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特開2024-7892磁気検出装置、磁気センサ及び磁気検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007892
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】磁気検出装置、磁気センサ及び磁気検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/02 20060101AFI20240112BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20240112BHJP
   H01P 3/02 20060101ALI20240112BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20240112BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01R33/02 A
H01P3/00 100
H01P3/02
H01P3/08
H01P3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109277
(22)【出願日】2022-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一馬
(72)【発明者】
【氏名】野口 直記
【テーマコード(参考)】
2G017
5J014
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AA03
2G017AD69
2G017BA05
2G017BA15
2G017CC04
5J014AA00
5J014CA00
5J014DA00
(57)【要約】
【課題】2軸方向の磁界を検出する。
【解決手段】本開示に係る磁気検出装置1は、磁気センサ20と測定装置10とを備える。磁気センサ20は、第1の伝送線路21と、第2の伝送線路22とを備え、第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とは非平行に配置されている。測定装置10は、第1入射波及び第2入射波を生成する信号発生器11と、第1の伝送線路21のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、第2の伝送線路22のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波する信号検波器12と、制御部13と、を備える。制御部13は、第1入射波と第1反射波とに基づいて第1磁界を算出し、第2入射波と第2反射波とに基づいて第2磁界を算出し、第1磁界及び第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置であって、
前記磁気センサは、
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、
前記測定装置は、
前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成する信号発生器と、
前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波する信号検波器と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出し、
前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出し、
前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出する、磁気検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気検出装置において、
前記磁気センサは、
互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第1の伝送線路と、
互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第2の伝送線路と、
を備え、
複数の前記第1の伝送線路と複数の前記第2の伝送線路とは非平行に配置されている、磁気検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路は、同軸ケーブル、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管のいずれかである、磁気検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路は、複数の前記第1導体を含み、
複数の前記第1導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、
前記第1の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、
前記第2の伝送線路は、複数の前記第2導体を含み、
複数の前記第2導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、
前記第2の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、
複数の前記第1導体と複数の前記第2導体とは非平行に配置されている、磁気検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の磁気検出装置において、
複数の前記第1導体のうちの隣接する2つの第1導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有し、
複数の前記第2導体のうちの隣接する2つの第2導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有する、磁気検出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路にバイアス磁界を印加するコイルをさらに備える、磁気検出装置。
【請求項7】
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されている、磁気センサ。
【請求項8】
磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置における磁気検出方法であって、
前記磁気センサは、
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、
前記磁気検出方法は、
前記測定装置が、
前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成するステップと、
前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波するステップと、
前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出するステップと、
前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出するステップと、
前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出するステップと、を含む、磁気検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気検出装置、磁気センサ及び磁気検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界を検出することが可能な磁気検出装置が知られている。磁気検出装置には、様々な構成の装置がある。
【0003】
磁界を検出する磁気センサを線状の構成とする磁気検出装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
線状の磁気センサは柔軟性が高いため、測定対象に合わせて磁気センサを自由に設置することができるという利点がある。また、線状の磁気センサを用いると、線状の磁気センサの任意の位置において磁界を検出することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-60565号公報
【特許文献2】特開2021-162456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の磁気検出装置が検出する磁界は、線状の磁気センサの長手方向に沿った方向の磁界である。すなわち、特許文献1及び2に記載の磁気検出装置は、1軸方向の磁界を検出することができる。
【0007】
線状の磁気センサを用いた磁気検出装置において、1軸方向の磁界を検出するだけでなく、2軸方向の磁界を検出できることが望ましい。
【0008】
そこで、本開示は、2軸方向の磁界を検出することができる磁気検出装置、磁気センサ及び磁気検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態に係る磁気検出装置は、磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置であって、前記磁気センサは、磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、を備え、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、前記測定装置は、前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成する信号発生器と、前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波する信号検波器と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出し、前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出し、前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出する。このような磁気検出装置によれば、2軸方向の磁界を検出することが可能である。
【0010】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記磁気センサは、互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第1の伝送線路と、互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第2の伝送線路と、を備え、複数の前記第1の伝送線路と複数の前記第2の伝送線路とは非平行に配置されていてもよい。これにより、抵抗損失を小さくすることができる。
【0011】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路は、同軸ケーブル、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管のいずれかであってよい。このように、第1の伝送線路及び第2の伝送線路を同軸ケーブルとすることにより、第1の伝送線路及び第2の伝送線路に柔軟性を持たせることができる。また、フレキシブル基板に、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路又は導波管を構成することにより、第1の伝送線路及び第2の伝送線路に柔軟性を持たせることができる。
【0012】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記第1の伝送線路は、複数の前記第1導体を含み、複数の前記第1導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、前記第1の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、前記第2の伝送線路は、複数の前記第2導体を含み、複数の前記第2導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、前記第2の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、複数の前記第1導体と複数の前記第2導体とは非平行に配置されていてもよい。これにより、磁気センサの短手方向の長さを長くすることなく、また、磁界の短手方向の感度を低下させることなく、磁気センサが磁界を検出できる範囲を長手方向に広げることができる。
【0013】
一実施形態に係る磁気検出装置において、複数の前記第1導体のうちの隣接する2つの第1導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有し、複数の前記第2導体のうちの隣接する2つの第2導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有していてもよい。これにより、外部磁界に対して感度が低くなるおそれがある領域が存在することを防ぐことができる。
【0014】
一実施形態に係る磁気検出装置において、前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路にバイアス磁界を印加するコイルをさらに備えていてもよい。これにより、高い線形性、小さいヒステリシス及び高い感度を示す動作点において、第1磁界及び第2磁界を算出することができる。
【0015】
幾つかの実施形態に係る磁気センサは、磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、を備え、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されている。このような磁気センサによれば、2軸方向の磁界を検出することが可能である。
【0016】
幾つかの実施形態に係る磁気検出方法は、磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置における磁気検出方法であって、前記磁気センサは、磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、を備え、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、前記磁気検出方法は、前記測定装置が、前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成するステップと、前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波するステップと、前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出するステップと、前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出するステップと、前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて2軸方向の磁界を算出するステップと、を含む。このような磁気検出方法によれば、2軸方向の磁界を検出することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、2軸方向の磁界を検出することができる磁気検出装置、磁気センサ及び磁気検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る磁気検出装置の概略構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る測定装置の概略構成を示す図である。
図3】一実施形態に係る磁気センサの概略構成を示す図である。
図4】磁気センサに磁界が印加されている様子を示す図である。
図5】2軸方向の磁界を算出する手段を説明するための図である。
図6】2軸方向の磁界を算出する手段を説明するための図である。
図7】第1の変形例に係る磁気センサの概略構成を示す図である。
図8】第2の変形例に係る磁気センサの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、一実施形態に係る磁気検出装置1の概略構成を示す図である。磁気検出装置1は、測定装置10と、磁気センサ20とを備える。
【0021】
磁気センサ20は、第1の伝送線路21と、第2の伝送線路22と、基板23とを備える。
【0022】
第1の伝送線路21は、基板23上に形成されている。第2の伝送線路22は、基板23上に形成されている。第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とは、ショートしないように、基板23上に形成されている。
【0023】
例えば、第1の伝送線路21が基板23の表面に形成され、第2の伝送線路22が基板23の裏面に形成されていてよい。あるいは、第1の伝送線路21が基板23の裏面に形成され、第2の伝送線路22が基板23の表面に形成されていてよい。
【0024】
または、基板23が多層基板である場合、第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とが、基板23の異なる層に形成されていてよい。
【0025】
図1に示すように、第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とは、非平行に配置されている。
【0026】
基板23は、柔軟性を有する基板である。基板23は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)であってよい。
【0027】
第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22は、線状の伝送線路である。第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22は、所定の特性インピーダンスを有する。第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22は、柔軟性を有する同軸ケーブルとして、基板23上に形成されてよい。また、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22は、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管のいずれかとして、基板23上に形成されてよい。
【0028】
第1の伝送線路21、第2の伝送線路22及び基板23が柔軟性を有することにより、磁気センサ20は、変形させることが容易である。磁気センサ20は、柔軟性を有することにより、測定対象の形状に合わせて自由に設置することができる。
【0029】
第1の伝送線路21の一端は、測定装置10のポートP1に接続されている。第1の伝送線路21の他端は、測定装置10のポートP2に接続されている。
【0030】
第2の伝送線路22の一端は、測定装置10のポートP3に接続されている。第2の伝送線路22の他端は、測定装置10のポートP4に接続されている。
【0031】
第1の伝送線路21は、磁性材を含む線状の第1導体210を含む。第1導体210は、信号線として機能する。第1の伝送線路21は、第1導体210に加えて、銅線などによって構成されるシールド線、第1導体210とシールド線とを絶縁する誘電体を備えていてもよい。
【0032】
第2の伝送線路22は、磁性材を含む線状の第2導体220を含む。第2導体220は、信号線として機能する。第2の伝送線路22は、第2導体220に加えて、銅線などによって構成されるシールド線、第2導体220とシールド線とを絶縁する誘電体を備えていてもよい。
【0033】
第1導体210及び第2導体220は、磁性材を含む線状の導体である。第1導体210及び第2導体220は、例えば、略均一に分布した磁性材を含んでいる。
【0034】
第1導体210及び第2導体220は、保持力が小さく透磁率が高い軟磁性材を含んでよい。第1導体210及び第2導体220は、例えば、アモルファス合金又はパーマロイを含んでよい。
【0035】
アモルファス合金及びパーマロイは、高透磁率の磁性材を含む。そのため、第1導体210を含む第1の伝送線路21及び第2導体220を含む第2の伝送線路22は、周方向透磁率及び軸方向透磁率が高くなる。周方向透磁率及び軸方向透磁率が高いため、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22は、外部磁界が印加されると、第1導体210及び第2導体220表面における磁気インピーダンス効果及び第1導体210及び第2導体220内部の磁化(磁壁移動)の効果のいずれか一方の効果、又は、両方の効果により、インピーダンスが変化する。
【0036】
例えば、原子が不規則に配列したアモルファス合金は、Fe基アモルファス合金であるFe-Co-Si-B合金(Feリッチ)、Fe-Si-B-C系合金、Fe-Si-B系合金、Fe-Si-B-Nb-Cu系合金、又はFe-P-B系合金などであってよい。また、アモルファス合金は、Co基アモルファス合金であるFe-Co-Si-B系合金(Coリッチ)、Co-Fe-Cr-Si-B系合金、又はCo-Fe-Mn-Cr-Si-B系合金などであってよい。また、アモルファス合金は、Ni基アモルファス合金であってよい。
【0037】
例えば、Fe及びNiを主成分とした合金であるパーマロイは、Ni含有量78.5%の78-パーマロイ(JIS規格:パーマロイA)、Ni含有量45%(40~50%)の45-パーマロイ(JIS規格:パーマロイB)、又は78-パーマロイにMo、Cu若しくはCrなどを添加したパーマロイ(JIS規格:パーマロイC)などであってよい。
【0038】
パーマロイの体積抵抗率は、68μΩcm程度である。これは、銅の体積抵抗率1.68μΩcmの40倍以上の体積抵抗率である。
【0039】
第1導体210及び第2導体220は、アモルファス合金及びパーマロイ以外の他の軟磁性材として、Fe-Si-Al系合金(例えばセンダスト)、Fe-Co系合金(例えばパーメンジュール)、Mn-Zn系合金若しくはNi-Zn系合金(例えばソフトフェライト)、又はFe-Si系合金(例えば珪素鋼若しくは電磁鋼)などを含んでよい。
【0040】
第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22に印加される磁界が10[Oe(エルステッド)]程度の比較的大きい磁界である場合、第1導体210及び第2導体220は、Fe、Ni又はCoなどの単金属を磁性材として含んでよい。
【0041】
第1導体210及び第2導体220は、ナノ結晶粒をアモルファス相に分散させたナノ結晶軟磁性材を含んでよい。
【0042】
図2は、図1の測定装置10の概略構成を示す図である。測定装置10は、信号発生器11と、信号検波器12と、制御部13と、メモリ14と、方向性結合器(DC:Directional Coupler)15-1~15-4とを備える。また、測定装置10は、ポートP1~P4を備える。ポートP1~P4は、信号を入出力するためのポートである。測定装置10は、例えば、ベクトルネットワークアナライザとして機能する測定装置であってよい。
【0043】
図2では接続の図示を省略しているが、図1に示すように、ポートP1は、第1の伝送線路の21の一端に接続されている。ポートP2は、第1の伝送線路21の他端に接続されている。ポートP3は、第2の伝送線路22の一端に接続されている。ポートP4は、第2の伝送線路22の他端に接続されている。
【0044】
信号発生器11は、第1の伝送線路21に入力する入射波と、第2の伝送線路22に入力する入射波とを生成する。以後、第1の伝送線路21に入力する入射波を「第1入射波」と称し、第2の伝送線路22に入力する入射波を「第2入射波」と称して説明する場合がある。
【0045】
信号発生器11は、例えば、第1入射波及び第2入射波として、10MHzから50GHzまで周波数を掃引して正弦波信号を出力する。
【0046】
信号発生器11は、方向性結合器15-1~15-4と、信号検波器12とに接続されている。
【0047】
信号発生器11は、生成した第1入射波を方向性結合器15-1に出力し、ポートP1を介して第1の伝送線路21の一端に入力させる。あるいは、信号発生器11は、生成した第1入射波を方向性結合器15-2に出力し、ポートP2を介して第1の伝送線路21の他端に入力させる。
【0048】
信号発生器11は、生成した第2入射波を方向性結合器15-3に出力し、ポートP3を介して第2の伝送線路22の一端に入力させる。あるいは、信号発生器11は、生成した第2入射波を方向性結合器15-4に出力し、ポートP4を介して第2の伝送線路22の他端に入力させる。
【0049】
信号発生器11は、生成した第1入射波及び第2入射波を、信号検波器12に出力する。
【0050】
信号検波器12は、信号発生器11から入力される第1入射波及び第2入射波を検波する。また、信号検波器12は、方向性結合器15-1~15-4から入力される反射波を検波する。
【0051】
信号検波器12が検波する反射波について説明する。磁気センサ20のある位置において、外部磁界が印加されているとする。以後、外部磁界が印加されている位置を「磁界印加位置」と称して説明する場合がある。
【0052】
磁気センサ20のある位置において外部磁界が印加されると、磁界印加位置において、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22のインピーダンスが変化する。この状態で、第1の伝送線路21に第1入射波が入力されると、磁界印加位置におけるインピーダンス不整合により、反射波が発生する。以後、第1の伝送線路21で発生する反射波を「第1反射波」と称して説明する場合がある。また、この状態で、第2の伝送線路22に第2入射波が入力されると、磁界印加位置におけるインピーダンス不整合により、反射波が発生する。以後、第2の伝送線路22で発生する反射波を「第2反射波」と称して説明する場合がある。なお、「第1反射波」と「第2反射波」とを区別する必要がない場合、単に「反射波」と称して説明する場合がある。また、「第1入射波」及び「第2入射波」についても、区別する必要がない場合は、単に「入射波」と称して説明する場合がある。
【0053】
例えば、信号発生器11が第1入射波を方向性結合器15-1に出力している場合、第1入射波は第1の伝送線路21の一端に入力される。磁界印加位置において第1の伝送線路21のインピーダンス不整合により生じた第1反射波は、ポートP1及び方向性結合器15-1を介して信号検波器12に入力される。このようにして、信号検波器12は、第1の伝送線路21の一端からの第1反射波を検波する。
【0054】
また、例えば、信号発生器11が第1入射波を方向性結合器15-2に出力している場合、第1入射波は第1の伝送線路21の他端に入力される。磁界印加位置において第1の伝送線路21のインピーダンス不整合により生じた第1反射波は、ポートP2及び方向性結合器15-2を介して信号検波器12に入力される。このようにして、信号検波器12は、第1の伝送線路21の他端からの第1反射波を検波する。
【0055】
また、例えば、信号発生器11が第2入射波を方向性結合器15-3に出力している場合、第2入射波は第2の伝送線路22の一端に入力される。磁界印加位置において第2の伝送線路22のインピーダンス不整合により生じた第2反射波は、ポートP3及び方向性結合器15-3を介して信号検波器12に入力される。このようにして、信号検波器12は、第2の伝送線路22の一端からの第2反射波を検波する。
【0056】
また、例えば、信号発生器11が第2入射波を方向性結合器15-4に出力している場合、第2入射波は第2の伝送線路22の他端に入力される。磁界印加位置において第2の伝送線路22のインピーダンス不整合により生じた第2反射波は、ポートP4及び方向性結合器15-4を介して信号検波器12に入力される。このようにして、信号検波器12は、第2の伝送線路22の他端からの第2反射波を検波する。
【0057】
信号検波器12は、信号発生器11が掃引して出力する正弦波信号の周波数毎に、入射波に対する反射波のベクトル比を検出する。ここでいうベクトル比とは、入射波に対する反射波の反射率及び位相差によって規定されるベクトルである。ここで、入射波に対する反射波の反射率とは、反射波の振幅を入射波の振幅で割ったものである。また、入射波に対する反射波の位相差とは、反射波の位相から入射波の位相を引いたものである。
【0058】
信号検波器12は、第1入射波の周波数毎に、第1入射波に対する第1反射波のベクトル比を周波数領域データとして制御部13に出力する。また、信号検波器12は、第2入射波の周波数毎に、第2入射波に対する第2反射波のベクトル比を周波数領域データとして制御部13に出力する。
【0059】
制御部13は、測定装置10の各構成部を制御する。制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサとして構成されてよい。制御部13の機能の詳細については後述する。
【0060】
メモリ14は、制御部13に接続されている。メモリ14は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶装置を有する。メモリ14は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。メモリ14は、測定装置10に内蔵されるものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)等のデジタル入出力ポート等によって接続された外付け型の記憶装置であってもよい。
【0061】
制御部13は、信号検波器12から取得した、第1入射波に対する第1反射波のベクトル比の周波数領域データを逆フーリエ変換して、第1反射波の時間領域データを生成する。また、制御部13は、信号検波器12から取得した、第2入射波に対する第2反射波のベクトル比の周波数領域データを逆フーリエ変換して、第2反射波の時間領域データを生成する。
【0062】
制御部13は、信号発生器11が出力する第1入射波を、信号検波器12を介して取得し、逆フーリエ変換して、第1入射波の時間領域データを生成する。制御部13は、第1入射波の時間領域データと、第1反射波の時間領域データとに基づいて、第1の伝送線路21における磁界印加位置を算出することができる。制御部13は、第1入射波の時間領域データを検出する時間と、第1反射波の時間領域データを検出する時間との差分に基づいて、第1の伝送線路21における磁界印加位置を算出することができる。
【0063】
また、制御部13は、第1入射波の時間領域データと、第1反射波の時間領域データとに基づいて、第1の伝送線路21の磁界印加位置における磁界の強度を算出することができる。第1の伝送線路21の磁界印加位置における磁界の強度が大きいと、当該磁界印加位置におけるインピーダンス不整合が大きくなる。そのため、第1の伝送線路21の磁界印加位置における磁界の強度が大きくなると、第1入射波の時間領域データにおける振幅の大きさに対する第1反射波の時間領域データにおける振幅の大きさの比率が大きくなる。したがって、制御部13は、第1入射波の時間領域データにおける振幅の大きさに対する第1反射波の時間領域データにおける振幅の大きさの比率に基づいて、磁界印加位置における磁界の強度を算出することができる。ここで制御部13が算出する第1の伝送線路21の磁界印加位置における磁界の強度は、第1の伝送線路21に沿った方向の磁界の強度である。このように、制御部13は、例えば、特許文献1に記載された方法により、第1の伝送線路21における磁界印加位置及び第1の伝送線路21の磁界印加位置における磁界の強度を同時に算出することができる。
【0064】
制御部13は、信号発生器11が出力する第2入射波を、信号検波器12を介して取得し、逆フーリエ変換して、第2入射波の時間領域データを生成する。制御部13は、第2入射波の時間領域データと、第2反射波の時間領域データとに基づいて、第2の伝送線路22における磁界印加位置を算出することができる。制御部13は、第2入射波の時間領域データを検出する時間と、第2反射波の時間領域データを検出する時間との差分に基づいて、第2の伝送線路22における磁界印加位置を算出することができる。
【0065】
また、制御部13は、第2入射波の時間領域データと、第2反射波の時間領域データとに基づいて、第2の伝送線路22の磁界印加位置における磁界の強度を算出することができる。第2の伝送線路22の磁界印加位置における磁界の強度が大きいと、当該磁界印加位置におけるインピーダンス不整合が大きくなる。そのため、第2の伝送線路22の磁界印加位置における磁界の強度が大きくなると、第2入射波の時間領域データにおける振幅の大きさに対する第2反射波の時間領域データにおける振幅の大きさの比率が大きくなる。したがって、制御部13は、第2入射波の時間領域データにおける振幅の大きさに対する第2反射波の時間領域データにおける振幅の大きさの比率に基づいて、磁界印加位置における磁界の強度を算出することができる。ここで制御部13が算出する第2の伝送線路22の磁界印加位置における磁界の強度は、第2の伝送線路22に沿った方向の磁界の強度である。このように、制御部13は、例えば、特許文献1に記載された方法により、第2の伝送線路22における磁界印加位置及び第2の伝送線路22の磁界印加位置における磁界の強度を同時に算出することができる。
【0066】
制御部13は、上述のようにして算出した、第1の伝送線路21に沿った方向の磁界と、第2の伝送線路22に沿った方向の磁界とに基づいて、2軸方向の磁界を算出する。制御部13による2軸方向の磁界の算出について、図3図6を参照して説明する。
【0067】
図3は、磁気センサ20の概略構成を示す図である。図3に示すように、基板23の長手方向がY軸方向、基板23の短手方向がX軸方向であるものとする。図3の基板23上に示す領域Rにおいて、外部から一様な磁界Hが印加されている場合を例として説明する。
【0068】
図4は、図3に示した領域Rを拡大した図である。図4に示すように、一様な磁界Hが外部から領域Rに印加されているものとする。磁界Hは、X軸方向の磁界HとY軸方向の磁界Hという2軸方向の磁界にベクトル分解することができる。
【0069】
図4は、第1の伝送線路21がX軸の正方向から角度θの方向であり、第2の伝送線路22がX軸の負方向から角度θの方向である場合を示している。
【0070】
図5は、磁界Hを第1の伝送線路21に沿った方向にベクトル分解した様子と、磁界Hを第2の伝送線路22に沿った方向にベクトル分解した様子とを示す。
【0071】
図5に示すように、磁界Hを第1の伝送線路21に沿った方向にベクトル分解した成分の磁界の大きさは、Hcosθである。また、磁界Hを第2の伝送線路22に沿った方向にベクトル分解した成分の磁界の大きさは、Hcosθである。
【0072】
図6は、磁界Hを第1の伝送線路21に沿った方向にベクトル分解した様子と、磁界Hを第2の伝送線路22に沿った方向にベクトル分解した様子とを示す。
【0073】
図6に示すように、磁界Hを第1の伝送線路21に沿った方向にベクトル分解した成分の磁界の大きさは、Hsinθである。また、磁界Hを第2の伝送線路22に沿った方向にベクトル分解した成分の磁界の大きさは、Hsinθである。
【0074】
ここで、第1の伝送線路21に沿った方向の磁界を磁界Hとすると、図5及び図6に示す磁界ベクトルを合成して、磁界Hは、以下の式(1)のように表される。
【数1】
【0075】
また、第2の伝送線路22に沿った方向の磁界を磁界Hとすると、図5及び図6に示す磁界ベクトルを合成して、磁界Hは、以下の式(2)のように表される。なお、式(2)において、右辺第1項のHcosθに負号がついているのは、右辺第2項のHsinθと方向が逆だからである。
【数2】
【0076】
以後、第1の伝送線路21に沿った方向の磁界Hを「第1磁界」と称して説明する場合がある。また、第2の伝送線路22に沿った方向の磁界Hを「第2磁界」と称して説明する場合がある。
【0077】
式(1)及び式(2)に基づいて、X軸方向の磁界H及びY軸方向の磁界Hを、それぞれ以下のように算出することができる。
【数3】
【数4】
【0078】
制御部13は、第1入射波及び第1反射波に基づいて第1の伝送線路21に沿った方向の第1磁界Hを算出し、第2入射波及び第2反射波に基づいて第2の伝送線路22に沿った方向の第2磁界Hを算出する。制御部13は、第1磁界H及び第2磁界Hに基づいて、式(3)及び式(4)に示すような演算を行うことによって、X軸方向の磁界H及びY軸方向の磁界Hという2軸方向の磁界を算出することができる。
【0079】
このように、磁気検出装置1は、非平行に配置された第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22によって、それぞれ、第1の伝送線路21に沿った方向の第1磁界Hと、第2の伝送線路22に沿った方向の第2磁界Hを検出することができる。そして、磁気検出装置1は、第1磁界H及び第2磁界Hに基づいて、X軸方向の磁界H及びY軸方向の磁界Hという2軸方向の磁界を算出することができる。
【0080】
(オフセットデータ)
測定装置10は、第1反射波及び第2反射波に基づいて、第1磁界及び第2磁界を算出する際、オフセットデータを引いた差分のデータを、第1磁界及び第2磁界を算出する際に用いる第1反射波及び第2反射波のデータとして用いてよい。測定装置10は、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22に磁界が印加されていないときに検出した第1反射波及び第2反射波のデータをオフセットデータとして、メモリ14に保存しておいてよい。測定装置10は、このように、検出した第1反射波及び第2反射波のデータからオフセットデータを引いた差分のデータを、第1磁界及び第2磁界を算出するための第1反射波及び第2反射波のデータとして用いることにより、外部磁界以外の影響を低減して、第1磁界及び第2磁界を算出することができる。例えば、測定装置10は、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22の構成要素の機械的な公差、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22の曲げ等により生じる歪み、初期状態から印加されている環境磁界(例えば地磁気又は電子機器などから発生する磁界)などにより生じた反射波の影響などを低減することができる。
【0081】
(バイアス磁界の印加)
磁気検出装置1は、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22の周囲にコイルを備えていてもよい。磁気検出装置1は、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22の周囲に設置されたコイルにバイアス電流を流すことで、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路に沿った方向にバイアス磁界を印加することができる。
【0082】
上述のようなバイアス磁界を印加することにより、測定装置10は、高い線形性、小さいヒステリシス及び高い感度を示す動作点において、第1磁界及び第2磁界を算出することができる。これにより、測定装置10は、2軸方向の磁界を高い精度で算出することができる。
【0083】
以上のような一実施形態に係る磁気検出装置1によれば、2軸方向の磁界を検出することが可能である。より具体的には、磁気センサ20は、第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とを備え、第1の伝送線路21と第2の伝送線路22とは非平行に配置されている。測定装置10の制御部13は、第1入射波と第1反射波とに基づいて磁界印加位置における第1の伝送線路21に沿った方向の第1磁界を算出し、第2入射波と第2反射波とに基づいて磁界印加位置における第2の伝送線路22に沿った方向の第2磁界を算出し、第1磁界及び第2磁界に基づいて2軸方向の磁界を算出する。このように、磁気センサ20が非平行に配置された第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22を備えていることにより、磁気検出装置1は、第1の伝送線路21で検出した第1磁界及び第2の伝送線路22で検出した第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出することができる。
【0084】
また、一実施形態に係る磁気検出装置1によれば、磁気センサ20に印加された磁界の位置と、磁気センサ20に印加された磁界の強度とを、同時に検出することができるため、測定対象から発生した不均一な外部磁界を検出することができる。したがって、磁気検出装置1は、測定対象である磁性材の磁化分布により発生した外部磁界、及び測定対象である金属表面の欠陥による磁界分布により発生した外部磁界などを測定することが可能となる。また、磁気検出装置1は、地磁気検出、渦電流探傷、磁気顕微鏡、電流センサ及び脳磁計など、多種多様な計測機器に対して適用可能である。
【0085】
(第1の変形例)
図7は、第1の変形例に係る磁気センサ20aを示す図である。図7に示す磁気センサ20aは、基板23の表面に第1の伝送線路21aが形成されている。また、基板23の裏面に第2の伝送線路22aが形成されている。
【0086】
図7においては、第1の伝送線路21aの形状を見やすくするため、第1の伝送線路21aのみを示し、第2の伝送線路22aの図示を省略した図を、左側に示す。
【0087】
また、第2の伝送線路22aの形状を見やすくするため、第2の伝送線路22aのみを示し、第1の伝送線路21aの図示を省略した図を、右側に示す。
【0088】
左側に示す第1の伝送線路21aのみを示す図、及び、右側に示す第2の伝送線路22aのみを示す図のいずれも、Z軸の正方向側から見た図である。第2の伝送線路22aは基板23の裏面にあるため、破線で示している。
【0089】
第1の変形例に係る磁気センサ20aは、磁気センサ20aが磁界を検出できる範囲を広げるために、基板23を長手方向(Y軸方向)に伸ばした形状である。
【0090】
例えば、図3に示すような磁気センサ20において、図4に示した角度θを保ったまま、基板23をY軸方向に伸ばすと、基板23のX軸方向の長さも長くなってしまう。そうすると、磁気センサ20のX軸方向も伸びてしまい、磁気センサ20の形状が大型化してしまう。
【0091】
磁気センサ20の形状が大型化してしまうことを防ぐため、図4に示す角度θを90度に近づけた角度にして、基板23をY軸方向に伸ばすと、磁界のX軸方向の感度が低下してしまう。
【0092】
第1の変形例に係る磁気センサ20aは、基板23のX軸方向の長さを長くすることなく、また、磁界のX軸方向の感度を低下させることなく、基板23をY軸方向に伸ばすことができる構成である。
【0093】
図7の左側の図に示すように、第1の伝送線路21aは、複数の第1導体210を含む。第1導体210は、磁性材を含む線状の導体である。隣接する第1導体210同士は、非磁性材の導体211で接続されている。非磁性材の導体211は、例えば、銅線であってよい。非磁性材の導体211は、基板23の短手方向(X軸方向)に沿って配置されている。第1の伝送線路21aは、全体として鋸歯状の形状となっている。
【0094】
なお、図7において、第1の伝送線路21aは、5本の第1導体210を含んでいるが、これは一例である。第1の伝送線路21aは、2~4本の第1導体210を含んでもよいし、6本以上の第1導体210を含んでもよい。
【0095】
図7の右側の図に示すように、第2の伝送線路22aは、複数の第2導体220を含む。第2導体220は、磁性材を含む線状の導体である。隣接する第2導体220同士は、非磁性材の導体221で接続されている。非磁性材の導体221は、例えば、銅線であってよい。非磁性材の導体221は、基板23の短手方向(X軸方向)に沿って配置されている。第2の伝送線路22aは、全体として鋸歯状の形状となっている。
【0096】
なお、図7において、第2の伝送線路22aは、5本の第2導体220を含んでいるが、これは一例である。第2の伝送線路22aは、2~4本の第2導体220を含んでもよいし、6本以上の第2導体220を含んでもよい。
【0097】
図7に示すように、複数の第1導体210と複数の第2導体220とは、非平行に配置されている。したがって、図1に示す磁気検出装置1において、磁気センサ20の代わりに、第1の変形例に係る磁気センサ20aを用いても、磁気検出装置1は、2軸方向の磁界を算出することができる。
【0098】
また、第1の伝送線路21a及び第2の伝送線路22aが鋸歯状の形状であることにより、第1の変形例に係る磁気センサ20aは、基板23のX軸方向の長さを長くすることなく、また、磁界のX軸方向の感度を低下させることなく、基板23をY軸方向に伸ばすことができる。
【0099】
したがって、第1の変形例に係る磁気センサ20aは、基板23のX軸方向の長さを長くすることなく、また、磁界のX軸方向の感度を低下させることなく、磁気センサ20aが磁界を検出できる範囲をY軸方向に広げることができる。
【0100】
なお、図7においては、第1の伝送線路21aが基板23の表面に形成され、第2の伝送線路22aが基板23の裏面に形成される構成を示したが、この構成に限定されない。例えば、基板23が多層基板である場合、第1の伝送線路21aと第2の伝送線路22aとが、基板23の異なる層に形成されていてもよい。
【0101】
(第2の変形例)
図8は、第2の変形例に係る磁気センサ20bを示す図である。第2の変形例に係る磁気センサ20bについては、図7に示した第1の変形例に係る磁気センサ20aとの相違点について主に説明し、磁気センサ20aと共通又は類似する部分については説明を省略する。
【0102】
図8の左側の図に示すように、第1の伝送線路21bは、複数の第1導体210を含む。隣接する第1導体210同士は、非磁性材の導体211で接続されている。非磁性材の導体211は、図7の左側に示した導体211と異なり、基板23の短手方向(X軸方向)に対して斜めの方向に配置されている。第1の伝送線路21bは、全体として鋸歯状の形状となっている。
【0103】
図8の右側の図に示すように、第2の伝送線路22bは、複数の第2導体220を含む。隣接する第2導体220同士は、非磁性材の導体221で接続されている。非磁性材の導体221は、図7の右側に示した導体221と異なり、基板23の短手方向(X軸方向)に対して斜めの方向に配置されている。第2の伝送線路22bは、全体として鋸歯状の形状となっている。
【0104】
図8の左側の図を参照すると、複数の第1導体210のうちの隣接する2つの第1導体210は、磁気センサ20bの長手方向(Y軸方向)において重複した領域Sを有する。
【0105】
このように重複した領域Sを有することにより、第1の伝送線路21bは、Y軸方向の全ての位置において、磁界を検出することができる。第2の伝送線路22bも同様に、重複した領域Sを有することにより、Y軸方向の全ての位置において、磁界を検出することができる。
【0106】
例えば、図7の左側の図を参照すると、第1の変形例に係る磁気センサ20aにおいて、第1の伝送線路21aは、複数の第1導体210を含み、隣接する第1導体210同士は、非磁性材の導体211によって接続されている。この際、第1導体210と導体211とはパッドを介して接続されているが、パッドの部分は、Y軸方向において、第1導体210が存在しない領域となっている。すなわち、この領域が外部磁界に対して感度が低くなるおそれがある。
【0107】
第2の変形例に係る磁気センサ20bは、このような外部磁界に対して感度が低くなるおそれがある領域が存在することを防ぐことができる。
【0108】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0109】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0110】
例えば、上述した実施形態においては、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22がそれぞれ1本である場合を例に挙げて説明したが、第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22の本数はこれに限定されない。磁気センサ20は、互いに平行に配置され、並列接続された第1の伝送線路21を複数本備えていてよい。また、磁気センサ20は、互いに平行に配置され、並列接続された第2の伝送線路22を複数本備えていてよい。この場合、複数の第1の伝送線路21と複数の第2の伝送線路22とは、非平行に配置されている。線状の第1導体210及び線状の第2導体220として、パーマロイを用いた場合、パーマロイの体積抵抗率は68μΩcm程度であり、銅の体積抵抗率1.68μΩcmに対して40倍以上大きな体積抵抗率となる。またパーマロイの最大透磁率は非常に高いため、高周波入力時の表皮効果による抵抗損失が大きくなり減衰量が大きくなってしまうという問題がある。磁気センサ20が複数の第1の伝送線路21及び複数の第2の伝送線路22を備える構成とすると、第1導体210及び第2導体220による抵抗損失を小さくすることができる。
【0111】
例えば、上述した実施形態においては、信号発生器11が、周波数を掃引して正弦波信号を出力する場合を例に挙げて説明したが、信号発生器11が生成する波形はこれに限定されない。例えば、信号発生器11は、パルスを生成し、生成したパルスを第1の伝送線路21及び第2の伝送線路22に入力させてもよい。
【0112】
以下に本開示の実施形態の一部について例示する。しかしながら、本開示の実施形態はこれらに限定されない点に留意されたい。
[付記1]
磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置であって、
前記磁気センサは、
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、
前記測定装置は、
前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成する信号発生器と、
前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波する信号検波器と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出し、
前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出し、
前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出する、磁気検出装置。
[付記2]
付記1に記載の磁気検出装置において、
前記磁気センサは、
互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第1の伝送線路と、
互いに平行に配置された並列接続の複数の前記第2の伝送線路と、
を備え、
複数の前記第1の伝送線路と複数の前記第2の伝送線路とは非平行に配置されている、磁気検出装置。
[付記3]
付記1又は2に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路は、同軸ケーブル、平行二線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路及び導波管のいずれかである、磁気検出装置。
[付記4]
付記1から3のいずれか一項に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路は、複数の前記第1導体を含み、
複数の前記第1導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、
前記第1の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、
前記第2の伝送線路は、複数の前記第2導体を含み、
複数の前記第2導体は、少なくとも1つの非磁性材の導体で接続され、
前記第2の伝送線路は、鋸歯状の形状となっており、
複数の前記第1導体と複数の前記第2導体とは非平行に配置されている、磁気検出装置。
[付記5]
付記4に記載の磁気検出装置において、
複数の前記第1導体のうちの隣接する2つの第1導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有し、
複数の前記第2導体のうちの隣接する2つの第2導体は、前記磁気センサの長手方向において重複した領域を有する、磁気検出装置。
[付記6]
付記1から5のいずれか一項に記載の磁気検出装置において、
前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路にバイアス磁界を印加するコイルをさらに備える、磁気検出装置。
[付記7]
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されている、磁気センサ。
[付記8]
磁気センサと測定装置とを備える磁気検出装置における磁気検出方法であって、
前記磁気センサは、
磁性材を含む線状の第1導体を含む第1の伝送線路と、
磁性材を含む線状の第2導体を含む第2の伝送線路と、
を備え、
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路とは非平行に配置されており、
前記磁気検出方法は、
前記測定装置が、
前記第1の伝送線路に入力する第1入射波と前記第2の伝送線路に入力する第2入射波とを生成するステップと、
前記磁気センサへの磁界印加位置において前記第1の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第1反射波と、前記磁界印加位置において前記第2の伝送線路のインピーダンス不整合により生じた第2反射波とを検波するステップと、
前記第1入射波と前記第1反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第1の伝送線路に沿った方向の第1磁界を算出するステップと、
前記第2入射波と前記第2反射波とに基づいて、前記磁界印加位置における前記第2の伝送線路に沿った方向の第2磁界を算出するステップと、
前記第1磁界及び前記第2磁界に基づいて、2軸方向の磁界を算出するステップと、を含む、磁気検出方法。
【符号の説明】
【0113】
1 磁気検出装置
10 測定装置
11 信号発生器
12 信号検波器
13 制御部
14 メモリ
15 方向性結合器(DC)
20、20a、20b 磁気センサ
21、21a、21b 第1の伝送線路
22、22a、22b 第2の伝送線路
23 基板
210 第1導体
211 (非磁性材の)導体
220 第2導体
221 (非磁性材の)導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8