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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078922
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20240604BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240604BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240604BHJP
   B66C 13/00 20060101ALI20240604BHJP
   B66C 13/46 20060101ALI20240604BHJP
【FI】
B66C23/88 D
E02F9/26 B
E02F9/22 Q
B66C13/00 D
B66C13/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191544
(22)【出願日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰広
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA07
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB05
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB03
2D015HB05
3F204AA04
3F204CA05
3F204EB07
3F204FB01
3F204FC02
3F204FC03
3F204FC04
3F204FC06
3F204FD02
3F204FD03
3F204FD06
3F204FD07
3F205AA05
(57)【要約】
【課題】作業機械を用いて荷吊り作業を行っている際に、吊り荷の接触を防止する。
【解決手段】作業機械100が、吊り荷99を吊る作業機械本体101と、オペレーターによって操作されることによって作業機械本体101を操縦する操作装置33と、吊り荷99及び作業機械本体101の周辺環境情報を取得する外界センサ40と、外界センサ40によって取得された前記周辺環境情報に基づいて、吊り荷99の揺れ方向を算出する揺れ検出部64と、揺れ検出部64によって算出された前記揺れ方向が判定基準方向であるか否かを判定する判定部66と、判定部66の判定が肯定判定である場合に、操作装置33による作業機械本体101の操縦を制限して、作業機械本体101を操縦する操縦部71と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷を吊る作業機械本体と、
オペレーターによって操作されることによって前記作業機械本体を操縦する操作装置と、
前記吊り荷及び作業機械本体の周辺環境情報を取得する外界センサと、
前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記吊り荷の揺れ方向を算出する揺れ検出部と、
前記揺れ検出部によって算出された前記揺れ方向が判定基準方向であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定が肯定判定である場合に、前記操作装置による前記作業機械本体の操縦を制限して、前記作業機械本体を操縦する操縦部と、
を備える作業機械。
【請求項2】
第2判定部を更に備え、
前記揺れ検出部が、前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記吊り荷の揺れ速度を算出し、
前記第2判定部が、前記揺れ検出部によって算出された前記揺れ速度が判定速度を超えたか否かを判定し、
前記操縦部が、前記判定部の判定が肯定判定であり且つ前記第2判定部の判定が肯定判定である場合に、前記操作装置による前記作業機械本体の操縦を制限して、前記作業機械本体を操縦する
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記操縦部による前記作業機械本体の操縦が、前記作業機械本体の動作の速度を低下させること、前記作業機械本体の動作を停止させること、又は、前記作業機械本体の動作の向きを逆向きにすること、である
請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記吊り荷の位置を算出する吊り荷検出部と、
前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記作業機械本体の周辺の障害物の位置を算出する障害物検出部と、
前記吊り荷検出部によって算出された前記吊り荷の位置から、前記障害物検出部によって算出された前記障害物の位置への方向を、前記判定基準方向として算出する判定基準算出部と、
を備える請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記吊り荷の位置を算出する吊り荷検出部と、
前記吊り荷検出部によって算出された前記吊り荷の位置に基づいて、前記吊り荷の位置から前記作業機械への方向を、前記判定基準方向として算出する判定基準算出部と、
を備える請求項1又は2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業機械が、下部走行体と、前記下部走行体の上に搭載されるとともに旋回する上部旋回体と、前記上部旋回体に連結されるとともに俯仰するブームと、前記ブームの先端に連結されるとともに起伏するアームと、を有するショベル本体であり、
前記吊り荷が前記アームの先端から吊り下げられ、
前記操作装置による前記作業機械本体の操縦及び前記操縦部による前記作業機械本体の操縦が、前記上部旋回体の旋回、前記ブームの俯仰及び前記アームの起伏である
請求項3に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、クレーン仕様油圧ショベルを開示する。このショベルが自動水平引きモードで動作する際に、角度検出器がクレーン仕様油圧ショベルのアーム及びブームの角度を検出し、検出器がロープの長さを検出し、コントローラがこれらの検出器の出力信号に基づいて吊り荷の位置を演算するとともに、吊り荷とキャビンの接触の虞の有無を判断する。吊り荷とキャビンの接触の虞がある場合には、ブザーがオペレーターに報知するとともに、自動水平引きの動作が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-64336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吊り荷がショベルによって移動させられる際に、吊り荷が揺れることがある。吊り荷が揺れると、吊り荷の位置に基づいて接触の虞の有無を判断したのでは、たとえ自動水平引の動作を停止させても、吊り荷がキャビンに接触してしまう虞がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ショベル等の作業機械を用いて荷吊り作業を行っている際に、吊り荷の接触を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、
吊り荷を吊る作業機械本体と、
前記作業機械本体を操縦する操作装置と、
前記吊り荷及び作業機械本体の周辺環境情報を取得する外界センサと、
前記外界センサによって取得された前記周辺環境情報に基づいて、前記吊り荷の揺れ方向を算出する揺れ検出部と、
前記揺れ検出部によって算出された前記揺れ方向が判定基準方向であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定が肯定判定である場合に、前記操作装置による前記作業機械本体の操縦を制限して、前記作業機械本体を操縦する操縦部と、
を備える作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吊り荷の接触を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業機械の側面図である。
図2】作業機械のブロック図である。
図3】作業機械のコントローラが行う処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に開示された実施形態に限定されない。図面は例示のみのために提供されるため、本発明の範囲は図面の例示に限定されない。
【0010】
<<作業機械の概要>>
図1は、作業機械100の側面図である。図2は、作業機械100のブロック図である。
【0011】
作業機械100は、建設機械であり、より具体的には自走式のショベルである。作業機械100は、通常地盤の掘削のために利用される。作業機械100は、荷吊りのためにも利用される。
【0012】
図1に示すように、作業機械100は、掘削作業及び荷吊り作業を行う作業機械本体101を備える。作業機械本体101は、ショベル本体である。作業機械本体101は、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、キャビン10及びフック13を備える。図2に示すように、作業機械本体101は、油圧モーター11L,11R,12、エンジン21、メインポンプ22、レギュレータ23及びコントロールバルブ24を備える。
【0013】
また、作業機械100は、オペレーターの操縦に従って作業機械本体101を手動操縦するための操作系を備える。その操作系は、図2に示すように、パイロットポンプ31、油圧制御弁32及び操作装置33を有する。
また、作業機械100は、作業機械本体101を制御するための制御系を有する。制御系は、図2に示すように、ブーム角度センサ41、アーム角度センサ42、バケット角度センサ43、旋回角センサ44、機体傾斜センサ45、安全スイッチ46、表示装置50、コントローラ60を備える。
【0014】
<<作業機械本体>>
図1を参照して、作業機械本体101について詳細に説明する。
【0015】
下部走行体1は、例えば、左右一対のクローラを含む。下部走行体1のクローラが図2に図示の油圧モータ11L,11Rによりそれぞれ駆動されることによって、下部走行体1が走行する。
【0016】
上部旋回体3が旋回機構2を介して下部走行体1に搭載され、旋回機構2が下部走行体1に対して上部旋回体3を旋回可能に連結する。上部旋回体3が図2に図示の油圧モーター12により駆動されることによって、上部旋回体3が下部走行体1に対して相対的に旋回する。上部旋回体3には、キャビン10が搭載されている。キャビン10は、オペレーターが搭乗する操縦室である。
【0017】
ブーム4の基端が上部旋回体3の前部中央に回転可能に連結され、ブーム4がその基端を支点にして俯仰可能に設けられている。ブームシリンダ7が上部旋回体3とブーム4の間に連結され、ブーム4がブームシリンダ7により駆動される。
【0018】
アーム5の基端がブーム4の先端に回転可能に連結され、アーム5がその基端を支点にして上下方向に起伏可能に設けられている。アームシリンダ8がブーム4とアーム5の間に連結され、アーム5がアームシリンダ8により駆動される。
【0019】
バケット6の基端がアーム5の先端に回転可能に連結され、バケット6がその基端を支点にして上下方向に起伏可能に設けられている。バケットシリンダ9がバケット6とアーム5の間に連結され、バケット6がバケットシリンダ9により駆動される。
【0020】
フック13は、アーム5とバケット6との間の連結部に回転可能に連結される。作業機械本体101が掘削動作をする際には、フック13がバケットシリンダ9の先端部の2体のバケットリンクの間に格納され、作業機械本体101が荷吊り動作をする際には、フック13が2体のバケットリンクの間から展開される。
【0021】
作業機械本体101が荷吊り動作をする場合には、吊り荷99がフック13から吊り下げられる。吊り荷99は、ブーム4の俯仰、アーム5の起伏及び上部旋回体3の旋回によって移動させられる。ブーム4の俯仰、アーム5の起伏又は上部旋回体3の旋回の際に、特にブーム4の俯仰速度、アーム5の起伏速度又は上部旋回体3の旋回速度の変化の際に、吊り荷99が揺れる。吊り荷99の揺れが発生しても、この作業機械100は吊り荷99と作業機械本体101又は障害物98との接触を抑えられるようになっている。
【0022】
図2を参照して、作業機械本体101の駆動系、つまりブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、油圧モーター11L,11R,12、エンジン21、メインポンプ22、レギュレータ23及びコントロールバルブ24について説明する。
【0023】
エンジン21は、原動機であり、油圧駆動系におけるメイン動力源である。エンジン21は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。エンジン21の出力軸が変速機等を介してメインポンプ22及びパイロットポンプ31に接続されている。エンジン21は、後述のコントローラ60による直接的又は間接的な制御下で、予め設定される目標回転速度で回転して、メインポンプ22及びパイロットポンプ31を駆動する。
【0024】
メインポンプ22は、例えば、可変容量式油圧ポンプである。メインポンプ22は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ24に接続されている。メインポンプ22は、エンジン21によって駆動されることによって、コントロールバルブ24に作動油を供給する。
レギュレータ23は、メインポンプ22に設けられている。レギュレータ23は、コントローラ60によって制御される。レギュレータ23は、コントローラ60による制御の下で、メインポンプ22の斜板の傾斜角を調整する。メインポンプ22の斜板の傾斜角が調整されることによって、メインポンプ22の吐出圧及び吐出流量が制御される。
【0025】
コントロールバルブ24は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び油圧モーター11L,11R,12とメインポンプ22との間の油圧ラインに設けられている。コントロールバルブ24は、メインポンプ22から供給された作動油をブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び油圧モーター11L,11R,12に選択的に供給する。コントロールバルブ24は複数のバルブを有し、これらバルブはそれぞれブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び油圧モーター11L,11R,12に供給される作動油の流量と流れ方向を制御する。これにより、ブームシリンダ7がブーム4を、アームシリンダ8がアーム5を、バケットシリンダ9がバケット6を、油圧モーター11Lが下部走行体1の左クローラを、油圧モーター11Rが下部走行体1の右クローラを、油圧モーター12が上部旋回体3をそれぞれ駆動する。
【0026】
<<操作系>>
図2を参照して、作業機械100の操作系について詳細に説明する。
【0027】
パイロットポンプ31は、パイロット油圧ラインを介して油圧制御弁32及びコントロールバルブ24にパイロット圧を供給する。
【0028】
油圧制御弁32は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び油圧モーター11L,11R,12のそれぞれに対応して設けられている。油圧制御弁32は、コントローラ60の制御の下、コントローラ60の制御に応じたパイロット圧をパイロット油圧ラインを通じてコントロールバルブ24に作用させる。従って、コントローラ60は、油圧制御弁32を直接的に制御することによって、コントロールバルブ24、油圧モーター11L,11R,12、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9を通じて下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦する。コントローラ60による下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6の操縦には、手動操縦と自動操縦がある。手動操縦とは、コントローラ60が操作装置33の出力信号に基づいて下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦することをいう。自動操縦とは、コントローラ60が操作装置33の出力信号に関係なく下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦すること、又は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6の動作速度を制限して、操作装置33の出力信号に基づいて下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦することをいう。なお、自動操縦の一種として、安全操縦がある。安全操縦については後述する。
【0029】
操作装置33は、キャビン10の内側の操縦席付近に設置されている。操作装置33は、オペレータが作業機械本体101の被動部、つまり、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6の操縦を行う操作手段である。操作装置33は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6にそれぞれ対応した操作子を有する。操作子とは、レバー又はペダルのことをいう。操作子は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6の操縦のために用いられる。つまり、これら操作子は、油圧モーター11L,11R,12、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9をそれぞれ駆動するために用いられる。
【0030】
操作装置33は電気式である。つまり、操作装置33は、オペレーターによって操作されると、操作内容に応じた電気信号をコントローラ60に出力する。手動操縦の場合、コントローラ60は、操作装置33から入力した電気信号に従って油圧制御弁32を制御する。従って、オペレーターは、操作装置33を操作することによって、作業機械本体101の被動部、つまり、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦することができる。
【0031】
操作装置33が油圧パイロット式であってもよい。この場合、油圧制御弁32に加えて第二油圧制御弁及びシャトル弁がパイロット油圧ラインに設けられ、操作装置33が第二油圧制御弁に接続され、第二油圧制御弁及び油圧制御弁32がシャトル弁を介してコントロールバルブ24に接続されている。手動操縦の場合、コントローラ60が第二油圧制御弁を高圧に制御することによって、シャトル弁が油圧制御弁32からコントロールバルブ24までの第一油圧経路を遮断するとともに、操作装置33及び第二油圧制御弁からコントロールバルブ24までの第二油圧経路を接続する。そのため、操作装置33は、オペレーターによって操作されると、パイロット圧を第二油圧制御弁及びシャトル弁を介して、コントロールバルブ24に供給する。従って、オペレーターは、操作装置33を操作することによって、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5及びバケット6を操縦することができる。自動操縦の場合、コントローラ60が第二油圧制御弁を低圧に制御することによって、シャトル弁が油圧制御弁32からコントロールバルブ24までの第一油圧経路を接続するとともに、操作装置33及び第二油圧制御弁からコントロールバルブ24までの第二油圧経路を遮断する。
【0032】
操作装置33が油圧パイロット式である場合、操作圧センサが操作装置33に設けられている。操作圧センサは、操作装置33による油圧モーター11L,11R,12、ブームシリンダ7、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9のそれぞれに対するパイロット圧を検出して、その検出信号をコントローラ60に出力する。つまり、操作圧センサの出力信号は、電気式の操作装置33の電気信号に相当する。
【0033】
<<制御系>>
ブーム角度センサ41は、ブーム4の俯仰角を検出して、ブーム4の俯仰角に関連する信号をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、ブーム角度センサ41の出力信号に基づいてブーム4の俯仰角及び俯仰速度を認識する。ブーム角度センサ41は、例えばロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ及びIMU(Inertial Measurement Unit)等の中の何れか1つ又は2つ以上を含んでもよい。ブーム角度センサ41は、ブームシリンダ7の伸縮長さを検出するセンサを含んでもよい。
【0034】
アーム角度センサ42は、アーム5の起伏角を検出して、アーム5の起伏角に関連する信号をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、アーム角度センサ42の出力信号に基づいてアーム5の起伏角及び起伏速度を認識する。アーム角度センサ42は、例えばロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ及びIMU等の中の何れか1つ又は2つ以上を含んでもよい。アーム角度センサ42は、アームシリンダ8の伸縮長さを検出するセンサを含んでもよい。
【0035】
バケット角度センサ43は、バケット6の起伏角を検出して、アーム5の起伏角に関連する信号をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、バケット角度センサ43の出力信号に基づいてバケット6の起伏角及び起伏速度を認識する。バケット角度センサ43は、例えば例えばロータリエンコーダ、加速度センサ、角速度センサ、六軸センサ及びIMU等の中の何れか1つ又は2つ以上を含んでもよい。バケット角度センサ43は、バケットシリンダ9の伸縮長さを検出するセンサを含んでもよい。
【0036】
旋回角センサ44は、上部旋回体3の旋回角を検出して、上部旋回体3の旋回角に関連する信号をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、旋回角センサ44の出力信号に基づいて上部旋回体3の旋回角及び旋回速度を認識する。旋回角センサ44は、例えばポテンショメータ、ロータリエンコーダ及びレゾルバ等の中の何れか1つ又は2つ以上を含んでもよい。
【0037】
機体傾斜センサ45は、下部走行体1又は上部旋回体3の傾斜角、具体的にはロール角若しくはピッチ角又はこれらの両方を検出して、下部走行体1又は上部旋回体3の傾斜角に関連する信号をコントローラ60に出力する。機体傾斜センサ45は、例えば、上部旋回体3に搭載されている。機体傾斜センサ45は例えば加速度センサ(傾斜センサ)、角速度センサ、六軸センサ及びIMU等の中の何れか1つ又は2以上を含んでよい。
【0038】
図1に示すように、2体のカメラ40は、前方に向けてキャビン10の外部に取り付けられている。これら2体のカメラ40がこれらの間に間隔を置いて左右に並んでおり、一方のカメラ40の視点及び視線と他方のカメラ40の視点及び視線の間に視差が存在する。つまり、2体のカメラ40からなる撮像装置は、いわゆるステレオカメラである。なお、カメラ40の設置位置はキャビン10に限られるものではない。例えば、カメラ40が上部旋回体3に搭載されていてもよい。
【0039】
カメラ40は、上部旋回体3の前方を撮影して、吊り荷99及び作業機械本体101の周辺環境情報としての映像を取得する外界センサである。作業機械本体101の周辺の障害物98がカメラ40の視野内に存在する場合には、カメラ40が吊り荷99に加えて障害物98も撮影する。図2に示すように、カメラ40は、カメラ40によって撮影された映像の信号をコントローラ60に転送する。
【0040】
カメラ40は、吊り荷99の揺れに伴う吊り荷99と作業機械本体101又は障害物98との接触の防止のために利用される。そのため、作業機械本体101が荷吊り動作をする際に、カメラ40が撮影動作を実行する。なお、作業機械本体101が掘削動作をする際にも、カメラ40が撮影動作を実行してもよい。
【0041】
表示装置50がキャビン10の内側に設けられ、カメラ40によって撮影された映像の信号がコントローラ60によって表示装置50に転送され、その映像が表示装置50に表示されてもよい。
【0042】
安全スイッチ46は例えばキャビン10内に設置されている。オペレーターが作業機械100を用いて荷吊りを行う際に、オペレーターが安全スイッチ46をオンさせる。そうすると、安全スイッチ46がオン信号をコントローラ60に転送し、これにより、コントローラ60が後述のコンピュータープログラム62を実行する。オペレーターが安全スイッチ46をオフさせると、安全スイッチ46がオフ信号をコントローラ60に転送し、これにより、コントローラ60がコンピュータープログラム62の実行を終了する。
【0043】
なお、荷吊りモードと掘削モードを切り替えるための切替スイッチが安全スイッチ46を兼ねてもよい。この場合、ユーザーが切替スイッチをオンさせて、作業機械100の動作モードが吊り荷モードになった上で、コントローラ60がコンピュータープログラム62を実行する。作業機械100の動作モードが吊り荷モードになると、コントローラ60がエンジン21の目標回転速度を低速に変更する。更に、コントローラ60がバケット6を閉じるよう操縦して、バケット6を閉じた状態に保持する。
【0044】
また、安全スイッチ46がフック13に設置されてもよい。この場合、フック13がバケットシリンダ9の先端部の2体のバケットリンクの間に格納されると、安全スイッチ46がフック13によってオフされ、フック13が2体のバケットリンクの間から展開されると、安全スイッチ46がフック13によってオンされる。
【0045】
コントローラ60は、キャビン10内に搭載される。コントローラ60は、ハードウェアとしてのCPU、RAM、GPU、システムバス及びストレージ装置61等を備えるコンピュータである。コントローラ60のストレージ装置61には、CPUが実行可能なコンピュータープログラム62が格納されている。オペレーターが作業機械100を用いて荷吊りを行う際に、コンピュータープログラム62がコントローラ60のCPUによって実行される。例えば、安全スイッチ46がオン信号をコントローラ60に出力すると、コントローラ60がその旨を認識して、コントローラ60のCPUがそのコンピュータープログラム62を実行する。そうすると、コントローラ60が吊り荷検出部63、揺れ検出部64、障害物検出部65、第1判定部66、第1判定基準算出部67、第2判定基準算出部68、第2判定部69、第3判定基準算出部70、安全自動操縦部71及び報知部72として機能する。吊り荷検出部63、揺れ検出部64、障害物検出部65、第1判定部66、第1判定基準算出部67、第2判定基準算出部68、第2判定部69、第3判定基準算出部70、安全自動操縦部71及び報知部72は、CPUがコンピュータープログラム62を実行することで実現されるソフトウェアモジュールである。
【0046】
吊り荷検出部63は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、視差を利用した三次元測量原理(この三次元測量原理はいわゆるステレオカメラの原理ともいう。)により吊り荷99の三次元的な位置及び範囲を周期的に算出する。吊り荷99の三次元的な位置は、吊り荷99の代表点の位置を、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸によって定められた直交座標系(以下、この直交座標系をセンサ座標系という。)のX座標、Y座標及びZ座標で表現されている。吊り荷99の範囲は、吊り荷99がセンサ座標系に存在する範囲をX座標、Y座標及びZ座標で表現したものである。つまり、吊り荷99の範囲は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれにおける吊り荷99の寸法を表す。周期的な算出とは、カメラ40によって撮影される映像の1コマごとに吊り荷99の三次元的な位置及び範囲を算出すること、又はその映像の1又は複数のコマおきに吊り荷99の三次元的な位置及び範囲を算出することをいう。外界センサがカメラ70であるため、センサ座標系のことをカメラ座標系ともいう。センサ座標系の原点は例えばカメラ40の位置を基準として定められたものであり、その原点は下部走行体1の走行若しくは上部旋回体3の旋回又はこれら両方に追従する。従って、下部走行体1が走行したり、上部旋回体3が旋回したりすれば、障害物98がセンサ座標系において移動する。
【0047】
揺れ検出部64は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、視差を利用した三次元測量原理により、センサ座標系における吊り荷99の三次元的な揺れ方向及び揺れ速度を周期的に算出する。より具体的には、揺れ検出部64は、或るコマにおける吊り荷99の三次元的な位置と、それよりも後のコマにおける吊り荷99の三次元的な位置との差分を算出する。その差分は、X軸方向の成分、Y軸方向の成分及びZ軸方向の成分からなるベクトルであって、X軸方向の成分、Y軸方向の成分及びZ軸方向の成分が吊り荷99の揺れ方向を表す。そのベクトルの大きさは、揺れ速度に相当する。
【0048】
障害物検出部65は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、視差を利用した三次元測量原理により、障害物98の三次元的な位置及び範囲を周期的に算出する。障害物98の三次元的な位置は、障害物98の代表点の位置を、センサ座標系のX座標、Y座標及びZ座標で表現したものである。障害物98の範囲は、障害物98がセンサ座標系に存在する範囲をX座標、Y座標及びZ座標で表現したものである。
【0049】
第1判定部66は、揺れ検出部64によって算出された吊り荷99の三次元的な揺れ方向が判定基準方向であるか否かを判定する。吊り荷99の三次元的な揺れ方向が判定基準方向であるとの判定を肯定判定といい、そうでない判定を否定判定という。判定基準方向は、範囲を有するものでもよいし、範囲を有さなくてもよい。判定基準方向とは、吊り荷99から作業機械本体101(特にキャビン10又は上部旋回体3)への方向、又は、吊り荷99から障害物98への方向をいう。判定基準方向は、第1判定基準算出部67又は第2判定基準算出部68によって算出される。
【0050】
第1判定基準算出部67は、センサ座標系における作業機械本体101(特にキャビン10及び上部旋回体3)の位置及び範囲と、吊り荷検出部63によって算出された吊り荷99の位置及び範囲とに基づいて、判定基準方向を算出する。このように算出された判定基準方向は、吊り荷99から作業機械本体101(特にキャビン10又は上部旋回体3)への方向である。センサ座標系における作業機械本体101(特にキャビン10及び上部旋回体3)の位置及び範囲は、予めコンピュータープログラム62に設定されていてもよいし、コントローラ60がその設定をブーム角度センサ41、アーム角度センサ42、バケット角度センサ43、旋回角センサ44及び機体傾斜センサ45に基づいて補正したものでもよい。
【0051】
第2判定基準算出部68は、障害物検出部65によって算出された障害物98の位置及び範囲と、吊り荷検出部63によって算出された吊り荷99の位置及び範囲とに基づいて、判定基準方向を算出する。このように算出された判定基準方向は、吊り荷99から障害物98への方向である。
なお、判定基準方向は、判定基準算出部67,68によって算出されたものではなく、予め定められた所定方向であってもよい。
【0052】
第2判定部69は、揺れ検出部64によって算出された吊り荷99の揺れ速度が判定基準速度を超えたか否かを判定する。吊り荷99の揺れ速度が判定基準速度を超えたとの判定を肯定判定といい、そうでない判定を否定判定という。判定基準速度は、予め定められた定数であってもよいし、変数であってもよい。判定基準速度が変数である場合、判定基準速度は第3判定基準算出部70によって算出される。
【0053】
第3判定基準算出部70は、吊り荷検出部63によって認識された吊り荷99の範囲に基づいて判定基準速度を算出する。具体的には、第3判定基準算出部70は、吊り荷検出部63によって認識された吊り荷99の範囲が広くなるにつれて判定基準速度を小さく算出する。従って、吊り荷検出部63によって認識された吊り荷99の範囲が広くなるにつれて、第2判定部69が吊り荷99の揺れ速度が判定基準速度を超えたと判定しやすくなる。よって、吊り荷検出部63によって認識された吊り荷99の範囲が広くなるにつれて、第2判定部69による判定が厳しくなる。
【0054】
第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、安全自動操縦部71及び報知部72が発動する。安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号に基づく下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4及びアーム5の手動操縦を制限して、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4又はアーム5の自動的な安全操縦を実行する。下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4又はアーム5の自動的な安全操縦とは、手動操縦されている下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4又はアーム5を停止すること、手動操縦されている上部旋回体3、ブーム4又はアーム5の動きを反転させること、又は、手動操縦されている上部旋回体3、ブーム4又はアーム5の速度を制限して低下させること、をいう。より具体的には、以下の(1)~(5)の通りである。
【0055】
(1) オペレーターが操作装置33を操作することによってコントローラ60がブーム4又はアーム5を振り下げるよう操縦する時、第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、その肯定判定は、揺れる吊り荷99が作業機械本体101(特にキャビン10又は上部旋回体3)に接触しそうなことを意味する。その場合、安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号を無視して、ブーム4又はアーム5を停止させるか、ブーム4又はアーム5の速度を制限して低下させるか、ブーム4又はアーム5を振り上げるよう操縦した後にブーム4又はアーム5を停止させる。これにより、作業機械本体101への吊り荷99の接触を防止できる。
【0056】
(2) オペレーターが操作装置33を操作することによってコントローラ60がブーム4又はアーム5を振り上げるよう操縦する時、第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、その肯定判定は、揺れる吊り荷99が作業機械本体101の前の障害物98に接触しそうなことを意味する。その場合、安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号を無視して、ブーム4又はアーム5を停止させるか、ブーム4又はアーム5の速度を制限して低下させるか、ブーム4又はアーム5を振り下げるよう操縦した後にブーム4又はアーム5を停止させる。これにより、障害物98への吊り荷99の接触を防止できる。
【0057】
(3) オペレーターが操作装置33の操作することによってコントローラ60が上部旋回体3を左に旋回させるよう操縦する時、第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、その肯定判定は、揺れる吊り荷99が作業機械本体101の左の障害物98に接触しそうなことを意味する。その場合、安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号を無視して、上部旋回体3を停止させるか、上部旋回体3の速度を制限して低下させるか、上部旋回体3を右に旋回させるよう操縦した後に上部旋回体3を停止させる。これにより、障害物98への吊り荷99の接触を防止できる。
【0058】
(4) オペレーターが操作装置33の操作することによってコントローラ60が上部旋回体3を右に旋回させるよう操縦する時、第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、その肯定判定は、揺れる吊り荷99が作業機械本体101の右の障害物98に接触しそうなことを意味する。その場合、安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号を無視して、上部旋回体3を停止させるか、上部旋回体3の速度を制限して低下させるか、上部旋回体3を左に旋回させるよう操縦した後に上部旋回体3を停止させる。これにより、障害物98への吊り荷99の接触を防止できる。
【0059】
(5) 吊り荷99がフック13から吊り下げられる際に、作業機械本体101の走行は禁止されている。オペレータが誤って操作装置33を操作してしまうと、コントローラ60が下部走行体1を走行させる。そのような時、第1判定部66の判定が肯定判定の場合、又は、第1判定部66及び第2判定部69の両方の判定が肯定判定の場合、その肯定判定は、揺れる吊り荷99が作業機械本体101又はその前の障害物98に接触しそうなことを意味する。その場合、安全自動操縦部71は、操作装置33の出力信号を無視して、下部走行体1を停止させると、作業機械本体101への吊り荷99の接触を防止できる。又は、安全自動操縦部71は、ブーム4又はアーム5を振り上げるよう操縦した後にブーム4又はアーム5を停止させると、作業機械本体101への吊り荷99の接触が防止される。又は、安全自動操縦部71は、ブーム4又はアーム5を振り下げるよう操縦した後にブーム4又はアーム5を停止させると、作業機械本体101の前の障害物98への吊り荷99の接触が防止される。
【0060】
報知部72は、報知器としての表示装置50に報知用の映像信号を出力して、例えば接触のおそれの旨の報知用映像を表示装置50に表示させる。これにより、オペレーターは、キャビン10内に居ながら、吊り荷99の接触の虞を察知することができる。なお、スピーカー、ランプ又は点滅器等の報知器がキャビン10内に設けられ、報知部72が報知器に報知動作を行わせてもよい。
【0061】
<<コントローラの処理の流れ>>
オペレーターが作業機械100を用いて荷吊りを行う際に、オペレーターが安全スイッチ46をオンさせると、コントローラ60がコンピュータープログラム62に従って以下の処理を行う。なお、コンピュータープログラム62の実行中、オペレーターが操作装置33を操作することによって、作業機械本体101が手動で操縦されて、吊り荷99が作業機械本体101によって吊り上げられて、移動させられる。
【0062】
まず、コントローラ60が2体のカメラ40を動作させて(ステップS1)、2体のカメラ40から映像信号を継続的に入力する。
【0063】
次に、吊り荷検出部63としてのコントローラ60は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、吊り荷99の三次元的な位置及び範囲を算出する(ステップS2)。
次に、揺れ検出部64としてのコントローラ60は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、吊り荷99の三次元的な揺れ方向及び揺れ速度を算出する(ステップS3)。
次に、障害物検出部65としてのコントローラ60は、2体のカメラ40の映像信号に基づいて、障害物98の三次元的な位置及び範囲を周期的に算出する(ステップS4)。
なお、これらステップS2~ステップS4の順番は変更されてもよい。
【0064】
次に、第1判定基準算出部67としてのコントローラ60は、センサ座標系における作業機械本体101(特にキャビン10及び上部旋回体3)の位置及び範囲と、ステップS2において算出された吊り荷99の位置及び範囲とに基づいて、判定基準方向を算出する(ステップS5)。このように算出された判定基準方向は、吊り荷99から作業機械本体101への方向である。
【0065】
また、第2判定基準算出部68としてのコントローラ60は、ステップS4において算出された障害物98の位置及び範囲と、ステップS2によって算出された吊り荷99の位置及び範囲とに基づいて、判定基準方向を算出する(ステップS5)。このように算出された判定基準方向は、吊り荷99から障害物98への方向である。
【0066】
次に、第1判定部66としてのコントローラ60は、ステップS3において算出された吊り荷99の三次元的な揺れ方向が判定基準方向であるか否かを判定する(ステップS6)。この判定が肯定判定の場合、コントローラ60の処理がステップS7に移行する(ステップS6:YES)。この判定が否定判定の場合、コントローラ60の処理がステップS2に戻る(ステップS6:NO)。なお、この判定が肯定判定の場合、コントローラ60の処理がステップS8に移行してもよい。
【0067】
ステップS7では、第2判定部69としてのコントローラ60は、ステップS3において算出された吊り荷99の三次元的な揺れ速度が判定基準速度を超えたか否か判定する。判定基準速度は、所定の定数であってもよいし、第3判定基準算出部70としてのコントローラ60がステップS6において算出された吊り荷99の範囲に基づいて算出したものでもよい。
【0068】
ステップS7における判定が肯定判定の場合、コントローラ60の処理がステップS8に移行する(ステップS7:YES)。ステップS7における判定が否定判定の場合、コントローラ60の処理がステップS2に戻る(ステップS7:NO)。
【0069】
ステップS8では、安全自動操縦部71としてのコントローラ60が、操作装置33の出力信号に基づく下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4及びアーム5の手動操縦を制限して、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4又はアーム5の自動的な安全操縦を実行する。これにより、作業機械本体101又は障害物98への吊り荷99の接触が防止される。
【0070】
次に、報知部72としてのコントローラ60が、表示装置50に報知用の映像信号を出力して、報知用映像を表示装置50に表示させる(ステップS9)。
【0071】
<<技術的に有利な効果>>
オペレーターが操作装置33を通じて作業機械本体101を操縦する際に、吊り荷99が揺れてしまっても、吊り荷99が作業機械本体101又は障害物98に接触することを防止できる。よって、荷吊り作業を安全に行える。
【0072】
吊り荷99が大きいほど判定基準速度が小さいため、吊り荷99が大きいほど、安全自動操縦部71による自動操縦が発動されやすい。よって、吊り荷が大きくても、荷吊り作業を安全に行える。
【0073】
<<変形例>>
前述の実施形態では、外界センサがカメラ40である。それに対して、カメラ40の代わりに三次元測距センサが採用されてもよい。三次元測距センサは、レーザー光、電磁波、赤外線又は超音波等のウエイブを照射することによって、三次元測距センサから作業機械本体101の周辺の吊り荷99及び障害物98までの距離及び方角を周期的に測定する。三次元測距センサは、LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)又は三次元スキャナを採用したものでもよい。吊り荷検出部63は、三次元測距センサの出力信号に基づいて、吊り荷99の三次元的な位置及び範囲を周期的に算出する。揺れ検出部64は、三次元測距センサの出力信号に基づいて、センサ座標系における吊り荷99の三次元的な揺れ方向及び揺れ速度を周期的に算出する。障害物検出部65は、三次元測距センサの出力信号に基づいて、障害物98の三次元的な位置及び範囲を周期的に算出する。
【0074】
前述の実施形態では、作業機械本体101がショベル本体である。それに対して、作業機械本体は、吊り荷の吊り作業を行えるものであれば、ショベル本体に限るものではない。例えば、作業機械本体は移動式クレーン本体及び固定式クレーン本体であってもよい。移動式クレーン本体とは、例えば、クローラークレーン本体、ホイールクレーン本体、ホイールクレーン本体及びトラッククレーン本体等のことをいう。固定式クレーン本体とは、例えば港湾クレーン本体、天井クレーン本体、門型クレーン本体及びアンローダ本体等のこという。作業機械本体は、ジブ、アーム又はブーム等を有する建機本体であれば、ショベル以外の建機本体であってもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
40 カメラ(外界センサ)
60 コントローラ
63 吊り荷検出部
64 揺れ検出部
65 障害物検出部
66 第1判定部
67 第1判定基準算出部
68 第2判定基準算出部
69 第2判定部
71 安全自動操縦部
100 作業機械
101 作業機械本体
図1
図2
図3