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特開2024-78884栽培用具、種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078884
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】栽培用具、種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20240604BHJP
【FI】
A01G9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191479
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】小川 勝史
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327ND03
2B327SA11
2B327SA24
(57)【要約】
【課題】水耕栽培において、植物を持ち運びしやすく、且つ、植物の生長を阻害しない栽培用具、種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シートを提供する。
【解決手段】本発明の栽培用具6は、水耕栽培に用いる栽培用具であって、植物を保持する保持部7と、保持部7の外側に位置し、把持可能な把持部9と、保持部7と把持部9とを連結させ、植物の生長に応じて変形する変形部8と、を有する。保持部7の底面72は、複数の領域に分割され、変形部8が変形することで領域同士を互いに離隔させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培に用いる栽培用具であって、
植物を保持する保持部と、
前記保持部の外側に位置し、把持可能な把持部と、
前記保持部と前記把持部とを連結させ、前記植物の生長に応じて変形する変形部と、を有し、
前記保持部の底面が、複数の領域に分割され、
前記変形部が変形することで前記領域同士を互いに離隔させる、栽培用具。
【請求項2】
前記保持部が、前記領域毎に設けられた保持片が互いに近接することで構成されている、請求項1に記載の栽培用具。
【請求項3】
前記変形部が、前記植物の生長に応じて弾性変形する、請求項2に記載の栽培用具。
【請求項4】
前記変形部が、捩れ変形及び撓み変形の少なくとも一方の変形をして、前記変形部の変形量に応じて複数の前記保持片を互いに離隔させる、請求項3に記載の栽培用具。
【請求項5】
複数の前記保持片のうちの少なくとも一つが、1つの前記変形部によって前記把持部と連結されている、請求項4に記載の栽培用具。
【請求項6】
複数の前記保持片のうちの少なくとも一つが、2つ以上の前記変形部によって前記把持部と連結されている、請求項4に記載の栽培用具。
【請求項7】
複数の前記保持片のそれぞれが、1つ以上の前記変形部によって前記把持部と連結されている、請求項4に記載の栽培用具。
【請求項8】
前記保持部が、2つの前記保持片が互いに近接することで構成され、
2つの前記保持片のそれぞれが、2つの前記変形部によって前記把持部と連結されている、請求項7に記載の栽培用具。
【請求項9】
前記変形部のそれぞれが、前記把持部に接続されている基端部を有し、
前記基端部が、前記底面において2つの前記保持片の間に位置する隙間が延びる方向と直交する方向に沿って延びている、請求項8に記載の栽培用具。
【請求項10】
前記変形部のそれぞれが、前記保持部に接続されている先端部を有し、
前記先端部が、前記隙間が延びる方向に沿って、それぞれの前記保持片の両端の各々から延在している、請求項9に記載の栽培用具。
【請求項11】
前記把持部の形状が、枠状である、請求項1に記載の栽培用具。
【請求項12】
前記保持部が、前記植物の種子を保持している、請求項1に記載の種子付き栽培用具。
【請求項13】
前記保持部が、前記植物を栽培するための培地を保持している、請求項1に記載の培地付き栽培用具。
【請求項14】
請求項1に記載の栽培用具が複数連結してなる栽培シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用の栽培用具、種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シートに関する。
【背景技術】
【0002】
植物の栽培を行う際、培地の材料として、吸水性を有する発泡体及び繊維体等が用いられることがある。特に、植物の生長に必要な水及び空気を保持しやすい性質から優れた培地となり得るウレタンスポンジ等が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-320298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウレタンスポンジ製の培地(固形培地)は、例えば、培地中の複数の箇所に播種した後、養液等に浸漬させて水耕栽培等に用いることができる。しかしながら、これまでのウレタンスポンジ製の培地(固形培地)については、植物を生長させる点においては優れているが、持ち運びし難いために定植時等において取り扱い難いものであった。
一方、持ち運びの観点から、比較的硬度が高い材料からなる培地を利用することが考えられる。しかしながら、この場合には、培地の硬度が大きいため植物の生長を阻害してしまう虞があった。
そのため、水耕栽培用の栽培用具としては、植物を持ち運びしやすく、植物の生長を阻害しない栽培用具が求められている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、水耕栽培において、植物を持ち運びしやすく、且つ、植物の生長を阻害しない栽培用具を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、上記の栽培用具を用いた種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の栽培用具は、水耕栽培に用いる栽培用具であって、植物を保持する保持部と、保持部の外側に位置し、把持可能な把持部と、保持部と把持部とを連結させ、植物の生長に応じて変形する変形部と、を有し、保持部の底面が、複数の領域に分割され、変形部が変形することで領域同士を互いに離隔させることを特徴とする。
【0007】
本発明の栽培用具では、保持部に植物を保持することができる。また、変形部が植物の生長に応じて変形することで、保持部の底面を構成する複数の領域が互いに離隔する。これにより、保持部の底面より下へ植物の根が伸びやすく、植物の生長を阻害せずに栽培することができる。一方、保持部の外側に位置する把持部は、栽培用具を移動させる際に簡単に把持することができる。これにより、水耕栽培において、植物を持ち運びしやすく、且つ、植物の生長を阻害しない栽培用具が実現される。
【0008】
また、保持部が、領域毎に設けられた保持片が互いに近接することで構成されていることが好ましい。
上記の構成では、保持部は、領域毎に設けられた保持片によって分割されており、変形部の変形により、互いに近接した保持片同士を離隔させ、底面に隙間を生じさせることができる。
【0009】
また、変形部が、植物の生長に応じて弾性変形することが好ましい。
上記の構成では、変形部が可撓性を有し、変形部の変形量が植物の生長に応じて変わり、植物が生長する空間を、植物の生長量に応じて適切に確保することができる。
【0010】
また、変形部が、捩れ変形及び撓み変形の少なくとも一方の変形をして、変形部の変形量に応じて複数の保持片を互いに離隔させることが好ましい。
上記の構成では、保持部の底面を構成する複数の領域が互いに離隔するように変形部が適切な変形モードにて変形する。
【0011】
また、複数の保持片のうちの少なくとも一つが、1つの変形部によって把持部と連結されていることが好ましい。
上記の構成では、少なくとも1つの保持片に対して設けられる変形部が1つであることで、変形部が変形しやすくなり、厳密には、撓みやすくなる。
【0012】
また、複数の保持片のうちの少なくとも一つが、2つ以上の変形部によって把持部と連結されていることが好ましい。
上記の構成では、2つ以上の変形部によって保持片を安定に支持しつつ、それぞれの変形部が、保持部の底面を構成する複数の領域が互いに離隔するように適切に変形する。
【0013】
また、複数の保持片のそれぞれが、1つ以上の変形部によって把持部と連結されていることが好ましい。
上記の構成では、それぞれの保持片と把持部を連結する変形部が変形することにより、保持片同士を離隔させやすくなる。
【0014】
また、保持部が、2つの保持片が互いに近接することで構成され、2つの保持片のそれぞれが、2つの変形部によって把持部と連結されていることが好ましい。
上記の構成では、2つの保持片のそれぞれの支持状態を安定させつつ、それぞれの変形部の変形によって保持片同士を適切に離隔させることができる。
【0015】
また、変形部のそれぞれが、把持部に接続されている基端部を有し、基端部が、底面において2つの保持片の間に位置する隙間が延びる方向と直交する方向に沿って延びていることが好ましい。
上記の構成では、それぞれの変形部が撓み変形しやすくなる。
【0016】
また、変形部のそれぞれが、保持部に接続されている先端部を有し、先端部が、底面において2つの保持片の間に位置する隙間が延びる方向に沿って、それぞれの保持片の両端の各々から延在していることが好ましい。
上記の構成では、それぞれの変形が捩れ変形しやすくなる。
【0017】
また、把持部の形状が、枠状であることが好ましい。
上記の構成では、把持部が、保持部を取り囲んでいることで、植物が栽培される保持部を安定して支持しやすくなるため、栽培用具が持ち運びやすくなる。
【0018】
また、保持部が、植物の種子を保持している種子付き栽培用具も実現できる。
上記の種子付き栽培用具によれば、利用者は、栽培用具を使用する際に種子を播く手間が省ける。
【0019】
また、保持部が、植物を栽培するための培地を保持している培地付き栽培用具も実現できる。
上記の培地付き栽培用具によれば、利用者は、栽培用具を使用する際に培地を設置する手間が省ける。
【0020】
また、栽培用具が複数連結してなる栽培シートも実現できる。
上記の栽培シートによれば、利用者は、複数の栽培用具を1つのシート体としてまとめて取り扱うことができる。また、栽培用具の使用時には、個々の栽培用具を栽培シートから分離させて利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、把持部によって持ち運びが容易になり、且つ、植物の生長に応じて植物の根が伸びる空間を確保できて植物の生長を阻害しない栽培用具、種子付き栽培用具、培地付き栽培用具、及び栽培シートが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を水耕栽培装置に適用した例を示す図であり、水耕栽培装置の断面を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を水耕栽培装置に適用した例を示す図であり、水耕栽培装置の平面図を示す図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を示す平面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を示す正面図である。
図5】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を示す断面図であり、図3のI-I断面を示す。
図6】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を水耕栽培装置に適用した際の播種時の栽培用具の断面図であり、図3のII-II断面を示す。
図7】本発明の第一実施形態に係る栽培用具を水耕栽培装置に適用した際の発芽後の栽培用具の断面図であり、図3のII-II断面を示す。
図8】本発明の第一実施形態に係る栽培用具が複数連結された栽培シートの一例を示す平面図である。
図9】本発明の第一実施形態に係る栽培用具が複数連結された栽培シートの他の例を示す平面図である。
図10】従来の栽培用具である固形培地を示す斜視図である。
図11】本発明の第二実施形態に係る栽培用具を示す平面図である。
図12】本発明の第二実施形態に係る栽培用具を示す正面図である。
図13】本発明の第二実施形態に係る栽培用具を示す断面図である。図11のIII-III断面を示す。
図14】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図15】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図16】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図17】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図18】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図19】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図20】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図21】本発明の第一実施形態に係る栽培用具の変形例を示す正面図である。
図22】本発明の第三実施形態に係る栽培用具を示す平面図である。
図23】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図24】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図25】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図26】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例が複数連結された栽培シートの一例を示す平面図である。
図27】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例が複数連結された栽培シートの他の例を示す平面図である。
図28】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例を示す平面図である。
図29】本発明の第三実施形態に係る栽培用具の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る栽培用具を、添付の図面に示す好適な実施形態を参照して、以下に詳細に説明する。
なお、以下では、本発明に係る栽培用具として、水耕栽培に利用可能な栽培用具について説明する。
【0024】
また、本明細書において、特に断る場合を除き、可撓性を有する部材について説明する場合には、弾性率が大きいことを、便宜上「硬い」とも表現し、弾性率が小さいことを、便宜上「軟らかい」とも表現することとする。
また、本明細書において、特に断る場合を除き、栽培用具を使用している場合を想定して、栽培用具各部の位置及び状態等を説明することとする。その際、植物の苗の茎が伸びる向き側を、便宜上「上側」と表現する。他方、植物の苗の根が伸びる向き側を、便宜上「下側」と表現する。
【0025】
[栽培用具を有する栽培装置]
本発明の一つの実施形態に係る栽培用具(以下、栽培用具6)を含む水耕栽培装置(以下、水耕栽培装置E)について説明する。
【0026】
本発明の栽培用具6は、図1及び2に示すように、植物を水耕栽培方式で栽培するための装置(以下、水耕栽培装置E)において使用される。水耕栽培装置Eは、図1及び2に示すように栽培用具6と容器1と支持板2とを有する。栽培用具6は、平坦な構造をなす部材であり、栽培期間中、容器1内で支持板2に支持された状態で植物の種子4X又は苗4を保持する。
なお、図1における上下方向は、鉛直方向を示し、図1における左右方向は、水平方向を示している。また、図2は、図1を鉛直方向の上側から平面視した図であり、同図では、図示の便宜上、植物の苗4を簡略化して単純な円で表記している。
【0027】
水耕栽培装置Eは、図2に示すように、それぞれが平面視で略正方形状である複数の栽培用具6を水平方向において規則的に並べて配置して構成される。水耕栽培装置Eでは、栽培用具6中の保持部7に保持されている培地5に種子4Xを播種した後、深底トレー型の容器1内に貯められた養液3に各栽培用具6が備える保持部7内の培地5を浸漬させる。これにより、各栽培用具6において、種子4Xを発芽させて植物を生長させて植物の苗4を得ることができる。つまり、水耕栽培装置Eを用いた植物栽培において、栽培用具6における保持部7は、培地5が担持している植物に養液3が供給可能な状態で植物の種子4X又は苗4を保持する。
【0028】
栽培用具6は、上述の通り、容器1内において、支持板2によって支持されており、本発明では、図2に示すように複数の栽培用具6が列をなして並んだ状態で配置されている。具体的に説明すると、容器1内には、図1に示すように、水平方向に延びた複数の支持板2が各支持板2の延在方向と直交する方向において間隔を空けて並べて配置されている。そして、隣り合う2本の支持板2の間に栽培用具6を配置し、それぞれの支持板2の上端面に、栽培用具6に備えられた把持部9が載置されることで、栽培用具6が上述の2本の支持板2によって支持される。このような要領で、複数の栽培用具6が支持板2の延在方向において一定間隔毎に配置され、上述の2本の支持板2は、複数の栽培用具6の各々を支持する。
【0029】
なお、支持板2の形状は、滑らずに安定して栽培用具6を把持できる形状、すなわち、支持板2の上端面が傾斜していない平坦面であることが好ましい。また、栽培用具6を支持する機構は、栽培用具6が安定して支持されればよく、上述の内容に限定されない。
【0030】
[本発明の第一実施形態について]
第一実施形態に係る栽培用具6は、図1及び2に示すように、水耕栽培装置Eに使用される。以下、本発明の第一実施形態に係る栽培用具6の基本的な構成及び使用方法について、図3~10を参照しながら説明する。
【0031】
栽培用具6は、図3~5に示すように、植物を保持する保持部7、植物の生長に応じて変形する変形部8、及び、栽培用具6を移動させる際に把持される把持部9から構成されている。栽培用具6において、把持部9が保持部7の外側に配置され、変形部8が把持部9と保持部7とを連結している。また、栽培用具6は、図6~7に示すように、変形部8の変形により保持部7が変位し、これにより、保持部7において植物の根を下方に伸ばす空間(通路)が確保される。
第一実施形態に係る栽培用具6は、変形部8の構成と、変形部8が撓み変形をする点において、特に特徴を有する。
【0032】
先ず、第一実施形態に係る栽培用具6の保持部7について図3~7を参照しながら説明する。
保持部7は、上端が開放された半球型のカップ形状をなしており、図6及び7に示すように、栽培される植物の種子4X又は苗4(以下、苗4等)と、苗4等を担持する培地5とを保持することが可能である。
保持部7に保持される培地5は、保持部7内で好適に保持できる性状、大きさ及び形状を有するとよい。培地5は、ウレタンスポンジ等からなる固形培地5Xであってもよく、液状パルプ等からなる流動性を有する培地5であってもよい。また、固形培地5Xを培地5として利用する場合、培地5の上面には播種用の凹部又は窪み等が設けられているとよい。
【0033】
そして、保持部7は、図3及び4に示すように、互いに分離した複数の保持片71が互いに近接することで構成されている。換言すると、保持部7の底面72は、図3に示すように、複数の領域に分割されており、保持片71が領域毎に設けられている。換言すると、それぞれの保持片71の底に位置する面が、保持部7の底面72を構成する一つの領域に相当する。
【0034】
なお、保持部7を構成する保持片71の数は、2個以上であればよく、2~6個であることが好ましい。以下では、2個の保持片71によって保持部7が構成されているケースを例に挙げて説明する。つまり、第一実施形態における保持片71は、半球を半分にカットした四半分球の形状をなしている。
【0035】
各保持片71は、変形部8の先端部81に接続されていて、変形部8に固定されている。また、図6及び7に示すように、互いに近接する保持片71の間には、隙間G(裂け目)があり、保持部7内の培地5及び苗4等は、隙間Gから落ちないように保持部7内で保持されている。以下では、保持片71が2つの場合、隙間Gが延びる方向を「第一方向」と呼ぶこととし、水平面において第一方向と直交する方向を「第二方向」と呼ぶこととする。
【0036】
各保持片71は、変形部8の変形によって変位し、詳しくは下降するように回動する。そして、保持部7を構成する2つの保持片71のそれぞれの変位によって保持片71同士が互いに離隔すると、底面72において隙間Gの幅が拡がる。この結果、隙間Gを通じて底面72の下側へ向かう空間(通路)が確保される。
【0037】
第一実施形態において、図3に示すように、2つの保持片71のそれぞれは、2つの変形部8によって把持部9と連結されている。すなわち、保持部7は、計4つの変形部8によって把持部9と連結している。そして、図7に示すように、各変形部8が撓み変形することで、互いに近接する2つの保持片71が、下方へ向かいながら互いに引き離されるように移動する(離隔する)。これにより、上述の隙間Gの幅が拡がる。
【0038】
また、各保持片71において、図3及び5に示すように、隙間Gの両端のそれぞれの直近部分に変形部8の先端部81が接続されている。つまり、それぞれの保持片71は、第一方向における隙間Gの一端と隣り合う位置に配置された変形部8と、隙間Gの他端と隣り合う位置に配置された変形部8とによって、把持部9に連結されている。これによって、各保持片71と把持部9とを良好に連結されることができ、各保持片71は、把持部9との連結状態を安定させながら変位(詳しくは、回動)することができる。
【0039】
変形部8は、植物の生長、具体的には苗4の肥大化及び重量の増加等に応じて変形し、図3に示すように、保持部7と把持部9とを連結する。変形部8は、紐状に延在しており、図3に示すように、先端部81と基端部82とを有し、先端部81は、保持部7に接続されており、基端部82は、把持部9に接続されている。また、変形部8は、可撓性を有し、弾性変形することができる。
【0040】
具体的に説明すると、変形部8は、先端部81が下方に向かい、且つ、先端部81が基端部82に近づくように撓み変形し、その変形量は、植物の苗4の生長の度合い、詳しくは、苗4の肥大化の度合い及び重量増加の度合い等に応じて変わる。そして、変形部8の弾性変形に伴って、変形部8の先端部81に接続された保持片71が変位(回動)し、この結果、互いに隣り合う保持片71同士が離隔するようになる。
【0041】
第一実施形態では、図3に示すように、4つの変形部8の基端部82が、把持部9において対向する二辺のそれぞれの中間部分から、2つずつ第二方向に沿って延びている。また、図3に示すように、4つの変形部8の先端部81が、それぞれの保持片71において、隙間Gの両端の各々と隣り合う位置から、1つずつ第一方向に沿って延在している。このような構成により、各変形部8は、上述の如く撓み変形することが可能である。
【0042】
変形部8において、先端部81と基端部82との間に位置する中間部分は、図3に示すように、平面視で、把持部9の内側に位置し、且つ、保持部7の周囲を囲うように配置されている。また、中間部分は、屈曲及び蛇行を繰り返しながら先端部81と基端部82とを連結した形状をなしている。
なお、中間部分について、その形状及び配置位置等は、先端部81と基端部82とを接続していれば特に限定されない。例えば、中間部分は、直線状に延びた形状でもよく、使用時における鉛直方向(図3の紙面を貫く方向)に突き出た形状でもよい。
【0043】
把持部9は、図3に示すように、保持部7の外側に位置し、栽培用具6を持ち運ぶ際に把持される部分である。把持部9は、変形部8の基端部82と接続している。把持部9は、栽培用具6を持ち運びしやすくし、且つ栽培用具6を安定して支持板2上に支持できる形状であることが好ましい。その観点から、第一実施形態では、把持部9が、平面視で四角形(詳しくは、正方形)の枠状をなした形状であり、保持部7の周囲を囲うように1つ配置されている。栽培用具6の使用時において、把持部9は、その上面及び下面が水平方向と平行となった姿勢で配置される。
【0044】
第一実施形態に係る栽培用具6の保持部7、変形部8、及び、把持部9を構成する素材は、可撓性を有する天然素材であると好ましい。可撓性を有する素材は、弾性変形しやすいため、植物の生長を阻害せず、植物栽培に適している。より詳しくは、栽培用具6を構成する天然素材は、ウレタン、ロックウール、及び、パルプ等の生分解性樹脂を含有する天然素材であると好ましい。上述の天然素材は、廃棄処分及びコンポスト等の肥料として再利用の容易さの観点から優れている。また、栽培用具6の各部は、同一の素材、具体的には上述の樹脂材料を用いて、例えば射出成形等によって成形されてもよい。すなわち、保持部7と把持部9と変形部8とは、一体成形されて、隣り合う部分同士は、連続してシームレスに繋がっていてもよい。
【0045】
また、第一実施形態に係る培地5は、多孔質な天然素材によって構成されてもよい。多孔質な天然素材は、通水性及び通気性を有すため、水分と空気を内部に保持することが可能である。
なお、本発明において、栽培用具6及び培地5を構成する材料、成形方法及び成形手段については、上述の内容に限定されない。例えば、保持部7及び把持部9は、変形部8とは別の材料によって構成されてもよく、具体的には、安定して植物を支持する観点から、変形部8と比べて硬く、可撓性を有しない材質によって構成されてもよい。
【0046】
次に、第一実施形態に係る栽培用具6の使用方法について図1、2、6及び7を参照しながら説明する。
栽培用具6を用いて植物を栽培するには、先ず、図2及び図6に示すように、養液3が溜められた容器1内に配置された支持板2の上端面に栽培用具6を載せ、栽培用具6の保持部7に培地5を設置し、培地5に植物の種子4Xを播く。培地5内で発芽した植物は、生長して苗4となる。その後、図1及び図7に示すように、植物の苗4の根が培地5内を通って保持部7の下方へ伸び、苗4の茎及び葉(すなわち地上部)が保持部7より上方に向かって伸びる。
【0047】
そして、苗4が所定の大きさに生長した段階で、苗4を栽培用具6とともに他の場所へ移動させて移植する。なお、栽培用具6が水耕栽培装置Eにおいて安定して支持されていれば、1つの栽培用具6にて栽培する植物の個体数は、1個体に限定されず、複数個体の植物を生長させてもよい。
また、保持部7にて培地5を安定して保持する目的で、培地5と保持部7とを一体化させるために接着剤が使用されてもよい。接着剤としては、PVA(Polyvinyl Alcohol)等の親水性の合成樹脂が用いられるとよい。
【0048】
栽培用具6は、生産又は流通段階において、培地5があらかじめ設置されていてもよく、種子4Xがあらかじめ設置されていてもよい。換言すると、栽培用具6は、図6に示すような種子付きの栽培用具、あるいは培地付きの栽培用具として生産されて流通してもよい。この場合、栽培用具6を入手した時点で、保持部7と培地5、あるいは保持部7と種子4Xとが一体化しているため、栽培用具6の利用者にとって、種子4Xや培地5を別途用意したり、種子4X又は培地5を保持部7に設置したりする手間を省くことができる。
【0049】
また、図8及び9に示すように、複数個の栽培用具6が同一平面上に連結された栽培シートS1が利用者に提供されてもよい。水耕栽培は、大規模に栽培する場合が多く、複数の栽培用具6が1つの栽培シートS1としてまとまっていれば、栽培用具6を大量に扱う利用者にとって、管理が容易になる。
栽培シートS1には、栽培用具6同士を連結させている箇所として、強度の弱い切断部分が設けられていることが好ましい。この構成により、利用者は、栽培シートS1から単体の栽培用具6を分離して個別に利用したい時、及び、移植及び定植等において植物の苗4同士の間隔を拡げたい時に、栽培用具6同士の間(切断部分)を刃物又はレーザ等で切断しやすくなる。
【0050】
栽培シートS1の切断部分を切断しやくする手段としては、図8に示すように、栽培用具6同士の間に窪みが設けられたり、図9に示すように、栽培用具6同士の間をランナ11が接続したりするとよい。なお、栽培シートS1の栽培用具6同士の間をランナ11で接続する場合には、ランナ11において、切断しやすいように、窪みが形成されてもよい。
【0051】
[本発明の第一実施形態に係る栽培用具の効果について]
第一実施形態に係る栽培用具6が得られる効果について説明する。
第一実施形態に係る栽培用具6は、把持部9を備えることにより、植物の苗4を保持した状態での持ち運びが容易になる。また、苗4の生長に応じて変形部8が変形することで、保持部7において苗4の根が伸びる空間を確保できるために、苗4の生長を阻害せず、植物を良好に栽培することができる。
【0052】
具体的に説明すると、従来の栽培用具として用いられていたウレタンスポンジ製の固形培地5Xは、図10に示すように、直方体又は立方体の形状である。このような固形培地5Xは、トレー等の水耕栽培用の容器1内において一定間隔で並べられている。しかし、固形培地5Xは、通常、把持し難い形状であり、また、全体的に嵩密度が小さく軟らかい。かかる理由により、固形培地5Xは、一般的に持ち運び難く、固形培地5Xに担持された植物の苗4を移植又は定植することが困難であった。
【0053】
また、固形培地5Xは、上述の通り、嵩密度が小さく軟らかい。そのため、固形培地5Xを引き上げたり移動させたりする際に、その材料であるウレタンスポンジが変形したり、形状が崩れたり、又は、破れたりする虞があった。その場合には、固形培地5Xの変形又は破れに起因して、固形培地5Xに担持された植物を意図せず傷つけてしまう虞があった。
一方、ウレタンスポンジの形状を保つ目的で、スポンジの大きさを大きくすると、1つの苗4あたりのウレタンスポンジの消費量が増えてしまう。このような状況は、環境的にも経済的にも好ましくないことであり、大規模の植物栽培には適さない。
【0054】
これに対して、第一実施形態に係る栽培用具6は、図3~5に示すように、植物を保持する保持部7と、保持部7の外側に位置し、把持可能な把持部9と、を有する。
【0055】
上述の構成により、本発明に係る栽培用具6は、図1に示すように、植物の種子4Xを播いて、保持部7にて植物の苗4(発芽後の植物)を生長させることができる。また、把持部9は、図2及び3に示すように、保持部7を取り囲むように配置されており、利用者は把持部9にて栽培用具6を簡単に把持することができる。このように把持部9が設けられているために、植物の持ち運びが容易になる。
【0056】
さらに、図6に示すように、植物を保持する保持部7は変形部8によって把持部9と連結しており、変形部8が、図7に示すように、植物の生長に応じて変形する。そして、変形部8の変形により、保持部7の底面72を構成する複数の領域が離隔する。これにより、保持片71の間の隙間Gの幅が拡がって、保持部7の底面72より下へ植物の苗4の根が伸びやすくなるため、苗4の生長を阻害せず、植物を良好に栽培することができる。以上のような構成により、植物の生長を阻害しない栽培用具6が実現される。
【0057】
そして、第一実施形態に係る栽培用具6の保持部7は、図3及び5に示すように、2つの保持片71が互いに近接することで構成され、2つの保持片71のそれぞれは、2つの変形部8によって把持部9と連結されている。そして、変形部8が撓み変形することで、互いに近接する保持片71は、互いに離隔するように下方へ移動し、隙間Gの幅が拡がる。
また、2つの保持片71のそれぞれが、2つの変形部8によって把持部9と連結しているため、各保持部7の支持状態を安定させつつ、それぞれの変形部8の変形によって保持片71同士を適切に離隔させることができる。
【0058】
また、第一実施形態に係る栽培用具6において、変形部8は、可撓性を有し、植物の生長に応じて撓み変形をする。変形部8の変形量は、植物の生長に応じて増加し、変形量の増加に応じて、複数の保持片71が徐々に離隔する。これにより、植物の生長度合いに応じて、隙間Gの幅を拡げることができ、この結果、植物の苗4の根を適切に伸ばすことができる。
【0059】
また、第一実施形態に係る栽培用具6において、4つの変形部8のそれぞれが有する先端部81、つまり、計4つの先端部81は、図3に示すように、第一方向に沿って、隙間Gの端の直近位置から延在している。そのため、4つの変形部8は、2つの保持片71のそれぞれを、第一方向における各保持片71の両側から安定して保持することができる。
また、第一実施形態に係る栽培用具6において、4つの変形部8のそれぞれが有する基端部82、つまり、計4つの基端部82は、図3に示すように、第二方向に沿って延びている。このような構成であれば、4つの変形部8のそれぞれは、基端部82にて撓み変形をすることにより、2つの保持片71同士を適切に離隔させて隙間Gの幅を拡げることができる。
【0060】
さらに、第一実施形態に係る栽培用具6の把持部9は、形状が正方形の枠状の形状であり、図3に示すように、水平方向において保持部7の周囲を取り囲むように配置されている。これにより、把持部9は、植物が栽培される保持部7を、変形部8を介して安定して支持することができ、結果として、水耕栽培装置Eにおいて植物を栽培用具6とともに安定して載置することができる。また、把持部9は、枠状の形状であることで把持しやすく、栽培用具6を容易に持ち運ぶことができる。
【0061】
[本発明に係る第一実施形態の変形例について]
以上までに、本発明の第一実施形態に係る栽培用具6について説明したが、その具体的な構成は、上述の内容に限定されず、他の構成(変形例)が考えられる。
【0062】
具体的に説明すると、上述した第一実施形態に係る栽培用具6では、把持部9は、四角形の枠状の形状であり、保持部7の周囲を囲うように1つ配置されていることとした。ただし、これに限定されるものではなく、把持部9は、枠状でなくてもよく、その場合には分離した2つ以上の断片から構成されてもよい。
例えば、図14に示す栽培用具6Cのように、把持部9が、第一方向に沿って延在した線状の2つの断片によって構成されてもよい。かかる構成において、2つの線状断片が間隔を空けて平行に並んでおり、断片の間に保持部7が配置されるとよい。
【0063】
また、把持部9の形状は、他の形状の枠状であってもよく、例えば、図15に示すように、三角形の枠状の形状でもよい。
【0064】
また、保持部7を構成する保持片71の個数は、2つに限定されず、例えば、上述の図15に示す栽培用具6Dのように、3つの保持片71が互いに近接することで保持部7が構成されてもよい。この場合、各保持片71は、上端が開放された半球を三等分した形状をなしていてもよい。かかる構成では図15に示すように、保持片71の間の隙間Gが120度間隔で3か所に設けられている。また、図15に示すケースでは、それぞれの保持片71の外縁の中央位置から把持部9まで変形部8が直線状に延在している。そして、それぞれの変形部8の撓み変形により、各隙間Gの幅が拡がる。
【0065】
また、例えば、図16に示す栽培用具6Eのように、保持部7は、4つの保持片71が互いに近接することで構成されてもよい。この場合、各保持片71は、上端が開放され半球を四等分した形状をなしていてもよい。さらに、この場合、それぞれの保持片71が2つの変形部8によって把持部9と連結している。詳しくは、各保持片71の外縁の両端位置から把持部9まで変形部8が隙間Gに沿って直線状に延在している。
【0066】
また、上述した実施形態では、2つの保持片71のそれぞれが、変形部8によって把持部9と連結していることとした。ただし、これに限定されるものではなく、複数の保持片71のうちの少なくとも一つが、1つ以上の変形部8によって把持部9と連結されていればよい。
例えば、図17に示す栽培用具6Fのように、2つの保持片71のうち、一つの保持片71が変形部8によって把持部9と連結し、もう一つの保持片71が、変形しない連結部10によって把持部9と連結してもよい。連結部10は、例えば、保持片71と把持部9との間の領域の全体に亘って設けられた板片であってもよい。なお、把持部9と保持部7とが直接連結されていてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、複数の保持片71のそれぞれが2つの変形部8によって把持部9と連結していることとした。ただし、これに限定されるものではない。例えば、図18に示す栽培用具6Gのように、複数の保持片71のそれぞれが、1つの変形部8によって把持部9と連結されてもよい。このような構成では、変形部8が、通常、保持片71の外縁における中央位置に接続される場合が多く、その場合には、変形部8が容易に撓み変形をすることができる。
【0068】
また、例えば、図19及び20に示す栽培用具6H、6Iのように、2つの保持片71のそれぞれは、3つの変形部8によって把持部9と連結されてもよい。このような構成では、3つの変形部8が、通常、保持片71の外縁における中央位置と、その両側位置に接続される場合が多い。その場合には、保持片71を安定して保持することができ、且つ、それぞれの変形部8が安定して撓み変形をすることができる。
【0069】
栽培用具6Hの場合、図19に示すように、3つの変形部8のそれぞれが直線状に延在しており、そのうち、2つの変形部8の基端部82は、四角形の枠状の形状である把持部9の各角部分から接続されている。
栽培用具6Iの場合、図20に示すように、3つの変形部8のそれぞれが直線状に延在しており、3つの変形部8のそれぞれの基端部82は、四角形の枠状の形状である把持部9における4辺のうち、保持片71と隣り合う辺の中央部分付近に接続されている。
【0070】
また、上述した第一実施形態に係る栽培用具6では、保持部7は、上端が開放された半球型のカップ形状をなしていることとした。ただし、保持部7の形状は、これに限定されるものではない。例えば、図21に示す栽培用具6Jのように、保持部7は、上端が開放された枡形状をなしていてもよい。図21は、図4と対応する図、つまり、図4と同じ方向から見た栽培用具6Jの正面図である。
【0071】
[本発明の第二実施形態について]
上述した第一実施形態に係る栽培用具6では、変形部8が撓み変形をすることとした。ただし、変形部8の変形モードは、撓み変形に限定されず、捩れ変形であってもよい。このような構成の栽培用具6Aを、第二実施形態として、以下、図11~13を参照しながら詳細に説明する。第一実施形態と同様に、保持片71が2つの場合、隙間Gが延びる方向を「第一方向」と呼ぶこととし、水平面において第一方向と直交する方向を「第二方向」と呼ぶこととする。
【0072】
第二実施形態では、水耕栽培装置Eの基本構成及び使用方法が第一実施形態と共通する。一方、第二実施形態では、図11~13に示すように、変形部8の基端部82の位置、つまり把持部9において変形部8が接続される箇所が第一実施形態と相違する。
具体的に説明すると、第二実施形態において、保持部7を構成する2つの保持片71のそれぞれに2つの変形部8が接続され、栽培用具6Aには計4つの変形部8が設けられている。それぞれの変形部8は、保持片71の隙間Gの両端の各々の直近位置から、把持部9まで第一方向に沿って一直線上に延在している。つまり、各変形部8の基端部82は、図11及び13に示すように、先端部81と一直線上に並ぶ位置に配置されている。
【0073】
上述の形状により、各変形部8が捩れ変形することで、互いに近接する2つの保持片71は、変形部8を軸にして(すなわち、第一方向に沿う回動軸を中心として)、保持片71同士が互いに引き離されるように回動する。このような変形部8の変形により、第二実施形態においても第一実施形態と同様、隙間Gの幅が拡がる。また、第二実施形態において、各保持片71では、図11及び13に示すように、隙間Gの両端のそれぞれの直近位置から変形部8が延在しており、その基端部82が把持部9に接続されている。以上のような構成により、各保持片71を把持部9に対して安定して固定しつつ、変形部8の変形によって適切に回動することができる。
【0074】
以上の構成により、第二実施形態においても、植物の根が隙間Gを通じて底面72の下側へ向かう空間(通路)が確保されるため、保持部7の底面72より下へ植物の根が伸びやすく、植物の生長を阻害せずに栽培することができる。すなわち、第二実施形態に係る栽培用具6Aは、植物の生長を阻害せず、利用者が把持しやすく取り扱いが容易な栽培用具である。
【0075】
[本発明の第三実施形態について]
上述した本発明に係る栽培用具6、6Aでは、変形部8は、撓み変形又は捩れ変形のうち、いずれか一方の変形モードにて変形することとした。ただし、変形部8の変形モードは、撓み変形又は捩れ変形のいずれか一方に限定されるものではない。例えば、図22に示す栽培用具6Bのように、変形部8が撓み変形及び捩れ変形の両方のモードで変形するものであってもよい。このような構成を、第三実施形態とし、以下、図22を参照しながら詳細に説明する。なお、第三実施形態では、第一実施形態と同様、保持片71が2つであり、隙間Gが延びる方向を「第一方向」と呼ぶこととし、水平面において隙間Gが延びる方向と直交する方向を「第二方向」と呼ぶこととする。
【0076】
第三実施形態では、水耕栽培装置Eの基本構成及び使用方法が第一実施形態と共通する。一方で、第三実施形態は、図22に示すように、変形部8の構成が第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
具体的に説明すると、図22に示す栽培用具6Bでは、保持部7を構成する2つの保持片71のそれぞれに1つの変形部8が接続されており、各変形部8は、直線状に延在している。それぞれの変形部8の基端部82は、把持部9において対応する辺(変形部8から見て最寄りの辺)の中央からずれた位置に接続されており、変形部8の先端部81は、保持片71の外縁における中央からずれた位置に接続されている。
【0077】
上述の形状により、各変形部8は、植物の生長に応じて撓み変形及び捩れ変形をするため、互いに近接する2つの保持片71は、変形部8を軸に、保持片71同士が互いに引き離されるように回動し、且つ、変形部8が撓んだ分及び捩じれた分だけ下方へ移動する。このような変形部8の変形により、第三実施形態においても第一実施形態及び第二実施形態と同様に隙間Gの幅が拡がる。これにより、第三実施形態に係る栽培用具6Bでは、変形部8が撓み変形及び捩れ変形の両方の変形モードで変形するため、植物の根が隙間Gを通じて底面72の下側へ向かう空間(通路)がより広く確保できる。すなわち、第三実施形態に係る栽培用具6Bは、植物の生長を阻害せず、利用者が把持しやすく取り扱いが容易な栽培用具である。
【0078】
[本発明に係る第三実施形態の変形例]
以上までに、本発明の第三実施形態に係る栽培用具6Bについて説明したが、その具体的な構成は、上述の内容に限定されず、他の構成(変形例)が考えられる。
【0079】
具体的に説明すると、上述した栽培用具6B(図22参照)では、変形部8が直線状に延在しており、その基端部82は、把持部9における対応する辺の中央からずれた位置に接続されていることとした。ただし、これに限定されるものではない。
例えば、図23に示す栽培用具6Kのように、変形部8の基端部82が、四角い枠状である把持部9の各角部分に接続され、変形部8の先端部81が、保持片71の外縁における中央からずれた位置で保持片71に接続されてもよい。かかる構成の変形部8も、保持部7内の植物の生長に応じて撓み変形及び捩れ変形をする。
【0080】
また、上述した栽培用具6Bでは、保持部7が、2つの保持片71が互いに近接することで構成されていることとした。ただし、これに限定されるものではない。例えば、図24に示す栽培用具6Lのように、保持部7が4つの保持片71が互いに近接することで構成され、それぞれの保持片71が、1つの変形部8によって把持部9と連結されていてもよい。この場合、変形部8は、保持片71の外縁における中央からずれた位置で保持片71に接続され、第二方向に沿って把持部9まで直線状に延在している。かかる構成の変形部8も、保持部7内の植物の生長に応じて撓み変形及び捩れ変形をする。
【0081】
また、上述した栽培用具6Bでは、半球型のカップ形状である保持部7が2つの保持片71によって構成され、把持部9の形状が四角形であることとした。さらに、栽培用具6Bでは、2つの変形部8のそれぞれが、各保持片71の外縁の中央位置と、把持部9における対応する辺の中央からずれた位置と、を接続していることとした。ただし、これに限定されるものではない。
【0082】
例えば、図25に示すように、栽培用具6Mにおいては、把持部9の形状が円形であり、それぞれの保持片71が、2つの変形部8によって把持部9と連結されている。栽培用具6Mの場合、変形部8において、先端部81が第一方向に沿って保持部7へ接続され、中間部分がヘアピンカーブ状に湾曲し、基端部82が第一方向に沿って把持部9に接続されている。このような構成により、栽培用具6Mでは、より長い変形部8を備え、且つ、先端部81と基端部82とが第一方向に一直線上に並ぶ。そのため、かかる構成の変形部8も、保持部7内の植物の生長に応じて撓み変形及び捩れ変形をする。
【0083】
さらに、図26及び27に示すように、栽培シートS1と同様に、それぞれが円形状の把持部9有する複数個の栽培用具6Mが、同一平面上に連結された栽培シートS2が利用者に提供されてもよい。
上述の通り、水耕栽培では、大規模に植物を栽培する場合が多く、複数の栽培用具6Mが1つの栽培シートS2としてまとまっていれば、栽培用具6Mを大量に扱う利用者にとって、栽培用具6Mの管理が容易になる。
【0084】
図26に示す栽培シートS2では、複数個の栽培用具6Mが方形格子状に配置されている。なお、栽培用具6同士は、例えば、比較的強度が弱く折れやすい連結部によって連結されている。
図27に示す栽培シートS2では、複数個の栽培用具6Mが千鳥状に配置されている。なお、栽培用具6同士は、例えば、比較的強度が弱く折れやすい連結部によって連結されている。このような構成により、栽培用具6M間の隙間を小さくすることができ、この結果、図27に示す栽培シートS2は、単位面積当たりに、より多くの栽培用具6Mを連結することができる。
【0085】
また、例えば、図28及び29に示す構造の栽培用具6Nも利用可能である。栽培用具6Nにおいては、把持部9の形状が六角形であり、上端が開放された六角形の枡形状である保持部7が、平面視でひし形の形状を成す3つの保持片71を並べて構成されており、保持片71同士が、隙間Gを挟んで互いに近接している。さらに、それぞれの保持片71が2つの変形部8によって把持部9に連結されている。さらにまた、2つの変形部8の各々により、それぞれの保持片71の外縁の中央位置と、把持部9における対応する辺の中央の位置と、が一直線上に連結されている。かかる構成の変形部8も、保持部7内の植物の生長に応じて撓み変形及び捩れ変形をする。
【0086】
以上までに、本発明に係る栽培用具に関して、複数の実施形態を例に挙げて説明したが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0087】
E 水耕栽培装置
S1、S2 栽培シート
G 隙間
1 容器
2 支持板
3 養液
4 苗
4X 種子
5、5X 培地
6、6A、6B、6C、6D、6E、6F、6G、6H、6I、6J、6K、6L、6M、6N 栽培用具
7 保持部
8 変形部
9 把持部
10 連結部
11 ランナ
71 保持片
72 底面
81 先端部
82 基端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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図29