(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078910
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/00 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
B60C23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191525
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(57)【要約】
【課題】車輪脱落の予兆の有無を判定する判定処理の精度を維持しつつ、判定処理を実行する制御部の負荷を軽減する。
【解決手段】センサ装置100は、車体に取り付けられる車輪の状態を示す信号を出力する加速度センサ(1)と、加速度センサ(1)からの信号に基づいて車輪の脱落の予兆の有無を判定する脱輪判定処理を実行する信号処理部(2)とを備える。信号処理部(2)は、所定の切替条件が成立している場合、切替条件が成立していない場合に比べて、脱輪判定処理の実行頻度を高くする。切替条件は、外気温がしきい温度よりも低いという気温条件と、車輪脱着時からの経過時間がしきい時間未満であるという経過条件とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる車輪の状態を示す信号を出力するセンサ部と、
前記センサ部からの信号に基づいて前記車輪の脱落の予兆の有無を判定する判定処理を実行する制御部とを備え、
前記制御部は、所定条件が成立している場合、前記所定条件が成立していない場合に比べて、前記判定処理の実行頻度を高くする、判定装置。
【請求項2】
前記所定条件は、前記車輪を前記車体に取り付けた時からの経過期間に関する経過条件を含み、
前記制御部は、前記経過条件が成立している場合、前記経過条件が成立していない場合に比べて、前記判定処理の実行頻度を高くする、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記所定条件は、前記経過条件に加えて、気温に関する気温条件を含み、
前記制御部は、
前記経過条件および前記気温条件の双方が成立していない場合は前記判定処理の実行頻度を初期頻度とし、
前記経過条件および前記気温条件の少なくとも一方が成立した場合は前記判定処理の実行頻度を前記初期頻度よりも高くする、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記経過条件および前記気温条件の一方が成立し、かつ他方が成立していない場合は前記判定処理の実行頻度を前記初期頻度よりも高い第1頻度とし、
前記経過条件および前記気温条件の双方が成立している場合は前記判定処理の実行頻度を前記第1頻度よりも高い第2頻度とする、請求項3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記気温条件は、外気温が所定値よりも低いという条件、および所定期間における平均気温が所定値よりも低い時期であるという条件の少なくとも一方を含む、請求項3または4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記経過条件は、前記車輪を前記車体に取り付けた時点からの経過時間が所定値未満であるという条件、または、前記車輪を前記車体に取り付けた時からの前記判定処理または所定処理の実行回数が所定値未満であるという条件の少なくとも一方を含む、請求項2~4のいずれかに記載の判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車輪脱落の予兆の有無を判定する判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005-329907号公報(特許文献1)には、車輪(タイヤあるいはホイール)に取り付けられた検出器の検出値に基づいて、車輪脱落の予兆(車輪を車体に取り付けるナットの緩み)の有無を判定する処理を行なう装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2005-329907号公報に開示されたような判定処理を行なう装置において、通常、判定処理の実行頻度は一定の頻度に固定されているのが一般的である。検出処理の実行頻度が一律に高い値に固定されると、判定精度は向上するが、判定処理を行なう制御部の負荷が増大する。一方、判定処理の実行頻度が一律に低い値に固定されると、制御部の負荷を軽減することができるが、判定精度が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車輪脱落の予兆の有無を判定する判定処理の精度を維持しつつ、判定処理を実行する制御部の負荷を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による判定装置は、車体に取り付けられる車輪の状態を示す信号を出力するセンサ部と、センサ部からの信号に基づいて車輪の脱落の予兆の有無を判定する判定処理を実行する制御部とを備える。制御部は、所定条件が成立している場合、所定条件が成立していない場合に比べて、判定処理の実行頻度を高くする。
【0007】
上記の態様によれば、判定処理の実行頻度が、一定の頻度に固定されるのではなく、所定条件の成否に応じて切り替えられる。具体的には、所定条件が成立している場合には、判定処理の実行頻度が高くされる。これにより、車輪の脱落の予兆の有無をより精度よく判定することができる。一方、所定条件が成立していない場合には、判定処理の実行頻度は高くされない。これにより、判定処理を実行する制御部の処理負荷を軽減することができる。その結果、判定処理による判定精度を維持しつつ、制御部の処理負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車輪脱落の予兆の有無を判定する判定処理の精度を維持しつつ、判定処理を実行する制御部の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】判定装置が搭載される車両を模式的に示す図である。
【
図2】センサ装置が配置されるナットの断面の一例を示す図である。
【
図5】車輪脱着後の期間別の車輪脱落の発生件数を示す図である。
【
図6】センサ装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
【
図7】センサ装置の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本実施の形態による判定装置が搭載される車両200を模式的に示す図である。車両200は、通信端末201と、ボタン202と、外気温センサ203と、制御装置205と、複数の車輪210とを備える。
【0012】
複数の車輪210の各々は、ホイール220と、ホイール220に取り付けられるタイヤ230とを含む。
【0013】
各車輪210のホイール220は、5つのナット240により車両200の車体(より詳しくは
図2に示すホイールハブ250a)に取り付けられている。なお、各車輪210のナット240の個数は5つに限定されるものではない。
【0014】
各車輪210を車体に取り付ける5つのナット240のうちの1つには、センサ装置100が配置される。なお、センサ装置100は、各車輪210を車体に取り付ける5つのナット240のうちの2つ以上に配置されていてもよい。本実施の形態によるセンサ装置100は、本開示の「判定装置」の一例である。
【0015】
図2は、センサ装置100が配置されるナット240の断面の一例を示す図である。なお、
図2には、ダブルタイヤの例が示されている。ダブルタイヤにおいては、ホイール220は、内側ホイール222と外側ホイール223とで構成される。
【0016】
ホイール220には、ホイール穴221が設けられている。ホイール穴221には、ホイールハブ250aに固定されているボルト250が挿入(貫通)される。ナット240は、ホイール穴221に挿入された状態のボルト250をホイール220に締結する。
【0017】
ナット240には、ナットキャップ241が取り付けられている。ナットキャップ241は、天井部241aと、側面部241bとを含む。側面部241bは、ボルト250のうちホイール穴221を貫通した部分を周状に取り囲むように設けられている。天井部241aは、ボルト250の先端部251と(ボルト250の挿入方向に)対向するように設けられている。天井部241aは、側面部241bと連続的に設けられている。なお、ナット240とホイール220との間には、ワッシャ243が設けられていてもよい。
【0018】
センサ装置100は、ナットキャップ241の天井部241aの内表面241cに取り付けられて(接着されて)いる。したがって、センサ装置100は、ボルト250が収容されるナットキャップ241の空間S内に配置されている。なお、センサ装置100は、ナットキャップ241ではなくナット240自体に取り付けられてもよい。
【0019】
センサ装置100は、車体に対する車輪210の取付状態を示す信号を出力するセンサ(たとえば加速度センサ)を備え、そのセンサからの信号に基づいて車輪210の脱落の予兆(ナット240の緩み)の有無を判定する。
【0020】
図3は、センサ装置100の構成の一例を示す図である。
図3には、センサ装置100が車輪210の脱落の予兆(ナット240の緩み)の有無を加速度センサを用いて判定する場合の構成が例示されている。なお、センサ装置100が車輪210の脱落の予兆の有無を判定するために用いられるセンサは、必ずしも加速度センサに限定されず、たとえば磁気センサであってもよい。
【0021】
センサ装置100は、加速度センサ1と、信号処理部2と、通信部3と、電源部4とを備える。加速度センサ1は、たとえば、ホイール220の回転軸に対して直交する平面において互いに直交する2つの軸(X軸およびY軸)の各々の加速度を検出する。加速度センサ1は、本開示の「センサ部」の一例である。
【0022】
通信部3は、車両200の通信端末201(
図1参照)との間で無線通信可能に構成される。通信部3は、信号処理部2の処理結果を示す信号を車両200の通信端末201(
図1参照)に送信する。また、通信部3は、車両200の通信端末201(
図1参照)から送信された情報を受信して信号処理部2に送信する。
【0023】
電源部4は、加速度センサ1、信号処理部2、および、通信部3の各々に電力を供給する。電源部4は、たとえばボタン電池などで実現することができる。
【0024】
信号処理部2は、図示されないCPU等のプロセッサと、メモリと、入出力バッファとを含んで構成される。加速度センサ1からの信号(X軸方向の加速度およびY軸方向の加速度)に基づいてナット240が緩んでいるか否かを判定し、その判定結果に基づいて車輪210の脱落の予兆の有無を判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する処理(以下「脱輪判定処理」ともいう)を実行する。信号処理部2は、加速度センサ1からの信号に基づいてナット240が緩んでいると判定される場合には車輪210の脱落の予兆が有ると判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する。一方、加速度センサ1からの信号に基づいてナット240が緩んでいると判定されない場合には車輪210の脱落の予兆が無いと判定し、その判定結果を通信部3から車両200の通信端末201に送信する。信号処理部2は、本開示の「制御部」の一例である。
【0025】
図1に戻って、通信端末201は、各車輪210のセンサ装置100との間で無線通信可能に構成される。
【0026】
制御装置205は、図示されないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリと、入出力バッファとを含んで構成される。制御装置205は、車輪210のセンサ装置100から通信端末201が受信した信号に基づいて、車輪210の状態を監視する。
【0027】
ボタン202は、少なくとも1つの車輪210の脱着作業をユーザが行なった場合に、ユーザによって押されるボタンである。ユーザがボタン202を押すと、ボタン202は、ユーザによって押されたことを示す信号を制御装置205に出力する。
【0028】
外気温センサ203は、外気温Toutを検出し、検出結果を示す信号を制御装置205に出力する。
【0029】
制御装置205は、外気温センサ203によって検出された外気温Toutを示す信号を、無線通信により、通信端末201からセンサ装置100の通信部3に送信する。
【0030】
制御装置205は、ユーザによってボタン202が押された場合、少なくとも1つの車輪210の脱着作業が行なわれたことを示す信号(以下「車輪脱着信号」とも称する)を、無線通信により、通信端末201からセンサ装置100の通信部3に送信する。
【0031】
<脱輪判定処理の実行頻度の切替>
本実施の形態によるセンサ装置100は、上述の脱輪判定処理の実行頻度Fを、所定の切替条件の成否に応じて切り替えるように構成されている。
【0032】
近年の車輪脱落の発生状況を考察すると、車輪脱落の発生には、車輪脱落発生時の環境温度(外気温)、および車輪脱着後の経過期間(ユーザによる車輪脱着作業時から車輪脱落発生時までの期間)が関係していることが推察される。
【0033】
図4は、近年の日本国での車輪脱落の月別発生件数を示す図である。
図4に示すように、車輪脱落の発生は、11月から2月までの寒い時期(冬期)に集中している。この状況から、車輪脱落には発生時の環境温度が関係している、より具体的には、車輪脱落は外気温が低い場合に発生し易いことが推察される。
【0034】
図5は、近年の日本国での車輪脱着後の期間別の車輪脱落の発生件数を示す図である。
図5に示すように、車輪脱落の発生は、ユーザによる車輪脱着作業後の1~2ヶ月の期間内に集中している。この状況から、車輪脱落は、車輪脱着後の経過期間が関係している、より具体的には、車輪脱着後の一定期間(1~2ヶ月)内に発生し易いことが推察される。
【0035】
上記のような推察結果に鑑み、本実施の形態においては、脱輪判定処理の実行頻度Fを切り替えるための切替条件として、外気温(環境温度)に関する「気温条件」と、車輪210の脱着後の期間に関する「経過条件」とが含まれる。
【0036】
「気温条件」は、外気温Toutがしきい温度よりも低い、という条件である。しきい温度は、車輪脱落の発生が集中する寒い時期(冬期)であるか否かを判定可能な値に設定される。たとえば、しきい温度は、秋期から冬期に切り替わる時期の平均気温、あるいは、冬期から春期に切り替わる時期の平均気温に基づいて設定される。
【0037】
「経過条件」は、車輪210の脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満である、という条件である。しきい時間は、車輪脱落の発生が集中する、車輪脱着時からの1~2ヶ月の間の時間に設定される。
【0038】
センサ装置100の信号処理部2は、上述の気温条件および経過条件の少なくとも一方が成立している場合には、気温条件および経過条件の双方が成立していない場合よりも、脱輪判定処理の実行頻度Fを高くする。
【0039】
図6は、センサ装置100の信号処理部2が脱輪判定処理を実行する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0040】
信号処理部2は、外気温Toutを取得する(ステップS10)。たとえば、信号処理部2は、車両200の通信端末201から外気温センサ203の検出結果を受信することによって、外気温Toutを取得することができる。なお、センサ装置100内に外気温センサが備えられる場合には、センサ装置100内の外気温センサの検出結果を外気温Toutとして取得するようにしてもよい。
【0041】
次いで、信号処理部2は、車輪脱着時からの経過時間Tを取得する(ステップS20)。たとえば、信号処理部2は、車両200の通信端末201から車輪脱着信号(車輪210の脱着作業が行なわれたことを示す信号)を受信した時からの経過時間をカウントし、カウントした経過時間を車輪脱着時からの経過時間Tとして取得することができる。
【0042】
また、加速度センサ1の出力が車輪脱着を示す態様で変化した場合に信号処理部2が初期化されるように構成されている場合には、初期化後における信号処理部2の処理頻度(処理周期)が事前に決まっていることに鑑み、初期化後における信号処理部2の脱輪判定処理または所定処理(たとえば、加速度センサ1の出力を計測する処理、もしくは電波を送信する処理)の実行回数をカウントし、カウントされた実行回数を車輪脱着時からの経過時間Tとして扱うようにしてもよい。このようにすることで、センサ装置100の信号処理部2が、車両200の通信端末201との通信を行なうことなく単独で車輪脱着時からの経過時間Tを把握することができる。
【0043】
次いで、信号処理部2は、ステップS10で取得された外気温Toutが上述のしきい温度よりも低いか否かを判定する(ステップS30)。すなわち、信号処理部2は、ステップS30において、上述の気温条件の成否を判定する。
【0044】
また、信号処理部2は、ステップS20で取得された車輪脱着時からの経過時間Tが上述のしきい時間未満であるか否かを判定する(ステップS40)。すなわち、信号処理部2は、ステップS40において、上述の経過条件の成否を判定する。
【0045】
外気温Toutがしきい温度よりも高い場合(ステップS30においてNO)であって、かつ車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間を超えている場合(ステップS40においてNO)、すなわち気温条件および経過条件の双方が成立していない場合、車輪脱落が発生する可能性は低いことが想定されるため、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを初期値F0に設定する(ステップS60)。
【0046】
一方、外気温Toutがしきい温度よりも低い場合(ステップS30においてYES)、あるいは、車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満である場合(ステップS40においてYES)、すなわち上述の気温条件および経過条件の少なくとも一方が成立している場合、車輪脱落が発生する可能性があることが想定されるため、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを初期値F0よりも高い所定値F2に設定する(ステップS50)。たとえば、初期値F0が30秒毎に1回の頻度である場合、所定値F2は10秒毎に1回の頻度に設定される。
【0047】
次いで、信号処理部2は、ステップS50あるいはステップS60で設定された実行頻度Fで脱輪判定処理を実行する(ステップS70)。
【0048】
以上のように、本実施の形態による信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを、一定値に固定するのではなく、気温条件および経過条件の成否に応じて切り替える。
【0049】
具体的には、気温条件および経過条件の少なくとも一方が成立している場合、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを初期値F0よりも高い所定値F2に設定する。これにより、車輪脱落が発生する可能性がある状況において、車輪210の脱落の予兆の有無を精度よく判定することができる。一方、気温条件および経過条件の双方が成立していない場合には、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを所定値F2よりも低い初期値F0に設定する。これにより、車輪脱落が発生する可能性が低い状況において、信号処理部2の処理負荷を軽減することができる。その結果、脱輪判定処理による判定精度を維持しつつ、信号処理部2の処理負荷を軽減することができる。
【0050】
また、脱輪判定処理の実行頻度Fを所定値F2に固定する場合に比べて、信号処理部2の作動に要する電力が抑えられるため、電源部4(たとえばボタン電池)の寿命を延ばすことができる。
【0051】
[変形例1]
上述の実施の形態においては、気温条件および経過条件の少なくとも一方が成立している場合には、気温条件および経過条件の双方が成立しているか否かに関わらず、脱輪判定処理の実行頻度Fが同じ値(所定値F2)に設定される。
【0052】
これに対し、本変形例1では、温度条件および経過条件の双方が成立している場合には、温度条件および経過条件の一方のみが成立している場合に比べて、脱輪判定処理の実行頻度Fをより高い値に設定する。
【0053】
図7は、本変形例1によるセンサ装置100の信号処理部2が脱輪判定処理を実行する際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、上述の
図6にフローチャートのステップS50に代えて、ステップS51~S54を追加したものである。
図7のその他のステップ(
図6に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0054】
外気温Toutがしきい温度よりも高い場合(ステップS30においてNO)であって、かつ車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間を超えている場合(ステップS40においてNO)、すなわち温度条件および経過条件の双方が成立していない場合、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを初期値F0に設定する(ステップS60)。
【0055】
外気温Toutがしきい温度よりも高い場合(ステップS30においてNO)であって、かつ車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満である場合(ステップS40においてYES)、すなわち温度条件および経過条件のうちの経過条件のみが成立している場合、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを初期値F0よりも高い所定値F1に設定する(ステップS54)。たとえば、初期値F0が30秒毎に1回の頻度である場合、所定値F1は10秒毎に1回の頻度に設定される。
【0056】
信号処理部2は、外気温Toutがしきい温度よりも低い場合(ステップS30においてYES)、車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満であるか否かを判定する(ステップS51)。
【0057】
外気温Toutがしきい温度よりも低い場合(ステップS30においてYES)であって、かつ車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間を超えている場合(ステップS51においてNO)、すなわち温度条件および経過条件のうちの温度条件のみが成立している場合、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを所定値F2bに設定する(ステップS53)。所定値F2bは、所定値F1以上の頻度に設定される。たとえば、所定値F1が10秒毎に1回の頻度である場合、所定値F2bは、所定値F1と同じ10秒毎に1回の頻度、あるいは所定値F1よりも多い8秒毎に1回の頻度に設定される。
【0058】
外気温Toutがしきい温度よりも低く(ステップS30においてYES)、かつ、車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満である場合(ステップS51においてYES)、すなわち温度条件および経過条件の双方が成立している場合、信号処理部2は、脱輪判定処理の実行頻度Fを所定値F2aに設定する(ステップS52)。所定値F2aは、所定値F2bよりも高い頻度に設定される。たとえば、所定値F2bが8秒毎に1回の頻度である場合、所定値F2aは、4秒毎に1回の頻度に設定される。
【0059】
以上のように、温度条件および経過条件の双方が成立している場合には、温度条件および経過条件の一方のみが成立している場合に比べて、脱輪判定処理の実行頻度Fをより高い値に設定するようにしてもよい。このようにすることで、信号処理部2の負荷を軽減しつつ、脱輪判定処理による判定精度をさらに向上させることができる。
【0060】
[変形例2]
上述の実施の形態においては気温条件を外気温Toutがしきい温度よりも低いという条件にしたが、気温条件は、外気温Toutがしきい温度よりも低いという条件に代えてあるいは加えて、現在の時期が月間平均気温がしきい温度よりも低い時期であるという条件にしてもよい。また、気温条件に、寒い地域であるという条件を加えてもよい。
【0061】
また、上述の実施の形態においては経過条件を車輪脱着時からの経過時間Tがしきい時間未満であるという条件にしたが、経過条件を、車輪脱着時からの脱輪判定処理の実行回数がしきい回数未満であるという条件にしてもよい。
【0062】
[変形例3]
上述の実施の形態においては各車輪210のナット240に配置されるセンサ装置100が脱輪判定処理を実行するが、脱輪判定処理を実行する主体は、必ずしも車輪210のナット240に配置されるセンサ装置100であることに限定されない。
【0063】
たとえば、車両200の制御装置205が脱輪判定処理を実行するようにしてもよい。たとえば、車両200の制御装置205が、センサ装置100から受信した情報に基づいて脱輪判定処理を実行するようにしてもよい。また、ナット240側ではなく車両200側に車輪210のナット240の緩みから発生する特有の振動成分を検出可能なセンサ(たとえばアンチロックブレーキシステムに用いられる車輪の回転速度信号を検出するセンサなど)が配置されている場合には、当該センサの検出結果に基づいて車両200の制御装置205が脱輪判定処理を実行するようにしてもよい。
【0064】
車両200の制御装置205が脱輪判定処理を実行する場合、当該制御装置205が本開示の「制御部」に相当し得る。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0066】
以上に説明した例示的な実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例である。
【0067】
(第1項) 本開示による判定装置は、車体に取り付けられる車輪の状態を示す信号を出力するセンサ部と、センサ部からの信号に基づいて車輪の脱落の予兆の有無を判定する判定処理を実行する制御部とを備える。制御部は、所定条件が成立している場合、所定条件が成立していない場合に比べて、判定処理の実行頻度を高くする。
【0068】
上記の態様によれば、判定処理の実行頻度が、一定の頻度に固定されるのではなく、所定条件の成否に応じて切り替えられる。具体的には、所定条件が成立している場合には、判定処理の実行頻度が高くされる。これにより、車輪の脱落の予兆の有無をより精度よく判定することができる。一方、所定条件が成立していない場合には、判定処理の実行頻度は高くされない。これにより、制御部の処理負荷を軽減することができる。その結果、判定処理による判定精度を維持しつつ、制御部の処理負荷を軽減することができる。
【0069】
(第2項) 第1項に記載の判定装置において、所定条件は、車輪を車体に取り付けた時からの経過期間に関する経過条件を含む。制御部は、経過条件が成立している場合、経過条件が成立していない場合に比べて、判定処理の実行頻度を高くする。
【0070】
上記の態様によれば、車輪脱落の発生には車輪脱着後の経過期間が関係していることに鑑み、所定条件には、車輪を車体に取り付けた時からの経過期間に関する経過条件が含まれる。そして、制御部は、経過条件が成立している場合は、そうでない場合に比べて判定処理の実行頻度を高くする。これにより、車輪脱落が発生する可能性が低い状況において制御部の処理負荷を軽減しつつ、車輪脱落が発生する可能性がある状況において判定処理の精度を向上させることができる。
【0071】
(第3項) 第2項に記載の判定装置において、所定条件は、経過条件に加えて、気温に関する気温条件を含む。制御部は、経過条件および気温条件の双方が成立していない場合は判定処理の実行頻度を初期頻度とし、経過条件および気温条件の少なくとも一方が成立した場合は判定処理の実行頻度を初期頻度よりも高くする。
【0072】
上記の態様によれば、車輪脱落の発生には車輪脱着後の経過期間に加えて気温が関係していることに鑑み、所定条件には、経過期間に加えて、気温に関する気温条件が含まれる。そして、制御部は、経過条件および気温条件の少なくとも一方が成立した場合は、判定処理の実行頻度を初期頻度よりも高くする。これにより、車輪脱落が発生する可能性が低い状況において制御部の処理負荷を軽減しつつ、車輪脱落が発生する可能性がある状況において判定処理の精度を向上させることができる。
【0073】
(第4項) 第3項に記載の判定装置において、制御部は、経過条件および気温条件の一方が成立し、かつ他方が成立していない場合は判定処理の実行頻度を初期頻度よりも高い第1頻度とし、経過条件および気温条件の双方が成立している場合は判定処理の実行頻度を第1頻度よりも高い第2頻度とする。
【0074】
上記の態様によれば、経過条件および気温条件のうちの一方の条件のみが成立している場合には判定処理の実行頻度を第1頻度としつつ、双方の条件が成立している場合には、一方の条件のみが成立している場合に比べて車輪脱落が発生する可能性が高いことに鑑み、判定処理の実行頻度を第1頻度よりも高い第2頻度にする。これにより、制御部の負荷を軽減しつつ、判定処理による判定精度をさらに向上させることができる。
【0075】
(第5項) 第3または4項に記載の判定装置において、気温条件は、外気温が所定値よりも低いという条件、および所定期間における平均気温が所定値よりも低い時期であるという条件の少なくとも一方を含む。
【0076】
上記の態様によれば、車輪脱落が発生し易い時間あるいは時期に、判定処理の実行頻度を高くして判定処理による判定精度を向上させることができる。
【0077】
(第6項) 第2~5項のいずれかに記載の判定装置において、経過条件は、車輪を車体に取り付けた時点からの経過時間が所定値未満であるという条件、または、車輪を車体に取り付けた時からの判定処理または所定処理の実行回数が所定値未満であるという条件の少なくとも一方を含む。
【0078】
上記の態様によれば、車輪脱落が発生し易い車輪脱着後の所定期間内に、判定処理の実行頻度を高くして判定処理による判定精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 加速度センサ、2 信号処理部、3 通信部、4 電源部、100 センサ装置、200 車両、201 通信端末、202 ボタン、203 外気温センサ、205 制御装置、210 車輪、220 ホイール、221 ホイール穴、222 内側ホイール、223 外側ホイール、230 タイヤ、240 ナット、241 ナットキャップ、241a 天井部、241b 側面部、241c 内表面、243 ワッシャ、250 ボルト、250a ホイールハブ、251 先端部。