IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-測定装置、及び測定方法 図1
  • 特開-測定装置、及び測定方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007885
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】測定装置、及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/22 20180101AFI20240112BHJP
【FI】
G01N23/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109265
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】飯原 順次
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA05
2G001CA01
2G001GA01
2G001SA02
(57)【要約】
【課題】試料の分析対象を高精度に特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことができる測定装置を提供する。
【解決手段】試料を支持するステージと、光学顕微鏡と、X線顕微鏡と、調整機構と、を備え、前記光学顕微鏡は、前記試料に第一の光を照射する光源と、前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、前記X線顕微鏡は、前記試料に一次X線を照射するX線源と、前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、前記調整機構は、前記試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させる、測定装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を支持するステージと、光学顕微鏡と、X線顕微鏡と、調整機構と、を備え、
前記光学顕微鏡は、
前記試料に第一の光を照射する光源と、
前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、
前記X線顕微鏡は、
前記試料に一次X線を照射するX線源と、
前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、
前記調整機構は、前記試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させる、
測定装置。
【請求項2】
前記調整機構は、
前記第一の焦点を変位させる第一機構と、
前記第二の焦点を変位させる第二機構と、
前記第三の焦点を変位させる第三機構と、を備え、
前記第一機構と前記第二機構と前記第三機構とは、互いに独立して動作される、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記X線顕微鏡は、
前記一次X線を前記X線源から前記第一の焦点に導く第一集光素子と、
前記二次X線を前記第二の焦点から前記検出器に導く第二集光素子と、を備え、
前記光学顕微鏡は、前記第二の光を前記第三の焦点に集光させる第三集光素子を備え、
前記第一機構は、前記第一集光素子を三次元直交座標系における各座標軸方向及び第一旋回方向に変位させ、
前記第二機構は、前記第二集光素子を三次元直交座標系における各座標軸方向及び第二旋回方向に変位させ、
前記第一旋回方向は、前記第一集光素子における前記第一の焦点の近くに位置する端部を中心に前記第一集光素子における前記X線源の近くに位置する端部が旋回する方向のうち、互いに交差する少なくとも二方向を含み、
前記第二旋回方向は、前記第二集光素子における前記第二の焦点の近くに位置する端部を中心に前記第二集光素子における前記検出器の近くに位置する端部が旋回する方向のうち、互いに交差する少なくとも二方向を含む、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第一集光素子及び前記第二集光素子の各々は、ポリキャピラリレンズであり、
前記第三集光素子は、対物レンズである、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記光源は、前記第一の光が前記試料に垂直に照射される位置に配置されており、
前記X線源及び前記検出器は、前記一次X線及び前記二次X線が前記第一の光の光軸に対して0°超の角度を有する位置に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の測定装置。
【請求項6】
前記光学顕微鏡の焦点深度が10μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の測定装置。
【請求項7】
光学顕微鏡及びX線顕微鏡を用いて試料の分析を行う測定方法であって、
プレ工程と、
前記プレ工程の後に行うメイン工程と、を備え、
前記試料は、ダミー試料とターゲット試料とを含み、
前記光学顕微鏡は、
前記試料に第一の光を照射する光源と、
前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、
前記X線顕微鏡は、
前記試料に一次X線を照射するX線源と、
前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、
前記プレ工程では、前記ダミー試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記ダミー試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させ、前記第一の焦点と前記第二の焦点と前記第三の焦点とを固定し、
前記メイン工程では、前記ターゲット試料が支持されたステージを三次元直交座標系における各座標軸方向に変位させながら前記ターゲット試料の分析を行う、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光学顕微鏡装置とX線分析装置とレボルバとを備える複合装置を開示する。レボルバは、光学顕微鏡装置の対物レンズとX線分析装置のX線発生器とを備える。レボルバの回転によって、対物レンズとX線発生器とが同一位置に切り換えられて配置される。上記複合装置では、レボルバの回転によって、試料ステージ上に載置された試料の同じ位置に、光学顕微鏡装置のレーザ光とX線分析装置の一次X線とが切り換えられて照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-292476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料の分析対象を高精度に特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことが望まれている。例えば、試料に複数の分析対象がある場合、複数の分析対象を順にX線分析することがある。この場合、特許文献1の技術では、分析対象ごとにレボルバを回転させて、対物レンズとX線発生器とを切り換えるのに時間がかかる。
【0005】
本開示は、試料の分析対象を高精度に特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことができる測定装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の測定装置は、
試料を支持するステージと、光学顕微鏡と、X線顕微鏡と、調整機構と、を備え、
前記光学顕微鏡は、
前記試料に第一の光を照射する光源と、
前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、
前記X線顕微鏡は、
前記試料に一次X線を照射するX線源と、
前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、
前記調整機構は、前記試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の測定装置は、試料の分析対象を高精度に特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の測定装置の概略構成図である。
図2図2は、実施形態の測定装置に備わる第一集光素子の変位方向を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係る測定装置は、試料を支持するステージと、光学顕微鏡と、X線顕微鏡と、調整機構と、を備え、前記光学顕微鏡は、前記試料に第一の光を照射する光源と、前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、前記X線顕微鏡は、前記試料に一次X線を照射するX線源と、前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、前記調整機構は、前記試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させる。
【0011】
本開示の測定装置は、第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを合致させることができ、試料の分析対象を特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことができる。第三の焦点は、光学顕微鏡によるものであり焦点深度が浅く、分析対象を高精度に特定できる。第一の焦点と第二の焦点とが合致していることで、合致した位置の微小空間内でのみ発生した二次X線を検出でき、試料の深さ方向の元素分析及び試料内部の三次元元素分析が可能である。本開示の測定装置は、第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを合致させることで、試料の面方向及び厚さ方向の双方について分析範囲を狭められ、試料の分析対象のX線分析を高精度に行うことができる。
【0012】
(2)上記(1)の測定装置において、前記調整機構は、前記第一の焦点を変位させる第一機構と、前記第二の焦点を変位させる第二機構と、前記第三の焦点を変位させる第三機構と、を備え、前記第一機構と前記第二機構と前記第三機構とは、互いに独立して動作されてもよい。
【0013】
第一機構と第二機構と第三機構とが互いに独立して動作されることで、第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを容易かつ高精度に合致させることができる。
【0014】
(3)上記(2)の測定装置において、前記X線顕微鏡は、前記一次X線を前記X線源から前記第一の焦点に導く第一集光素子と、前記二次X線を前記第二の焦点から前記検出器に導く第二集光素子と、を備え、前記光学顕微鏡は、前記第二の光を前記第三の焦点に集光させる第三集光素子を備え、前記第一機構は、前記第一集光素子を三次元直交座標系における各座標軸方向及び第一旋回方向に変位させ、前記第二機構は、前記第二集光素子を三次元直交座標系における各座標軸方向及び第二旋回方向に変位させてもよい。前記第一旋回方向は、前記第一集光素子における前記第一の焦点の近くに位置する端部を中心に前記第一集光素子における前記X線源の近くに位置する端部が旋回する方向のうち、互いに交差する少なくとも二方向を含む。前記第二旋回方向は、前記第二集光素子における前記第二の焦点の近くに位置する端部を中心に前記第二集光素子における前記検出器の近くに位置する端部が旋回する方向のうち、互いに交差する少なくとも二方向を含む。
てもよい。
【0015】
第一集光素子及び第二集光素子によって、第一の焦点と第二の焦点とを容易かつ高精度に合致させることができる。
【0016】
(4)上記(3)の測定装置において、前記第一集光素子及び前記第二集光素子の各々は、ポリキャピラリレンズであり、前記第三集光素子は、対物レンズであってもよい。
【0017】
ポリキャピラリレンズ及び対物レンズによって、第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを容易かつ高精度に合致させることができる。
【0018】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかの測定装置において、前記光源は、前記第一の光が前記試料に垂直に照射される位置に配置されており、前記X線源及び前記検出器は、前記一次X線及び前記二次X線が前記第一の光の光軸に対して0°超の角度を有する位置に配置されていてもよい。
【0019】
上記(5)の構成によれば、第一の光、一次X線、及び二次X線は互いに干渉しない。
【0020】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかの測定装置において、前記光学顕微鏡の焦点深度が10μm以下であってもよい。
【0021】
光学顕微鏡の焦点深度が10μm以下であると、分析対象を高精度に特定し易い。
【0022】
(7)本開示の実施形態に係る測定方法は、光学顕微鏡及びX線顕微鏡を用いて試料の分析を行う測定方法であって、プレ工程と、前記プレ工程の後に行うメイン工程と、を備え、前記試料は、ダミー試料とターゲット試料とを含み、前記光学顕微鏡は、前記試料に第一の光を照射する光源と、前記試料から反射された第二の光で結像された前記試料の像を受光する観察部と、を備え、前記X線顕微鏡は、前記試料に一次X線を照射するX線源と、前記試料から放射された二次X線を受ける検出器と、を備え、前記プレ工程では、前記ダミー試料に集光された前記一次X線の第一の焦点、前記ダミー試料から放射された前記二次X線の第二の焦点、及び前記光学顕微鏡の第三の焦点を合致させ、前記第一の焦点と前記第二の焦点と前記第三の焦点とを固定し、前記メイン工程では、前記ターゲット試料が支持されたステージを三次元直交座標系における各座標軸方向に変位させながら前記ターゲット試料の分析を行う。
【0023】
本開示の測定方法では、実際に分析したいターゲット試料をX線分析する際は、ターゲット試料が支持されたステージを変位させるだけで、ターゲット試料の分析対象を特定し、即座にその分析対象のX線分析を行うことができる。ステージを変位させるだけでよいのは、実際に分析したいターゲット試料をX線分析するメイン工程の前に、ダミー試料を用いて第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを合致させた状態で各焦点を固定するプレ工程を行っているからである。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の測定装置及び測定方法の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<測定装置>
図1及び図2を参照して、実施形態の測定装置1の構成を説明する。測定装置1は、試料8を支持するステージ2、光学顕微鏡3、及びX線顕微鏡4を備える。測定装置1の特徴の一つは、X線顕微鏡4による一次X線41及び二次X線42の各焦点と光学顕微鏡3の焦点とを合致させる調整機構6を備える点にある。図1は、各焦点が合致した状態を示している。以下の説明では、各焦点が合致する点を共焦点9と呼ぶ。
【0026】
≪ステージ≫
ステージ2は、試料8を載置する台である。ステージ2における試料8の載置面は平面である。ステージ2は、三次元直交座標系で表されるX軸方向X1、Y軸方向Y1、及びZ軸方向Z1の各々に変位可能に構成されている。X軸方向X1及びY軸方向Y1は水平方向である。Z軸方向Z1は水平方向に垂直な方向である。図1の左下に矢印で示される方向は、ステージ2が変位可能な方向である。X軸方向X1、Y軸方向Y1、及びZ軸方向Z1の各々は、プラス方向とマイナス方向の双方向に変位可能である。ステージ2は、X軸方向X1又はY軸方向Y1を軸に回転可能であってもよい。
【0027】
試料8は、例えば、透明な材料で構成されている。透明な材料は、例えば樹脂である。透明な材料中には、異物が含まれることがある。測定装置1は、透明な樹脂中に含まれ得る異物の位置を特定し、即座にその異物の元素分析を行える。
【0028】
≪光学顕微鏡≫
光学顕微鏡3は、光源33と観察部34とを備える。光源33は、試料8に第一の光31を照射する。光源33は、例えば、第一の光31が試料8に垂直に照射される位置に配置されている。試料8から反射された第二の光32は、第一の光31と同じ光路をたどり、ビームスプリッタ38により分離されて観察部34に集光される。観察部34は、試料8から反射された第二の光32で結像された試料8の像を受光する。観察部34は、例えばCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサである。受光した像は、例えばモニタ35に表示される。光学顕微鏡3の焦点は、特許請求の範囲における「第三の焦点」である。
【0029】
光学顕微鏡3は、第三集光素子37をさらに備える。第三集光素子37は、第一の光31の光路上に配置され、第二の光32を結像させている。光学顕微鏡3の焦点は、光源33から第三集光素子37に入射した平行光が第三集光素子37を透過した後に一点に集光する点である。第三集光素子37は、例えば対物レンズである。
【0030】
光学顕微鏡3の焦点深度は、例えば10μm以下である。焦点深度とは、焦点をある一点に合わせたときに鮮明な像が得られる範囲のことである。光学顕微鏡3の焦点深度が10μm以下であると、試料8における分析対象が非常に小さくても、その分析対象を高精度に特定し易い。
【0031】
光学顕微鏡3において、光源33、観察部34、及びビームスプリッタ38は不動であり、第三集光素子37が変位可能である。
【0032】
≪X線顕微鏡≫
X線顕微鏡4は、X線源43と検出器44とを備える。X線源43は、試料8に一次X線41を照射する。検出器44は、試料8から放射された二次X線42を受ける。X線源43及び検出器44は、一次X線41及び二次X線42が第一の光31の光軸に対して0°超の角度を有する位置に配置されている。一次X線41と第一の光31とがなす角度θ、及び二次X線42と第一の光31とがなす角度θが、0°超である。上記角度θは、40°以上、45°以上であってもよい。角度θが40°以上50°以下であると、一次X線41、二次X線42、及び第一の光31が互いに干渉しない。一次X線41と二次X線42とがなす角度は、例えば90°である。試料8に集光された一次X線41の焦点が、特許請求の範囲における「第一の焦点」である。試料8から放射された二次X線の焦点が、特許請求の範囲における「第二の焦点」である。第一の焦点及び第二の焦点は、試料8における集光スポットである。
【0033】
X線顕微鏡4は、分析器45をさらに備える。分析器45では、検出器44で検出された二次X線42に基づいて、例えば一定のエネルギー間隔毎にエネルギーを積算して、所定のエネルギー範囲のX線強度がX線強度分布として求められる。分析結果は、図示しない表示装置又は印刷装置から出力される。分析器45は、例えば汎用のコンピュータ及び既知のソフトウエアにより構成される。本例では、分析結果から分析対象の元素分析ができる。
【0034】
X線顕微鏡4は、第一集光素子51及び第二集光素子52をさらに備える。第一集光素子51は、一次X線41の光路上に配置され、一次X線41をX線源43から第一の焦点に導く。第二集光素子52は、二次X線42の光路上に配置され、二次X線42を第二の焦点から検出器44に導く。第一集光素子51及び第二集光素子52の各々は、例えばポリキャピラリレンズである。ポリキャピラリレンズは、中空のキャピラリを複数束ねて、第一端部をゆるやかなテーパ状に加工したX線用の光学素子である。ポリキャピラリレンズでは、第一端部の外径が第二端部よりも小さい。
【0035】
第一集光素子51は、ポリキャピラリレンズの第一端部が試料8の近くに位置し、ポリキャピラリレンズの第二端部がX線源43の近くに位置する。X線源43から照射された一次X線41は、各キャピラリ内に入射され、各キャピラリ内の壁面で全反射しながら試料8に向かって出射される。各キャピラリから出射された一次X線41は、試料8における微小な空間内に集光される。X線源43から出射された一次X線41は、各キャピラリ内で全反射されているため強度が落ちない。そのため、高強度の一次X線41が試料8における微小な空間内に照射される。
【0036】
第二集光素子52は、ポリキャピラリレンズの第一端部が試料8の近くに位置し、ポリキャピラリレンズの第二端部が検出器44の近くに位置する。試料8から放射された二次X線42は、各キャピラリ内に入射され、各キャピラリ内の壁面で全反射しながら検出器44に向かって出射される。試料8における微小な空間内で放射された二次X線42のみが各キャピラリに入射される。試料8から放射された二次X線42は、各キャピラリ内で全反射されているため強度が落ちない。そのため、高強度の二次X線42が検出器44で検出される。
【0037】
ポリキャピラリレンズからなる第一集光素子51及び第二集光素子52が後述する調整機構で調整されると、試料8における微小な空間内に第一の焦点と第二の焦点とが高精度に合致され易い。
【0038】
X線顕微鏡4において、X線源43及び検出器44は不動であり、第一集光素子51及び第二集光素子52が変位可能である。
【0039】
≪調整機構≫
調整機構6は、第一の焦点を変位させる第一機構61、第二の焦点を変位させる第二機構62、及び第三の焦点を変位させる第三機構63を備える。第一機構61と第二機構62と第三機構63とは、互いに独立して動作される。第一機構61、第二機構62、及び第三機構63によって、第一焦点、第二焦点、及び第三焦点が合致した共焦点9が構成される。
【0040】
第一機構61は、例えば第一集光素子51を支持する第一ホルダ、及び第一ホルダを駆動する第一モータを備える。第二機構62は、例えば第二集光素子52を支持する第二ホルダ、及び第二ホルダを駆動する第二モータを備える。第三機構63は、例えば第三集光素子37を支持する第三ホルダ、及び第三ホルダを駆動する第三モータを備える。第一モータと第二モータと第三モータとが、互いに独立して動作される。
【0041】
第一機構61は、第一集光素子51を三次元直交座標系で表されるX軸方向X2、Y軸方向Y2、及びZ軸方向Z2の各々に変位可能に構成されている。図2の上に直線の矢印で示される方向は、第一集光素子51が変位可能な三次元直交座標系の方向である。第一集光素子51が変位可能な三次元直交座標系の方向は、ステージ2が変位可能な三次元直交座標系の方向(図1)とは異なる。第一集光素子51が変位可能な三次元直交座標系は、X線源43から照射される一次X線41の軸線を基準とする。この一次X線41の軸線がZ軸方向Z2である。X軸方向X2及びY軸方向Y2は、Z軸方向と直交する平面に沿った方向である。X軸方向X2、Y軸方向Y2、及びZ軸方向Z2の各々は、プラス方向とマイナス方向の双方向に変位可能である。
【0042】
第一機構61は、さらに第一旋回方向に変位可能に構成されている。図2の上に曲線の矢印で示される方向は、第一集光素子51が変位可能な旋回方向である。第一旋回方向は、第一集光素子51における第一の焦点の近くに位置する第一端部53を中心に第一集光素子51におけるX線源43の近くに位置する第二端部54が旋回する方向である。第一旋回方向は、互いに交差する少なくとも二方向を含む。第一端部53は、ポリキャピラリレンズにおけるテーパ状に加工された端部である。本例の第一旋回方向は、Z軸方向Z2から見て互いに直交する第一方向T1と第二方向T2を含む。本例の第一機構61は、三次元直交座標系で表される三軸方向及び第一旋回方向のうち互いに直交する二方向の合計五つの方向に第一集光素子51を変位可能に構成されている。第一機構61によって、一次X線41は試料8における微小な空間内に集光される。微小な空間とは、例えば一次X線41に直交する方向の長さが10μm以上50μm以下の空間である。一次X線41に直交する方向は、試料8における図1に示すY軸方向Y1である。第一機構61は、上記長さが0.1μm以上10μm未満の範囲に一次X線41を集光することもできる。ただし、上記長さが0.1μm以上10μm未満の範囲に集光された一次X線41では、検出器44で検出される二次X線42の強度が小さくなり易い。第一機構61は、上記長さが50μm超100μm以下の範囲に一次X線41を集光してもよい。ただし、上記長さが50μm超100μm以下の範囲に集光された一次X線41では、試料8の分析範囲が広くなり過ぎる。
【0043】
第二機構62も、第一機構61と同様に、第二集光素子52を三次元直交座標系における各座標軸方向及び第二旋回方向に変位可能に構成されている。第二集光素子52が変位可能な三次元直交座標系は、試料8から放射される二次X線42の軸線を基準とする。この二次X線42の軸線がZ軸方向である。X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向と直交する平面に沿った方向である。第二旋回方向は、第二集光素子52における第二の焦点の近くに位置する第一端部53を中心に第二集光素子52における検出器44の近くに位置する第二端部54が旋回する方向である。第二旋回方向は、互いに交差する少なくとも二方向を含む。本例の第二旋回方向は、Z軸方向Z2から見て互いに直交する第一方向と第二方向を含む。本例の第二機構62は、三次元直交座標系で表される三軸方向及び第二旋回方向のうち互いに直交する二方向の合計五つの方向に第二集光素子52を変位可能に構成されている。第二機構62によって、二次X線42は試料8における微小な空間内に集光される。微小な空間とは、例えば二次X線42に直交する方向の長さが10μm以上50μm以下の空間である。二次X線42に直交する方向は、試料8における図1に示すY軸方向Y1である。第二機構62は、上記長さが0.1μm以上10μm未満の範囲に二次X線42を集光することもできる。ただし、上記長さが0.1μm以上10μm未満の範囲に集光された二次X線42では、検出器44で検出される二次X線42の強度が小さくなり易い。第二機構62は、上記長さが50μm超100μm以下の範囲に二次X線42を集光してもよい。ただし、上記長さが50μm超100μm以下の範囲に集光された二次X線42では、試料8の分析範囲が広くなり過ぎる。
【0044】
試料8において一次X線41と二次X線42とがオーバーラップした領域が分析領域である。この試料8における分析領域は三次元空間内の範囲である。上記分析領域における第一の光31に直交する方向の長さが10μm以上50μm以下であってもよい。分析領域における第一の光31に直交する方向の長さは、分析領域における図1に示すY軸方向Y1の長さである。一次X線41及び二次X線42が円形状に集光される場合、一次X線、二次X線42、及び分析領域の各々におけるY軸方向Y1の長さは同じである。分析領域における図1に示すX軸方向X1及びZ軸方向Z1の各長さは、角度θに依存する。分析領域におけるY軸方向Y1の長さが小さいほど、小さな領域を狙ってX線分析を行うことができる。分析領域におけるY軸方向Y1の長さは0.1μm以上10μm未満であってもよい。しかし、分析領域におけるY軸方向Y1の長さが小さ過ぎると、検出器44で検出される二次X線42の強度が小さくなり易い。分析領域におけるY軸方向Y1の長さは50μm超100μm以下であってもよい。しかし、分析領域におけるY軸方向Y1の長さが大き過ぎると、試料8の分析範囲が広くなり過ぎる。
【0045】
第三機構63は、第三集光素子37を第一の光31の光路に沿って試料8に近づく方向又は試料8から遠ざかる方向に変位可能に構成されている。
【0046】
<測定方法>
実施形態の測定方法は、上述した測定装置1を用いて試料8の分析を行う方法である。この測定方法は、プレ工程とメイン工程とを備える。試料8は、ダミー試料とターゲット試料とを含む。
【0047】
≪プレ工程≫
プレ工程は、X線顕微鏡4による一次X線41及び二次X線42の各焦点と光学顕微鏡3の焦点とを合致させる工程である。プレ工程では、各焦点が合致した共焦点9の条件がわかる。プレ工程で共焦点9が構成されたら、その共焦点9を固定する。共焦点9の条件は、例えば、第一集光素子51、第二集光素子52、及び第三集光素子37の各位置である。プレ工程で共焦点9が構成されたら、その共焦点9が固定されるように、例えば第一集光素子51、第二集光素子52、及び第三集光素子37の各位置を固定する。
【0048】
プレ工程は、順に行われる第一工程、第二工程、及び第三工程を備える。プレ工程は、実際に分析したいターゲット試料ではないダミー試料を用いて行われる。ダミー試料は、例えば微小な大きさを有する。微小な大きさは、例えば最大長さが50μm以下である。微小なダミー試料であれば、その微小なダミー試料を分析可能な共焦点9が得られ、実際に分析したいターゲット試料の分析を高精度に行える。ダミー試料の大きさは、実用上、最小長さが10μm以上である。ダミー試料の大きさは、最大長さが20μm以下であってもよい。ダミー試料の大きさは、最大長さが50μm超100μm以下であってもよい。ダミー試料は、例えばX線に反応し易い材料で構成される。X線に反応し易いダミー試料であれば、微小なダミー試料であっても、二次X線42を検出し易く、共焦点9が見つかり易い。ダミー試料は、例えば上記微小な大きさを有する鉄粒子である。ダミー試料は、複数の上記鉄粒子で構成されていてもよい。
【0049】
第一工程は、一次X線41の第一焦点を固定する工程である。第一工程では、ダミー試料に一次X線41を照射しながら、第一機構61によって第一集光素子51を三次元直交座標系で表される三軸方向及び第一旋回方向のうち互いに直交する二方向の合計五つの方向に変位させる。検出器44で検出される二次X線42の強度が最も大きくなったときの位置で第一集光素子51を固定する。第一集光素子51が固定されると、第一の焦点も固定される。第一工程では、第二集光素子52は、検出器44で二次X線42を広く検出できるように設定されている。
【0050】
第二工程は、第一工程の後で、二次X線42の第二焦点を固定する工程である。第二工程では、ダミー試料に一次X線41を照射しながら、第二機構62によって第二集光素子52を三次元直交座標系で表される三軸方向及び第二旋回方向のうち互いに直交する二方向の合計五つの方向に変位させる。第二工程では、一次X線41は第一の焦点に集光されている。検出器44で検出される二次X線42の強度が最も大きくなったときの位置で第二集光素子52を固定する。第二集光素子52が固定されると、第二の焦点も固定される。第二工程によって、第一の焦点と第二の焦点とが合致した状態になる。
【0051】
第三工程は、第二工程の後で、光学顕微鏡3の第三の焦点を固定する工程である。第三工程では、ダミー試料に第一の光31を照射しながら、第三機構63によって第三集光素子37を第一の光31の光路に沿って試料8に近づく方向又は試料8から遠ざかる方向に変位させる。観察部34で受光した試料8の像を例えばモニタ35で見ながら、像の焦点が合ったときの位置で第三集光素子37を固定する。第三工程によって、第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とが合致した状態になる。
【0052】
≪メイン工程≫
メイン工程は、プレ工程の後に行われる。メイン工程は、実際に分析したいターゲット試料の分析を行う工程である。メイン工程では、ターゲット試料が支持されたステージ2を三次元直交座標系における各座標軸方向に変位させながらターゲット試料の分析を行う。メイン工程では、光学顕微鏡3及びX線顕微鏡4は固定されており、共焦点9は固定されている。つまり、メイン工程では、ステージ2のみが変位される。
【0053】
ターゲット試料は、例えば透明な樹脂で構成されている。メイン工程では、ターゲット試料に含まれる異物の位置を特定し、即座にその異物の元素分析を行う。メイン工程では、まずステージ2を変位させながら光学顕微鏡3で異物を探し、異物を見つけたら即座にX線顕微鏡4で異物のX線分析を行うことができる。メイン工程では、ステージ2を変位させながら一次X線41をターゲット試料に照射して二次X線42の強度を測定し、その強度から異物の有無を判定してもよい。この場合、樹脂中に異物を見つけたら即座にその異物のX線分析を行うことができる。
【0054】
メイン工程では、ターゲット試料が支持されたステージ2を変位させるだけで、ターゲット試料中の分析対象、例えば異物の位置を特定し、即座にその異物のX線分析を行うことができる。ステージ2を変位させるだけでよいのは、メイン工程の前に、ダミー試料を用いて第一の焦点と第二の焦点と第三の焦点とを合致させた共焦点9を構成し、その共焦点9を固定するプレ工程を行っているからである。プレ工程で共焦点9を固定しておけば、ターゲット試料の表面に凹凸があっても、その凹凸に応じたX線分析を容易に行える。
【0055】
プレ工程は、必要に応じて行えばよい。例えば材質又は形状が同じ複数のターゲット試料の分析を行う場合、一つ目のターゲット試料の分析を行うメイン工程の前にプレ工程を一回行えばよく、その後はプレ工程を行うことなくメイン工程を続けて行えばよい。材質又は形状が異なるターゲット試料の分析を行う場合、メイン工程の前にプレ工程を行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 測定装置
2 ステージ
3 光学顕微鏡
31 第一の光、32 第二の光
33 光源、34 観察部、35 モニタ
37 第三集光素子、38 ビームスプリッタ
4 X線顕微鏡
41 一次X線、42 二次X線
43 X線源、44 検出器、45 分析器
51 第一集光素子、52 第二集光素子
53 第一端部、54 第二端部
6 調整機構
61 第一機構、62 第二機構、63 第三機構
8 試料
9 共焦点
θ 角度
X1,X2 X軸方向、Y1,Y2 Y軸方向、Z1,Z2 Z軸方向
T1 第一方向、T2 第二方向
図1
図2