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特開2024-78932保健機能が向上されたソルガムの製造方法およびそれを含む組成物
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  • 特開-保健機能が向上されたソルガムの製造方法およびそれを含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024078932
(43)【公開日】2024-06-11
(54)【発明の名称】保健機能が向上されたソルガムの製造方法およびそれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20240604BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240604BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240604BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 29/212 20160101ALI20240604BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240604BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240604BHJP
【FI】
A23L33/21
A61K36/899
A61P1/14
A61P3/04
A23L5/00 N
A23L29/212
A23K10/30
A23L7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191558
(22)【出願日】2022-11-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人北海道国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】521099486
【氏名又は名称】ユー. エス. グレインズ カウンシル
【氏名又は名称原語表記】U.S. GRAINS COUNCIL
【住所又は居所原語表記】20 F Street Northwest, Suite 900, Washington, D. C. 20001, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】韓 圭鎬
(72)【発明者】
【氏名】永田 龍次
(72)【発明者】
【氏名】福島 道広
(72)【発明者】
【氏名】浜本 哲郎
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B023
4B025
4B035
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AA03
2B150AA06
2B150AB03
2B150AE33
2B150CE01
4B018MD34
4B018MD49
4B018ME01
4B018ME14
4B018MF04
4B018MF05
4B023LC09
4B023LE30
4B023LG10
4B023LP07
4B023LP14
4B023LP15
4B023LP20
4B025LD02
4B025LG01
4B025LP01
4B025LP12
4B035LC06
4B035LG21
4B035LG34
4B035LP01
4B035LP43
4C088AB73
4C088AC04
4C088BA06
4C088CA02
4C088NA14
4C088ZA69
4C088ZA70
(57)【要約】
【課題】本発明は、ソルガム中のRS含有量を増加させる方法を開発することを課題とする。
【解決手段】本発明は、下記(1)および(2)工程:(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、を含み、(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、1回の処理に比べてRS含有量が向上されたソルガムの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、1回の処理に比べてレジスタントスターチ含有量が向上されたソルガムの製造方法。
【請求項2】
加熱処理の温度が120℃以上、時間が20分以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
冷凍処理の温度が-30℃以下、時間が8時間以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムを含有する、組成物。
【請求項5】
摂食抑制用である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
内臓脂肪減少用である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
腸内アンモニア量減少用である、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
腸内IgA量増加用である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、または動物飼料添加用素材である、請求項4~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
医薬品、または医薬品添加用素材が、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療用である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、ソルガムの調理方法。
【請求項12】
請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加方法。
【請求項13】
請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療方法。
【請求項14】
摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加のための、請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムの使用。
【請求項15】
摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加のための組成
物の製造における、請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムの使用。
【請求項16】
摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療のための組成物の製造における、請求項1に記載の製造方法により製造されたソルガムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保健機能が向上されたソルガムの製造方法およびそれを含む組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルガム(Sorghum bicolor L.)はアフリカ原産であり、干ばつ耐性が高く、乾燥地で貧困している人々にとっては主食となっている、マイナーな穀物である。その優れた農学的特徴に加えて、コメや小麦などの主穀物と比較してグルテンを含まず食物繊維とレジスタントスターチ(RS)含有量(以下、RS含有量)が高い特徴を有する。食物繊維は「ヒトの小腸内で消化・吸収されずに消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する難消化性多糖類」と定義され、摂取されると大腸にそのまま流入されて腸内細菌の栄養源となる。そこで腸内細菌の働きにより、短鎖脂肪酸(SCFA)の産生が増加されて大腸内pHが低下する。また、RSとは「健康な人間の小腸内腔で消化および吸収されにくいデンプン」であり、食物繊維と同様に腸内細菌の栄養源となり、コレステロールと血糖値の上昇抑制、大腸癌の発生抑制などが期待される。さらに、食物繊維やRSがリッチな穀物を摂取すると、満腹感、低カロリ-、またはSCFAの刺激によるGLP-1などの食欲調節ホルモンの分泌によって食欲低下を通して肥満防止も期待される。実際に、本願発明者らは、先に、食事を想定した湿式調理(湿熱処理)をソルガム試料に施し、全粒粉または精白ソルガムを投与したラットを用いた動物試験より、腸内発酵の改善と共に摂取量および内臓脂肪量の減少を発見した(非特許文献1)。両試料中のRS量は変わりがなかったが、食物繊維が少ない精白群でも全粒粉群と同等な効果がみられた。そのため、ソルガムの食餌量および内臓脂肪量の低下に影響を及ぼす要因として、ソルガム中の食物繊維よりRSの方がより大きくなると考えられる。穀物中のRS量は調理方法により変化するので、調理方法の改善によってソルガムのRS量を増加させれば、その機能はより強化されると期待される。
【0003】
ブランチ、蒸気加熱、ドラム乾燥などの加熱処理方法、処理時間および再加熱回数などの調理条件は、食品加工品のRSレベルに影響を及ぼす重要な要素と考えられる。ここで、本願発明者らは、先に、RS量を増加させる方法として、連続調理(湿熱処理と冷却を繰り返し実施すること)によってポテトデンプン中RS含量の変化に着目した(非特許文献2)。
【0004】
しかしながら、ソルガムの中のRS含量を増加させる方法については検討がされておらず、開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Samanthi et al., Nutrients 2020, 12, 2412; doi:10.3390/nu12082412.
【非特許文献2】Kawakami et al. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2017, 81 (2), 359-364; doi: 10.1080/09168451.2016.1254537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の状況を鑑みなされたものであって、ソルガム中のRS含有量を増加させる方法を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、生ソルガム試料を、1回湿熱・冷凍処理すると、RS含有量が大幅に減少するが、湿熱・冷凍処理を繰り返すことでRS含有量が増加することを知見した。また、RS含有量が増加したソルガムが、摂食抑制作用、内臓脂肪減少作用、腸内アンモニア量減少作用、腸内IgA量増加作用といった保健機能を発揮することを知見した。このような知見に基づき、本発明は完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨は以下に関する。
【0008】
[1] 下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、1回の処理に比べてRS含有量が向上されたソルガムの製造方法。
[2] 加熱処理の温度が120℃以上、時間が20分以上である、[1]に記載の製造方法。
[3] 冷凍処理の温度が-30℃以下、時間が8時間以上である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造されたソルガムを含有する、組成物。
[5] 摂食抑制用である、[4]に記載の組成物。
[6] 内臓脂肪減少用である、[4]に記載の組成物。
[7] 腸内アンモニア量減少用である、[4]に記載の組成物。
[8] 腸内IgA量増加用である、[4]に記載の組成物。
[9] 飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、または動物飼料添加用素材である、[4]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10] 医薬品、または医薬品添加用素材が、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療用である、[9]に記載の組成物。
[11] 下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、ソルガムの調理方法。
[12] [1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加方法。
[13] [1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療方法。
[14] 摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加のための、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造されたソルガムの使用。
[15] 摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加のための組成物の製造における、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により製造されたソルガムの使用。
[16] 摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療のための組成物の製造における、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法により
製造されたソルガムの使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ソルガム中のRS含有量を増加させる方法を提供することができる。
すなわち、本発明によれば、ソルガムの加熱・冷凍処理を複数回繰り返すことで、1回の処理に比べてRS含有量が向上されたソルガムを製造することができる。
また、本発明の製造方法により製造されたRS含有量が増加したソルガムは、摂食抑制作用、内臓脂肪減少作用、腸内アンモニア量減少作用、腸内IgA量増加作用といった保健機能を発揮するため、摂食抑制用途、内臓脂肪減少用途、腸内アンモニア量減少用途、および腸内IgA量増加用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、湿熱・冷凍処理ソルガム投与による、盲腸内アンモニア態窒素およびIgA濃度の変化を示す図である。Aは、盲腸内アンモニア態窒素濃度、Bは、盲腸内IgA濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について説明する。ただし、本発明は、以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。なお、本明細書において、数値範囲を「下限~上限」で表現するものに関しては、上限は「以下」であっても「未満」であってもよく、下限は「以上」であっても「超」であってもよい。
本明細書中、加熱とは、室温以下の温度を有する対象物の温度を、処理前より高くする処理を意味する。
本明細書中、冷却とは、室温以上の温度を有する対象物の温度を、処理前より低くする処理を意味する。
本明細書中、冷凍とは、対象物を低温の環境下に置いて、凍結させる処理を意味する。
【0012】
<本発明の製造方法>
本発明の一態様は、下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、1回の処理に比べてRS含有量が向上されたソルガムの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ということがある。)に関する。
【0013】
本発明の製造方法において、加熱・冷凍処理工程を複数回(通常3回以上)繰り返すことで、1回の加熱・冷凍処理に比べてRS含有量を向上することができる。加熱・冷凍処理工程の回数は、特に限定されないが、例えば、3~10回、3~5回、3回、4回または5回である。
【0014】
本発明の製造方法において、1回の処理に比べてRS含有量が向上されたソルガムとは、特に限定されないが、例えば、1回処理のソルガム中のRS含有量(例えば、重量%)に対して、3回以上繰り返し処理のソルガム中のRS含有量(例えば、重量%)が、120%以上、130%以上、または150%以上となったものであってよい。
【0015】
また、本発明の製造方法において製造されるソルガムとは、特に限定されないが、例えば、原料ソルガム中のRS含有量(例えば、重量%)に対して、3回以上繰り返し処理のソルガム中のRS含有量(例えば、重量%)が、35%以上、40%以上、または50%以上となったものであってよい。
また、本発明の製造方法において製造されるソルガムとは、特に限定されないが、例えば、3回以上繰り返し処理のソルガム中のRS含有量が、4重量%以上、5重量%以上、または5.5重量%以上であってよく、11重量%以下、10重量%以下、または7.5重量%以下であってよい。または、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
3回以上繰り返し処理のソルガム中のRS含有量は、4~11重量%、5~10重量%、または5.5~7.5重量%であってよい。
【0016】
≪ソルガム≫
本発明の製造方法において、原料として用いられるソルガムは、イネ科植物タカキビ (Sorghum bicolor L. Moench)の種子である。一般的に、ソルガムは、タンニン含量によって、ソルガム、タンニンソルガム、ホワイトソルガム、ミックスソルガムの4種類に分類される。本発明の製造方法には、これらのいずれをも用いることができ、特に限定されないが、このうち、タンニン含量が最も少ないホワイトソルガムが、色調が良好で苦味が少ないため好ましい。ソルガムは、特に限定されず自生または生育された植物から得られるもの、市販されているもの等を用いることができる。
【0017】
≪レジスタントスターチ≫
本発明の製造方法において、原料として用いられるソルガムは、レジスタントスターチを含有する。「レジスタントスターチ」とは、穀物等に含まれるデンプンのうち、消化酵素に対して難消化性の画分を意味する。
レジスタントスターチは、その消化抵抗性の機構の違いにより、レジスタントスターチ1(Resistant Starch 1:RS1)~レジスタントスターチ(Resistant Starch 4:RS4)に分類される。RS1は、豆類や未粉砕の全粒穀類のデンプン等物理的に消化酵素が接触できないものである。RS2は、生のジャガイモ、未熟なバナナ、ハイアミロースコーン等のデンプンである。RS3は、老化デンプン(一旦糊化(α化)したデンプンが再結晶化(β化)したもの)である。また、RS4は、加工デンプン(架橋デンプンなど化学修飾されたもの)である。本発明においては、レジスタントスターチとしては上記RS1~RS4の何れであってもよい。
本発明の製造方法において、ソルガム中のRS含有量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、AOAC公定法 (AOAC Official Method 2002.02)に準じて測定することが可能である。また、RS含有量は、後記実施例に記載の方法等によって測定することが可能である。
本発明の製造方法において、原料として用いられるソルガム中のRS含有量は、特に限定されないが、例えば、1~20重量%、5~15重量%、または10~12重量%である。
【0018】
≪加熱処理工程≫
本発明の製造方法において、加熱・冷凍処理工程を複数回(通常3回以上)繰り返すことで、1回の加熱・冷凍処理に比べてRS含有量を向上することができる。
このような効果が得られる限り、加熱処理条件は特に限定されないが、加熱温度は、例えば、100℃以上、110℃以上、または120℃以上であってよく、200℃以下、180℃以下、または150℃以下であってよい。または、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
加熱温度は、100~200℃、110~180℃、または120~150℃であってよい。
【0019】
加熱時間は、例えば、10分以上、15分以上、または20分以上であってよく、60分以下、45分以下、または30分以下であってよい。または、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
加熱時間は、10~60分、15~45分、または20~30分であってよい。
【0020】
加熱処理は、一般に使用される方法によって実施することができる。具体的には、湿熱処理、または乾熱処理を使用することができる。特に好ましくは、湿熱処理である。
湿熱処理とは、通常理解されるとおり、高い相対湿度条件下での加熱処理を包含することができる。具体的には、当該相対湿度は、例えば、80%以上、90%以上、または100%であり得る。湿熱処理は、例えば、オートクレーブ、圧力鍋等の加圧加熱容器を使用して行う方法、流動層造粒乾燥機、ハイブリッドキルン等の装置に、水蒸気、過熱水蒸気、および/または水スプレーなどを組み合わせて加熱処理を行う方法、および、恒温恒湿槽を用いて所望の温度および湿度条件で加熱処理する方法等によって実施できる。
好ましい一態様では、湿熱処理は、例えば、ソルガム1kg当たり、水1~5L(好ましくは、2~3L)の比率で混合し、オートクレーブ、圧力鍋等の加圧加熱容器で、120℃以上で20分以上加熱することができる。
【0021】
なお、本発明の効果を阻害しない限り、原料に、ソルガム以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、澱粉類、糖類、乳化剤、色素、香料、調味料等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。原料中における他の成分の含量は、原料となるソルガムの全重量に対して、10重量%以下、または5重量%以下であり、好ましくは、他の成分は使用しない。
【0022】
≪冷凍処理工程≫
本発明の製造方法において、加熱・冷凍処理工程を複数回(通常3回以上)繰り返すことで、1回の加熱・冷凍処理に比べてRS含有量を向上することができる。
このような効果が得られる限り、冷凍処理条件は特に限定されないが、冷凍温度は、例えば、-80℃以上、-50℃以上、または-40℃以上であってよく、0℃未満、-10℃以下、または-30℃以下であってよい。または、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
冷凍温度は、-80℃~0℃未満、-50~-10℃、または-40~-30℃であってよい。
【0023】
冷凍時間は、例えば、3時間以上、8時間以上、または12時間以上であってよく、72時間以下、48時間以下、または24時間以下であってよい。または、これらの矛盾しない組み合わせであってよい。
冷凍時間は、3~72時間、8~24時間、または12~24時間であってよい。
【0024】
冷凍処理は、一般に使用される方法によって実施することができる。冷凍処理は、例えば、ディープフリーザー等の装置で冷凍処理する方法等によって実施できる。
好ましい一態様では、冷凍処理は、例えば、ディープフリーザー等の装置で、-30℃以下8時間以上保持して行うことができる。
【0025】
<本発明の調理方法>
本発明のさらなる一態様は、下記(1)および(2)工程:
(1)ソルガムを加熱処理する工程、および、
(2)加熱処理したソルガムを冷凍処理する工程、
を含み、
(1)および(2)工程を3回以上繰り返してソルガムを処理することを特徴とする、ソルガムの調理方法(以下、「本発明の調理方法」ということがある。)に関する。
本発明の調理方法における原料、条件等は、上記本発明の製造方法の記載を参照することができる。すなわち、上記本発明の製造方法において説明された事項は、本発明の調理方法の説明に全て適用される。
【0026】
<本発明の組成物>
本発明のさらなる一態様は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを含有する、組成物(以下、「本発明の組成物」ということがある。)に関する。
本発明の組成物は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを、好ましくは有効成分として含有する。
ソルガムの組成物中の含有量としては、組成物全量に対するRS含有量として、例えば、0.05~10重量%、0.1~5重量%、または1~2重量%である。
【0027】
また、本発明の組成物は、摂食抑制作用、内臓脂肪減少作用、腸内アンモニア量減少作用、および腸内IgA量増加作用を有し、摂食抑制用途、内臓脂肪減少用途、腸内アンモニア量減少用途、および腸内IgA量増加用途に利用することができる。さらに、本発明の組成物は、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療用途に利用することができる。摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、および腸内IgA量低下に関連する疾患は、限定されないが、例えば、肥満症や、糖尿病、動脈硬化、肝性脳症、大腸癌、炎症性腸疾患や関節リウマチ、パーキンソン病等の免疫関連性疾患、食物アレルギー等が挙げられる。
なお、上記「腸内」とは、小腸および/または大腸(好ましくは結腸)のことであり、好ましくは結腸のことである。
【0028】
すなわち、本発明のさらなる一態様は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを含有する、摂食抑制用組成物、内臓脂肪減少用組成物、腸内アンモニア量減少用組成物、または腸内IgA量増加用組成物に関する。
ここで、摂食を抑制するとは、限定されないが、例えば、本発明の組成物を投与された対象の摂食量が、非投与対照または投与前に対し、0.95倍以下、0.8倍以下、または0.5倍以下に減少することであってよい。
ここで、内臓脂肪を減少するとは、限定されないが、例えば、本発明の組成物を投与された対象の内臓脂肪量が、非投与対照または投与前に対し、0.9倍以下、0.8倍以下、または0.7倍以下に減少することであってよい。
ここで、腸内アンモニア量を減少するとは、限定されないが、例えば、本発明の組成物を投与された対象の腸内アンモニア量(例えば、アンモニア態窒素濃度)が、非投与対照または投与前に対し、0.9倍以下、0.8倍以下、または0.7倍以下に減少することであってよい。
ここで、腸内IgA量を増加するとは、限定されないが、例えば、本発明の組成物を投与された対象の腸内IgA量(例えば、腸内IgA濃度)が、非投与対照または投与前に対し、1.1倍以上、1.2倍以上、または1.5倍以上に増加することであってよい。
【0029】
また、本発明の別のさらなる一態様は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを含有する、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療用組成物に関する。
【0030】
本発明の組成物は、本発明の製造方法により製造することができるソルガムを有効成分として用いて、これをヒトまたはヒト以外の対象動物に投与することで、上記効果を発現するものである。投与対象は、ヒトのみならずヒト以外の哺乳動物、例えば、ブタ等の家畜、さらに、イヌ、ネコ等のペットなどであってよい。投与方法は、特に制限はないが、例えば、経口的に投与することが好ましい。なお、ここで「投与」は「摂取」と置換されてもよい。
【0031】
本発明の組成物の投与量は、対象者の健康状態や年齢、あるいはどの程度の作用効果を
必要としているかなどに応じて、適宜設定すればよい。典型的には、レジスタントスターチ量として、例えば、0.001mg~100mg/日/kg体重、0.01mg~20mg/日/kg体重、または0.1mg~10mg/日/kg体重の範囲であってよい。
【0032】
上記組成物は、限定されないが、例えば、飲食品、飲食品添加用素材、医薬品、医薬品添加用素材、動物飼料、または動物飼料添加用素材等であってよい。
なお、上記本発明の製造方法、調理方法において説明された事項は、本発明の組成物の説明に全て適用される。
【0033】
<本発明の飲食品等>
本発明の組成物は、飲食品として提供されるものであってもよい。すなわち、有効成分のソルガムを、そのまま、あるいは他の飲食品用原料を組み合わせて、飲食品と成してもよい。ソルガムに組み合わせる飲食品用原料としては、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味料および香味料等が挙げられる。本発明の飲食品は、通常この分野で行われている公知の製造技術を参照して製造することができる。
【0034】
飲食品の形態としては、液状、ペースト状、固体、粉末、顆粒等の形態を問わない。また、錠菓、流動食等も飲食品の態様に含まれる。
【0035】
また、他に一般の飲食品に含有させる態様であってもよく、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品等の即席食品;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子等の菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類;これら以外の食品等に、本発明の組成物を添加してもよい。
【0036】
本発明の飲食品の態様としては、通常の食品、飲料、機能性表示食品、特定保健用食品等の保健機能食品、サプリメント等が挙げられ、特に機能性表示食品が好ましい。
本発明の飲食品を摂食抑制用組成物、内臓脂肪減少用組成物、腸内アンモニア量減少用組成物、または腸内IgA量増加用組成物とする場合、製品化の際にその有する有用性や機能性に関する表示を付してもよい。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、「食べ過ぎを防ぐ」、「腸内環境を良好にしたい方に」、「腸の調子を整えたい方に」といった用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明の「表示」行為に該当する。
【0037】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品または商品の包装、容器等に前記用途を
記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材等、若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、またはこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。なお、本発明の飲食品が保健機能食品等の行政が定める各種制度に基づいて認可を受けその認可のもとで実施される場合は、該認可に基づく態様で表示することが好ましい。
【0038】
また、本発明の組成物は、上記のような飲食品に添加されるものとして利用される、摂食抑制用、内臓脂肪減少用、腸内アンモニア量減少用、または腸内IgA量増加用の飲食品添加用素材として提供されてもよい。
【0039】
<本発明の医薬品等>
本発明の組成物は、摂食抑制用、内臓脂肪減少用、腸内アンモニア量減少用、または腸内IgA量増加用の医薬品として提供されてもよい。すなわち、有効成分のソルガムを、そのまま、あるいは他の医薬用原料と組み合わせて、医薬用の組成物と成してもよい。有効成分のソルガムに組み合わせる他の医薬用原料に特に制限はなく、必要に応じて、薬学的に許容される基材や担体を添加して、公知の製剤方法によって、例えば錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、散剤、液剤、粉末剤、ゼリー状剤、飴状剤等の形態にして、これを経口剤として利用することができる。
【0040】
また、本発明の組成物は、そのような医薬品に添加されるものとして利用される、摂食抑制用、内臓脂肪減少用、腸内アンモニア量減少用、または腸内IgA量増加用の医薬品添加用素材であってもよい。
【0041】
<本発明の動物飼料等>
本発明の組成物は、摂食抑制用、内臓脂肪減少用、腸内アンモニア量減少用、または腸内IgA量増加用の動物飼料であってもよい。すなわち、例えば、有効成分のソルガムを、そのまま、あるいは他の動物飼料用原料と組み合わせて、動物食餌用の組成物と成してもよい。例えば、家畜、競走馬、鑑賞用動物、ペット等、動物用の飼料に利用してもよい。本発明の動物飼料は、通常この分野で行われている公知の製造技術を参照して製造することができる。
【0042】
また、本発明の組成物は、そのような動物飼料に添加されるものとして利用される、摂食抑制用、内臓脂肪減少用、腸内アンモニア量減少用、または腸内IgA量増加用の動物飼料添加用素材であってもよい。
【0043】
<本発明の使用>
本発明の別の一態様は、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加のための、本発明の製造方法により製造されたソルガムの使用に関する。
また、本発明のさらに別の一態様は、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療のための、本発明の製造方法により製造されたソルガムの使用に関する。
また、本発明のさらに別の一態様は、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加に用いるための組成物の製造における、本発明の製造方法により製造されたソルガムの使用に関する。
また、本発明のさらに別の一態様は、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療に用いるための組成物の製造における、本発明の製造方
法により製造されたソルガムの使用に関する。
【0044】
また、本発明は、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加に用いるための、本発明の製造方法により製造されたソルガムに関する。
また、本発明は、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療に用いるための、本発明の製造方法により製造されたソルガムに関する。
また、本発明は、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加に用いるための組成物の製造に用いるための、本発明の製造方法により製造されたソルガムに関する。
また、本発明は、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療に用いるための組成物の製造に用いるための、本発明の製造方法により製造されたソルガムに関する。
【0045】
本発明の製造方法により製造されたソルガムは、治療目的で利用されてもよく、非治療目的で利用されてもよい。すなわち、上記例示したような効果は、いずれも、特記しない限り、治療目的で得られてもよく、非治療目的で得られてもよい。「治療目的」とは、例えば、治療のための人体等への処置行為を含むことを意味してよく、特に、医療行為として実施されることを意味してもよい。「非治療目的」とは、例えば、治療のための人体等への処置行為を含まないことを意味してよく、特に、非医療行為として実施されることを意味してもよい。非治療目的としては、健康増進や美容等の目的が挙げられる。
【0046】
「疾患の予防」とは、例えば、疾患の発症の防止もしくは遅延、または疾患の発症の可能性の低下を意味してよい。「疾患の改善」または「疾患の治療」とは、例えば、疾患の好転、疾患の悪化の防止もしくは遅延、または疾患の進行の防止もしくは遅延を意味してよい。「疾患の改善」とは、特に、これらの事象であって、かつ治療目的でないものを総称してもよい。「疾患の治療」とは、特に、これらの事象であって、かつ治療目的であるものを総称してもよい。
【0047】
<本発明の方法>
本発明の一態様は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加方法に関する。
また、本発明の別の一態様は、本発明の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することを含む、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療方法に関する。
【0048】
本発明の方法により、有効成分である本発明の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することにより、当該対象において摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加をすることができる、すなわち、摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加効果が得られる。
【0049】
また、本発明の方法により、有効成分である本発明の製造方法により製造されたソルガムを対象に投与することにより、当該対象において摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療をすることができる、すなわち、摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療効果が得られる。
【0050】
なお、「有効成分を対象に投与すること」は、「対象に有効成分を摂取させること」と同義であってよい。摂取は、自発的なもの(自由摂取)であってもよく、強制的なもの(強制摂取)であってもよい。すなわち、投与工程は、具体的には、例えば、有効成分を飲食品や飼料に配合して対象に供給し、以て対象に有効成分を自由摂取させる工程であってもよい。投与は、経口投与であってもよく、非経口投与であってもよい。投与は、通常は、経口投与であってよい。非経口投与としては、経管投与や直腸内投与が挙げられる。
【0051】
有効成分の投与態様(例えば、投与対象、投与時期、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、有効成分による上記効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分の投与態様は、有効成分の種類や、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。
【0052】
有効成分が投与される対象は、有効成分による上記効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分が投与される対象については、「本発明の組成物」における有効成分が投与される対象についての記載を準用できる。
【0053】
有効成分の投与量は、有効成分による上記効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。有効成分の投与量については、「本発明の組成物」における有効成分が投与される対象についての記載を準用できる。
【0054】
有効成分の投与期間は、例えば、4週間以上、好ましくは8週間以上、より好ましくは12週間以上であってよい。有効成分は、例えば、1日当たり1回投与してもよく、1日当たり複数回に分けて投与してもよい。また、有効成分は、例えば、毎日投与してもよく、数日に1回投与してもよい。有効成分は、特に、毎日投与してよい。各投与時の有効成分の投与量は、一定であってもよく、そうでなくてもよい。
【0055】
有効成分は、例えば、そのまま対象に投与されてもよく、有効成分を含有する飲食品、医薬品、動物飼料等の組成物として調製され、対象に投与されてもよい。有効成分を含有する組成物については、本発明の組成物の記載を準用できる。また、有効成分は、単独で投与されてもよく、他の成分と併用投与されてもよい。他の成分としては、飲食品、医薬品、動物飼料、それらに含有される成分が挙げられる。これら他の成分は、有効成分の効果に基づく上記例示した用途(摂食抑制、内臓脂肪減少、腸内アンモニア量減少、または腸内IgA量増加用途、あるいは摂食過多に関連する疾患、内臓脂肪過多に関連する疾患、腸内アンモニア量過多に関連する疾患、または腸内IgA量低下に関連する疾患の予防、改善、および/または治療用途)等に用いるためのものであってもよく、そうでなくてもよい。
【0056】
有効成分は、例えば、本発明の組成物を利用して(すなわち本発明の組成物を投与することにより)、対象に投与することもできる。すなわち、本発明の方法の一態様は、本発明の組成物を対象に投与する工程を含む方法であってよい。すなわち、「有効成分の投与」には、本発明の組成物の投与も包含される。本発明の組成物の投与態様(例えば、投与対象、投与時期、投与期間、投与回数、投与量、その他投与に係る条件)は、有効成分による上記効果等の所望の効果が得られる限り、特に制限されない。本発明の組成物の投与態様は、有効成分の種類や含有量、その他の成分の種類や含有量、組成物の種類や形状(剤形)、投与対象の種類、年齢、および健康状態等の諸条件に応じて適宜設定することができる。上述したような有効成分の投与態様に関する記載は、本発明の組成物を対象に投与する場合にも準用できる。すなわち、本発明の組成物は、例えば、上記例示したような対象に投与することができる。また、本発明の組成物の投与量は、例えば、上記例示したような有効成分の投与量が得られるように設定することができる。また、本発明の組成物は、単独で投与されてもよく、飲食品、医薬品、動物飼料、それらに含有される成分等の、他の成分と併用投与されてもよい。
【0057】
なお、上記本発明の製造方法、調理方法、組成物において説明された事項は、本発明の方法、使用の説明に全て適用される。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の例示であり、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
本実験では3種類(生、湿熱・冷凍処理1回、湿熱・冷凍処理3回)のソルガムを用いた。
全粒ホワイトソルガム試料と蒸留水を1:2(重量比)で混合し、121℃、20分の条件でオートクレーブを用いて湿熱処理を行った。その後、フリーザーで-30℃で一晩保持して、冷凍処理を行った(1回湿熱・冷凍処理)。湿熱処理を3回実施する場合は、冷やしたソルガム試料を同条件でオートクレーブに供し、その後、同条件で冷凍した(3回湿熱・冷凍処理)。所定の処理を行った後、凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥後に、ミルミキサーによって粉末化し、355 μmのふるいを通した。
【0060】
上記のようにして得た各ソルガム試料(n=2-3)について、成分を分析した。
食物繊維含有量(不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の総量)は、プロスキー変法により分析した。
RS含有量は、AOAC公定法 2002.02により分析した。より詳細には、以下のように測定した。まず、ソルガム試料を膵臓α-アミラーゼ、パンクレアチンとアミログルコシダーゼを37℃で16時間作用させて消化性澱粉を可溶化、加水分解した。エタノールを添加して反応を停止させ、難消化性澱粉を遠心分離機により回収した。回収された難消化性澱粉を2M
KOHで溶解し、1.2 M酢酸緩衝液(pH3.8)で中和して、アミログルコシダーゼによりグルコースまで加水分解した。得られたグルコースにグルコースオキシダーゼパーオキシダーゼを加え、インキュベート終了後,分光光度計(UV-1600、島津製作所)を用いて510nmにおける吸光度を測定した。レジスタントスターチ含量は、最後のアミログルコシダーゼ消化によって遊離したレジスタントスターチ画分由来のグルコース量から澱粉量を換算することで測定される。
タンパク質含有量は、ケルダール窒素定量法(AOAC公定法 920.87)により分析した。
【0061】
結果を表1に示す。
表1に示すとおり、生ソルガム(全粒)中11.6重量%のRS含有量は、1回の湿熱処理で大幅に劣化したが(3.6重量%)、その試料を冷却して再度湿熱処理すると約6.0重量%まで増加した。
すなわち、湿熱・冷凍処理を3回以上行うことで、ソルガムのRS含有量を向上できることが分かった。
【0062】
【表1】
【0063】
<実施例2>
基準食に上記のようにして得た各ソルガム試料を30%レベルで添加した食餌をラット(n=6)に投与した。飼育条件としてはF344系、7週齢のオスのラットを用い、餌、水は自由摂取とし、4週間試験食を投与した後に解剖し、盲腸、腎臓、および精巣を採取した。
分析項目としては、腎臓、精巣周囲脂肪量、盲腸内容物量、盲腸内pH、有機酸濃度、アンモニア態窒素濃度、IgA濃度を分析した。
盲腸内pHは、pHメーター(セブンイージーS20、メトラー・トレド社)で測定した。
有機酸濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、LC-10AD、島津製作所)により分析した。
アンモニア態窒素濃度は、血液検査用アンモニアキット(アンモニアテストワコー、富士フイルム和光純薬社)を用いて比色法により分析した。より詳細には、盲腸内容物を蒸留水で希釈し、前記キットに含まれる説明書に従い、630nmにおける吸光度に基づく比色法によりアンモニア態窒素濃度を測定した。なお、比色用の検量線は、前記キットに含まれるアンモニア標準液を用いて、濃度0、100、200、300、および400μg/dLとなるように段階希釈した検量線用標準液を用いて作成した。
IgA濃度は、ELISA法(ELISA Starter Accessory Kit、BETHYL社)により分析した。より詳細には、前記キットのマイクロウェルプレートのウェルに、抗原としてaffinity purified goat anti-rat IgA coating antibodyを固定した。次いで、前記ウェルに、上記の盲腸内容物の希釈液を加えてインキュベートした。次いで、前記ウェルに、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)とコンジュゲートされた二次抗体(goat anti-rat IgA detection antibody)の希釈液を加えてインキュベートした。最後に、前記ウェルに、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)溶液を加えてインキュベートし、HRPによるTMBの酸化反応を行い、マイクロプレートリーダーを用い、450nmの波長にて、前記酸化反応の生成物による呈色を測定した。なお、標準溶液はRat Ig and IgG subclasses standard Serum (NOR-03, Exalpha, USA)を用い、希釈液(Blocking Solution : 10% Tween20=199:1)で1,000 ng/mLに調製し、希釈液で2倍段階希釈を行い15.6 ng/mLまで調製し、検量線用標準液を用いて作成した。
動物実験用餌組成の組成を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
結果を表3および図1に示す。
表3に示すとおり、生ソルガム群と対照群間には、摂取量および内臓脂肪重量の違いはみられず、湿熱処理群のみでその低下がみられた。特に、湿熱処理を繰り返したソルガム群は単回処理したソルガム群より、摂取量および内臓脂肪重量を減少させた。さらに、図1に示すとおり、湿熱処理を繰り返したソルガム群のみで盲腸内アンモニア態窒素濃度の減少やIgA濃度の増加の有意差がみられた。また、盲腸内乳酸濃度は、盲腸内IgA濃度に影響(正の相関)していることが示された。
以上の結果より、ソルガムが食欲抑制作用、内臓脂肪減少(肥満改善)作用、腸内アンモニア量減少作用、腸内IgA量増加作用を有するためには、湿式調理(湿熱処理)が必要であり、湿熱・冷凍処理を繰り返した方がその機能を顕著に強化させることが分かった。
【0066】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の製造方法により製造されたソルガムは、保健機能を有した食品素材として商品開発に繋がることが期待される。
図1