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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078856
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】入力パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
G06F3/041 660
G06F3/041 495
G06F3/041 422
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191440
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 欣一
(57)【要約】
【課題】引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすい入力パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】入力パネルの製造方法は、ガラス基板上の透明導電膜の表面に形成された周囲電極の一部をオーバーコート材で覆ってオーバーコート部を設けるステップと、前記周囲電極のうち、前記オーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材又は予備はんだ材を載せて前記フラックス材又は前記予備はんだ材の層を形成するステップと、前記オーバーコート部、及び、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を同時に加熱して硬化させる加熱ステップと、を備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上の透明導電膜の表面に形成された周囲電極の一部をオーバーコート材で覆ってオーバーコート部を設けるステップと、
前記周囲電極のうち、前記オーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材又は予備はんだ材を載せて前記フラックス材又は前記予備はんだ材の層を形成するステップと、
前記オーバーコート部、及び、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を同時に加熱して硬化させる加熱ステップと、
を備える入力パネルの製造方法。
【請求項2】
前記透明導電膜の前記表面に金属ペーストの塗膜を形成し、前記塗膜を焼成することによって前記周囲電極を形成するステップを備える
請求項1に記載の入力パネルの製造方法。
【請求項3】
前記金属ペーストは、バインダとしての樹脂を含む
請求項2に記載の入力パネルの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂は、エポキシ樹脂を含む
請求項3に記載の入力パネルの製造方法。
【請求項5】
前記金属ペーストは、銅を含む
請求項2乃至4の何れか一項に記載の入力パネルの製造方法。
【請求項6】
前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を形成するステップでは、前記層の周囲において前記オーバーコート部と前記層との間に前記周囲電極が露出した領域が存在するように、前記層を形成する
請求項1乃至4の何れか一項に記載の入力パネルの製造方法。
【請求項7】
前記加熱ステップの後、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層が設けられた部位において前記周囲電極に引き出し線をはんだ付けするステップ
を備える請求項1乃至4の何れか一項に記載の入力パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器や各種システムにおける入力装置として、入力ペン(ペン型入力装置)や指による入力を受け取るための入力パネルが用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、入力ペン等により接触された位置(指示された位置)を検出可能な座標入力パネルが記載されている。この座標入力パネルは、ガラス基板上に形成された面抵抗体(透明導電膜等)と、該面抵抗体上において平行四辺形の座標入力領域を囲むように設けられる周囲電極と、を含む。周囲電極のうち面抵抗体の平行四辺形の4つの頂点に対応する位置に駆動電極がそれぞれ設けられており、該駆動電極は周囲電極と電気的に接続されている。4つの駆動電極には引き出し線がそれぞれ接続されており、これらの駆動電極のうち、平行四辺形の対角に位置する一対の駆動電極間に引き出し線を介して外部から電圧を加えることで、面抵抗体に電位勾配が形成される。入力ペンによって面抵抗体上の点が指示されると、入力ペンと面抵抗体との間に形成される静電容量を利用して指示座標点の電位が検出される。このように検出された電位に基づいて、入力ペンによる指示座標点が算出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5768386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば特許文献1に記載されるような、ガラス基板上の透明導電膜に周囲電極が形成された入力パネルの製造方法として、従来、以下の方法が採られている。すなわち、透明導電膜上に周囲電極を印刷して焼成し、次に、周囲電極を覆うオーバーコートを印刷して加熱及び乾燥させた後、周囲電極のうちオーバーコートで覆われていない部分に予備はんだ(クリームはんだ)を印刷して加熱及び乾燥させる。その後、予備はんだを設けた位置において周囲電極に引き出し線(リード線)を本はんだ付けする。
【0006】
上述した製造方法では、周囲電極の材料によっては、周囲電極へのはんだの乗りが悪くなり、あるいははんだ領域が狭くなり、引き出し線のはんだ付けを適切に行えないことがあった。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすい入力パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る入力パネルの製造方法は、
ガラス基板上の透明導電膜の表面に形成された膜状の周囲電極の一部をオーバーコート材で覆ってオーバーコート部を設けるステップと、
前記周囲電極のうち、前記オーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材又は予備はんだ材を載せて前記フラックス材又は前記予備はんだ材の層を形成するステップと、
前記オーバーコート部、及び、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を同時に加熱して硬化させる加熱ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすい入力パネルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る入力パネルの一例の概略的な分解斜視図である。
図2】一実施形態に係る入力パネルの製造方法のフローチャートである。
図3】一実施形態に係る入力パネルの製造方法のフローチャートである。
図4】一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
図5】一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
図6】一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
図7】一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
図8】一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
(入力パネルの構成)
図1は、幾つかの実施形態に係る製造方法によって製造される入力パネルの一例の概略的な分解斜視図である。一実施形態に係る製造方法により製造される入力パネル10は、入力手段50による入力を受け取るように構成される。図1に示す入力手段50は、ペン型入力装置であるが、入力手段50は人体の一部(指等)であってもよい。
【0013】
図1に示す入力パネル10は、ガラス基板12と、ガラス基板上に設けられる透明導電膜14と、透明導電膜14の表面に形成される周囲電極16と、を備えている。
【0014】
透明導電膜14は、ガラス基板12の表面に、塗布又は蒸着等により形成される。透明導電膜14は、例えば、ガラス基板12の表面に、スパッタ法によって形成した透明なITO(インジウム錫酸化物)膜、又は、CVD法によって形成したNESA(酸化錫)膜であってもよい。
【0015】
周囲電極16は、透明導電膜14の表面の一部の領域を囲むように設けられる。該領域は、入力手段50による入力を受け取るための領域(入力領域)である。入力手段50からの入力は、該入力領域に対応するガラス基板12の表面(透明導電膜14とは反対側の表面)に入力手段が接触することで生じる。周囲電極16は、矩形又は平行四辺形の入力領域を囲むように、矩形又は平行四辺形の4つの辺に対応する形状を有していてもよい。
【0016】
周囲電極16は、透明導電膜14の表面(ガラス基板12とは反対側の表面)に設けられた膜状の電極であってもよい。
【0017】
膜状の周囲電極16は、例えば、銀又は銅等の金属から形成されていてもよい。周囲電極16は、金属粒子及びバインダを含む金属ペーストを印刷等により透明導電膜14の表面に塗布し、その後、加熱して乾燥させることで形成される。金属ペーストに含まれるバインダは、ガラス又は樹脂を含んでもよい。該バインダとしての樹脂は、エポキシ樹脂を含んでもよい。
【0018】
周囲電極16には、複数の箇所において引き出し線(リード線)20A~20Dが接続される。図1に示す例では、矩形の入力領域を囲む周囲電極16の4つの頂点に対応する位置において、周囲電極16に引き出し線20A~20Dが接続されている。引き出し線20A~20Dは、はんだ付けによって周囲電極16に接続されてもよい。引き出し線20A~20Dと周囲電極16との接続部は、透明導電膜14に電位勾配を形成するための駆動電極18A~18Dとして機能するようになっていてもよい。
【0019】
図1には示されていないが、入力パネル10は、入力パネル10の近傍に設けられる機器や部品の金属部分(例えば、入力パネル10の下に設けられる液晶部品のベゼル)と、周囲電極16との接触(及びこれによる短絡)を防止するためのオーバーコート部(図4図8参照)を備えている。上述の引き出し線20A~20Dは、周囲電極16のうち、オーバーコート部が設けられていない部分において周囲電極16に接続される。
【0020】
上述のように構成された入力パネル10は、例えば以下のように動作する。矩形の入力領域を囲む周囲電極16の4つの頂点に対応する4つの駆動電極18A~18Dのうち、矩形の対角に位置する一対の駆動電極(例えば、図1における駆動電極18Aと18C、又は、駆動電極18Bと18D)間に引き出し線20A~20Dを介して外部から電圧を加えることで、透明導電膜14に電位勾配が形成される。入力手段50(ペン型入力装置等)によって透明導電膜14上の点が指示されると、入力手段50と透明導電膜14との間に形成される静電容量を利用して指示座標点の電位を検出することができる。このように検出された電位に基づいて、入力手段による指示座標点を算出することができる。
【0021】
(入力パネルの製造方法)
次に、幾つかの実施形態に係る入力パネルの製造方法について説明する。図2及び図3は、それぞれ、一実施形態に係る入力パネルの製造方法のフローチャートである。図4図8は、それぞれ、一実施形態に係る入力パネルの製造工程を示す概略図である。
【0022】
図2及び図3に示す実施形態に係る製造方法では、まず、図4に示すように、ガラス基板12上に形成された透明導電膜14の表面に周囲電極16を形成する(図1のS102、図2のS202)。ステップS102及びS202では、透明導電膜14の表面に印刷等で金属ペーストの塗膜を形成し、形成した塗膜を加熱することによって、周囲電極16を形成してもよい。金属ペーストの塗膜の加熱温度は、金属ペーストを構成する金属又はバインダの種類によって適切に設定される。バインダがガラス(ガラスフリット等)を含む場合、加熱(焼成)温度は400℃~500℃程度であってもよい。バインダが樹脂を含む場合、加熱(乾燥)温度は120℃~200℃程度であってもよい。
【0023】
次に、図5に示すように、ステップS102又はS202で形成された周囲電極16の一部をオーバーコート材で覆ってオーバーコート部22を設ける(図2のS104、図4のS204)。ステップS104及びS204では、印刷により、オーバーコート材を周囲電極16の上に塗布することによって、オーバーコート部22を形成してもよい。
【0024】
オーバーコート材は、周囲電極16と周囲の部品との短絡防止のため、透明導電膜14よりも導電性の低い材料であってもよい。オーバーコート材は、例えば、エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
次に、周囲電極16のうち、オーバーコート材で覆われていない領域(即ち、オーバーコート部22が設けられていない部分)の表面に、フラックス材又は予備はんだ材を載せてフラックス材又は予備はんだ材の層を形成する(図2のS106、図3のS206)。
【0026】
図2に示す実施形態では、ステップS106において、図6に示すように、周囲電極16のうちオーバーコート材で覆われていない領域の表面に、予備はんだ材を載せて予備はんだ材の層24を形成する。
【0027】
ステップS106では、例えば、周囲電極16のうちオーバーコート材で覆われていない領域の表面に、予備はんだ材としてのクリームはんだを印刷等により塗布することで、予備はんだ材の層24を形成してもよい。クリームはんだとして、予備はんだ材として一般的に用いられている材料を用いることができる。
【0028】
クリームはんだは、金属粉末(はんだ粉末)及びフラックスを含むペースト状のはんだである。
【0029】
クリームはんだを構成する金属粉末は、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)又は銅(Cu)の少なくとも1つの金属粉末を含んでもよい。
【0030】
クリームはんだを構成するフラックスは、樹脂系フラックス、又は、有機又は無機の水溶性フラックスであってもよい。上述のフラックスは、水素添加酸変性ロジン、有機酸変性ロジン又は複合ロジン等の樹脂、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル又はジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル等の有機溶剤、及び、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、アジピン酸又はセバシン酸等の界面活性剤を含んでいてもよい。フラックスは、その他の添加剤(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル又はハイドロキノン等)を含んでいてもよい。
【0031】
図3に示す実施形態では、ステップS206において、図7に示すように、周囲電極16のうちオーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材を載せてフラックス材の層26を形成する。
【0032】
ステップS206では、例えば、周囲電極16のうちオーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材を印刷等により塗布することで、フラックス材の層26を形成してもよい。フラックス材として、はんだ付けにおけるフラックスとして一般的に用いられている材料を用いることができる。
【0033】
フラックス材は、主剤としてロジン又は合成樹脂等の樹脂を含んでもよい。また、フラックス材は、添加物として、無機酸又は無機塩等の無機物、及び/又は有機酸又は有機アミンのハロゲン塩等の有機物を含んでもよい。
【0034】
より具体的に、フラックス材は、樹脂、有機溶剤、及び、界面活性剤等を含んでもよい。
【0035】
上述の樹脂、水素添加酸変性ロジン、有機酸変性ロジン又は複合ロジン等であってもよい。上述の有機溶剤は、アルコール、グリコール、グリコールエーテル(ジエチレングリコール又は2-(2-ヘキシルオキシエトキシ)エタノール等であってもよい。上述の界面活性剤は、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジフェニルグアニジン、アジピン酸又はセバシン酸等であってもよい。
【0036】
フラックス材は、添加剤として、有機酸、アミン、ハロゲン系化合物又はワックス等を含んでもよい。
【0037】
次に、ステップS104又はS204で形成されたオーバーコート部、及び、ステップS106又はS206で形成された予備はんだ材の層24又はフラックス材の層26を同時に加熱して硬化させる(図2のS108、図3のS208)。
【0038】
そして、ステップS108又はS208の後、予備はんだ材の層24又はフラックス材の層26が設けられた部位において周囲電極16に引き出し線(図1の引き出し線20A~20Dを参照)をはんだ付け(本はんだ)する(図2のS114、図3のS214S)。
【0039】
図2に示す実施形態では、ステップS108の後、ステップS108で加熱により硬化した予備はんだ材の層24に引き出し線をはんだ付けする。
【0040】
図3に示す実施形態では、ステップS208の後、図8に示すように、加熱により硬化したフラックス材の層26の上に予備はんだ材の層24を印刷等により塗布することで形成し(S210)、該予備はんだ材の層24を加熱して硬化させる(S212)。そして、ステップS212で加熱により硬化した予備はんだ材の層24に引き出し線をはんだ付けする。
【0041】
従来の入力パネルの製造方法、すなわち、周囲電極を覆うオーバーコート材を加熱及び乾燥させた後、周囲電極のうちオーバーコートで覆われていない部分に予備はんだ(クリームはんだ)を載せて加熱及び乾燥させる方法では、オーバーコートを加熱する工程の後、予備はんだが周囲電極に載り難くなることがあった。この原因として、金属ペースト皮膜内のバインダ(熱硬化性樹脂等)のオーバーベイクにより、金属(銅等)粒子界面から樹脂が剥離することにより、熱がかかる金属粒子の表面積が大きくなり熱酸化が促進されることや、樹脂に亀裂が生じたり金属粒子と樹脂との界面が剥離したりすることにより、熱により粘度が低下したオーバーコート材の浸食が促進されることが考えられる。
【0042】
これに対し、上述の実施形態に係る入力パネルの製造方法によれば、ステップS108又はS208においてオーバーコート材を含むオーバーコート部22、及び、フラックス材の層26又は予備はんだ材の層24を同時に加熱して硬化させるので、この加熱時に、フラックス材の層26又は予備はんだ材の層24が形成された領域において、周囲電極16の表面における酸化皮膜の形成や、オーバーコート材の成分の浸食を抑制することができる。よって、予備はんだ及び本はんだが周囲電極16に乗りやすく、あるいは、予備はんだ及び本はんだの形成領域が狭くなり難い。このため、周囲電極16への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【0043】
図2の実施形態におけるステップS106では、図6に示すように、予備はんだ材の層24の周囲においてオーバーコート部22と予備はんだ材の層24との間に周囲電極16が露出した領域が存在するように、予備はんだ材の層24を形成するようにしてもよい。また、図3の実施形態におけるステップS206では、図7に示すように、フラックス材の層26の周囲においてオーバーコート部22とフラックス材の層26との間に周囲電極16が露出した領域が存在するように、フラックス材の層26を形成するようにしてもよい。
【0044】
すなわち、ステップS106又はS206では、周囲電極16の表面においてオーバーコート部22が設けられていない領域の面積に対して、予備はんだ材の層24又はフラックス材の層26の面積が小さくなるように、予備はんだ材の層24又はフラックス材の層26を形成するようにしてもよい。
【0045】
上述の方法によれば、オーバーコート部22と、フラックス材の層26又は予備はんだ材の層24との間に周囲電極16が露出した領域が存在する状態で、オーバーコート材を含むオーバーコート部22、及び、フラックス材の層26又は予備はんだ材の層24を同時に加熱して硬化させる。よって、仮に、加熱時にオーバーコート材の成分がある程度浸食したとしても、オーバーコート材の成分がフラックス材の層26又は予備はんだ材の層24まで到達し難い。よって、予備はんだ及び本はんだの形成領域をより広く確保しやすい。このため、周囲電極16への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0047】
(入力パネルの作製)
以下に説明する材料及び方法により、例1~例6の入力パネルを作製した。各例の材料の概要を表1に示す。
【0048】
〔材料〕
基材:
ケミカル強化ガラス(ガラス基板)上にITOの膜(透明導電膜;10cm×10cm角)を成膜したもの。
【0049】
金属ペースト(周囲電極の材料):
例1,2…銀ペースト(東洋紡株式会社製DW-250H-5;樹脂バインダ:共重合ポリエステル)
例3,4…銅ペースト(日油株式会社製CP-602AA;樹脂バインダ:詳細開示なし)
例5,6…銅ペースト(サカタインクス株式会社製UBK-1000(樹脂バインダ:エポキシ樹脂)
【0050】
オーバーコート材:
例1~6…サカタインクス株式会社製SAD-1000(エポキシ樹脂)
フラックス材:
例1,3,5…株式会社弘輝製TF-MP2
予備はんだ材:
クリームはんだ(株式会社弘輝製T4AB58-M742)
配線取付け用糸はんだ(本はんだ):
株式会社小島半田製作所製KS-218
【0051】
〔作製方法〕
例1,3,5の入力パネルは、本発明の実施例であり、図3のフローチャートに沿って作成した。例2,4,6の入力パネルは、比較例であり、図3のフローチャートにおけるステップS206~S208に代えて、ステップS204でオーバーコート部を設けた後、オーバーコート部の上にフラックス材の層を設けずに(すなわちステップS206を実施せずに)オーバーコート部の加熱を行い、それ以外の工程(すなわち図3のステップS202~S204及びS210~S212)は例1,3,5と同様に実施して作製した。
【0052】
より具体的には、例1~例6について、ITOの膜(透明導電膜)を成膜したガラス基板上に、上述の金属ペーストを1.5cm×1.5cm角パターンでスクリーン印刷して、後述する成膜条件(温度及び時間)で加熱しすることで周囲電極を形成した(図3のステップS202)。周囲電極の成膜条件は以下のとおりである。
例1,2…130℃、30分
例3,4…150℃、15分
例5,6…150℃、30分
【0053】
次に、例1~例6について、周囲電極(導電膜)の上にオーバーコート材を1.5cm×1.5cm角、かつ、中心に直径5mmの印刷されない部分が存在するようなパターンとなるようにスクリーン印刷した(図3のステップS204)。
【0054】
また、例1,3,5について、オーバーコート材が印刷されていない箇所(直径5mm)に、フラックス材をディスペンサーにより塗布し、オーバーコート材が印刷されていない箇所全体に直径5mmとなるように伸ばした(図3のステップS206)。
【0055】
例1~6について、150℃で30分加熱し、オーバーコート材及びフラックス材(例2,4,6ではオーバーコート材のみ)を乾燥させた(図3のステップS208)。
【0056】
次に、例1~6について、オーバーコートの成膜されていない箇所(すなわち、例1,3,5ではフラックス材を設けた箇所;直径5mm)に予備はんだ材(クリームはんだ)を塗布し(図3のステップS210)、150℃で30分加熱し、予備はんだ材を乾燥させた(図3のステップS220)。
【0057】
そして、予備はんだ(クリームはんだ)形成部にはんだ線材(引き出し線)AWG26をはんだ小手先温度250℃にて糸はんだを用いてはんだ付けした(本はんだ;図3のステップS214相当)。
【0058】
(評価方法)
上述のように作製した例1~6の入力パネルについて、以下のように評価を行った。各例の評価結果を表1に示す。
【0059】
〔評価1〕
予備はんだ材乾燥後の表面(はんだ部が形成されている面)のはんだ部(予備はんだ)の状態を目視で確認した。評価結果は以下のとおりである。
○:はんだが円状に乗っている。
△:はんだが歪に乗っている。(はんだの乗りが○に比べて劣る)
【0060】
また、予備はんだ材乾燥後の裏面(はんだ部が形成されている面とは反対側の面)のはんだ部(予備はんだ)の状態を目視で確認し、周囲電極材料(金属ペースト)の金属粒子と樹脂バインダとの剥離の有無を調査した。評価結果は以下のとおりである。
○:剥離が観察されなかった。
△:剥離が観察された。
【0061】
〔評価2〕
予備はんだ形成部にはんだ線材をはんだ付けした後の表面(はんだ部が形成されている面)のはんだ部(予備はんだ及び本はんだ)の状態を目視で確認した。評価結果は以下のとおりである。
○:はんだが円状に乗っている。
△:はんだが歪に乗っている。(はんだの乗りが○に比べて劣る)
【0062】
また、予備はんだ形成部にはんだ線材をはんだ付けした後の裏面(はんだ部が形成されている面とは反対側の面)のはんだ部(予備はんだ及び本はんだ)の状態を目視で確認し、周囲電極材料(金属ペースト)の金属粒子と樹脂バインダとの剥離の有無を調査した。評価結果は以下のとおりである。
○:剥離が観察されなかった。
×:剥離が観察された。
【0063】
【表1】
【0064】
(評価結果)
評価1,2の結果、周囲電極にオーバーコート材及びフラックス材の層を設けてオーバーコート材及びフラックス材を同時に加熱及び硬化させた例1,3,5は、フラックス材を設けずにオーバーコート材を加熱及び硬化させた例2,4,6に比べて、はんだ(予備はんだ及び本はんだ)の乗りが良好となる傾向だった。特に、例3,5(表面の評価1,2の結果「○」)は、例4,6(表面の評価1,2の結果「△」)に比べてはんだ(予備はんだ及び本はんだ)の乗りが良好であった。このことから、周囲電極にオーバーコート材及びフラックス材の層を設けてオーバーコート材及びフラックス材を同時に加熱及び硬化させることにより、フラックス材を設けた箇所において、周囲電極における酸化皮膜の形成やオーバーコート材の成分の浸食が抑制される傾向があると推察される。
【0065】
このことから、本発明の実施形態により、予備はんだ及び本はんだが周囲電極に乗りやすく、このため、周囲電極への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなることがわかる。
【0066】
なお、例1と例2の評価結果の比較から、周囲電極の材料が銀ペーストである場合は、オーバーコート材とフラックス材とを同時に加熱及び硬化させなくとも、はんだの乗りが良好であることがわかった。なお、例3~例6の結果から類推すると、オーバーコート材及びフラックス材を同時に加熱及び硬化させる例1の方が、例2に比べてはんだの乗り性がより良好である可能性が高いと考えられる。
【0067】
オーバーコート材及びフラックス材を同時に加熱及び硬化させた例1,3,5を比べると、周囲電極の材料である金属ペーストのバインダとしてエポキシ樹脂を用いた例5(裏面の評価1,2の結果「○」)では、バインダとして他の樹脂を用いた例1,3(裏面の評価1,2の結果「×」)に比べて、周囲電極材料(金属ペースト)の金属粒子と樹脂バインダとの剥離が起きにくい傾向があることが分かった。このことから、金属ペーストのバインダとして用いられる樹脂の種類に応じて、はんだの収縮のしかたやガラスへの密着性に差があり、バインダがエポキシ樹脂の場合、樹脂のオーバーベイクによる剥離が起きにくくなると考えられる。そして、例5では、上述の剥離が起きにくいため、熱がかかる金属(銅)粒子の表面積が大きくなり難いため金属(銅)の熱酸化が抑制され、また、加熱により粘度が低下したオーバーコート材の浸食が抑制されると考えられる。
【0068】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0069】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る入力パネル(10)の製造方法は、
ガラス基板(12)上の透明導電膜(14)の表面に形成された周囲電極(16)の一部をオーバーコート材で覆ってオーバーコート部(22)を設けるステップ(S104,S204)と、
前記周囲電極のうち、前記オーバーコート材で覆われていない領域の表面に、フラックス材又は予備はんだ材を載せて前記フラックス材又は前記予備はんだ材の層(24,26)を形成するステップ(S106,S206)と、
前記オーバーコート部、及び、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を同時に加熱して硬化させる加熱ステップ(S108,S208)と、
を備える。
【0070】
上記(1)の方法によれば、オーバーコート材を含むオーバーコート部、及び、フラックス材又は予備はんだ材の層を同時に加熱して硬化させるので、この加熱時に、フラックス材又は予備はんだ材の層が形成された領域において、周囲電極表面への酸化皮膜の形成や、オーバーコート材の成分の浸食を抑制することができる。よって、予備はんだ及び本はんだが周囲電極に乗りやすく、あるいは、予備はんだ及び本はんだの形成領域が狭くなり難い。このため、周囲電極への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【0071】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記入力パネルの製造方法は、
前記透明導電膜の前記表面に金属ペーストの塗膜を形成し、前記塗膜を加熱することによって前記周囲電極を形成するステップ(S102,S202)を備える。
【0072】
上記(2)の方法によれば、金属ペーストの塗膜を加熱して乾燥させることにより形成された周囲電極に対して、上記(1)の方法を適用することにより、該周囲電極への引き出し線へのはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【0073】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の方法において、
前記金属ペーストは、バインダとしての樹脂を含む。
【0074】
上記(3)の方法によれば、電極材料としての金属ペーストのバインダが樹脂を含むため、バインダがガラスフリット等である場合に比べてバインダの融点が低い。このため、比較的低い温度で周囲電極を形成することができ、入力パネルの製造が簡易化される。
【0075】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の方法において、
前記樹脂は、エポキシ樹脂を含む。
【0076】
上記(4)の方法によれば、電極材料としての金属ペーストのバインダがエポキシ樹脂を含むので、周囲電極の表面からの予備はんだの剥離を抑制しやすい。
【0077】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの方法において、
前記金属ペーストは、銅を含む。
【0078】
上記(5)の方法によれば、電極材料としての金属ペーストが銅を含むため、電極材料として従来用いられていた銀ペースト等を用いる場合に比べて、比較的安価に入力パネルを製造することができる。
【0079】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの方法において、
前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層を形成するステップでは、前記層の周囲において前記オーバーコート部と前記層との間に前記周囲電極が露出した領域が存在するように、前記層を形成する。
【0080】
上記(6)の方法によれば、オーバーコート部と、フラックス材又は予備はんだ材の層との間に周囲電極が露出した領域が存在する状態で、オーバーコート材を含むオーバーコート部、及び、フラックス材又は予備はんだ材の層を同時に加熱して硬化させる。よって、仮に、加熱時にオーバーコート材の成分がある程度浸食したとしても、オーバーコート材の成分がフラックス材又は予備はんだ材の層まで到達し難い。よって、予備はんだ及び本はんだの形成領域をより広く確保しやすい。このため、周囲電極への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【0081】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの方法において、
前記入力パネルの製造方法は、
前記加熱ステップの後、前記フラックス材又は前記予備はんだ材の前記層が設けられた部位において前記周囲電極に引き出し線をはんだ付けするステップ(S114,S214)
を備える。
【0082】
上記(7)の方法によれば、上記(1)の方法において、加熱ステップにて硬化したフラックス材又は予備はんだ材の箇所において引き出し線をはんだ付け(本はんだ)するので、本はんだが周囲電極に乗りやすく、あるいは、本はんだの形成領域が狭くなり難い。このため、周囲電極への引き出し線のはんだ付けを適切に行いやすくなる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0084】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0085】
10 入力パネル
12 ガラス基板
14 透明導電膜
16 周囲電極
18A~18D 駆動電極
20A~20D 引き出し線
22 オーバーコート部
24 予備はんだ材の層
26 フラックス材の層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8