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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078883
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】潤滑油タンク及び回転機械システム
(51)【国際特許分類】
   F16N 31/00 20060101AFI20240604BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20240604BHJP
   B65D 25/02 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
F16N31/00 C
F16N31/00 B
F16N7/38 D
F16N31/00 D
B65D25/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191477
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】310010564
【氏名又は名称】三菱重工コンプレッサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森光 勇太
(72)【発明者】
【氏名】窪田 倫生
【テーマコード(参考)】
3E062
【Fターム(参考)】
3E062AA06
3E062AB01
3E062AB20
3E062AC03
3E062BA20
3E062BB06
3E062BB09
3E062EA01
3E062EB08
3E062EC07
3E062KA09
3E062KC05
(57)【要約】
【課題】複数の導入部を有しつつ、内部構造の簡素化を図る。
【解決手段】潤滑油タンクは、第一方向に延びるタンクケーシングと、前記第一方向に互いに離れて配置されている複数の導入部と、前記タンクケーシング内で複数の前記導入部に対して鉛直方向の下方に配置され、複数の前記導入部から導入された前記潤滑油を受けて前記第一方向における前記タンクケーシングの第二端部に向かって流通させる受け部と、前記受け部を流通してきた前記潤滑油内の異物を捕集可能な一つのストレーナと、を備える。前記受け部は、前記第一方向において前記第二端部に近づくにしたがって、前記鉛直方向の下方に向かうように傾斜している。前記ストレーナは、前記第一方向において、複数の前記導入部に対して前記第二端部に近い位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延び、内部に潤滑油を貯蔵可能なタンクケーシングと、
前記タンクケーシングの内部に前記潤滑油を導入可能とされ、前記第一方向に互いに離れて配置されている複数の導入部と、
前記第一方向における前記タンクケーシングの第一端部に配置され、前記タンクケーシングの内部に貯蔵された前記潤滑油を導出可能な導出部と、
前記タンクケーシング内で複数の前記導入部に対して鉛直方向の下方に配置され、複数の前記導入部から導入された前記潤滑油を受けて前記第一方向における前記タンクケーシングの第二端部に向かって流通させる受け部と、
前記受け部を流通してきた前記潤滑油内の異物を捕集可能な一つのストレーナと、を備え、
前記受け部は、前記第一方向において前記第二端部に近づくにしたがって、前記鉛直方向の下方に向かうように傾斜し、
前記ストレーナは、前記第一方向において、複数の前記導入部に対して前記第二端部に近い位置に配置されている潤滑油タンク。
【請求項2】
前記受け部は、前記タンクケーシングにおいて前記潤滑油が貯蔵された貯蔵空間に対して区画された流通空間を形成し、
前記受け部は、複数の前記導入部に対して前記鉛直方向の下方で前記第一方向に延びて前記潤滑油を受ける受け面と、前記受け面から前記鉛直方向の上方に延びる隔壁と、前記隔壁を貫通して前記貯蔵空間と前記流通空間とを連通する連通孔とを有している請求項1に記載の潤滑油タンク。
【請求項3】
前記受け面は、前記タンクケーシング内に貯蔵された前記潤滑油の油面に対して前記鉛直方向の上方に配置されている請求項2に記載の潤滑油タンク。
【請求項4】
前記導入部は、前記タンクケーシングを貫通するように配置された主配管と、前記タンクケーシングの内部で前記主配管と接続され、前記鉛直方向の下方及び前記第一方向において前記第二端部を向くように開口した入口配管とを有する請求項1又は2に記載の潤滑油タンク。
【請求項5】
前記タンクケーシングは、
内部に貯蔵された前記潤滑油の油面に対して前記鉛直方向の下方で、内部と外部とを連通する開口部が形成されたタンクケーシング本体と、
前記タンクケーシング本体に対して着脱可能とされ、前記開口部を閉塞する蓋部とを有する請求項1又は2に記載の潤滑油タンク。
【請求項6】
前記開口部及び前記蓋部は、前記第一方向に離れて複数配置されている請求項5に記載の潤滑油タンク。
【請求項7】
回転機械と、
前記回転機械に供給される潤滑油を貯留する請求項1又は2に記載の潤滑油タンクと、を備える回転機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油タンク及び回転機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、タービン、及びモータ等の回転機械のロータは、軸受を介して回転自在に支持されている。軸受には、潤滑油タンクからポンプ等で送り込まれた潤滑油が供給されている。軸受を潤滑した潤滑油は軸受から排出され、潤滑油タンクに回収された後、ポンプ等で軸受に再度供給される。このような潤滑油タンクには様々な形態が適用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、給油装置のオイルタンクにおいて、傾斜したガイド板の途中に複数の仕切板を配置した構造が記載されている。特許文献1に記載された構造では、ガイド板を流れる潤滑油が複数の仕切板を通過することで、油中の気泡が取り除かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-44446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、潤滑油タンクでは、複数の軸受から潤滑油が供給される場合がある。その場合、一つの潤滑油タンクに対して、潤滑油の導入部として複数の配管が接続される。複数の配管が潤滑油タンクの内部まで配置されることで、潤滑油タンクの内部の構造の複雑化や潤滑油タンク全体としての重量の増加を招いてしまう。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、複数の導入部を有しつつ、内部構造の簡素化を図ることが可能な潤滑油タンク及び回転機械システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示にかかる潤滑油タンクは、第一方向に延び、内部に潤滑油を貯蔵可能なタンクケーシングと、前記タンクケーシングの内部に前記潤滑油を導入可能とされ、前記第一方向に互いに離れて配置されている複数の導入部と、前記第一方向における前記タンクケーシングの第一端部に配置され、前記タンクケーシングの内部に貯蔵された前記潤滑油を導出可能な導出部と、前記タンクケーシング内で複数の前記導入部に対して鉛直方向の下方に配置され、複数の前記導入部から導入された前記潤滑油を受けて前記第一方向における前記タンクケーシングの第二端部に向かって流通させる受け部と、前記受け部を流通してきた前記潤滑油内の異物を捕集可能な一つのストレーナと、を備え、前記受け部は、前記第一方向において前記第二端部に近づくにしたがって、前記鉛直方向の下方に向かうように傾斜し、前記ストレーナは、前記第一方向において、複数の前記導入部に対して前記第二端部に近い位置に配置されている。
【0008】
また、本開示にかかる回転機械システムは、回転機械と、前記回転機械に供給される潤滑油を貯留する上記潤滑油タンクとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の潤滑油タンク及び回転機械システムによれば、複数の導入部を有しつつ、内部構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る圧縮機システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る潤滑油タンクの構成を示す模式断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る潤滑油タンクの構成を示す図2におけるIII-III断面での模式断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る潤滑油タンクの構成を示す図3におけるIV-IV断面での模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示による潤滑油タンク及び回転機械システムを実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
(圧縮機システムの構成)
図1は、本発明の実施形態に係る圧縮機システム(回転機械システム)100の概略構成を説明するための模式図である。図1に示すように、本実施形態の圧縮機システム(回転機械システム)100は、回転駆動機110と、圧縮機120と、潤滑油供給装置2と、を備えている。回転駆動機110及び圧縮機120は、本実施形態の回転機械システムにおける回転機械である。
【0013】
(回転駆動機)
回転駆動機110は、圧縮機120に連結されている。回転駆動機110は、圧縮機120を駆動させる。回転駆動機110は、回転駆動される出力軸111を有する。本実施形態の回転駆動機110は、電動モータである。回転駆動機110は、常に一定速で出力軸111を軸線O回りに回転駆動する。出力軸111は、軸線Oを中心とする円柱状をなしている。回転駆動機110は、出力軸111を軸線O回りに回転自在に支持する一対の駆動機軸受(軸受)112を有する。
【0014】
なお、本実施形態では、鉛直方向Dvと直交する方向であって、軸線Oの延びる方向を軸方向Daと称する。軸方向Daは、水平方向の一つである。また、軸方向Da及び鉛直方向Dvと直交する方向を幅方向Dwと称する。つまり、幅方向Dwは、水平方向の一つであって、軸方向Daとは異なる方向である。
【0015】
(圧縮機)
圧縮機120は、回転駆動機110に対して軸方向Daに間隔を空けて並んで配置されている。圧縮機120は、出力軸111の回転が伝達される。本実施形態の圧縮機120は、例えば、多段遠心圧縮機である。圧縮機120は、出力軸111と連結されたロータ121を有している。ロータ121は、軸線O回りに回転される。ロータ121は、軸線Oを中心とする円柱状をなしている。圧縮機120は、ロータ121を軸線O回りに回転自在に支持する一対の圧縮機軸受(軸受)122を有している。
【0016】
(潤滑油供給装置)
潤滑油供給装置2は、一対の駆動機軸受112及び一対の圧縮機軸受122で使用される潤滑油を回収するともに再度供給して循環させている。本実施形態の潤滑油供給装置2は、潤滑油タンク20と、ヒータ21と、ポンプ22と、オイルクーラ23と、オイルフィルタ24と、を備えている。ヒータ21、ポンプ22、オイルクーラ23、及びオイルフィルタ24等の潤滑油供給装置2の一部を構成する機器は、本実施形態では、後述するタンクケーシング3上に全て固定されている。
【0017】
潤滑油タンク20は、一対の駆動機軸受112及び一対の圧縮機軸受122に供給される潤滑油を貯留する。ヒータ21は、潤滑油タンク20に貯蔵された潤滑油を加熱する。ポンプ22は、潤滑油タンク20に貯留された潤滑油を、駆動機軸受112及び圧縮機軸受122に向かって圧送している。オイルクーラ23は、ポンプ22から圧送されて駆動機軸受112及び圧縮機軸受122に供給される前の潤滑油を冷却する。オイルフィルタ24は、オイルクーラ23で冷却された潤滑油に紛れたゴミ等の異物を除去している。オイルフィルタ24を通過した潤滑油は、駆動機軸受112及び圧縮機軸受122に供給される。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る潤滑油タンク20の構成を説明するための模式断面図である。図2に示すように、潤滑油タンク20は、タンクケーシング3と、導入部4と、導出部5と、受け部6と、ストレーナ68と、バッフルプレート69と、を備える。
【0019】
(タンクケーシング)
タンクケーシング3は、内部に潤滑油を貯蔵可能とされている。タンクケーシング3は、第一方向に延びる筒状に形成されている。図2に示すように、本実施形態のタンクケーシング3は、タンクケーシング本体31と、蓋部39とを有している。また、第一方向とは、水平方向の一つであって、タンクケーシング本体31における長手方向である。本実施形態の第一方向は、軸方向Daである。
【0020】
タンクケーシング本体31は、内部が中空であって、軸方向Daに延びる有底角筒状をなしている。タンクケーシング本体31は、軸方向Daの第一端部31aから第二端部31bまで延びている。タンクケーシング本体31は、内部を貯留された潤滑油が、軸方向Daにおいて第二端部31bから第一端部31aまで内部を流通している間に潤滑油中の気泡が十分脱気されるだけの流通時間を確保可能な大きさで形成されている。タンクケーシング本体31には、その内部と外部とを貫通する複数の開口部32が形成されている。開口部32は、作業員が通過可能な大きさで形成されている。本実施形態では、開口部32として、上部開口部321と、複数の下部開口部322とを有している。
【0021】
上部開口部321は、受け部6に対して鉛直方向Dvの上方で、タンクケーシング本体31に形成されている。本実施形態の上部開口部321は、タンクケーシング本体31の天面を構成する上壁部311を貫通するように形成されている。上部開口部321は、軸方向Daにおいてタンクケーシング本体31の中央付近に一つのみが形成されている。
【0022】
下部開口部322は、受け部6に対して鉛直方向Dvの下方で、タンクケーシング本体31に形成されている。本実施形態の下部開口部322は、タンクケーシング本体31の側面を構成する側壁313を貫通するように形成されている。下部開口部322は、軸方向Daに離れて複数(本実施形態では四つ)形成されている。
【0023】
蓋部39は、開口部32を閉塞している。蓋部39は、タンクケーシング本体31に対して着脱可能とされている。蓋部39は、一つの開口部32に対して一つが配置されている。したがって、本実施形態の各蓋部39は、上部開口部321及び複数の下部開口部322のそれぞれを閉塞している。
【0024】
導入部4は、タンクケーシング3の内部に潤滑油を導入可能とされている。複数の導入部4は、軸方向Daに互いに離れて配置されている。複数の導入部4は、それぞれ軸受に接続されている。本実施形態では、複数の導入部4は、一方の駆動機軸受112に接続された第一導入部41と、他方の駆動機軸受112に接続された第二導入部42と、一方の圧縮機軸受122に接続された第三導入部43と、他方の圧縮機軸受122に接続された第四導入部44と、を含んでいる。各導入部4は、軸方向Daにおいて、下部開口部322と重なる位置に配置されている。本実施形態の各導入部4は、主配管48と、入口配管49とを有する。
【0025】
図3に示すように、主配管48は、タンクケーシング本体31の側壁313を貫通するように配置されている。主配管48は、潤滑油の供給元である軸受に接続された配管である。主配管48は、幅方向Dwに延びている。入口配管49は、タンクケーシング3の内部で主配管48と接続されている。図2及び図3に示すように、入口配管49は、鉛直方向Dvの下方及び軸方向Daにおいてタンクケーシング本体31の第二端部31bを向くように開口している。つまり、入口配管49は、幅方向Dwから見た際に、鉛直方向Dvに向かって真っすぐではなく、斜めに傾斜して延びている。入口配管49は、例えば、1/25度の勾配で設置されている。
【0026】
図2に示すように、導出部5は、タンクケーシング3の内部に貯蔵された潤滑油をタンクケーシング3の外部へ導出可能とされている。導出部5は、軸方向Daにおけるタンクケーシング本体31の第一端部31aに近接して配置されている。本実施形態の導出部5は、ポンプ22の吸込口である。導出部5は、タンクケーシング本体31の底部を形成する下壁部312に近い位置から潤滑油を吸い出している。また、本実施形態では、導出部5は一つのみが配置されている。なお、導出部5は、一つのみが配置された構造に限定されるものではなく複数配置されていてもよい。ただし、複数の導出部5を配置する際には、軸方向Daの位置が重なるように、すべての導出部5がタンクケーシング本体31の第一端部31aに近接した位置に配置されていることが好ましい。
【0027】
受け部6は、複数の導入部4から導入された潤滑油を受けて軸方向Daにおけるタンクケーシング本体31の第二端部31bに向かって流通させる。受け部6は、タンクケーシング3内で複数の導入部4に対して鉛直方向Dvの下方に配置されている。受け部6は、軸方向Daにおいて第一端部31aから第二端部31bに近づくにしたがって、鉛直方向Dvの下方に向かうように傾斜している。受け部6は、タンクケーシング3において潤滑油が貯蔵された貯蔵空間S1に対して区画された流通空間S2を内部に形成している。本実施形態の受け部6は、図3に示すように断面矩形状の流路として流通空間S2を形成している。流通空間S2は、導入部4から導入されて貯蔵空間S1に供給される前の潤滑油が流通する空間である。図2に示すように、流通空間S2は、軸方向Daにおいて第一端部31aから第二端部31bに向かって延びる第一流通空間S21と、第一流通空間S21に対して第二端部31b付近で繋がり、鉛直方向Dvの真っすぐ延びる第二流通空間S22とを有している。つまり、受け部6は、L字状の流路をタンクケーシング本体31の内部に形成している。また、図2及び図3に示すように、本実施形態の受け部6は、受け面61と、隔壁62と、連通孔63とを有している。
【0028】
受け面61は、潤滑油が流通する板状の部材である。受け面61は、複数の導入部4に対して鉛直方向Dvの下方に配置されている。受け面61は、軸方向Daに延びて導入部4から供給された潤滑油を受けている。受け面61は、タンクケーシング3内に貯留されている潤滑油の油面に対して鉛直方向Dvの上方に配置されている。受け面61は、潤滑油の流れを阻害しないような平滑な面で潤滑油と接触する部分が形成されている。受け面61は、第一流通空間S21において、幅方向Dwから見た際に、斜めにまっすぐ延びている。受け面61は、例えば、入口配管49の傾きよりも小さな最低1/100度の勾配で設置されている。受け面61は、タンクケーシング本体31の側壁313に接続されている。
【0029】
隔壁62は、受け面61から鉛直方向Dvの上方に延びている。隔壁62は、タンクケーシング本体31の側壁313と平行に延びている。隔壁62は、上壁部311に接続されている。
【0030】
連通孔63は、貯蔵空間S1と流通空間S2とを連通している。連通孔63は、隔壁62を幅方向Dwに貫通している。連通孔63は、隔壁62における鉛直方向Dvの上部に形成されている。つまり、連通孔63は、受け面61に対して鉛直方向Dvの上方に配置されている。図4に示すように、連通孔63は、軸方向Daに間隔を開けて複数配置されている。
【0031】
図2に示すように、ストレーナ68は、受け部6を流通してきた潤滑油内の異物を捕集可能とされている。ストレーナ68は、一つのみが配置されている。ストレーナ68は、軸方向Daにおいて、複数の導入部4に対して第二端部31bに近い位置に配置されている。具体的には、ストレーナ68は、第二流通空間S22で受け部6に着脱可能に取り付けられている。ストレーナ68は、第二流通空間S22で鉛直方向Dvの下方に向かって流通する潤滑油と接触するように配置されている。ストレーナ68は、第二流通空間S22を流れる潤滑油に含まれる異物を捕捉し、貯蔵空間S1に流入することを抑制可能とされている。したがって、ストレーナ68を通過することで、潤滑油のみが貯蔵空間S1に流入する。ストレーナ68は、例えば、金属製のメッシュ状の網材である。
【0032】
バッフルプレート69は、受け部6を流通してきた潤滑油がタンクケーシング本体31の底面に直接衝突しないように、受け部6の出口での潤滑油の衝撃を緩和している。バッフルプレート69は、受け部6の出口に対して鉛直方向Dvに離れて配置されている。バッフルプレート69は、主面が鉛直方向Dvを向くように配置された板状の部材である。第二流通空間S22を鉛直方向Dvの下方に流通してきた潤滑油は、バッフルプレート69と衝突することで、水平方向に流れ方向が変化する。このように、バッフルプレート69によって、潤滑油は、タンクケーシング本体31の底部に対して水平方向に流れ込む。
【0033】
(作用効果)
上記構成の潤滑油タンク20及び圧縮機システム100では、一対の駆動機軸受112で使用された潤滑油は、第一導入部41及び第二導入部42にそれぞれ送られる。また、一対の圧縮機軸受122で使用された潤滑油は、第三導入部43及び第四導入部44にそれぞれ送られる。第一導入部41、第二導入部42、第三導入部43、及び第四導入部44のそれぞれからタンクケーシング3内に導入された潤滑油は、受け部6に落下する。受け部6に落下した潤滑油は、軸方向Daにおいて第二端部31bに近づくにしたがって、鉛直方向Dvの下方に向かうように斜めにまっすぐ傾斜した受け面61に沿って、第一流通空間S21を軸方向Daの第二端部31bに向かって流れていく。その後、第一流通空間S21を流れた潤滑油は第二流通空間S22に到達し、タンクケーシング本体31の底部に向かって落下する。そして、潤滑油は第二流通空間S22を落下していく過程でストレーナ68と接触する。これにより、潤滑油に含まれる異物がストレーナ68によって捕捉され、潤滑油のみが貯蔵空間S1に流入する。貯蔵空間S1に流入した潤滑油は、タンクケーシング本体31の内部で、滞留するようにゆっくりと軸方向Daの第二端部31bから第一端部31aに向かい、脱気される。タンクケーシング本体31の内部に貯蔵された潤滑油は、ヒータ21によって温められる。その後、導出部5に到達した潤滑油は、ポンプ22によって吸い上げられて一対の駆動機軸受112及び一対の圧縮機軸受122に再び送られる。その過程では、オイルクーラ23は、ポンプ22から送られた潤滑油は、オイルクーラ23で冷却される。さらに、冷却された潤滑油は、オイルフィルタ24によって、ゴミ等の異物を除去されて、一対の駆動機軸受112及び一対の圧縮機軸受122に送られる。
【0034】
このように、複数の導入部4から導入された潤滑油は、受け部6によって、貯蔵空間S1に送られている。そのため、タンクケーシング本体31の内部で潤滑油が貯留されている位置まで、複数の配管を伸ばす必要がない。その結果、タンクケーシング本体31の内部の構造を単純化することができる。また、一つのストレーナ68のみによって、受け部6を流通してきた潤滑油内の異物が捕集されている。つまり、複数の導入部4のそれぞれにストレーナ68が取り付けられていない。そのため、タンクケーシング本体31に対して、長尺の複数の配管や複数のストレーナ68を取り付ける必要がなくなり、潤滑油タンク20の重量の軽量化を図れる。これらにより、複数の導入部4を有しつつ、内部構造の簡素化を図ることができる。
【0035】
また、受け部6は、潤滑油が貯蔵された貯蔵空間S1に対して区画された流通空間S2を形成している。そして、受け部6は、流通空間S2では、複数の導入部4に対して鉛直方向Dvの下方に配置された受け面61によって潤滑油を案内している。受け面61では、潤滑油が第一流通空間S21から第二流通空間S22に向かって流れる。さらに、受け面61から鉛直方向Dvの上方に延びる隔壁62には、複数の連通孔63が形成されている。そのため、受け面61を流れる過程で潤滑油から放出された気泡(気体、ガス)は第一流通空間S21に溜まることなく、連通孔63から貯蔵空間S1に排出される。そのため、導入部4の近傍に気泡が滞留してしまい、駆動機軸受112や圧縮機軸受122への逆流等の悪影響が生じることを抑制できる。
【0036】
また、受け面61は、貯蔵空間S1に貯蔵された潤滑油の油面に対して鉛直方向Dvの上方に配置されている。そのため、貯蔵空間S1に貯蔵された潤滑油と受け面61とが接触することがない。したがって、貯蔵空間S1に貯蔵された潤滑油の油量に関わらず、受け面61を流通する潤滑油に、貯留された潤滑油が影響を与えることがない。これにより、受け面61によって、複数の導入部4から導入された潤滑油を安定して流通させることができる。
【0037】
また、複数の導入部4のそれぞれは、主配管48と接続されて、鉛直方向Dvの下方及び軸方向Daにおいて第二端部31bを向くように開口した入口配管49を有している。そして、入口配管49から受け面61に向かって潤滑油が供給されている。そのため、潤滑油は、軸方向Daの第二端部31bに向かうように勢いがついた状態で、受け面61に対して供給される。これにより、受け面61を流れる潤滑油に勢いがついて、第二端部31bに向かって安定して流通させることができる。
【0038】
また、タンクケーシング本体31に対して着脱可能な蓋部39によって上部開口部321や下部開口部322が塞がれている。つまり、蓋部39をタンクケーシング本体31から取り外すことで、上部開口部321や下部開口部322が開放された状態となる。そのため、上部開口部321や下部開口部322を介して、タンクケーシング本体31の内部へのアクセスが可能となる。これにより、作業員は、上部開口部321や下部開口部322を介して、タンクケーシング本体31の内部を清掃することができる。
【0039】
特に、潤滑油の油面に対して鉛直方向Dvの下方に下部開口部322が形成されていることで、作業員は、タンクケーシング本体31の底部に近い箇所に容易にアクセスできる。タンクケーシング本体31の底部は、潤滑油が貯留することで、スラッジと呼ばれる沈殿物が堆積していることが多い。下部開口部322が形成されていることで、このようなスラッジをタンクケーシング本体31から容易に除去することができる。
【0040】
さらに、下部開口部322は、軸方向Daに離れて複数配置されている。そのため、軸方向Daの複数個所からタンクケーシング本体31の底部にアクセスすることができる。したがって、スラッジをタンクケーシング本体31の内部の広い範囲で容易に除去することができる。
【0041】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0042】
例えば、上記実施形態では、回転駆動機110や圧縮機120を回転機械として備える圧縮機システム100を例示したが、回転機械システムはこれに限られるものではない。例えば、回転機械システムは、回転機械としてタービンを備えていてもよい。さらに、回転機械システムは、回転駆動機110及び圧縮機120の両方を有する構造に限定されるものではない。回転機械システムは、回転駆動機110及び圧縮機120の片方のみを有する構造であってもよい。
【0043】
また、圧縮機システム100において、回転駆動機110と圧縮機120とは直接接続された構造に限定されるものではない。回転駆動機110と圧縮機120とは、変速機を介して間接的に接続されていてもよい。
【0044】
また、ヒータ21、ポンプ22、オイルクーラ23、及びオイルフィルタ24等の潤滑油供給装置2の一部を構成する機器は、全てタンクケーシング3上に配置されている構造に限定されるものではない。例えば、オイルクーラ23等の一部の機器をタンクケーシング3上以外に配置してもよい。
【0045】
また、潤滑油タンク20において、ストレーナ68は、常に配置されていてもよく、圧縮機システム100の初期運転時のみに取り付けられてその後に外されるように一時的に配置されていてもよい。
【0046】
<付記>
実施形態に記載の潤滑油タンク20及び回転機械システムは、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る潤滑油タンク20は、第一方向に延び、内部に潤滑油を貯蔵可能なタンクケーシング3と、前記タンクケーシング3の内部に前記潤滑油を導入可能とされ、前記第一方向に互いに離れて配置されている複数の導入部4と、前記第一方向における前記タンクケーシング3の第一端部31aに配置され、前記タンクケーシング3の内部に貯蔵された前記潤滑油を導出可能な導出部5と、前記タンクケーシング3内で複数の前記導入部4に対して鉛直方向Dvの下方に配置され、複数の前記導入部4から導入された前記潤滑油を受けて前記第一方向における前記タンクケーシング3の第二端部31bに向かって流通させる受け部6と、前記受け部6を流通してきた前記潤滑油内の異物を捕集可能な一つのストレーナ68と、を備え、前記受け部6は、前記第一方向において前記第二端部31bに近づくにしたがって、前記鉛直方向Dvの下方に向かうように傾斜し、前記ストレーナ68は、前記第一方向において、複数の前記導入部4に対して前記第二端部31bに近い位置に配置されている。
【0048】
これにより、複数の導入部4から導入された潤滑油は。受け部6によって、潤滑油が貯蔵された空間に送られている。そのため、タンクケーシング3の内部で潤滑油が貯留されている位置まで、複数の配管を伸ばす必要がない。その結果、タンクケーシング3の内部の構造を単純化することができる。また、一つのストレーナ68のみによって、受け部6を流通してきた潤滑油内の異物が捕集されている。つまり、複数の導入部4のそれぞれにストレーナ68が取り付けられていない。そのため、タンクケーシング3に対して、長尺の複数の配管や複数のストレーナ68を取り付ける必要がなくなり、潤滑油タンク20の重量の軽量化を図れる。これらにより、複数の導入部4を有しつつ、内部構造の簡素化を図ることができる。
【0049】
(2)第2の態様に係る潤滑油タンク20は、(1)の潤滑油タンク20であって、前記受け部6は、前記タンクケーシング3において前記潤滑油が貯蔵された貯蔵空間S1に対して区画された流通空間S2を形成し、前記受け部6は、複数の前記導入部4に対して前記鉛直方向Dvの下方で前記第一方向に延びて前記潤滑油を受ける受け面61と、前記受け面61から前記鉛直方向Dvの上方に延びる隔壁62と、前記隔壁62を貫通して前記貯蔵空間S1と前記流通空間S2とを連通する連通孔63とを有している。
【0050】
これにより、受け部6は、流通空間S2では、複数の導入部4に対して鉛直方向Dvの下方に配置された受け面61によって潤滑油を案内している。さらに、受け面61から鉛直方向Dvの上方に延びる隔壁62には、複数の連通孔63が形成されている。そのため、受け面61を流れる過程で潤滑油から放出された気泡(気体、ガス)は流通空間S2に溜まることなく、連通孔63から貯蔵空間S1に排出される。そのため、導入部4の近傍に気泡が滞留してしまい、軸受への逆流等の悪影響が生じることを抑制できる。
【0051】
(3)第3の態様に係る潤滑油タンク20は、(2)の潤滑油タンク20であって、前記受け面61は、前記タンクケーシング3内に貯蔵された前記潤滑油の油面に対して前記鉛直方向Dvの上方に配置されている。
【0052】
これにより、貯蔵空間S1に貯蔵された潤滑油と受け面61とが接触することがない。したがって、貯蔵空間S1に貯蔵された潤滑油の油量に関わらず、受け面61を流通する潤滑油に、貯留された潤滑油が影響を与えることがない。これにより、受け面61によって、複数の導入部4から導入された潤滑油を安定して流通させることができる。
【0053】
(4)第4の態様に係る潤滑油タンク20は、(1)から(3)のいずれか一つの潤滑油タンク20であって、前記導入部4は、前記タンクケーシング3を貫通するように配置された主配管48と、前記タンクケーシング3の内部で前記主配管48と接続され、前記鉛直方向Dvの下方及び前記第一方向において前記第二端部31bを向くように開口した入口配管49とを有する。
【0054】
これにより、入口配管49から受け面61に向かって潤滑油が供給されている。そのため、潤滑油は、第一方向の第二端部31bに向かうように勢いがついた状態で、受け面61に対して供給される。これにより、受け面61を流れる潤滑油に勢いがついて、第二端部31bに向かって安定して流通させることができる。
【0055】
(5)第5の態様に係る潤滑油タンク20は、(1)から(4)のいずれか一つの潤滑油タンク20であって、前記タンクケーシング3は、内部に貯蔵された前記潤滑油の油面に対して前記鉛直方向Dvの下方で、内部と外部とを連通する開口部32が形成されたタンクケーシング本体31と、前記タンクケーシング本体31に対して着脱可能とされ、前記開口部32を閉塞する蓋部39とを有する。
【0056】
これにより、蓋部39をタンクケーシング本体31から取り外すことで、開口部32が開放された状態となる。そのため、開口部32を介して、タンクケーシング本体31の内部へのアクセスが可能となる。これにより、作業員は、開口部32を介して、タンクケーシング本体31の内部を清掃することができる。特に、潤滑油の油面に対して前記鉛直方向Dvの下方に、開口部32が形成されていることで、作業員は、タンクケーシング本体31の底部に近い箇所に容易にアクセスできる。タンクケーシング本体31の底部は、潤滑油が貯留することで、スラッジと呼ばれる沈殿物が堆積していることが多い。開口部32が形成されていることで、このようなスラッジをタンクケーシング本体31から容易に除去することができる。
【0057】
(6)第6の態様に係る潤滑油タンク20は、(5)の潤滑油タンク20であって、前記開口部32及び前記蓋部39は、前記第一方向に離れて複数配置されている。
【0058】
これにより、第一方向の複数個所からタンクケーシング本体31の底部にアクセスすることができる。したがって、スラッジをタンクケーシング本体31の内部の広い範囲で容易に除去することができる。
【0059】
(7)第7の態様に係る回転機械システムは、回転機械と、前記回転機械に供給される潤滑油を貯留する(1)から(6)の何れか一つの潤滑油タンク20とを備える。
【符号の説明】
【0060】
100…圧縮機システム
110…回転駆動機
111…出力軸
O…軸線
112…駆動機軸受
120…圧縮機
121…ロータ
122…圧縮機軸受
2…潤滑油供給装置
20…潤滑油タンク
3…タンクケーシング
31…タンクケーシング本体
32…開口部
321…上部開口部
322…下部開口部
31a…第一端部
31b…第二端部
311…上壁部
312…下壁部
313…側壁
39…蓋部
4…導入部
41…第一導入部
42…第二導入部
43…第三導入部
44…第四導入部
48…主配管
49…入口配管
5…導出部
6…受け部
61…受け面
62…隔壁
63…連通孔
S1…貯蔵空間
S2…流通空間
S21…第一流通空間
S22…第二流通空間
68…ストレーナ
69…バッフルプレート
21…ヒータ
22…ポンプ
23…オイルクーラ
24…オイルフィルタ
Da…軸方向
Dv…鉛直方向
Dw…幅方向
図1
図2
図3
図4