(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078915
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】冷暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/84 20180101AFI20240604BHJP
F24F 11/85 20180101ALI20240604BHJP
F24F 11/86 20180101ALI20240604BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240604BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20240604BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240604BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240604BHJP
【FI】
F24F11/84
F24F11/85
F24F11/86
F25B1/00 399Y
F25B13/00 104
F25B13/00 M
F24F140:20
F24F110:10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191534
(22)【出願日】2022-11-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】島野 太貴
(72)【発明者】
【氏名】須田 和樹
【テーマコード(参考)】
3L092
3L260
【Fターム(参考)】
3L092AA03
3L092DA01
3L092DA03
3L092EA15
3L092FA04
3L092FA13
3L092GA09
3L092JA01
3L092JA03
3L092KA10
3L092KA13
3L260AB06
3L260BA01
3L260CA12
3L260CB32
3L260CB37
3L260CB38
3L260CB40
3L260CB43
3L260CB63
3L260EA07
(57)【要約】
【課題】快適性を向上させる。
【解決手段】冷暖房装置は、水回路4に水を循環させるポンプ8と、水回路4に設けられる複数の室内熱交換器7-1~7-3と、複数の室内熱交換器7-1~7-3毎に設けられる複数の流量調整弁6-1~6-3と、複数の室内熱交換器7-1~7-3毎に設けられる複数の水温センサ26-1~26-3と、水の温度を調節する水冷媒熱交換器5と、所定の流量の水が水回路4を循環するようにポンプ8を制御し、複数の室内熱交換器7-1~7-3の熱負荷の最大値に基づいて算出された第1目標流量に最大負荷の室内熱交換器を流れる水の流量が等しくなるように、かつ、最大負荷でないある室内熱交換器の熱負荷と最大負荷の室内熱交換器に流入する水の温度とに基づいて算出された第2目標流量にその室内熱交換器を流れる水の流量が等しくなるように複数の流量調整弁6-1~6-3を制御する室外機制御装置28とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体回路の内部に熱媒体を循環させるポンプと、
前記熱媒体回路に設けられ、互いに並列に設けられた複数の室内熱交換器と、
前記複数の室内熱交換器毎に設けられる複数の流量調整弁と、
前記複数の室内熱交換器毎に設けられる複数の熱媒体温度検出部と、
前記熱媒体の温度を調節する熱源機と、
前記複数の室内熱交換器に前記熱媒体が流れる複数台運転のときに、所定の流量の熱媒体が前記熱媒体回路を循環するように、前記ポンプを制御し、前記複数の室内熱交換器のうち熱負荷が最大である室内熱交換器を最大熱負荷室内熱交換器とし、前記最大熱負荷室内熱交換器の熱負荷に基づいて最大熱負荷目標流量を算出し、前記最大熱負荷室内熱交換器を流れる熱媒体の流量が前記最大熱負荷目標流量に等しくなるように、前記複数の流量調整弁のうちの前記最大熱負荷室内熱交換器に対応する前記流量調整弁を制御し、前記複数の室内熱交換器のうちの前記最大熱負荷室内熱交換器と異なる他の室内熱交換器を余熱負荷室内熱交換器とし、前記余熱負荷室内熱交換器の熱負荷と、前記最大熱負荷室内熱交換器に対応する前記熱媒体温度検出部により計測された前記最大熱負荷室内熱交換器に流入する熱媒体の温度とに基づいて算出された余熱負荷目標流量に、前記余熱負荷室内熱交換器を流れる熱媒体の流量が等しくなるように、前記複数の流量調整弁のうちの前記余熱負荷室内熱交換器に対応する前記流量調整弁を制御する制御部
とを備える冷暖房装置。
【請求項2】
前記熱源機は、圧縮機と、前記熱媒体と冷媒とを熱交換する熱媒体冷媒熱交換器とを備えた冷媒回路を有し、前記冷媒が循環するものであり、
前記制御部は、
前記複数の室内熱交換器のうち一つの室内熱交換器にのみ前記熱媒体が流れる単独運転のとき、当該室内熱交換器を単独運転室内熱交換器とし、前記単独運転室内熱交換器における熱負荷に基づいて算出された単独運転時目標流量に、前記単独運転室内熱交換器に流れる熱媒体の流量が等しくなるように、前記ポンプを制御し、前記単独運転室内熱交換器における熱負荷に基づいて算出された単独運転時目標圧縮機回転数に、前記圧縮機の圧縮機回転数が等しくなるように、前記圧縮機を制御し、
前記複数台運転のときに、前記最大熱負荷室内熱交換器の熱負荷に基づいて算出された複数台運転時目標圧縮機回転数に、前記圧縮機回転数が等しくなるように、前記圧縮機を制御する
請求項1に記載の冷暖房装置。
【請求項3】
前記熱源機により温度が調節された熱媒体の温度である往き温度を計測する往き温度センサと、
前記室内熱交換器から流出した熱媒体の温度である戻り温度を計測する戻り温度センサとをさらに備え、
前記往き温度と、前記往き温度と前記戻り温度との温度差とからなる複数の組み合わせを複数の単独運転時目標流量に対応付けるポンプ目標流量テーブルと、前記熱媒体の温度に対応付けられた能力と流量の組合せを複数備えた流量調整弁目標流量テーブルとを記憶する記憶部と、
前記制御部は、
前記単独運転のときに、前記ポンプ目標流量テーブルを参照して、前記複数の単独運転時目標流量のうちの、前記往き温度と前記戻り温度との温度差と、前記往き温度との組み合わせに対応する前記単独運転時目標流量を算出し、
前記複数台運転のときに、前記流量調整弁目標流量テーブルを参照して、前記余熱負荷室内熱交換器における熱負荷と前記往き温度との組み合わせに対応する前記余熱負荷目標流量を算出する
請求項2に記載の冷暖房装置。
【請求項4】
前記複数の室内熱交換器をそれぞれ備える複数の室内機をさらに備え、
前記複数の室内機は、
前記室内機が設置された部屋の温度を計測する室温センサを備え、
前記制御部は、
前記室温センサにより計測された室温と前記室内機に設定された設定温度とに基づいて前記複数の室内熱交換器のうちの前記室内機に設けられた室内熱交換器の熱負荷を算出し、
前記単独運転のときに、前記単独運転室内熱交換器の熱負荷に基づいて単独運転時目標往き温度を算出し、前記往き温度が前記単独運転時目標往き温度に等しくなるように、前記単独運転時目標圧縮機回転数を算出し、
前記複数台運転のときに、前記最大熱負荷室内熱交換器の熱負荷に基づいて複数台運転時目標往き温度を算出し、前記往き温度が前記複数台運転時目標往き温度に等しくなるように、前記複数台運転時目標圧縮機回転数を算出する
請求項3に記載の冷暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機の動作によって冷媒が循環する冷媒回路と、水ポンプの動作によって水が循環する水回路とを備え、冷媒と水とを熱交換して水を加熱または冷却する熱交換器が設けられ、水回路に設けられた室内放熱器が、熱交換器で加熱された水により加熱した空気を室内に噴き出して室内を暖房する温水暖房装置が知られている(特許文献1)。具体的には、室内放熱器に流入する水の温度である往き温度が目標値となるように圧縮機の回転数を制御し、室内放熱器から流出する水の温度である戻り温度と往き温度との差が所定の範囲内となるように、水ポンプの回転数を制御する。この技術では、室内放熱器の放熱負荷の大きさに応じて適切な流量の水を室内放熱器に供給できる。また、このような温水暖房装置は、熱交換器で冷却された水により冷却した空気を室内放熱器が室内に噴き出すことにより、室内を冷房することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような温水暖房装置の水回路に複数の室内放熱器が並列に設けられている場合、複数の室内放熱器ごとに放熱負荷の大きさに合わせた往き温度の調節ができないため、複数の室内放熱器ごとに要求される吹出空気温度が得られず、それぞれの室内放熱器が配置された部屋の快適性が低下するという問題がある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、快適性を向上させる冷暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による冷暖房装置は、熱媒体回路の内部に熱媒体を循環させるポンプと、熱媒体回路に設けられ、互いに並列に設けられた複数の室内熱交換器と、複数の室内熱交換器毎に設けられる複数の流量調整弁と、複数の室内熱交換器毎に設けられる複数の熱媒体温度検出部と、熱媒体の温度を調節する熱源機と、複数の室内熱交換器に熱媒体が流れる複数台運転のときに、所定の流量の熱媒体が熱媒体回路を循環するように、ポンプを制御し、複数の室内熱交換器のうち熱負荷が最大である室内熱交換器を最大熱負荷室内熱交換器とし、最大熱負荷室内熱交換器の熱負荷に基づいて最大熱負荷目標流量を算出し、最大熱負荷室内熱交換器を流れる熱媒体の流量が最大熱負荷目標流量に等しくなるように、複数の流量調整弁のうちの最大熱負荷室内熱交換器に対応する流量調整弁を制御し、複数の室内熱交換器のうちの最大熱負荷室内熱交換器と異なる他の室内熱交換器を余熱負荷室内熱交換器とし、余熱負荷室内熱交換器の熱負荷と、最大熱負荷室内熱交換器に対応する熱媒体温度検出部により計測された最大熱負荷室内熱交換器に流入する熱媒体の温度とに基づいて算出された余熱負荷目標流量に、余熱負荷室内熱交換器を流れる熱媒体の流量が等しくなるように、複数の流量調整弁のうちの余熱負荷室内熱交換器に対応する流量調整弁を制御する制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
開示の冷暖房装置は、快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1の冷暖房装置が設けられている空気調和機を示す冷媒回路図である。
【
図2】
図2は、室外機制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、ポンプ目標流量テーブルを示す図である。
【
図4】
図4は、流量調整弁目標流量テーブルを示す図である。
【
図5】
図5は、制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、室内熱交換器における水温と暖房能力と流量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる冷暖房装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【実施例0010】
実施例1の冷暖房装置は、
図1に示されているように、空気調和機1に設けられている。
図1は、実施例1の冷暖房装置が設けられている空気調和機1を示す冷媒回路図である。空気調和機1は、室外機2と複数の室内機3-1~3-3とを備えている。室外機2は、屋外に設置されている。複数の室内機3-1~3-3のうちの第1室内機3-1は、空気調和機1により冷暖房される複数の部屋のうちの第1室に設置され、第2室内機3-2は、第2室に配置され、第3室内機3-3は、第3室に配置されている。
【0011】
空気調和機1は、水回路4(熱媒体回路)をさらに備えている。水回路4は、水冷媒熱交換器5(熱源機)と複数の流量調整弁6-1~6-3と複数の室内熱交換器7-1~7-3とポンプ8とが接続されており、ポンプ8を駆動させることで水が循環する。複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの第1室内熱交換器7-1は、第1室内機3-1の内部に配置され、第2室内熱交換器7-2は、第2室内機3-2の内部に配置され、第3室内熱交換器7-3は、第3室内機3-3の内部に配置されている。
【0012】
複数の流量調整弁6-1~6-3のうち第1流量調整弁6-1は、第1室内熱交換器7-1の上流側に設けられている。第2流量調整弁6-2は、第2室内熱交換器7-2の上流側に設けられている。第3流量調整弁6-3は、第3室内熱交換器7-3の上流側に設けられている。第1室内熱交換器7-1の上流側に設けられる第1流量調整弁6-1は、第1室内機3-1の内部に配置され、第1室内熱交換器7-1に接続されている。第2室内熱交換器7-2の上流側に設けられる第2流量調整弁6-2は、第2室内機3-2の内部に配置され、第2室内熱交換器7-2に接続されている。第3室内熱交換器7-3の上流側に設けられる第3流量調整弁6-3は、第3室内機3-3の内部に配置され、第3室内熱交換器7-3に接続されている。複数の流量調整弁6-1~6-3は、分岐管11を介して水冷媒熱交換器19の下流側において互いに並列に接続されている。
【0013】
ポンプ8は、室外機2の内部に配置されている。ポンプ8は、合流管12を介して複数の室内熱交換器7-1~7-3に接続されている。水冷媒熱交換器19は、室外機2の内部に配置され、配管を介してポンプ8に接続されている。
【0014】
ポンプ8は、合流管12を介して複数の室内熱交換器7-1~7-3から供給される水を水冷媒熱交換器19に供給し、水回路4に水を循環させる。水冷媒熱交換器19は、ポンプ8から供給される水と冷媒とを熱交換する。分岐管11は、水冷媒熱交換器19により熱交換された水を複数の流量調整弁6-1~6-3に分配する。第1流量調整弁6-1は、第1室内熱交換器7-1を流れる水の流量を調整する。第2流量調整弁6-2は、第2室内熱交換器7-2を流れる水の流量を調整する。第3流量調整弁6-3は、第3室内熱交換器7-3を流れる水の流量を調整する。
【0015】
水冷媒熱交換器19は、冷媒回路14に接続されている。冷媒回路14は、圧縮機15と四方弁16と室外熱交換器17と膨張弁18と水冷媒熱交換器19(熱媒体冷媒熱交換器)とを備えている。冷媒回路14は、吸入管21と吐出管22とをさらに備えている。圧縮機15は、回転体を備え、回転体が回転することにより、吸入管21を介して圧縮機15に供給される気相冷媒を圧縮し、圧縮された気相冷媒を吐出管22に吐出する。圧縮機15が単位時間あたりに冷媒を吐出する量は、回転体が単位時間あたりに回転する回転数が大きいほど大きい。
【0016】
四方弁16は、吸入管21と吐出管22とに接続され、吸入管21と吐出管22とを介して圧縮機15に接続されている。四方弁16は、さらに、冷媒管を介して室外熱交換器17に接続され、冷媒管を介して水冷媒熱交換器19に接続されている。四方弁16は、弁体を備え、弁体が暖房位置に配置されることにより冷媒回路14は暖房サイクルに切り替えられ、弁体が冷房位置に配置されることにより冷媒回路14は冷房サイクルに切り替えられる。冷媒回路14が暖房サイクルに切り替えられているときに、吐出管22は、四方弁16を介して水冷媒熱交換器19に接続され、室外熱交換器17は、四方弁16を介して吸入管21に接続される。冷媒回路14が冷房サイクルに切り替えられているときに、吐出管22は、四方弁16を介して室外熱交換器17に接続され、水冷媒熱交換器19は、四方弁16を介して吸入管21に接続される。
【0017】
膨張弁18は、冷媒管を介して室外熱交換器17に接続されている。水冷媒熱交換器19は、冷媒管を介して膨張弁18に接続されている。
【0018】
空気調和機1は、往き温度センサ23と戻り温度センサ24と複数の室温センサ25-1~25-3と複数の水温センサ26-1~26-3(複数の熱媒体温度検出部)とをさらに備えている。往き温度センサ23は、室外機2の内部に配置され、水冷媒熱交換器19から分岐管11に流れる水の温度を計測する。戻り温度センサ24は、室外機2の内部に配置され、ポンプ8から水冷媒熱交換器19に供給される水の温度を計測する。
【0019】
複数の室温センサ25-1~25-3のうちの第1室温センサ25-1は、第1室内機3-1の内部に配置され、第2室温センサ25-2は、第2室内機3-2の内部に配置され、第3室温センサ25-3は、第3室内機3-3の内部に配置されている。第1室温センサ25-1は、第1室内機3-1が設置される第1室の温度を計測する。第2室温センサ25-2は、第2室内機3-2が設置される第2室の温度を計測する。第3室温センサ25-3は、第3室内機3-3が設置される第3室の温度を計測する。
【0020】
複数の水温センサ26-1~26-3のうちの第1水温センサ26-1は、第1室内機3-1の内部に配置され、第2水温センサ26-2は、第2室内機3-2の内部に配置され、第3水温センサ26-3は、第3室内機3-3の内部に配置されている。第1水温センサ26-1は、第1室内熱交換器7-1に供給される水の温度を計測する。第2水温センサ26-2は、第2室内熱交換器7-2に供給される水の温度を計測する。第3水温センサ26-3は、第3室内熱交換器7-3に供給される水の温度を計測する。
【0021】
空気調和機1は、複数の室内機制御装置27-1~27-3と室外機制御装置28(制御部)とをさらに備えている。複数の室内機制御装置27-1~27-3のうちの第1室内機制御装置27-1は、第1室内機3-1の内部に配置され、第2室内機制御装置27-2は、第2室内機3-2の内部に配置され、第3室内機制御装置27-3は、第3室内機3-3の内部に配置されている。第1室内機制御装置27-1は、第1室内機3-1を制御し、第2室内機制御装置27-2は、第2室内機3-2を制御し、第3室内機制御装置27-3は、第3室内機3-3を制御する。複数の室内機制御装置27-1~27-3の各々は、室外機制御装置28に電気的に接続され空気調和機1を制御するための情報を相互に伝達する。
【0022】
室外機制御装置28は、室外機2の内部に配置されている。
図2は、室外機制御装置28を示すブロック図である。室外機制御装置28は、記憶装置31とCPU32(Central Processing Unit)とを備えている。記憶装置31は、室外機制御装置28にインストールされるコンピュータプログラムを記憶し、CPU32により利用される情報を記憶する。CPU32は、室外機制御装置28にインストールされるコンピュータプログラムを実行することにより、往き温度センサ23と戻り温度センサ24と複数の室内機制御装置27-1~27-3とから情報を取得し、複数の流量調整弁6-1~6-3とポンプ8と圧縮機15と四方弁16とを制御する。
【0023】
室外機制御装置28にインストールされるコンピュータプログラムに従って、室外機制御装置28は複数の機能をそれぞれ実行する。室外機制御装置28は複数の機能として、四方弁制御部33と圧縮機制御部34とポンプ制御部35と流量調整弁制御部36とを備えている。四方弁制御部33は、空気調和機1がユーザに操作されることに応じて冷媒回路14が暖房サイクルまたは冷房サイクルに切り替わるように、四方弁16を制御する。圧縮機制御部34は、適切な流量の冷媒が冷媒回路14に循環するように、圧縮機15を制御する。ポンプ制御部35は、適切な流量の水が水回路4に循環するように、ポンプ8を制御する。流量調整弁制御部36は、複数の流量調整弁6-1~6-3の各々に適切な流量の水が流れるように、複数の流量調整弁6-1~6-3を制御する。
【0024】
記憶装置31は、さらに、ポンプ目標流量テーブル37と流量調整弁目標流量テーブル38とを記憶している。
図3は、ポンプ目標流量テーブル37を示す図である。ポンプ目標流量テーブル37は、複数の温度差41のいずれかと複数の往き温度42のいずれかとからなる複数の組み合わせを複数の単独運転時目標流量43に対応付けている。具体的には、温度差41が大きい値であるほど単独運転時目標流量43は大きい値が設定され、往き温度42が小さい値であるほど単独運転時目標流量43は大きい値が設定される。
図4は、流量調整弁目標流量テーブル38を示す図である。流量調整弁目標流量テーブル38は、水温45に対応付けられた能力46と水流量47の組合せを複数備えたものである。
【0025】
空気調和機1が実行する動作は、冷房運転と暖房運転と制御動作とを含んでいる。
[冷房運転]
冷房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより冷房運転を実行するように操作されたときに実行される。室外機制御装置28は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、四方弁16を制御し、冷媒回路14を冷房サイクルに切り替える。室外機制御装置28は、圧縮機15を制御し、吸入管21を介して圧縮機15に供給された低圧気相冷媒を圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機15により圧縮され、高圧気相冷媒になる。圧縮機15は、さらに、高圧気相冷媒を吐出管22に吐出する。吐出管22に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路14が冷房サイクルに切り替えられていることにより、室外熱交換器17に供給される。
【0026】
室外熱交換器17は、四方弁16から供給された高圧気相冷媒と外気とを熱交換する。高圧気相冷媒は、室外熱交換器17で外気に放熱して凝縮し、過冷却状態の高圧液相冷媒になる。すなわち、室外熱交換器17は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。室外熱交換器17から流出した高圧液相冷媒は、膨張弁18に供給される。
【0027】
膨張弁18は、室外熱交換器17から水冷媒熱交換器19に流れる冷媒の流量を調節し、室外熱交換器17から供給された高圧液相冷媒を減圧する。高圧液相冷媒は、膨張弁18により減圧され、低圧気液二相冷媒になる。膨張弁18から流出した低圧気液二相冷媒は、水冷媒熱交換器19に供給される。
【0028】
水冷媒熱交換器19は、膨張弁18から供給された低圧気液二相冷媒と、水回路4を循環する水とを熱交換する。低圧気液二相冷媒は、水冷媒熱交換器19で加熱されて蒸発し、低圧気相冷媒になる。すなわち、水冷媒熱交換器19は、空気調和機1が冷房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。水冷媒熱交換器19から流出した低圧気相冷媒は、四方弁16に供給される。四方弁16に供給された低圧気相冷媒は、冷媒回路14が冷房サイクルに切り替えられていることにより、吸入管21に供給され、吸入管21を介して圧縮機15に吸入される。
【0029】
[暖房運転]
暖房運転は、たとえば、空気調和機1がユーザにより暖房運転を実行するように操作されたときに実行される。室外機制御装置28は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、四方弁16を制御し、冷媒回路14を暖房サイクルに切り替える。室外機制御装置28は、圧縮機15を制御し、吸入管21を介して圧縮機15に供給された低圧気相冷媒を圧縮する。低圧気相冷媒は、圧縮機15により圧縮され、高圧気相冷媒になる。圧縮機15は、さらに、高圧気相冷媒を吐出管22に吐出する。吐出管22に吐出された高圧気相冷媒は、冷媒回路14が暖房サイクルに切り替えられていることにより、水冷媒熱交換器19に供給される。
【0030】
水冷媒熱交換器19は、四方弁16から供給された高圧気相冷媒と、水回路4を循環する水とを熱交換する。高圧気相冷媒は、水冷媒熱交換器19で水に放熱して、過冷却状態の高圧液相冷媒になる。すなわち、水冷媒熱交換器19は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、凝縮器として機能する。水冷媒熱交換器19から流出した高圧液相冷媒は、膨張弁18に供給される。
【0031】
膨張弁18は、水冷媒熱交換器19から室外熱交換器17に流れる冷媒の流量を調節し、水冷媒熱交換器19から供給された高圧液相冷媒を減圧する。高圧液相冷媒は、膨張弁18により減圧され、低圧気液二相冷媒になる。膨張弁18から流出した低圧気液二相冷媒は、室外熱交換器17に供給される。
【0032】
室外熱交換器17は、膨張弁18から供給された低圧気液二相冷媒と外気とを熱交換する。低圧気液二相冷媒は、室外熱交換器17で加熱され、低圧気相冷媒になる。すなわち、室外熱交換器17は、空気調和機1が暖房運転を実行するときに、蒸発器として機能する。室外熱交換器17から流出した低圧気相冷媒は、四方弁16に供給される。四方弁16に供給された低圧気相冷媒は、冷媒回路14が暖房サイクルに切り替えられていることにより、吸入管21に供給され、吸入管21を介して圧縮機15に吸入される。
【0033】
室外機制御装置28は、空気調和機1が冷房運転または暖房運転を実行するときに、さらに、ポンプ26を制御し、合流管12から供給される水を水冷媒熱交換器19に供給し、水を水回路4に循環させる。水冷媒熱交換器19で冷媒と熱交換された水は、分岐管11を介して複数の流量調整弁6-1~6-3に供給される。第1流量調整弁6-1は、分岐管11から第1室内熱交換器7-1に流入する冷媒の流量を調節し、第1室内熱交換器7-1を流れる水の流量を調節する。第2流量調整弁6-2は、分岐管11から第2室内熱交換器7-2に流入する冷媒の流量を調節し、第2室内熱交換器7-2を流れる水の流量を調節する。第3流量調整弁6-3は、分岐管11から第3室内熱交換器7-3に流入する冷媒の流量を調節し、第3室内熱交換器7-3を流れる水の流量を調節する。
【0034】
第1室内熱交換器7-1は、第1室内熱交換器7-1を流れる水と第1室の空気とを熱交換する。第1室内機制御装置27-1は、第1室内機3-1を制御し、第1室内熱交換器7-1で水と熱交換された空気をユーザの操作に基づいて決定された風量で第1室に吹き出し、第1室を冷暖房する。第2室内熱交換器7-2は、第2室内熱交換器7-2を流れる水と第2室の空気とを熱交換する。第2室内機制御装置27-2は、第2室内機3-2を制御し、第2室内熱交換器7-2で水と熱交換された空気をユーザの操作に基づいて決定された風量で第2室に吹き出し、第2室を冷暖房する。第3室内熱交換器7-3は、第3室内熱交換器7-3を流れる水と第3室の空気とを熱交換する。第3室内機制御装置27-3は、第3室内機3-3を制御し、第3室内熱交換器7-3で水と熱交換された空気をユーザの操作に基づいて決定された風量で第3室に吹き出し、第3室を冷暖房する。複数の室内熱交換器7-1~7-3を流れた水は、合流管12を介してポンプ8に供給される。
【0035】
[制御動作]
制御動作は、暖房運転または冷房運転が実行されているときに、常に実行される。
図5は、制御動作を示すフローチャートである。ユーザは、第1室を冷暖房したくないときに、第1室内機3-1を操作し、第1室内機3-1を停止させる。ユーザは、第1室を冷暖房したいときに、第1室内機3-1を操作し、第1室内機3-1に第1設定温度を設定する。ユーザは、第2室内機3-2に関しても、第1室内機3-1と同様に操作し、第2室内機3-2を停止させたり、第2室内機3-2に第2設定温度を設定したりする。ユーザは、第3室内機3-3に関しても、第1室内機3-1と同様に操作し、第3室内機3-3を停止させたり、第3室内機3-3に第3設定温度を設定したりする。
【0036】
第1室内機制御装置27-1は、第1室温センサ25-1により計測された第1室温を第1室温センサ25-1から取得し、第1水温センサ26-1により計測された第1水温を第1水温センサ26-1から取得する。第1室内機制御装置27-1は、第1設定温度と第1室温とに基づいて第1要求温度範囲を算出する。第1要求温度範囲は、第1室内機3-1が第1室を第1設定温度まで冷暖房するときに第1室内熱交換器7-1に供給されるべき水の温度の範囲を示している。さらに、第1要求温度範囲は、第1室内熱交換器7-1に固有の温度範囲に含まれている。固有の温度範囲は、第1室内熱交換器7-1に供給されうる水の温度の範囲を示し、すなわち、第1要求温度範囲の上限は、第1室内熱交換器7-1に供給されてもよい水の温度範囲の上限より低く、第1要求温度範囲の下限は、温度範囲の下限より高い。第1要求温度範囲は室内熱交換器の容積や伝熱性能等によって複数の室内機3-1~3-3それぞれ固有の範囲を持つ。第2室内機制御装置27-2も、第1室内機制御装置27-1と同様に、第2室温を第2室温センサ25-2から取得し、第2水温を第2水温センサ26-2から取得し、第2要求温度範囲を算出する。第3室内機制御装置27-3も、第1室内機制御装置27-1と同様に、第3室温を第3室温センサ25-3から取得し、第3水温を第3水温センサ26-3から取得し、第3要求温度範囲を算出する。
【0037】
室外機制御装置28は、冷房運転または暖房運転が実行されているときに、複数の室内機3-1~3-3が停止しているか否かの情報を複数の室内機制御装置27-1~27-3から取得し、複数台運転が実行されているか、単独運転が実行されているかを判定する(ステップS1)。複数台運転では、複数の室内機3-1~3-3のうちの2つ以上が運転しており、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの2つ以上の運転している室内機に対応する室内熱交換器(以下、運転室内熱交換器と呼ぶ)に水が流れている。単独運転では、複数の室内機3-1~3-3のうちの1つの単独運転室内機のみが停止しておらず、複数の室内機3-1~3-3のうちの単独運転室内機と異なる他の室内機が停止している。すなわち、単独運転では、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの単独運転室内機に設けられている単独運転室内熱交換器のみに水が流れており、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの単独運転室内熱交換器と異なる他の室内熱交換器に水が流れていない。室外機制御装置28は、複数の室内機3-1~3-3のうちの2つ以上の運転室内機が停止していないときに、空気調和機1に複数台運転が実行されていると判定する(ステップS1、Yes)。室外機制御装置28は、複数の室内機3-1~3-3のうちの1つのみが運転しているときに、空気調和機1に単独運転が実行されていると判定する(ステップS1、No)。
【0038】
室外機制御装置28は、空気調和機1が複数台運転を実行していると判定されたときに(ステップS1、Yes)、ポンプ8を制御し、水回路4を循環する水の流量が変化しないように、接続された室内機の台数に応じて予め定められた所定の流量の水を水回路4に循環させる(ステップS2)。この時の所定の流量とは、複数の室内機3-1~3-3の全てで定格能力が要求される場合であっても能力が不足しない程度の流量が設定される。
【0039】
次に、室外機制御装置28は、運転を実行している室内機の温度差を算出し、温度差に基づいて運転を実行している室内機それぞれの目標流量を算出し、目標流量に応じて複数の流量調整弁6-1~6-3を制御する(ステップ3)。具体的には、まず、室外機制御装置28は、目標流量運転を実行している室内機の熱負荷を算出する。例として、複数の室内機3-1~3-3がいずれも運転を実行している場合について説明する。複数の室温のうちの第1室内機制御装置27-1から取得した第1室温と、複数の設定温度のうちの第1室内機制御装置27-1から取得した第1設定温度とに基づいて複数の熱負荷のうちの第1熱負荷を算出する。第1熱負荷は、第1室内熱交換器7-1の熱負荷を示し、第1室内機3-1が第1室を第1設定温度まで冷暖房するときに必要である能力に対応し、第1室温から第1設定温度を減算した第1温度差の絶対値が大きいほど大きい。室外機制御装置28は、第1熱負荷と同様に、例えば、室内機3-2、3-3がいずれも複数の熱負荷のうちの第2熱負荷と第3熱負荷とを算出する。第2熱負荷は、第2室内熱交換器7-2の熱負荷を示し、第3熱負荷は、第3室内熱交換器7-3の熱負荷を示している。
【0040】
室外機制御装置28は、複数の熱負荷のうち最大値となる熱負荷の室内熱交換器を、最大負荷室内熱交換器とする。室外機制御装置28は、熱負荷の最大値に基づいて第1目標流量(最大熱負荷目標流量)を取得する。第1目標流量は、最大負荷の室内熱交換器において必要とされる水流量であり、熱負荷最大値が大きいほど大きい値が予め記憶装置31に記憶されている。室外機制御装置28は、最大負荷室内熱交換器に流れる水の流量が第1目標流量に等しくなるように、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの最大負荷室内熱交換器に設けられる最大負荷流量調整弁を制御する。
【0041】
さらに、室外機制御装置28は、往き温度センサ23により計測された往き温度を往き温度センサ23から取得する。室外機制御装置28は、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの最大負荷室内熱交換器と異なる運転室内熱交換器(余熱負荷室内熱交換器)について、流量調整弁目標流量テーブル38を参照して、複数の熱負荷のうちの運転室内熱交換器の熱負荷と、往き温度とに基づいて第2目標流量(余熱負荷目標流量)を算出する。詳細には、室外機制御装置28は、複数の水温45から往き温度に最も近い水温を選択(最も近い水温が二つある場合は高い水温を選択)し、複数の能力46のうちのその選択された水温に対応するいくつかの能力から、運転室内熱交換器の熱負荷に最も近い能力を選択し、複数の水流量47からその選択された能力に対応付けられた水流量を選択する。第2目標流量は、その選択された水流量に等しい。第2目標流量は、第1目標流量より小さく、運転室内熱交換器の熱負荷が大きいほど大きい。室外機制御装置28は、運転室内熱交換器に流れる水の流量が第2目標流量に等しくなるように、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの運転室内熱交換器に設けられる運転負荷流量調整弁を制御する。
【0042】
次に室外機制御装置28は、複数の要求温度範囲(第1要求温度範囲~第3要求温度範囲)に基づいて温度制御範囲を算出する。温度制御範囲の上限は、複数の要求温度範囲それぞれの上限のうち最も低い温度を示し、温度制御範囲の下限は、複数の要求温度範囲それぞれの下限のうち最も高い温度最大値を示している。室外機制御装置28は、熱負荷最大値と温度制御範囲とに基づいて複数台運転時目標往き温度を算出する。複数台運転時目標往き温度は、複数の要求温度範囲に含まれ、冷房運転が実行されているときに、熱負荷最大値が大きいほど低く、暖房運転が実行されているときに、熱負荷最大値が大きいほど高い。室外機制御装置28は、複数台運転時目標往き温度に基づいて複数台運転時目標圧縮機回転数を算出する。複数台運転時目標圧縮機回転数は、圧縮機15の回転数が複数台運転時目標圧縮機回転数と等しいときに、水冷媒熱交換器19から分岐管11に流れる水の温度(往き温度)が複数台運転時目標往き温度に等しくなるように、算出される。室外機制御装置28は、圧縮機15の回転数が複数台運転時目標圧縮機回転数と等しくなるように、圧縮機15を制御する(ステップS4)。
【0043】
図6は、室内熱交換器における水温と暖房能力と水流量との関係を示すグラフである。ある水温とある水流量とに対応する暖房能力は、予め定められた条件において、室内熱交換器に流れる水の温度がその水温に等しいときで、かつ、室内熱交換器に単位時間あたりに流れる水の流量がその水流量に等しいときに、発揮される暖房能力を示している。その条件としては、室内熱交換器が設けられる室内機が設置される室内の温度、室内熱交換器により温度が調節された空気を室内に吹き出す風量等が例示される。空気調和機1は、複数台運転が実行されている場合で、複数の室内熱交換器7-1~7-3に流れる水の流量を複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々の熱負荷に合わせて調節しないときに、
図6のグラフに示される関係に水温と暖房能力と水流量とが合致せずに複数の室内機3-1~3-3で冷暖房能力の過剰や過小が生じ、快適性が低下することがある。
【0044】
空気調和機1は、複数台運転が実行されているときに、複数の室内熱交換器7-1~7-3に流れる水の流量が複数の室内熱交換器7-1~7-3の熱負荷に合わせて調節されることにより、複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々の能力が、複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々の熱負荷に応じた能力にできる。すなわち、空気調和機1は、複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々における水温と流量と熱負荷との関係が、
図6のグラフに示される水温と水流量と暖房能力との関係と概ね合致するように、複数の流量調整弁6-1~6-3を制御することができる。このため、空気調和機1は、複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々に冷媒が過剰または過小に循環することを防止することができる。この結果、複数の室内機3-1~3-3は、適切に冷暖房することができ、快適性を向上させることができる。
【0045】
室外機制御装置28は、空気調和機1が単独運転を実行していると判定されたときに(ステップS1、No)、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの運転している一つの室内機を単独運転室内熱交換器とする。室外機制御装置28は、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの単独運転室内熱交換器に対応する単独運転流量調整弁が全開になるように、かつ、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの単独運転流量調整弁と異なる流量調整弁である停止流量調整弁が全閉になるように、複数の流量調整弁6-1~6-3を制御する(ステップS5)。
【0046】
次に室外機制御装置28は、単独運転室内機の目標流量を算出して、目標流量に応じてポンプ8を制御する(ステップS6)。具体的には、まず、往き温度センサ23から往き温度を取得する。
【0047】
次に、室外機制御装置28は、戻り温度センサ24により計測された戻り温度を戻り温度センサ24から取得する。室外機制御装置28は、往き温度と戻り温度とに基づいて温度差を算出する。温度差は、往き温度から戻り温度を減算した値に等しい。
【0048】
室外機制御装置28は、ポンプ目標流量テーブル37を参照して、単独運転室内熱交換器の往き温度と温度差とに基づいて単独運転時目標流量を算出する。詳細には、室外機制御装置28は、ポンプ目標流量テーブル37の複数の温度差41から、取得した温度差に最も近い温度差を選択し、複数の往き温度42から、現在の往き温度に最も近い値を選択する。単独運転時目標流量は、複数の単独運転時目標流量43から、その選択された温度差と往き温度とからなる組み合わせに対応付けられた単独運転時目標流量に等しい。室外機制御装置28は、ポンプ8が水回路4に水を循環させる流量が単独運転時目標流量に等しくなるように、ポンプ8を制御する(ステップS6)。
【0049】
室外機制御装置28は、単独運転室内熱交換器の熱負荷に基づいて単独運転時目標往き温度を算出する。単独運転時目標往き温度は、冷房運転が実行されているときに、単独運転室内熱交換器の熱負荷が大きいほど低く、暖房運転が実行されているときに、単独運転室内熱交換器の熱負荷が大きいほど高い。室外機制御装置28は、単独運転時目標往き温度に基づいて単独運転時目標圧縮機回転数を算出する。単独運転時目標圧縮機回転数は、圧縮機15の回転数が単独運転時目標圧縮機回転数と等しいときに、水冷媒熱交換器19から分岐管11に流れる水の温度(往き温度)が単独運転時目標往き温度に等しくなるように、算出される。室外機制御装置28は、圧縮機15の回転数が単独運転時目標圧縮機回転数と等しくなるように、圧縮機15を制御する(ステップS7)。
【0050】
空気調和機1は、単独運転が実行されているときに、単独運転室内熱交換器に流れる水の流量が単独運転室内熱交換器の温度差と往き温度とに合わせて調節されることにより、単独運転室内熱交換器における水温と水流量と暖房能力との関係が、
図6のグラフに示される水温と水流量と暖房能力との関係に合致するように、ポンプ8を制御することができる。このため、空気調和機1は、単独運転室内熱交換器に冷媒が過剰または過小に循環することを防止することができる。この結果、単独運転室内機は、適切に冷暖房することができ、快適性を向上させることができる。空気調和機1は、さらに、単独運転室内熱交換器の熱負荷が小さいときに、ポンプ8の流量を不要に大きくせずにポンプ8の流量を低減することができ、このとき、消費電力を低減することができる。
【0051】
[実施例1の冷暖房装置の効果]
実施例1の冷暖房装置は、ポンプ8と複数の室内熱交換器7-1~7-3と複数の流量調整弁6-1~6-3と複数の水温センサ26-1~26-3と水冷媒熱交換器19と室外機制御装置28とを備えている。ポンプ8は、水回路4に水を循環させる。複数の室内熱交換器7-1~7-3は、水回路4に互いに並列に設けられている。複数の流量調整弁6-1~6-3は、複数の室内熱交換器7-1~7-3毎に設けられている。複数の水温センサ26-1~26-3は、複数の室内熱交換器7-1~7-3毎に設けられている。水冷媒熱交換器19は、水回路4を循環する水の温度を調節する。
【0052】
室外機制御装置28は、複数の室内熱交換器7-1~7-3に水が流れる複数台運転のときに、所定の流量の水が水回路4を循環するように、ポンプ8を制御する。室外機制御装置28は、複数台運転のときに、さらに、複数の室内熱交換器7-1~7-3の熱負荷のうちの最大値に基づいて第1目標流量を算出する。室外機制御装置28は、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの最大値の熱負荷の最大負荷室内熱交換器を流れる水の流量が第1目標流量に等しくなるように、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの最大負荷室内熱交換器に設けられた最大負荷流量調整弁を制御する。室外機制御装置28は、複数台運転のときに、さらに、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの最大負荷室内熱交換器と異なる他の室内熱交換器の熱負荷と、複数の水温センサ26-1~26-3のうちの最大負荷室内熱交換器に設けられた最大負荷水温センサにより計測された最大負荷室内熱交換器に流入する水の温度とに基づいて第2目標流量を算出する。室外機制御装置28は、他の室内熱交換器を流れる水の流量が第2目標流量に等しくなるように、複数の流量調整弁6-1~6-3のうちの他の室内熱交換器に設けられた他の流量調整弁を制御する。
【0053】
冷暖房装置は、複数の室内機3-1~3-3が運転している場合で、複数の室内熱交換器7-1~7-3に流れる水の流量を複数の室内熱交換器7-1~7-3の各々の熱負荷に合わせて調節しないときに、冷暖房能力の過剰や過小が生じ、快適性が低下することがある。実施例1の冷暖房装置は、複数の室内熱交換器7-1~7-3に流れる水の流量を複数の室内熱交換器7-1~7-3の熱負荷に合わせて調節することができ、複数の室内機3-1~3-3の各々が過剰または過小に冷暖房することを防止し、快適性を向上させることができる。
【0054】
また、実施例1の冷暖房装置の水冷媒熱交換器19は、圧縮機15と、水と冷媒とを熱交換する水冷媒熱交換器19とを備えた冷媒回路14を有し、冷媒が循環するものである。室外機制御装置28は、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうち一つの単独運転室内熱交換器にのみ水が流れる単独運転のときに、単独運転室内熱交換器における熱負荷に基づいて単独運転時目標流量を算出する。室外機制御装置28は、単独運転室内熱交換器に流れる水の流量が単独運転時目標流量に等しくなるように、ポンプ8を制御する。室外機制御装置28は、単独運転のときに、さらに、単独運転室内熱交換器における熱負荷に基づいて算出された単独運転時目標圧縮機回転数に、圧縮機15の圧縮機回転数が等しくなるように、圧縮機15を制御する。室外機制御装置28は、複数台運転のときに、熱負荷の最大値に基づいて算出された複数台運転時目標圧縮機回転数に、圧縮機回転数が等しくなるように、圧縮機15を制御する。実施例1の冷暖房装置は、冷媒が過剰または過小に冷媒回路14に循環しないように、水冷媒熱交換器19の圧縮機15を制御することができ、複数の室内機3-1~3-3が過剰または過小に冷暖房することを防止し、快適性を向上させることができる。
【0055】
また、実施例1の冷暖房装置は、記憶装置31と往き温度センサ23と戻り温度センサ24とをさらに備えている。記憶装置31は、ポンプ目標流量テーブル37と流量調整弁目標流量テーブル38とを記憶している。ポンプ目標流量テーブル37は、温度差と熱負荷とからなる複数の組み合わせを複数の単独運転時目標流量に対応付けている。流量調整弁目標流量テーブル38は、熱負荷と温度とからなる複数の組み合わせを複数の水流量47に対応付けている。往き温度センサ23は、水冷媒熱交換器19により温度が調節された水の温度を計測する。戻り温度センサ24は、複数の室内熱交換器7-1~7-3から流出した水の温度を計測する。
【0056】
室外機制御装置28は、単独運転のときに、ポンプ目標流量テーブル37を参照して、複数の単独運転時目標流量43のうちの、往き温度センサ23により計測された往き温度と、往き温度と戻り温度センサ24により計測された戻り温度との温度差との組み合わせに対応する単独運転時目標流量を算出する。室外機制御装置28は、複数台運転のときに、流量調整弁目標流量テーブル38を参照して、複数の水流量47のうちの、他の室内熱交換器における熱負荷と往き温度との組み合わせに対応する第2目標流量を算出する。実施例1の冷暖房装置は、単独運転時目標流量と第2目標流量とを短時間に算出することができ、快適性を向上させることができる。
【0057】
また、実施例1の冷暖房装置は、複数の室内熱交換器7-1~7-3をそれぞれ備える複数の室内機3-1~3-3をさらに備えている。複数の室内機3-1~3-3の第1室内機3-1は、第1室内機3-1が設置された室内の温度を計測する第1室温センサ25-1を備えている。室外機制御装置28は、第1室温センサ25-1により計測された室温と、第1室内機3-1に設定された設定温度とに基づいて複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの第1室内機3-1に設けられた第1室内熱交換器7-1の熱負荷を算出する。室外機制御装置28は、単独運転のときに、単独運転室内熱交換器の熱負荷に基づいて単独運転時目標往き温度を算出し、往き温度が単独運転時目標往き温度に等しくなるように、単独運転時目標圧縮機回転数を算出する。室外機制御装置28は、複数台運転のときに、最大負荷室内熱交換器の熱負荷に基づいて複数台運転時目標往き温度を算出し、往き温度が複数台運転時目標往き温度に等しくなるように、複数台運転時目標圧縮機回転数を算出する。実施例1の冷暖房装置は、単独運転と複数台運転とで往き温度の制御方法が異なり、単独運転が実行されている場合でも複数台運転が実行されている場合でも水冷媒熱交換器19の圧縮機15を制御することができ、複数の室内機3-1~3-3が過剰または過小に冷暖房することを防止し、快適性を向上させることができる。
【0058】
ところで、既述の実施例1の冷暖房装置は、流量調整弁目標流量テーブル38を用いて第2目標流量を算出しているが、流量調整弁目標流量テーブル38を用いないで第2目標流量を算出してもよい。また、既述の実施例1の冷暖房装置は、ポンプ目標流量テーブル37を用いて単独運転時目標流量を算出しているが、ポンプ目標流量テーブル37を用いないで単独運転時目標流量を算出してもよい。
実施例2の冷暖房装置は、既述の実施例1の冷暖房装置の室外機制御装置28がポンプ目標流量テーブル37と流量調整弁目標流量テーブル38とを用いないで数式を用いて第2目標流量と単独運転時目標流量とを算出し、それ以外は、既述の実施例1の冷暖房装置と同じである。すなわち、複数の室内熱交換器7-1~7-3のうちの各々の対象室内熱交換器の水側能力Qwは、一般的に、水比熱Cpwと入口水温TwLと出口水温TwRと水流量Gwとを用いて次式(1)により表現される。
Qw=Cpw×(TwL-TwR)×Gw…(1)
ここで、入口水温TwLは、対象室内熱交換器に供給される水の温度を示している。出口水温TwRは、対象室内熱交換器から流出する水の温度を示している。水流量Gwは、対象室内熱交換器に単位時間あたりに流れる水の流量を示している。さらに、対象室内熱交換器の空気側能力Qaは、一般的に、空気比熱Cpaと入口水温TwLと室内吸込み温度Taと熱交換器温度効率εと風量Gaとを用いて次式(2)により表現される。
Qa=Cpa×(TwL-Ta)×ε×Ga…(2)
ここで、室内吸込み温度Taは、複数の室内機3-1~3-3のうちの対象室内熱交換器が設けられている対象室内機が設置されている室内の温度を示している。熱交換器温度効率εは、対象室内熱交換器に固有の値を示し、水流量Gwの関数である。風量Gaは、対象室内熱交換器により温度が調節された空気を対象室内機が室内に吹き出す風量を示している。
このとき、室外機制御装置28は、複数台運転のときに、水側能力Qwと空気側能力Qaとが対象室内熱交換器の熱負荷に概ね一致するように、式(1)(2)を逆算して、水流量Gwを第2目標流量として算出する。室外機制御装置28は、単独運転のときに、水側能力Qwと空気側能力Qaとが単独運転室内熱交換器の熱負荷に概ね一致するように、式(1)(2)を逆算して、水流量Gwを単独運転時目標流量として算出する。
実施例2の冷暖房装置は、ポンプ目標流量テーブル37と流量調整弁目標流量テーブル38とを用いないで数式を用いて第2目標流量と単独運転時目標流量とが算出される場合でも、既述の実施例1の冷暖房装置と同様に、複数の流量調整弁6-1~6-3とポンプ8とを制御することができる。このため、実施例2の冷暖房装置は、既述の実施例1の冷暖房装置と同様に、快適性を向上させることができる。また、既述の実施例1の冷暖房装置は、ポンプ目標流量テーブル37と流量調整弁目標流量テーブル38とを用いることにより、式(1)(2)を逆算する必要がなく、実施例2の冷暖房装置と比較して、第2目標流量と単独運転時目標流量とをより短時間に算出することができる。
ところで、既述の実施例の冷暖房装置には、複数の水温センサ26-1~26-3が設けられているが、複数の水温センサ26-1~26-3が省略されてもよい。複数の水温センサ26-1~26-3により計測された水温は、往き温度センサ23により計測された往き温度におおむね等しい。このため、冷暖房装置は、複数の水温センサ26-1~26-3が省略されているときに、複数の水温センサ26-1~26-3により計測された水温の代わりに、往き温度センサ23により計測された往き温度を用いることができる。また、既述の実施例の冷暖房装置には、往き温度センサ23が設けられているが、往き温度センサ23が省略されてもよい。冷暖房装置は、往き温度センサ23が省略されているときに、往き温度センサ23により計測された往き温度の代わりに、複数の水温センサ26-1~26-3のいずれかにより計測された水温を用いることができる。このような場合も、冷暖房装置は、既述の実施例の冷暖房装置と同様に、快適性を向上させることができる。
ところで、既述の実施例の冷暖房装置の水冷媒熱交換器19は、水回路4を循環する水を加熱したり冷却したりするが、水回路4を循環する水を冷却しないで加熱のみする他の熱源機に置換されてもよい。このような場合も、冷暖房装置は、既述の実施例の冷暖房装置と同様に、快適性を向上させることができる。
ところで、既述の実施例の冷暖房装置の水回路4には、水が循環しているが、水と異なる熱媒体が循環してもよい。その熱媒体としては、不凍液が例示される。冷暖房装置は、水と異なる熱媒体が水回路4に循環するときでも、既述の実施例の冷暖房装置と同様に、快適性を向上させることができる。
ところで、既述の実施例の冷暖房装置には、室内に空気を吹き出す複数の室内機3-1~3-2が設けられているが、複数の室内機3-1~3-2が他の複数の端末に置換されてもよい。端末としては、床の温度を調節して室内を暖房する床暖房装置が例示される。このような場合も、冷暖房装置は、既述の実施例1の冷暖房装置と同様に、快適性を向上させることができる。
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。