(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078870
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】基板対基板コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/55 20110101AFI20240604BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
H01R12/55
H01R13/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191459
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100154900
【弁理士】
【氏名又は名称】関 京悟
(72)【発明者】
【氏名】芦部 健太
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB45
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB12
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB11
5E223DB25
5E223EA03
(57)【要約】
【課題】コンタクトへの荷重を取り除いたときの接点部の位置を初期位置に近づける技術を提供する。
【解決手段】各コンタクト5のバネ片12は、接点部13と固定部10の間で延びる第1バネ部15と、接点部13から下方に延びる第2バネ部16と、を含む。複数のコンタクト5において、基板対基板コネクタ4を主基板2に実装するとき、第2バネ部16は主基板2から離れている。複数のコンタクト5において、バネ片12が従基板3から荷重を受けることにより接点部13が下方に変位すると、第1バネ部15が変形すると共に第2バネ部16が主基板2との接触を伴って変形する。複数のコンタクト5のうち少なくとも何れか1つにおいて、荷重が除去されることにより接点部13が上方に変位した後、第2バネ部16が主基板2に対して継続して接触している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に実装され、前記第1基板と第2基板の間に挟まれることで、前記第1基板の複数の第1電極パッドと前記第2基板の複数の第2電極パッドをそれぞれ電気的に接続する基板対基板コネクタであって、
複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトを保持するハウジングと、
を含み、
前記ハウジングは、前記第1基板と対向可能なハウジング下面と、前記第2基板と対向可能なハウジング上面と、を有し、
各コンタクトは、
前記ハウジングに固定される固定部と、
前記固定部から突出すると共に、対応する第1電極パッドに半田実装可能な、実装部と、
前記固定部から延びると共に、対応する第2電極パッドに接触可能な接点部を有するバネ片と、
を含み、
各コンタクトの前記バネ片は、
前記接点部と前記固定部の間で延びる第1バネ部と、
前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で前記接点部から延びる第2バネ部と、
を含み、
前記複数のコンタクトにおいて、
前記基板対基板コネクタを前記第1基板に実装するとき、前記第2バネ部は前記第1基板から離れており、
前記バネ片が前記第2基板から荷重を受けることにより前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で前記接点部が変位すると、前記第1バネ部が変形すると共に前記第2バネ部が前記第1基板との接触を伴って変形し、
前記複数のコンタクトのうち少なくとも何れか1つにおいて、
前記荷重が除去されることにより前記ハウジング下面から前記ハウジング上面を見る方向で前記接点部が変位した後、前記第2バネ部が前記第1基板に対して継続して接触している、
基板対基板コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板対基板コネクタであって、
前記第2バネ部は、少なくとも1つの屈曲部を有する、
基板対基板コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板対基板コネクタであって、
前記第2バネ部は、前記第1基板に接触可能であって前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で凸となる湾曲部を有する、
基板対基板コネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の基板対基板コネクタであって、
前記固定部は、圧入により前記ハウジングに固定されている、
基板対基板コネクタ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の基板対基板コネクタであって、
前記固定部は、インサート成形により前記ハウジングに固定されている、
基板対基板コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板対基板コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、本願の
図9に示すように、基板対基板コネクタ用のコンタクト100を開示している。コンタクト100は、回路基板に半田付けされる半田付け部101と、ハウジングに保持される連接部102、接触部103を有する弾性片104、をこの記載順に有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第2736972号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のコンタクト100では、伝送特性を改善すべく接触部103から半田付け部101までの伝送経路長が短くなるように設計されている。即ち、弾性片104の長さが十分に確保されていない。従って、弾性片104の変形を伴いながら接触部103を所定ストローク分降下させたとき、弾性片104が塑性変形する虞がある。弾性片104が塑性変形した場合、弾性片104に対する荷重を取り除いても弾性片104には塑性ひずみが残り、接触部103を初期位置まで戻すことができない。
【0005】
本開示の目的は、コンタクトへの荷重を取り除いたときの接点部の位置を初期位置に近づける技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の観点によれば、第1基板に実装され、前記第1基板と第2基板の間に挟まれることで、前記第1基板の複数の第1電極パッドと前記第2基板の複数の第2電極パッドをそれぞれ電気的に接続する基板対基板コネクタであって、複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するハウジングと、を含み、前記ハウジングは、前記第1基板と対向可能なハウジング下面と、前記第2基板と対向可能なハウジング上面と、を有し、各コンタクトは、前記ハウジングに固定される固定部と、前記固定部から突出すると共に、対応する第1電極パッドに半田実装可能な、実装部と、前記固定部から延びると共に、対応する第2電極パッドに接触可能な接点部を有するバネ片と、を含み、各コンタクトの前記バネ片は、前記接点部と前記固定部の間で延びる第1バネ部と、前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で前記接点部から延びる第2バネ部と、を含み、前記複数のコンタクトにおいて、前記基板対基板コネクタを前記第1基板に実装するとき、前記第2バネ部は前記第1基板から離れており、前記バネ片が前記第2基板から荷重を受けることにより前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で前記接点部が変位すると、前記第1バネ部が変形すると共に前記第2バネ部が前記第1基板との接触を伴って変形し、前記複数のコンタクトのうち少なくとも何れか1つにおいて、前記荷重が除去されることにより前記ハウジング下面から前記ハウジング上面を見る方向で前記接点部が変位した後、前記第2バネ部が前記第1基板に対して継続して接触している、基板対基板コネクタが提供される。
前記第2バネ部は、少なくとも1つの屈曲部を有してもよい。
前記第2バネ部は、前記第1基板に接触可能であって前記ハウジング上面から前記ハウジング下面を見る方向で凸となる湾曲部を有してもよい。
前記固定部は、圧入により前記ハウジングに固定されてもよい。
前記固定部は、インサート成形により前記ハウジングに固定されてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コンタクトへの荷重を取り除いたときの接点部の位置を初期位置に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】基板対基板コネクタの使用方法を示す図である。
【
図5】基板対基板コネクタの使用方法を示す図である。
【
図6】基板対基板コネクタの使用方法を示す図である。
【
図7】接点部の高さ位置の変化を示すグラフである。
【
図8】基板対基板コネクタの使用方法を示す図である。(比較例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、
図1から
図7を参照して、本開示の実施形態を説明する。
【0010】
図1には、電子機器1を示している。
図1に示すように、電子機器1は、主基板2(第1基板)、従基板3(第2基板)、基板対基板コネクタ4を含む。
【0011】
主基板2は、基板本体2Aと、基板本体2Aのコネクタ搭載面2Bに設けられた複数の主電極パッド対2C(第1電極パッド)と、を含む。各主電極パッド対2Cは、常時接続パッド2Dと一時的接続パッド2Eを含む。常時接続パッド2Dと一時的接続パッド2Eは、互いに導通している。しかし、常時接続パッド2Dと一時的接続パッド2Eは互いに電気的に絶縁であってもよい。一時的接続パッド2Eは省略することができる。
【0012】
従基板3は、基板本体3Aと、基板本体3Aのコネクタ対向面3Bに設けられた複数の従電極パッド3C(第2電極パッド)と、を含む。
【0013】
主基板2の基板本体2A、及び、従基板3の基板本体3Aは、例えば紙フェノール基板やガラスエポキシ基板などのリジット基板、又は、フレキシブル基板である。
【0014】
基板対基板コネクタ4は、主基板2の基板本体2Aのコネクタ搭載面2Bに実装される。基板対基板コネクタ4は、互いに平行な主基板2と従基板3の間に挟まれることで、主基板2の複数の主電極パッド対2Cと、従基板3の複数の従電極パッド3Cをそれぞれ電気的に互いに接続する。主基板2と基板対基板コネクタ4と従基板3が重なり合う方向を以下、上下方向と称する。基板対基板コネクタ4から主基板2を見る方向を下方とし、基板対基板コネクタ4から従基板3を見る方向を上方とする。ただし、上方、下方、上下方向は、何れも、基板対基板コネクタ4の使用時における基板対基板コネクタ4の姿勢を限定するものではない。
【0015】
基板対基板コネクタ4は、金属製の複数のコンタクト5と、複数のコンタクト5を収容する絶縁樹脂製のハウジング6と、を含む。
【0016】
ハウジング6は、平面視で矩形の平板状に形成されている。ハウジング6は、下方を向くハウジング下面6Aと、上方を向くハウジング上面6Bと、を有する。
【0017】
複数のコンタクト5は、何れも互いに同じ向きでハウジング6に収容されている。各コンタクト5の平面視における長手方向及び短手方向を以下、単に長手方向及び短手方向とそれぞれ称する。
【0018】
図2に示すように、ハウジング6には、複数のキャビティ7が形成されている。各キャビティ7は、ハウジング6を上下方向に貫通するように形成されている。即ち、各キャビティ7は、ハウジング6のハウジング下面6A及びハウジング上面6Bに開口するように形成されている。そして、複数のキャビティ7に、複数のコンタクト5がそれぞれ収容されている。
【0019】
図3には、各コンタクト5の斜視図を示している。複数のコンタクト5は同一形状であるから、以下、代表的に1つのコンタクト5について説明する。
【0020】
図3に示すように、コンタクト5は、長手方向から見ると線対称に形成されている。コンタクト5は、固定部10と実装部11、バネ片12を含む。
【0021】
固定部10は、圧入によりハウジング6に固定される部分である。固定部10の板厚方向は長手方向に等しい。
【0022】
実装部11は、対応する常時接続パッド2Dに半田実装可能な部分である。実装部11は、固定部10の下端10Aから突出している。実装部11の板厚方向は上下方向に等しい。以下、説明の便宜上、実装部11が固定部10から突出する方向を前方と称し、その反対方向を後方と称する。
【0023】
バネ片12は、対応する従電極パッド3Cに接触可能な接点部13を有している。バネ片12は、固定部10の上端10Bから延びている。
【0024】
バネ片12は、第1バネ部15及び第2バネ部16を含む。固定部10、第1バネ部15、接点部13、第2バネ部16は、コンタクト5の展開図において、この記載順で連なっている。
【0025】
第1バネ部15は、固定部10と接点部13の間で延びている。第1バネ部15は、前方に向かって上り坂となるように傾斜している。
【0026】
接点部13は、第1バネ部15の先端に設けられている。接点部13は、上方に向かって凸となるように湾曲している。
【0027】
第2バネ部16は、接点部13から下方に向かって延びている。第2バネ部16は、後方に向かって下り坂となるように傾斜する上傾斜部16Aと、前方に向かって下り坂となるように傾斜する下傾斜部16Bと、を含む。上傾斜部16A及び下傾斜部16Bは、接点部13から下方に向かってこの記載順に連なっている。上傾斜部16Aと下傾斜部16Bの間には、後方に凸となるように屈曲する屈曲部16Cが形成されている。即ち、上傾斜部16Aと下傾斜部16Bは、屈曲部16Cを介して互いに連なっている。第2バネ部16の下端には、下方に向かって凸となる湾曲部16Dが形成されている。第2バネ部16の下端は、バネ片12の自由端に相当している。
【0028】
そして、
図4に示すように、バネ片12の無負荷状態において、接点部13はハウジング上面6Bよりも上方に突出している。また、この状態で、実装部11はハウジング下面6Aよりも下方に突出している。同様に、バネ片12の第2バネ部16の湾曲部16Dは、ハウジング下面6Aよりも下方に突出している。
【0029】
コンタクト5は、典型的には、1枚の金属板を打ち抜き加工及び曲げ加工することで製造される。ハウジング6は、典型的には、射出成形により形成される。
【0030】
次に、
図4から
図6を参照して、基板対基板コネクタ4の使用方法を説明する。
【0031】
まず、基板対基板コネクタ4を主基板2のコネクタ搭載面2Bに実装する。具体的には、各コンタクト5の実装部11を主基板2の対応する常時接続パッド2Dに半田実装する。
図4には、各コンタクト5を対応する常時接続パッド2Dに半田実装した後であって、各コンタクト5のバネ片12が従基板3とまだ一度も接触していない状態を示している。この状態において、バネ片12の第2バネ部16の湾曲部16Dは、主基板2の対応する一時的接続パッド2Eから上方に若干離れている。端的に言えば、基板対基板コネクタ4を主基板2に実装するとき、第2バネ部16は主基板2から上方に離れている。これにより、各コンタクト5において、実装部11が第2バネ部16よりも主基板2に近いことが担保されるので、各コンタクト5の実装部11を主基板2の対応する常時接続パッド2Dに容易に半田実装することができる。
【0032】
この状態で、主基板2と従基板3を電気的に接続するには、従基板3の従電極パッド3Cを接点部13に対して上下方向で対向させ、従基板3を基板対基板コネクタ4に向かって押し付ける。すると、
図5に示すように、従電極パッド3Cが接点部13に接触すると共に、バネ片12が従基板3から下向きの荷重を受けることにより、接点部13が下方に所定のストローク量、変位する。このストローク量は、典型的には、基板対基板コネクタ4のハウジング6と従基板3の間に所定厚みを有するスペーサを介在させることにより容易に管理することができる。接点部13が下方に所定のストローク量、変位すると、第1バネ部15が変形すると共に第2バネ部16が主基板2との接触を伴って変形する。
【0033】
具体的には、第1バネ部15は、下方に撓むように変形する。上記のように接点部13が下方に所定のストローク量、変位するとき、第1バネ部15の変形は弾性域を超えて塑性変形となり得る。
【0034】
また、第2バネ部16は、接点部13が下方に変位すると共に第2バネ部16が主基板2の一時的接続パッド2Eと接触することにより、上下方向で圧縮されるように変形する。具体的には、第2バネ部16は、上傾斜部16A及び下傾斜部16Bが成す角度θが小さくなるように変形する。このときの第2バネ部16の変形は、第2バネ部16のバネ長が十分に確保されているので典型的には弾性変形となる。
【0035】
次に、主基板2と従基板3の電気的な接続状態を解除するには、まず、従基板3を上方に移動させることにより従基板3を基板対基板コネクタ4から上方に遠ざける。すると、バネ片12が従基板3から受けていた荷重が除去されるので、
図6に示すように接点部13が上方に変位する。このとき、バネ片12は主基板2に対して継続して接触したままとなる。具体的には、第2バネ部16は主基板2の対応する一時的接続パッド2Eに対して継続して接触したままとなる。このようにバネ片12が従基板3から受けていた荷重が除去された後も継続して第2バネ部16が主基板2に対して接触したままであることは、第2バネ部16の弾性復元力が接点部13に対して上方に作用していることに他ならない。従って、バネ片12が第2バネ部16を備えずに第1バネ部15のみを備える場合と比較して、接点部13の位置を
図4に示す接点部13の初期位置に近づけることができる。以下、説明の便宜上、接点部13の高さ位置Zを定義する。即ち、
図6に示すように、接点部13の高さ位置Zは、ハウジング6のハウジング下面6Aから接点部13の頂点までの上下方向における距離として定義する。以下、この高さ位置Zに着目して、第2バネ部16の弾性復元力による技術的意義を詳しく説明する。
【0036】
図7は、接点部13の高さ位置Zの変化を示すグラフを示している。
図7のグラフにおいて横軸は時刻であり、縦軸は接点部13の高さ位置Zである。
図7のグラフにおける実線Aは、本実施形態に対応している。時刻t0において、基板対基板コネクタ4は主基板2に実装される。以下、時刻t0における高さ位置Zを初期位置Z0と称する。次に、時刻t1から時刻t2にかけて、従基板3を基板対基板コネクタ4に向かって押し付けて主基板2と従基板3を電気的に接続させる。以下、時刻t2における高さ位置Zを接続位置Z1と定義する。次に、時刻t3から時刻t4にかけて、従基板3を基板対基板コネクタ4から上方に遠ざけることで、主基板2と従基板3の電気的な接続状態を解除する。以下、時刻t4における高さ位置Zを復元位置ZAと定義する。以降、時刻t5から時刻t6にかけて基板間接続が実行され、時刻t7から時刻t8にかけて基板間接続が解除され、時刻t9から時刻t10にかけて基板間接続が実行される。時刻t4以降では、基板間接続状態において高さ位置Zは接続位置Z1となり、基板間接続解除状態において高さ位置Zは復元位置ZAとなる。このように、接点部13の高さ位置Zは、接続位置Z1と復元位置ZAの間を往復することになる。
【0037】
ここで、時刻t1から時刻t2にかけて、従基板3を基板対基板コネクタ4に向かって押し付けて主基板2と従基板3を電気的に接続させる際に第1バネ部15が塑性変形した場合、時刻t3から時刻t4にかけて、主基板2と従基板3の電気的な接続状態を解除したときに第1バネ部15には残留歪が残ることになる。端的に言えば、第1バネ部15は元の形状に戻れない。これにより、復元位置ZAは初期位置Z0よりも低くなっている。
【0038】
図7のグラフにおける太線Bは、本開示の比較例に対応している。本比較例において、バネ片12は、第2バネ部16を備えることなく第1バネ部15のみを備えている。本比較例では、時刻t3から時刻t4にかけて、従基板3を基板対基板コネクタ4から上方に遠ざけることで、主基板2と従基板3の電気的な接続状態を解除したとき、解除後の高さ位置Zは、復元位置ZAよりも低くなっている。以下、説明の便宜上、本比較例において、基板間接続解除状態における高さ位置Zを復元位置ZBと定義する。
【0039】
復元位置ZAが復元位置ZBよりも初期位置Z0に近くなるのは、以下の理由による。即ち、本実施形態では、前述したように、バネ片12が従基板3から受けていた荷重が除去された後も継続して第2バネ部16が主基板2に対して接触したままとなっている。これは即ち、第2バネ部16の弾性復元力が接点部13に対して上方に作用していることに他ならない。従って、本実施形態では、比較例と比較して、接点部13の高さ位置Zを初期位置Z0に近づけることができる。なお、
図6に示す基板間接続解除状態において、接点部13には、第1バネ部15の弾性復元力が下向きに作用し、第2バネ部16の弾性復元力が上向きに作用し、第1バネ部15の弾性復元力と第2バネ部16の弾性復元力が上下方向で互いに釣り合っている。仮に、
図6に示す基板間接続解除状態において、第2バネ部16を切り取ることができたとしたら、第1バネ部15は、第2バネ部16から受けていた第2バネ部16の弾性復元力を失うので、第1バネ部15の弾性復元力によって降下する。その結果、接点部13の高さ位置Zは、
図7に示す復元位置ZBへと変化することになる。
【0040】
以上、実施形態を説明したが、上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0041】
図1から
図6に示すように、基板対基板コネクタ4は、主基板2(第1基板)に実装され、主基板2と従基板3(第2基板)の間に挟まれることで、主基板2の複数の主電極パッド対2C(第1電極パッド)と従基板3の複数の従電極パッド3C(第2電極パッド)をそれぞれ電気的に接続する。
基板対基板コネクタ4は、複数のコンタクト5と、複数のコンタクト5を保持するハウジング6と、を含む。
ハウジング6は、主基板2と対向可能なハウジング下面6Aと、従基板3と対向可能なハウジング上面6Bと、を有する。
各コンタクト5は、ハウジング6に固定される固定部10と、固定部10から突出すると共に、対応する主電極パッド対2Cに半田実装可能な、実装部11と、固定部10から延びると共に、対応する従電極パッド3Cに接触可能な接点部13を有するバネ片12と、を含む。
各コンタクト5のバネ片12は、接点部13と固定部10の間で延びる第1バネ部15と、接点部13から下方に延びる第2バネ部16と、を含む。
複数のコンタクト5において、基板対基板コネクタ4を主基板2に実装するとき、第2バネ部16は主基板2から離れている。
複数のコンタクト5において、バネ片12が従基板3から荷重を受けることにより接点部13が下方に変位すると、第1バネ部15が変形すると共に第2バネ部16が主基板2との接触を伴って変形する。
複数のコンタクト5のうち少なくとも何れか1つにおいて、
図6に示すように、荷重が除去されることにより接点部13が上方に変位した後、第2バネ部16が主基板2に対して継続して接触している。
以上の構成によれば、コンタクト5への荷重を取り除いたときの接点部13の高さ位置Zを初期位置Z0に近づけることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、複数のコンタクト5のうち少なくとも何れか1つにおいて、荷重が除去されることにより接点部13が上方に変位した後、第2バネ部16が主基板2に対して継続して接触しているとした。しかし、これに代えて、複数のコンタクト5のすべてにおいて、
図6に示すように、荷重が除去されることにより接点部13が上方に変位した後、第2バネ部16が主基板2に対して継続して接触していてもよい。
【0043】
コンタクト5への荷重を取り除いたときの接点部13の高さ位置Zを初期位置Z0に近づけることができる上記の技術的効果は、
図6に示す状態における複数のコンタクト5の接点部13のコプラナリティを改善するだろう。更に、上記の技術的効果は、ワイピング作用の改善にも寄与するだろう。
【0044】
また、
図4に示すように、第2バネ部16は、屈曲部16Cを有する。以上の構成によれば、第2バネ部16のバネ長を効果的に確保することができる。なお、本実施形態では、第2バネ部16は1つの屈曲部16Cを有しているが、これに代えて、第2バネ部16は複数の屈曲部16Cを有してもよい。
【0045】
また、
図4に示すように、第2バネ部16は、主基板2に接触可能であって下方に凸となる湾曲部16Dを有している。以上の構成によれば、第2バネ部16が主基板2と接触したときに第2バネ部16が長手方向に滑るので、第2バネ部16の円滑な弾性変形が実現される。
【0046】
また、
図4に示すように、固定部10は、圧入によりハウジング6に固定されている。しかし、これに代えて、固定部10は、インサート成形によりハウジング6に固定されてもよい。
【0047】
(変形例)
上記実施形態は、例えば以下のように変更できる。
【0048】
即ち、
図4に示すように、上記実施形態において第2バネ部16は、後方に凸となるように屈曲する屈曲部16Cを有している。しかし、これに代えて、
図8に示すように、第2バネ部16は、前方に凸となるように屈曲する屈曲部16Eを有してもよい。以上の構成によっても、第2バネ部16のバネ長を効果的に確保することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 電子機器
2 主基板
2A 基板本体
2B コネクタ搭載面
2C 主電極パッド対
2D 常時接続パッド
2E 一時的接続パッド
3 従基板
3A 基板本体
3B コネクタ対向面
3C 従電極パッド
4 基板対基板コネクタ
5 コンタクト
6 ハウジング
6A ハウジング下面
6B ハウジング上面
7 キャビティ
10 固定部
10A 下端
10B 上端
11 実装部
12 バネ片
13 接点部
15 第1バネ部
16 第2バネ部
16A 上傾斜部
16B 下傾斜部
16C 屈曲部
16D 湾曲部
16E 屈曲部
θ 角度
Z 高さ位置
A 実線
B 太線
Z0 初期位置
Z1 接続位置
ZA 復元位置
ZB 復元位置