(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078886
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】異種BIMモデル連携用のデータ変換装置とプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20240604BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240604BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
G06F30/13
G06Q50/08
E04B1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191481
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】伊波 咲子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 緑
(72)【発明者】
【氏名】北沢 宏武
【テーマコード(参考)】
5B146
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5B146AA04
5B146DE02
5B146DE12
5B146DG02
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】BIM構造モデルのデータに基づいて、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込ませる入力データを作成するに当たり、効率的にデータ変換を行うことを可能にしたデータ変換装置とプログラムを提供すること。
【解決手段】オブジェクト同士の接合部の情報を含まないBIM構造モデル50に関する第1データを、オブジェクト同士の接合部の情報を含むBIM生産モデル60を作成する、BIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な第2データに変換するデータ変換装置10であり、第1データは、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、オブジェクトの配置基準線に関する情報を備えておらず、少なくとも第1データを取得する取得部21と、第1データに基づいて上記各情報を備えた第2データを作成する作成部23と、第2データを記憶する記憶部25とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクト同士の接合部の情報を含まないBIM構造モデルに関する第1データを、オブジェクト同士の接合部の情報を含むBIM生産モデルを作成する、BIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な、第2データに変換する、異種BIMモデル連携用のデータ変換装置であって、
前記第1データは、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えておらず、
少なくとも前記第1データを取得する、取得部と、
前記第1データに基づいて、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成する、作成部と、
作成された前記第2データを記憶する、記憶部とを有することを特徴とする、異種BIMモデル連携用のデータ変換装置。
【請求項2】
前記BIM構造モデルでは、前記オブジェクトの種類に応じてオフセット量が設定されており、
前記作成部では、前記節点番号の3次元座標に対して、さらに前記オフセット量が情報として作成されることを特徴とする、請求項1に記載の異種BIMモデル連携用のデータ変換装置。
【請求項3】
前記オブジェクトには、主架構を構成する構造部材である、柱と梁と鉛直ブレースを含む1次オブジェクトと、主架構を構成しない構造部材である、小屋つなぎ梁と水平ブレースを含む2次オブジェクトとが含まれ、
前記作成部では、前記1次オブジェクトと前記2次オブジェクトの双方に関する情報を備えた、前記第2データを作成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の異種BIMモデル連携用のデータ変換装置。
【請求項4】
オブジェクト同士の接合部の情報を含まないBIM構造モデルに関する第1データを、オブジェクト同士の接合部の情報を含むBIM生産モデルを作成する、BIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な、第2データに変換するコンピュータに、以下の処理を実行させる、プログラムであって、
前記第1データは、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、オブジェクトの配置基準線に関する情報を備えておらず、
前記第1データを取得し、
前記第1データに基づいて、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、オブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成し、
作成された前記第2データを記憶することを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種BIMモデル連携用のデータ変換装置とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築設計においては、敷地の条件や周辺環境を勘案しながら建物(建築物)の配置を決定し、内外観や間取り構成、装飾等を設計する意匠設計がまず行われる。この意匠設計では、一般に普及しているCAD(Computer-aided design)を用いることにより、二次元図面は勿論のこと、パースを含む三次元図面が作成される。この意匠設計により設計された建物に対して、積雪や地震等に対する安全性能を満たすように、土台や骨組みを設定し、柱や梁、壁等の仕様や形状、配置を設定する構造設計が意匠設計に次いで行われる。さらに、この構造設計の後に、実際に適用され、工場にて生産される各部材がモデルに反映された、生産モデルを作成する、生産設計が行われる。
【0003】
昨今、上記する建物の設計において、BIM(Building Information Modeling)モデルを用いて、デザイナーや設計者等の間で建物に関する情報を共有化することが行われている。ここで、BIMモデルとは、建物を構成する構成要素(オブジェクトとも言い、梁や柱、壁等を含む)に関する、仮想の三次元空間における形状に関する情報や、材質、寸法、配設位置等に関する情報(これらをまとめて、「仕様情報」とする)を有する三次元モデルである。
【0004】
このBIMモデルを用いて、三次元モデルを様々な角度から見た三次元図面が作成できる他、三次元図面を様々に切断したり、様々な角度から見た平面図(伏図を含む)や立面図(軸組図を含む)といった二次元図面を作成できる。すなわち、三次元モデルを構成する各構成要素は、種々の仕様情報を内包しており、この仕様情報は、変更や修正、追加が可能であり、変更や追加等の履歴を残すこともできる。
【0005】
ここで、特許文献1には、上記するBIMを用いた情報管理システムが提案されている。具体的には、ユーザが利用する情報処理端末と、情報処理端末とネットワークを介して通信可能に接続されるサーバ装置とを有する情報管理システムである。このサーバ装置は、オブジェクトの形状情報と仕様情報をオブジェクトに関連付けて記憶し、オブジェクトとこれに関する作業項目とを関連付けた作業情報と、作業項目とこれに関する資源項目とを関連付けた資源情報とを記憶する記憶部と、形状情報、仕様情報、作業情報、資源情報に基づいて情報処理端末を利用するユーザの要求する情報を取得する制御部と、取得したユーザの要求する情報を要求元の情報処理端末に送信する通信部とを備えている。また、情報処理端末は、ネットワークを介してサーバ装置から受信した、情報処理端末を利用するユーザの要求する情報に基づいて、情報処理端末を利用するユーザに対して所定画面を表示する表示部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の情報管理システムによれば、建物に関する情報を適切に管理し、ユーザに必要な情報を簡単に取得させることができる。ところで、BIM意匠モデルが設計された後、構造設計担当者により、BIM意匠モデルが構造計算ソフトに読み込まれて構造計算が実行される。この構造計算にて作成される構造モデルのうち、所定の構造安全性をクリアした計算モデルは、BIMモデルとは異なる非BIM計算モデルであることから、この非BIM計算モデルを構造計算ソフトウェアとBIMソフトウェアを繋ぐ変換ソフトウェアに取り込んでデータ変換することにより、BIM構造モデルが作成される。
【0008】
設計対象建物には、例えばシステム建築が含まれる。システム建築とは、骨組みや屋根、外壁等の納まりが標準化されることにより、構成部材の生産プロセスがシステム化されている建物であり、例えば、工場や物流倉庫、ドラッグストアやコンビニエンスストア等の物販店舗等がその一例として挙げられる。設計対象建物がシステム建築に含まれる建物である場合は、外壁の厚みを可及的に薄くする観点から、複数の外柱の厚み範囲内に短尺な外梁(軒梁や胴差し)が配設され、外柱同士が外梁に接続される構成が適用され得る。そのため、複数の外柱の一部が大梁に接続され、他の一部が、大梁に対して直交方向に接続される小梁に接続され、さらに他の一部が、小梁に対して直交方向に接続される小屋つなぎ梁に接続されることにより、構造モデルの3次元的な構造安定性が確保されている。このようなシステム建築に関するBIM構造モデルでは、構造計算上必要となる主架構を構成する構造部材である、柱や梁(大梁や小梁)、鉛直ブレース等に加えて、小屋つなぎ梁や、小梁と小屋つなぎ梁とによって形成される格子内に配設される水平ブレースといった、主架構を構成しない構造部材がさらに含まれる。
【0009】
上記するBIM構造モデルを構成する柱や梁といった各オブジェクトは、その端点の3次元座標を有していないことから、オブジェクト同士の接合部の情報(接合プレートやボルト等に関する情報)は当然に有していない。そのため、BIM構造モデルに基づいて、工場にて生産される各オブジェクトがモデルに反映されたBIM生産モデルが作成されるようになっており、当該BIM生産モデルを構成する各オブジェクトに関する情報に基づいて、工場にて実際に生産される各オブジェクトのプロファイルが特定され、各オブジェクトの数量が算定され、さらには、正確な鉄骨重量等に基づく建設コストの算出が行われることになる。
【0010】
しかしながら、上記するようにBIM構造モデルを構成するオブジェクトのデータには、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込ませる入力データとしての情報量が不足している。そのため、BIM構造モデルのデータに基づいて、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込ませる入力データを作成するに当たり、例えば生産設計担当者が手入力にて多くの不足情報を追加する修正が余儀なくされている。その結果、この入力データを作成する際の生産設計担当者の負荷は極めて大きく、入力データの作成手間に起因して、BIM生産モデルの作成までに時間を要するといった課題がある。
【0011】
本発明は上記する課題に鑑みてなされたものであり、BIM構造モデルのデータに基づいて、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込ませる入力データを作成するに当たり、効率的にデータ変換を行うことを可能にした、異種BIMモデル連携用のデータ変換装置とプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく、本発明による異種BIMモデル連携用のデータ変換装置の一態様は、
オブジェクト同士の接合部の情報を含まないBIM構造モデルに関する第1データを、オブジェクト同士の接合部の情報を含むBIM生産モデルを作成する、BIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な、第2データに変換する、異種BIMモデル連携用のデータ変換装置であって、
前記第1データは、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えておらず、
少なくとも前記第1データを取得する、取得部と、
前記第1データに基づいて、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成する、作成部と、
作成された前記第2データを記憶する、記憶部とを有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、取得部において、オブジェクトの始点と終点の節点番号、節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えていない第1データを取得し、作成部において、第1データに基づいてこれらの情報を備えた第2データを作成することにより、生産設計担当者等による多数の手入力によるデータ修正を不要にして、BIM構造モデルに関する第1データをBIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な第2データに効率的に変換することが可能になる。
【0014】
ここで、「オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル」として、オブジェクトが角形鋼管である場合を例に挙げると、□-100×100×3.2といった構造断面ジオメトリの高さや幅、板厚を示す情報となる。また、「オブジェクトの配置基準線」とは、柱や梁等のオブジェクトの種類に応じた、オブジェクトを配置する際の基準線のことであり、例えば大梁や小梁等の梁ではその上面において梁の長手方向に延びる線が配置基準線となり得る。また、より詳細には、オブジェクトの構造断面ジオメトリにおいて、配置基準線のある位置を「押さえ位置」として設定することにより、3次元的なオブジェクトの配置位置が確定する。
【0015】
また、本発明による異種BIMモデル連携用のデータ変換装置の他の態様において、
前記BIM構造モデルでは、前記オブジェクトの種類に応じてオフセット量が設定されており、
前記作成部では、前記節点番号の3次元座標に対して、さらに前記オフセット量が情報として作成されることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、オブジェクトの種類に応じてオフセット量が設定されている場合に、作成部において、節点番号の3次元座標に対してさらにオフセット量が情報として作成され、オフセット量が加味された3次元座標が作成されることにより、柱や梁等のオブジェクトの種類に応じてBIM生産モデルに対応した入力データを作成することができる。
【0017】
ここで、「オフセット量」とは、BIM生産モデルにおいて、実際の取り付け性等の観点からオブジェクトの部位によって予め設定されている、配置基準線からの控え量(ずれ量)のことであり、屋根の大梁や外周の大梁(軒梁や胴差し)、小屋つなぎ梁、外柱の間に架け渡される鉛直ブレース等に設定され得る。
【0018】
また、本発明による異種BIMモデル連携用のデータ変換装置の他の態様において、
前記オブジェクトには、主架構を構成する構造部材である、柱と梁と鉛直ブレースを含む1次オブジェクトと、主架構を構成しない構造部材である、小屋つなぎ梁と水平ブレースを含む2次オブジェクトとが含まれ、
前記作成部では、前記1次オブジェクトと前記2次オブジェクトの双方に関する情報を備えた、前記第2データを作成することを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、作成部において、主架構を構成する構造部材である、柱と梁と鉛直ブレースを含む1次オブジェクトに加えて、主架構を構成しない構造部材である、小屋つなぎ梁と水平ブレースを含む2次オブジェクトに関する情報が第2データとして作成されることにより、実施工の際に適用される、細かな部材(オブジェクト)を含んだBIM生産モデル作成用の第2データを作成することができる。
【0020】
ここで、「主架構」とは、構造計算を可能とする計算モデルを構成する架構を意味している。例えば、設計対象建物が上記するシステム建築建物である場合は、複数の外柱や中柱、外柱同士を繋ぐ外梁、柱同士を繋ぐ大梁、柱と大梁を繋ぐ小梁等が、主架構を構成する構造部材に相当する「1次オブジェクト」に含まれる。
【0021】
一方、主架構を構成しない構造部材に相当する「2次オブジェクト」には、外柱と小梁を繋いだり、小梁同士を繋ぐ小屋つなぎ梁や、小梁と小屋つなぎ梁等によって形成される格子内に配設される水平ブレース等が含まれる。
【0022】
尚、オブジェクト同士の接合部に適用される、接合プレートやボルト、溶接や、外装材下地(胴縁)、天吊材やサッシ下地、構造部材に取り付けられている吊りピース等の建て方用治具、ネットフック等の安全設備用治具等は、構造部材ではないことから非構造部材となるが、この非構造部材は、BIM構造モデルではなく、BIM生産モデルの作成の際に生産設計担当者等による入力にてモデルに付加されることになる。
【0023】
また、本発明によるプログラムの一態様は、
オブジェクト同士の接合部の情報を含まないBIM構造モデルに関する第1データを、オブジェクト同士の接合部の情報を含むBIM生産モデルを作成する、BIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な、第2データに変換するコンピュータに、以下の処理を実行させる、プログラムであって、
前記第1データは、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、オブジェクトの配置基準線に関する情報を備えておらず、
前記第1データを取得し、
前記第1データに基づいて、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、オブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成し、
作成された前記第2データを記憶することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、パーソナルコンピュータ等にインストールもしくはダウンロードされたプログラムにより、オブジェクトの始点と終点の節点番号、節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えていない第1データを取得し、第1データに基づいてこれらの情報を備えた第2データを作成することにより、生産設計担当者等による多数の手入力によるデータ修正を不要にして、BIM構造モデルに関する第1データをBIM生産モデル作成用ソフトウェアに読み込み可能な第2データに効率的に変換することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明による異種BIMモデル連携用のデータ変換装置とプログラムによれば、BIM構造モデルのデータに基づいて、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込ませる入力データを作成するに当たり、効率的にデータ変換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態に係るデータ変換装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係るデータ変換装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図4】
図3のIV部の拡大図であって、大梁と小梁と中柱の接合部のモデル図である。
【
図5】BIM構造モデルを構成するオブジェクトの一例である梁のモデル図であって、(a)は伏図であり、(b)は(a)の1通りの軸組図であり、(c)は(a)のA通りの軸組図である。
【
図6】(a)乃至(d)は、BIM構造モデルを構成するオブジェクトに関する入力例を示す図である。
【
図8】オブジェクトの一例のファミリとプロファイルの一覧を示す図である。
【
図9】オブジェクトの一例である梁の配置基準線とオフセット量を説明する図である。
【
図10】オブジェクトの一例である梁のジオメトリを位置合わせする際の押さえ位置を説明する図である。
【
図11】BIM生産モデル作成用のソフトウェアにおける、第2データの読み込み例を示す図である。
【
図13】
図12のXIII部の拡大図であって、
図4に対応する図であり、大梁と小梁と中柱の接合部のモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施形態に係る異種BIMモデル連携用のデータ変換装置の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0028】
[実施形態に係る異種BIMモデル連携用のデータ変換装置]
図1乃至
図13を参照して、実施形態に係る異種BIMモデル連携用のデータ変換装置の一例について説明する。ここで、
図1は、実施形態に係るデータ変換装置のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2は、データ変換装置の機能構成の一例を示す図である。
【0029】
データ変換装置10は、構造設計担当者の利用するユーザ端末とは異なるユーザ端末であり、構造設計担当者のユーザ端末にて作成されたBIM構造モデルに関する第1データがデータ変換装置10に取り込まれ、データ変換装置10にて第2データに変換される。尚、データ変換装置10はその他、構造設計担当者が利用するユーザ端末であってもよく、この形態では、このユーザ端末にてBIM構造モデルを作成し、続いて、BIM構造モデルに関する第1データを、BIM生産モデルを作成するためのソフトウェアに読み込み可能な第2データに変換する。
【0030】
ここで、BIM意匠モデルの作成からBIM構造モデルの作成までの一連のフローを概説すると以下の通りである。すなわち、意匠設計担当者は、自身のユーザ端末にて建物のBIM意匠モデルを作成(設計)し、このBIM意匠モデルに関するデータが構造設計担当者のユーザ端末に取り込まれるようになっている。
【0031】
構造設計担当者のユーザ端末には、RC/SRC/S造建物の高機能一貫構造計算ソフトウェアである、Super Build(登録商標)/SS7(ユニオンシステム株式会社製)や、BUS-6(株式会社構造システム社製)等がインストールされている。ここで、RC造は鉄筋コンクリート造を示し、SRC造は鉄骨鉄筋コンクリート造を示し、S造は鉄骨造を示す。
【0032】
構造設計担当者のユーザ端末において、高機能一貫構造計算ソフトウェアにBIM意匠モデルが取り込まれ、計算ソフトウェア内において計算モデルを作成し、計算モデルを構成する各種の構成要素の仕様情報を構造設計担当者が入力した後、構造計算が実行される。このように構造設計担当者のユーザ端末にある計算ソフトウェア内において作成された計算モデルは、BIMモデルでないことから、非BIM計算モデルとなる。
【0033】
構造設計担当者のユーザ端末には、構造計算ソフトウェアとBIMソフトウェアを繋ぐデータ連携ソフトウェアである、ST-Bridge(一般社団法人building SMART Japan製)がインストールされており、さらに、BIMソフトウェアとして、Autodesk Revit(登録商標)(Autodesk社製)がインストールされている。これらのソフトウェアを起動することにより、非BIM計算モデルがBIM計算モデルに変換される。尚、BIM意匠モデルを作成する意匠設計担当者のユーザ端末にも、Autodesk Revitが同様にインストールされている。
【0034】
構造設計担当者は、構造計算により所定の構造安全性をクリアしたBIM計算モデル(主架構を構成する構造部材を備えているBIM計算モデル)に対して、構造計算には不要であった、主架構を構成しない構造部材をBIM計算モデルに付加することにより、BIM構造モデルを作成(設計)する。BIM構造モデルは、設計対象の建築物において、主架構を構成する柱や梁(大梁や小梁)、鉛直ブレース等の構造部材に加えて、小屋つなぎ梁や水平ブレースといった主架構を構成しない構造部材を含んでいる。すなわち、これら主架構を構成しない構造部材は、構造設計担当者による入力によって付加され、BIM構造モデルが作成されることになる。
【0035】
BIM構造モデルを構成する柱や梁といった各オブジェクトは、その端点の3次元座標を有しておらず、オブジェクト同士の接合部の情報(接合プレートやボルト等に関する情報)も当然に有していない。そのため、BIM構造モデルに基づいて、工場にて生産される各オブジェクトがモデルに反映されたBIM生産モデルが作成されるようになっており、当該BIM生産モデルを構成する各オブジェクトに関する情報に基づいて、工場にて実際に生産される各オブジェクトのプロファイルが特定され、各オブジェクトの数量が算定され、さらには、正確な鉄骨重量等に基づく建設コストの算出が行われることになる。
【0036】
図1等に示すデータ変換装置10は、BIM構造モデルに関する第1データを、BIM生産モデルを作成するためのソフトウェアに読み込み可能な第2データに変換する装置である。
【0037】
以下の説明では、BIM生産モデルを作成する生産設計担当者が、データ変換装置10を利用して、BIM構造モデルに関する第1データを第2データに変換するものとして説明するが、BIM構造モデルを作成した構造設計担当者が、データ変換装置10を利用して第1データを第2データに変換してもよい。
【0038】
尚、図示を省略するが、各設計担当者のユーザ端末には、意匠設計担当者が利用するユーザ端末や構造設計担当者が利用するユーザ端末、生産設計担当者が利用するユーザ端末等の他にも、積算ユーザ端末、施工計画ユーザ端末、実施工ユーザ端末(いずれも図示せず)等、様々なユーザ端末がある。
【0039】
このような各種のユーザ端末は、ネットワークを介して共有サーバに接続され、各ユーザ端末にて作成されたBIMモデル(BIM意匠モデル、BIM構造モデル、BIM生産モデル等)は都度共有サーバに送信及び格納され、アクセス権限が付与されているユーザ端末が共有サーバにアクセス可能な設計支援システムが構築されてよい。この設計支援システムには、一つのハウスメーカー等の会社内部のみで情報共有がなされるクローズドネットワークを有する形態の他、外部機関(生産設計、設備設計、施工計画等の段階で協同して作業を行う資機材供給メーカー等の有する資機材供給メーカー等)との間においても情報共有が可能な、オープンネットワークを有する形態が含まれる。また、共有サーバには、データ保管の他にも、各種のアプリケーションソフトウェアを複数のユーザが共有できるクラウドサーバが適用され得る。
【0040】
以下の説明では、システム建築に含まれる建物を設計対象建物として、データ変換装置10について説明する。尚、システム建築には、物流倉庫、ドラッグストアやコンビニエンスストア等の物販店舗等が含まれる。
【0041】
図1に示すように、データ変換装置10は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)やワークステーション(WS:Work Station)、タブレット等の情報処理装置からなり、いずれもコンピュータにより構成される。
【0042】
データ変換装置10を構成するコンピュータは、接続バス16により相互に接続されているCPU(Central Processing Unit)11、主記憶装置12、補助記憶装置13、通信IF(interface)14、及び入出力IF15を備えている。主記憶装置12と補助記憶装置13は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体である。尚、上記の構成要素はそれぞれ個別に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。
【0043】
CPU11は、MPU(Microprocessor)やプロセッサとも呼ばれ、CPU11は、単一のプロセッサであってもよいし、マルチプロセッサであってもよい。CPU11は、コンピュータからなるデータ変換装置10等の全体の制御を行う中央演算処理装置である。CPU11は、例えば、補助記憶装置13に記憶されたプログラムを主記憶装置12の作業領域にて実行可能に展開し、プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことにより、所定の目的に合致した機能を提供する。
【0044】
主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、例えば、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置13は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納し、外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶装置13には、例えば、OS(Operating System)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、例えば、通信IF14を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、ネットワークに接続する構造設計担当者のユーザ端末や生産設計担当者のユーザ端末等の情報処理装置や、外部記憶装置等が含まれる。
【0045】
補助記憶装置13は、例えば、主記憶装置12を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラムや、CPU11が処理するデータ等を記憶する。補助記憶装置13は、不揮発性半導体メモリ(フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM))を含むシリコンディスク、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)装置、ソリッドステートドライブ装置等である。また、補助記憶装置13として、CDドライブ装置、DVDドライブ装置、BDドライブ装置といった着脱可能な記録媒体の駆動装置が例示される。着脱可能な記録媒体として、CD、DVD、BD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)メモリカード等が例示される。
【0046】
通信IF14は、データ変換装置10等が接続するネットワークとのインターフェイスである。通信IF14は、ネットワークを介して、共有サーバに接続され、データ変換の際に利用する様々なアプリケーションソフトウェアをダウンロードしたり、構造設計担当者が作成し、共有サーバに格納されているBIM構造モデルに関する第1データを受信する。
【0047】
入出力IF15は、データ変換装置10に接続する機器との間でデータの入出力を行うインターフェイスである。入出力IF15には、例えば、キーボード、タッチパネルやマウス等のポインティングデバイス、マイクロフォン等の入力デバイス等が接続する。データ変換装置10は、入出力IF15を介して、入力デバイスを操作する操作者からの操作指示等を受け付ける。
【0048】
また、入出力IF15には、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(EL:Electroluminescence)等の表示デバイス、プリンタ、スピーカ等の出力デバイスが接続されてよい。データ変換装置10は、入出力IF15を介し、CPU11により処理されるデータや情報、主記憶装置12、補助記憶装置13に記憶されるデータや情報を出力する。
【0049】
図2に示すように、データ変換装置10は、CPU11によるプログラムの実行により、少なくとも、取得部21、作成部23、及び記憶部25の各種機能を提供する。尚、上記処理機能の少なくとも一部が、DSP(Digital Signal Processor)やGPU(Graphics Processing Unit)等によって提供されてもよく、同様に、上記処理機能の少なくとも一部が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用LSI(large scale integration)やその他のデジタル回路等であってもよい。
【0050】
取得部21は、BIM構造モデルに関する第1データを取得し、記憶部25に記憶(格納)するとともに、共有サーバに格納されているアプリケーションソフトウェア等を受信する。さらに、取得部21は、作成された第2データを、BIM生産モデル作成用のユーザ端末に送信する。
【0051】
ここで、取得部21にて取得される
図3に示すBIM構造モデル50は、システム建築建物に関する構造モデルである。BIM構造モデル50の外周には、間隔を置いて配設される複数の外柱31がZ方向に立設し、隣接する外柱31の上部同士が短尺の外梁33(軒梁等)にて接続され、隣接する外柱31同士はさらに、その高さ方向の途中にある横桟にて接続され、横桟の上下に配設されているクロス状の鉛直ブレース32によってさらに接続されることにより、外周モデルが形成される。
【0052】
外周モデルの内部には複数の中柱34がZ方向に立設しており、Y方向に延設する複数(図示例は4本)の大梁35が間隔を置いて配設され、大梁35に直交するX方向に延設する複数の小梁36が大梁35同士を接続している。さらに、隣接する小梁36同士や、小梁36と外梁33は、複数の小屋つなぎ梁37によって繋がれ、小梁36と小屋つなぎ梁37等により形成される格子内には水平ブレース38が配設されている。
【0053】
BIM構造モデル50は、その構成要素である梁や柱等のオブジェクトの始点と終点の節点番号、節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えていない。このように、オブジェクトの始点と終点の3次元座標を備えていないこととの関連で、BIM構造モデルは、オブジェクト同士の接合部の情報を備えていない。
【0054】
このことを、
図3のIV部の拡大図である
図4を参照して説明する。ここで、
図4は、大梁と小梁と中柱の接合部のモデル図である。
図4に示すように、BIM構造モデルでは、大梁35や小梁36、中柱34、水平ブレース38の各端点の3次元座標が存在しないことから、接合部では各オブジェクトの端部が離れた状態でモデル化されている。ここで、大梁35や小梁36、外周モデルを形成する外柱31や鉛直ブレース32、外梁33等の主架構を構成する構造部材を1次オブジェクトとし、主架構を構成しない構造部材である、小屋つなぎ梁37や水平ブレース38を2次オブジェクトとする。
【0055】
1次オブジェクト同士や1次オブジェクトと2次オブジェクトを接合する接合プレートやボルト、溶接部等は、構造部材ではない非構造部材として、以下で説明するBIM生産モデルの作成の際に生産設計担当者による入力により付加される。
図4に示すモデル図からも明らかなように、1次オブジェクト同士は接合されておらず、接合部における非構造部材に関する情報は存在しない。
【0056】
また、小梁36の上には、非構造部材に含まれる天吊材等が存在し、大梁35や小梁36には、同様に非構造部材に含まれるネットフック等の安全設備用治具が取り付けられているのが一般的であるが、
図4に示すモデル図では、これらの非構造部材に関する情報も存在しない。
【0057】
次に、BIM構造モデルを構成する各オブジェクトに関する入力例は、例えば
図5と
図6に示す通りとなる。ここで、
図5は、BIM構造モデルを構成するオブジェクトの一例である梁のモデル図であって、
図5(a)は伏図であり、
図5(b)は
図5(a)の1通りの軸組図であり、
図5(c)は
図5(a)のA通りの軸組図である。また、
図6(a)乃至
図6(d)は、BIM構造モデルを構成するオブジェクトに関する入力例を示す図である。
【0058】
各オブジェクトには、様々なファミリが設定されており、
図6(a)に示す梁のファミリとして、S_B_H_1Secが例示されている。このファミリには、
図6(a)乃至
図6(c)に示すようなタイプパラメータに関する様々な情報が設定され、もしくは選択可能とされている。
【0059】
まず、
図6(a)に示すように、符合「B49」が設定されており、BIM生産モデル作成用のソフトウェアにおけるオブジェクトの特定に際しては、この符合(もしくは設計符合)が用いられる。
【0060】
タイプパラメータにはその他、
図6(a)に示すマテリアル情報(図示例はSS400)、
図6(b)に示す構造断面ジオメトリ(高さや幅、ウェブやフランジの長さ)、
図6(c)に示す設置部位(図示例は屋根小梁)等が含まれる。
【0061】
さらに、
図6(d)に示すように、設置部位等に応じて設定されているオフセット量(図示例はZオフセット値が-50mm)がオブジェクトに固有のインスタンスパラメータとして設定されている。
【0062】
以上の内容が、第1データの一例となる。上記するように、この第1データには、オブジェクトの始点と終点の節点番号、節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報は存在しない。
【0063】
作成部23(
図2参照)は、取得部21にて取得された第1データに基づいて、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成する。
【0064】
ここで、
図7は、作成部23において作成された、第2データの一例を示している。
【0065】
図7に示すように、例えば、オブジェクトの一例である梁の両端(始点と終点)の節点番号「0」,「1」と、各節点番号「0」,「1」の3次元座標(X,Y,Z)が作成される。ここで、Z座標の「3950」に関し、図示例の梁の配置基準線のZ座標は「4000」であるが、
図6(d)に示すZオフセット値「-50」なるオフセット量が加味されて、Z座標が50mmオフセットされた「3950」として自動設定される。すなわち、予めオフセット量が設定されているオブジェクトに関しては、作成部23はこのオフセット量を加味してオブジェクトの端点の3次元座標を自動設定する。
【0066】
また、
図6(a)の符合「B49」は、設計符合として「B49」がそのまま読み込まれる。さらに、図示例では、回転「0」(回転角度が0度で、回転させる必要なしを意味する)が表示されている。この回転とは、例えば、水勾配のある屋根を形成する屋根小梁に関しては、水勾配に応じた回転角度が設定されることになる。その他、断面が矩形で強軸と弱軸を有する外柱に関しては、強軸方向を建物の内外方向に向けて配設する決まりがある際に、仮に弱軸方向が建物の内外方向に向けて配設されている場合は、回転「90(度)」が表示されて、外柱を90度回転する補正が行われるようになっている。
【0067】
また、
図6(b)に示す構造断面ジオメトリの情報を統合することにより、カタログベースのプロファイルとして、H形鋼に含まれる、H-496×199×9×14が作成される。
【0068】
尚、オブジェクトごとに、ファミリ名と断面、カタログベースのプロファイル名は予め設定されており、その一例が
図8に示すような一覧として、記憶部25に記憶されている。ここで、
図8に記載される「TEKLA」とは、正式には「Tekla Structures」であり、株式会社トリンブル・ソリューションズ製のBIM生産モデル作成用のソフトウェア名のことである。すなわち、図示例のデータ変換装置10は、Autodesk RevitによるBIM構造モデルの第1データに基づき、BIM生産モデルを作成するTekla Structuresに読み込み可能な第2データを作成する装置である。
【0069】
また、部材に応じて配置基準線が設定されているため、部材名:「屋根小梁」なる情報に基づいて、屋根小梁を形成するH形鋼の上フランジの上面が配置基準線(文字通り、部材を配置する際の基準となる線)として設定されている。具体的には、
図9に示すように、屋根小梁の配置基準線は上フランジの上面となる。
【0070】
尚、
図9には、屋根小梁の両端の3次元座標が、接続される柱の軸芯と配置基準線との交点に設定されることを示しており、さらに、Z方向のオフセット量(zオフセット値-50mm)の他に、Y方向にもオフセット量(yオフセット値-34mm)が設定されていることを示している。
【0071】
配置基準線が上フランジの上面であることが特定されたとしても、H形鋼の断面ジオメトリのうち、どの部位に配置基準線が設定されるかが明確でないと、屋根小梁の3次元的な配置位置が設定できない。例えば、
図10に示すように、H形鋼の断面ジオメトリには、1乃至9の複数の断面位置が設定できるが、上フランジにも7乃至9までの3点が設定されることから、この3点のいずれに配置基準線を設定するかが明確でない。
【0072】
そこで、このように断面ジオメトリにおける配置基準線の位置を、「押さえ位置」として設定する。
図7では、この押さえ位置を上フランジの中央位置である「8」として設定している。
【0073】
このように、作成部23では、BIM構造モデル50を形成する各オブジェクトに関し、オブジェクトの始点と終点の節点番号、該節点番号の3次元座標、オブジェクトに関するカタログベースのプロファイル、及びオブジェクトの配置基準線に関する情報を備えた、第2データを作成する。
【0074】
作成部23にて作成され、BIM生産モデル作成用のソフトウェアにて読み込み可能である2次データは、記憶部25に記憶される。
【0075】
2次データは、例えば
図11に示す読み込み例において示す態様で、BIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込まれることになる。
【0076】
2次データがBIM生産モデル作成用のソフトウェアに読み込まれることによって自動生成された、Tekla StructuresのBIMモデルに対して、接合部の構成部材(接合プレートやボルト等)、天吊材、ネットフック等の安全設備用治具といった非構造部材を生産設計担当者が入力にて付加することにより、
図12に示すようなBIM生産モデル60が生産設計担当者のユーザ端末にて作成される。
【0077】
図13は、
図12のXIII部の拡大図であり、
図4に対応する図である。
図4と比較すると明らかであるが、中柱34に対して大梁35と小梁36の端部が当接し、各部材同士を繋ぐ接合プレート42とボルト44が図示され、水平ブレース38を繋ぐ接合プレート43が図示されている。さらに、小梁36の上に配設される天吊材41、大梁35と小梁36に取り付けられているネットフック48が図示されている。
【0078】
図13から明らかなように、各オブジェクトは、接合部までの長さを有していることから、その断面ジオメトリと合わせて、工場にて生産される各オブジェクトが詳細に設定されることになる。これは、第2データにおいて、各オブジェクトの始点と終点の3次元座標が規定されていることや、各オブジェクトの配置基準線等に関する情報が含まれていることに依拠している。
【0079】
さらに、接合部における様々な接合部材や、天吊材、様々な治具等に関する詳細な情報がBIM生産モデルに含まれることにより、これらも工場生産部材としてカウントされることになる。
【0080】
このように、データ変換装置10を適用することにより、BIM構造モデル50の有する第1データに基づいて、BIM生産モデル60を作成するソフトウェアに読み込ませる入力データ(第2データ)を作成するに当たり、効率的にデータ変換を行うことが可能になる。
【0081】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0082】
10:データ変換装置(異種BIMモデル連携用のデータ変換装置)
21:取得部
23:作成部
25:記憶部
31:外柱
32:鉛直ブレース
33:外梁
34:中柱
35:大梁
36:小梁
37:小屋つなぎ梁
38:水平ブレース
41:天吊材
42,43:接合プレート
44:ボルト
48:ネットフック
50:BIM構造モデル
60:BIM生産モデル