の周縁部に着液し、基板Wの主面上で径方向外側に流れて、基板Wの周縁から外側に飛散する。疎水化液は、疎水化液に応じたガード71の内周面で受け止められる。
【0096】
疎水化液は基板Wの主面上の有機溶剤を押し流すことができるので、基板Wの主面上の有機溶剤を疎水化液に置換することができる。また、このとき、疎水化液は基板Wの主面に作用して、基板Wの主面に、疎水性を有する疎水膜を形成する。つまり、基板Wの主面が疎水化する。
【0097】
制御部9は、疎水化液を基板Wに供給する疎水処理期間Thにおいて、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御して、第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との疎水流量比(=Fh1/Fh2)を変化させる。なお、第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和は、例えば、リンス液の流量よりも小さく、また、有機溶剤の流量よりも小さく設定される。第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和は、例えば、リンス液の流量の5分の1以下もしくは10分の1以下に設定される。より具体的な一例として、第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和は、50ccm程度以上200ccm程度以下に設定され、例えば、150ccm程度に設定される。
【0098】
図4は、疎水化処理中の処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図であり、図5は、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2の時間変化の第1例を示すグラフである。図5の例では、疎水処理期間Thは、期間Th1、期間Th2および期間Th3によって構成される。ここでは、期間Th2は期間Th1に続く期間であり、期間Th3は期間Th2に続く期間である。図4(a)は、期間Th1における処理ユニット1の様子の一例を示し、図4(b)は、期間Th2における処理ユニット1の様子の一例を示し、図4(c)は、期間Th3における処理ユニット1の様子の一例を示している。図4(a)から図4(c)の例では、中央ノズル3hから吐出される疎水化液の第1疎水流量Fh1および周縁ノズル4hから吐出される疎水化液の第2疎水流量Fh2の大小を、液柱状の疎水化液の幅で模式的に示している。
【0099】
図4および図5に示されるように、制御部9は、期間Th1における疎水流量比(=Fh1/Fh2)を期間Th2における疎水流量比よりも高くし、期間Th2における疎水流量比を期間Th3における疎水流量比よりも高くする。つまり、制御部9は、疎水流量比が時間の経過に応じて低減するように、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御する。期間Th1における疎水流量比は例えば1.5以上であってもよい。なお、期間Th1における第2疎水流量Fh2はゼロであってもよい。期間Th2における疎水流量比は例えば0.8以上かつ1.5未満であってもよい。期間Th3における疎水流量比は例えば0.01以上かつ0.8未満であってもよい。
【0100】
期間Th1、期間Th2および期間Th3の長さ(つまり時間)は例えば予め設定され、制御部9の記憶部に記憶されていてもよい。
【0101】
図5の例では、制御部9は、期間Th1における第1疎水流量Fh1が期間Th2における第1疎水流量Fh1よりも大きく、かつ、期間Th2における第1疎水流量Fh1が期間Th3における第1疎水流量Fh1よりも大きくなるように、第1疎水調整弁32hを制御する。つまり、図5の例では、制御部9は、第1疎水流量Fh1が時間の経過に応じて低減するように、第1疎水調整弁32hを制御する。
【0102】
また、図5の例では、制御部9は、期間Th1における第2疎水流量Fh2が期間Th2における第2疎水流量Fh2よりも小さく、かつ、期間Th2における第2疎水流量Fh2が期間Th3における第2疎水流量Fh2よりも小さくなるように、第2疎水調整弁42hを制御する。つまり、図5の例では、制御部9は、第2疎水流量Fh2が時間の経過に応じて増加するように、第2疎水調整弁42hを制御する。
【0103】
また、図5の例では、制御部9は、期間Th1における第1疎水流量Fh1が期間Th1における第2疎水流量Fh2よりも大きく、期間Th2における第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2が互いに等しく、かつ、期間Th3における第1疎水流量Fh1が期間Th3における第2疎水流量Fh2よりも小さくなるように、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御する。つまり、図5の例では、制御部9は、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2の大小関係が時間の経過に応じて逆転するように、第1疎水調整弁32hおよび第2疎水調整弁42hを制御する。
【0104】
以上のように、疎水処理期間のうちの第1期間(例えば期間Th1)では、疎水流量比は比較的に高い。このため、基板Wの中央部により大量の疎水化液が着液し、基板Wの周縁部により少量の疎水化液が着液する。したがって、大量の疎水化液が基板Wの主面上の有機溶剤を中央部から外側に押し流すことができる。したがって、基板Wの主面の中央部上の有機溶剤をより速やかに疎水化液に置換することができる。
【0105】
また、中央部に着液したより大量の疎水化液は、基板Wの中央部から外側に有機溶剤を押し流しつつ、基板Wの主面に作用して基板Wの主面を疎水化させる。この反応により、疎水化液は基板Wの疎水化に要する成分が消費されるうえ、該成分はチャンバ10の内部空間の水分とも反応するので、基板Wの中央部から周縁部に向かうにつれて、疎水化液の活性の程度は低下する。つまり、中央部に着液した疎水化液は基板Wの周縁部に向かうにつれて失活する。
【0106】
本実施の形態では、周縁ノズル4からの疎水化液が基板Wの周縁部に着液する。このため、ほとんど失活していない疎水化液が基板Wの周縁部に作用することができ、基板Wの周縁部の疎水化に寄与する。ただし、第1期間(例えば期間Th1)において、周縁部には、比較的に少量の疎水化液が着液するので、主として基板Wの中央部に対する疎水化が進行する。
【0107】
第2期間(例えば期間Th2もしくは期間Th3)における疎水流量比は第1期間(例えば期間Th1)における疎水流量比に比べて低い。図5の例では、期間Th2では、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2は互いに等しい。このため、期間Th2において、互いに同程度の流量で基板Wの中央部および周縁部に疎水化液が着液する。したがって、基板Wの中央部および周縁部に対する疎水化が互いに同程度に進行する。
【0108】
図5の例では、期間Th3における疎水流量比は期間Th2における疎水流量比に比べて低い。このため、期間Th3においては、より少量の疎水化液が基板Wの中央部に着液し、より大量の疎水化液が基板Wの周縁部に着液する。このため、期間Th3では、主として基板Wの周縁部に対する疎水化が進行する。したがって、基板Wの周縁部も適切に疎水化することができる。また、期間Th3でも疎水化液が基板Wの中央部に着液するので、疎水化液が基板Wの主面の全面を覆うことができる。したがって、基板Wの主面に不純物が付着する可能性を低減させることができる。
【0109】
期間Th3が経過すると、第1疎水開閉弁33hおよび第2疎水開閉弁43hが閉じる。これにより、疎水化処理が実質的に終了する。
【0110】
次に、処理ユニット1はポスト溶剤処理を行う(ステップS7:ポスト溶剤工程)。具体的には、疎水化液に応じたガード71が有機溶剤に応じたガード71と相違している場合には、ガード昇降機構73は、有機溶剤に応じたガード71をガード処理位置に移動せる。そして、第1溶剤開閉弁33iが開く。これにより、中央ノズル3iが有機溶剤を回転中の基板Wの主面の中央部に向かって吐出する。有機溶剤の流量は、例えば、プレ溶剤工程で説明した範囲と同様の範囲内で設定される。有機溶剤は基板Wの主面の中央部に着液し、基板Wの主面上で広がって基板Wの周縁から外側に飛散する。有機溶剤は、有機溶剤に応じたガード71の内周面で受け止められる。基板Wの中央部に着液した有機溶剤は基板Wの主面上の疎水化液を押し流すので、基板Wの主面上の疎水化液を有機溶剤に置換することができる。有機溶剤の供給開始から所定のポスト処理時間が経過すると、第1溶剤開閉弁33iが閉じる。これにより、ポスト溶剤処理が実質的に終了する。
【0111】
次に、処理ユニット1は乾燥処理を行う(ステップS8:乾燥工程)。具体的には、基板保持部2が基板Wの回転速度を増加させる。これにより、基板Wの周縁から飛散する有機溶剤の量を増加させることができる。また、基板Wの主面上の有機溶剤の気化を促進させることもできる。この乾燥処理において、第1ガス開閉弁33gが開いてもよい。この場合には、中央ノズル3gが不活性ガスを回転中の基板Wの主面の中央部に向かって吐出する。不活性ガスは基板Wの中央部に衝突し、基板Wの主面に沿って外側に流れる。これにより、基板Wの主面上の有機溶剤の気化を促進させることができる。また、不活性ガスが基板Wの主面上の有機溶剤を径方向外側に押圧するので、基板Wの周縁から飛散する有機溶剤を増加させることもできる。
【0112】
基板Wの主面が疎水化していれば、乾燥処理において、パターン間における有機溶剤の液面の接触角を90度に近づけることができる。接触角が90度に近いほど、有機溶剤の表面張力によってパターンに生じる応力は小さい。このため、乾燥処理におけるパターンの倒壊の発生を抑制することができる。
【0113】
乾燥処理の開始から所定の乾燥処理時間が経過すると、基板保持部2は基板Wの回転を停止させ、第1ガス開閉弁33gが閉じる。これにより、乾燥処理が実質的に終了し、基板Wに対する一連の処理が実質的に終了する。
【0114】
次に、基板保持部2は基板Wに対する保持を解除し、第2搬送部122は処理済みの基板Wをチャンバ10から取り出す(ステップS9:搬出工程)。
【0115】
<効果>
以上のように、処理ユニット1は基板Wに対する処理を行うことができる。しかも、処理ユニット1は疎水化処理において、中央ノズル3hおよび周縁ノズル4hから疎水化液を吐出させる。基板Wの中央部に着液した疎水化液は主として中央部を疎水化させることができる。該疎水化液は基板Wの周縁部に到達する際には既に失活し得る。このため、中央ノズル3hのみから疎水化液を吐出し続けても、基板Wの周縁部は十分に疎水化されない。しかしながら、本実施の形態では、基板Wの周縁部には周縁ノズル4からの疎水化液が着液する。このため、基板Wの周縁部に着液した疎水化液が基板Wの周縁部を疎水化させることができる。したがって、基板Wの主面の全面をより適切に疎水化させることができる。
【0116】
しかも、疎水化処理において、疎水流量比(=Fh1/Fh2)は時間の経過に応じて低減する。例えば、疎水処理期間Thのうちの期間Th1における疎水流量比は、期間Th2における疎水流量比よりも高く、期間Th2における疎水流量比は期間Th3における疎水流量比よりも高い。このため、疎水化処理の初期(例えば期間Th1)において、より大量に基板Wの中央部に疎水化液を着液させることができる。初期では、基板Wの主面の全面に有機溶剤が残留しているところ、比較的大量の疎水化液が基板Wの中央部から外側に有機溶剤を押し流すことができる。このため、より速やかに基板Wの主面上の有機溶剤を疎水化液に置換することができる。また、比較的大量の疎水化液によって基板Wの主面の中央部に対する疎水化をより速やかに促進させることができる。
【0117】
そして、疎水化処理の末期(例えば期間Th3)においては、より大量に基板Wの周縁部に疎水化液を着液させることができる。このため、比較的大量の疎水化液によって基板Wの主面の周縁部に対する疎水化をより速やかに促進させることができる。
【0118】
比較のために、疎水流量比を時間の経過とともに増加させる場合について説明する。この場合、疎水処理期間Thのうちの初期では、比較的少量の疎水化液が基板Wの中央部に着液し、比較的大量の疎水化液が基板Wの周縁部に着液する。大量の疎水化液は基板Wの周縁部上の有機溶剤を径方向外側に押し流すものの、中央部から周縁部に有機溶剤が流れ込むので、周縁部上の疎水化液が有機溶剤によって薄められる。このため、疎水化液が十分に周縁部に作用できず、基板Wの周縁部の疎水化が不十分になり得る。基板Wの周縁部の疎水化を十分に行うには、疎水処理期間Thを長くする必要があり、これは、スループットの低下および疎水化液の使用量の増加を招く。ここでいう疎水化液の使用量とは、疎水処理期間Thの全体において基板Wに供給された疎水化液の総供給量をいう。
【0119】
これに対して、本実施の形態では、疎水流量比を時間の経過に応じて増加させるので、有機溶剤から疎水化液の置換を短時間で行うことができ、基板Wの主面の全面に対する疎水化をより短時間で完了することができる。このため、疎水化液の使用量も低減させることができる。
【0120】
図5の例では、期間Th1における第1疎水流量Fh1は第2疎水流量Fh2よりも大きい。このため、疎水化処理の初期において大量に残留している基板Wの主面上の有機溶剤を中央部からより速やかに疎水化液で押し流すことができる。また、図5の例では、期間Th3における第2疎水流量Fh2は第1疎水流量Fh1よりも大きい。このため、疎水化処理の末期において、より大量の疎水化液で基板Wの主面の周縁部を疎水化させることができる。したがって、より速やかに基板Wの全面を疎水化させることができる。
【0121】
また、図5の例では、疎水処理期間Thの全体にわたって、第1疎水流量Fh1は0よりも大きい。つまり、中央ノズル3hは疎水処理期間Thの全体にわたって基板Wの主面の中央部に向かって疎水化液を吐出している。このため、疎水化液が基板Wの主面の全体を覆うことができ、チャンバ10内の浮遊物が基板Wの主面に付着する可能性を低減させることができる。
【0122】
また、図5の例では、第1疎水流量Fh1は時間の経過に応じて低減し、第2疎水流量Fh2は時間の経過に応じて増加する。このため、第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和の時間変動を抑制することができる。第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和が時間の経過に依らず一定であれば、当該和の時間変動を理想的には解消することができる。第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2の和の時間変動が小さければ、疎水化処理に用いられる疎水化液の供給量の算出および管理が容易である。
【0123】
図6は、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2の時間変化の第2例を示すグラフである。図6の例でも、疎水流量比(=Fh1/Fh2)は時間の経過に応じて低減する。具体的には、期間Th1における疎水流量比は期間Th2における疎水流量比よりも高く、期間Th2における疎水流量比は期間Th3における疎水流量比よりも高い。図6の例では、期間Th1において第1疎水流量Fh1は第2疎水流量Fh2と等しく、期間Th2において第1疎水流量Fh1は第2疎水流量Fh2よりも小さく、期間Th3において第1疎水流量Fh1は第2疎水流量Fh2よりもさらに小さい。
【0124】
図6の例であっても、疎水流量比が時間の経過に応じて低減するので、疎水流量比が時間の経過に応じて増加する場合に比べて、より短時間で基板Wの主面の全面を疎水化させることができる。
【0125】
なお、上述の例では、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2の各々を時間の経過に応じて3段階で変化させているものの、2段階で変化させてもよく、4段階以上で変化させてもよい。あるいは、第1疎水流量Fh1および第2疎水流量Fh2の各々を連続的に変化させてもよい。
【0126】
<周縁ノズルの吐出方向>
図7は、第1の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す平面図である。図7の例では、基板Wは反時計回りに回転している。図7に示されるように、周縁ノズル4hは、平面視において、基板Wの回転方向に沿って疎水化液を吐出してもよい。図7では、周縁ノズル4hから吐出される疎水化液の吐出方向を実線の直線矢印で模式的に示している。図7に示されるように、周縁ノズル4hの平面視における疎水化液の吐出方向は、周縁ノズル4hから吐出された疎水化液の基板Wの主面上の着液位置P1における回転方向に沿っていてもよい。具体的には、吐出方向と着液位置P1における回転方向とがなす第1角度は、該吐出方向と着液位置P1における径方向とがなす第2角度よりも小さい。第1角度は例えば数度以下であってもよい。
【0127】
図7の例では、基板Wの主面の中央部に着液した疎水化液の流れる方向が模式的に矢印で示されている。図7では、中央ノズル3gおよびアーム351と重なる部分では、破線で示されている。疎水化液は、径方向外側に向かいつつ回転方向に湾曲して流れる。このため、基板Wの周縁部の着液位置P1では疎水化液は径方向外側かつ回転方向の斜めに流れている。着液位置P1では、周縁ノズル4hからの疎水化液が回転方向に沿って着液するので、周縁ノズル4hからの疎水化液と、基板Wの主面に沿って流れる疎水化液とが、互いにより近い液流方向で衝突する。このため、着液位置P1において疎水化液の液はねを抑制することができる。ここでいう液はねとは、流体同士の衝突および流体と基板Wの主面との衝突によって生じる流体の跳ね返りである。液はねの抑制とは、例えば、基板Wの主面と、跳ね返った流体との間の距離の低下を意味する。
【0128】
比較のために、周縁ノズル4hが、回転軸線Q1についての径方向に沿って疎水化液を吐出する構造について考察する。図4では、この周縁ノズル4hが仮想線で示されている。この構造では、周縁ノズル4hから吐出された疎水化液は着液位置P1において径方向内側に流れる。一方で、基板Wの中央部に着液した疎水化液は基板Wの主面上を径方向外側に流れる。このため、これらの疎水化液は、着液位置P1において、互いに反対の液流方向で衝突する。このため、着液位置P1において疎水化液の液はねが生じやすい。疎水化液が基板Wの主面上で大きく跳ね返ると、チャンバ10内の各構成に疎水化液が付着し得る。このような事態は好ましくない。
【0129】
これに対して、図7の例では、周縁ノズル4hが、着液位置P1における基板Wの回転方向に沿う吐出方向で疎水化液を吐出する。このため、液はねを抑制し、上記事態の発生を抑制することができる。
【0130】
<第1期間および第2期間の長さ>
図5の例では、期間Th1において、より大きな第1疎水流量Fh1で吐出された疎水化液が基板Wの主面の中央部を疎水化させる。一方、期間Th3においては、より大きな第2疎水流量Fh2で吐出された疎水化液が基板Wの主面の周縁部を疎水化させる。
【0131】
ところで、回転軸線Q1まわりの円周の長さは、回転軸線Q1から遠ざかるにつれて、つまり、円の直径が大きくなるにつれて、長くなる。このため、基板Wの周縁部に十分な疎水化液を供給するのに要する時間は、基板Wの中央部に十分な疎水化液を供給するのに要する時間よりも長い傾向にある。特に、着液位置P1が、基板Wの直径の1/√2倍以下の直径の有する仮想円上に位置する場合、基板Wの周縁部の面積は中央部の面積よりも大きい。この場合、基板Wの周縁部に十分な疎水化液を供給するのに要する時間は長くなる。そこで、期間Th3の長さを期間Th1よりも長く設定してもよい。例えば、第2疎水流量Fh2が第1疎水流量Fh1よりも大きい期間Th3(第2期間に相当)を、第1疎水流量Fh1が第2疎水流量Fh2よりも大きい期間Th1(第1期間に相当)よりも長く設定してもよい。これによれば、基板Wの周縁部をより適切に疎水化させることができる。
【0132】
<回転速度>
基板保持部2は疎水処理期間Thにおいて基板Wの回転速度を変化させてもよい。例えば、基板保持部2は、期間Th3において、期間Th1における基板Wの回転速度よりも低い回転速度で、基板Wを回転させてもよい。例えば、期間Th3における基板Wの回転速度の平均値を、期間Th1における基板Wの回転速度の平均値よりも低く設定してもよい。回転速度は予め設定されて、例えば制御部9の記憶部に記憶されていてもよい。
【0133】
期間Th1における基板Wの回転速度が高いので、初期的に基板Wの主面上に残留する有機溶剤をより速やかに除去することができる。また、期間Th1では、主として基板Wの中央部に対する疎水化が行われるところ、基板Wの中央部の各位置は回転軸線Q1に比較的に近いので、回転速度が高くても各位置に生じる遠心力は比較的に小さく、疎水化液の液膜は比較的に厚い。このため、期間Th1において、基板Wの中央部をより適切に疎水化させることができる。
【0134】
また、期間Th3における基板Wの回転速度が低いので、基板Wの周縁部に着液した疎水化液はより長く周縁部に留まることができる。つまり、基板Wの周縁部の各位置に作用する遠心力を低下させることができ、基板Wの周縁部上の疎水化液の膜厚を大きくすることができる。このため、期間Th3において、基板Wの周縁部をより適切に疎水化させることができる。
【0135】
<第2の実施の形態>
図8は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す図である。以下では、第2の実施の形態にかかる処理ユニット1を処理ユニット1Aとも呼ぶ。処理ユニット1Aは処理ユニット1の構成に加えて、周縁ノズル4としての周縁ノズル4iおよび周縁ノズル4gを含んでいる。
【0136】
周縁ノズル4iは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の周縁部に向かって流体としての有機溶剤を吐出する。周縁ノズル4iは、例えば、有機溶剤を連続流の状態で吐出するストレートノズルである。一例として、周縁ノズル4iは基板Wの上面に向かって有機溶剤を吐出する。つまり、周縁ノズル4iは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。図8に示されるように、周縁ノズル4iは、平面視において、基板Wよりも径方向外側に設けられてもよい。周縁ノズル4iはチャンバ10に対して移動不能に固定されていてもよい。つまり、周縁ノズル4iは固定ノズルであってもよい。周縁ノズル4iは例えば斜め下方に沿って有機溶剤を吐出する。周縁ノズル4iから吐出された疎水化液は基板Wの主面の周縁部に着液する。
【0137】
周縁ノズル4iには第2溶剤管41iの下流端が接続されている。第2溶剤管41iの上流端は、不図示の有機溶剤供給源に接続される。第2溶剤調整弁42iは第2溶剤管41iに介挿される。第2溶剤調整弁42iは、第2溶剤管41iを流れる有機溶剤の流量、つまり、周縁ノズル4iから吐出される有機溶剤の流量を調整する。以下では、第2溶剤管41iを流れる有機溶剤の流量、つまり、周縁ノズル4iから吐出される有機溶剤の流量を、第2溶剤流量Fi2と呼び、第1溶剤管31iを流れる有機溶剤の流量、つまり、中央ノズル3iから吐出される有機溶剤の流量を第1溶剤流量Fi1と呼ぶ。
【0138】
第1溶剤調整弁32iおよび第2溶剤調整弁42iは制御部9によって制御される。つまり、制御部9は第1溶剤調整弁32iおよび第2溶剤調整弁42iを制御して、中央ノズル3iおよび周縁ノズル4iからそれぞれ第1溶剤流量Fi1および第2溶剤流量Fi2で有機溶剤を吐出させる。
【0139】
図8の例では、第2溶剤管41iには第2溶剤開閉弁43iが介挿されている。第2溶剤開閉弁43iは第2溶剤管41iの流路の開閉を切り替える。第2溶剤開閉弁43iは制御部9によって制御される。
【0140】
第1溶剤開閉弁33iおよび第2溶剤開閉弁43iの少なくともいずれか一方が開くことにより、基板Wの主面に有機溶剤が供給される。以下では、有機溶剤が基板Wに供給される処理期間を溶剤処理期間Tiとも呼ぶ。
【0141】
制御部9は、溶剤処理期間Tiにおいて、第1溶剤調整弁32iおよび第2溶剤調整弁42iを制御して、第2溶剤流量Fi2に対する第1溶剤流量Fi1の比(=Fi1/Fi2)を時間の経過とともに変化させる。以下では、当該比を溶剤流量比と呼ぶ。より具体的な一例として、制御部9は、溶剤処理期間の一部の第1溶剤期間における溶剤流量比を、溶剤処理期間のうちの第1溶剤期間よりも後の第2溶剤期間における溶剤流量比よりも高くする。この技術的な意義については後に詳述する。
【0142】
周縁ノズル4gは、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の周縁部に向かって流体としての不活性ガスを吐出する。一例として、周縁ノズル4gは基板Wの上面に向かって不活性ガスを吐出する。つまり、周縁ノズル4gは、基板保持部2によって保持された基板Wよりも上方に位置している。図8に示されるように、周縁ノズル4gは、平面視において、基板Wよりも径方向外側に設けられてもよい。周縁ノズル4gはチャンバ10に対して移動不能に固定されていてもよい。つまり、周縁ノズル4gは固定ノズルであってもよい。周縁ノズル4gは例えば斜め下方に沿って不活性ガスを吐出する。周縁ノズル4gから吐出された不活性ガスは基板Wの主面の周縁部に衝突する。
【0143】
周縁ノズル4gには第2ガス管41gの下流端が接続されている。第2ガス管41gの上流端は、不図示のガス供給源に接続される。第2ガス調整弁42gは第2ガス管41gに介挿される。第2ガス調整弁42gは、第2ガス管41gを流れる不活性ガスの流量、つまり、周縁ノズル4gから吐出される不活性ガスの流量を調整する。以下では、第2ガス管41gを流れる不活性ガスの流量、つまり、周縁ノズル4gから吐出される不活性ガスの流量を、第2ガス流量Fg2と呼び、第1ガス管31gを流れる不活性ガスの流量、つまり、中央ノズル3gから吐出される不活性ガスの流量を第1ガス流量Fg1と呼ぶ。
【0144】
第1ガス調整弁32gおよび第2ガス調整弁42gは制御部9によって制御される。つまり、制御部9は第1ガス調整弁32gおよび第2ガス調整弁42gを制御して、中央ノズル3gおよび周縁ノズル4gからそれぞれ第1ガス流量Fg1および第2ガス流量Fg2で不活性ガスを吐出させる。
【0145】
図8の例では、第2ガス管41gには第2ガス開閉弁43gが介挿されている。第2ガス開閉弁43gは第2ガス管41gの流路の開閉を切り替える。第2ガス開閉弁43gは制御部9によって制御される。
【0146】
第1ガス開閉弁33gおよび第2ガス開閉弁43gの少なくともいずれか一方が開くことにより、基板Wの主面に不活性ガスが供給される。以下では、不活性ガスが基板Wに供給される処理期間をガス処理期間とも呼ぶ。
【0147】
制御部9は、ガス処理期間において、第2ガス流量Fg2に対する第1ガス流量Fg1の比(=Fg1/Fg2)を一定に制御してもよい。
【0148】
<基板処理装置の動作の一例>
処理ユニット1Aの動作の一例は図3と同様である。ただし、制御部9は、プレ溶剤処理(ステップS5)およびポスト溶剤処理(ステップS7)の少なくともいずれか一方において、第1溶剤開閉弁33iおよび第2溶剤開閉弁43iを開く。これにより、中央ノズル3iおよび周縁ノズル4iがそれぞれ第1溶剤流量Fi1および第2溶剤流量Fi2で有機溶剤を吐出する。制御部9は、溶剤処理期間Tiにおいて第1溶剤調整弁32iおよび第2溶剤調整弁42iを制御して、溶剤流量比(=Fi1/Fi2)を時間の経過に応じて変化させる。なお、第1溶剤流量Fi1と第2溶剤流量Fi2との和は、例えば、第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2との和よりも大きく設定される。第1溶剤流量Fi1および第2溶剤流量Fi2の和は例えば200ccm程度以上かつ400ccm程度以下に設定され、より具体的な一例として、300ccm程度に設定される。
【0149】
図9は、プレ溶剤処理またはポスト溶剤処理中の処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図であり、図10は、第1溶剤流量Fi1および第2溶剤流量Fi2の時間変化の一例を示すグラフである。図10の例では、溶剤処理期間Tiは、期間Ti1、期間Ti2および期間Ti3によって構成される。ここでは、期間Ti2は期間Ti1に続く期間であり、期間Ti3は期間Ti2に続く期間である。図9(a)は、期間Ti1における処理ユニット1Aの様子の一例を示し、図9(b)は、期間Ti2における処理ユニット1Aの様子の一例を示し、図9(c)は、期間Ti3における処理ユニット1Aの様子の一例を示している。図9(a)から図9(c)の例では、中央ノズル3iから吐出される有機溶剤の第1溶剤流量Fi1および周縁ノズル4iから吐出される有機溶剤の第2溶剤流量Fi2の大小を、液柱状の有機溶剤の幅で模式的に示している。
【0150】
図9および図10に示されるように、制御部9は、期間Ti1における溶剤流量比(=Fi1/Fi2)を期間Ti2における溶剤流量比よりも高くし、期間Ti2における溶剤流量比を期間Th3における溶剤流量比よりも高くする。つまり、制御部9は、溶剤流量比が時間の経過に応じて低減するように、第1溶剤調整弁32iおよび第2溶剤調整弁42iを制御する。期間Ti1における溶剤流量比は、例えば、1.5以上であってもよい。なお、期間Ti1における第2溶剤流量Fi2はゼロであってもよい。期間Ti2における溶剤流量比は、例えば0.8以上かつ1.5未満であってもよい。期間Ti3における溶剤流量比は、例えば、0.01以上かつ0.8未満であってもよい。
【0151】
第1溶剤流量Fi1の時間変化の一例は第1疎水流量Fh1と同様であり、第2溶剤流量Fi2の時間変化の一例は第2疎水流量Fh2と同様であり、第1溶剤流量Fi1と第2溶剤流量Fi2の大小関係の時間変化の一例は第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2の大小関係と同様である。
【0152】
以上のように、処理ユニット1Aはプレ溶剤処理およびポスト溶剤処理の少なくともいずれか一方において、中央ノズル3iおよび周縁ノズル4iから有機溶剤を吐出させる。基板Wの中央部に着液した有機溶剤の液膜は、基板Wの周縁部に向かうにつれて薄くなるものの、基板Wの周縁部にも有機溶剤が着液する。このため、基板Wの主面の全面がより確実に有機溶剤によって覆われる。したがって、チャンバ10内の浮遊物が基板Wの主面に付着する可能性を低減させることができる。
【0153】
しかも、溶剤処理期間Tiにおいて、溶剤流量比(=Fh1/Fh2)は時間の経過に応じて低減する。このため、溶剤処理期間Tiのうちの第1溶剤期間(例えば期間Ti1)において、より大量の有機溶剤を基板Wの中央部に着液させることができる。第1溶剤期間では、基板Wの主面の全面にリンス液または疎水化液が残留しているところ、比較的大量の有機溶剤が基板Wの中央部から外側にリンス液または疎水化液を押し流すことができる。このため、より速やかに基板Wの主面上の液体を有機溶剤に置換することができる。特に、比較的大量の有機溶剤によって基板Wの主面の中央部における有機溶剤への置換を促進できる。つまり、より短時間で基板Wの中央部において液体を有機溶剤に置換できる。また、より大量の有機溶剤が基板Wの中央部に着液するので、基板Wの中央部のパターン間でも有機溶剤への置換を促進できる。
【0154】
そして、溶剤処理期間Tiのうちの第1溶剤期間の後の第2溶剤期間(例えば期間Ti3)においては、より大量の有機溶剤を基板Wの周縁部に着液させることができる。このため、比較的大量の有機溶剤によって基板Wの主面の周縁部における有機溶剤への置換を促進することができる。したがって、基板Wの周縁部のパターン間でも有機溶剤への置換を促進できる。
【0155】
以上のように、第2の実施の形態によれば、基板W上の液体の径方向外側への流れに応じた順序(中央部から周縁部)で、基板Wの主面上の液体を有機溶剤に置換することができる。したがって、基板Wの主面の全面を液体で覆いつつも、基板Wの主面の全面に対する有機溶剤への置換をより短時間で行うことができる。このため、有機溶剤の使用量も低減させることができる。
【0156】
図10の例では、期間Ti1における第1溶剤流量Fi1は第2溶剤流量Fi2よりも大きい。このため、溶剤処理期間Tiのうちの初期において大量に残留している基板Wの主面上の液体をより速やかに有機溶剤で押し流すことができる。また、図10の例では、期間Ti3における第2溶剤流量Fi2は第1溶剤流量Fi1よりも大きい。このため、溶剤処理期間Tiのうちの末期において、より大量の有機溶剤で基板Wの主面の周縁部の液体を押し流すことができる。
【0157】
また、図10の例では、第1溶剤流量Fi1は時間の経過に応じて低減し、第2溶剤流量Fi2は時間の経過に応じて増加する。このため、第1溶剤流量Fi1と第2溶剤流量Fi2との和の時間変動を抑制することができる。第1溶剤流量Fi1と第2溶剤流量Fi2との和が時間の経過に依らず一定であれば、当該和の時間変動を理想的には解消することができる。第1溶剤流量Fi1と第2溶剤流量Fi2の和の時間変動が小さければ、プレ溶剤処理もしくはポスト溶剤処理に用いられる有機溶剤の供給量の算出および管理が容易である。
【0158】
第2の実施の形態では、乾燥処理(ステップS8)において、中央ノズル3gおよび周縁ノズル4gが不活性ガスを供給してもよい。つまり、制御部9は乾燥処理において第1ガス開閉弁33gおよび第2ガス開閉弁43gを開いてもよい。以下では、基板Wに不活性ガスを供給する期間をガス処理期間とも呼ぶ。制御部9は、乾燥処理において、中央ノズル3gおよび周縁ノズル4gからの不活性ガスの流量(の目標値)を時間の経過に依らず、一定に制御してもよい。例えば制御部9は、第1ガス調整弁32gおよび第2ガス調整弁42gの開度をガス処理期間において一定に制御してもよい。
【0159】
乾燥処理において、基板Wの中央部および周縁部の両方に不活性ガスが衝突するので、基板Wの主面上の有機溶剤の気化あるいは吹き飛ばしを促進することができる。したがって、処理ユニット1Aはより短時間で乾燥処理を完了することができる。
【0160】
また、第1ガス調整弁32gおよび第2ガス調整弁42gの開度をガス処理期間において一定に制御すれば、制御部9の処理負荷を軽減することができる。
【0161】
あるいは、制御部9はガス処理期間において、第2ガス流量Fg2に対する第1ガス流量Fg1のガス流量比(=Fg1/Fg2)を時間の経過に応じて低減させてもよい。ガス流量比の時間変化の一例は疎水流量比と同様であり、第1ガス流量Fg1の時間変化の一例は第1疎水流量Fh1と同様であり、第2ガス流量Fg2の時間変化の一例は第2疎水流量Fh2と同様である。また、第1ガス流量Fg1と第2ガス流量Fg2の大小関係の時間変化の一例は第1疎水流量Fh1と第2疎水流量Fh2の大小関係と同様である。
【0162】
これによれば、乾燥処理の初期において、より大量の不活性ガスが基板Wの中央部に供給される。このため、基板Wの中央部における有機溶剤の気化もしくは径方向外側への押し出しを促進することができる。一方、乾燥処理の末期において、より大量の不活性ガスが基板Wの周縁部に供給される。このため、基板Wの周縁部における有機溶剤の気化もしくは径方向外側への押し出しを促進することができる。つまり、基板W上の有機溶剤の径方向外側への流れに応じた順序(中央部から周縁部)で基板Wの主面を乾燥させることができる。このため、処理ユニット1Aはより短時間で乾燥処理を完了することができる。また、不活性ガスの使用量も低減させることができる。
【0163】
<周縁ノズルの吐出方向>
図11は、第2の実施の形態にかかる処理ユニット1Aの構成の一例を概略的に示す平面図である。図11の例では、基板Wは反時計回りに回転している。図11に示されるように、周縁ノズル4iは、平面視において、基板Wの回転方向に沿って有機溶剤を吐出してもよい。つまり、周縁ノズル4iの平面視における有機溶剤の吐出方向は、周縁ノズル4iから吐出された有機溶剤の基板Wの主面上の着液位置における回転方向に沿っていてもよい。より具体的には、該吐出方向と該着液位置における回転方向とがなす第1溶剤角度は、該吐出方向と該着液位置における径方向とがなす第2溶剤角度よりも小さい。第1溶剤角度は例えば数度以下であってもよい。
【0164】
このような構造によれば、周縁ノズル4hにおける疎水化液の液はねと同様に、有機溶剤の液はねを抑制することができる。
【0165】
また、図11に示されるように、周縁ノズル4gは、平面視において、基板Wの回転方向に沿って不活性ガスを吐出してもよい。つまり、周縁ノズル4gの平面視における不活性ガスの吐出方向は、周縁ノズル4gから吐出された不活性ガスの基板Wの主面上の衝突位置における回転方向に沿っていてもよい。より具体的には、該吐出方向と該衝突位置における回転方向とがなす第1ガス角度は、該吐出方向と該衝突位置における径方向とがなす第2ガス角度よりも小さい。第1ガス角度は例えば数度以下であってもよい。
【0166】
さて、中央ノズル3gから吐出された不活性ガスは、基板Wの回転に伴って、径方向外側および回転方向に湾曲した円弧状に流れる。つまり、不活性ガスも図7における疎水化液と同様の方向で流れる。このため、周縁ノズル4gから吐出された不活性ガスは、衝突位置において、円弧状に流れる不活性ガスに対して、互いに近い気流方向で衝突する。したがって、衝突位置における不活性ガスの気流の乱れを抑制することができる。
【0167】
もしも大きな乱流が生じると、基板W上の有機溶剤を必要以上に巻き上げたり、あるいは、チャンバ10内の浮遊物を基板Wの主面に導いたりし得る。このような事態は好ましくない。これに対して、図11の構造によれば、乱流の発生を抑制することができるので、上記事態の発生を抑制することができる。
【0168】
<第3の実施の形態>
図12は、第3の実施の形態にかかる処理ユニット1の構成の一例を概略的に示す平面図である。以下では、第3の実施の形態にかかる処理ユニット1を処理ユニット1Bと呼ぶ。
【0169】
処理ユニット1Bは、周縁ノズル4を移動させるノズル移動機構45の有無を除いて、処理ユニット1Aと同様の構成を有している。ノズル移動機構45は周縁ノズル4を次に説明する周縁処理位置と周縁待機位置との間で移動させる。周縁処理位置は、周縁ノズル4が、基板保持部2によって保持された基板Wの主面の周縁部に向かって流体を吐出する位置であり、例えば、基板Wの周縁部と鉛直方向において対向する位置である。周縁待機位置は、周縁ノズル4が基板Wに向かって流体を吐出しない位置であり、例えば、基板Wよりも径方向外側の位置である。図12の例では、周縁待機位置で停止する周縁ノズル4が実線で示され、周縁処理位置で停止する周縁ノズル4が二点鎖線で示されている。
【0170】
図12の例では、ノズル移動機構45は、アーム451と、支持柱452と、駆動源453とを含んでいる。支持柱452は、ガード部7よりも径方向外側に設けられており、鉛直方向に沿って延びる。アーム451は水平方向に沿って延びており、その先端が周縁ノズル4に接続され、その基端が支持柱452に接続されている。駆動源453は、支持柱452をその中心軸Q3のまわりで回動させる。駆動源453は例えばモータを含む。支持柱452が中心軸Q3のまわりで回動すると、周縁ノズル4は、中心軸Q3についての周方向に沿って移動する。支持柱452は、周縁ノズル4の移動軌跡上に周縁処理位置および周縁待機位置が位置するように、設置される。なお、ノズル移動機構45は必ずしも図12の態様に限らず、例えばリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。
【0171】
図12に示されるように、ノズル移動機構45は周縁ノズル4h、周縁ノズル4iおよび周縁ノズル4gを一体に移動させてもよい。図12の例では、アーム451の先端に周縁ノズル4h、周縁ノズル4iおよび周縁ノズル4gが接続されている。周縁ノズル4h、周縁ノズル4iおよび周縁ノズル4gは水平方向において隣り合っており、具体的な一例として、アーム451の長手方向に沿って並んでいる。
【0172】
<基板処理装置の動作の一例>
第3の実施の形態にかかる処理ユニット1Bの動作の一例は、第2の実施の形態と同様である。ただし、プレ溶剤処理(ステップS5)、疎水化処理(ステップS6)、ポスト溶剤処理(ステップS7)および乾燥処理(ステップS8)において、ノズル移動機構45は周縁ノズル4を周縁処理位置に位置させている。
【0173】
図13は、疎水化処理中の処理ユニット1Bの様子の一例を概略的に示す図である。図13に示されるように、疎水化処理において、周縁ノズル4hは、基板Wの主面の周縁部と鉛直方向において対向する周縁処理位置に位置している。このとき、周縁ノズル4は中央ノズル3と水平方向において並んでいる。周縁ノズル4hが周縁処理位置に位置しているので、疎水化処理において、周縁ノズル4hは基板Wの主面により近い位置から基板Wの主面の周縁部に向かって疎水化液を吐出することができる。したがって、基板Wの主面上での疎水化液の液はねを抑制することができる。
【0174】
同様に、プレ溶剤処理およびポスト溶剤処理の各々において、周縁ノズル4iは基板Wの主面により近い位置から基板Wの主面の周縁部に向かって有機溶剤を吐出することができる。このため、基板Wの主面上での有機溶剤の液はねを抑制することができる。
【0175】
また、乾燥処理において、周縁ノズル4gは基板Wの主面により近い位置から基板Wの主面の周縁部に向かって不活性ガスを吐出することができる。このため、周縁ノズル4gからの不活性ガスはより高い流速で基板Wの主面に衝突できる。したがって、パターン間の有機溶剤をパターンの外側に吹き飛ばすことができる。
【0176】
なお、各周縁ノズル4は流体を鉛直方向に沿って下方に吐出させてもよく、あるいは、流体を鉛直下方に向かうにつれて径方向外側に向かう斜め方向に吐出してもよい。例えば周縁ノズル4hは疎水化液を当該斜め方向に沿って吐出してもよい。図13の例では、当該斜め方向を二点鎖線の矢印で模式的に示している。これによれば、周縁ノズル4からの疎水化液が、基板Wの中央部から径方向外側に流れる疎水化液と、互いに近い液流方向で衝突する。このため、疎水化液の液はねをさらに抑制することができる。周縁ノズル4iから吐出される有機溶剤の液はねもさらに抑制することができる。また、周縁ノズル4gからの不活性ガスは中央ノズル3gからの不活性ガスと、互いに近い気流で衝突するので、乱流の発生を抑制することができる。
【0177】
また、上述の例では、周縁ノズル4として周縁ノズル4h、周縁ノズル4iおよび周縁ノズル4gが設けられているものの、第1の実施の形態と同様に、周縁ノズル4hのみが設けられてもよい。
【0178】
以上のように、基板処理装置100および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0179】
上述の例では、各流体に専用のノズルが設けられているものの、一つのノズルが、互いに異なる種類の流体で共用されてもよい。
【0180】
また、上述の例では、中央ノズル3gは基板Wの上面に向かって不活性ガスを吐出しているのの、さらに、径方向外側に向かって不活性ガスを吐出してもよい。例えば、中央ノズル3gの内部には、第1内部流路および第2内部流路が形成される。第1内部流路は鉛直方向に延び、中央ノズル3gの下面において開口する。第2内部流路は、第1内部流路の周りに形成されており、中央ノズル3gの外周面において開口する。第2内部流路は中央ノズル3gの外周面の全周に開口していてもよい。中央ノズル3gの第1内部流路および第2内部流路は第1ガス管31gに接続される。第1内部流路に流入した不活性ガスは中央ノズル3gの下面の開口から基板Wの上面に向かって流出する。第2内部流路に流入した不活性ガスは中央ノズル3gの外周面の開口から径方向外側に向かって流出する。これにより、中央ノズル3gの外周面から流出した不活性ガスは基板Wよりも上方において基板Wを覆うことができる。これにより、乾燥処理において、基板Wの上面をより確実に保護しつつ、基板Wを乾燥させることができる。
【0181】
また、上述の例では、中央ノズル3gおよび周縁ノズル4gは乾燥処理(ステップS8)において不活性ガスを吐出しているものの、ほかの処理(例えば、疎水化処理)においても不活性ガスを吐出してもよい。
【符号の説明】
【0182】
2 基板保持部
3,3i,3g,3h 中央ノズル
31i 第1溶剤管
31g 第1ガス管
31h 第1疎水管
32i 第1溶剤調整弁
32g 第1ガス調整弁
32h 第1疎水調整弁
4,4i,4g,4h 周縁ノズル
41i 第2溶剤管
41g 第2ガス管
41h 第2疎水管
42i 第2溶剤調整弁
42g 第2ガス調整弁
42h 第2疎水調整弁
9 制御部
Fi1 第1溶剤流量
Fi2 第2溶剤流量
Fh1 第1疎水流量
Fh2 第2疎水流量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13