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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078875
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】酸素濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
A61M16/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191466
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 猛
(72)【発明者】
【氏名】土屋 晃章
(57)【要約】
【課題】定置型及び携帯型の両方で使用可能に構成される酸素濃縮装置において、定置型で使用する際の発生騒音を抑制する。
【解決手段】酸素濃縮装置Mは、携帯ユニットM1と定置ユニットM2とを有し、携帯ユニットM1のみで使用する第1形態S1と、携帯ユニットM1及び定置ユニットM2を合体させた状態で使用する第2形態S2と、で使用可能であり、第2形態で使用する場合において、携帯ユニットM1の排気口170を定置ユニットM2の圧縮機ボックス210を含む排気経路に接続する排気連通経路301、第2形態で使用する場合において、携帯ユニットM1の給気口180を定置ユニットM2のファンボックス230を含む給気経路に接続する給気連通経路302、の少なくとも何れか一方を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯ユニットと定置ユニットとを有し、前記携帯ユニットのみで使用する第1形態と、前記携帯ユニット及び前記定置ユニットを合体させた状態で使用する第2形態と、で使用可能な酸素濃縮装置であって、
前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットの排気口を前記定置ユニットの第1消音機構を含む排気経路に接続する第1連通経路、
前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットの給気口を前記定置ユニットの第2消音機構を含む給気経路に接続する第2連通経路、
の少なくとも何れか一方を有する、酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記第1連通経路は、前記定置ユニット側に設けられ前記携帯ユニットの前記排気口を覆う排気カバーと、前記排気カバーと前記排気口との間の隙間を封止する排気シール部とを含む、請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記第2連通経路は、前記定置ユニット側に設けられ前記携帯ユニットの前記給気口を覆う給気カバーと、前記給気カバーと前記給気口との間の隙間を封止する給気シール部とを含む、請求項1又は請求項2に記載の酸素濃縮装置。
【請求項4】
前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットを前記定置ユニットに対して組み付けるための位置決めガイド機構を有する、請求項1に記載の酸素濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の酸素濃度よりも高濃度の酸素を含む高濃度酸素を生成してユーザに供給する酸素濃縮装置が知られている。酸素濃縮装置は、例えば肺に疾患を有し当該肺の機能が低下している患者(ユーザ)が酸素療法を行う場合に使用する。酸素濃縮装置の形態には、ユーザが在宅中に使用する定置型、及び外出中に使用する携帯型がある。従来、定置型ユニット及び携帯型ユニットの両方を含んで構成され、定置型ユニットに携帯型ユニットを接続することで携帯型ユニットの能力をアップし、定置型ユニットとして使用できるように構成された酸素濃縮装置が知られている(特許文献1参照)。このような酸素濃縮装置は、携帯型及び定置型の両方の形態で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-168087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の酸素濃縮装置における携帯型ユニットは、軽量化及びコンパクト化を重視して設計がなされた結果、ユニットからの発生騒音を抑制するための消音機構が簡素化(一部省略)されている。このため、前記酸素濃縮装置では、定置型ユニットとして使用する場合において、携帯ユニットからの発生騒音が大きくなり、これによりユニット全体としての発生騒音が大きくなっている。このため、前記酸素濃縮装置は、定置ユニットとして使用する場合に発生する騒音が睡眠の妨げとなり、就寝時に使用しにくいという問題があった。
【0005】
本開示は、定置型及び携帯型の両方で使用可能に構成される酸素濃縮装置において、定置型で使用する際の発生騒音を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の酸素濃縮装置は、携帯ユニットと定置ユニットとを有し、前記携帯ユニットのみの第1形態と、前記携帯ユニット及び前記定置ユニットを合体させた状態の第2形態と、で使用可能な酸素濃縮装置であって、前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットの排気口を前記定置ユニットの第1消音機構を含む排気経路に接続する第1連通経路、前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットの給気口を前記定置ユニットの第2消音機構を含む給気経路に接続する第2連通経路、の少なくとも何れか一方を有する。
【0007】
本開示の酸素濃縮装置によれば、携帯ユニットからの排気、携帯ユニットへの給気、の少なくとも何れか一方を、定置ユニットを介して行うことで、携帯ユニット側に設ける消音機構が簡素化されていても、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置の騒音を抑制することができる。
【0008】
(2)本開示の前記(1)の酸素濃縮装置において、前記第1連通経路は、前記定置ユニット側に設けられ前記携帯ユニットの前記排気口を覆う排気カバーと、前記排気カバーと前記排気口との間の隙間を封止する排気シール部とを含むと好ましい。
【0009】
この場合、排気口と第1連通経路との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置の騒音を抑制することができる。
【0010】
(3)本開示の前記(1)又は(2)の酸素濃縮装置において、前記第2連通経路は、前記定置ユニット側に設けられ前記携帯ユニットの前記給気口を覆う給気カバーと、前記給気カバーと前記給気口との間の隙間を封止する給気シール部とを含むと好ましい。
【0011】
この場合、吸気口と第2連通経路との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置の騒音を抑制することができる。
【0012】
(4)本開示の前記(1)~(3)のうちの何れかの酸素濃縮装置において、前記第2形態で使用する場合において、前記携帯ユニットを前記定置ユニットに対して組み付けるための位置決めガイド機構を有すると好ましい。
【0013】
この場合、前記第1連通経路を有する場合は、前記第1連通経路と前記排気口とを位置決めすることができ、前記第2連通経路を有する場合は、前記第2連通経路と前記給気口とを位置決めすることができる。これにより、酸素濃縮装置を第2形態としたときに、前記第1連通経路を有する場合は、前記第1連通経路と前記排気口とを接続することができ、前記第2連通経路を有する場合は、前記第2連通経路と前記給気口とを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の酸素濃縮装置(携帯ユニット及び定置ユニット)を示す斜視模式図である。
図2】本開示の酸素濃縮装置(第2形態)の斜視模式図である。
図3】本開示の一実施形態に係る酸素濃縮装置の説明図である。
図4】携帯ユニットの酸素濃縮プロセスを説明するためのブロック図である。
図5】定置ユニットの酸素濃縮プロセスを説明するためのブロック図である。
図6】接続部を説明する図である。
図7】吸着筒の1サイクルの圧力変化と酸素濃縮装置の制御弁の切替状態との関係を説明する図である。
図8】携帯ユニットの側面図である。
図9】定置ユニットの側方視断面図である。
図10】定置ユニットの後方視断面図である。
図11】排気口及び給気口に対する排気カバー及び給気カバーの配置状況の説明図である。
図12】酸素濃縮装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ、本開示の酸素供給装置を詳細に説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
[酸素濃縮装置の全体構成]
図1は、本開示の酸素濃縮装置(携帯ユニット及び定置ユニット)を示す斜視模式図である。図2は、本開示の酸素濃縮装置(第2形態)の斜視模式図である。ここではまず、酸素濃縮装置の全体構成について説明する。
【0017】
本開示の酸素濃縮装置は、空気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度の酸素を含む高濃度酸素を生成して、ユーザに供給する装置である。酸素濃縮装置は、例えば、ユーザである呼吸器疾患患者等に対して高濃度酸素を提供する在宅酸素療法において用いられる。
【0018】
図1及び図2には、本開示の酸素濃縮装置の一実施形態である酸素濃縮装置Mを示している。図1及び図2に示すように、酸素濃縮装置Mは、外出時に使用するための携帯式の酸素濃縮装置Mである携帯ユニットM1と、在宅時に使用するため定置式の酸素濃縮装置Mである定置ユニットM2とを含んで構成される。酸素濃縮装置Mは、携帯ユニットM1のみで使用する第1形態S1と、携帯ユニットM1と定置ユニットM2とを合体させた状態で使用する第2形態S2と、で使用可能に構成される。
【0019】
[携帯ユニットM1の構成]
図3は、本開示の一実施形態に係る酸素濃縮装置の説明図である。図4は、携帯ユニットの酸素濃縮プロセスを説明するためのブロック図である。なお、図4では、分かり易くするために、図3に示される構成ないし要素の一部の表現を簡略化するか、又は、図示を省略している。図3及び図4に示すように、携帯ユニットM1は、第1吸着筒101及び第2吸着筒102と、第1吸着筒101及び第2吸着筒102に加圧空気を供給する圧縮機103と、高濃度酸素を貯留する酸素タンク105と、を備えている。本実施形態における圧縮機103は、空気等のガスの加圧及び吸引を行うことができる加圧・真空併用型の圧縮機である。圧縮機103は、第1吸着筒101及び第2吸着筒102に加圧空気を供給し吸着した窒素リッチガスを減圧により脱着・排気する。なお、本実施形態では、加圧・真空併用型の圧縮機103を用いているが、本開示の酸素濃縮装置を構成する携帯ユニットは、加圧空気を供給する圧縮機とは別に、吸気部である真空ポンプを装置内に別途有する構成であってもよい。
【0020】
圧縮機103の作動や、後述する種々の電磁弁等の作動は、装置内に配設された制御部140により行われる。制御部140は、携帯ユニットM1を作動させるためのプログラムが記憶されている記憶部140a、及び電磁弁等の作動信号などを発信する演算部140bを備えている。制御部140には、第1形態S1における電力の供給源となるバッテリー141と、携帯ユニットM1の作動状態等を表示する表示部142が接続されている。
【0021】
ケーシング109内には、圧縮機103、及び排気マフラー114を収容する圧縮機ボックス110、圧縮機103を冷却するための冷却ファン112、給気フィルタ116、給気消音ボックス113を収容するファンボックス130が設けられる。圧縮機ボックス110、給気消音ボックス113、及びファンボックス130は、携帯ユニットM1における消音機構を構成する。換言すると、圧縮機ボックス110、給気消音ボックス113、及びファンボックス130は、ケーシング109内に配設された各機器より発生する騒音を抑制させることができる。なお、本開示の酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1の小型軽量化を図るために、圧縮機ボックス110、給気消音ボックス113、及びファンボックス130を、簡素化している。ここでいう「簡素化」とは、例えば、各ボックスを構成する板状部材の厚みを薄くして軽量化したり、あるいは、ボックス内に配置する吸音材の数量を低減又は省略等したりして、消音機構の軽量化、小型化を図ること等が含まれる。
【0022】
ケーシング109内には、圧縮機103から第1吸着筒101及び第2吸着筒102への加圧空気の流れ、及び、第1吸着筒101及び第2吸着筒102から圧縮機103への排気ガスの流れを制御する制御弁111がさらに設けられる。本実施形態における制御弁111は、3ポート弁である電磁弁111Aと、同じく3ポート弁である電磁弁111Bとで構成されている。なお、図4及び図5において、弁を示す標記の近傍に付した「1」、「2」又は「3」という数字は当該弁のポートの番号を示している。3ポート弁には、「1」から「3」までの数字が付されており、2ポート弁には、「1」及び「2」の数字が付されている。
【0023】
ケーシング109に設けた給気口180には、装置内に導入される外部の空気中に含まれる塵埃等を捕集するための防塵フィルタ115が設けられている。防塵フィルタ115を通過してケーシング109内に導入された外部からの空気は、ファンボックス130の開口部131を通って給気フィルタ116に吸い込まれ、給気消音ボックス113を通過して圧縮機103に吸引される。給気消音ボックス113は、給気フィルタ116から圧縮機103に至る空気の流路に配設されており、圧縮機103の給気・圧縮に起因する騒音を抑制させる。
【0024】
圧縮機103により圧縮されて加圧された空気(加圧空気)は、電磁弁111A及び電磁弁111Bを経由して第1吸着筒101及び第2吸着筒102に供給される。また、第1吸着筒101及び第2吸着筒102からの排気ガスは、電磁弁111A及び電磁弁111Bを経由して圧縮機103により減圧・吸引され、排気マフラー114から圧縮機ボックス110の開口部117を経由して排気口170から外部に排出される。運転により発生する圧縮機103の熱は、冷却ファン112によって、ケーシング109の給気口180及びファンボックス130の開口部131を経由して当該ファンボックス130内に吸引され、且つ、冷却ファン112によって圧縮機103に吹き付けられる空気により冷却される。
【0025】
第1吸着筒101及び第2吸着筒102の内部には、圧縮機103から供給される加圧空気中の窒素を選択的ないし優先的に吸着する吸着剤が収容されている。吸着剤としては、例えばゼオライト等を用いることができる。第1吸着筒101及び第2吸着筒102を用いた酸素濃縮のプロセスの詳細については後述する。
【0026】
第1吸着筒101及び第2吸着筒102の下流側の流路(高濃度酸素の出口側の流路。図3では第1吸着筒101及び第2吸着筒102の下部から第1酸素出口150に至る流路)には、高濃度酸素等の流体の流量又は流れを制御するための種々の弁、すなわちパージ弁118、逆止弁119、120、同調弁122が設けられている。同調弁122には、ユーザの呼吸を検知するための微圧センサ128が付設されている。同調弁122は、微圧センサ128の検知結果に応じて、「開」状態又は「閉」状態に切り替えられる。酸素タンク105は、同調弁122の上流側であり、且つ、逆止弁119、120の下流側に設けられている。また、逆止弁119、120と酸素タンク105との間のガス流路には、圧力異常等を検出するための圧力センサ123が設けられている。
【0027】
本実施形態に係る携帯ユニットM1は、一方の吸着筒に圧縮機103で圧縮された空気が供給されている間に、他方の吸着筒を当該圧縮機103によって吸引することで減圧するVPSA(Vacuum Pressure Swing Adsorption System)タイプの酸素濃縮装置である。しかし、本開示の酸素濃縮装置を構成する携帯ユニットはこれに限定されず、一方の吸着筒に圧縮機で圧縮された空気が供給されている間に、他方の吸着筒が大気開放されることで減圧されるPSA(Pressure Swing Adsorption System)タイプの酸素濃縮装置とすることもできる。
【0028】
電磁弁111A及び電磁弁111Bは、いずれも3ポート弁であり、圧縮機103から吐出された加圧空気を第1吸着筒101(第2吸着筒102)に供給する加圧状態と、吸引することで当該第1吸着筒101(第2吸着筒102)内の排気ガスを外部に排出する減圧状態とを切り替える。一方の吸着筒が加圧状態にあるときは、他方の吸着筒は減圧状態にある。
【0029】
逆止弁119は第1吸着筒101の下流側のガス流路に配設され、逆止弁120は第2吸着筒102の下流側のガス流路に配設されている。両逆止弁119、120は、第1吸着筒101及び第2吸着筒102から排出される高濃度酸素が下流側に向かってだけ流れるように構成されている。パージ弁118は、第1吸着筒101と逆止弁119との間のガス流路と、第2吸着筒102と逆止弁120との間のガス流路とを接続するガス流路に配設されている。
【0030】
逆止弁119からの高濃度酸素と、逆止弁120からの高濃度酸素とが交互に酸素タンク105に供給され、当該酸素タンク105に貯留される。酸素タンク105の下流側には、高濃度酸素から異物を除去するためのバクテリアフィルタ125、酸素タンク105からの高濃度酸素の流量を調製する同調弁122が配設されている。同調弁122で流量調整された高濃度酸素は酸素濃度異常を検出するための酸素センサ124及びを経由して、ケーシング109の第1酸素出口150に送られる。携帯ユニットM1(第1形態S1の酸素濃縮装置M)において、高濃度酸素は、第1酸素出口150に第1カニューラ継手126を設けると共に、第1カニューラ継手126に接続されたチューブTA及びカニューラC(図4参照)を介して患者に供給される。
【0031】
さらに、本開示の携帯ユニットM1は、バクテリアフィルタ125と同調弁122との間から分岐したガス流路127を有すると共に、ガス流路127の端部に第3酸素出口151が設けられる。第3酸素出口151は、第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1で生成した高濃度酸素の出口となる。第3酸素出口151には、第1継手161が設けられる。第1継手161は、後で説明する接続部160の一部を構成する継手であり、後で説明する第2継手162に対して接続可能に構成される。第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1で生成された高濃度酸素は、ガス流路127、第3酸素出口151、及び第1継手161を介して、定置ユニットM2に送ることもできる。
【0032】
[定置ユニットM2の構成]
図5は、定置ユニットの酸素濃縮プロセスを説明するためのブロック図である。なお、図5では、分かり易くするために、図3に示される構成ないし要素の一部の表現を簡略化するか、又は、図示を省略している。図3及び図5に示すように、定置ユニットM2は、第1吸着筒201及び第2吸着筒202と、第1吸着筒201及び第2吸着筒202に加圧空気を供給する圧縮機203と、高濃度酸素を貯留する酸素タンク205と、を備えている。本実施形態における圧縮機203は、空気等のガスの加圧及び吸引を行うことができる加圧・真空併用型の圧縮機である。圧縮機203は、第1吸着筒201及び第2吸着筒202に加圧空気を供給し吸着した窒素リッチガスを減圧により脱着・排気する。なお、本実施形態では、加圧・真空併用型の圧縮機203を用いているが、本開示の酸素濃縮装置を構成する定置ユニットは、加圧空気を供給する圧縮機とは別に、吸気部である真空ポンプを装置内に別途有する構成であってもよい。
【0033】
圧縮機203の作動や、後述する種々の電磁弁等の作動は、装置内に配設された制御部240により行われる。制御部240は、定置ユニットM2を作動させるためのプログラムが記憶されている記憶部240a、及び電磁弁等の作動信号などを発信する演算部240bを備えている。制御部240には、定置ユニットM2(第2形態S2の酸素濃縮装置M)の作動状態等を表示する表示部242が接続されている。
【0034】
定置ユニットM2のケーシング209内には、圧縮機203、及び排気マフラー214を収容する圧縮機ボックス210、圧縮機203を冷却するための冷却ファン212、給気フィルタ216、給気消音ボックス213を収容するファンボックス230が設けられる。圧縮機ボックス210、給気消音ボックス213、及びファンボックス230は、定置ユニットM2における消音機構を構成する。換言すると、圧縮機ボックス210、給気消音ボックス213、及びファンボックス230は、ケーシング209内に配設された各機器よりで発生する騒音を抑制させることができる。本開示の酸素濃縮装置Mは、さらに、定置ユニットM2が有する消音機構によって、携帯ユニットM1内の各機器から発生する騒音を抑制させる。なお、本開示の酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1の小型軽量化を図る一方で、定置ユニットM2については、携帯ユニットM1側の騒音抑制を担うことを考慮して、圧縮機ボックス210、給気消音ボックス213、及びファンボックス230の能力増強を図っている。ここでいう「能力増強」とは、例えば、各ボックスを構成する板状部材の厚みを厚くして重厚化したり、あるいは、ボックス内に配置する吸音材の数量を増量したりして、消音機構による消音効果の増強を図ること等が含まれる。
【0035】
ケーシング209内には、圧縮機203から第1吸着筒201及び第2吸着筒202への加圧空気の流れ、及び、第1吸着筒201及び第2吸着筒202から圧縮機203への排気ガスの流れを制御する制御弁211が設けられる。本実施形態における制御弁211は、3ポート弁である電磁弁211Aと、同じく3ポート弁である電磁弁211Bとで構成されている。
【0036】
ケーシング209に設けた給気口280には、装置内に導入される外部の空気中に含まれる塵埃等を捕集するための防塵フィルタ215が設けられている。防塵フィルタ215を通過してケーシング209内に導入された外部からの空気は、ファンボックス230の開口部231を通って給気フィルタ216に吸い込まれ、給気消音ボックス213を通過して圧縮機203に吸引される。給気消音ボックス213は、給気フィルタ216から圧縮機203に至る空気の流路に配設されており、圧縮機203の給気・圧縮に起因する騒音を抑制させる。
【0037】
圧縮機203により圧縮されて加圧された空気(加圧空気)は、電磁弁211A及び電磁弁211Bを経由して第1吸着筒201及び第2吸着筒202に供給される。また、第1吸着筒201及び第2吸着筒202からの排気ガスは、電磁弁211A及び電磁弁211Bを経由して圧縮機203により減圧・吸引され、排気マフラー214から圧縮機ボックス210の開口部217を経由して排気口270から外部に排出される。運転により発生する圧縮機203の熱は、冷却ファン212によって、ケーシング209の給気口280及びファンボックス230の開口部231を経由して当該ファンボックス230内に吸引され、且つ、冷却ファン212によって圧縮機203に吹き付けられる空気により冷却される。
【0038】
定置ユニットM2は、酸素入口251をさらに有する。酸素入口251は、第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1で生成した高濃度酸素を定置ユニットM2に取り込むための入口である。定置ユニットM2は、連絡管271をさらに有する。連絡管271は、一端側が酸素タンク205に接続されると共に、他端側が酸素入口251に接続される。酸素入口251(連結管271の他端側の端部)には、接続部160を構成する第2継手162が設けられる。第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、第2継手162は、先に説明した携帯ユニットM1の第1継手161に接続される。このため、第2形態S2の酸素濃縮装置Mでは、第3酸素出口151の第1継手161、酸素入口251の第2継手162、及び連絡管271を介して、携帯ユニットM1で生成した高濃度酸素が、酸素タンク205に送られる。
【0039】
(接続部について)
図6は、接続部を説明する図である。図3図6に示すように、酸素濃縮装置Mは、接続部160を備える。接続部160は、第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1と定置ユニットM2とを接続するための部位である。接続部160は、携帯ユニットM1の第3酸素出口151に設けられる第1継手161、及び定置ユニットM2の酸素入口251に設けられる第2継手162により構成される。さらに第1継手161は、切替弁163を備える。
【0040】
図6に示すように、接続部160は、第1継手161が第1管部161aを備え、第2継手162が第2管部162aを備える。第1管部161aは、第2管部162aを同軸状に挿入可能な管状の部位である。第1継手161は、第1管部161aに第2管部162aが挿入された状態において、第1管部161a及び第2管部162aの間の隙間を封止するシール部161bをさらに備える。なお、本実施形態の接続部160は、第2管部162aが、第1管部161aを同軸状に挿入可能に構成されていてもよく、第2継手162側に第1管部161a及び第2管部162aの間の隙間を封止するシール部が設けられていてもよい。
【0041】
切替弁163は、弁体163a及びばね部材163bを備える。切替弁163は、第1継手161と第2継手162とが接続された場合に「開」状態(図6下図参照)となり、第1継手161と第2継手162との接続が解除された場合に「閉」状態(図6上図参照)となる弁体であり、第1継手161に内蔵されている。第1継手161は、携帯ユニットM1及び定置ユニットM2が第2形態S2となった場合に、自然に第2継手162と接続される位置に配置される。第1形態S1の酸素濃縮装置M(携帯ユニットM1単体)は、切替弁163によって、高濃度酸素の供給先が第1酸素出口150側のみに切り替えられる。第2形態S2の酸素濃縮装置Mは、切替弁163によって、高濃度酸素の供給先が、第1酸素出口150側及び第3酸素出口151側の両方となるように切り替えられる。
【0042】
第2形態S2の酸素濃縮装置Mでは、切替弁163が「開」状態となると共に、携帯ユニットM1の同調弁122が「閉」状態となる。このため、第2形態S2の酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1で生成された高濃度酸素が、接続部160及び連絡管271を介して、定置ユニットM2側に供給され、最終的に定置ユニットM2の第2酸素出口250に送られる。第1形態S1の酸素濃縮装置M(即ち、携帯ユニットM1)では、切替弁163が「閉」状態となり、同調弁122はユーザの呼吸を検知した時に「開」状態になる。このため、第1形態S1の酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1で生成された高濃度酸素は、同調弁122を介して、第1酸素出口150に送られる。その結果、切替弁163は、第1形態S1において、高濃度酸素の供給先を第1酸素出口150のみに切り替え、第2形態S2において、高濃度酸素の供給先を第3酸素出口151のみに切り替える。
【0043】
(排気連通経路及び給気連通経路について)
図3及び図5に示すように、定置ユニットM2は、管路(ダクト)により構成される排気連通経路301及び給気連通経路302をさらに備える。排気連通経路301は、第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1の排気口170を定置ユニットM2の排気消音機構(排気マフラー214)に連通させる。給気連通経路302は、第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、携帯ユニットM1の給気口180を定置ユニットM2の給気消音機構(給気消音ボックス213)に連通させる。
【0044】
排気連通経路301は、一端部が排気マフラー214の上流側に接続されると共に、他端部において排気カバー310が設けられる。排気カバー310は、携帯ユニットM1の排気口170を覆うことが可能な大きさを有する。排気連通経路301は、その途中に排気の逆流を防止するための逆止弁313が設けられる。定置ユニットM2は、排気口170が形成されたケーシング109と排気カバー310との間の隙間を封止する排気シール部311をさらに備える。第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、排気カバー310は、排気口170を覆うことが可能な位置に配置されると共に、排気カバー310と排気口170との間の隙間が排気シール部311によって封止される。
【0045】
給気連通経路302は、一端部が給気消音ボックス213に接続されると共に、他端部において給気カバー320が設けられる。給気カバー320は、携帯ユニットM1の給気口180を覆うことが可能な大きさを有する。給気連通経路302は、その途中に給気の逆流を防止するための逆止弁323が設けられる。定置ユニットM2は、給気口180が形成されたケーシング109と給気カバー320との間の隙間を封止する給気シール部321をさらに備える。第2形態S2の酸素濃縮装置Mにおいて、給気カバー320は、給気口180を覆うことが可能な位置に配置されると共に、給気カバー320と給気口180との間の隙間が給気シール部321によって封止される。
【0046】
本開示の酸素濃縮装置Mは、排気連通経路301を備えることで、携帯ユニットM1から放出される排気を、定置ユニットM2を介して排気することができる。このため、本開示の酸素濃縮装置Mでは、第2形態で使用する場合に、携帯ユニットM1内で発生した騒音のうちの排気経路を通じて伝播する騒音を、定置ユニットM2の消音機構(排気マフラー214)を利用して抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合における、酸素濃縮装置Mとして発生騒音を抑制することができる。
【0047】
本開示の酸素濃縮装置Mは、携帯ユニットM1の排気口170を覆うことが可能な排気カバー310が有していることで、排気連通経路301と排気口170との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。さらに、本開示の酸素濃縮装置Mは、排気口170と排気カバー310との間の隙間を封止する排気シール部311を有していることで、携帯ユニットM1と定置ユニットM2との間の隙間からの音漏れをより確実に抑制することができる。
【0048】
本開示の酸素濃縮装置Mは、給気連通経路302を備えることで、定置ユニットM2を介して、携帯ユニットM1に給気することができる。このため、本開示の酸素濃縮装置Mでは、第2形態で使用する場合に、携帯ユニットM1内で発生した騒音のうちの給気経路を通じて伝播する騒音を、定置ユニットM2の消音機構(圧縮機ボックス210、ファンボックス230、及び給気消音ボックス213)を利用して抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合における、酸素濃縮装置Mとして発生騒音を抑制することができる。
【0049】
本開示の酸素濃縮装置Mは、携帯ユニットM1の給気口180を覆うことが可能な給気カバー320が有していることで、給気連通経路302と給気口180との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。さらに、本開示の酸素濃縮装置Mは、給気口180と給気カバー320との間の隙間を封止する給気シール部321を有していることで、携帯ユニットM1と定置ユニットM2との間の隙間からの音漏れをより確実に抑制することができる。
【0050】
第1吸着筒201及び第2吸着筒202の内部には、圧縮機203から供給される加圧空気中の窒素を選択的ないし優先的に吸着する吸着剤が収容されている。吸着剤としては、例えばゼオライト等を用いることができる。第1吸着筒201及び第2吸着筒202を用いた酸素濃縮のプロセスの詳細については後述する。
【0051】
第1吸着筒201及び第2吸着筒202の下流側の流路(高濃度酸素の出口側の流路。図3では第1吸着筒201及び第2吸着筒202の下部から第2酸素出口250に至る流路)には、高濃度酸素等の流体の流量又は流れを制御するための種々の弁、すなわちパージ弁218、逆止弁219、220、減圧弁221が設けられている。減圧弁221の下流側には、高濃度酸素の流量を調整するための流量調整部222が設けられている。流量調整部222として、ガス流量を調節することができる流量比例弁を用いることができる。酸素タンク205は、減圧弁221の上流側であり、且つ、逆止弁219、220の下流側に設けられている。また、逆止弁219、220と酸素タンク205との間のガス流路には、圧力異常等を検出するための圧力センサ223が設けられている。
【0052】
本実施形態に係る定置ユニットM2は、一方の吸着筒に圧縮機203で圧縮された空気が供給されている間に、他方の吸着筒を当該圧縮機203によって吸引することで減圧するVPSA(Vacuum Pressure Swing Adsorption System)タイプの酸素濃縮装置である。しかし、本開示の酸素濃縮装置を構成する定置ユニットはこれに限定されず、一方の吸着筒に圧縮機で圧縮された空気が供給されている間に、他方の吸着筒が大気開放されることで減圧されるPSA(Pressure Swing Adsorption System)タイプの酸素濃縮装置とすることもできる。
【0053】
電磁弁211A及び電磁弁211Bは、いずれも3ポート弁であり、圧縮機203から吐出された加圧空気を第1吸着筒201(第2吸着筒202)に供給する加圧状態と、吸引することで当該第1吸着筒201(第2吸着筒202)内の排気ガスを外部に排出する減圧状態とを切り替える。一方の吸着筒が加圧状態にあるときは、他方の吸着筒は減圧状態にある。
【0054】
逆止弁219は第1吸着筒201の下流側のガス流路に配設され、逆止弁220は第2吸着筒202の下流側のガス流路に配設されている。両逆止弁219、220は、第1吸着筒201及び第2吸着筒202から排出される高濃度酸素が下流側に向かってだけ流れるように構成されている。パージ弁218は、第1吸着筒201と逆止弁219との間のガス流路と、第2吸着筒202と逆止弁220との間のガス流路とを接続するガス流路に配設されている。
【0055】
逆止弁219からの高濃度酸素と、逆止弁220からの高濃度酸素とが交互に酸素タンク205に供給され、当該酸素タンク205に貯留される。酸素タンク205の下流側には、当該酸素タンク205からの高濃度酸素を減圧する減圧弁221と、高濃度酸素の流量を調製する流量調整部222が配設されている。流量調整部222で流量調整された高濃度酸素は、酸素濃度異常を検出するための酸素センサ224及び高濃度酸素から異物を除去するためのバクテリアフィルタ225を経由して、ケーシング209の第2酸素出口250に送られる。定置ユニットM2(第2形態S2の酸素濃縮装置M)において、高濃度酸素は、第2酸素出口250に第2カニューラ継手226を設けると共に、第2カニューラ継手226に接続されたチューブTB及びカニューラC(図5参照)を介して患者に供給される。
【0056】
[酸素濃縮プロセス]
図7は、吸着筒の1サイクルの圧力変化と酸素濃縮装置の制御弁の切替状態との関係を説明する図である。ここで、酸素濃縮装置Mにおける高濃度酸素の生成プロセスを説明する。ここでは、携帯ユニットM1における高濃度酸素の生成プロセスを説明するが、以下の高濃度酸素の生成プロセスの説明において、携帯ユニットM1を定置ユニットM2、電磁弁111A,111Bを電磁弁211A,211B、パージ弁118をパージ弁218、第1吸着筒101及び第2吸着筒102を第1吸着筒201及び第2吸着筒202、とそれぞれ読み替えた場合、以下の説明は、定置ユニットM2における高濃度酸素の生成プロセスの説明となる。
【0057】
図7において、上側の図は酸素濃縮プロセスに関係する電磁弁111A、電磁弁111B、及びパージ弁118(図4参照)の各ステップにおける開閉状態を示しており、下側の図は第1吸着筒101及び第2吸着筒102内(図4参照)の圧力変化を示している。下側の図において、太い実線は第1吸着筒101の内部の圧力変化を示しており、細い実線は第2吸着筒102の内部の圧力変化を示している。図7に示される例では、第1吸着筒101及び第2吸着筒102の順に吸着筒内の加圧工程が行われる。また、図7において、「T」で示される期間で第1吸着筒101の1サイクルの処理が行われる。この1サイクルの処理には、上側の図に示される「T1」から「T6」までの6つのステップが含まれる。
【0058】
図4において、電磁弁111A、電磁弁111B、及びパージ弁118を示す各ブロックに付された数字は、前述したように各弁におけるポートの番号を示している。電磁弁111A及び電磁弁111Bは3ポート弁であるので、1から3までの3つの数字が付されており、パージ弁118は2ポート弁であるので、1から2までの2つの数字が付されている。図7の上側の図において、例えば電磁弁111Aの「1→2」が「開」であるとは、電磁弁111Aにおいて「1」で示されるポートから「2」で示されるポートまでが連通状態にあることを示している。このとき、当該電磁弁111Aにおいて「2」で示されるポートから「3」で示されるポートまでは非連通の状態である。
【0059】
図7の下側の図において、横軸は時間経過を示しており、同図において、左側から右側に時間が経過している。ステップT1では、パージ弁118が「開」の状態であり、第2吸着筒102から第1吸着筒101に当該第2吸着筒102内の高濃度酸素ガスが供給される。このステップT1では、電磁弁111A及び電磁弁111Bのポート「2」からポート「3」はいずれも「閉」の状態であるので、第1吸着筒101及び第2吸着筒102内が吸引されることはない。第1吸着筒101及び第2吸着筒102の各吸引は、弁の開閉を制御することでタイミングが互いにずれるように行われる。
【0060】
つづくステップT2では、電磁弁111Aのポート「1」からポート「2」、及び電磁弁111Bのポート「2」からポート「3」が「開」の状態であり、圧縮機103による第1吸着筒101の加圧及び第2吸着筒102の減圧が行われる。このステップT2では、ステップT1で「開」の状態であったパージ弁118は「閉」の状態である。加圧空気が供給されて加圧状態になった第1吸着筒101内では、加圧空気に含まれる窒素が当該第1吸着筒101内に収容されている吸着剤に吸着される。これにより、第1吸着筒101内のガスは、酸素濃度が通常の空気中の酸素濃度よりも高い高濃度酸素となる。
【0061】
つづくステップT3では、パージ弁118が「開」の状態であり、第1吸着筒101内の高濃度酸素がパージ弁118を経由して第2吸着筒102内に供給される。
【0062】
つづくステップT4では、電磁弁111Aのポート「2」からポート「3」、及び電磁弁111Bのポート「2」からポート「3」が「閉」の状態である。このステップT4では、ステップT3での第1吸着筒101から第2吸着筒102への高濃度酸素の供給が継続される。
【0063】
つづくステップT5では、電磁弁111Aのポート「2」からポート「3」、及び電磁弁111Bのポート「1」からポート「2」が「開」の状態であり、圧縮機103による第2吸着筒102の加圧及び第1吸着筒101の減圧が行われる。このステップT4では、ステップT3で「開」の状態であったパージ弁118は「閉」の状態である。加圧空気が供給されて加圧状態になった第2吸着筒102内では、加圧空気に含まれる窒素が当該第2吸着筒102内に収容されている吸着剤に吸着される。これにより、第2吸着筒102内のガスは、酸素濃度が通常の空気中の酸素濃度よりも高い高濃度酸素となる。
【0064】
つづくステップT6では、パージ弁118が「開」の状態であり、第2吸着筒102内の高濃度酸素がパージ弁118を経由して第1吸着筒101内に供給される。以後、前述したステップT1~T6が繰り返される。携帯ユニットM1は、第1吸着筒101及び第2吸着筒102においてかかるステップT1~T6が繰り返されることで高濃度酸素を生成し、生成した高濃度酸素を酸素タンク105に貯留する。
【0065】
(位置決めガイド機構について)
図8は、携帯ユニットの側面図である。図9は、定置ユニットの側方視断面図である。図10は、定置ユニットの後方視断面図である。図8図10に示すように、酸素濃縮装置Mは、位置決めガイド機構400をさらに備える。位置決めガイド機構400は、携帯ユニットM1側の第1位置決め部410、及び定置ユニットM2側の第2位置決め部420により構成される。
【0066】
第2形態S2の酸素濃縮装置Mでは、定置ユニットM2に形成された収容部290に携帯ユニットM1が収容される。収容部290は、携帯ユニットM1を収容可能な凹状の空間を有する。収容部290は、ケーシング209の一部であって前側に位置する前壁292、後側に位置する後壁293、左右両側に位置する一対の側壁294、及び下側に位置する下壁295によって囲まれた空間であり、上側に開口部291を有する。酸素濃縮装置Mは、開口部291から収容部290の所定位置まで携帯ユニットM1が挿入されたときに、携帯ユニットM1側の第1継手161と定置ユニットM2側の第2継手162とが接続されて、第2形態S2となる(換言すると、接続部160によって、携帯ユニットM1及び定置ユニットM2が接続される)。
【0067】
第1位置決め部410は、定置ユニットM2に対する携帯ユニットM1の挿入方向(本開示では上下方向)に沿って形成された溝部である。第1位置決め部410は、それぞれ平面状である前側部411、後側部412、及び底部413によって構成される。後側部412及び底部413は、ケーシング109の上下方向に対して平行に形成されている。第1位置決め部410における溝幅がケーシング109の上側から下側に向かうにつれて大きくなるように、前側部411は、ケーシング109の上下方向に対して傾斜されている。このため、第1位置決め部410は、上端部410aにおける溝幅W1aが、下端部410bにおける溝幅W1bに比べて小さい。
【0068】
第2位置決め部420は、定置ユニットM2に対する携帯ユニットM1の挿入方向(本開示では上下方向)に沿って形成された凸部である。第2位置決め部420は、それぞれ平面状である前側部421、後側部422、及び頭頂部423によって構成される。後側部422及び頭頂部423は、ケーシング209の上下方向に対して平行に形成されている。第2位置決め部420における凸部の幅がケーシング209の上側から下側に向かうにつれて大きくなるように、前側部421は、ケーシング209の上下方向に対して傾斜されている。このため、第2位置決め部420は、上端部420aにおける凸部の幅W2aが、下端部420bにおける凸部の幅W2bに比べて小さい。
【0069】
本開示の酸素濃縮装置Mにおいて、溝部である第1位置決め部410の内形、及び凸部である第2位置決め部420の外形は略一致しており、第2位置決め部420の外形を第1位置決め部410の内形に比べて若干小さくしている。このため、本開示の酸素濃縮装置Mにおいて、第2位置決め部420は、第1位置決め部410に対して挿入可能に構成される。
【0070】
(位置決めガイド機構による位置決めの状況について)
図11は、排気口及び給気口に対する排気カバー及び給気カバーの配置状況の説明図である。定置ユニットM2の収容部290に携帯ユニットM1を収容する場合、まず初めに、第1位置決め部410の下端部410bを、第2位置決め部420の上端部420aに位置決めする。本開示の酸素濃縮装置Mでは、下端部410bの幅W1bと上端部の幅W2aの間に比較的大きな差異を設けている。このため、本開示の酸素濃縮装置Mでは、最初の位置決めの段階において、厳密な位置決めを要することなく、携帯ユニットM1を収容部290に挿し込むことができる。その後、収容部290に携帯ユニットM1を挿入していく際、第1位置決め部410は、第2位置決め部420によりガイドされる。このため、携帯ユニットM1は、収容部290において第2位置決め部420に沿って下方へ変位する。
【0071】
次に、収容部290に挿し込まれた携帯ユニットM1をさらに下方へ変位させていくと、下端部410bの幅W1bと第2位置決め部420の凸部の幅との差、及び、上端部420aの幅W2aと第1位置決め部410の溝幅との差、が徐々に小さくなっていく。このとき、携帯ユニットM1は、位置決めガイド機構400によって、収容部290における前後方向の配置について、より厳密に位置決めがされていく。
【0072】
携帯ユニットM1は、最終的に、その下端が収容部290の下壁295に当接する所定位置まで挿入される。酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1が収容部290の所定位置に収容されたとき、前側部411と前側部421とが全体的に密着すると共に、後側部412と後側部422とが全体的に密着する。このような状態の酸素濃縮装置Mは、前後方向について、第1位置決め部410及び第2位置決め部420の間の隙間がほぼ無くなっている。このような状態の携帯ユニットM1は、位置決めガイド機構400によって前後方向への変位が規制され、これにより、前後方向について定置ユニットM2に対して位置決めされる。
【0073】
図11に示すように、携帯ユニットM1が収容部290の所定位置に収容された場合、排気口170が排気カバー310に対して位置決めされる。なお、ここでは、排気口170及び排気カバー310の位置決めの状況を例示するが、給気口180に対する給気カバー320の位置決めも同様であり、下記説明において、排気口170を給気口180、排気カバー310を給気カバー320、排気シール部311を給気シール部321、とそれぞれ読み替えることで、給気口180及び給気カバー320の位置決めの状況についての説明となる。なお、図11では、給気口180、給気カバー320、及び給気シール部321については各符号にカッコを付して簡易的に図示しており、排気口170、排気カバー310、及び排気シール部311との対応関係を示している。
【0074】
収容部290の所定位置に収容される際、携帯ユニットM1は、前側部411・421の傾斜に沿って変位される。この場合における携帯ユニットM1の変位には、前方への変位が含まれる。このため、携帯ユニットM1は、位置決めガイド機構400によって定置ユニットM2に対して位置決めされる際、前壁292に対して押し付けられる。
【0075】
このように、本開示の酸素濃縮装置Mでは、携帯ユニットM1を収容部290の所定位置に収容する際に、携帯ユニットM1(ケーシング109)が前壁292に対して押圧される。このため、本開示の酸素濃縮装置Mでは、排気口170と排気カバー310との間の隙間をより小さくすることができるとともに、ケーシング109に対する排気シール部311の密着度を高めることができる。このため、本開示の酸素濃縮装置Mでは、排気口170と排気カバー310との間の隙間からの音漏れを確実に抑制することができる。
【0076】
(変形例について)
図12は、酸素濃縮装置の変形例の説明図である。図12には、本開示の酸素濃縮装置Mの変形例を示している。先述した酸素濃縮装置M(図3参照)では、携帯ユニットM1のケーシング109の前側に排気口170及び給気口180が形成されており、定置ユニットM2の収容部290の前壁292に排気口170をカバーする排気カバー310、及び給気口180をカバーする給気カバー320が形成される場合を例示したが、本開示の酸素濃縮装置における携帯ユニット側の排気口及び給気口の配置はこれに限定されない。
【0077】
例えば、図12に示すように、携帯ユニットM1の排気口170及び給気口180は、ケーシング109に下側に形成されていてもよい。この場合、定置ユニットM2の収容部290の下壁295に排気カバー310及び給気カバー320を形成する。なお、図12では、給気口180、給気カバー320、及び給気シール部321については各符号にカッコを付して簡易的に図示しており、排気口170、排気カバー310、及び排気シール部311との対応関係を示している。
【0078】
[実施形態の作用効果]
(1)上記実施形態の酸素濃縮装置Mは、携帯ユニットM1と定置ユニットM2とを有し、携帯ユニットM1のみで使用する第1形態S1と、携帯ユニットM1及び定置ユニットM2を合体させた状態で使用する第2形態S2と、で使用可能である。酸素濃縮装置Mは、第2形態で使用する場合において、携帯ユニットM1の排気口170を定置ユニットM2の圧縮機ボックス210を含む排気経路に接続する排気連通経路301、第2形態で使用する場合において、携帯ユニットM1の給気口180を定置ユニットM2のファンボックス230を含む給気経路に接続する給気連通経路302、を有する。
【0079】
この酸素濃縮装置Mによれば、携帯ユニットM1からの排気、携帯ユニットM1への給気、の少なくとも何れか一方を、定置ユニットM2を介して行うことで、携帯ユニットM1の消音機構を簡素化しても、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置Mの騒音を抑制することができる。
【0080】
(2)上記実施形態の酸素濃縮装置Mにおいて、排気連通経路301は、定置ユニットM2側に設けられ携帯ユニットM1の排気口170を覆う排気カバー310と、排気カバー310と前記排気口との間の隙間を封止する排気シール部311とを含んでいる。
【0081】
この場合、排気口170と排気連通経路301との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置Mの騒音を抑制することができる。
【0082】
(3)上記実施形態の酸素濃縮装置Mにおいて、給気連通経路302は、定置ユニットM2側に設けられ携帯ユニットM1の給気口180を覆う給気カバー320と、給気カバー320と給気口180との間の隙間を封止する給気シール部321とを含んでいる。
【0083】
この場合、給気口180と給気連通経路302との間の隙間からの音漏れを抑制することができる。これにより、第2形態で使用する場合の酸素濃縮装置Mの騒音を抑制することができる。
【0084】
(4)上記実施形態の酸素濃縮装置Mは、第2形態で使用する場合において、携帯ユニットM1を定置ユニットM2に対して組み付けるための位置決めガイド機構400を有する。
【0085】
このような酸素濃縮装置Mは、排気連通経路301を有する場合は、排気連通経路301と排気口170とを位置決めすることができ、給気連通経路302を有する場合は、給気連通経路302と給気口180とを位置決めすることができる。これにより、酸素濃縮装置Mを第2形態としたときに、排気連通経路301を有する場合は、排気連通経路301と排気口170とを接続することができ、給気連通経路302を有する場合は、給気連通経路302と給気口180とを接続することができる。
【0086】
なお、本開示の酸素濃縮装置は、吸着材としてゼオライト等の窒素吸着材を使用しているが、本開示は、吸着材として酸素吸着材を使用した酸素濃縮装置に対して適用しても良い。
【符号の説明】
【0087】
M :酸素濃縮装置
M1 :携帯ユニット
M2 :定置ユニット
S1 :第1形態
S2 :第2形態
170 :排気口
180 :給気口
210 :圧縮機ボックス
230 :ファンボックス
301 :排気連通経路(第1連通経路)
302 :給気連通経路(第2連通経路)
310 :排気カバー
311 :排気シール部
320 :給気カバー
321 :給気シール部
400 :位置決めガイド機構
図1
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図5
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図9
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図12